特許第5845165号(P5845165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845165
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20151224BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   B29C45/16
   B29C45/26
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-259952(P2012-259952)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-104673(P2014-104673A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2014年7月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】312014937
【氏名又は名称】大垣プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(72)【発明者】
【氏名】日比 勝次
(72)【発明者】
【氏名】日比 隆太郎
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−033818(JP,A)
【文献】 特開2007−245647(JP,A)
【文献】 特表2012−528742(JP,A)
【文献】 特開昭58−131038(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0160831(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明または半透明の溶融した熱可塑性樹脂を第一金型に射出して透明または半透明の表面保護体を形成する一次成形工程と、
透明または半透明の第一印刷保護層、前記第一印刷保護層の片面に模様が印刷された印刷層、及び、前記印刷層を被覆した第二印刷保護層を有する印刷シート体を、前記表面保護体と重ね合わせ可能な形状に圧空成形または真空成形し、加飾体とする加飾体成形工程と、
前記表面保護体と前記第一印刷保護層とを当接させて前記表面保護体及び前記加飾体を重ね合わせた状態で第二金型にインサートし、前記加飾体の前記第二印刷保護層の側から溶融した熱可塑性樹脂を射出して前記加飾体と当接する裏面保護体を形成するとともに、前記表面保護体、前記加飾体、及び前記裏面保護体とを一体化する二次成形工程と
を具備することを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
溶融した熱可塑性樹脂を第一金型に射出成形して裏面保護体を形成する一次成形工程と、
透明または半透明の第一印刷保護層、前記第一印刷保護層の片面に模様が印刷された印刷層、及び、前記印刷層を被覆した第二印刷保護層を有する印刷シート体を、前記裏面保護体と重ね合わせ可能な形状に圧空成形または真空成形し、加飾体とする加飾体成形工程と、
前記裏面保護体と前記第二印刷保護層とを当接させて前記裏面保護体及び前記加飾体を重ね合わせた状態で第二金型にインサートし、前記加飾体の前記第一印刷保護層の側から透明または半透明の溶融した熱可塑性樹脂を射出成形して前記加飾体と当接する表面保護体を形成するとともに、前記表面保護体、前記加飾体、及び前記裏面保護体とを一体化する二次成形工程と
を具備することを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法に関するものであり、特に図柄や文字など模様で加飾された樹脂製容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
事業所や学校などに弁当を配達する給食業者では、軽量性に優れ、かつ配達時及び回収時に欠けや割れのおそれの少ない樹脂製容器を弁当箱としてを採用していることが多い。樹脂製容器は、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系等の熱可塑性樹脂を原料として使用し、加熱によって溶融した樹脂を成形用の金型に射出して製造されている。
【0003】
一般的な樹脂製容器は、透明または半透明の熱可塑性樹脂に着色剤を添加して着色されている。また、射出成形後の樹脂製容器の内表面や外表面に塗料を塗布して樹脂製容器を塗装することも行われている。さらに、本出願人によって、射出成形後の成形体を仕上げ用の金型にインサートし、成形体と異なる色の熱可塑性樹脂を用いて二回目の射出成形を行うことで、樹脂製容器の内表面及び外表面がそれぞれ異なる色からなる二色成形の弁当箱を製造する「合成樹脂製角型弁当容器の製造方法」に関する技術も提案されている(特許文献1参照)。これにより、美観に優れた樹脂製容器を製造することができる。
【0004】
近年では、模様の装飾を樹脂製容器の内表面や外表面に施すことも試みられている。例えば、熱可塑性樹脂を射出成形した成形体の表面にパット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの各種の印刷技術やフィルム転写技術などを用いて所望の模様を絵付けし、その後、仕上げ用の金型に当該成形体をインサートして成形体の印刷面を被覆するように、透明または半透明の熱可塑性樹脂を射出することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、高温の熱可塑性樹脂と印刷面とが直接触れることになり、熱可塑性樹脂の熱によって印刷面のインクが融けたり、滲んだりすることがあった。その結果、加飾された絵柄などが不鮮明となることがあった。
【0005】
さらに、印刷シート体が立体的に形成された絵付けトレーを用いた樹脂製容器の製造も行われている。具体的に説明すると、印刷シート体は、模様を印刷する下地となると共に印刷層の片面を被覆するシート状で透明または半透明の第一印刷保護層と、第一印刷保護層の上面に上記のパット印刷などの印刷技術を用いて印刷された印刷層と、印刷層を被覆した透明または半透明のフィルム状の第二印刷保護層とを具備する三層構造からなるものであり、係る印刷シート体を成形型に押当て、圧空成形または真空成形することによって凹凸を有する立体的形状の「絵付けトレー」が形成される。そして、この絵付けトレーを仕上げ用の金型にインサートし、溶融した熱可塑性樹脂を第一印刷保護層または第二印刷保護層側から射出することにより、絵付けトレーと熱可塑性樹脂からなる成形体とが一体化した樹脂製容器が製造される。これにより、印刷層の変更によって、多様な模様で加飾された多種の樹脂製容器を容易に製造することができる。
【0006】
しかしながら、第一印刷保護層及び第二印刷保護層は0.2mm〜0.3mm程度の非常に薄いフィルムであるため、衝撃に対する強度が十分ではない。特に、弁当用の容器として使用される場合、給食業者では自動洗浄機を用いて洗浄することが多く、樹脂製容器に対して強い衝撃が加わることがあった。ここで、自動洗浄機は、投入口から投入された樹脂製容器を所定方向に搬送しながら、高圧の洗浄液を樹脂製容器の内表面及び外表面に噴射することで付着した汚れを落とすものであり、自動洗浄機内の樹脂製容器の搬送に爪付きのコンベアが用いられることが多かった。そのため、コンベアの爪が樹脂製容器の内表面である印刷保護層(第一印刷保護層または第二印刷保護層)と接触し、キズを付けることがあった。さらに、樹脂製容器に向かって高圧で噴射される洗浄液により、印刷保護層のキズが大きく広がったり、印刷保護層の一部が欠落したりすることがあった。また、食事中に先端が尖ったフォークなどで印刷保護層を強く引っ掻くことで印刷保護層が破れ、その下側の印刷層が剥き出しとなり、印刷層と惣菜とが直接触れるおそれが高くなり、破れた印刷保護層の一部が口の中に入る可能性があった。そのため、衛生上の問題が生じることがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、加飾された模様が不鮮明となることがなく、印刷保護層が衝撃などによって破れることのない樹脂製容器の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の樹脂製容器の製造方法は、「透明または半透明の溶融した熱可塑性樹脂を第一金型に射出して透明または半透明の表面保護体を形成する一次成形工程と、透明または半透明の第一印刷保護層、及び、模様が印刷された印刷層を前記第一印刷保護層と共に両側から被覆している第二印刷保護層を有する印刷シート体を、前記表面保護体と重ね合わせ可能な形状に圧空成形または真空成形し、加飾体とする加飾体成形工程と、前記表面保護体と前記第一印刷保護層とを当接させて前記表面保護体及び前記加飾体を重ね合わせた状態で第二金型にインサートし、前記加飾体の前記第二印刷保護層の側から溶融した熱可塑性樹脂を射出して前記加飾体と当接する裏面保護体を形成するとともに、前記表面保護体、前記加飾体、及び前記裏面保護体とを一体化する二次成形工程と」を具備するものである。
【0009】
熱可塑性樹脂は、高温で加熱することによって溶融し、流動性を有する液体に変化するものであり、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂が主に使用される。また、第一金型は、表面保護体を成形加工するためのものであり、オス型及びメス型から構成され、それぞれの型内面に表面保護体の形状に合わせて型彫りされたキャビティを備えている。さらに、オス型及びメス型を当接させて型閉めした状態でキャビティ内に熱可塑性樹脂を射出するために、射出装置から射出された熱可塑性樹脂を当該キャビティまで導くための流路となるスプール、ランナ、及びゲートなどの各構成を第一金型はそれぞれ備えている。これにより、射出装置から射出された熱可塑性樹脂は、キャビティに充填され、この状態で冷却されて凝固することで一次成形体が形成される。
【0010】
一方、加飾体とは、上述の「絵付けトレー」に相当するものであり、透明または半透明の第一印刷保護層、及び、模様が印刷された印刷層を前記第一印刷保護層と共に両側から被覆している第二印刷保護層を有する印刷シート体を、圧空成形または真空成形することにより、表面保護体の下面と重ね合わせ可能な形状に成形したものである。ここで、印刷層は、第一印刷保護層及び第二印刷保護層の一方を下地面として、スクリーン印刷やインクジェット印刷などによって単色または多色のインクで模様を施した層である。印刷シート体は非常に薄いものであり、係る印刷シート体を圧空成形用の成形型に加熱しながらエアーで押付けることにより、成形型の型形状に沿って立体的に変形した加飾体を形成することができる。或いは、成形型に設けられた吸引口から印刷シート体及び成形型の間の空気を吸引する真空成形により、加飾体を形成するものであっても構わない。さらに、吸引しながら圧空成形を行うものであってもよい。なお、印刷シート体に設けられた印刷層は、圧空成形または真空成形後の変形を考慮した形状の模様が印刷される。なお、第一印刷保護層及び第二印刷保護層のうち、表面保護体と当接させる第一印刷保護層は透明または半透明とする必要があるが、第二印刷保護層は透明、半透明、及び不透明の何れであっても良い。
【0011】
また、裏面保護体は、表面保護体に加飾体の第一印刷保護層を当接させて重ね合わせてインサートされた第二金型を用いて形成される。なお、第二金型の構成は、既に説明した第一金型と略同一であり、第一金型より大きいサイズのキャビティを有している。これにより、表面保護体及び加飾体をキャビティにインサートした後、さらに当該キャビティの隙間に熱可塑性樹脂を射出することができる。
【0012】
したがって、本発明の樹脂製容器の製造方法によれば、第一金型に透明または半透明の溶融した熱可塑性樹脂を射出し、表面保護体を形成する。また、一次成形工程とは別に、加飾体成形工程によって印刷シート体から、表面保護体と重ね合わせ可能な形状の加飾体を形成する。その後、表面保護体に加飾体の第一印刷保護層を当接させて重ね合わせ、第二金型にインサートした状態で第二印刷保護層の側から熱可塑性樹脂を射出成形する。これにより、加飾体と当接した裏面保護体が形成され、加飾体の第一印刷保護層の上に透明または半透明の表面保護体が形成され、かつ加飾体の下に裏面保護体が形成された三層構造の樹脂製容器が製造される。また、表面保護体及び裏面保護体を射出成形しているため、加飾体よりも厚く形成することができる。その結果、表面保護体及び裏面保護体によって印刷シート体が保護されることにより、印刷層を保護している第一印刷保護層及び第二印刷保護層が衝撃などによって破れることのない樹脂製容器となる。なお、高温の熱可塑性樹脂が加飾体に向けて射出されるものの、第二印刷保護層の存在により印刷層と熱可塑性樹脂とが直接触れることがなく、印刷層にインクの滲みなどの不具合が生じることがない。
【0013】
一方、本発明の樹脂製容器の製造方法は、「溶融した熱可塑性樹脂を第一金型に射出成形して裏面保護体を形成する一次成形工程と、透明または半透明の第一印刷保護層、及び、模様が印刷された印刷層を前記第一印刷保護層と共に両側から被覆している第二印刷保護層を有する印刷シート体を、前記裏面保護体と重ね合わせ可能な形状に圧空成形または真空成形し、加飾体とする加飾体成形工程と、前記裏面保護体と前記第二印刷保護層とを当接させて前記裏面保護体及び前記加飾体を重ね合わせた状態で第二金型にインサートし、前記加飾体の前記第一印刷保護層の側から透明または半透明の溶融した熱可塑性樹脂を射出成形して前記加飾体と当接する表面保護体を形成するとともに、前記表面保護体、前記加飾体、及び前記裏面保護体とを一体化する二次成形工程と」を具備している。
【0014】
ここで、既に述べた樹脂製容器の製造方法において加飾体などの同一構成については詳細な説明を省略するものとする。
【0015】
したがって、本発明の樹脂製容器の製造方法によれば、第一金型に熱可塑性樹脂を射出し、裏面保護体を形成する。また、一次成形工程とは別に、加飾体成形工程によって印刷シート体から、裏面保護体と重ね合わせ可能な形状の加飾体を形成する。その後、裏面保護体に加飾体の第二印刷保護層を当接させて重ね合わせ、第二金型にインサートした状態で第一印刷保護層の側から透明または半透明の熱可塑性樹脂を射出成形する。これにより、加飾体と当接した表面保護体が形成され、加飾体の第一印刷保護層の上に透明または半透明の表面保護体が形成され、かつ加飾体の下に裏面保護体が形成された三層構造の樹脂製容器が製造される。その結果、表面保護体及び裏面保護体によって印刷シート体が保護されることにより、印刷層を保護している第一印刷保護層及び第二印刷保護層が衝撃などによって破れることのない樹脂製容器となる。なお、高温の熱可塑性樹脂が加飾体に向けて射出されるものの、第一印刷保護層の存在により印刷層と熱可塑性樹脂とが直接触れることがなく、印刷層のインクの滲みなどの不具合が生じることがない。
【0016】
一方、本発明の樹脂製容器の製造方法により製造される樹脂製容器は、「透明または半透明の第一印刷保護層、及び、模様が印刷された印刷層を前記第一印刷保護層と共に両側から被覆している第二印刷保護層を有する印刷シート体によって形成された加飾体と、前記第一印刷保護層の上に積層され、透明または半透明の熱可塑性樹脂によって形成された透明または半透明の表面保護体と、前記第二印刷保護層の下に積層されるとともに、前記加飾体及び前記表面保護体の辺縁と当接し一体化した熱可塑性樹脂によって形成された裏面保護体と」を具備している。
【0017】
本構成の樹脂製容器は、上記の製造方法の何れによっても製造されるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果によれば、加飾された模様が不鮮明となることがなく、印刷保護層が衝撃などによって破れることのない樹脂製容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の樹脂製容器の製造方法により製造される樹脂製容器の構成を示す斜視図である。
図2図1樹脂製容器の構成を示す分解斜視図である。
図3図1樹脂製容器の構成を示す断面図である。
図4】本実施形態の樹脂製容器の製造方法の流れを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態である樹脂製容器の製造方法1(以下、単に「製造方法1」と称す)、及び製造方法1により製造される樹脂製容器2について、図1乃至図4に基づいて説明する。ここでは、本実施形態の製造方法1によって製造される樹脂製容器2として、事業所や学校などに配達される弁当箱として使用されるものを例示する。樹脂製容器2は、容器上部2aの外形が略矩形状を呈し、惣菜などを種類毎に分けて収容可能なように、それぞれ異なる形状の複数の凹部3が容器上部2aから下方に窪んだ立体的な形状を呈している。これにより、複数の凹部3によって区画された収容空間4に惣菜などを分けて収容することができる。
【0021】
脂製容器2は、それぞれ凹部3の形状の凹凸が形成された、加飾体5と、加飾体5の上面5aに積層されたポリプロピレン樹脂から成形された透明の一次成形体6と、加飾体5の下面5bに積層されたポリプロピレン樹脂から成形された二次成形体7とを具備している。ここで、樹脂製容器2の容器上部2aの辺縁8は、二次成形体7によって構成されている。なお、一次成形体6が本発明の一次成形工程S1によって形成される表面保護体に相当し、二次成形体7が本発明の二次成形工程S3によって形成される裏面保護体に相当する。
【0022】
さらに詳細に説明すると、加飾体5は、シート状のポリプロピレン樹脂から形成された第二印刷保護層9と、第二印刷保護層9の上面9aにスクリーン印刷技術を用いて多色のインクによって印刷された図柄や文字などの模様からなる印刷層10と、印刷層10の上面10aの上に積層された透明のフィルム状のポリプロピレン樹脂からなり、第二印刷保護層9と共に印刷層10を被覆して保護する第一印刷保護層11と、を具備する三層構造の平板状の印刷シート体12を真空成形することによって立体的形状に形成されている。加飾体5を構成する印刷シート体12は、約0.3mmの厚さの第二印刷保護層9と、約0.2mmの厚さの第一印刷保護層11と、第二印刷保護層9及び第一印刷保護層11の間に約0.1mm以下の層厚で形成された印刷層10とを有する、全体で約0.5mm〜0.6mm程度の薄さのシートである。ここで、第二印刷保護層9は、その上面9aに印刷される印刷層10の下地となると共に、印刷層10を保護する。また、第一印刷保護層11は、透明のポリプロピレン樹脂からなるため、第一印刷保護層11を通して、その下方の印刷層10の模様を見ることができる。なお、図1及び図2において、加飾体5の印刷層10の模様の図示は省略している。
【0023】
一方、一次成形体6及び二次成形体7は、熱可塑性のポリプロピレン樹脂をそれぞれの金型に射出成形することによって形成されたものである。そのため、一次成形体6及び二次成形体7はある程度の衝撃に耐え得る強度を有している。なお、一次成形体6は透明のポリプロピレン樹脂18が使用され、二次成形体7は、透明のポリプロピレン樹脂18に塗料を混ぜて着色されたポリプロピレン樹脂25が本実施形態では使用されている。一次成形体6、加飾体5、及び二次成形体7からなる三層構造の樹脂製容器2により、加飾体5の印刷層10に描かれた模様は、その上方の第一印刷保護層11及び第一印刷保護層11の上面11aに積層された透明な一次成形体6によって保護される。これにより、樹脂製容器2の一次成形体6の側から強い衝撃が加わっても、射出成形によって成形されてある程度の厚みを有し、フィルム状の第一印刷保護層11よりも強度が高い一次成形体6によって当該衝撃を緩和することができ、第一印刷保護層11及びその下方の印刷層10を保護することができる。その結果、第一印刷保護層11にキズが付いたり、破れたりするなどの不具合を生じることがない。そのため、自動洗浄機による洗浄を安心して行うことができる。さらに、第一印刷保護層11及び一次成形体6がいずれも透明であるため、第一印刷保護層11及び一次成形体6を通して下方の印刷層10の模様を見ることができ、装飾性を損なうことがない。
【0024】
また、加飾体5の下面5bに積層された二次成形体7は、射出成形によりある程度の厚みを有して形成された強度が高い射出成形体である。そのため、加飾体5の第二印刷保護層9の側から加わる衝撃を緩和することができる。これにより、一次成形体6及び二次成形体7によって、加飾体5の上面5a及び下面5bのいずれの方向から加わる衝撃にも耐えることができ、加飾体5、特に印刷層10を衝撃から保護することができる。
【0025】
次に、上記樹脂製容器2を製造するための本実施形態の製造方法1の流れについて、主に図4に基づいて説明する。始めに、分割可能に形成された第一金型14の第一オス型15及び第一メス型16の型面同士を当接させて“型閉め状態”とし、第一金型14の内部に形成された第一キャビティ17に射出装置(図示しない)を用いて、高温で加熱して溶融させた透明のポリプロピレン樹脂18を射出し、充填する(図4(a)参照):一次成形工程S1)。ここで、第一オス型15及び第一メス型16のそれぞれの型内面には、成形加工する一次成形体6の形状に合わせて型彫りがされており、これにより第一金型14の内部に第一キャビティ17の空間が形成されている。射出装置から射出された透明のポリプロピレン樹脂18は、高温で溶融しているために流動性に富み、ランナ及びゲートと連通した第一キャビティ17に到達し、第一キャビティ17にポリプロピレン樹脂18が充填される。第一キャビティ17に充填された状態から所定時間が経過することにより、射出直後は高温であったポリプロピレン樹脂18の温度が徐々に低下し、第一キャビティ17の形状で凝固する。これにより、透明の一次成形体6が形成される。その後、第一金型14の第一オス型15及び第一メス型16を“型開き状態”にすることで、形成された一次成形体6を第一金型14から型出する。これにより、透明のポリプロピレン樹脂18からなる一次成形体6の形成が完了する。
【0026】
一方、上記の一次成形工程S1とは別工程で、平板状の印刷シート体12から加飾体5を成形する。具体的に説明すると、平板状の印刷シート体12の第一印刷保護層11側を圧空成形用の成形型13に加熱しながら近接させ、成形型13の型面に開口した吸引孔(図示しない)から印刷シート体12及び成形型13の間の空気を吸引する(図4(b)参照:加飾体成形工程S2)。これにより、薄い平板状の印刷シート体12は、成形型13の型形状に沿って変形する。ここで、成形型13の型形状は、前述の第一金型14の第一メス型16の型形状と対応するように形成されている。これにより、一次成形体6と加飾体5とを重ね合わせることが可能となる。なお、印刷シート体12の第二印刷保護層9に印刷された印刷層10の模様は、加飾体5の成形後に整った絵柄などになるように、圧空成形の際の変形量を予め考慮した模様が印刷されている。
【0027】
その後、一次成形体6の下面6bと加飾体5の上面5a(第一印刷保護層11の上面11a)とを当接させて一次成形体6及び加飾体5を重ね合わせた状態で第二金型19の第二キャビティ20にインサートする(図4(c)参照)。ここで、第二金型19は、前述の第一金型14と同様に、分割可能に形成された第二オス型21及び第二メス型22から構成され、第二キャビティ20は完成品となる樹脂製容器2の外形に一致するように形成されている。さらに詳細に説明すると、重ね合わされた一次成形体6及び加飾体5は、一次成形体6の上面6aを第二金型19の第二オス型21に当接させ、加飾体5の第二印刷保護層9及び第二メス型22の型面との間、及び、一次成形体6及び加飾体5の辺縁23の間に隙間24が形成されるように、第二キャビティ20の中に収容されている。係る状態で、射出装置(図示しない)を用いて、着色されたポリプロピレン樹脂25を加飾体5の第二印刷保護層9の側から第二キャビティ20に射出する(図4(d)参照:二次成形工程S3)。これにより、高温で加熱された溶融状態の着色されたポリプロピレン樹脂25が第二キャビティ20に充填される。このとき、第二キャビティ20には予め一次成形体6及び加飾体5がインサートされているため、ポリプロピレン樹脂25は、上記の隙間24に充填される。加飾体5の印刷層10は、第二印刷保護層9の存在により、第二キャビティ20に射出された高温のポリプロピレン樹脂25と直接触れることがない。そのため、印刷層10のインクが熱によって融けたり、滲んだりすることがない。すなわち、二次成形工程S3において印刷層10が滲むなどの不具合を生じることがない。
【0028】
その後、射出された高温のポリプロピレン樹脂25を第二キャビティ20内で凝固させることにより、二次成形体7が形成される。この二次成形体7は、加飾体5の第二印刷保護層9の下面(加飾体5の下面5bに相当)に当接し、さらに一次成形体6及び加飾体5それぞれの辺縁23を被覆している。その後、第二金型19の第二オス型21及び第二メス型22を型開きする。これにより、一次成形体6、加飾体5、及び二次成形体7が一体化した樹脂製容器2を形成が完了する(図4(e)参照)。すなわち、本実施形態の製造方法1によれば、透明の一次成形体6を形成し、一次成形体6と別工程で加飾体5を形成し、一次成形体6及び加飾体5を重ね合わせて第二金型19にインサートして加飾体5の側から新たにポリプロピレン樹脂25を射出することにより二次成形体7を形成し、一次成形体6、加飾体5、及び二次成形体7の三層が一体化された三層構造の樹脂製容器2を製造することができる。なお、加飾体5自体は第二印刷保護層9、印刷層10、及び第一印刷保護層11の三層から構成されているため、樹脂製容器2は厳密には五層から構成されている。
【0029】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0030】
例えば、本実施形態の製造方法1において、透明なポリプロピレン樹脂18を用いて一次成形体6を形成し、さらに着色されたポリプロピレン樹脂25を用いて二次成形体7を形成するものを示したが、これに限定されるものではなく、一次成形体を着色したポリプロピレン樹脂から形成し、二次成形体を透明のポリプロピレン樹脂から形成したものであっても構わない。この場合、加飾体の第二印刷保護層を一次成形体と当接させた状態で重ね合わせ、加飾体の第一印刷保護層の側から透明のポリプロピレン樹脂を射出成形する必要がある。この場合、第一印刷保護層の存在によって、印刷層が高温のポリプロピレン樹脂と直接触れることがなく、印刷層のインクが滲むなどの問題を生じることがない。また、樹脂製容器2として、弁当箱を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、樹脂製容器2の上に被せるための樹脂製の蓋、またはその他の用途の樹脂製容器を製造するものであっても構わない。また、樹脂製容器2の二次成形体7を着色されたポリプロピレン樹脂を用いて形成したものを示したが、これに限定されるものではなく、一次成形体と二次成形体との双方を透明または半透明としたものであっても構わない。また、加飾体5として、第二印刷保護層9の一方の面に印刷層10及び第一印刷保護層11を有する印刷シート体12を用いるものを示したが、これに限定されるものではなく、第二印刷保護層の両面に印刷層及び第一印刷保護層を有する両面加飾の加飾体を用いるものであってもよい。
【0031】
さらに、本実施形態の製造方法1において、熱可塑性樹脂として、一次成形体6及び二次成形体7のいずれにもポリプロピレン樹脂を用いるものを示したがこれに限定されるものではなく、ポリスチレン樹脂などのその他の射出成形可能な熱可塑性樹脂を用いるものであっても構わない。また、一次成形体及び二次成形体で熱可塑性樹脂の種類が異なるものであっても構わない。さらに、製造方法1において、加飾体5を形成するために、吸引しながら行う圧空成形技術を用いたものを示したが、これに限定されるものではなく、加熱した印刷シート体12を成形型13に加熱しながら押付ける、通常の圧空成形によって形成するものであっても構わない。なお、一次成形体5の成形後、第一金型14から型出しを行い、第二金型19を用いて二次成形体7の成形を行うものを示したが、これに限定されるものではなく、第一金型14の第一オス型15または第一メス型16の一方を第二金型の一部として用いるものであっても構わない。例えば、一次成形体5の成形後、第一オス型15及び第一メス型16を型開きし、第一オス型15に一次成形体6を残した状態で、加飾体5と重ね合わせ、さらに第一オス型15と型閉め可能な第二メス型と当接させて第二キャビティを形成し、二次成形体7を形成するものであってもよい。これにより、第一オス型15を一次成形工程及び二次成形工程に兼用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 製造方法(樹脂製容器の製造方法)
2 樹脂製容器
5 加飾体
5a 上面
5b 下面
6 一次成形体(表面保護体)
6a 上面
6b 下面
7 二次成形体(裏面保護体)
9 第二印刷保護層
9a 上面
10 印刷層
10a 上面
11 第一印刷保護層
11a 上面
12 印刷シート体
14 第一金型
18、25 ポリプロピレン樹脂(熱可塑性樹脂)
19 第二金型
S1 一次成形工程
S2 加飾体成形工程
S3 二次成形工程
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特公昭53−8337
【特許文献2】特開昭63−254016
図1
図2
図3
図4