【文献】
藤原 恭司,低い周波数領域の吸音技術 (<小特集>音響材料の理論解析の動向とその応用),日本音響学会誌,日本,一般社団法人日本音響学会,1997年12月25日,54(1),p59-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面が長さ方向を有し、前記凹みが、前記表面で前記長さ方向において互いに平行であり、前記表面が、前記音源に対して(with respect to)、前記音源からの音波と前記長さ方向が前記深さと平行な平面で鋭角(acute angle)を形成するような向きにされる(oriented)、請求項2または3に記載の反射体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、米国特許第5764782号の反射体および音響発生方法を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、聴覚の生理学と、拡散波を生成することによって聴取体験が向上することを理解していることを前提とする。
【0009】
拡散波は、小さい波にたとえられる時間−振幅形状を特徴とする信号解析機能である。拡散波は、多数の信号解析結果を得るために使用することができる。拡散波を使用してデータを分析すると、データの変化するエッジまたは点が見つかるであろう。拡散波のスケールは、スペクトル成分(spectrum content)およびその他の性質における異なるプリファレンスに影響を及ぼすように変更することができる。同じデータは、異なるスケールの拡散波を用いて解析することができ、同じデータのエッジまたは変化が発見されるであろう。したがって、スケーリングされた拡散波の一群を使用してデータセットを解析することができ、すべてのスケールの結果で変化が示されるであろう。この変化は、異なるスケールの結果に対して関連づけることができ、信頼度の高い解釈がなされるデータを取得することができる。
【0010】
拡散波の性質は、ゼロに等しい自己相関結果を有することとすることが可能である。これは、拡散波の応答のどの部分にも、その拡散波の応答の他の任意の部分との類似点がないことを意味する。拡散波の応答は、時間に基づいたパターンのないように経時的に変化する。エネルギーが伝達できる場合、またはエネルギーがゼロ自己相関拡散波形状(zero auto−correlation diffuse wave shape)をとらされる場合、拡散波は、平坦なスペクトルを有する。拡散波が任意の自己相関を有する場合、拡散波は周波数依存スペクトルを有する。
【0011】
本発明は、ゼロ自己相関数列機能(zero−auto correlation number sequence function)は、適切に使用すると、エネルギーの空間的伝達を制御するために使用可能な拡散波機能を生じるという発見に部分的に基づく。この方法に基づく空間的伝達は、ラウドスピーカで使用されるとき、無指向性空間パターンを示すことができる。ゼロ自己相関を有する信号は、無指向性パターンで送信すると、完全に拡散されるエネルギーであると説明することができる。このような信号は位相を持たないので、一意である。したがって、エネルギーは、空間領域において位相が一貫している。
【0012】
これらの拡散波に基づいた機能を、エネルギーの空間的伝達において、1つのスケールで、または最小スケールエンベロープと最大スケールエンベロープの間の無数のスケールで使用することが可能である。これらの機能は、空間環境内に含まれる電力を変調するように伝達の強度を信号により制御する理解できる情報の拡散キャリアとして使用することができる。空間環境は、拡散プロセスにより平衡状態にある定常状態の送信信号成分を含む。その信号に含まれる変化は、空間環境に放射される拡散波機能のあらゆるスケールで容易に明らかになる。これらの変化が、時間に基づく情報を伝える場合、空間環境内のエネルギーのあらゆる空間的経路は、音源信号の容易に明らかな同じ時間変化情報を伝える。この拡散時間変化情報は、脳での信号の解釈を高める音源信号の三次元空間像を再現する。
【0013】
本発明は、音響構成を提供する。この音響構成は、一実施形態では、音を発生する音源からの波を反射するために使用できる、米国特許第5764782号に開示されているタイプの反射体である。この反射体は、音源に面する表面を備える。この表面は、表面の長さ方向に沿って走行する複数(N)の凹み(ここでNは奇素数である)を有する。各凹みは、平方剰余系列(QRS)によって決定される深さD
n=(n
2 rem N)*単位深さ(0≦n≦N−1)を有する。QRSを適切に使用することによって、ゼロ自己相関を有する拡散波の応答が生成される。したがって、音源から反射体に向けられ、反射体から反射される音響エネルギーは、拡散波の応答を呈する。この音響エネルギーは、反射体からのあらゆる角度方向において実質的に等しい音響エネルギーを有し、任意の方向におけるエネルギーは拡散し、1つの反射体からの、または複数の反射体間での三次元空間像(three dimensional spatial image)の作製を可能にする拡散波変換で符号化される。各凹みの深さは、音源からの球面波間の差異および反射体の表面から音源までの距離によって補正される。
【0014】
また、各凹みの深さは、音源からの球面波間の差異、音源が反射面に入射する角度、および反射体の入射面から音源までの有効な修正された距離によっても補正される。
【0015】
また、各凹みの深さは、音源からの球面波間の差異、音源が反射面に入射する角度、および反射体の各個々の凹み面と音源との境界面の周囲の空間環境の流体における局所的なインピーダンス変化による角度の歪みの補正によっても補正されうる。
【0016】
凹みのそれぞれは、平方剰余系列によって決定される深さD
n=(n
2 rem N)*単位深さを有し、放射源は、凹みのそれぞれの端に位置決めまたは結合される。
【0017】
別の態様では、本発明は、適切なスペクトル反応の音響ドライバがツイータの音響中心と時間を調節して(in time alignment)設置され位相をずらして配線されたスピーカとツイータとを有するラウドスピーカシステムであって、ツイータが、音響ドライバからのエネルギーがツイータの直接放射エネルギーを位相キャンセルするために使用されるように平方剰余系列に配列された凹みを有する反射体と関連づけられる、ラウドスピーカシステムを提供する。好ましくは、このシステムは、時間を調節して位置決めされたウーファとツイータとを有するラウドスピーカシステムであって、ツイータは、平方剰余系列に配列された凹みを有する反射体のための音源ドライバとして作用する。
【0018】
好ましくは、この構成で使用されるスピーカは、キャビネットのパネルが脆弱なラインまたは強度の増したライン(line of weakness or increased strength)をキャビネットパネルに組み込んだキャビネットに嵌挿され、脆弱なラインまたは強度のあるラインは、ランダムな素数比をなして離隔され、反共振の節点を生成する。
【0019】
別の態様では、本発明は、反射体を使用せずに拡散波を生じる手段を提供する。
【0020】
この態様では、本発明は、
N×1またはN×Nマトリックスに配置された複数(NまたはN
2)(ここでNは奇素数である)のトランスデューサを有する表面を備え、
各トランスデューサが増幅器および信号時間遅延手段によって駆動され、各信号時間遅延手段が関係
T
i.j=[(i
2+j
2) rem N]*単位遅延
によって決定されるトランスデューサシステムを提供する。
【0021】
本発明は、その表面に一連の凹みを組み込んで音波を数列に基づく時間差を有する一連の音波に変換する、音響学的無給電反射体も提供する。
【0022】
電子的バージョンでは、本発明は、信号を数列に基づく時間差を有する一連の信号に変換する、電子信号変換システムを提供する。
【0023】
好ましくは、反射体または電子システムで使用される数列は、平方剰余系列、バーカーコード、ゼロ自己相関系列、または相補系列から選択される。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、スピーカのN×N配列を有し、ここでNは奇素数であり、信号がこの信号を中央とする一連の信号に変換される電子信号変換システムによって駆動されるように構成されたオーディオスピーカシステムであって、少なくとも1つの信号はこの信号に先行するように時間を定められ、少なくとも1つの信号はこの信号の次にくるように時間を定められ、この信号は、N×N配列内の前記中央スピーカに送信されるように構成される、オーディオスピーカシステムを提供する。信号の位置は、配列内で移動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、反射体10を示す。本発明による好ましい一実施形態では、ラウドスピーカなどの音源12からの音響エネルギーは、反射体10に向けられ、反射体10の平坦な表面14に形成された一連の凹み16から聴取環境に長さ方向Lだけ反射される。凹み16のそれぞれは、長さLに沿って走行し、長さLと平行である。各凹み16の深さは、平方剰余系列によって決定される。反射される音響エネルギーは、放射方向からプラスまたはマイナス1/2Pi(90°)角度方向の範囲内に含まれる、反射体10からのすべての角度方向において、実質的に等しい音響エネルギーを有する。
【0027】
図2を参照すると、
図1に示された20の線3−3に沿った反射体10の横断面図が示されている。反射体10は、変化する深さD
0、D
1、…、D
N−1を持つN個の凹み16を平坦な表面14に有する。
図2に示される反射体10は、7個のこのような凹み16a〜16gを平坦な表面14に有する。凹み16の深さは、数学的数列を適用して、放射される音響エネルギーの隣接する要素間の位相関係をあらかじめ定めることによって決められる。すなわち、凹み16の深さを変化させることによって、位相差を補正するように要素が調整される。
【0028】
ゼロに等しい自己相関を持つ拡散波の応答を生成できるこのような1つの数学的数列は、平方剰余系列(QRS)として知られる。QRSは、任意の奇素数N(たとえば、1、3、5、7、11、13、17、19、23、29、…)に等しい要素の個数(total element length)を持つ数列であり、Nは、表面14における凹み16の数である。個々の要素の解は、関係
S
n=n
2 rem N(すなわち、n
2からNの倍数を減算したときの結果である最小非負剰余)
によって決定される。
【0029】
表1は、7個の要素を有する系列(すなわちN=7)に対して導出されたQRSの解を示す。
【0031】
系列の任意の1つの区間(N個の隣接する要素)を使用して拡散波機能を実現できることは、QRSの性質である。したがって、系列は、任意の数nまたはその分数すなわち周期的幅におけるNw(ここで、wは凹みの幅である)が系列の1つの完全な周期の解である限り、その数で始まることができる。以下の表2は、n=4で始まり、n=10を含む、すなわちN=7個の要素である。
【0033】
以下の表3は、n=2で始まり、n=6を含む、すなわちN=5個の要素である。解4、1、0、1、4はまた、表2の2、4、1、0、1、4、2という解の中に入れ子構造となって現れる。小さな素数の解が大きな素数の解の中に入れ子構造となって現れることは、QRSの性質である。
【0035】
任意のNの1組の解S
nが用途に適さない場合、定数を各解S
nに加算して式S
n =(S
n+ a) rem N(ここでaは定数である)に適用することができる。
【0036】
したがって、N=7の固有解(natural solution)が0、1、4、2、2、4、1である場合、たとえばa=3を各S
nに加算して、解を3、4、0、5、5、0、4に変換することができる。
【0037】
図2の反射体10は複数の凹み16を有し、凹み16の深さは、QRSの解に何らかの単位深さを乗じたものである。すなわち、凹み0(16a)の深さは0であり、凹み0(16a)にすぐ隣接する凹み1(16b)の深さは1*単位深さであり、凹み1(16b)のにすぐ隣接する凹み2(16c)の深さは4×単位深さであり、以下同様である。音源12から放射される音響エネルギーの要素は、凹み16を有する表面14から反射されるとき、遠距離場空間内で混合し、拡散および拡散波を符号化した音場を示すことが望ましい。QRSの「完全な」解は、名目上は放射方向からプラスおよびマイナスPI/2角度方向であるが実際にはこれより広い範囲内に含まれる、反射体10からのすべての角度方向における等しい音響エネルギーをもたらす。
【0038】
焦束型(focused)反射体の好ましい実際の設計では、反射体の面から38mmの距離に音響中心を設ける。凹みの幅は、8.15mmとなるように選択される。したがって、反射体の全幅は57.05mmである。
【0039】
設計周波数が1800hzとなるように選択されたときの古典的なQRDの解および修正後の焦束型QRDの解が表4に示されている。
【0041】
他の適切な数列は、バーカーコード、ゼロ自己相関系列、または相補系列などの信号処理で使用される数列である。
【0042】
バーカーコードは、+1および−1からなるN個の値の系列であり、
すべての1≦v<Nに対して
【0044】
となるような
a
j(j=1,2,…,N)
である。
【0045】
自己相関とは、信号とその信号自身の相互相関のことである。簡単に説明すると、自己相関とは、測定値間の時間間隔の関数としての測定値間の類似性(similarity)である。自己相関は、ノイズに埋め込まれた周期的信号が存在することなどの繰り返しパターンを見つけるための、またはその高調波振動数によって示される信号において欠落した基本周波数を識別するための数学的道具である。自己相関は、関数または時間領域信号などの一連の値を解析するための信号処理で使用されることが多い。
【0046】
相補系列(CS)は、応用数学から派生したものであり、位相のずれた非周期的自己相関係数の合計がゼロになるという有用な性質を有する系列のペアである。2値からなる相補系列は、Marcel J.E.Golayによって1949年に初めて発表された。1961〜1962年に、Golayは、長さ2
Nの系列を構築するためのいくつかの方法を提示し、長さ10および26の相補系列の例を示した。1974年に、R.J.Turynは、長さmの系列と長さnの系列から長さmnの系列を構築するための方法を提示し、この方法は、形式2
N10
K26
Mの任意の長さの系列の構築を可能にした。
【0047】
2つの主な設計変数である単位深さおよび要素幅は、反射体10が有効である有用周波数帯域幅を決定する。最小有用周波数は、種々の凹み深さによりもたらされる経路の量によって制御される。最大有用周波数は、凹みの幅によって制御される。
【0048】
機械的な拡散波発生器の低周波数の設計周波数を制御するために、単位深さは、設計波長の1/N倍に等しくなるように設定される。たとえば、単位深さが10ミリメートルでN=7の場合、設計波長は、
X=N×10ミリメートル=70ミリメートル
によって与えられる。
【0049】
上記から、設計周波数は、
F=c/λ
D
=343/(70×10
−3)
=4.9kHz(または、45度の反射角が余分な経路長と考えられるとき、3.46kHz)
と算出される。
【0050】
反射体10がλ
D/2で機能することが認められている。設計周波数より下では、凹みは音源周波数の位相に対して寸法的に不十分になり、音響構成は、通常の放射体または平面反射体として作用する。反射体が効果的である最大周波数すなわち遮断周波数は、個々の凹み幅wまたは設計周波数との関係によって決定される。前の例を使用すると、凹み幅が10ミリメートルの場合、遮断周波数は、
λ=w×2
=20ミリメートル
によって与えられる。
【0051】
したがって、周波数は、
F=c/λ
w
=343/(20×10
−3)
=17.15kHz
によって与えられる。
【0052】
高周波の有効性を制限する別の要因は、系列が設計周波数の(N−1)倍の周波数で機能しないことである。すなわち、前の例の数字をここでも使用すると、
λ
high=λ
D/(N−1)
λ
D=70mm
したがって、λ
high=70mm/6
=12.67mm
したがって、f
high=343/λ
D
=343/12.67mm
=29.4kHz(または、45度の反射角が余分な経路長と考えられるとき、20.8kHz)
この例では、2×wによって決定されるカットオフ周波数が2つの制限周波数のうちの低いほうより小さく、したがって、実際の高周波カットオフ点である。したがって、2つの周波数のうちの低いほうがカットオフ周波数となる。
【0053】
拡散波機能のゼロ自己相関性質による誤差干渉から保護するために、高度の注意および適切な補償を設計に組み込まなければならない。ゼロ自己相関では、それ自身による出力は、ヒトの聴取システムの受容器官などの知覚力の鋭い受容器官によって解釈できる意味のある情報を伝えない。
図6に示される、結果として生じる拡散波機能は「無音(silent)」である。しかし、許容誤差は非常に小さく、それによって、理想からの百分率誤差は、振幅または位相の3%より小さくするべきである。誤差が大きいほど、拡散波機能は、より聞こえるようになる。聴取空間環境で聞きたいのは、拡散波機能ではなく、駆動源信号の強度である。QRSは広範囲の周波数を生じるので、名目上、設計の有用スペクトルの上端が3%未満の誤差の基準を維持することが重要である。周波数スペクトルが低くなるにつれて、成分波長が増加し、音源の空間的原点がスペクトル領域上で静止しているならば、経路の伝播による誤差は比較的小さくなる。いくつかのスピーカドライバは、非常に高い周波数で音響中心の移動の著しい加速を示す。音響中心は、たとえば10kHzより上のとき、ドライバのボイスコイルに向かって急速に移動し始める。したがって、スペクトルの下部で見られる、より重要なメッセージング周波数のために、10kHz以下で安定した音響中心の位置に反射体を焦束するという判断を行うことができる。
【0054】
図6の拡散波機能は、信号で「エッジ」を見つけるために特定のスケールで使用することができる。音響心理学では、音響信号のエッジは、その中に含まれる空間像をマークする。したがって、拡散波は、電気音響信号の空間像すなわち三次元音像を定義するために使用することができる。
【0055】
本発明による反射体10は、音源12からの音響エネルギーが平面波の形をとると仮定した。しかし、音響ドライバが平面波を生じるのは稀である。実際には、ほとんどの音響ドライバ、特にドーム型ツイータは、球面波または準球面波を生じる。したがって、反射体10の平坦な表面14の凹み16は、ほとんどの音響ドライバからゼロ自己相関(聴こえない)音響エネルギーが放射されるパターンを達成するのに完全な深さ(3%以内の誤差)ではない。
【0056】
図3は、反射体の面に垂直でない経路が考えられるときに反射体の深さを仮想的に延長したものを示す。これらの延長距離は、反射体の焦束に組み込むことができる。
【0057】
図4は、本発明による音響反射体の他の実施形態を示す。
図4に示される距離の一部は、説明をわかりやすくするために誇張されている。線3−3の断面に沿った、
図1の反射体10の平坦な表面14(
図3では鎖線によって示される)が示されている。
図2の反射体と同様に、平坦な表面14は、変化する深さD
0、D
1、…、D
N−1を持つN個の凹み16を有する。この深さD
0、D
1、…、D
N−1は、
図4では破線によって示されている。凹み16の深さは、N=7の場合の平方剰余系列の解によって決定される。
【0058】
しかし、本発明による反射体10は、音源から球面波18が伝播する距離と平面波が伝播する距離の差異を補正する。
図4の実線は、補正後の凹みの深さを示す。
【0059】
球面波18の放射要素が伝播する距離は、中央の凹み16dに結び付けられた要素以外の任意の要素の場合、平面波面が伝播する距離より大きい。垂直入射波では、球面波の特定の要素が伝播する距離は、音源から面までの距離と関連凹みの深さとを合わせたものである。すなわち、「r」は音源から反射体までの半径を示し、d
nは補正距離であり、球面波要素が伝播する距離は
dist
spherical(n)=r+d
n+2*D
nであるが、平面波が伝播する距離は
dist
planar(n)=r+2*D
nである。
【0060】
余分な距離d
nは、
d
n=sqrt[r
2+{[n−(N/2)]*w}
2]−rとなるように幾何学的に決定され、ここで、wは凹みの幅である。
【0061】
波面が純粋に球状であり、かつ音源の「音響中心」が空間スペクトル領域(spatial and spectral domain)上で静止すると想定できないので、より信頼性の高い代替案は、群遅延測定から得られた音源からの距離を使用して、参照波面が拡散面14上の各凹み要素の中央に達する到着時間を示すことである。各要素への到着時間を測定し、各要素への到着時間と中央の要素などの参照要素への到着時間とのタイミング差を計算することができる。音の速さに関連するときのこれらのタイミング差は、距離に変えることができる。これは、音源からの実際の距離が正確には理想的な波面のたどる経路でないときに有利である。
【0062】
音源を球面波から線形波面に修正することは、本発明の範囲内に含まれる。これは、空間内の1点に焦束されていない通常のQRDの上に微小電子機械システム(mems)トランスデューサ要素の列がどこに調節されるかを提供することによって達成することができる。これが機能するために、衝突する波面は直線状でなければならない。したがって、memsのアレイは、反射体の表面上への線形反射を引き起こす線形波面を形成するために使用される。
【0063】
ディフューザの物理的特性を決定する要因があることにより、球面波と平面波の差異を補正するように変化させる必要があるのは、凹みの相対的深さおよび形状のみである。平坦な凹み底部の解では、n=0の凹みに対する特定の凹みの補正距離d’(n)は、
【0066】
図4に示される実施形態では、凹みのそれぞれは、補正距離d’’に加えて深さD’’を有する。これによって、
図7に示される拡散波機能の1つの特定のスケールが生じる。
【0067】
図3は、
図2に類似しているが入射角は前述の入射角より小さい鋭角である状況を示している。同じ式を使用することができるが、鋭角により設計全体が延長されて元の状況よりも深く見えるので、補正距離は異なる。
【0068】
この入射角によって、
図6に示される第1のスケールよりも長いスケールの、
図7の拡散波機能が生じる。同様に、最小鋭角の入射角と最大鋭角の入射角の間で利用できる無数の解が存在する。したがって、最小鋭角の入射波面によって設定される最大スケールと最大鋭角の入射波面によって設定される最大スケールの間で利用可能な無数の可能なスケーリングされた拡散波機能が存在する。
【0069】
特定の入射角では、拡散波機能の単独で一意のスケールによって反射エネルギーが符号化され、音響エネルギーは、単独で一意の経路で聴取環境に入る。反射体に対する音源の入射角が変化するので、反射体の深さのスケールの変化が誘導され、したがって、結果として生じる拡散波機能のスケールの変化が引き起こされる。この影響は、最大入射角に対する最小入射角の全立体角にわたって統合される。
図8では、反射体に対する音源の3つのサンプルとなる個別の入射角により符号化する拡散波の3つの異なるスケールを用いて時間に基づいて変化させた同じ信号が示されている。
【0070】
符号化された信号は、
図8に示される各経路上に異なるスケールの拡散波を有する。これらの経路は、互いに対して角をなし、聴取環境内で異なる軌跡を形成する。任意の単一の拡散波に対する効果は、ノイズの中で検出が非常に容易な音源信号の変化を検出することである。他の経路信号は、検討中の経路に関連するノイズと考えることができる。すべての経路は最終的に聴取位置にたどり着き、いずれの経路および反射も、音源信号の時間に基づく同じ信号変化を伝える。このようにして、信号の変化の知覚は、聴取環境内での聴取者に衝突するあらゆる波面によって高められる。
【0071】
音源のタイミング情報は、非常に明瞭であるので、聴取者の知覚システムは、空間的寸法を、空所(room)で知覚される像によるものと考える。知覚される像は、ラウドスピーカのステレオペア間の最小距離の点における時間=0データに限局される。このステレオペアは、音源の前方または後方からの像を生成することができ、したがって、スピーカは後方から聴取可能であり、それによってスピーカは聴取者から離れた音波投射器(sound projector)として機能する。
【0072】
聴取位置がステレオスピーカ配置の中心線に対して鋭角をなす軸にあるとき、像は、聴取者がステレオペアの前方に設置するかのように、依然として同じ音源位置にある。聴取者がスピーカの真上に位置決めされているとき、像は、依然として、聴取位置から離れた音源間の音景に直接入るように見える。タイミング情報が非常に明瞭であるので、脳は、実際の音源信号および音源の空間的場所を定義する時間変化情報を聞いていることを示す。したがって、拡散波機能は、音を、他の任意の環境要因によってではなく音源信号変化によって定義された三次元とする。要素間での位相跳躍は、ランダム性を示す。表5は、N=7の場合の解および連続する要素間の解の相対跳躍を示す。区間内の最初の要素は、区間内の最後の要素と対照をなすと考えられる。ある要素がその前の要素より小さな解を有するとき、前進してNを経て小さいほうの解に到達すると想定される。したがって、4と1の間のギャップでは、隣接する解は4と8に等しいギャップであり、Nが比較解(comparative solution)に加算される。相対跳躍は、数列要素のすべての数0、1、2、3、4、5、および6である。しかし、その順序は、最初に偶数要素跳躍によるものであり、次に奇数要素跳躍によるものである。これにより、信号はフィードバックの条件を作り出すのが非常に困難になる。QRDのラプラス変換は1/Nである。したがって、本発明は、フィードバックを1/N削減する。
【0074】
音響空間を再活性化する(reenergize)ためにシステムでゼロ自己相関を使用することは、オーディオシステムのライブ再生の利点を有する。従来技術では、オープンマイクロホン(open microphone)(そのゲインをオープンさせたままのマイクロホン)は、フィードバックを起こしやすい。フィードバックとは、音響再生システムの供給源と空所の音響学的組み合わせ(sound reproduction system supplies and room acoustic combination)が オープンマイクロホンに周波数を維持させ、ハウリング感覚が優勢になるまで振幅を増加させるのに十分なエネルギーを生ずる状態である。これは、音響再生システムにおける基本的な不安定性である。従来技術を補償するために、一般的には、音響再生システム(PA)を楽隊と聴衆の間に設置する。
【0075】
本特許において説明するゼロ自己相関音響再生システムは、フィードバックを維持するために必要な音響状態を分解することによって、オープンマイクロホンへのフィードバック経路を安定化させる。したがって、このゼロ自己相関音響再生システムは、オープンマイクロホン音響再生システムに安定性を再び持ち込む。
【0076】
音響再生における利点は、問題のあるフィードバックのしきい値がなくなるので、オペレータの技術は少なくできることである。これによって、圧電結晶などの非自然的変換システムを使用する必要なく、自然の音響機器の増幅が起こる。これは、音響増強システムを楽隊の正面だが聴衆の前に置いて、フィードバック状況の管理可能性が一般的であることを確実にするのに十分な耐性(immunity)を持つ音響フィードバック経路を作り出す必要は最早ないことも意味する。したがって、音響増強システムは現在、楽隊の後ろにあってよく、楽隊は、聴衆と直接向かい合い、聴衆のより近くにいる。
【0077】
したがって、この技術は、建物を改修したりまたはその他の構造ソリューションを使用したりするよりも本発明に開示されている技術を扱うほうが容易な拡声システムまたはその他の音響空間で使用することができる。
【0078】
ゼロ自己相関システムのフィードバック安定性は、電話のヘッドセットまたは携帯電話をユーザのこめかみに押しつける必要がある従来技術を改良するために使用することができる。使用されるこの古典的な手法は、音再生音源の近くに耳を置くことであり、その結果、作り出される音は、ユーザの口の近くの送受話器上のオープンマイクロホンにフィードバックするのに十分でない。ユーザが話しているときに、マイクロホンによって変換される信号がユーザの耳のスピーカによって意図的に再生されないので、アルゴリズムは会話を単純にするために使用される。したがって、フィードバック経路が切断される。これらのアルゴリズムは、どのユーザが現在会話をしているかを予測する機能に依存する。送受話器または携帯電話の受話口でゼロ自己相関スピーカを使用することによって、ゼロ自己相関スピーカは、この装置がこのような変更された音響学的方法で機能するために必要な安定性をもたらすので、ユーザは、ヘッドセットまたは携帯電話を耳から離し、受話口の音量を上げることができる。ゼロ自己相関スピーカは、単純な信号制御の使用を最早必要としないことがある。
【0079】
凹みは、反射される拡散波機能のスケールの分布の制御を提供する反射体面の下で、非直線状とすることができる。
図1〜4に示される反射体では、反射体は依然として幅広い角度の最大反射エネルギーを提供することに留意されたい。
【0080】
そのうえ、特許5764782に記載されているように、各凹みの底部は、凹状または凸状であってよい。これらは、
図9および10に示されている。
【0081】
スピーカドライバ12は、拡散面14内、および凹みの深さの平面内の、凹みの長さ方向Lに対して45度であることが好ましい。スピーカドライバ12からの音響放射の方向が拡散面および凹みに対してこのような角度であるとき、結果として生じる拡散遠距離場圧力波に対するドライバの干渉は最小になり、遠距離場への特定のセグメント間の経路の差異は最大になる。
【0082】
そのうえ、反射体の実施形態の目的はスピーカドライバからの音を反射体表面上に反射し、結果として生じる音場を聴取環境内に反射することであるので、スピーカドライバから聴取環境内に直接放射されるための、迷い(stray)が最小限の経路が存在することが特に重要である。
【0083】
したがって、寸法的に大きな放射表面をスピーカと共に使用することによって近距離場エネルギーを反射体表面上に直接集中させるスピーカドライバを使用することが好ましい。すなわち、非常に幅広い音波放射パターンを有するスピーカドライバは、実際に、最初に反射体から離れて反射せずに音を聴取者に直接放射してもよい。これによって、周波数に依存した位相キャンセルが行われ、また、周波数のこの帯域における群遅延調節が混乱する。
【0084】
ツイータから空間環境内に放射される何らかの量の直接エネルギーが常に存在する。本発明は、このエネルギーを打ち消す方法を提供し、その結果、拡散波エネルギーのみが空間環境に対して支配的である。
図11Aは、適切なスペクトル反応の代理(suffragette)ラウドスピーカ64がツイータ60の音響中心と時間を調節して設置されて、位相をずらして配線される一実施形態を示す。この代理ドライバ64からのエネルギーは、拡散波が符号化された音波のみから出る反射体音源ドライバの直接的な放射エネルギーを位相キャンセルするために使用される。
【0085】
ほとんどのラウドスピーカ設計はウーファとツイータとを含むので、クロスオーバー法を使用して拡散波機能ドライバの音源からの擬似的な直接放射をなくすことが可能である。
図11Bは、ウーファ65および音源ツイータ60が音響中心と調節されて位置決めされる好ましい一実施形態を示す。ツイータ60は、音響学的拡散波発生器反射体10用の音源ドライバとして作用する。音源ツイータからの直接エネルギーのスペクトルは、ツイータ音源の指向性によるスペクトル内に制限される。したがって、ウーファのエネルギーは、音源ツイータの直接エネルギーを位相キャンセルするほどまでにクロスオーバー周波数を超えて増加させることができる。これらの2つの波面を組み合わせた結果、クロスオーバー周波数を下回るウーファ単独のスペクトルが得られる。反射される拡散波機能エネルギーは、下側クロスオーバー周波数すなわち
図13のf
clを上回るスペクトルの残りの部分を満たす。ウーファはクロスオーバー帯域の上限すなわち
図13のf
chでクロスオーバーし、ツイータは帯域の下限すなわち
図13のf
clでクロスオーバーする。
【0086】
好ましくは、Fcl=2,500Hzである。Fch=5,500Hzである。
【0087】
好ましい実施形態名はクロスオーバー帯域である。帯域の形状は、
図13に示される音源ツイータからの直接エネルギースペクトルの形状である。
【0088】
これらのクロスオーバー問題は、広帯域音源ドライバ67の上に反射体を設置すること(
図12A)またはツイータ60がウーファ65の内部に同軸で位置決めされる同軸ドライバ構成(
図12B)によって解決することができる。このようにして、両方のドライバは、反射体に挿入され、波経路の同じ反射を受ける。
図12aの反射体構成要素は、反射されない拡散エネルギーと反射される拡散エネルギーの間の遷移を滑らかにすることができるので、これらの反射体構成要素の長さは重要である。無給電反射体の頂部は、この表面からの回折を最小にするために滑らかな部分(soft radius)を組み込むことができる。
【0089】
本発明の他の実施形態は、望ましくない共振を解消する支持キャビネットを使用することによってスピーカドライバの音響性能を改良することである。これは、強度のあるラインまたは脆弱なラインに振動の反共振節を生じさせるようにランダムな素数比系列をなして離隔された脆弱なラインまたは強度の増したラインをパネルに組み込むことによって達成することができる。好ましくは、切れ込みがキャビネットパネルにランダムな素数比系列をなして作製される。
【0090】
図22は、切れ込みをパネル表面に組み込み脆弱なラインを設けるスピーカキャビネットの後面パネルを示す。この切れ込みは、3、5、7などのランダムな奇素数系列を使用して離隔される。
【0091】
図23は、11、3、7、3、5、3、7、3、5、7、3の間隔で側壁に成形された一連のテーパのついた補強リブを組み込むスピーカドライバのためのテーパのついた円筒を示す。
【0093】
図26は、ランダムな素数系列をなして配置された追加された強度のあるラインをコーンが有するスピーカコーンを示す。
図27は、ランダムな素数系列によって決定される扇形により径方向に配置された追加された強度のあるラインをコーンが有するスピーカコーンを示す。
【0094】
図26および
図27は、表4に記載されたランダムな素数系列によって決定される強度のあるラインまたは脆弱なラインを組み込んだラウドスピーカドライバの実施形態を示す。
図26は、スピーカコーン2601に設置された強度のあるラインの二次元パターンを示す。コーンは、スパイダーサポート2603に固定されたロールサラウンド2602によって適切な位置に保持される。このスパイダーサポートは、ドライバを適切な位置に固定できる4つの取り付け穴2604を有する。コーンは、モータ機構2605によって駆動される。
【0095】
これらの実施形態は、乗り物のドアまたは乗り物のドアパネル内のスピーカなどの反共振手段が必要とされる場合はいつでも有用である。
【0096】
図27は、スピーカコーン2701上の半径方向の強度のあるライン2702を示す。スピーカコーンは、スパイダー構造2704に固定されたロールサラウンド2703によって適切な位置に保持される。スパイダー構造2704は、ドライバを適切な位置に固定できる4つの取り付け穴3705を有する。コーン2701は、スパイダー機構2704によって適切な位置に保持されたモータ機構2706によって駆動される。
【0097】
無給電反射体の実施形態では、スピーカドライバの背後のバッフルによって、より多くのエネルギーを反射面上に反射でき、したがって反射体デバイスからの全体的な音響出力を確実に向上させる。
【0098】
図21は、音響エネルギーを反射体デバイスの上へ押し上げ、次に聴取空間に押し込ませるバッフルも兼ねた大きな基部を有する、本発明による無給電反射体の実施形態を示す。
【0099】
米国特許第5764782号には、本発明で使用できるスピーカのマトリックスが記載されている。米国特許第5764782号の
図6Aおよび6Bを参照すると、構成を整合した駆動要素の配列に変更することによってQRSにより誘導される拡散波機能を達成するうえでの誤差を制御するように設計するほうが簡単である。
図6Aは、5個の放射ドライバ32a〜32eからなる一次元クラスタ30の平面図を示す。
図6Bは、
図6Aの実施形態を断面図として示す。スピーカドライバユニットの個々の下降深さは、N=5の平方剰余配列の解によって決まる。単位深さが75mmに等しいとき、解は、以下で表7に列挙しているとおりである。
【0101】
図6B(米国特許第5764782号)のスピーカドライバ32b、32c、32d、および32eはそれぞれ、気柱による小さな負荷を駆動し、ドライバに効果的に質量負荷を加える。スピーカドライバ32aは、表面と面一に取り付けられるので、過剰な質量負荷効果は生じない。質量負荷によって、負荷されたドライバは、共振周波数と感度の両方が変化する。共振周波数が変化することによって、ドライバが直列に配線されていようと並列に配線されていようと、ドライバの電気負荷に大きな差が生じる。感度が変化することによって、平方剰余系列は、系列要素間の振幅変動により揺らぐ(falter)。
【0102】
空気負荷を補償するために、相補的な(complimentary)機械的質量は、各スピーカドライバ32a〜32eすべてが等しい質量負荷を有するように、気柱、追加された機械的質量、またはこれら2つの組み合わせから各個々のスピーカドライバに加えられてよい。したがって、ドライバの共振周波数は等しくなり、そのため、ドライバは直列または並列に配線することができ、各平方剰余系列要素の感度は等しい。
【0103】
気柱の有効質量は、各凹みの中の空気の密度および体積から質量を算出することによって、または質量負荷されたドライバの共振周波数をシフトすることによって、計算することができる。
【0104】
本発明において、図面の
図14は、
図4の反射体であるが溝の口全体にわたるエネルギーの急激な到着を補償するように修正された反射体を示す。音源は、反射体の前面に到着する略球面波面18を有する略球面波面22を発する。たとえば最も遠い凹部溝998の場合、溝の内側縁部に到着するエネルギーは半径R1を有し、溝の最も外側の縁部に到着するエネルギーは半径R2を有する。一実施形態では、溝の底部は、外側縁部から内側縁部に直線状テーパがつけられており、外側縁部は、外側部が内側部より(R2−R1)/2の距離999だけ大きい。これによって、内側のエネルギーは、溝に入って反射されて出るので、外側のエネルギーよりR2−R1の距離だけ遠く進む。したがって、溝に衝突する略球面状のエネルギーは、略平らな波面内の溝の外へ伝播する。この余分の補正は、溝の幅全体にわたるエネルギーの急激な到着を補償する。この例の溝の底部は直線状テーパがつけられているが、好ましい一実施形態では、溝の底部は、反射体の前部に衝突する波面の凹状形状を正確に補償するように凹状テーパがつけられている。この好ましい実施形態では、溝の幅にわたって、底部は、内側縁部から補償されている溝全体にわたる点までの到着エネルギー距離の差の正確に半分の差でテーパがつけられている。
【0105】
図15Aは、溝1002の口からの音響反射を最小にするように溝がつけられた溝の上部1000を有する反射体断面1001からなる
図4の好ましい実施形態を示す。
【0106】
図15Bは
図15Aの同じ実施形態を示すが、外側の縁部2000も、これらの縁部からの回折を最小にするように溝がつけられる。
【0107】
図18を参照すると、マニホルドシステム400の図が示されている。マニホルドシステム400は、スプリッタ420によっていくつかの平行断面に分割され、それによって平行断面410および411の長さは、QRSの使用および流体空間環境または真空空間環境に放射するアレイ405のための平行断面の端部によって決まる。この実施形態では、系列はn=2で始まり、N=3の配列に対して要素のオフセットは2で、1つの全周期すなわちN=3個の要素だけ継続し、n=’4で終わる。結果として得られるQRSの解は0、2、0であり、平行断面411は、最も短い平行断面410より長い単位深さの適切な倍数である。平行断面の間隔はwによって制御され、マニホルドの直径および最短波長は内部の配列要素によって制御される。このようにして、マニホルドに結合されたシステム内部の流体媒体にかかる背圧を減少させるかまたはマニホルドが放射する流体空間環境もしくは真空空間環境への拡散をもたらす、放射マニホルドアレイまたは誘導マニホルドアレイ405の起動貢献(wake contribution)による損失は、最小に抑えられる。このようなマニホルドは、圧縮ドライバおよび天井スピーカで、または一般的なツイータもしくは密閉されたドライバ構成として使用することができる。
【0108】
図16Aは、7×7マトリックスに配置された49個の個々のドライバからなる平らな額縁型ラウドスピーカアレイを示す。すべてのドライバは、前面に取り付けられる。
【0109】
図16、17、および19は、上記で説明した無給電反射体が生じる効果と同じ効果を生じる能動型システムを示す。時間遅延系列を生じる反射体を使用する代わりに、時間遅延は電子的にもたらされる。
【0110】
図16は、3×1のQRSラウドスピーカアレイの代替実施形態を示す。この実施形態では、ドライバ800、801、および802はすべて、当技術分野で知られている従来のラウドスピーカエンクロージャなどの同じ表面に位置決めされる。しかし、各ドライバ800、801、および802は、ドライバの電力要件に合致する電力Pをそれぞれ有する個別の増幅器803、804、および805によって順に駆動される。電力は合致することが望ましいが、これは本出願にとって重要ではない。入力は、この実施形態に入力806で送られる信号である。これは、2つの信号経路に給電する。第1の経路は、QRS系列の0要素用のアンプであるアンプ803への直接的な経路である。第2の経路は、アンプ804および805に給電する可変または固定の遅延モジュール808への経路である。可変または固定の遅延808は、ユーザが遅延時間を選択して設定する拡散制御部807によって駆動することができる。遅延時間は、これが上記で説明した反射体の受動アレイである場合に選択される距離と同じ距離を表すように選択される。
【0111】
そのうえ、可変の制御部を有することによって、拡散ダイアル制御部807を使用して拡散の下側の設計周波数を制限することが可能である。拡散ダイアル807が0秒の遅延に設定されると、スリーウェイドライバアレイは、従来技術のように機能する。拡散ダイアル807を介して遅延が追加されると、スリーウェイアレイは拡散アレイとして機能し始め、周波数の上限は、本特許で前述した内側ドライバ距離によって設定され、周波数の下限は、可変または固定の遅延モジュール808で空気またはこのアレイが動作する流体中の音の速度間の関係に従って絶対遅延時間によって設定され、遅延時間が表す同等の物理的距離は、本特許で前述した1単位深さdに等しいことを表す。N>3の場合のQRS系列は、より多くの可変または固定の遅延モジュール808が、単位深さdの倍数で時間遅延を達成し、単位深さ系列要素の等価な数値を実現して特定のドライバを駆動するために使用される場合に、使用することができる。同様に、二次元配列が使用可能である。
【0112】
図17では、
図16で説明した実施形態の好ましい一実施形態が示されている。この実施形態では、
図16に示される2つのアンプ804および805を使用してドライバ801および802を駆動する代わりに、2倍の電力2Pを有する単一のアンプ850が、ドライバ801と802の両方を駆動するために使用される。これは、ドライバ801と802の両方が要素の同じ数値の割り当てを有し、そのため同じ遅延信号によって駆動できるときに実行することができる。この実施形態は、必要とされるディスクリートアンプの数を節約する。アンプ850はアンプ803の2倍の負荷を有するので、アンプ850の電力はアンプ803の電力の2倍であることが望ましいが、これは本出願にとって重要ではない。高次配列または二次元配列では、この方法は、必要とされるディスクリートアンプの数を大きく減少することができる。同じ要素割り当てを有する高次配列の各要素は、1つの遅延およびアンプによって駆動することができる。増幅器の電力は、好ましくは、複数のドライバの複合荷重を反映するように増減される。
【0113】
図19は、QRDファブリックにおけるドライバ構成の7×7配列のDSP制御の概略図を示す。ファブリックとは、直列、並列、またはこの2つの組み合わせでの共通要素解ドライバの配線を指す。
【0114】
図19を参照すると、この図は、7×7QRSアクティブラウドスピーカアレイの代替実施形態を示す。スピーカ1901(1オフ)、1902(8オフ)、1903(8オフ)、1904(8オフ)、1905(8オフ)、1906(8オフ)、および1907(8オフ)は、加算増幅器1911、1912、1913、1914、1915、1916、および1917によって駆動される。
【0115】
この実施形態では、デジタル信号処理は、拡散波の4つの異なるスケールをシミュレートするために使用される。入力信号1941は、4つのフィルタ1931、1932、1933、および1934に供給される。各フィルタはバンドパスフィルタであり、特定の周波数のみを通過させることができる。
【0116】
遅延セット1921は、単位時間遅延「遅延x」を導入する。これによって、拡散波の特定のスケールをxスケール係数に関連させる。
【0117】
遅延セット1922は、単位時間遅延「遅延y」を導入する。これによって、拡散波の特定のスケールをyスケール係数に関連させる。
【0118】
遅延セット1923は、単位時間遅延「遅延z」を導入する。これによって、拡散波の特定のスケールをzスケール係数に関連させる。
【0119】
遅延セット1924は、単位時間遅延「遅延t」を導入する。これによって、拡散波の特定のスケールをtスケール係数に関連させる。
【0120】
4つのフィルタ1931、1932、1933、および1934からのドライ信号の出力は、加算増幅器1911に供給される。加算増幅器1911は、スピーカ1901を駆動する。
【0121】
フィルタセット1931、1932、1933、および1934によって駆動される遅延セット1921、1922、1923、および1924からの第1の遅延タップの出力は、加算増幅器1912に供給される。加算増幅器1912は、スピーカ1902を駆動する。
【0122】
フィルタセット1931、1932、1933、および1934によって駆動される遅延セット1921、1922、1923、および1924からの第2の遅延タップの出力は、加算増幅器1913に供給される。加算増幅器1913は、スピーカ1903を駆動する。
【0123】
フィルタセット1931、1932、1933、および1934によって駆動される遅延セット1921、1922、1923、および1924からの第3の遅延タップの出力は、加算増幅器1914に供給される。加算増幅器1914は、スピーカ1904を駆動する。
【0124】
フィルタセット1931、1932、1933、および1934によって駆動される遅延セット1921、1922、1923、および1924からの第4の遅延タップの出力は、加算増幅器1915に供給される。加算増幅器1915は、スピーカ1905を駆動する。
【0125】
フィルタセット1931、1932、1933、および1934によって駆動される遅延セット1921、1922、1923、および1924からの第5の遅延タップの出力は、加算増幅器1916に供給される。加算増幅器1916は、スピーカ1906を駆動する。
【0126】
フィルタセット1931、1932、1933、および1934によって駆動される遅延セット1921、1922、1923、および1924からの第6の遅延タップの出力は、加算増幅器1917に供給される。加算増幅器1917は、スピーカ1907を駆動する。
【0127】
加算増幅器1911、1912、1913、1914、1915、1916、および1917は、フィルタセットから得られる4つの周波数の帯域に関連する一意のスケーリングされた時間遅延信号を合計して、スピーカの7×7アクティブアレイから供給された1つの入力信号1941から4組のスケーリングされた拡散波を生成する。
【0128】
この実施形態は、可聴スペクトル内の異なる重要な帯域(Zwicker帯域)への異なるスケールの適用をエミュレートする。可能な4つの周波数帯域が表8に示されている。
【0130】
図20は、時間変化する信号の概念図を示し、相対的時間のタグがその経路に沿って連続してつけられている。これらの時間は、表7に名称として示されている。
【0131】
表7は、QRD解nに対して、次に距離にマッピングされた、
図2の時間変化する信号を表に示す。この表では、アレイ内のドライバ間の反復距離は70mmである。設計波長は7×2×w=980mmである。これは、350Hzの設計周波数に等しかった。この距離は、フラットパネルの2次元配列におけるデジタル信号処理(DSP)によってもたらされる等価な時間遅延である。
【0133】
表10は、表10に示される距離に起因する遅延のデジタル処理に基づく時間分離パターンを有するスピーカの7×7配列の各要素における信号と時間の関連性の説明である。
【0135】
表10では、その中央にあるのは、知覚された「現在」信号であることがわかる。この周囲には、相対的な未来の信号の輪があり、次いで、その外側には相対的な過去の信号があり、以下同様である。配列のオフセットおよび要素のオフセットを操作することによって、3つの要素を配列の中央に配置した。
【0136】
未来の信号を示すことは概念的に不可能であるので、ヒトの知覚システムは、配列などから生成されたウェーブレット(wavelet)拡散波の中央に対して知覚された時系列的に(histrical)現在の信号を割り当てる。
【0137】
好ましい一実施形態では、70mm幅のスピーカを使用し、周波数の上限は2,500Hzであり、N=7の場合、周波数の下限は190Hzである。単位時間遅延は、140mmまたは408マイクロ秒である。
【0138】
23mm幅のスピーカを使用するとき、周波数の上限は7,500Hzであり、N=7の場合、周波数の下限は580Hzである。単位時間遅延は、46mmまたは134マイクロ秒である。
【0139】
拡散配列は、したがって、常に、知覚された現在の信号、最近の過去の信号、および最近の未来の信号の広範囲の対話(abroad dialogue)を聴取空間に有する。これらの信号は拡散配列の空所を活性化し、したがって、これらの信号は、空所を再活性化する方法によって比較的関連づけられない。しかし、知覚された現在の信号、未来の信号、および時系列的な信号が前後関係に依存して存在することを考慮して、聴取者は、どの信号空所の音響が信号を取り扱うかについての前後関係に依存する像を現在構築することができる。これによって、聴取者は、経験に悪影響を及ぼす空所音響を聴取しなくても記録された空所音響を知覚することが可能になる。
【0140】
知覚された現在の信号の割り当ては、再生された最新の信号の後の任意の時点である(最も遠い未来)。配列の過渡応答すなわちウェーブレットは、その応答の中央に時間=0属性を有する。このようにして、この数学的なウェーブレット関数において、「現在」を時間=0に割り当てる。
【0141】
図24および
図25はラウドスピーカドライバの可動コーンに成形される拡散配列パターンを示す。
図24は、中央の尖頂(spire)が最も高い高さを有する高い尖頂の配列に可動コーン2401が成形される3×3配列のツイータを示す。中央の尖頂を取り囲むのは、中央の尖頂の半分の高さの4つの尖頂である。これらの尖頂は、残る4つの要素に表面を提供する基部に置かれる。コーン2401はロールサラウンド2402に結合され、ロールサラウンド2402はベゼル2403にコーン2401を固定する。ベゼル2403は、このツイータをラウドスピーカエンクロージャまたはアプライアンスに固定できる4つの取り付け穴2404を有する。ツイータは、このコーン構造を上下方向に駆動するモータ要素を内蔵する。3×3配列に存在する9つの表面は、QRDの時間調節要件を満たす。
【0142】
図25は、前面で中央の要素が0であるように成形された可動コーン2501を示す。隣接する要素は、7×7の凹み配列に凹みとして形成される。これらの凹みの底部は、QRDの解によって決定された深さに設定される。可動コーン2501はロールサラウンド2502に結合され、ロールサラウンド2502はスパイダー構造2503に装着される。スパイダー構造2503は、可動コーン2501の上下運動を駆動するモータ要素2504も支持する。スパイダー構造2503は、ドライバをラウドスピーカエンクロージャまたはアプライアンスに取り付けるために使用される8つの取り付け穴2505を有する。
【0143】
特定の実施形態に関して本発明を説明してきた。本発明のより幅広い範囲から逸脱することなく、種々の変更を加えることができ、他の実施形態を使用することができることは、当業者には明らかであろう。たとえば、ゼロ自己相関系列または相対的系列要素時間遅延を達成する方法の代替の形態は、本発明で使用することができる。したがって、特定の実施形態に対する上記およびその他の変形は、本発明によって包含される。