(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
まず、本実施形態のMRI装置の一例の全体概要を説明する。
図1は、本実施形態のMRI装置の全体構成を示すブロック図である。本実施形態のMRI装置100は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、
図1に示すように、静磁場発生系120と、傾斜磁場発生系130と、送信系150と、受信系160と、制御処理系170と、シーケンサ140と、とを備える。
【0013】
静磁場発生系120は、垂直磁場方式であれば、被検体101の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に、均一な静磁場を発生させるもので、被検体101の周りに配置される永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源を備える。
【0014】
傾斜磁場発生系130は、MRI装置100の座標系(装置座標系)であるX、Y、Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル131と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源132とを備え、後述のシ−ケンサ140からの命令に従ってそれぞれの傾斜磁場コイル131の傾斜磁場電源132を駆動することにより、X、Y、Zの3軸方向に傾斜磁場Gx、Gy、Gzを印加する。
【0015】
送信系150は、被検体101の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体101に高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」と呼ぶ。)を照射するもので、高周波発振器(シンセサイザ)152と変調器153と高周波増幅器154と送信側の高周波コイル(送信コイル)151とを備える。高周波発振器152はRFパルスを生成し、シーケンサ140からの指令によるタイミングで出力する。変調器153は、出力されたRFパルスを振幅変調し、高周波増幅器154は、この振幅変調されたRFパルスを増幅し、被検体101に近接して配置された送信コイル151に供給する。送信コイル151は供給されたRFパルスを被検体101に照射する。
【0016】
受信系160は、被検体101の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出される核磁気共鳴信号(エコー信号、NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)161と信号増幅器162と直交位相検波器163と、A/D変換器164とを備える。受信コイル161は、被検体101に近接して配置され、送信コイル151から照射された電磁波によって誘起された被検体101の応答のNMR信号を検出する。検出されたNMR信号は、信号増幅器162で増幅された後、シーケンサ140からの指令によるタイミングで直交位相検波器163により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器164でディジタル量に変換されて、制御処理系170に送られる。
【0017】
本実施形態では、受信コイル161は、複数のサブコイルから構成されるマルチプルRF受信コイルとする。サブコイル毎に信号増幅器162、直交位相検波器163、A/D変換器164を備え、サブコイル毎にディジタル量に変換されたNMR信号が制御処理系170へ送られる。
【0018】
シーケンサ140は、RFパルスと傾斜磁場パルスとを所定のパルスシーケンスに従って繰り返し印加する。なお、パルスシーケンスは、高周波磁場、傾斜磁場、信号受信のタイミングや強度を記述したもので、予め制御処理系170に保持される。シーケンサ140は、制御処理系170からの指示に従って動作し、被検体101の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系150、傾斜磁場発生系130、および受信系160に送信する。
【0019】
制御処理系170は、MRI装置100全体の制御、各種データ処理等の演算、処理結果の表示及び保存等を行うもので、CPUを備える。また、制御処理系170には記憶装置172と表示装置173と入力装置174とが接続される。記憶装置172は、ハードディスクなどの内部記憶装置と、外付けハードディスク、光ディスク、磁気ディスクなどの外部記憶装置とにより構成される。表示装置173は、CRT、液晶などのディスプレイ装置である。入力装置174は、MRI装置100の各種制御情報や制御処理系170で行う処理の制御情報の入力のインタフェースであり、例えば、トラックボールまたはマウスとキーボードとを備える。入力装置174は、表示装置173に近接して配置される。操作者は、表示装置173を見ながら入力装置174を通してインタラクティブにMRI装置100の各種処理に必要な指示、データを入力する。
【0020】
制御処理系170の各処理は、CPUが、操作者が入力した指示に従って、記憶装置172に予め保持されるプログラムを実行することにより、実現する。例えば、受信系160からのデータが制御処理系170に入力されると、制御処理系170は、信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体101の断層像を表示装置173に表示するとともに、記憶装置172に記憶する。
【0021】
送信コイル151と傾斜磁場コイル131とは、被検体101が挿入される静磁場発生系120の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体101に対向して、水平磁場方式であれば被検体101を取り囲むようにして設置される。また、受信コイル161は、被検体101に対向して、或いは取り囲むように設置される。
【0022】
現在、MRI装置の撮像対象核種で、臨床で普及しているものは、被検体101の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。MRI装置100では、プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または機能を、二次元もしくは三次元的に撮像する。
【0023】
本実施形態の制御処理系170の詳細な構成の説明に先立ち、上記特許文献1に開示の制御処理系170の構成について説明する。
図2は、特許文献1に開示の制御処理系の構成を説明するための説明図である。
【0024】
制御処理系は、A/D変換器164から出力されるエコーデータのサンプリングを行うCPU基板であるサンプリング基板901と、サンプリング後のデータに対しフーリエ変換を行い、再構成画像を得るCPU基板である再構成基板902と、シーケンサ140に指示を与える計測制御用PC903と、サブコイル毎の再構成画像を合成する画像合成PC904と、ユーザとのインタフェースとなるユーザインタフェースPC905とを備える。なお、サンプリング基板901と再構成基板902とは、それぞれ1以上備える。
図2では、サンプリング基板901および再構成基板902を、それぞれ4つ備える場合を例示する。なお、4つのサンプリング基板901、再構成基板902を、それぞれ区別する必要がある場合、901(1)、901(2)、901(3)、901(4)、902(1)、902(2)、902(3)、902(4)、とそれぞれ表す。
【0025】
サンプリング基板901、再構成基板902、画像合成PC904は、専用のバスで接続される。サンプリング基板901と再構成基板902とを複数備える場合、それぞれのサンプリング基板901、再構成基板902にて処理された各チャンネルの画像データは、専用の通信バスを経由して、画像合成PC904に集約され、画像合成処理が実行され、最終画像が出力される。
【0026】
特許文献1に開示の技術の場合、
図2に示すように、サンプリング基板901と、再構成基板902と、画像合成PC904と、の3つのハードウェアが直列的に接続される。接続されているハードウェア以外の相互通信は困難である。従って、各ハードウェアで担当する処理は固定化され、ハードウェア間で処理の分担を柔軟に変更することができない。
【0027】
この場合の各ハードウェアの処理のタイミングは、
図3に示すようになる。サンプリング基板901でサンプリングされたデータは、それぞれ接続される再構成基板902に送られ、送付先の再構成基板902において画像が再構成される。画像の再構成までは、各サブコイルに接続されたサンプリング基板901、再構成基板902で、分担して処理される。しかし、画像合成PC904では、再構成基板902から画像データが転送されて来ない限り、画像合成処理を実施することができない。従って、特許文献1に開示の技術では、画像再構成処理中は、
図3に示すような、CPUのアイドル時間(待ち時間)が発生する。
【0028】
さらに、画像再構成を行う再構成基板902と後処理を行う画像合成PC904とが別個に、直列に接続されている。このため、例えば、パラレルイメージング展開、画像補正などを後処理として行う場合、負荷が高いため、これらの処理に画像合成PC904のメモリが占有され、メモリ不足が発生することがある。この様子を
図4に示す。
【0029】
画像合成PC904においてメモリの不足が発生すると、再構成基板902からの画像データの受信を中断し、現在の画像合成PC904の処理を優先的に実行させる。従って、再構成基板902内のメモリには、転送できない画像データが蓄積され、サンプリング基板901からデータを受信するメモリが不足する可能性がある。再構成基板902においても、メモリが不足する場合、サンプリング基板901からのデータ(エコー)の受信を一旦停止する。サンプリング基板901では、エコーの送信を停止する。すると、データの流れが止められ、最終的には、サンプリング基板901内のメモリが溢れ、システムハングアップが発生する。
【0030】
本実施形態では、制御処理系170において、このような、CPUの待ち時間の発生、メモリのオーバーフローによるハングアップの発生などを低減する。これを実現する本実施形態の制御処理系170の構成を説明する。
図5は、本実施形態の制御処理系170の構成を説明するための説明図である。本実施形態の制御処理系170は、DRF基板210と、画像処理PC220と、ユーザインタフェースPC(UI−PC)230とを備える。
【0031】
各DRF基板210、画像処理PC220、UI−PC230といった制御処理系170を構成する各ハードウェアは、相互にデータの送受信が可能な態様で接続される。ここでは、ハブ240を中心としたスター型のトポロジで各ハードウェアを接続する。また、DRF基板210は、サブコイル(チャンネル)の数に対応したディジタルデータの伝送経路によりA/D変換器164に接続される。
【0032】
DRF基板210は、A/D変換器164から受信するサブコイル(チャンネル)毎のディジタルデータに各種の信号処理演算を施し、画像処理PC220に向けて転送する信号処理装置である。転送先の画像処理PC220は、特定の画像処理PC220から指示される。転送先決定の詳細は後述する。本実施形態では、送出するデータをパケット化し、宛先の画像処理PC220を特定する情報を付し、ハブ240を経由して、宛先の画像処理PC220にデータを送信する。ここで行う各種の信号処理演算は、例えば、QD検波、リサンプリング、リサンプリングのデータへの位置情報の付与である。位置情報は、k空間に配置するために用いられる。なお、DRF基板210は、OSや実行モジュールが格納されるシステム領域や信号処理演算で使用する演算用1次領域として搭載されるメモリを備える。
【0033】
本実施形態の制御処理系170は、このDRF基板210を、全チャンネルのデータを処理可能な数、備える。各DRF基板210は、当該DRF基板210が処理するチャンネル数のA/D変換器164に接続される。すなわち、1のDRF基板210がnチャンネルの処理が可能であり、全チャンネル数がNの場合(n,Nはともに自然数)、Ceil(N/n)(Ceil(x)は、x以上の最小の整数を返す関数)個以上のDRF基板210を備える。
図5では、一例として、サブコイル(チャンネル)数が20で、DRF基板210が5チャンネルの処理が可能な場合を例示する。従って、DRF基板210は4つ設けられる。なお、チャンネル毎に処理を行うDRF基板210は予め定められる。
【0034】
画像処理PC220は、DRF基板210で処理後のデータに対し、各種の画像処理演算を行う画像処理装置である。本実施形態では、例えば、画像再構成処理、補正処理、後処理等の画像処理に加え、さらに、計測制御も行う。本実施形態の画像処理PC220は、上記特許文献1の再構成基板902と画像合成PC904と計測制御用PC903の機能を備えるものである。本実施形態の制御処理系170は、画像処理PC220を、少なくとも2つ備える。
図5では、一例として2つ備える場合を例示する。
【0035】
また、画像処理PC220は、チャンネル毎にDRF基板210が処理したデータの転送先と、画像合成処理等の後処理を行う画像処理PC220と、を決定する。これを実現するため、本実施形態の画像処理PC220は、
図6に示すように、画像処理部221と、メモリ空き容量検出部222と、処理状況検出部223と、処理PC決定部224と、計測制御部225と、を備える。
【0036】
画像処理部221は、DRF基板210から送られたデータに対し、各種の画像処理演算を施し、画像を得る。ここで行う画像処理演算は、フーリエ変換(画像再構成処理)、補正処理、後処理等である。画像処理部221は、DRF基板210から送信されたチャンネル毎のデータをチャンネル毎にk空間メモリ領域に格納し、フーリエ変換を実施し、画像を再構成する。これにより、画像処理部221は、チャンネル数分の画像を得る。得られた画像に対し、必要に応じて、補正処理を行う。
【0037】
さらに、当該画像処理PC220が、後述する後処理実行PCと決定された場合、画像処理部221は、他の画像処理PC220から、チャンネル毎の画像を受け取り、後処理を行う。ここで行う後処理は、例えば、MAC合成やパラレルイメージング展開などである。
【0038】
メモリ空き容量検出部222は、自身の画像処理PC220が備えるメモリ229の空き容量を検出する。空き容量の検出は、例えば、後述する処理PC決定部224を備える画像処理PC220からの要求をトリガとして行う。そして、検出結果を要求元の画像処理PC220に通知する。なお、自身が要求元の画像処理PC220である場合は、自身の処理PC決定部224に検出結果を通知する。
【0039】
処理状況検出部223は、自身の画像処理PC220において、所定の処理を実行しているか否かを判別する。本実施形態では、実行状況の判別対象の処理は、例えば、画像再構成処理、後処理などの、多くのメモリ容量を使用する可能性のある処理である。判別対象の処理は、予め定めておく。例えば、本実施形態では、判別対象の処理は、画像再構成処理(フーリエ変換)、後処理とする。
【0040】
処理状況検出部223は、問い合わせに応じて、自身の画像処理PC220の、判別対象の処理の実行の有無を検出し、検出結果に応じたフラグを問い合わせ元の画像処理PC220に通知する。処理状況検出部223は、問い合わせに応じて、いずれも実行していない、画像再構成処理または後処理を実行中、のいずれかを示すフラグを検出結果として出力する。判別は、例えば、後述する処理PC決定部224を備える画像処理PC220からの要求をトリガとして行う。
【0041】
処理PC決定部224は、サブコイル(チャンネル)毎に、当該サブコイルで取得したデータに対して画像処理を行う画像処理PC(転送先PC)220を決定するとともに、後処理を行う画像処理PC(後処理実行PC)220を決定する。これらの画像処理PC220を決定する処理(処理PC決定処理)は、計測毎に、計測開始直前に行う。
【0042】
画像処理は、各DRF基板210で信号処理を行った後のデータに対して行う。従って、チャンネル毎のデータを処理する画像処理PC(転送先PC)220を決定すると、処理PC決定部224は、当該チャンネルのデータを処理するDRF基板210に、処理後のデータの転送先として、決定した転送先PC220を特定する情報を通知する。DRF基板210は、この通知を受け、処理後のデータを、転送先PC220を宛先として送出する。
【0043】
また、後処理を行う画像処理PC(後処理PC)220を決定すると、処理PC決定部224は、全画像処理PC220に処理後のデータの転送先として、決定した後処理PC220を特定する情報を通知する。
【0044】
処理PC決定部224は、チャンネル毎のデータに対する画像再構成処理(フーリエ変換処理)と、補正処理と、後処理とを、各画像処理PC220の負荷が、できる限り均等になり、かつ、メモリ不足が発生しないよう、各画像処理PC220に振り分ける。すなわち、各画像処理PC220のCPUの空き時間を低減し、資源を効率よく活用するよう処理を分散させる。振り分けは、各画像処理PC220のメモリ229の空き容量と、処理状況とに応じて行う。
【0045】
メモリ229の空き容量と処理状況との情報を得るため、処理PC決定部224は、制御処理系170内の全画像処理PC220に、メモリ229の空き容量および処理状況とを問い合わせる。処理PC決定部224は、問い合わせ結果に応じて、各チャンネルのデータの転送先の画像処理PC220および後処理を行う画像処理PC220を決定し、決定した結果を各DRF基板210に通知する。決定手法の詳細は後述する。
【0046】
計測制御部225は、MRI装置100での計測の制御を行う。計測制御部225を備える画像処理PC220は、直接シーケンサ140に接続される。そして、予め記憶装置172に保持するパルスシーケンス、ユーザから入力された撮像パラメータに従って、シーケンサ140に向けて、命令を出力する。
【0047】
なお、処理PC決定部224および計測制御部225は、それぞれ、1の画像処理PC220が備えていればよい。
図6では、一例として、制御処理系170が画像処理PC220を2つ備え、一方の画像処理PC220のみ処理PC決定部224および計測制御部225を備える場合を例示する。
【0048】
なお、画像処理PC220の各機能は、各画像処理PC220が備えるCPUが、予め記憶装置172などに格納されたプログラムをメモリにロードして実行することにより実現される。
【0049】
UIーPC230は、ユーザとのインタフェース処理を担う。UI−PC230には、表示装置173と入力装置174とが接続される。入力装置174を介して、ユーザからの制御処理系170への指示を受け付けるとともに、制御処理系170での処理結果を表示装置173に表示し、ユーザに提示する。ユーザは、表示装置173と入力装置174とを用い、制御処理系170への各種の指示を入力するとともに、制御処理系170での処理結果を確認する。
【0050】
次に、処理PC決定部224による、処理PC決定処理について説明する。本実施形態では、各画像処理PC220にメモリ229の空き容量と処理状況とを問い合わせ、問い合わせ対象の処理を実行していない画像処理PC(以下、非処理PCと呼ぶ。)220のみに全チャンネルの処理を均等に分配する。すなわち、本実施形態では、何らかの処理を実行中の画像処理PC220では、引き続き、現在行っている処理に専念する。この処理PC決定処理は、基本的には、各計測(スキャン)の開始直前に実行される。
【0051】
なお、全ての画像処理PC220が問い合わせ対象の処理を実行中である場合、あるいは、問い合わせ結果に基づき、処理PC決定処理を行い、分配不可能との結果がでた場合は、スキャンを開始せず、待ち状態とする。待ち状態となった場合、本実施形態では、処理PC決定部224は、所定時間ごとに、メモリ229の空き容量、処理状況を問い合わせ、処理PC決定処理を再度行う。
【0052】
以上の処理の流れを具体的に処理フローに従って説明する。
図7は、本実施形態の処理PC決定処理の処理フローである。
【0053】
処理PC決定部224は、まず、設定された撮像パラメータから、計測の種類を判別する(ステップS1101)。そして、当該計測で必要となるメモリ領域のサイズ(メモリ容量)を計算する(ステップS1102)。必要となるメモリ領域は、画像再構成のためにデータを展開するメモリ領域(k空間のメモリサイズMk)と、計測種に応じて必要となるメモリ領域のサイズMoと、である。
【0054】
例えば、取得データを間引いて計測し、感度分布を用いて折り返しを展開するパラレルイメージングを行う場合、後処理用において、画像サイズへの拡大を行い、さらに、スライス枚数分の感度マップを作成する必要があり、これらのメモリ領域Moが必要となる。なお、設定された撮像パラメータからこれらのメモリ領域が算出可能なデータは、記憶装置172に予め保持しておく。
【0055】
次に、処理PC決定部224は、各画像処理PC220に現在のメモリ空き容量および処理状況を問い合わせる(ステップS1103)。ここで、各画像処理PC220では、問い合わせを受け、メモリ空き容量検出部222により、自身のメモリ229の空き容量Msを検出する。また、処理状況検出部223により、予め定めた処理の実行状況を検出する。そして、自身の画像処理PC220を特定する情報とともに検出結果を、問い合わせ元の画像処理PC220へ回答する。このとき、問い合わせた画像処理PC220自身においても、メモリ空き容量検出部222は、自身のメモリ229の空き容量と処理状況とを検出する。
【0056】
なお、計測種に応じて必要となる処理を行うよう予め定められた画像処理PC220においては、メモリ229の空き容量Msから、さらに、計測種に応じて必要となるメモリサイズMoを除いた容量を、メモリ空き容量Msとする。計測種に応じて必要となる処理は、例えば、パラレルイメージングの場合の、感度マップ生成処理等である。
【0057】
自身も含め、各画像処理PC220からメモリ229の空き容量Msの通知および実行中の処理の検出結果を受け取ると(ステップS1104)、処理PC決定部224は、これらの情報を用い、チャンネル毎に、当該チャンネルのデータから画像再構成処理を行う画像処理PC(転送先PC)220と後処理を行う画像処理PC(後処理PC)220とを決定する。
【0058】
本実施形態では、処理PC決定部224は、まず、処理の実行状況の回答から、判別対象のいずれの処理も実行していない画像処理PC(非処理PC)220の有無を判断する(ステップS1105)。非処理PC220がある場合は、非処理PC220内でチャンネル毎のデータの転送先PC220を決定する転送先PC決定処理を行う(ステップS1106)。転送先PC決定処理の詳細は後述する。
【0059】
なお、ステップS1105で、非処理PC220が無い場合、および、ステップS1106で、分配ができず、転送先PC220が決定できなかった場合(分配不可)、所定の時間(T)後(ステップS1110)、ステップS1103へ戻り、再度、各非処理PC220に、メモリ229の空き容量、処理状況を問い合わせる。
【0060】
処理PC決定部224は、転送先PC決定処理において、転送先が決定した場合、まず、後処理PC220を決定する後処理PC決定処理を行う(ステップS1108)。後処理PC決定処理の詳細は後述する。
【0061】
そして、処理PC決定部224は、決定した転送先PC220を特定する情報(例えば、識別子n)を、それぞれのチャンネルからのデータを処理するDRF基板210へ通知するとともに、全画像処理PC220に、後処理PC220を特定する情報を通知する(ステップS1109)。そして、処理を終了する。
【0062】
次に、処理PC決定部224による、上記ステップS1106の転送先PC決定処理の詳細を説明する。本実施形態では、各非処理PC220で処理するチャンネル数を決定し、決定したチャンネル数に応じて、予め定めた順に、各非処理PC220に各チャンネルを割り当て、それぞれの転送先PC220を決定する。例えば、識別番号の小さい非処理PC220から順に、決定したチャンネル数ずつ、識別番号の小さいチャンネルから順に、割り当てていく。
【0063】
各非処理PC220で処理するチャンネル数の決定手法の概要は、以下のとおりである。まず、各非処理PC220のメモリ229の空き容量Msと、算出したk空間のメモリサイズMkとから、各非処理PC220における、処理可能な最大チャンネル数Cmaxを算出する。また、各非処理PC220に均等に割り振る場合の、各非処理PC220が処理すべきチャンネル数Cprocを算出する。
【0064】
そして、各非処理PC220の処理可能な最大チャンネル数Cmaxが、各非処理PC220が処理すべきチャンネル数Cproc以上の場合、各非処理PC220に、処理すべきチャンネル数Cporcずつ配分する。一方、1台でも最大チャンネル数Cmaxが処理すべきチャンネル数Cprocより小さい非処理PC220がある場合、CmaxがCprocより小さい非処理PC220には、その最大数Cmax分のチャンネル数を配分し、残りのチャンネル数を、残りの非処理PC220に均等に配分する。
【0065】
そして、メモリ領域が不足し、配分ができない場合は、配分不可として処理を終了する。
【0066】
以上の処理の具体的な流れを説明する。
図8は、転送先PC決定処理の処理フローである。ここで、Mは、処理チャンネル数が未決定の非処理PC220の台数、Nは、未配分のチャンネル数をそれぞれカウントするカウンタとする。
【0067】
まず、処理PC決定部224は、カウンタM、Nに初期値を代入する(ステップS1201)。ここでは、Mには、ステップS1105で抽出した非処理PC220の台数を代入する。また、Nは、全チャンネル数を代入する。なお、各非処理PC220は、識別子m(m=1、2、3、・・・・M;M、mは1以上の整数)で識別するものとする。
【0068】
次に、処理PC決定部224は、各非処理PC220(m)それぞれのメモリ229の空き容量Ms(m)を用い、以下の式(1)に従って、各非処理PC220(m)で処理可能な最大チャンネル数Cmax(m)を算出する(ステップS1202)。
Cmax(m)=Ceil(Ms(m)/Mk)・・・(1)
なお、Ceil(x)は、x以上の最小の整数を返す関数である。
【0069】
次に、処理PC決定部224は、未配分のチャンネル数Nと、非処理PC220(m)の台数Mを用い、以下の式(2)に従って、各非処理PC220(m)が処理すべきチャンネル数Cprocを算出する(ステップS1203)。
Cproc=Ceil(N/M)・・・(2)
【0070】
そして、処理PC決定部224は、均等分配が可能か否かを判別する(ステップS1204)。ここでは、全非処理PC220(m)について、以下の式(3)を満たすか否かを判別する。
Cmax(m)≧Cproc・・・(3)
【0071】
全ての非処理PC220(m)が、上記式(3)を満たす場合、処理PC決定部224は、各非処理PC220(m)に、処理すべきチャンネル数であるCprocずつチャンネルを割り当てる均等分配を行い(ステップS1205)、予め定めた規則に従って、チャンネルと転送先の画像処理PC220を対応づけ、チャンネル毎のデータの転送先の画像処理PC(転送先PC)220を決定する。
【0072】
一方、式(3)を満たさない非処理PC220(m)がある場合、すなわち、処理可能な最大チャンネル数Cmax(m)がCprocより小さい非処理PC220(m)がある場合、処理PC決定部224は、Cmax(m)<Cprocの非処理PC220(m)には、それぞれ、当該非処理PC220(m)が処理可能な最大チャンネル数、すなわちCmax(m)ずつチャンネルを割り当てる(ステップS1206)。そして、M,Nを、それぞれ、未決定の非処理PC220の台数、未割当のチャンネル数に更新する(ステップS1207)。
【0073】
そして、未決定の非処理PC220の台数が0であり、かつ、未割当のチャンネルが残っているか否かを判別する(ステップS1208)。これを満たす場合、すなわち、M=0かつN>0の場合、分配不可と判別し(ステップS1209)、処理を終了する。それ以外の場合、ステップS1203へ戻り、更新後のM,Nを用い、処理を繰り返す。
【0074】
次に、本実施形態の処理PC決定部224による、後処理PC決定処理の詳細を説明する。
【0075】
まず、上記転送先PC決定処理で、全てのチャンネルのデータの転送先が1台の画像処理PC220と決定された場合、当該処理を行う画像処理PC220で後処理も行うよう決定する。一方、転送先が複数台の画像処理PC220に渡る場合、予め定めた画像処理PC220で行うよう決定する。予め定めた画像処理PC220は、例えば、処理PC決定処理を行う画像処理PC220とする。
【0076】
なお、本実施形態では、1の計測毎に、当該計測で得られる各チャンネルのデータの転送先PC220を決定する。1の計測中は、転送先PC220を変更しないで維持する。
【0077】
以上の機能を備えた本実施形態の制御処理系170による、複数計測実行時の、各ハードウェアへの処理の振り分けを、具体例をあげて説明する。ここでは、1回目の計測(Scan1)として、通常の計測を行い、その後、2回目の計測(Scan2)として、パラレルイメージングを行い、3回目の計測(Scan3)として、通常の計測を行う場合を例にあげて説明する。各計測は、UI−PC230からの計測開始指示に従って、実行される。
【0078】
ここでは、受信コイル161は、サブコイルを32個備える32チャンネルのコイルとする。また、DRF基板210を4つ(210(1)、210(2)、210(3)、210(4))備え、DRF基板210(1)では、1〜8チャンネルのデータをディジタル処理し、DRF基板210(2)では、9〜16チャンネルのデータをディジタル処理し、DRF基板210(3)では、17〜24チャンネルのデータをディジタル処理し、DRF基板210(4)では、25〜32チャンネルのデータをディジタル処理するものとする。
【0079】
また、画像処理PC220は2台(220(1)、220(2))とする。画像処理PC220(2)が、処理PC決定部224を備え、後処理PC220と設定されているものとする。また、画像再構成、後処理等の画像処理を行っていない場合の各画像処理PC220(1)および220(2)のメモリ229の空き容量を、それぞれ、Ms(1)、Ms(2)とする。Ms(1)、Ms(2)は、ともに全チャンネルの画像再構成処理が可能な容量とする(Mk×32以上のメモリ容量とする)。
【0080】
図9は、本実施形態の各画像処理PC220の処理のタイムチャートである。また、
図10は、Scan1の、各DRF基板210および各画像処理PC220の処理のタイムチャートである。
【0081】
UI−PC230を介してScan1の計測開始の指示を受け付けると、画像処理PC220(2)の処理PC決定部224は、処理PC決定処理を行う。まず、上述のように処理PC決定部224は、接続される全画像処理PC220に、メモリ229の空き容量および処理の実行状況を問い合わせる。
図9の例では、画像処理PC220(1)に問い合わせ、自身も検出する。
【0082】
ここでは、直前に計測処理が実行されていないため、処理の実行状況については、画像処理PC220(1)も、画像処理PC220(2)も、ともに、何も実行していないとの返答を受ける。また、空きメモリ容量として、Ms(1)、Ms(2)を受け取る。
【0083】
処理PC決定部224は、各チャンネルのデータの処理を行う画像処理PC220を決定する。ここでは、いずれの画像処理PC220も、処理可能な最大チャンネル数が、全チャンネル数以上であるため、両者に均等に分配する。すなわち、1チャンネルから16チャンネルまでのデータの転送先PC220を画像処理PC220(1)とし、17チャンネルから32チャンネルのデータの転送先PC220を画像処理PC220(2)(自身)と割り当てる。そして、割り当てに応じて、各チャンネルからのデータを処理するDRF基板210に転送先PC220を通知する。
【0084】
また、処理PC決定部224は、後処理PC220を、上記手法で決定し、各画像処理PC220に通知する。
【0085】
DRF基板210では、転送先PC220の通知を受け取ると、A/D変換器164から受け取ったデータをメモリ上に配置し、QD検波およびリサンプリング等のディジタルフィルタ処理を実行する。そして、DRF基板210は、ディジタルフィルタ処理完了後、即座にネットワーク経由で、予め通知された転送先PC220へ向けて送信する。
【0086】
なお、計測中は、各DRF基板210から2台の画像処理PC220(1)および220(2)へ、計測終了まで連続的にデータが転送される。
【0087】
また、2台の画像処理PC220(1)および220(2)は、DRF基板210からデータを受信すると、ただちにk空間メモリ領域に格納し、1画像を生成するために必要なデータがk空間に充填できたタイミングでフーリエ変換(画像再構成処理)を実施する。最終的には各画像処理PC220内に、均等に配分されたチャンネル数分の画像データが保存される。
【0088】
図10に示すように、計測中も各画像処理PC220は、それぞれ、画像再構成処理を実行する。従って、この間にアイドル時間が発生することがない。
【0089】
全チャンネルの画像再構成を終えると、予め定められた後処理PC220に、他の画像処理PC220は、全画像を送信する。ここでは、後処理PC220は、画像処理PC220(2)と決定されているため、画像処理PC220(1)は、全再構成画像を画像処理PC220(2)へ送信する。
【0090】
これを受け、後処理PC220(ここでは、画像処理PC220(2))は、後処理(Scan1では、画像合成処理)を行う。
【0091】
Scan1後、Scan2の計測開始指示がなされている場合、処理PC決定部224は、Scan2の処理PC決定を行う。通常計測の画像合成処理は、この所定時間に完了するものとする。
【0092】
上述のようにScan2は、パラレルイメージングである。従って、計測中に感度マップを作成する必要がある。感度マップを作成するために必要なメモリ容量Moを算出する。ここでは、感度マップ作成は、画像処理PC220(2)で行うものとする。従って、画像処理PC220(2)の空きメモリ容量Ms(2)は、検出した空きメモリ容量Ms(2)から、感度マップ作成に必要なメモリ容量Moを除いたもの、すなわち、Ms(2)=検出したMs(2)−算出したMo、とする。
【0093】
まず、処理PC決定部224は、全画像処理PC220にメモリ229の空き容量、処理の実行状況を問い合わせる。上述のように、Scan1の画像合成処理は完了しているため、何らかの処理を行っている画像処理PC220はない。従って、全画像処理PC220の空きメモリ容量に応じて、処理PC決定処理を行い、チャンネル毎のデータの転送先PC220および後処理PC220を決定する。決定結果を各DRF基板210および各画像処理PC220にそれぞれ通知する。
【0094】
ここでは、1〜24チャンネルのデータの転送先PC220を画像処理PC220(1)、25〜32チャンネルのデータの転送先PC220を画像処理PC220(2)とする。そして、画像処理PC220(2)では、感度マップの生成も併行して行う。
【0095】
画像処理PC220(1)では、画像再構成処理を終えると、全画像を画像処理PC220(2)に送信する。画像処理PC220(2)では、後処理を行う。ここでは、全画像と、感度マップとを用い、展開処理を行う。
【0096】
Scan2後、Scan3の計測開始指示がなされている場合、処理PC決定部224は、Scan3の処理PC決定処理を行う。この時点では、展開処理は終了していないものとする。
【0097】
Scan3の処理PC決定を行うにあたり、処理PC決定部224は、各画像処理PC220に、メモリ229の空き容量、処理の実施状況を問い合わせる。各画像処理PC220は、自身の問い合わせを受けた時点でのメモリ229の空き容量、処理の実施状況を折り返し問い合わせ元の画像処理PC220に回答する。
【0098】
ここでは、画像処理PC220(1)は、メモリ229の空き容量としてMs(1)を返答する。一方、画像処理PC220(2)のメモリ空き容量検出部222は、その時点のメモリ229の空き容量Ms(2)を検出するとともに、処理状況検出部223は、Scan2のパラレルイメージング展開をまだ行っているため、後処理中であることを検出する。
【0099】
従って、処理PC決定部224は、非処理PC220は、画像処理PC220(1)のみと判断し、全てのチャンネルのデータの画像再構成処理を画像処理PC220(1)で行うよう決定する。そして、決定結果を、各DRF基板210に通知する。また、Scan3では、全チャンネルのデータの画像再構成処理を画像処理PC220(1)で行うため、合成処理(後処理)も画像処理PC220(1)で行うよう決定する。
【0100】
通知を受け、DRF基板210は、Scan3のデータをA/D変換器164から受け取る毎に、ディジタル信号処理を行い画像処理PC220(1)へ送信する。画像処理PC220(1)では、データを受け取る毎にk空間に配置し、1枚の画像を再構成可能なデータが充填されると、フーリエ変換を施し、画像を再構成する。さらに、Scan3では、後処理である画像合成処理も画像処理PC220(1)で行うため、画像処理PC220(1)では、そのまま、全画像の画像再構成処理を終えると画像合成処理を行う。
【0101】
このように、本実施形態では、何らかの処理を行っている画像処理PC220(2)には、画像再構成処理を割り当てない。従って、行っている処理により画像処理PC220(2)のメモリ229が占有され、DRF基板210からのデータの受信を中断することがない。
【0102】
以上説明したように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、複数の受信コイルを備えるマルチプルコイル161と、制御処理系170とを備え、前記制御処理系170は、前記各受信コイルで受信した信号をそれぞれ処理し、受信コイル毎のデータを出力する1以上のDRF基板210と、前記受信コイル毎のデータから画像を生成する複数の画像処理PC220と、を備え、前記1以上のDRF基板210と前記複数の画像処理PC220とは、互いにデータの送受信が可能なように接続され、前記画像処理PC220各々は、前記受信コイル毎のデータから画像を再構成する画像処理部221を備え、少なくとも1の前記画像処理PC220は、計測毎に、前記受信コイル毎のデータそれぞれについて、当該データから画像を再構成する画像処理PC220である転送先PC220を、前記各画像処理PC220の負荷分散が最適になるよう決定し、各受信コイル毎のデータを処理した前記DRF基板210に通知する処理PC決定部224をさらに備え、前記DRF基板210は、前記処理PC決定部224が決定した転送先PC220に向けて、前記受信コイル毎のデータを出力する。
【0103】
前記画像処理PC220各々は、自身が備えるメモリ229の空き容量を検出し、前記処理PC決定部224に通知するメモリ空き容量検出部222を備え、前記処理PC決定部224は、前記各画像処理PC220から通知された前記空き容量に基づいて、前記転送先PC220を決定する。また、前記画像処理PC220は、自身の画像処理PC220における処理状況を検出し、当該検出結果を前記処理PC決定部224に通知する処理状況検出部223をさらに備え、前記処理PC決定部224は、前記各画像処理PC220から通知された前記処理状況をさらに加味して前記転送先PC220を決定する。
【0104】
このため、本実施形態によれば、各画像処理PC220の処理状況、メモリ229の空き状況に応じて、計測毎に各チャンネルのデータの処理を行う画像処理PC220を決定する。画像処理PC220間で、処理状況、処理能力に関する情報を交換する機能を有するとともに、いずれのDRF基板210からも任意の画像処理PC220にデータを転送可能な構成を有することにより、計測毎に、自在かつ柔軟に最適な処理配分を決定することができる。従って、画像処理PC220のCPUの空き時間を低減できるとともに、メモリ不足の発生を低減することができる。
【0105】
このように、本実施形態によれば、制御処理系170において、制御処理系170が備えるハードウェア資源を効率よく活用でき、全体の処理時間を低減できる。従って、AD変換器164から出力後、最終画像生成までの再構成画像取得処理全体に対して、最適な負荷分散を実現することができる。
【0106】
なお、本実施形態では、全ての非処理PC220の空きメモリが、式(3)を満たす場合、全ての画像処理PC200に、均等にチャンネルを割り当てているが、処理チャンネルの配分は、これに限られない。たとえば、各画像処理PC220の空きメモリ容量比に応じて、チャンネル数を割り当てるよう構成してもよい。
【0107】
また、本実施形態では、非処理PC220のみに全チャンネルからのデータの処理を振り分けるよう構成しているが、これに限られない。何らかの処理を行っている画像処理PC220も含め、そのメモリ229の空き容量比に応じてチャンネル数を分配するよう構成してもよい。
【0108】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態について説明する。本実施形態では、DRF基板に大容量のストレージを設け、メモリ不足に伴うシステムハングアップを回避する。
【0109】
本実施形態のMRI装置100は、基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。本実施形態の制御処理系170の構成を
図11に示す。本実施形態の制御処理系170の構成も基本的には第一の実施形態と同様である。ただし、上述のように、本実施形態では、各DRF基板210が、さらに大容量ストレージ211を備える。従って、本実施形態では、この大容量ストレージ211にかかる機能が第一の実施形態と異なる。以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0110】
図12は、本実施形態の画像処理PCの機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態の画像処理PC220は、画像処理部221と、メモリ空き容量検出部222と、処理PC決定部224と、計測制御部225と、メモリ監視部226と、を備える。画像処理部221と、メモリ空き容量検出部222と、計測制御部225とは、第一の実施形態の同名の構成と同機能である。
【0111】
本実施形態においても、処理PC決定部224および計測制御部225は、それぞれ、1の画像処理PC220が備えていればよい。
図12では、一例として、制御処理系170が画像処理PC220を2つ備え、一方の画像処理PC220のみ処理PC決定部224および計測制御部225を備える場合を例示する。
【0112】
メモリ監視部226は、自画像処理PC220のメモリ229の空き容量の変化を監視し、不足および不足の解消を検出する。メモリ229の空き容量の不足およびその解消を検出すると、メモリ監視部226は、DRF基板210に通知する。通知は、ハブ240を経由してなされる。なお、通知相手のDRF基板210は、自身がデータの転送先となっているDRF基板210である。
【0113】
本実施形態の処理PC決定部224は、第一の実施形態同様、サブコイル(チャンネル)毎に、当該サブコイルで取得したデータに対して画像処理を行う画像処理PC220を決定するとともに、後処理を行う画像処理PCを決定する。ただし、本実施形態では、DRF基板210が大容量ストレージ211を備えること、画像処理PC220が処理状況検出部223を備えないこと、により、各チャンネルからのデータの処理を行う画像処理PC220の決定手法が異なる。
【0114】
本実施形態の処理PC決定部224による処理PC決定処理の流れを
図13に示す。本実施形態の処理PC決定処理は、基本的に、
図7に示す第一の実施形態の処理の流れと同様である。ただし、処理状況を問い合わせないため、ステップS1103において、メモリ空き容量のみ問い合わせる。また、ステップS1105は無い。
【0115】
また、本実施形態の転送先PC決定処理では、メモリ229の空き容量の回答のみを用い、各画像処理PC220に分配するチャンネル数を決定し、転送先PC220を決定する。例えば、第一の実施形態の
図8の処理において、全ての画像処理PC220を非処理PC220として、転送先PC220を決定する。
【0116】
DRF基板210は、上述のように、大容量ストレージ211を備える。本実施形態のDRF基板210は、第一の実施形態のDRF基板210の機能に加え、転送先PC220のメモリ監視部226から、メモリ229の空き容量の不足の通知を受け取ると、データの転送を中断する。また、不足解消の通知を受け取ると、データ転送を再開する。さらに、本実施形態のDRF基板210は、データの転送中、自身が備えるメモリの空き容量も監視し、不足すると、データの蓄積先を大容量ストレージ211に変更する。
【0117】
次に、本実施形態の制御処理系170による、複数計測実行時の、各ハードウェアによる処理を、具体例をあげて説明する。ここでは、1回目の計測(Scan1)および2回目の計測(Scan2)として、それぞれ、通常の計測を行う場合を例にあげて説明する。ただし、Scan1の計測は、画像サイズが大きく、スライス枚数も多く、フーリエ変換処理(画像再構成処理)に時間がかかるものとする。チャンネル数、DRF基板210数、画像処理PC220数は、第一の実施形態の例と同様とする。
【0118】
UI−PC230を介してScan1開始の指示を受け付けると、処理PC決定部224は、第一の実施形態同様、処理PC決定処理を行い、チャンネル毎のデータの転送先PC220および後処理PC220を決定する。そして、決定結果を各DRF基板210および各画像処理PC220にそれぞれ通知する。
【0119】
各DRF基板210は、通知を受けると、A/D変換器164から受信したデータに信号処理演算を行い、転送先PC220に向けて送出する。また、各画像処理PC220は、DRF基板210からデータを受信すると、k空間に配置し、フーリエ変換を施し、画像を再構成する(フーリエ変換を行う)。
【0120】
なお、本実施形態では、上述のように、Scan1の画像データのサイズが大きいため、フーリエ変換に時間がかかる。従って、Scan2の開始時に、いずれの画像処理PC220においても、画像再構成中とする。
【0121】
Scan2開始のタイミングになると、処理PC決定部224は、全画像処理PC220にメモリ229の空き状況を問い合わせ、チャンネル毎にデータを処理する画像処理PC220を決定する。
図14に示すように、Scan2開始のタイミングでは、各画像処理PC220は、フーリエ変換を行っているため、所定時間後にメモリ229が不足する。
【0122】
各画像処理PC220において、メモリ監視部226は、空きメモリ容量が不足したことを検出すると、当該画像処理PC220にデータを転送しているDRF基板210に、データ転送を停止するよう指示を出す。
【0123】
指示を受けたDRF基板210では、データの送信を停止し、まず、通常備えるメモリに取得したデータを格納する。そのメモリが満杯になる(DRF基板210においてメモリ不足が発生する)と、自身の大容量ストレージ211に取得したデータを一旦格納する。格納は、メモリ監視部226から、データ送信再開の指示を受け取るまで続ける。
【0124】
メモリ監視部226は、空きメモリ容量の監視を続ける。そして、空きメモリ容量が、フーリエ変換を行うために十分な量となったことを検出すると、当該画像処理PC220にデータを転送しているDRF基板210に、データ転送を再開するよう指示を出す。指示を受けたDRF基板210では、データの転送を再開する。
【0125】
なお、
図14では、各画像処理PC220の当初のメモリ空き容量を同量とし、それぞれ同数のチャンネルのデータを処理するよう分配されているため、各画像処理PC220のメモリ不足が発生するタイミングが同じとなっているが、これに限られない。
【0126】
以上説明したように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置100は、複数の受信コイルを備えるマルチプルコイル161と、制御処理系170とを備え、前記制御処理系170は、前記各受信コイルで受信した信号をそれぞれ処理し、受信コイル毎のデータを出力する1以上のDRF基板210と、前記受信コイル毎のデータから画像を生成する複数の画像処理PC220と、を備え、前記1以上のDRF基板210と前記複数の画像処理PC220とは、互いにデータの送受信が可能なように接続され、前記画像処理PC220各々は、前記受信コイル毎のデータから画像を再構成する画像処理部221を備え、少なくとも1の前記画像処理PC220は、計測毎に、前記受信コイル毎のデータそれぞれについて、当該データから画像を再構成する画像処理PC220である転送先PC220を、前記各画像処理PC220の負荷分散が最適になるよう決定し、各受信コイル毎のデータを処理した前記DRF基板210に通知する処理PC決定部224をさらに備え、前記DRF基板210は、前記処理PC決定部224が決定した転送先PC220に向けて、前記受信コイル毎のデータを出力する。
【0127】
前記画像処理PC220各々は、自身が備えるメモリ229の空き容量を検出し、前記処理PC決定部224に通知するメモリ空き容量検出部222を備え、前記処理PC決定部224は、前記各画像処理PC220から通知された前記空き容量に基づいて、前記転送先PC220を決定する。また、前記DRF基板210は、大容量ストレージ211をさらに備え、前記画像処理PC220は、自身が備えるメモリ229の空き容量の不足の発生および解消を検出し、前記受信コイル毎のデータの送信元の前記DRF基板210に通知するメモリ監視部226をさらに備え、前記DRF基板210は、前記メモリ監視部226からメモリ229の空き容量不足の通知を受け取ると、処理後のデータを前記大容量ストレージ211に蓄積し、前記メモリ監視部226からメモリ不足解消の通知を受け取ると、前記大容量ストレージ211に蓄積したデータから送信を再開する。
【0128】
このように、本実施形態によれば、各画像処理PC220のメモリ229の空き状況に応じて、計測毎に各チャンネルのデータの処理を行う画像処理PC220を決定する。画像処理PC220間で、空きメモリ容量に関する情報を交換する機能を有するとともに、いずれのDRF基板210からも任意の画像処理PC220にデータを転送可能な構成を有することにより、計測毎に、自在かつ柔軟に最適な処理配分を決定することができる。
【0129】
また、本実施形態によれば、それぞれのDRF基板210が大容量ストレージ211を備え、一時的にデータを格納することができるため、DRF基板210内のメモリ溢れを回避できる。すなわち、A/D変換器164からのデータが溢れてしまうことがない。
【0130】
従って、本実施形態によれば、画像処理PC220のCPUの空き時間を低減できるとともに、メモリ不足により処理の停滞を低減することができる。このように、本実施形態によれば、制御処理系170において、制御処理系170が備えるハードウェア資源を効率よく活用でき、全体の処理時間を低減できる。従って、AD変換器164から出力後、最終画像生成までの再構成画像取得処理全体に対して、最適な負荷分散を実現することができる。
【0131】
なお、この大容量ストレージ211は、単なるメモリ溢れを回避するためのバッファとしての機能以外に、DRF基板210内で一定量のデータを溜めてから補正処理を実行するといった目的に使用してもよい。機能によっては、画像処理PC220に転送する前に、DRF基板210内で、ある一定のデータ単位で補正処理などを実施することが好都合な場合もある。このような場合に、有効である。
【0132】
また、本実施形態においても、制御処理系170は、第一の実施形態同様、処理状況検出部223を備え、処理PC決定部224が、第一の実施形態と同様に処理PCを決定するよう構成してもよい。
【0133】
なお、上記各実施形態では、処理PC決定部224は、各画像処理PC220にメモリ229の空き容量を問い合わせ、その情報を得るよう構成しているが、これに限られない。例えば、問い合わせるのは、処理可能な最大チャンネル数Cmaxであってもよい。この場合、各画像処理PC220で、予め、計測で用いるk空間領域のメモリサイズの情報を取得し、検出したメモリ229の空き容量から、処理可能な最大チャンネル数を計算する。