特許第5845345号(P5845345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5845345ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)組成物含有ピストンガイドリング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845345
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)組成物含有ピストンガイドリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 9/28 20060101AFI20151224BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20151224BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20151224BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20151224BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   F16J9/28
   C08K7/14
   C08L77/00
   C08L71/12
   F15B15/14 345A
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-518586(P2014-518586)
(86)(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公表番号】特表2014-526018(P2014-526018A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】US2012041022
(87)【国際公開番号】WO2013002977
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2014年2月25日
(31)【優先権主張番号】13/169,148
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ティング、サイ−ペイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ、ファ
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−270975(JP,A)
【文献】 特表2009−518463(JP,A)
【文献】 特開2010−127387(JP,A)
【文献】 実開平06−049801(JP,U)
【文献】 特開平02−236060(JP,A)
【文献】 特表2007−502891(JP,A)
【文献】 特表2009−532574(JP,A)
【文献】 特表2009−516064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 9/28
C08K 7/14
C08L 71/12
C08L 77/00
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、35〜95質量部の前記ポリアミドと、5〜65質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、を含む相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを含有し、
前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、その合計質量に対して、1〜50質量%のガラス繊維をさらに含むことを特徴とするピストンガイドリング。
【請求項2】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含む請求項1に記載のピストンガイドリング。
【請求項3】
前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、前記ポリアミドを含む連続相と前記ポリ(アリーレンエーテル)を含む分散相とを含み、前記連続相は耐衝撃性改良剤を含まない請求項1または2に記載のピストンガイドリング。
【請求項4】
前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、耐衝撃性改良剤を含まない請求項1乃至のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【請求項5】
前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、
ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、25〜45質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、
ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6およびこれらの混合物から構成される群から選択された、40〜60質量部の前記ポリアミドと、
前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して、20〜40質量%のガラス繊維と、を含む請求項1に記載のピストンガイドリング。
【請求項6】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含む請求項に記載のピストンガイドリング。
【請求項7】
前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリオレフィン、耐衝撃性改良剤、導電性充填剤および難燃剤を含まない請求項またはに記載のピストンガイドリング。
【請求項8】
シリンダ室を画定するシリンダ内壁を備えたシリンダと、
前記シリンダ室内に摺動可能に配置され、ピストンの少なくとも1つの溝を確定するピストン外壁を備えたピストンと、
前記少なくとも1つの溝内に取り付けられ、前記シリンダ内壁に摺動可能に接する外表面と前記溝を画定する前記ピストン外壁に接する内表面とを備えた少なくとも1つのピストンガイドリングと、を備え、
前記ピストンガイドリングは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、35〜95質量部の前記ポリアミドと、5〜65質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、を含む相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを含有し、
前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、その合計質量に対して、1〜50質量%のガラス繊維をさらに含むことを特徴とするピストン−シリンダ組立体。
【請求項9】
前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、
ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、25〜45質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、
ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6およびこれらの混合物から構成される群から選択された、40〜60質量部の前記ポリアミドと、
前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して、20〜40質量%のガラス繊維と、を含む請求項に記載のピストン−シリンダ組立体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ピストンガイドリングは、金属間の接触を防ぎ、かつ最適の摺動性能のためにピストンとロッドとを中心に位置させるために、工作機械、トラック、クレーン、フォークリフト、ハンドリング機械および農業機器などの油圧機器に広く使用されている部品である。ピストンガイドリングは許容誤差が厳しい部品であり、要求された寸法に適合させるために、通常は、射出成形と成形後機械加工を含む2ステッププロセスで製造される。また、ピストンガイドリングには、高温での長期使用に対する良好な寸法安定性、低熱膨張率、低吸湿率、高圧縮強度、耐疲労性および、石油系および無機系油圧油との良好な適合性も必要である。
【0002】
ナイロンとしても既知のポリアミドは、中間デューティおよび中間〜高デューティ油圧ピストン用のピストンガイドリング形成用に一般に使用されている材料の1つである。ポリアミドは、油圧油に対する優れた耐薬品性、良好な表面潤滑性および、ガラス繊維を充填すると高い機械的強度と圧縮強度とを有する比較的低コストのエンジニアリング熱可塑性樹脂である。しかしながら、ポリアミドは、貯蔵および配送中に外気から吸湿する。ピストンガイドリングは、1か国で製造され、油圧機器の組み立てのために別の1か国または複数の国に出荷され得る。比較的低湿度の地域で製造され、比較的高湿度の地域で組み込まれるピストンガイドリングでは、機器組み立てプロセスの間のピストンガイドリングの高不良率に繋がる寸法変化と反りが発生し得ることが観察されている。不良率が上昇すると、生産効率が低下し廃棄物が増える。従って、吸水率を低下させながら、ポリアミドの利点を維持する改善されたピストンガイドリング材料が求められている。また、成形時により等方性に収縮し、低デューティおよび低〜中間デューティ油圧ピストンのための成形後機械加工の必要性が低減できるピストンガイドリングも求められている。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態は、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、約35〜約95質量部の前記ポリアミドと、約5〜約65質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、を含む相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを含有するピストンガイドリングである。
【0004】
別の実施形態は、シリンダ室を画定するシリンダ内壁を備えたシリンダと、前記シリンダ室内に摺動可能に配置され、ピストンの少なくとも1つの溝を確定するピストン外壁を備えたピストンと、前記少なくとも1つの溝内に取り付けられ、前記シリンダ内壁に摺動可能に接する外表面と前記溝を画定する前記ピストン外壁に接する内表面とを備えた少なくとも1つのピストンガイドリングと、を備え、前記ピストンガイドリングは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、約35〜約95質量部の前記ポリアミドと、約5〜約65質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、を含む相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを含有するピストン−シリンダ組立体である。
【0005】
これらおよびその他の実施形態について以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】2つのピストンガイドリングを備えたピストン−シリンダ組立体を示す。
【0007】
図2】(a)は水平カットを有するガイドリングを、(b)は傾斜カットを有するガイドリングを、(c)は「S」字カットを有するガイドリングを示す。
【0008】
図3】2,6−ジメチルフェノールを酸化重合してポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンを産出する、ポリ(アリーレンエーテル)調製の化学スキームを示しており、該反応混合物の再平衡によって、取り込まれたジフェノキノンの末端および内部残基を有するポリ(アリーレンエーテル)が生成される。
【0009】
図4】温度23℃、相対湿度50%における比較実施例1および実施例1〜8の組成物での応力−歪曲線(歪範囲:0〜10%)である。
【0010】
図5】温度100℃、相対湿度50%における比較実施例1および実施例1〜8の組成物での応力−歪曲線(歪範囲:0〜10%)である。
【0011】
図6】温度130℃、相対湿度50%における比較実施例1および実施例1〜8の組成物での応力−歪曲線(歪範囲:0〜10%)である。
【0012】
図7】温度23℃、相対湿度50%における比較実施例1および実施例1〜8の組成物での応力−歪曲線(歪範囲:0〜50%)である。
【0013】
図8】温度100℃、相対湿度50%における比較実施例1および実施例1〜8の組成物での応力−歪曲線(歪範囲:0〜50%)である。
【0014】
図9】温度130℃、相対湿度50%における比較実施例1および実施例1〜8の組成物での応力−歪曲線(歪範囲:0〜50%)である。
【0015】
図10】(a)と(b)は、比較実施例1の走査型電子顕微鏡写真(それぞれ倍率が異なる)であり、(c)と(d)は、実施例1の走査型電子顕微鏡写真(それぞれ倍率が異なる)である。
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明者らは、特定の相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドで形成されたピストンガイドリングは、ガラス充填ポリアミドで形成されたものに対して優位であることを見出した。具体的には、本ピストンガイドリングは、高温の操作温度での圧縮強度が向上しており、成形収縮がより等方性であり、吸湿量が低減している。
【0017】
一実施形態は、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、約35〜約95質量部の前記ポリアミドと、約5〜約65質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、を含む相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを含有するピストンガイドリングである。本明細書では、簡潔さのために「ガイドリング」を用いているが、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、シリンダ内のピストンの摺動およびまたはシーリングを促進するように意図された摩耗リングおよびその他の部品の形成にも好適に使用されることは理解されるであろう。また、「ガイドリング」の「リング」は、典型的には横断面が円形のものを指すが、楕円形を含む他の横断面形状のものも使用できることは理解されるであろう。
【0018】
図1は、シリンダ室4を画定するシリンダ内壁3を有するシリンダ2を備えたピストン−シリンダ組立体1を示す。ピストン−シリンダ組立体1はさらに、シリンダ室4内に摺動可能に配置され、ピストン5の少なくとも1つの溝7を画定するピストン外壁6を有するピストン5を備える。少なくとも1つのピストンガイドリング8が、少なくとも1つの溝7内に取り付けられている。ピストンガイドリング8は、シリンダ内壁3に摺動可能に接する外表面9と、溝7を画定するピストン外壁6に接する内表面10と、を有する。
【0019】
図2は、ガイドリング内のカットタイプがそれぞれ異なる、ガイドリング構造の3つの実施形態を示す。(a)は、ピストンの往復運動に好適であり得る水平カットを示し、(b)は、ピストンの回転運動に好適であり得る傾斜カットを示し、(c)は、ガイドリングによってシーリングする場合に好適であり得る「S」字カットを示す。
【0020】
該ピストンガイドリングは、相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを含有する。本明細書での「相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンド」は、相溶化剤により物理的およびまたは化学的に相溶化したポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)とのブレンドと、そうした相溶化剤を用いずに(例えば、ポリ(アリーレンエーテル)上の相溶性向上ジブチルアミノメチル置換基からのように)、物理的に相溶性のポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドとのブレンドと、を指す。
【0021】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドはポリアミドを含む。ナイロンとしても既知のポリアミドは、複数のアミド(−C(O)NH−)基の存在によって特徴付けられ、Gallucciの米国特許第4,970,272号に記載されている。該ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリアミドエラストマーおよびこれらの混合物から選択できる。具体的なポリアミドとしては、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−4、ポリアミド−4,6、ポリアミド−12、ポリアミド−6,10、ポリアミド−6,9、ポリアミド−6,12、非晶質ポリアミド、トリアミン含量が0.5質量%未満のポリアミド−6/6Tおよびポリアミド−6,6/6T、ポリアミド−9Tおよびこれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、該ポリアミドは、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6あるいはこれらの混合物を含む。一部の実施形態では、該ポリアミドはポリアミド−6,6を含む。一部の実施形態では、該ポリアミドはポリアミド−6とポリアミド−6,6とを含む。一部の実施形態では、該ポリアミドまたはポリアミド類の組合せの融点(T)は171℃以上である。以下に記載のように、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドはさらに選択的に、耐衝撃性改良剤を含み得る。該ポリアミドが超強靭なポリアミド、すなわちゴム強靭化ポリアミドを含む場合、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドはさらに選択的に、別の耐衝撃性改良剤を含み得る。以下に記載のように、該ポリアミドは、Carothersの米国特許第2,071,250号、同第2,071,251号、同第2,130,523号および同第2,130,948号、Hanfordの同第2,241,322号および同第2,312,966号およびBoltonらの同第2,512,606号に記載されているプロセスなどの多くの周知のプロセスで得られる。ポリアミドは、広範な供給元から市販されている。
【0022】
一部の実施形態では、該ポリアミドの固有粘度は、ISO307に準拠し、96質量%硫酸中の0.5質量%溶液中で測定して400mL/g以下であり得、より具体的には90〜350mL/gであり得、さらにより具体的には110〜240mL/gであり得る。該ポリアミドの相対粘度は6以下であり、より具体的には1.89〜5.43であり、さらにより具体的には2.16〜3.93である。相対粘度は、DIN53727に準拠して、96質量%硫酸中の1質量%溶液中で求められる。
【0023】
一部の実施形態では、該ポリアミドは、HCL滴定で求めたポリアミド1g当たりのアミン末端基濃度が35μeq/g以上のポリアミドを含む。該アミン末端基濃度は40μeq/g以上であり得、より具体的には45μeq/g以上であり得る。アミン末端基含量は、ポリアミドを好適な溶剤に、選択的には加熱により溶解させて求められる。好適な表示方法を用いて、該ポリアミド溶液を0.01N塩酸(HCl)で滴定する。アミン末端基量は、サンプルに添加したHCl溶液の容積、ブランクで使用したHCl容積、HCl溶液のモル濃度、およびポリアミドサンプルの質量から算出される。
【0024】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、約35〜約95質量部のポリアミドを含む。この範囲内で、ポリアミドの量は約40〜約85質量部であり得、具体的には約45〜約75質量部であり得る。
【0025】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリアミドに加えて、ポリ(アリーレンエーテル)を含む。
【0026】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリ(アリーレンエーテル)を含む。好適なポリ(アリーレンエーテル)としては、下式の繰り返し構造単位を含むものが挙げられる:
【化1】
式中、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシであり;Zはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシである。本明細書において、「ヒドロカルビル」は、単独であるいは別の用語の接頭辞、接尾辞またはフラグメントとして使用されたとしても、炭素と水素だけを含む残基を指す。該残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和または不飽和であり得る。それはまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和および不飽和炭化水素部分の組み合わせも含み得る。しかしながら、該ヒドロカルビル残基が置換であると記載された場合、それは選択的に、該置換残基の炭素と水素員上にヘテロ原子を含んでいてもよい。従って、置換であると特定的に記載された場合、該ヒドロカルビル残基は、1個または複数個のカルボニル基、アミノ基、水酸基なども含み得、あるいは、該ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含み得る。一例として、Zは、末端の3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応で形成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であり得る。
【0027】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して約0.25〜約1dL/gである。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は約0.3〜約0.65dL/gであり得、より具体的には約0.35〜0.5dL/gであり得、さらにより具体的には約0.4〜約0.5dL/gであり得る。
【0028】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)は、その比が約1.3:1〜約4:1である質量平均分子量とピーク分子量とで特徴付けられる。この範囲内で、この比は約1.5:1〜約3:1であり得、具体的には約1.5:1〜約2.5:1であり得、より具体的には約1.6:1〜約2.3:1であり得、さらにより具体的には1.7:1〜約2.1:1であり得る。該ポリ(アリーレンエーテル)の分子量分布は典型的には、250〜1,000,000原子質量単位の分子量範囲内で分析される。本明細書での「ピーク分子量」は、分子量分布において最瀕分子量として定義される。統計用語では、ピーク分子量は分子量分布モードである。実用語では、分子量がゲル透過クロマトグラフィなどのクロマトグラフ法で決定される場合、ピーク分子量は、分子量(X軸)と吸光度(Y軸)のプロットの最高点におけるポリ(アリーレンエーテル)の分子量である。ゲル透過クロマトグラフィを用いた分子量分布決定の詳細な手順を実施例に示す。
【0029】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)は、モルホリン含有触媒で調製されたポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であり、トルエンにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を溶解し、メタノール沈殿、再スラリーおよび単離によって調製したポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)の精製されたサンプルは、250〜1,000,000原子質量単位の分子量範囲で単峰性の分子量分布を有しており、分子量が該精製サンプル全体の数平均分子量の15倍超のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を2.2質量%以下含む。一部の実施形態では、分子量を減少させる6つの等しいポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)重量画分に分離後の精製サンプルは、末端のモルホリン置換フェノキシ基を含むポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を少なくとも10モル%含む第1の、最も高い分子量画分を含む。これらの実施形態によるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)については、Carrilloらの米国特許出願公報第2011/0003962A1号にさらに記載されている。
【0030】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)は、組み込まれたジフェノキノン残基を本質的に含まない。この文脈において、「本質的に含まない」とは、ジフェノキノン残基を含むポリ(アリーレンエーテル)分子が1質量%未満であることを意味する。Hayの米国特許第3,306,874号に記載されているように、一価フェノールの酸化重合によるポリ(アリーレンエーテル)の合成では、所望のポリ(アリーレンエーテル)だけでなく、ジフェノキノンも副生成物として産出される。例えば、一価フェノールが2,6−ジメチルフェノールの場合、3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンが生成される。該ジフェノキノンは典型的には、前記重合反応混合物を加熱して末端または内部ジフェノキノン残基を含むポリ(アリーレンエーテル)を生成することによって、ポリ(アリーレンエーテル)内に「再平衡される」(すなわち、ジフェノキノンがポリ(アリーレンエーテル)構造内に取り込まれる)。例えば、図3に示すように、ポリ(アリーレンエーテル)を2,6−ジメチルフェノールの酸化重合で調製してポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンを産出する場合、反応混合物の再平衡によって、取り込まれたジフェノキノンの末端および内部残基を有するポリ(アリーレンエーテル)が生成され得る。
【0031】
しかしながら、こうした再平衡によって、ポリ(アリーレンエーテル)の分子量が低減する(例えば、pおよびq+rはn未満)。従って、より高分子量のポリ(アリーレンエーテル)が望ましい場合、該ジフェノキノンをポリ(アリーレンエーテル)鎖へ再平衡させずに、ポリ(アリーレンエーテル)から分離することが望ましいものであり得る。こうした分離は、例えば、ポリ(アリーレンエーテル)は不溶だがジフェノキノンが可溶の溶媒または溶媒混合物に、ポリ(アリーレンエーテル)を沈殿させることによって実現される。例えば、トルエン中の2,6−ジメチルフェノールの酸化重合によってポリ(アリーレンエーテル)を調製して、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンとを含むトルエン溶液を産出する場合、ジフェノキノンを本質的に含まないポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)は、該トルエン溶液1容積とメタノールまたはメタノール/水混合物約1〜約4容積とを混合することによって得られる。あるいは、酸化重合中に生成されるジフェノキノン副生成物の量は、(例えば、10質量%未満の一価フェノールの存在下で酸化重合を開始し、少なくとも50分の間に少なくとも95質量%の一価フェノールを添加することによって)最小化でき、およびまたは、ポリ(アリーレンエーテル)鎖へのジフェノキノンの再平衡は、(例えば、酸化重合終了後200分以内にポリ(アリーレンエーテル)を単離することによって)最小化できる。これらの方法は、Delsmanらの国際特許出願公報第2009/104107A1号に記載されている。トルエン中のジフェノキノンの温度依存性の溶解度を利用する代替方法では、ジフェノキノンとポリ(アリーレンエーテル)とを含むトルエン溶液の温度を、ジフェノキノンはほとんど不溶だがポリ(アリーレンエーテル)は可溶である約25℃に調整して、不溶のジフェノキノンを固液分離(例えばろ過)によって除去できる。
【0032】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位あるいはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーあるいはこれらの混合物を含む。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が約0.35〜約0.5dL/gの、具体的には約0.35〜約0.46dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含む。一部の実施形態では、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーは、約5〜約30質量%の2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル繰り返し単位と、約70〜約95質量%の2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル繰り返し単位と、を含み得る。
【0033】
該ポリ(アリーレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位置に存在するアミノアルキル含有末端基(類)を有する分子を含み得る。また、テトラメチルジフェニルキノン(TMDQ)副生成物が存在する2,6−ジメチルフェノール含有反応混合物から典型的に得られるTMDQ末端基類も存在することが多い。該ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー、ブロックコポリマー、あるいはこれらのものを少なくとも1つ含む組合せの形態であり得る。
【0034】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、約5〜約65質量部のポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は約15〜約60質量部であり得、具体的には約20〜約55質量部であり得る。
【0035】
一部の実施形態では、相溶化剤を用いて、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との相溶化ブレンドの形成を促進する。本明細書での「相溶化剤」は、該ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド、あるいはその両方と相互作用する多官能性化合物を指す。この相互作用は、化学的(例えばグラフト)であっても、およびまたは物理的(例えば、分散相の表面特性に影響を与えるなどの)であってもよい。何れの場合にも、得られるポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、特に、衝撃強度、モールドニットライン強度およびまたは引張伸び率の向上で示されるように向上した相溶性を示す。本明細書での「相溶化ブレンド」は、相溶化剤により物理的およびまたは化学的に相溶化した組成物と、例えば、相溶性がポリ(アリーレンエーテル)上の相溶性向上ジブチルアミノメチル置換基から得られる場合などのように、相溶化剤を用いずに相溶化したポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドとのブレンドと、を指す。
【0036】
使用可能な相溶化剤としては、液状ジエンポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン類、有機シラン化合物、多官能性化合物、官能化ポリ(アリーレンエーテル)類およびこれらの組合せが挙げられる。相溶化剤は、Gallucciの米国特許第5,132,365号やKoevoetsらの同第6,593,411号および同第7,226,963号にさらに記載されている。
【0037】
一部の実施形態では、該相溶化剤は多官能性化合物を含む。相溶化剤として使用可能な多官能性化合物は典型的には3種類である。多官能性化合物の第1の種類は、(a)炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合と、(b)カルボン酸基、無水物基、アミド基、エステル基、イミド基、アミノ基、エポキシ基、オルトエステル基あるいはヒドロキシ基のうちの少なくとも1つと、を分子内に含む。そうした多官能性化合物としては、マレイン酸;無水マレイン酸;フマル酸;アクリル酸グリシジル、イタコン酸;アコニット酸;マレイミド;マレインヒドラジド;ジアミンと、無水マレイン酸、マレイン酸およびフマル酸などとから得られる反応生成物;ジクロロマレイン酸無水物;マレイン酸アミド;不飽和ジカルボン酸(例えばアクリル酸、ブテン酸、メタクリル酸、アクリル酸エチル、ペンテン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、リノール酸など);前述の不飽和カルボン酸のエステル、酸アミドあるいは無水物;不飽和アルコール(例えばアルカノール、クロチルアルコール、メチルビニールカルビノール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ヘキサジエン−3−オール、3−ブテン−1,4−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキセン−2,5−ジオール、および式C2n−5OH、C2n−7OH、およびC2n−9OH(nは30以下の正の整数)で表されるアルコ−ル類);上記の不飽和アルコールの−OH基を−NH基(類)で置換して得られる不飽和アミン;官能化ジエンポリマーおよびコポリマー;およびこれらの1つまたは複数を含む組み合わせなどが挙げられる。一実施形態では、該相溶化剤は、無水マレイン酸およびまたはフマル酸を含む。
【0038】
多官能性相溶化剤の第2の種類は、(a)式(OR)(R:水素、アルキル基、アリール基、アシル基またはカルボニルジオキシ基)で表される基と、(b)カルボン酸基、酸ハロゲン化物基、無水物基、酸ハロゲン化物無水物基、エステル基、オルトエステル基、アミド基、イミド基、アミノ基およびこれらの種々の塩から選択された、それぞれが同じであっても異なっていてもよい少なくとも2つの基と、を有する。これらの相溶化剤群のうちの典型的なものは、下式で表される脂肪族ポリカルボン酸、酸エステルおよび酸アミドである:
(RO)R’(COORII(CONRIIIIV)s
式中、R’は、炭素原子数が2〜20、より具体的には2〜10の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素であり、Rは、水素、あるいは炭素原子数が1〜10の、より具体的には1〜6の、さらにより具体的には1〜4のアルキル基、アリール基、アシル基またはカルボニルジオキシ基であり、RIIはそれぞれ独立に、水素、あるいは炭素原子数が1〜20の、より具体的には1〜10のアルキル基またはアリール基であり、RIIIとRIVはそれぞれ独立に、水素、あるいは炭素原子数が1〜10の、より具体的には1〜6の、さらにより具体的には1〜4のアルキル基またはアリール基であり、mは1であり、(n+s)は2以上、より具体的には2または3であり、nおよびsはそれぞれ0以上であり、(OR)は、カルボニル基に対してαまたはβであり、少なくとも2つのカルボニル基が2〜6個の炭素原子によって分離されている。それぞれの置換基の炭素原子数が6個未満の場合、R、RII、RIIIおよびRIVはアリール基ではあり得ないことは明らかである。
【0039】
好適なポリカルボン酸としては、例えば無水酸や水和酸などの種々の市販の形態を含む、例えばクエン酸、リンゴ酸およびアガリシン酸、およびこれらの1つまたは複数を含む組み合わせなどが挙げられる。一実施形態では、該相溶化剤はクエン酸を含む。ここで有用なエステルの例としては、例えば、クエン酸アセチル、クエン酸モノステアリルおよびまたはクエン酸ジステアリルなどが挙げられる。ここで有用な好適なアミドとしては、例えば、N,N’−ジエチルクエン酸アミド、N−フェニルクエン酸アミド、N−ドデシルクエン酸アミド、N,N’−ジドデシルクエン酸アミドおよびN−ドデシルリンゴ酸などが挙げられる。誘導体には、アミンやアルカリとの塩やアルカリ金属塩を含むこれらの塩が含まれる。好適な塩としては、リンゴ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カリウムおよびクエン酸カリウムが挙げられる。
【0040】
多官能性相溶化剤の第3の種類は、(a)酸ハロゲン化物基と、(b)カルボン酸基、無水物基、エステル基、エポキシ基、オルトエステル基またはアミド基のうちの少なくとも1つ、好ましくはカルボン酸基または無水物基と、を分子内に有する。この群に属する相溶化剤としては、無水トリメリット酸クロリド、クロロホルミルコハク酸無水物、クロロホルミルコハク酸、クロロホルミルグルタル酸無水物、クロロホルミルグルタル酸、クロロアセチルコハク酸無水物、クロロアセチルコハク酸、トリメリット酸クロリドおよびクロロアセチルグルタル酸が挙げられる。一実施形態では、該相溶化剤は無水トリメリット酸クロリドを含む。
【0041】
前述の相溶化剤を該溶融ブレンドに直接添加してもよく、あるいは、該ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドのいずれかまたは両方および該ブレンドの調製に用いられる他の任意の樹脂材料と事前反応させてもよい。前記融液中または好適な溶剤の溶液中のいずれかで、前述の相溶化剤の少なくとも一部を前記ポリ(アリーレンエーテル)の全部または一部と事前反応させる場合、多くの該相溶化剤、特に前記多官能性化合物を用いることによって相溶性はさらに著しく向上する。こうした事前反応によって、相溶化剤が反応し、その結果、ポリ(アリーレンエーテル)を官能化するものと考えられる。例えば、該ポリ(アリーレンエーテル)を無水マレイン酸と事前反応させて、非官能化ポリ(アリーレンエーテル)と比べてポリアミドとの相溶性が向上した無水物−官能化ポリ(アリーレンエーテル)を形成し得る。
【0042】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの調製に相溶化剤を用いる場合、使用量は、選択された特定の相溶化剤と、それが添加される特定のポリマー系に依存するであろう。一部の実施形態では、該相溶化剤の量は、相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して約0.1〜約1質量%であり、具体的には約0.2〜約0.8質量%であり、より具体的には約0.3〜約0.6質量%である。
【0043】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドはガラス繊維を含む。好適なガラス繊維としては、E、A、C、ECR、R、S、DおよびNEガラス系のもの、および石英系のものが挙げられる。ガラス繊維の径は約2〜約30μmであり、具体的には約5〜約25μmであり、より具体的には約5〜約15μmである。混合前のガラス繊維の長さは約2〜約7mmであり得、具体的には約1.5〜約5mmであり得る。あるいは、より長いガラス繊維または連続ガラス繊維を使用し得る。ガラス繊維は選択的に、該ポリアミド、ポリ(アリーレンエーテル)またはその両方との相溶性を向上させる接着促進剤を含み得る。接着促進剤としては、クロム錯体、シラン、チタン酸塩、ジルコアルミネート、プロピレン無水マレイン酸コポリマー、反応性セルロースエステルなどが挙げられる。好適なガラス繊維は、例えば、Owens Corning社、日本電気硝子(株)、PPG社およびJohns Manville社などを含む供給者から販売されている。前記ガラス繊維が存在する場合、その量は、相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して約1〜約50質量%である。この範囲内で、ガラス繊維の量は約5〜約50質量%であり得、具体的には約10〜約40質量%であり得、より具体的には約15〜約30質量%であり得る。
【0044】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドはガラス繊維を含まない。
【0045】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは選択的に、中空ガラスビーズを含み得る。該中空ガラスビーズの容積平均粒径は約20〜約60μmであり得、具体的には約25〜約55μmであり得、より具体的には約30〜約50μmであり得、さらにより具体的には約35〜約45μmであリ得る。容積平均粒径は、顕微鏡法を含む従来の粒径計測技術を用いて求められる。3Mから供給される中空ガラスビーズの公称平均径は、試験方法3M QCM193.0に準拠して求められる。該中空ガラスビーズの真密度は約0.3〜約0.5g/mLであり得、具体的には約0.35〜約0.45g/mLであり得、より具体的には約0.35〜約0.4g/mLであリ得る。ここでの「真密度」は単一のガラスビーズの密度に相当し、充填に依存する、複数のガラスビーズのかさ密度と対比されるものである。3Mから供給される中空ガラスビーズの公称真密度は、試験方法3M QCM14.24.1に準拠して求められる。該中空ガラスビーズのアイソスタチック破砕強度は約30〜約60MPaであり得、具体的には約35〜約55MPaであり得、より具体的には約35〜約50MPaであり得、さらにより具体的には約35〜約45MPaであり得、さらにより具体的には約35〜約40MPaであリ得る。アイソスタチック破砕強度は、ASTM D3102−78(1982):「Practice for Determination of Isostatic Collapse Strength of Hollow Glass Microspheres」に準拠して求められる。3Mから供給される中空ガラスビーズの公称アイソスタチック破砕強度は、試験方法3M QCM14.1.8に準拠して求められる。前記中空ガラスビーズを選択的に表面処理して、ポリアミド含有マトリックスとの相溶性を向上させることができる。好適な表面処理剤としては、例えば、アミノシランやエポキシシランなどが挙げられる。表面処理剤を使用する場合、典型的には約0.5〜約20単分子層の表面部分被覆で用いられる。中空ガラスビーズの調製方法は既知であり、例えば、Binghamの米国特許第3,700,478号、Howellの同第4,391,646号、Tanakaらの同第6,531,222号およびAndersonの同第6,914,024号などに記載されている。また、好適な中空ガラスビーズは、例えば、3Mから、Glass Bubbles K46、Glass Bubbles S38XHSおよびGlass Bubbles S38HSとして市販されている。アミノシラン処理品を含む前述の中空ガラスビーズの表面処理品も使用できる。中空ガラスビーズが存在する場合、その量は、相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して約0.5〜約10質量%であリ得る。この範囲内で、中空ガラスビーズの量は約1〜約8質量%であり得、具体的には約2〜約6質量%であリ得る。
【0046】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは選択的に、補強充填剤およびまたは増量剤を含み得る。こうした充填剤としては、例えば、クレイ(ナノクレイを含む)、カオリン、雲母、珪灰石、シリカ、タルクおよびこれらの組み合わせが挙げられる。充填剤が存在する場合、その量は、相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して約5〜約50質量%であり得、具体的には約10〜約40質量%であり得る。
【0047】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、該ポリアミドを含む連続相と、該ポリ(アリーレンエーテル)を含む分散相と、を含む。
【0048】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドはさらに耐衝撃性改良剤を含む。耐衝撃性改良剤は、例えば、典型的にはスチレンブロックであるアルケニル芳香族ブロックA(アルケニル芳香族繰り返し単位を有するブロック)を1個または2個と、典型的にはイソプレンまたはブタジエンブロックであるゴムブロックBを1個と、を有するA−BジブロックコポリマーおよびA−B−Aトリブロックコポリマーなどのアルケニル芳香族繰り返し単位を含むブロックコポリマーであり得る。該ブタジエンブロックは、部分的または完全に水素化され得る。また、これらのジブロックおよびトリブロックコポリマーの混合物も、非水素化コポリマー、部分的に水素化されたコポリマー、完全に水素化されたコポリマーおよびこれらの2つ以上のものの組み合わせの混合物と同様に使用できる。A−BおよびA−B−Aコポリマーとしては、これに限定されないが、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン(SEP)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン−スチレン)−ポリスチレンなどが挙げられる。これらのブロックコポリマーの混合物も有用である。こうしたA−BおよびA−B−Aブロックコポリマーは多くの供給元から販売されており、その中には、Phillips Petroleum社から商標名SOLPRENEで販売されているもの、Kraton Polymers社から同KRATONとして販売されているもの、Dexco社から同Vectorとして販売されているもの、旭化成ケミカルズ(株)から同TUFTECとして販売されているもの、Total Petrochemicals社から同FINAPRENEおよびFINACLEARとして販売されているもの、Dynasol社から同CALPRENEとして販売されているもの、および(株)クラレから同SEPTONとして販売されているものが含まれる。一実施形態では、該耐衝撃性改良剤は、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)またはこれらの組み合わせを含む。
【0049】
別のタイプの耐衝撃性改良剤は、アルケニル芳香族繰り返し単位を本質的に含まず、カルボン酸、無水物、エポキシ、オキサゾリンおよびオルトエステルから構成される群から選択された1つまたは複数の部分を含む。本質的に含まないとは、アルケニル芳香族単位の量が、ブロックコポリマーの合計質量に対して5質量%未満、より具体的には3質量%未満、さらにより具体的には2質量%未満であると定義される。該耐衝撃性改良剤がカルボン酸部分を含む場合、該カルボン酸部分は、イオンで、好適には亜鉛またはナトリウムなどの金属イオンで中和されていてもよい。それは、アルキレン基が2〜6個の炭素原子を有し得、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基が1〜8個の炭素原子を有し得るアルキレン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーであり得る。このタイプのポリマーは、例えばエチレンおよびプロピレンなどのオレフィンと、種々の(メタ)アクリレートモノマーおよびまたは種々のマレイン酸系モノマーとの共重合により調製できる。(メタ)アクリレートは、アクリレートと対応するメタクリレート類似物の両方を指す。該(メタ)アクリレートモノマーに含まれるものとしては、アルキル(メタ)アクリレートモノマーおよび、前述の反応性部分を少なくとも1つ含む種々の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。一実施形態では、該コポリマーは、そのアルキレン成分がエチレン、プロピレンあるいはこれらの混合物から誘導され;付加的な反応性部分(すなわち、カルボン酸、無水物、エポキシ)を付与するモノマーとしてアクリル酸、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジルあるいはこれらの組み合わせを有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー成分がアクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシルまたはアクリル酸プロピルおよび対応するアルキル(メチル)アクリレートから誘導される。典型的な耐衝撃性改良剤は種々の供給元から市販されており、その中には、DuPont社から商標名ELVALOY PTW、SURLYNおよびFUSABONDとして販売されているものが含まれる。
【0050】
該耐衝撃性改良剤は、単独であるいは組み合わせて使用できる。
【0051】
耐衝撃性改良剤が存在する場合、その量は、相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して約1〜約15質量%であリ得る。この範囲内で、耐衝撃性改良剤の量は約1.5〜約13質量%であり得、具体的には約2〜約12質量%であり得、より具体的には約4〜約10質量%であり得る。
【0052】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、任意の耐衝撃性改良剤を1質量%以下、具体的には0.5質量%以下、より具体的には0.1質量%以下含む。一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは耐衝撃性改良剤を含まない。
【0053】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、該ポリアミドを含む連続相と該ポリ(アリーレンエーテル)を含む分散相とを含み、該連続相は耐衝撃性改良剤を含まない。
【0054】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ピストンガイドリングの摺動性を向上させ、それにより使用され得るピストンの摺動速度を増加させるフッ素化ポリマーを含む。フッ素化ポリマーとしては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、2−クロロペンタフルオロプロペン、ジクロロジフルオロエチレンおよび1,1−ジクロロフルオロエチレンなどのモノマーのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。一部の実施形態では、該フッ素化ポリマーはテトラフルオロエチレンを含む。該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドにフッ素化ポリマーが存在する場合、その量は、相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して約1〜約20質量%であり、具体的には約5〜約15質量%である。
【0055】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドはさらに選択的に、1種または複数種の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、離型剤、加工助剤、難燃剤、防滴剤、成核剤、帯電防止剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせが挙げられる。こうした添加剤が用いられる場合、その合計量は、相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して、典型的には5質量%以下であり、具体的には3質量%以下であり、より具体的には1質量%以下である。
【0056】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは導電性充填剤を含まない。
【0057】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは難燃剤を含まない。
【0058】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドはポリオレフィンを含まない。
【0059】
一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリオレフィン、耐衝撃性改良剤、導電性充填剤および難燃剤を含まない。
【0060】
特定の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、約25〜約45質量部のポリ(アリーレンエーテル)と、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6およびこれらの混合物から構成される群から選択された、約40〜約60質量部のポリアミドと、相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して、約20〜約40質量%のガラス繊維と、を含む。該ポリ(アリーレンエーテル)は選択的に、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含み得る。一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度100℃において少なくとも35MPaであり、具体的には35〜約70MPaであり、より具体的には約38〜約55MPaである。一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度130℃において少なくとも30MPaであり、具体的には30〜50MPaであり、より具体的には約33〜約40MPaである。該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは選択的に、ポリオレフィン、耐衝撃性改良剤、導電性充填剤および難燃剤を含まないものであり得る。
【0061】
別の特定の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、約40〜約60質量部のポリ(アリーレンエーテル)と、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6およびこれらの混合物から構成される群から選択された、約40〜約60質量部のポリアミドと、を含み、ガラス繊維を含まない。該ポリ(アリーレンエーテル)は選択的に、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含み得る。一部の実施形態では、ガラス繊維を含まない該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度100℃において少なくとも20MPaであり、具体的には20〜約35MPaであり、より具体的には約25〜約30MPaである。一部の実施形態では、ガラス繊維を含まない該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度130℃において少なくとも17MPaであり、具体的には17〜約30MPaであり、より具体的には約19〜約25MPaであり、さらにより具体的には約20〜約25MPaである。該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは選択的に、ポリオレフィン、耐衝撃性改良剤、導電性充填剤および難燃剤を含まないものであり得る。
【0062】
該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、圧縮強度と剛性の望ましい組み合わせを有する。例えば一部の実施形態では、該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度100℃において少なくとも25MPaであり、具体的には約25〜約70MPaであり、より具体的には約30〜約70MPaであり、さらにより具体的には約35〜約60MPaであり、さらにより具体的には約38〜約55MPaであり;曲げ弾性率は、ASTM D790−10に準拠し温度23℃で測定して、少なくとも2,000MPaであり、具体的には2,000〜約20,000MPaである。該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドがガラス繊維を含まない場合、曲げ弾性率は約2,000〜約4,000MPaであり得、具体的には約2,000〜約3,000MPaであり得る。該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドがガラス繊維を含む場合、曲げ弾性率は約6,000〜約20,000MPaであり得、具体的には約7,000〜約15,000MPaであり得、さらにより具体的には約7,500〜約10,000MPaであり得る。
【0063】
ピストンガイドリングの形状と寸法は、それが使用されるピストン−シリンダ組立体の形状と寸法によって変わり得る。一部の実施形態では、該ピストンガイドリングの径(外形)は約20〜約200cmであり、具体的には約40〜約150cmであり、より具体的には約60〜約10cmであり;幅(ピストン−シリンダ軸方向の)は約3〜約30mmであり、具体的には約5〜約20mmであり、より具体的には約7〜約10mmであり;厚み(外形と内径間の)は約1〜約10mmであり、具体的には約2〜約8mmであり、より具体的には約3〜約6mmである。
【0064】
射出成形とその後の機械加工によってガイドリングを形成する方法は当分野では既知であり、例えば、Deppertらの米国特許第6,033,227号に記載されている。Lindstenらの米国特許出願公報第2006/0099950A1号に記載されている密閉リングの製造方法を用いても、本発明のガイドリングを形成できる。
【0065】
ガイドリングを形成する例証的な方法を以下に記す。射出成形により、密閉端と開放端とを有する円筒状管を形成する。該管の外径は、完成したガイドリングの外径よりわずかに大きく、その内径は、完成したガイドリングの内径よりわずかに小さい。該管の長さは、完成したガイドリングの約20〜40個の長さに等しい。該管の外表面を機械加工して、完成したガイドリングの所望の外径に一致させる。該管の内表面を機械加工して、完成したガイドリングの所望の内径に一致させる。その後、機械加工した管を所望の幅のガイドリングに分割する。
【0066】
本発明は、該ピストンガイドリングを備えたピストン−シリンダ組立体を含む。従って、一実施形態は、シリンダ室を画定するシリンダ内壁を備えたシリンダと、前記シリンダ室内に摺動可能に配置され、ピストンの少なくとも1つの溝を確定するピストン外壁を備えたピストンと、前記少なくとも1つの溝内に取り付けられ、前記シリンダ内壁に摺動可能に接する外表面と前記溝を画定する前記ピストン外壁に接する内表面とを備えた少なくとも1つのピストンガイドリングと、を備え、前記ピストンガイドリングは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、約35〜約95質量部の前記ポリアミドと、約5〜約65質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、を含む相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを含有するピストン−シリンダ組立体である。該相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの文脈における上記の組成に関する変形のすべては、該ピストン−シリンダ組立体に使用されるピストンガイドリングにも同様に適用される。
【0067】
本発明は少なくとも以下の実施形態を含む。
【0068】
実施形態1:ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、約35〜約95質量部の前記ポリアミドと、約5〜約65質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、を含む相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを含有するピストンガイドリング。
【0069】
実施形態2:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度100℃において少なくとも25MPaであり、曲げ弾性率は、ASTM D790−10に準拠し温度23℃で測定して少なくとも2,000MPaである実施形態1に記載のピストンガイドリング。
【0070】
実施形態3:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度130℃において少なくとも17MPaである実施形態1または実施形態2に記載のピストンガイドリング。
【0071】
実施形態4:前記ポリアミドは、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6またはこれらの混合物を含む実施形態1乃至実施形態3のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0072】
実施形態5:前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーあるいはこれらの混合物を含む実施形態1乃至実施形態4のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0073】
実施形態6:前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含む実施形態1乃至実施形態5のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0074】
実施形態7:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、その合計質量に対して、約1〜約50質量%のガラス繊維をさらに含む実施形態1乃至実施形態6のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0075】
実施形態8:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ガラス繊維を含まない実施形態1乃至実施形態6のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0076】
実施形態9:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、前記ポリアミドを含む連続相と前記ポリ(アリーレンエーテル)を含む分散相とを含み、前記連続相は耐衝撃性改良剤を含まない実施形態1乃至実施形態8のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0077】
実施形態10:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、耐衝撃性改良剤を含まない実施形態1乃至実施形態9のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0078】
実施形態11:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、導電性充填剤を含まない実施形態1乃至実施形態10のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0079】
実施形態12:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、難燃剤を含まない実施形態1乃至実施形態11のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0080】
実施形態13:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリオレフィンを含まない実施形態1乃至実施形態12のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0081】
実施形態14:径が約20〜約200cm、幅が約3〜約30mm、厚みが約1〜約10mmである実施形態1乃至実施形態13のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0082】
実施形態15:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、約25〜約45質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6およびこれらの混合物から構成される群から選択された、約40〜約60質量部の前記ポリアミドと、前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して、約20〜約40質量%のガラス繊維と、を含む実施形態1に記載のピストンガイドリング。
【0083】
実施形態16:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度100℃において少なくとも35MPaである実施形態15に記載のピストンガイドリング。
【0084】
実施形態17:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度130℃において少なくとも30MPaである実施形態15または実施形態16に記載のピストンガイドリング。
【0085】
実施形態18:前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含む実施形態15乃至実施形態17のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0086】
実施形態19:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリオレフィン、耐衝撃性改良剤、導電性充填剤および難燃剤を含まない実施形態15乃至実施形態18のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0087】
実施形態20:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、約40〜約60質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6およびこれらの混合物から構成される群から選択された、約40〜約60質量部の前記ポリアミドと、を含み、ガラス繊維を含まない実施形態1に記載のピストンガイドリング。
【0088】
実施形態21:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度100℃において少なくとも20MPaである実施形態20に記載のピストンガイドリング。
【0089】
実施形態22:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの圧縮強度は、歪5%、温度130℃において少なくとも17MPaである実施形態20または実施形態21に記載のピストンガイドリング。
【0090】
実施形態23:前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーを含む実施形態20乃至実施形態22のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0091】
実施形態24:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリオレフィン、耐衝撃性改良剤、導電性充填剤および難燃剤を含まない実施形態20乃至実施形態23のいずれかに記載のピストンガイドリング。
【0092】
実施形態25:シリンダ室を画定するシリンダ内壁を備えたシリンダと、前記シリンダ室内に摺動可能に配置され、ピストンの少なくとも1つの溝を確定するピストン外壁を備えたピストンと、前記少なくとも1つの溝内に取り付けられ、前記シリンダ内壁に摺動可能に接する外表面と前記溝を画定する前記ピストン外壁に接する内表面とを備えた少なくとも1つのピストンガイドリングと、を備え、前記ピストンガイドリングは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、約35〜約95質量部の前記ポリアミドと、約5〜約65質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、を含む相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを含有することを特徴とするピストン−シリンダ組立体。
【0093】
実施形態26:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、約25〜約45質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6およびこれらの混合物から構成される群から選択された、約40〜約60質量部の前記ポリアミドと、前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの合計質量に対して、約20〜約40質量%のガラス繊維と、を含む実施形態25に記載のピストン−シリンダ組立体。
【0094】
実施形態27:前記相溶化ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、2,6−ジメチルフェノールのホモポリマー、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマーおよびこれらの混合物から構成される群から選択された、約40〜約60質量部の前記ポリ(アリーレンエーテル)と、ポリアミドとポリ(アリーレンエーテル)との合計100質量部に対して、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6およびこれらの混合物から構成される群から選択された、約40〜約60質量部の前記ポリアミドと、を含み、ガラス繊維を含まない実施形態25に記載のピストン−シリンダ組立体。
【0095】
以下の非限定的実施例によって、本発明をさらに例証する。
【0096】
実施例1〜8、比較実施例1
組成物形成用の成分を表1に示す。
【表1】
【0097】
組成物を表2に示す。成分量の単位は質量部である。内径が30mm、4つの供給ポートを有するWerner & Pfleiderer二軸押出機を、スクリュー回転速度240rpm、処理量約18kg/hr(約40lb/hr)で運転してこれらの成分を混合した。ポリ(アリーレンエーテル)含有組成物(実施例1〜8)では、供給口からダイまでのバレル温度を、260/288/288/288/288/260/249/249/249/271℃(500/550/550/550/550/500/480/480/480/520°F)とした。ポリ(アリーレンエーテル)を含まない比較実施例1では、供給口からダイまでのバレル温度を、204/221/221/221/221/221/221/221/221/232℃(400/430/430/430/430/430/430/430/430/450°F)とした。比較実施例1では、粉末ポリアミド−6,6と添加剤を供給口(すなわち、最上流側の供給ポート)から添加し、ポリアミドを第1の下流側供給ポートから添加し、ガラス繊維を第3の(最)下流側供給ポートから添加した。実施例1〜4では、ポリ(アリーレンエーテル)と添加剤を供給口(すなわち、最上流側の供給ポート)から添加し、ポリアミド−6,6を第1の下流側供給ポートから添加し、ガラス繊維を第3の(最)下流側供給ポートから添加した。実施例5〜8では、ポリ(アリーレンエーテル)と添加剤を供給口(すなわち、最上流側の供給ポート)から添加し、ポリアミド−6,6を第1の下流側供給ポートから添加した。押出品をペレット化し220℃×3時間乾燥させて、射出成形に用いた。
【0098】
表2には組成物の特性も示す。Van Dorn120T射出成形機を用いて、物性試験用の試験サンプルを射出成形した。実施例1〜8のポリ(アリーレンエーテル)含有組成物では、バレル温度を299℃(570°F)、金型温度を88℃(190°F)とした。ポリ(アリーレンエーテル)を含まない比較実施例1では、バレル温度を277℃(530°F)、金型温度を88℃(190°F)とした。ISO 1133(2005)に準拠し温度280℃、荷重5kgで、メルトボリュームフローレート(MVR)(単位:cm/10min)を測定した。ASTM D648−07、方法Bに準拠し、厚みが6.35mm(0.25インチ)のサンプルを用い、応力1.82MPa(264psi)で熱変形温度(HDT)(単位:℃)を測定した。ASTM D256−10に準拠し温度23℃で、ノッチ付アイゾッド衝撃強度(単位:J/m)を測定した。ASTM D790−10に準拠し、厚みが6.35mm(0.25インチ)のサンプルを用い、温度23℃で,曲げ弾性率(単位:MPa)と曲げ降伏点応力(単位:MPa)を測定した。インフロー方向長さが5cm、クロスフロー方向長さが5cm、厚みが2mmの額サンプルを射出成形し、温度23℃×相対湿度50%で24時間状態調節し、型に対する成形部品の収縮を測定して、インフロー収縮(単位:%)とクロスフロー収縮(単位:%)を求めた。相対湿度100%×温度23℃で89日経過後のポリアミド−6,6質量分率に純粋なポリアミド−6,6に対する8.4%を乗じて、推定吸湿量(単位:質量%)を算出した。
【0099】
Zwick Z010万能試験機を用いて、相対湿度50%、温度23℃、100℃および130℃における一軸圧縮強度を求めた。試験サンプルは、径が6mm、高さが6mmの射出成形シリンダである。試験前に、温度23℃×相対湿度50%で48時間、サンプルを状態調節した(ISO291)。試験中、サンプルのシリンダ端部の平行面に圧縮荷重をかけた。試験速度は1mm/minとした。試験中、荷重とたわみ(歪)を記録した。歪が50%に達すると試験を終了した。1組成物当たり3サンプルを試験しこれを平均して、図4〜6(歪0〜10%に対するデータ)と図7〜9(歪0〜50%に対するデータ)に示す結果を得た。圧縮強度をF/A(F:印加荷重(単位:N)、A:シリンダの一端面の面積(単位:mm))により算出した。歪5%における圧縮強度値を表2に示す。図10の(a)と(b)は、比較実施例1の走査型電子顕微鏡写真(それぞれ倍率が異なる)であり、(c)と(d)は、実施例1の走査型電子顕微鏡写真(それぞれ倍率が異なる)である。ガラス繊維の横断面は、すべての写真において明瞭である。ポリ(アリーレンエーテル)分散相は、実施例1の写真(c)および(d)で明瞭である。
【0100】
表2の結果は、実施例1〜4のガラス充填ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドの高温(100℃および130℃)における圧縮強度は、ポリ(アリーレンエーテル)を含まない比較実施例1の対応するガラス充填ポリアミドより高いことを示している。ポリ(アリーレンエーテル)コポリマーを含む実施例3および4ブレンドの圧縮強度が最高であった。また、実施例1〜4の収縮は、比較実施例1に比べてより等方性であった。
【0101】
実施例5〜8のガラス未充填ポリアミド−ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、良好な圧縮強度、低吸湿量および比較的等方性の収縮を呈しており、2次の(成形後の)工程がないプロセスで形成される低デューティおよび中間デューティピストンガイドリングに対する良き候補になっている。
【表2】
【0102】
本明細書では実施例を用いて最良の実施形態を含めて本発明を開示しており、当業者によって本発明をなし使用することを可能にしている。本発明の特許範囲は請求項によって定義され、当業者がもたらすその他の実施例も包含し得る。こうしたその他の実施例は、請求項の文字どおりの解釈と違わない構成要素を有する場合、あるいは請求項の文字どおりの解釈とごくわずかな違いしかない等価な構成要素を含む場合には、請求項の範囲内であると意図される。
【0103】
引用された特許、特許出願および他の参考文献はすべて、参照により本明細書に援用される。しかしながら、本出願中の用語が援用された参考文献の用語と矛盾するか対立する場合、本出願の用語が援用された参考文献の矛盾する用語に優先する。
【0104】
本明細書で開示された範囲はすべて、終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組み合わせできる。本明細書で開示した範囲はそれぞれ、この開示範囲内の任意の点またはサブ範囲の開示を構成する。
【0105】
本発明の記述文脈(特に以下の請求項の文脈)における単数表現は、本明細書で別途明示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数および複数を含むものと解釈される。また、本明細書で用いられる、「第1の」「第2の」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いられるものである。量に関連して用いた「約」は、記載された数値を含むものであり、文脈上決定される意味(例えば、特定の量の測定に関連した誤差の程度を含む)を有するものである。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10