特許第5845314号(P5845314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5845314クーラントの滴下を防止した工作機械の機内洗浄装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845314
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】クーラントの滴下を防止した工作機械の機内洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20151224BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20151224BHJP
   B05B 1/20 20060101ALN20151224BHJP
【FI】
   B23Q11/00 N
   B08B3/02 F
   B08B3/02 G
   !B05B1/20 101
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-101871(P2014-101871)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-217459(P2015-217459A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2015年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】淺野 佳太
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−244555(JP,A)
【文献】 特開平07−297162(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0058999(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0174878(US,A1)
【文献】 特開2005−336582(JP,A)
【文献】 特開2008−110412(JP,A)
【文献】 特開2015−085403(JP,A)
【文献】 特開2006−341353(JP,A)
【文献】 特開2008−080464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B08B 3/02
B05B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の少なくとも加工部近傍を覆うカバーの内部に配設されたパイプと、
該パイプへ液体を供給するポンプとを有し、
前記パイプから液体を吐出させ、前記カバーの内部に蓄積した蓄積物を洗浄する工作機械の機内洗浄装置において、
前記パイプは、
前記カバーの内部へ液体又はエアーを吐出する第1吐出部が設けられた第1のパイプと、
該第1のパイプの内部に設置され、鉛直方向下向き以外の箇所に第2吐出部が設けられた第2パイプと、
から構成され
前記第1のパイプにはエアーを供給する穴が設けられ、前記第1のパイプと前記第2のパイプの間へエアーを供給する
ことを特徴とする工作機械の機内洗浄装置。
【請求項2】
前記第2のパイプから前記ポンプへ液体またはエアーが流入することを防止する逆止弁を有することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の機内洗浄装置。
【請求項3】
液体を吐出させて洗浄を行う工作機械の機内洗浄装置に用いられる洗浄用パイプであって、
液体又はエアーを吐出する第1吐出部が設けられた第1のパイプと、
該第1のパイプの内部に設置され、設置時に鉛直方向下向き以外の箇所に第2吐出部が設けられた第2パイプと、
から構成され、
前記第1のパイプに、前記第1のパイプと前記第2のパイプの間へエアーを供給するための穴が設けられる
ことを特徴とする工作機械の機内洗浄装置に用いられる洗浄用パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の機内洗浄装置に関し、特にクーラントの滴下を防止した工作機械の機内洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、加工空間をカバーで覆い、切粉やクーラントが周囲に飛散することを防止している。このカバーで覆われた空間(以下「機内」とする)には、工作機械による加工によって発生する切粉が蓄積することがある。そして、蓄積した切粉が工作機械の機構部へと浸入することによって、工作機械の機構部が故障に至る場合がある。そのため、切粉の浸入による工作機械の機構部の故障を防ぐために、機内に溜まった切粉を洗浄する必要がある。
機内の洗浄にあたっては、ポンプを用いて機内へとクーラントを送り、クーラントと共に切粉を機外へと排出させる装置(以下「機内洗浄装置」とする)を用いて洗浄する場合がある。
【0003】
図4は、機内洗浄装置を示した模式図である。カバー50内に、工作機械の加工部1から発生した切粉60が蓄積されており、そのカバー50内に機内洗浄装置10が配置されている。この機内洗浄装置10は、図示しないポンプから機内までをホース40等でつなぎ、機内にはパイプ112が設置されて、そのパイプの途中や先端部に穴116を開けている。図示しないポンプによって、ホース40やパイプ112内にクーラントCを通して、穴116からクーラントから吐出させて、機内に溜まった切粉をクーラントCと共に機外へと排出させる。また、穴116から直接クーラントCを吐出させる代わりに、穴116に図示しないノズルを取り付けて、ノズルの先端からクーラントCを吐出させるようにすることもできる。
【0004】
特許文献1には、液体を供給して液流によるカーテン膜を生成する液体カーテン生成装置において、管体の周壁に設けられたスリットから液体を吐出させて液体カーテンを生成する装置に関する技術が開示されている。
特許文献2には、冶具に固定された被加工物に対して、カーテンノズルからクーラント液を吐出させることによって、被加工物の加工の際に発生する切粉をカーテン状クーラント液膜から飛散させないようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−80464号公報
【特許文献2】特開2003−25180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に開示されている技術は、工作機械から発生する切粉が外部に飛散することを防止するいわゆる液体カーテンを生成するためのものであり、工作機械が設置されているカバー内に蓄積した切粉を機外へと排出させて機内洗浄を行うものとは異なっている。また、特許文献1に開示されている技術は、パイプに設けられたスリットはパイプにおける真下方向に設けられているため、後述する課題を有したものとなる。
【0007】
図4に示したような従来技術における機内洗浄装置においては、クーラントCの吐出を止めるためにポンプを停止した後、穴116やノズルの先端からクーラントCが滴下する場合がある。これは、パイプ112内に溜まったクーラントCがポンプの停止後に重力により、穴116やノズルから滴下するためである。この滴下を防止するために、穴116を開ける位置を滴下しない位置にすることもできるが、そのようにした場合にはクーラントを吐出する方向に制限が生じて、切粉を十分に機外へと排出することができないおそれがある。別の方法として、穴にノズルをつけた場合に、先端にノズルを取付けた可撓性パイプを重力に逆らう向きに取り付けて曲げることも可能であるが、必要以上に長い可撓性パイプを準備する必要があるため、コストアップとなり、設置のためのスペースも必要となる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、これらの課題を鑑み、クーラントの滴下を防止することのできる工作機械の機内洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明では、工作機械の少なくとも加工部近傍を覆うカバーの内部に配設されたパイプと、該パイプへ液体を供給するポンプとを有し、前記パイプから液体を吐出させ、前記カバーの内部に蓄積した蓄積物を洗浄する工作機械の機内洗浄装置において、前記パイプは、前記カバーの内部へ液体又はエアーを吐出する第1吐出部が設けられた第1のパイプと、該第1のパイプの内部に設置され、鉛直方向下向き以外の箇所に第2吐出部が設けられた第2パイプと、から構成され、前記第1のパイプにはエアーを供給する穴が設けられ、前記第1のパイプと前記第2のパイプの間へエアーを供給することを特徴とする工作機械の機内洗浄装置が提供される。
【0010】
請求項1に係る発明では、パイプを第1のパイプと第2のパイプとからなる二重構造とし、内部に設けられている第2パイプの吐出部を鉛直方向下向き以外の箇所に設けるようにしたことから、内部に溜まった液体が滴下しないようにすることが可能となる。また、二重構造にしたことにより、内側のパイプと外側のパイプとの間の隙間の容積が、パイプを一重とした場合の内部全体の容積と比較して小さなものとなり、供給される液体の大部分が内側のパイプの内部に溜まるようになるため、外側のパイプから滴下する液体の量を減少させることが可能となる。また、第1のパイプにエアーを供給する穴を設け、ポンプを停止させた後に、穴からエアーを勢いよく送り込むことで、外側のパイプと内側のパイプの隙間に溜まった液体を飛ばすことによって、外側のパイプからの液体の滴下を防ぐことが可能となる。
【0012】
本願の請求項に係る発明では、前記第2のパイプから前記ポンプへ液体またはエアーが流入することを防止する逆止弁を有することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の機内洗浄装置が提供される。
請求項に係る発明では、逆止弁を設けることによって、第2のパイプからポンプへ、液体またはエアーが流入することを防止することが可能となる。
【0013】
本願の請求項に係る発明では、液体を吐出させて洗浄を行う工作機械の機内洗浄装置に用いられる洗浄用パイプであって、液体又はエアーを吐出する第1吐出部が設けられた第1のパイプと、該第1のパイプの内部に設置され、設置時に鉛直方向下向き以外の箇所に第2吐出部が設けられた第2パイプと、から構成され、前記第1のパイプに、前記第1のパイプと前記第2のパイプの間へエアーを供給するための穴が設けられることを特徴とする工作機械の機内洗浄装置に用いられる洗浄用パイプが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、クーラントの滴下を防止することのできる工作機械の機内洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における工作機械の機内洗浄装置を示した概略図である。
図2】機内洗浄時のクーラント供給時の状態を示した図である。
図3】パイプ内乾燥時のエアー供給時の状態を示した図である。
図4】従来の工作機械の機内洗浄装置を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における工作機械の機内洗浄装置を示した概略図である。本実施形態の機内洗浄装置10は、工作機械の加工部1が内部に配置されたカバー50内に配置されており、カバー50内には工作機械の加工によって発生した切粉60が蓄積されている。なお、カバー50は少なくとも工作機械の加工部近傍を覆うように構成されていればよい。
【0017】
40はホースであり、外部の図示しないポンプからクーラントCが供給される。供給されたクーラントCは、逆止弁30を経由して機内洗浄装置10内に供給される。逆止弁30は後述する内側の第2のパイプ22に接続するように設けられており、クーラントCや後述するエアーがホース40方向に逆流しないような構成とされている。
【0018】
機内洗浄装置10は、外側の第1のパイプ12と、内側の第2のパイプ22の二重構造とされている。それぞれのパイプは鋼管で構成されているが、プラスチックや樹脂など他の材質で形成することもできる。外側の第1のパイプ12には、複数の第1のパイプ穴16が設けられている。第1のパイプ穴16は、カバー50内の切粉の排出性を考慮して、切粉が溜まりやすい方向に設けるようにする。なお、本実施形態においては、第1のパイプ穴16として構成されているが、穴に代えて切り込みとしたり、ノズルを接続するように構成することもできる。また、複数の第1のパイプ穴16とは別に、後述するエアー供給穴14も設けられている。内側の第2のパイプ22には、上方に複数の第2のパイプ穴26が設けられている。本実施形態においては、第2のパイプ穴26は第2のパイプ22における鉛直方向上方に設けられているが、鉛直方向下方以外の方向であれば、他の箇所に設けることもできる。また、穴に代えて切り込みとすることもできる。
【0019】
次に、これらの機内洗浄装置10の動作について説明する。図2は、機内洗浄時のクーラント供給時の状態を示した図であり、図2(a)は機内洗浄装置10を側方から見た概略図、図2(b)は図2(a)におけるA−A断面図である。なお、図2においては機内洗浄装置10の周囲の工作機械のカバー50及びカバー50内に蓄積した切粉60の記載を省略している。
【0020】
図示しないポンプから供給されたクーラントCは、ホース40及び逆止弁30を経由して、内側の第2のパイプ22の内部に供給される。第2のパイプ22の内部に供給されたクーラントCは、図2(a)及び図2(b)の矢印に示されたように、第2のパイプ穴26を通じて、第1のパイプ12と第2のパイプ22との間の空間に供給される。第1のパイプ12と第2のパイプ22との間の空間に供給されたクーラントCは、第1のパイプ12に設けられた第1のパイプ穴16から吐出されて、吐出されたクーラントCによって、機内に溜まった切粉60を機外へと排出する。このとき、逆止弁30が設けられているため、第2のパイプ22の内部から切粉60の排出が終了し、ポンプを停止させてクーラントCの供給を停止した後に、第2のパイプ22の内部からポンプへクーラントCが逆流することがない。その際、第2のパイプ22の内部にクーラントCが残ることがあるが、本実施形態においては、第2のパイプ22に設けられた第2のパイプ穴26が、鉛直方向下方以外である重力に逆らった方向に設けられているため、内部に溜まったクーラントCが外部に滴下することがない。
【0021】
また、第1のパイプ12と第2のパイプ22との間の隙間は狭く構成されているため、両パイプの隙間で形成される空間は狭く構成されている。そのため、第1のパイプ12と第2のパイプ22との間の隙間に溜まるクーラントCの量も非常に少ないものとなるため、第1のパイプ12から滴下するクーラントCの量を減らすことが可能となる。
【0022】
図3は、パイプ内乾燥時のエアー供給時の状態を示した図であり、図3(a)は機内洗浄装置10を側方から見た概略図、図3(b)は図3(a)におけるA−A断面図である。なお、図3においても機内洗浄装置10の周囲の工作機械のカバー50及びカバー50内に蓄積した切粉60の記載を省略している。
【0023】
エアーの供給は、ポンプを停止させてクーラントCの供給が終了した後に行われ、第1のパイプ12に設けられたエアー供給穴14を通じてエアーが供給される。エアー供給穴14から供給されたエアーは、図3(b)に示されているように、第1のパイプ12と第2のパイプ22との間の空間を通って、第1のパイプ12に設けられた第1のパイプ穴16から吐出される。この際に、第1のパイプ12と第2のパイプ22との間に空間に溜まったクーラントCがエアーといっしょに第1のパイプ穴16から吐出されるために、第1のパイプ穴16からのクーラントCの滴下を防ぐことができる。このとき、第2のパイプ22に逆止弁30が設けられているため、エアーが第2のパイプ22の内部に入っても、そこからポンプの方向に逆流することがない。
【0024】
本実施形態においては、工作機械の機内洗浄において、クーラントを用いて洗浄を行ったが、必ずしもクーラントを用いなければならないわけではなく、機内洗浄用にクーラント以外の液体を用いて洗浄を行うようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 機内洗浄装置
12 第1のパイプ
14 エアー供給穴
16 第1のパイプ穴
22 第2のパイプ
26 第2のパイプ穴
30 逆止弁
40 ホース
50 カバー
60 切粉
112 パイプ
116 穴
図1
図2
図3
図4