特許第5845275号(P5845275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5845275磁気的性能を有する方向性珪素鋼の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845275
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】磁気的性能を有する方向性珪素鋼の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 8/12 20060101AFI20151224BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20151224BHJP
   C22C 38/06 20060101ALI20151224BHJP
   H01F 1/16 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   C21D8/12 B
   C22C38/00 303U
   C22C38/06
   H01F1/16 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-538037(P2013-538037)
(86)(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公表番号】特表2013-544970(P2013-544970A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】CN2011073419
(87)【国際公開番号】WO2012068830
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年5月10日
(31)【優先権主張番号】201010561051.3
(32)【優先日】2010年11月26日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 美 洪
(72)【発明者】
【氏名】▲ジン▼ 偉 忠
(72)【発明者】
【氏名】孫 ▲フアン▼ 徳
(72)【発明者】
【氏名】楊 国 華
(72)【発明者】
【氏名】沈 侃 毅
(72)【発明者】
【氏名】黄 杰
(72)【発明者】
【氏名】胡 徳 揚
(72)【発明者】
【氏名】李 国 保
【審査官】 鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−227941(JP,A)
【文献】 特開2002−361314(JP,A)
【文献】 特開平10−251753(JP,A)
【文献】 特開平04−323328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 8/12, 9/46
C22C 38/00−38/60
H01F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気的性能を有する方向性珪素鋼の製造方法であって、
(1)鋼母材を加熱して、前記鋼母材を鋼帯に熱間圧延するステップと、
(2)二段階の焼きならし処理を行うステップとを備え、前記二段階の焼きならし処理では、前記鋼帯はまず1100〜1200℃に加熱され、その後に900〜1000℃に50〜200秒で冷却され、次に前記鋼帯は10〜100℃の温度の水中で急速に冷却され、前記急速冷却期間内において、引張力が前記鋼帯に印加され、900℃〜500℃の温度範囲内で前記鋼帯は15〜40N/mm2の応力を有し、前記鋼帯は、2.9重量%以上3.41重量%以下の珪素と、0.0456重量%以上0.06重量%以下の炭素と、0.0255重量%以上0.0290重量%以下の可溶性アルミニウムと、0.0073重量%以上0.0083重量%以下の窒素と、0.1重量%以上0.13重量%以下のマンガンと、0.0060重量%未満の硫黄と、残部としての鉄と不可避不純物とからなり、さらに、
(3)冷間圧延を行うステップを備え、前記冷間圧延は、一次冷間圧延または中間アニールを伴う二重冷間圧延を含み、さらに
(4)一次再結晶アニールを行い、その後にアニール分離剤を塗布するステップと、
(5)最終製品へのアニールを行うステップとを備え、前記最終製品へのアニールは二次再結晶アニールと純化アニールとを有し、
前記二段階焼きならし処理後の前記鋼帯のマルテンサイト含量は、8.8面積%以上10.7面積%以下である、方法。
【請求項2】
前記引張力は、焼ならし炉内に張力ローラを配置することによってまたは巻き取り張力を変化させることによって前記鋼帯に印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アニール分離剤の主組成は、MgOである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒配向珪素鋼を製造する方法に関し、特には、優れた磁気的性能を備えた粒配向珪素鋼を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配向珪素鋼は、電気産業、電子産業および軍需産業において不可欠で重要な軟磁性合金であり、主として変圧器の鉄心に利用されるとともに、発電機、大きな電気的機械などに利用される。粒配向珪素鋼は、優れた磁気的性能を有することが望まれ、特に鉄損の低減が望まれる。
【0003】
配向珪素鋼は二次再結晶技術を利用することによって優れた磁気的性能を有することができ、異常粒成長を生じさせて他の方位の粒を併合してゴス組織を形成する(ゴス組織:{110}は圧延面に平行な結晶面を意味し、<001>は圧延方向に平行な結晶方向を意味する)。
【0004】
高い磁気誘導を有する粒配向珪素鋼を製造するための伝統的な方法は、以下のようである。特別の高温加熱炉内で鋼母材が1350℃から1400℃の温度に加熱され、その温度が1時間を超えて維持されて、AlN、MnSまたはMnSeの不純物の十分な固溶を促進させ、そして鋼母材が圧延され、圧延終了温度は950℃より高く、熱間圧延された鋼帯は水が吹きつけられて迅速に冷却された後にコイルに巻かれる。続く焼きならし工程において微細で拡散しやすい第二相の粒子(すなわち、粒成長抑制剤)が鋼本体から分離排出され、焼きならしの後に熱間圧延された鋼に対してその表面から酸化鉄の表皮を除去するために酸洗いが行われる。最終製品の厚さまでさらに冷間圧延された後に、鋼シートは最終製品の磁気的特性に影響しない範囲(≦30ppm)まで鋼シート中の[C]含量を減ずるように脱炭とアニールの処理を受け、そして、高温アニールを行うために主成分がMgOであるアニール分離剤が鋼シートに塗布され、鋼シートはMgSiOの下地皮膜を形成するとともに鋼を純化するように二次再結晶化に処され、最終的に鋼シートは絶縁被膜で被覆され、引伸ばされて、アニールされ、そうして、高い磁気誘導、低い鉄損および良好な絶縁性を有する高い性能を備えた粒配向珪素鋼の製品が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の製造方法に伴って、以下の課題が生じる。
1.加熱温度が高くて、鋼母材の燃焼損失が大きい;
2.加熱炉が頻繁に修理されなければならず、生産効率が低い;
3.熱間圧延温度が高くて、熱間圧延の輪縁きしみ音が大きい。
【0006】
これらの課題を解決するために、幾つかの外国の会社は、鋼母材の加熱に関して比較的低温で粒配向珪素鋼を製造する幾つかの方法を模索して開発している。例えば以下の方法である。
【0007】
1.中間的温度で粒配向珪素鋼を製造する方法
Russian Novolipetsk Iron & Steel Corporation (NLMK)およびVIZなどの幾つかの鋼工場は中間温度粒配向珪素鋼製造技術を利用し、鋼母材加熱温度は1200〜1300℃であり、化学的組成はCuの比較的高い含量(0.4%〜0.7%)を含み、AlNとCuSが抑制剤として使用される。この方法は高温における鋼母材の加熱による幾つかの課題を避けることができ、不利益は一般的配向の珪素鋼のみが製造され得ることである。
【0008】
2.鋼母材を加熱して低温で窒化する方法
冷間圧延されたシートが脱炭とアニールの炉を通るときに、鋼シートの内部を窒化するようにNHが導入されて後天的に得られるタイプの抑制剤を形成する。この方法を利用することによって、鋼母材加熱温度が1250℃未満に低減され得て、その方法は一般的配向の珪素鋼のみならず高い磁性の配向珪素鋼を造るために利用され得る。
【0009】
3.抑制剤なしで粒配向珪素鋼を製造する方法
溶錬において材料が高度に純化されるように制御され、Se、S、N、Oなどの偏析による影響を排除するように、Se、S、N、Oの含量が30ppm未満に制御される。そして、粒配向珪素鋼は、高エネルギ粒界と他の粒界との移動速度の相違を利用することによって製造され得る。
【0010】
M.Barisoni達は、鋼シートが焼きならしされた後に20℃/秒の速度で800〜850℃へ冷却され、そして鋼シートが100℃/秒の冷却速度で急冷されて分散されたマルテンサイト相を形成し、その体積割合は約8%で硬度Hv≧600(鋼板母相の硬度Hv≧230)であって、約10nmのAlNを多量に偏析させることを提案している。マルテンサイトは蓄積エネルギを増大させるために形成され、したがって冷間圧延後の蓄積エネルギが増大させられ、その蓄積エネルギは脱炭とアニールの処理中に容易に{110}粒を再結晶させて成長させ、脱炭とアニールに処された後に{110}組成が強化され、そうして最終製品の磁気的性能が改善される。
【0011】
マルテンサイト相転移は迅速冷却(クェンチ:急冷)によって誘起され得て、これは熱誘起マルテンサイト相転移と称される。また、マルテンサイト相転移は応力または歪によって誘起され得て、これは応力または歪誘起マルテンサイト相転移と称される。相転移の自由エネルギを考慮すれば、マルテンサイト相転移を誘起する応力による仕事は、相転移が駆動される自由エネルギ変化と同じである。そして、マルテンサイト相転移の駆動力は、2つの部分、すなわち化学的駆動力および機械的駆動力からなっている。
【0012】
ある応力状態において、マルテンサイト相転移の温度は低減する。キュリー温度(770℃)以下のとき、粒配向珪素鋼は自発的な強磁性伸びを示し、これは冷却時の自動的な体積収縮に部分的に対抗することができ、マルテンサイト相転移の温度の低減を増大させる。
【0013】
マルテンサイト相転移は、核生成と成長の二つの相を通して進む。
固体状態の相転移理論から分かるように、変形蓄積エネルギを導入することによってマルテンサイトの核生成速度が大きく増大し、その範囲は数十倍から数百倍の大きさである。蓄積エネルギは、マルテンサイトの結晶核の成長速度に大きく影響しない。
【0014】
米国特許第3959033号においては、熱間圧延後の焼きならし処理を制御することによって、特には焼きならし処理において700〜900℃から室温までの冷却速度を制御することによってマルテンサイト量が制御されて、最終製品の磁気的性能が改善される。この特許の不利なことは、板厚方向において冷却速度の一貫性を達成することが困難なことであり、これは板厚方向におけるマルテンサイト分布の不均一性の結果となり、この不均一性が存在するので、マルテンサイト量の効果的な制御を達成することが困難である。さらに、この特許においては、700〜900℃から室温までの冷却速度を制御するために水が利用され、第1にこの制御が場所の条件、例えば空気の温度、ノズルの損傷または障害によって限定されることが起こり得て、これが冷却速度を不安定にする可能性があり、第2に鋼シートの温度が人為的要因によって正確に測定され得なくて、正確な制御を達成することが困難であり、したがって冷却速度の微細な調整を達成することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、優れた磁気的性能を備えた粒配向珪素鋼を製造する方法を提供することであり、焼きならし後の鋼板中のマルテンサイトの含量とその分布が焼きならし相転移における鋼板中の応力を調整することによって最適化され得て、そしてマルテンサイト含量は最終製品のより良い磁気的性能が得られる範囲内にされ得て、最終製品の磁気的性能における最適化が実現される。
【0016】
上述の目的を達成するために、本発明の技術的解決は以下のようである。
良好な磁気的性能を備えた粒配向珪素鋼の製造方法であって、
(1)鋼母材を形成するために従来の溶解と鋳造を行い;
(2)前記鋼母材を加熱して、前記鋼母材を鋼の帯に熱間圧延し;
(3)焼きならし処理において、二段階の焼きならし処理を行い、前記帯はまず1100〜1200℃に加熱され、その後に900〜1000℃に50〜200秒で冷却され;次に前記帯は10〜100℃の温度の水中で急速に冷却され;この期間いおいて、引張力が前記鋼の帯に印加され、900℃〜500℃の温度範囲内で前記鋼の帯は1〜200N/mmの応力を有し;
(4)冷間圧延において、一次冷間圧延または中間アニールを伴う二重冷間圧延を行い;
(5)一次再結晶アニールを行い、その後にアニール分離剤を塗布し、その主組成は最終製品へのアニールを行うためのMgOであって、そのアニールは二次再結晶アニールと純化アニールを含む、方法。
【0017】
さらに、前記引張力は、焼ならし炉内に張力ローラを配置することによってまたは前方と後方の張力ローラを変化させることによって前記鋼の帯に印加される。
【0018】
本発明によれば、焼きならし相転移において鋼シート中の応力を調節することによって、その応力または歪がマルテンサイトを誘起して、焼きならし後の鋼シート中のマルテンサイト含量に対する妥当で効果的な制御を達成し、終局的に最終製品の磁気的性能が改善される。本発明によれば、鋼シートの厚さ方向において比較的均一なマルテンサイト構造が得られる。張力制御を利用することによって場所条件による制限が少なくなり、同じ厚さのサンプルシートに関してマルテンサイトの所望の量が安定して得られ、張力制御は少ない人的要因で定量化されて、正確に制御することが容易であって、微細な調整が達成され得る。
【0019】
焼きならし相転移において熱間圧延されたシート中の応力を制御することによって、焼きならし後のマルテンサイトの量が最適化され、焼きならしされた鋼シート中のマルテンサイト含量は最終製品のより良い磁気的性能が得られる範囲内にされ、終局的に最終製品のより良い磁気的性能が得られる。
【0020】
マルテンサイトの適切な含量が最終製品の磁気的性能Bを改善する助けになるであろう理由は、以下のようである。
【0021】
(1)マルテンサイトが存在するので、蓄積されるエネルギが改善され、冷間圧延後の蓄積されるエネルギが増大され、脱炭とアニールの処理において(110)粒の再結晶と成長を促進させ、(110)組成の含量が増大し、磁気的性能が改善され得る。
【0022】
(2)マルテンサイトが存在するので、脱炭とアニールおよび冷間圧延後において高角度粒界の量が増大し、これはゴス組織が他の方位の粒を併合することを助け、二次再結晶を促進させる。
【0023】
(3)マルテンサイトが冷間圧延されて脱炭とアニールされた後に材料中にγ繊維組織が形成され、これは二次再結晶のプロセスを促進させる。上記分析された相対的要因によって、最終製品の粒配向の度合における改善が達成され、最終製品の磁気的性能Bが改善される。
【0024】
鋼シートの組成が同じであれば、製造プロセスの条件は同じであって、マルテンサイト量を測定する方法が同じであって、シート中のマルテンサイト量が同じである。したがって、最終製品のマルテンサイト量と磁気的性能との関係は、予め造られたサンプルシートにおいて同じ測定方法で測定された焼きならし後と冷間圧延前の鋼シート中のマルテンサイト量によって予め計算され得て、焼きならし後と冷間圧延前の鋼シート中のマルテンサイト量の目標範囲が計算され得る。
【0025】
マルテンサイトの量を制御する手段として、以下の三つの方法がある。
(1)マルテンサイト含量は、相転移におけるマルテンサイトの核生成数を変化させるように、相転移における鋼シート中の応力を変えることによって変化させられる。
【0026】
(2)マルテンサイト含量は、最も高い温度におけるオーステナイト量を変化させるように、焼きならしの最高温度を変化させることによって変化させられる。
【0027】
(3)マルテンサイト含量は、焼きならしのときの二次冷却の速度を変化させることによって変化させられる。焼きならし後の鋼シート中のマルテンサイト量の測定値が目標値と比較され、それらの間の相違によれば(900℃から500℃の範囲内の)焼きならし相転移における鋼シートの応力(1〜200N/mm)は少なくとも炉内に配置された張力ローラを調節するかまたは巻取り張力を変化させることによって変化させられ、焼きならし後の鋼シート中のマルテンサイトの含量と分布の最適化の目的が達成され得て、マルテンサイト量は最終製品のより良い磁気的性能が得られる範囲内になる。
【0028】
本発明による方法におけるステップ(1)、(2)、(4)および(5)の全ては粒配向珪素鋼を製造するための一般的な技術的手段であり、それらの説明は省略される。
【0029】
本発明によれば、焼きならし後の鋼シート中のマルテンサイト量に対する妥当で効果的な制御が実現され、焼きならし相転移における鋼シート中の応力を調節することによって引張力または歪がマルテンサイトの相の転移を誘起して、終局的に最終製品の磁気的性能を改善する。
【0030】
本発明は、板厚方向において比較的均一なマルテンサイト組織を得ることができ、所望のマルテンサイト含量に関する微細な調整を行うことができる。
【0031】
本発明では、場所の条件におる制限が少なくて張力制御を利用し、同じ厚さを有するサンプル板に関してマルテンサイトの所望の量が安定して得られ、張力制御がより定量化されて、人為的要因の影響が僅かであり、正確な制御を行うことが容易であって、微細な調整が実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明によって焼きならされた粒配向珪素鋼に関する最終製品のマルテンサイト含量(vol%)と磁気的性能Bの関係を示す図である。
図2】本発明による粒配向珪素鋼の横断面においてシート厚さに対するマルテンサイトの分布を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下において、本発明が実施例との関係で説明される。
実施例1
種々の組成を含む鋼シートが焼きならされる。シートの主要な組成が表1に示されている。
【0034】
【表1】
【0035】
上記の組成を含む鋼シートは1200℃に加熱され、この温度は180分間保持される。そして、鋼シートは2.0mmへ直接的に圧延される。二段階の焼きならし処理が熱間圧延された鋼シートに対して行われる。最初に鋼シートは1200℃に加熱された後に900℃へ200秒以内で冷却され、次に鋼シートは100℃の温度の水内で急冷される。(900℃から500℃の範囲内で)焼きならし相転移における鋼シート内の応力(1〜200N/mm)は少なくとも炉内に配置された張力ローラを調節することまたは前方と後方の張力ローラを変化させることによって変化させることができ、焼きならされたシート内のマルテンサイトの含量と分布はより良い磁気的性能が達成され得る範囲内に最適化される。
【0036】
酸洗いされた後、鋼シートに対して一段階冷間圧延が5圧延パスで行われ、第3と第4のパスは220℃においてであり、鋼シートは0.30mmの厚さを有するように押圧される。その冷間圧延されたシートに対して、脱炭と窒化のアニールが850℃で行われる。窒化の後、主組成がMgOであるアニール分離剤がシートの表面上に塗布されて25%Nと75%Hの雰囲気内で1220℃に加熱され、その後に雰囲気が純Hに変更されてシートはその温度で30時間保持される。
【0037】
焼きならしの後のマルテンサイト含量、相転移において鋼シートに印加された引張力および磁気的性能が、表2に示されている。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例2
鋼シートの主要化学組成は、3.05wt%Si、0.060wt%C、0.0290wt%可溶性Al、0.0077wt%N、0.13wt%Mn、および0.006wt%未満Sである。
【0040】
上記組成を含む鋼シートは1200℃に加熱され、この温度が180分間保持される。その後、鋼シートは2.0mmへ直接的に圧延される。その熱間圧延されたシートに対して二段階の焼きならし処理が行われ、最初に鋼シートが1100℃に加熱されてその後1000℃へ50秒で冷却され、次に鋼シートは50℃の温度の水内で急冷される。(900℃から500℃において)焼きならし相転移における鋼シート中の応力(1〜200N/mm)は、少なくとも炉内に配置された張力ローラを調節することによってまたは巻取り張力を変化させることによって変化させられ得て、焼きならしされたシート中のマルテンサイトの含量と分布はより良い磁気的性能範囲が達成され得る範囲内に最適化される。
【0041】
酸洗いされた後、鋼シートに対して一段階冷間圧延が5圧延パスで行われ、第3と第4のパスは220℃においてであり、鋼シートは0.30mmの厚さを有するように押圧される。その冷間圧延されたシートに対して、脱炭と窒化のアニールが850℃で行われる。窒化の後、主組成がMgOであるアニール分離剤がシートの表面上に塗布されて25%Nと75%Hの雰囲気内で1220℃に加熱され、その後に雰囲気が純Hに変更されてシートはその温度で30時間保持される。
【0042】
焼きならしの後のマルテンサイト含量、相転移において鋼シートに印加された引張力および磁気的性能が、表3に示されている。
【0043】
【表3】
【0044】
実施例3
鋼シートの主要化学組成は、2.9wt%Si、0.048wt%C、0.0255wt%可溶性Al、0.0073wt%N、0.10wt%Mn、および0.006wt%未満Sである。
【0045】
上記組成を含む鋼シートは1200℃に加熱され、この温度が180分間保持される。その後、鋼シートは2.0mmへ直接的に圧延される。その熱間圧延されたシートに対して二段階の焼きならし処理が行われ、最初に鋼シートが1100℃に加熱されてその後に900℃へ100秒で冷却される。次に、鋼シートは80℃の温度の水内で急冷される。(900℃から500℃の範囲内で)焼きならし相転移における鋼シート中の応力(1〜200N/mm)は、少なくとも炉内に配置された張力ローラを調節することによってまたは巻取り張力を変化させることによって変化させられ得て、焼きならしされたシート中のマルテンサイトの含量と分布はより良い磁気的性能範囲が達成され得る範囲内に最適化される。
【0046】
鋼シートが酸洗いされた後、シートに対して一段階冷間圧延が5圧延パスで行われ、第3と第4のパスは220℃においてであり、鋼シートは0.30mmの厚さを有するように押圧される。その冷間圧延されたシートに対して、脱炭と窒化のアニールが850℃で行われる。窒化の後、主組成がMgOであるアニール分離剤がシートの表面上に塗布されて25%Nと75%Hの雰囲気内で1220℃に加熱され、その後に雰囲気が純Hに変更されてシートはその温度で30時間保持される。
【0047】
焼きならしの後のマルテンサイト含量、相転移において鋼シートに印加された引張力および磁気的性能が、表4に示されている。
【0048】
【表4】
【0049】
実施例4
鋼シートの主要化学組成は、3.41wt%Si、0.0542wt%C、0.0269wt%可溶性Al、0.0083wt%N、0.12wt%Mn、および0.006wt%未満Sである。
【0050】
上記組成を含む鋼シートは1200℃に加熱され、この温度が180分間保持される。その後、鋼シートは2.0mmへ直接的に圧延される。焼きならしアニールは、以下に述べられる方法のそれぞれの手段によって行われる。
【0051】
最初に鋼シートが1180℃に加熱された後に920℃へ200秒で冷却され、次に鋼シートは100℃の水内で急冷される。
【0052】
(1)冷却期間中に鋼シートに対して60N/mmの引張力が印加される(比較例);
(2)冷却期間(900℃〜500℃)中に鋼シートに対して20N/mmの引張力が印加され、焼きならしされたマルテンサイト含量は最終製品の優れた磁気的性能が得れる範囲内に維持される(実施例)。
【0053】
鋼シートが酸洗いされた後、シートに対して一段階冷間圧延が5圧延パスで行われ、第3と第4のパスは220℃においてであり、鋼シートは0.30mmの厚さを有するように押圧される。その冷間圧延されたシートに対して、脱炭と窒化のアニールが850℃で行われる。窒化の後、主組成がMgOであるアニール分離剤がシートの表面上に塗布されて25%Nと75%Hの雰囲気内で1220℃に加熱され、その後に雰囲気が純Hに変更されてシートはその温度で30時間保持される。
【0054】
結果が、表5に示されている。
【0055】
【表5】
【0056】
比較例と実施例の横断面におけるシート厚さに対するマルテンサイトの分布が、図2に示されている。
【0057】
この図から分かるように、シート厚さ方向における比較的均一なマルテンサイト組織が張力制御によって得られる。同じ厚さのサンプル板に関して所望のマルテンサイト量が安定して得られ、最終製品のより良い磁気的性能が得られる。
図1
図2