(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845276
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】N−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンから出発して2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/61 20060101AFI20151224BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20151224BHJP
【FI】
C07D213/61CSP
!C07B61/00 300
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-538160(P2013-538160)
(86)(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公表番号】特表2014-501711(P2014-501711A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2011069625
(87)【国際公開番号】WO2012062740
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年11月4日
(31)【優先権主張番号】61/413,008
(32)【優先日】2010年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10191066.9
(32)【優先日】2010年11月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512137348
【氏名又は名称】バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ルイ,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ハインリツヒ,イエンツ−デイトマール
【審査官】
小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/036901(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/036900(WO,A1)
【文献】
特表2009−531348(JP,A)
【文献】
特表2014−500253(JP,A)
【文献】
特表2009−543819(JP,A)
【文献】
Tetrahedron Letters,1998年,39,1313-1316
【文献】
Tetrahedron,1998年,54,8035-8046
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,A61K
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IV)
【化1】
で表される2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製する方法であって、以下の段階(i)及び段階(ii):
段階(i): 式(I)
【化2】
で表されるN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンを、場合により無機塩基又は有機塩基の存在下で、式(II)
【化3】
で表される化合物と反応させて、式(III)
【化4】
で表される化合物を生成させる段階〔ここで、
式(II)、式(III)及び式(IV)において、
Aは、ピリダ−2−イル、ピリダ−4−イル若しくはピリダ−3−イル(ここで、これらは、6位において、フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシで置換され得る)であるか、又は、1,3−チアゾール−5−イル(ここで、これは、2位において、塩素又はメチルで置換され得る)であるか、又は、下記式
【化5】
[式中、
Xは、ハロゲン、C
1−C
12−アルキル又はC
1−C
12−ハロアルキルであり;及び、
Yは、ハロゲン、C
1−C
12−アルキル、C
1−C
12−ハロアルキル、C
1−C
12−ハロアルコキシ、アジド又はシアノである]
で表されるピリダ−3−イルであり;
並びに、式(II)において、
Eは、塩素、臭素若しくはヨウ素又は活性化ヒドロキシル化合物、メシラート、トシラート及びSO
2CH
3から選択される脱離基である〕;
及び、
段階(ii): 段階(i)で得られた式(III)で表される化合物から、場合により触媒の存在下及び場合により求核試薬の存在下で、アリル基を除去し、それにより、式(IV)で表されるジフルオロエチルアミン誘導体又はその塩を得る段階;
を含んでいる、前記調製方法。
【請求項2】
段階(ii)を、化学元素の周期表の第8〜10族の1種類以上の金属を含んでいる触媒の存在下で、及び、場合により求核試薬(ここで、該求核試薬は、水酸化物類、アルコキシド類、チオレート類、カルボアニオン類、ハロゲン化物類、過酸化物類、シアン化物類及びアジド類、チオール類、スルフィン酸類、2−メルカプト安息香酸、マロン酸及びその誘導体、並びに、β−ジカルボニル化合物類、バルビツール酸類、N,N’−ジメチルバルビツール酸、アミン類及びエタノールアミンから選択される)の存在下で、実施する、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記触媒がパラジウム触媒である、請求項2に記載の調製方法
【請求項4】
前記触媒が、パラジウム(0)触媒、炭担持10%パラジウム、塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、ビス(アセチルアセトネート)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリエチルホスフィン)パラジウム及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムから選択される、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記無機塩基が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物類、水酸化物類、アミド類、アルコキシド類、酢酸塩類、フッ化物類、リン酸塩類、炭酸塩類及び炭酸水素塩類、ナトリウムアミド、水素化ナトリウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸セシウムから選択され、並びに、前記有機塩基が、アミン類、置換されているか又は置換されていないピリジン及び置換されているか又は置換されていないトリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−メチル−5−エチルピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、キノリン、キナルジン、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ジアザシクロヘキサン、N,N−ジエチル−1,4−ジアザシクロヘキサン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノナン(DBN)、ジアザビシクロウンデカン(DBU)、ブチルイミダゾール及びメチルイミダゾールから選択される、請求項1〜4の一項に記載の調製方法。
【請求項6】
式(II)において、Eが、塩素、臭素又はメシラートである、請求項1〜5の一項に記載の調製方法。
【請求項7】
式(II)、式(III)及び式(IV)において、Aが、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、6−メチルピリダ−3−イル、6−(トリフルオロメチル)ピリダ−3−イル、6−(トリフルオロメトキシ)ピリダ−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−メチル−1,3−チアゾール−5−イル、5,6−ジフルオロピリダ−3−イル、5−クロロ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−フルオロピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル、5−メチル−6−ブロモピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−フルオロピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イルである、請求項1〜6の一項に記載の調製方法。
【請求項8】
式(II)、式(III)及び式(IV)において、Aが、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5,6−ジブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イルである、請求項1〜6の一項に記載の調製方法。
【請求項9】
式(II)、式(III)及び式(IV)において、Aが、6−クロロピリダ−3−イルである、請求項1〜6の一項に記載の調製方法。
【請求項10】
式(II)、式(III)及び式(IV)において、Aが、6−ブロモピリダ−3−イルである、請求項1〜6の一項に記載の調製方法。
【請求項11】
式(II)、式(III)及び式(IV)において、Aが、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルである、請求項1〜6の一項に記載の調製方法。
【請求項12】
式(II)、式(III)及び式(IV)において、Aが、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イルである、請求項1〜6の一項に記載の調製方法。
【請求項13】
式(II)、式(III)及び式(IV)において、Aが、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イルである、請求項1〜6の一項に記載の調製方法。
【請求項14】
式(III)
【化6】
〔式中、
Aは、ピリダ−2−イル、ピリダ−4−イル若しくはピリダ−3−イル(ここで、これらは、6位において、フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシで置換され得る)であるか、又は、1,3−チアゾール−5−イル(ここで、これは、2位において、塩素又はメチルで置換され得る)であるか、又は、下記式
【化7】
[式中、
Xは、ハロゲン、C
1−C
12−アルキル又はC
1−C
12−ハロアルキルであり;及び、
Yは、ハロゲン、C
1−C
12−アルキル、C
1−C
12−ハロアルキル、C
1−C
12−ハロアルコキシ、アジド又はシアノである]
で表されるピリダ−3−イルである〕
で表される化合物。
【請求項15】
Aが、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、6−メチルピリダ−3−イル、6−(トリフルオロメチル)ピリダ−3−イル、6−(トリフルオロメトキシ)ピリダ−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−メチル−1,3−チアゾール−5−イル、5,6−ジフルオロピリダ−3−イル、5−クロロ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−フルオロピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル、5−メチル−6−ブロモピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−フルオロピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イルである、請求項14に記載の式(III)で表される化合物。
【請求項16】
Aが、6−クロロピリダ−3−イルである、請求項14に記載の式(III)で表される化合物。
【請求項17】
Aが、6−ブロモピリダ−3−イルである、請求項14に記載の式(III)で表される化合物。
【請求項18】
Aが、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルである、請求項14に記載の式(III)で表される化合物。
【請求項19】
Aが、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イルである、請求項14に記載の式(III)で表される化合物。
【請求項20】
Aが、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イルである、請求項14に記載の式(III)で表される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンから出発して特定の2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体は、農薬活性物質の調製における有用な中間体である(例えば、WO2007/115644を参照されたい)。2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製するためのさまざまな調製方法(例えば、アミド水素化による調製方法、又は、水素を用いた還元による調製方法)が知られている。
【0003】
WO 2009/036900には、例えば、N−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−2,2−ジフルオロアセトアミドのアミド水素化によって2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製する方法が記載されている(スキーム1を参照されたい)が、しかしながら、この調製方法は、水素化物複合体(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)を使用することにより不利である。それは、水素化物が極めて高価であり、複雑な安全手段を用いてのみ使用可能であるという理由による。
【0004】
スキーム1:
【0005】
【化1】
WO 2009/036901には、水素によるN−(6−クロロピリジン−3−イル)メチレン−2,2−ジフルオロエタンアミンの還元(スキーム2を参照されたい)について記載されており、WO 2010/105747には、水素による1−(6−クロロピリジン−3−イル)−N−[(1E)−2,2−ジフルオロエチリデン]メタンアミンの還元について記載されている。これらのプロセスの不利な点は、水素を使用することであり、それは、ここでも、水素を使用することは、極めて複雑な安全手段を必要とするという理由による。
【0006】
スキーム2:
【0007】
【化2】
刊行物WO 2007/115644(これは、殺虫効果を有する4−アミノブタ−2−エノリド化合物の調製を扱っている)には、窒素のアルキル化による、一般式A−CH
2−NH−R
1〔式中、Aは、特定のヘテロ環であり、R
1は、ハロアルキルである〕で表される化合物の調製について記載されている(スキーム3を参照されたい)。
【0008】
WO 2007/115644は、N−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−2,2−ジフルオロエタン−1−アミン(化合物(3))の調製について限定的に記載しており、ここで、該N−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−2,2−ジフルオロエタン−1−アミンは、2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン(化合物(2))と2,2−ジフルオロエタン−1−アミン(化合物(1))から出発して、トリエチルアミンの存在下で合成されている(スキーム4を参照されたい)。これに関連して、化合物(1)及び化合物(2)及びトリエチルアミンは、等モル量で使用される。所望の生成物は、53%の収率で得られる。
【0009】
スキーム3:
【0010】
【化3】
スキーム4:
【0011】
【化4】
WO 2007/115644には、さらに、化合物N−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−3−フルオロプロパン−1−アミン及びN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−2−クロロ−2−フルオロエタン−1−アミンも同じ方法で調製されたということも記載されている。
【0012】
WO 2007/116544に記載されている、式A−CH
2−NH−R
1〔式中、Aは、特定のヘテロ環であり、R
1は、ハロアルキルである〕で表される化合物を調製する方法は、当該反応中に、窒素の多重アルキル化が起こり得るので、不利である。その結果、収率が低下し、これは、限定的に記載されている実施例の収率においても認識することができる。その収率は、わずかに53%であった。これらの複合的なアルキル化は、大過剰量のアミンを使用することによってのみ低減することができる。アミン類はしばしば極めてコストが大きいという事実は別としても、過剰に添加された未反応のアミンは処理又は回収(ここで、回収は複雑な操作である)しなければならないので、上記調製方法は非経済的でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際特許出願公開2007/115644号
【特許文献2】国際特許出願公開2009/036900号
【特許文献3】国際特許出願公開2009/036901号
【特許文献4】国際特許出願公開2010/105747号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、農薬活性物質の合成における構成単位として2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体は重要であるので、商業規模で安価に使用することが可能な調製方法を見いだすことが必要である。さらに、特定の2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を高い収率及び高い純度で得て、それによって、目標化合物を、好ましくは、付加的な(場合により複雑な)精製に付す必要のないようにすることも価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
式(IV)で表される2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製するための、容易で、従って、安価な、調製方法が見いだされた。この調製方法を用いれば、上記で記載した不利な点は回避される。
【0017】
従って、本発明の対象は、式(IV)
【0018】
【化5】
で表される2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を調製する方法であって、ここで、該調製方法は、以下の段階(i)及び段階(ii):
段階(i)−アルキル化: 式(I)
【0019】
【化6】
で表されるN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンを、場合により無機塩基又は有機塩基の存在下で、式(II)
【0020】
【化7】
で表される化合物と反応させて、式(III)
【0021】
【化8】
で表される化合物を生成させる段階〔ここで、
式(II)、式(III)及び式(IV)において、
Aは、ピリダ−2−イル、ピリダ−4−イル若しくはピリダ−3−イル(ここで、これらは、6位において、フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシで置換され得る)であるか、又は、1,3−チアゾール−5−イル(ここで、これは、2位において、塩素又はメチルで置換され得る)であるか、又は、下記式
【0022】
【化9】
[式中、
Xは、ハロゲン、C
1−C
12−アルキル又はC
1−C
12−ハロアルキルであり;及び、
Yは、ハロゲン、C
1−C
12−アルキル、C
1−C
12−ハロアルキル、C
1−C
12−ハロアルコキシ、アジド又はシアノである]
で表されるピリダ−3−イルであり;
Aは、好ましくは、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、6−メチルピリダ−3−イル、6−(トリフルオロメチル)ピリダ−3−イル、6−(トリフルオロメトキシ)ピリダ−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−メチル−1,3−チアゾール−5−イル、5,6−ジフルオロピリダ−3−イル、5−クロロ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−フルオロピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル、5−メチル−6−ブロモピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−フルオロピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イルであり;Aは、特に好ましくは、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5,6−ジブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イルであり;Aは、極めて特に好ましくは、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル又は5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イルであり;
並びに、式(II)において、
Eは、脱離基であり、特に、ハロゲン(例えば、塩素、臭素又はヨウ素)であるか、又は、活性化ヒドロキシル化合物(例えば、メシラート、トシラート又はSO
2CH
3)であり;
Eは、好ましくは、塩素、臭素又はメシラートである〕;
及び、
段階(ii): 段階(i)で得られた式(III)で表される化合物から、好ましくは、触媒の存在下及び場合により求核試薬の存在下で、アリル基を除去し(脱アリル化)、それにより、式(IV)で表されるジフルオロエチルアミン誘導体又はその塩を得る段階;
を含んでいる。
【0023】
本発明による調製方法は、下記スキーム5によって例証することができる:
【0024】
【化10】
所望の式(IV)で表される2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体は、本発明による調製方法を用いて、良好な収率及び短い反応時間及び高い純度で得られるが、これは、実際の反応生成物を大規模に後処理することが概して必要ないことにより、特に、当該反応では1回のみのアルキル化が許容され、従って、複数回アルキル化された生成物の形成が防止されるという理由による。
【0025】
本発明による調製方法は、WO 2007/115644に記載されている調製方法と比較して、良好な収率が達成され、従って、生態学的及び経済学的に有益であるという有利点を有している。
【0026】
本発明の対象は、さらに、式(III)
【0027】
【化11】
で表される化合物を調製するための段階(i)のプロセスであり、ここで、該プロセスは、式(I)で表されるN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンを式(II)で表される化合物と反応させることを含み、これは、段階(i)に関して記載されているプロセス段階、反応条件及び反応体を包含する。
【0028】
本発明の対象は、さらに、式(III)
【0029】
【化12】
〔式中、
Aは、ピリダ−2−イル、ピリダ−4−イル若しくはピリダ−3−イル(ここで、これらは、6位において、フッ素、塩素、臭素、メチル、トリフルオロメチル又はトリフルオロメトキシで置換され得る)であるか、又は、1,3−チアゾール−5−イル(ここで、これは、2位において、塩素又はメチルで置換され得る)であるか、又は、下記式
【0030】
【化13】
[式中、
Xは、ハロゲン、C
1−C
12−アルキル又はC
1−C
12−ハロアルキルであり;及び、
Yは、ハロゲン、C
1−C
12−アルキル、C
1−C
12−ハロアルキル、C
1−C
12−ハロアルコキシ、アジド又はシアノである]
で表されるピリダ−3−イルであり;
Aは、好ましくは、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、6−メチルピリダ−3−イル、6−(トリフルオロメチル)ピリダ−3−イル、6−(トリフルオロメトキシ)ピリダ−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、2−メチル−1,3−チアゾール−5−イル、5,6−ジフルオロピリダ−3−イル、5−クロロ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−フルオロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−フルオロピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル、5−メチル−6−ブロモピリダ−3−イル、5−ジフルオロメチル−6−フルオロピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イルであり;Aは、特に好ましくは、6−フルオロピリダ−3−イル、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル、5,6−ジクロロピリダ−3−イル、5−ブロモ−6−クロロピリダ−3−イル、5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5−クロロ−6−ブロモピリダ−3−イル、5,6−ジブロモピリダ−3−イル、5−メチル−6−クロロピリダ−3−イル又は5−ジフルオロメチル−6−クロロピリダ−3−イルであり;Aは、極めて特に好ましくは、6−クロロピリダ−3−イル、6−ブロモピリダ−3−イル、2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イル、5−フルオロ−6−クロロピリダ−3−イル又は5−フルオロ−6−ブロモピリダ−3−イルである〕
で表される化合物である。
【0031】
本発明の対象は、さらに、2,2−ジフルオロエチルアミンの調製(これは、段階(ii)に関して記載されているプロセス段階、反応条件及び反応体を包含する)における、式(III)
【0032】
【化14】
で表される化合物の使用である。
【0033】
本発明に関連して、誘導体は、記載されている有機骨格鎖(構成単位)に類似した構造からなる誘導物質を意味するものと理解される。即ち、2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体は、特に、2,2−ジフルオロエチルアミン構成単位を含んでいる化合物を意味するものと理解される。
【0034】
特に別途示されていない限り、用語「アルキル」は、それ単独であっても、又は、さらなる用語と組み合わされていても(例えば、ハロアルキル)、本発明に関連して、分枝鎖又は非分枝鎖であり得る1〜12個の炭素原子を有している飽和脂肪族炭化水素基のラジカルを意味するものと理解される。C
1−C
12−アルキルラジカルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル及びn−ドデシルである。これらのアルキルラジカルの中で、C
1−C
6−アルキルラジカルが、特に好ましい。C
1−C
4−アルキルラジカルが、とりわけ好ましい。
【0035】
特に別途示されていない限り、用語「アリール」は、6〜14個の炭素原子を有する芳香族ラジカル(好ましくは、フェニル)を意味するものと理解される。
【0036】
本発明に関連して、ハロゲンで置換されているラジカル(例えば、ハロアルキル)は、、1回又は置換基の可能な最大数まで複数回ハロゲン化されているラジカルを意味するものと理解される。2回以上ハロゲン化されているラジカルの場合、該ハロゲン原子は、同一であっても又は異なっていてもよい。ここで、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0037】
用語「アルコキシ」は、それ単独であっても、又は、さらなる用語と組み合わされていても(例えば、ハロアルコキシ)、この場合、O−アルキルラジカルを意味するものと理解され、ここで、用語「アルキル」は上記意味を有している。
【0038】
置換されていてもよいラジカルは、1回以上置換されることができ、ここで、2回以上置換されているラジカルの場合、該置換基は同一であっても又は異なっていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0039】
式(I)で表される化合物は、段階(i)に関して、欧州特許出願第10191059.4号に記載されているのと同様にして調製することができる。これに関連して、この特許出願を広範囲に参照する。
【0040】
式(I)で表される化合物は、以下の式CHF
2−CH
2Hal〔式中、Halは、塩素、臭素又はヨウ素である〕で表される2,2−ジフルオロ−1−ハロエタンを、好ましくは有機塩基又は無機塩基の存在下で、プロパ−2−エン−1−アミンと反応させることにより、調製する。該反応は、通常、何も加えずにそれらだけで実施し、そして、プロパ−2−エン−1−アミンは、同時に、酸捕捉剤としても作用する。上記欧州特許出願に記載されている数種類の調製方法に関して、再度、以下に記載する。
【0041】
式(II)で表される化合物は、一部の例では既知であり、そして、市販されてもいるか、又は、既知方法に従って調製することができる(例えば、化合物2−クロロ−5−クロロメチル−1,3−チアゾールは、DE−A−3631538、EP−A−446913、EP−A−780384、EP−A−775700、EP−A−794180及びWO 97/0010226に従って調製することができ、化合物6−クロロ−3−(クロロメチル)ピリジンは、DE−A1−3630046、EP−A2−373464、EP−A2−393453及びEP−A1−569947に従って調製することができ、化合物6−クロロ−3−(ブロモメチル)ピリジンは、「Cabanal−Duvillard,I.ら(Heterocycl. Commun., 5, 257−262 (1999))」に従って調製することができ、化合物6−ブロモ−3−(クロロメチル)ピリジン及び6−ブロモ−3−(ヒドロキシメチル)ピリジンは、US 5,420,270Bに従って調製することができ、化合物6−フルオロ−3−(クロロメチル)ピリジンは、「Pesti,J.A.ら(J. Org. Chem., 65, 7718−7722 (2000))」に従って調製することができ、化合物6−メチル−3−(クロロメチル)ピリジンは、EP−A2−302389又は「Van der Eycken,E.ら(J. Chem. Soc., Perkin Trans (2), 5, 928−937 (2002))」に従って調製することができ、化合物6−トリフルオロメチル−3−(クロロメチル)ピリジンは、WO 2004/082616に従って調製することができ、又は、化合物2−クロロ−5−(クロロメチル)ピラジンは、JP 1993−239034A2に従って調製することができる)。
【0042】
式(II)で表される化合物を調製するための一般的な経路は、下記スキーム6において示されている。
【0044】
【化15】
例として、ヘテロ環式カルボン酸(A−COOH)は、上記文献中で知られている方法に従って、対応するヘテロ環式ヒドロキシメチル化合物(A−CH
2−OH)に変換させることが可能であり、次いで、このヘテロ環式ヒドロキシメチル化合物は、上記文献中で知られている方法に従って、活性化ヘテロ環式ヒドロキシメチル化合物(A−CH
2−E;E=トシラート又はメシラート)又はヘテロ環式ハロメチル化合物(A−CH
2−E、E=Hal)に変換させる。後者は、上記文献中において知られている適切なハロゲン化剤を用いることにより、メチル基を含んでいる対応するヘテロ環(A−CH
3)から得ることも可能である。
【0045】
段階(i)における式(I)で表されるN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンと式(II)で表されるA−CH
2−Eの反応は、何も加えずにそれらだけで(即ち、溶媒を添加することなく)実施することができるか、又は、溶媒の存在下で実施することができる。
【0046】
段階(i)において当該反応混合物に溶媒を添加する場合、その溶媒は、好ましくは、当該反応混合物がそのプロセス全体を通して充分に撹拌できる状態にあるような量で使用する。使用する2,2−ジフルオロ−1−ハロエタンの体積に基づいて、有利には、1〜30倍の量の、好ましくは、2〜20倍の量の、特に好ましくは、2〜15倍の量の、該溶媒を使用する。用語「溶媒」は、本発明によれば、純粋な溶媒の混合物も意味するものと理解される。当該反応条件下において不活性である全ての有機溶媒は、適切な溶媒である。本発明による適切な溶媒は、特に、以下のものである:エーテル類(例えば、エチルプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、並びに、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドポリエーテル類);テトラヒドロチオフェンジオキシドのような化合物、及び、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ベンジルメチルスルホキシド、ジイソブチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド又はジイソアミルスルホキシド;スルホン類、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジヘキシルスルホン、メチルエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン及びペンタメチレンスルホン;脂肪族炭化水素類、シクロ脂肪族炭化水素類又は芳香族炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、例えば、沸点が例えば40℃〜250℃の範囲内にある成分を含んでいるホワイトスピリット、シメン、沸点間隔(boiling point interval)が70℃〜190℃の範囲内にあるベンジンフラクション、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン又はキシレン);ハロゲン化炭化水素類、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン又はトリクロロエタン;ハロゲン化芳香族化合物(例えば、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン);アミド類(例えば、ヘキサメチルホスホルアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジン、オクチルピロリドン、オクチルカプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリンジオン、N−ホルミルピペリジン又はN,N’−1,4−ジホルミルピペラジン);ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリル又はベンゾニトリル);アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール又はtert−ブタノール;ケトン類(例えば、アセトン);又は、それらの混合物。
【0047】
段階(i)における好ましい溶媒は、芳香族炭化水素類及び/又は脂肪族炭化水素類、特に、トルエン、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドンである。
【0048】
本発明によれば、段階(i)は、何も加えずに、即ち、溶媒無しで、実施するのが好ましい。該調製方法は、これによって、溶媒を購入する必要がなく又は反応後に処理する必要がないので、さらに一層安価に実施することが可能である。
【0049】
脱離基Eとして適しているものは、一般的な反応条件下で充分な離核性(nucleofugicity)を示す基である。特に、ハロゲン類(例えば、塩素、臭素又はヨウ素)、又は、メシラート、トシラート若しくはSO
2CH
3は、適切な脱離基である。塩素、臭素及びメシラートは、好ましい脱離基である。
【0050】
段階(i)における反応は、有利には、適切な塩基、例えば、無機塩基又は有機塩基の存在下で、実施する。
【0051】
段階(i)において、特に、以下の無機塩基のうちの1種類以上を使用することができる:アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物類、水酸化物類、アミド類、アルコキシド類、酢酸塩類、フッ化物類、リン酸塩類、炭酸塩類及び炭酸水素塩類。好ましい塩基は、ナトリウムアミド、水素化ナトリウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸セシウムである。該無機塩基は、場合により、約10〜40重量%の範囲内にある濃度の水溶液として使用する。
【0052】
段階(i)において、同様に、特に、以下の有機塩基のうちの1種類以上を使用することもできる:第3級アミン類、置換されているか又は置換されていないピリジン類及び置換されているか又は置換されていないトリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−メチル−5−エチルピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−ジメチルアミノピリジン、キノリン、キナルジン、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ジアザシクロヘキサン、N,N−ジエチル−1,4−ジアザシクロヘキサン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノナン(DBN)、ジアザビシクロウンデカン(DBU)、ブチルイミダゾール及びメチルイミダゾール。
【0053】
使用される式(I)で表されるN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンに対する塩基のモル比は、約0.1〜約10の範囲内、好ましくは、約0.5〜約4の範囲内、特に好ましくは、約1〜約3の範囲内にある。さらに多い量の塩基を使用することも可能であるが、経済的な理由で不利である。該塩基は、同時に、溶媒でもあり得る。
【0054】
使用される式(I)で表されるN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンに対する式(II)で表される化合物のモル比は、通常、約0.5〜約3の範囲内、好ましくは、約0.7〜約2の範囲内、特に好ましくは、0.8〜約1.5の範囲内にある。さらに多い量の式(II)で表される化合物(これは、アルキル化剤として使用される)を使用することも可能であるが、経済的に不利である。
【0055】
式(II)で表される化合物を式(I)で表されるN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンの中に導入する(添加する)ことが可能であるか、又は、、その逆も可能である。式(II)で表される化合物と式(I)で表されるN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンは、同時に導入することも可能である。
【0056】
本発明による調製方法の段階(i)は、一般に、触媒を添加することなく実施されるが、段階(i)において、式(II)で表される化合物と式(I)で表されるN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンの反応を促進する触媒を使用することも可能である。適切な触媒の混合物も考えられる。
【0057】
適切な触媒の例は、以下のものである:アルカリ金属の臭化物及びヨウ化物(例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム又は臭化カリウム);臭化アンモニウム及びヨウ化アンモニウム;臭化テトラアルキルアンモニウム及びヨウ化テトラアルキルアンモニウム(例えば、ヨウ化テトラエチルアンモニウム);特定のハロゲン化ホスホニウム、例えば、ハロゲン化テトラアルキルホスホニウム又はハロゲン化テトラアリールホスホニウム(例えば、ヘキサデシル(トリブチル)ホスホニウムブロミド、ステアリルトリブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド及びテトラフェニルホスホニウムブロミド)、テトラキス(ジメチルアミノ)ホスホニウムブロミド、テトラキス(ジエチルアミノ)ホスホニウムブロミド、テトラキス(ジプロピルアミノ)ホスホニウムクロリド及びテトラキス(ジプロピルアミノ)ホスホニウムブロミド;及び、ビス(ジメチルアミノ)[(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イリデン)アミノ]メチリウムブロミド。
【0058】
上記触媒のうちで、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、臭化テトラブチルアンモニウム又はテトラフェニルホスホニウムブロミドが、段階(i)の反応を促進するのに特に適している。ヨウ化ナトリウム及びヨウ化カリウムが特に重要である。
【0059】
該触媒は、例えば、HBr若しくはHIをアンモニアと反応させることによって、その場で製造することも可能である。さらに、該触媒は、反応性が高い臭化アルキル又はヨウ化アルキル(例えば、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル又はヨウ化エチル)を添加することによって、その場で製造することも可能である。
【0060】
段階(i)において触媒が存在している場合、その触媒は、使用される式(II)で表される化合物に基づいて、約0.01〜約25重量%の濃度で使用する。さらに高い濃度は、原理的には可能である。該触媒は、好ましくは、約0.2〜約25重量%の濃度で、特に好ましくは、約0.4〜約20重量%の濃度で、及び、極めて特に好ましくは、約0.5〜約15重量%の濃度で、使用する。しかしながら、該触媒は、好ましくは、約0.05〜約3重量%の濃度で、約0.1〜約10重量%の濃度で、又は、約0.5〜約10重量%の濃度で、使用することも可能である。
【0061】
段階(i)における反応温度は、使用される出発物質に応じて、さまざまであり得る。段階(i)は、約−30℃〜約200℃の範囲内の温度で実施することができる。反応段階(i)の実施においては、その内部温度が約10℃〜約150℃の範囲内にあるのが好ましく、特に好ましくは、約25℃〜約130℃の範囲内にある。
【0062】
段階(i)における反応の反応時間は、約0.5〜約20時間の範囲内にある。さらに長い反応時間も可能であるが、経済的に有益ではない。
【0063】
段階(i)の反応混合物は、濾過とそれに続く分別蒸留によって後処理するか、又は、当該反応混合物の希釈とそれに続く相分離とそれに続く分別蒸留によって後処理する。
【0064】
次いで、段階(ii)において、式(III)で表される化合物のアリル基を、再度、除去(切断)する。この操作は、脱アリル化として知られている。
【0065】
C−Nアリル結合を切断する方法は知られており、そして、例えば、「European Journal of Organic Chemistry (2005), (18), 855−3873」の中でStephanie Escoubet、Stephane Gastaldi及びMichele Bertrandによってその概説において記載されている。ここで、段階(ii)の実施に関しては、これらの方法を広範囲に参照されたい。「ツジ・トロスト反応」も、脱アリル化反応である。それは、アリル化合物(例えば、酢酸アリル又は臭化アリル)による求核試薬(例えば、C−酸化合物、エノラート類、アミン類及びフェノール類)のパラジウムが触媒するアリル化である。
【0066】
該脱アリル化は、アリル基の二重結合を異性化してエナミンを生成させること(そのエナミンは、その後、加水分解によって切断し得る)(スキーム7の反応経路(2))によって実施することができるか、又は、該アリル基をアニオン性求核試薬(Nu
−)に転移させて、2,2−ジフルオロエチルアミンを遊離させることができる(スキーム7の反応経路(1))。
【0068】
【化16】
該脱アリル化をスキーム7に示されているように反応経路(2)に従って実施する場合、エナミンを切断するための酸を段階(ii)において存在させなければならない。そのような酸の例は、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ギ酸及び酢酸である。アリル基を切断するための反応条件は、形成された2,2−ジフルオロエチルアミンが安定であるように選択すべきである;特に、強塩基を使用すると生成物が失われるので、当該転位に対して強塩基は使用しない。強塩基とは、平衡反応がOH
−イオンの近傍で完全に起こるような塩基である。
【0069】
段階(ii)の好ましい実施形態では、N−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンからのアリル基の分離は、適切な触媒の存在下で実施する。適切な触媒は、周期表の第8〜10族の1種類以上の金属を含んでいる不均一系触媒又は均一系触媒である。対応する触媒は、担持形態で、例えば、炭素(炭又は活性炭)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム又は二酸化チタンに適用された担持形態で、使用することも可能である。適切な金属は、特に、貴金属(例えば、ルテニウム、パラジウム、白金及びロジウム)である。均一系触媒としては、塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、ビス(アセチルアセトネート)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリエチルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及び塩化ルテニウム(III)が適している。好ましいのは、パラジウム(0)触媒、特に、炭担持10%パラジウムである。塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、ビス(アセチルアセトネート)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリエチルホスフィン)パラジウム及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムも同様に適している。該触媒は、水で湿らせた形態又は乾燥形態のいずれでも使用することができる。
【0070】
段階(ii)の脱アリル化を触媒の存在下で実施する場合、該触媒は、使用される式(IV)で表される化合物に基づいて、約0.001〜約20mol%の濃度で使用する。該触媒は、好ましくは、約0.01〜約10mol%の濃度で使用し、特に好ましくは、約0.01〜約5.0mol%の濃度で使用する。
【0071】
段階(ii)の脱アリル化を触媒の存在下で実施する場合、求核試薬として作用する化合物を存在させるのが有利である。求核試薬として作用する典型的な化合物、従って、求核試薬と称される典型的な化合物は、アニオン性求核試薬、例えば、水酸化物類、アルコキシド類、チオレート類、カルボアニオン類、ハロゲン化物類、過酸化物類、シアン化物類及びアジド類である。該アニオン性求核試薬は、プロトン化形態で使用することができる。そのようなプロトン化求核試薬は、例えば、チオール類、スルフィン酸類、2−メルカプト安息香酸、マロン酸及びその誘導体、並びに、β−ジカルボニル化合物類(例えば、バルビツール酸類、例えば、N,N’−ジメチルバルビツール酸)及びアミン類(例えば、エタノールアミン)である。
【0072】
段階(ii)は、溶媒(希釈剤)又は溶媒混合物の存在下で実施するのが一般的に有利である。溶媒は、通常、当該反応混合物が脱アリル化中に充分に撹拌できる状態にあるような量で使用する。当該反応条件下において不活性である全ての有機溶媒は、段階(ii)の実施における溶媒として使用可能であり、その際、使用する溶媒の種類は、脱アリル化のタイプに依存する。
【0073】
その例として、以下のものを挙げることができる:アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール;エーテル類、例えば、エチルプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、n−ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、 ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテル、並びに、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドポリエーテル類;アミン類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、アルキル化ピリジン類及びテトラメチレンジアミン;脂肪族炭化水素類、シクロ脂肪族炭化水素類又は芳香族炭化水素類、例えば、フッ素原子及び塩素原子で置換されていてもよいペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ノナン及び工業用グレード炭化水素類、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、フルオロベンゼン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、オクタン、ベンゼン、トルエン、ブロモベンゼン、ニトロベンゼン又はキシレン;エステル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、及び、さらに、炭酸ジメチル、炭酸ジブチル又は炭酸エチレン;水;有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸又はプロピオン酸、及び、無機酸、例えば、硫酸、塩酸又はリン酸。
【0074】
上記溶媒のうちで、水、エタノール及びブタノールが好ましい。
【0075】
当該反応混合物は、段階(ii)の後で、後処理することが可能であり、そして、式(IV)で表される対応する2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を、例えば、蒸留によって、又は、対応する塩(例えば、有機酸又は無機酸の塩(例えば、塩酸塩又は酢酸塩))を介して、精製することができる。通常、当該反応混合物を水の上に注ぎ、そして、得られた溶液のpHを12に調節する。溶媒を用いた抽出によって、式(IV)で表される2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を抽出し、次いで、好ましくは、標準圧力下又は減圧下で蒸留することにより、単離する。
【0076】
式(IV)で表される2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体の塩(例えば、有機酸又は無機酸の塩(例えば、塩酸塩又は酢酸塩))の精製は、好ましくは、結晶化によって実施する。水溶性の塩は、水溶液の抽出によって精製することが可能であり、その後、有機塩基又は無機塩基(好ましくは、NaHCO
3、Na
2CO
3又はNaOH)と反応させることによって、式(IV)で表される所望の2,2−ジフルオロエチルアミン誘導体を遊離させる。
【0077】
本発明について下記実施例によってさらに充分に記述するが、本発明は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0078】
欧州特許出願第10191059.4号に従う、式(I)で表される出発化合物の調製
【0079】
【化17】
選択的形態1:
382g(3.67mol)の量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン及び70g(1.2mol)のプロパ−2−エン−1−アミンを、オートクレーブ内で、120℃で16時間加熱する。その反応混合物を200gの水で処理し、次いで、相を分離させる。その有機相を55℃で蒸留する。65gの量のN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミン(これは、反応させたプロパ−2−エン−1−アミンに基づいて、収率87.4%に相当する)が得られる。塩酸塩として沈澱している未反応のプロパ−2−エン−1−アミンは、水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、再度遊離させることができる。
1H NMR(CDCl
3):5.76−6.0(m,2H),5.22(m,1H),3.31(m,2H),2.96(dt,2H)。
【0080】
選択的形態2:
382g(3.67mol)の量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタン及び70gのプロパ−2−エン−1−アミン(1.2mol)を、オートクレーブ内で、120℃で16時間加熱する。次いで、その粗製混合物を濾過し、その残渣を150gの2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンで洗浄する。その有機相を、最初に、標準圧力下に55℃で蒸留する。残された量の2,2−ジフルオロ−1−クロロエタンを500mbarで除去し、その残渣を減圧下で精細に蒸留する。56gの量のN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミン(これは、収率76%に相当する)が得られる。塩酸塩として沈澱している未反応のプロパ−2−エン−1−アミンは、水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、再度遊離させることができる。
1H NMR(CDCl
3):5.76−6.0(m,2H),5.22(m,1H),3.31(m,2H),2.96(dt,2H)。
【0081】
本発明による実施例1 − 段階(i):
【0082】
【化18】
16.46g(0.135mol)の量のN−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンを31.9g(0.244mol)のN,N−ジイソプロピルエチルアミンに添加し、70℃で、20g(0.122mol)の2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジンを導入する。その混合物を70℃で16時間加熱し、次いで、過剰なN,N−ジイソプロピルエチルアミンを留去する。その残渣を100mLの水で処理し、50mLのジクロロメタンで2回抽出する。有機相を合して硫酸マグネシウムで脱水した後、それらをシリカゲルの層で濾過し、溶媒を減圧下に除去する。30.3g(含有量98%)の量のN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−N−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミン(これは、収率97.9%に相当する)が得られる。
1H NMR(CDCl
3):8.35(m,1H);7.70(m,1H);7.30(m,1H);5.89−5.78(tt 及び m,CF
2H 及び CH);5.2(m,2H);3.72(s,2H);3.18(d,2H),2.86(dt,2H)。
【0083】
本発明による実施例2 − 段階(ii):
【0084】
【化19】
2g(7.38mmol)の量のN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−N−(2,2−ジフルオロエチル)プロパ−2−エン−1−アミンを20mLのn−ブタノールに添加し、100mgの炭担持10%パラジウム(水で湿らせてある)で処理する。次いで、その混合物を、完全な変換が達成されるまで、18時間、撹拌し、還流温度で加熱する。その反応混合物を周囲温度まで冷却し、次いで、セライトで濾過する。溶媒を減圧下に除去する。1.3gの量のN−[(6−クロロピリジン−3−イル)メチル]−2,2−ジフルオロエタンアミン(これは、収率84%に相当する)が得られる。
1H NMR(CDCl
3):5.5−5.9(m,1H),2.94−3.1(m,2H),1.26(br m,NH
2)。