特許第5845372号(P5845372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジャスト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5845372-健康状態監視システム 図000002
  • 特許5845372-健康状態監視システム 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5845372
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】健康状態監視システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20151224BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20151224BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   A61B5/00 102C
   G08B21/02
   A61B5/10 310A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-142682(P2015-142682)
(22)【出願日】2015年7月17日
【審査請求日】2015年7月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506318517
【氏名又は名称】ジャスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】古川 純一
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−078477(JP,A)
【文献】 特開2008−102893(JP,A)
【文献】 特許第5759043(JP,B1)
【文献】 特開2004−108789(JP,A)
【文献】 特開2002−288758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/11
G08B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の区画領域内における寝具上のユーザの生体情報を検出するバイタル検知部と、
前記区画領域内に設けられ、前記ユーザの動きを検出する区画内ジェスチャ検知部と、
前記バイタル検知部に加え、前記区画内ジェスチャ検知部から送信される情報も考慮して、前記ユーザの健康状態を判断する判断部と、
を備え
前記判断部は、
前記生体情報に基づいて前記ユーザの健康状態が悪化したと推測されるときに、前記区画内ジェスチャ検知部からの情報に基づいて前記ユーザが前記寝具から離れたことを確認した場合は、健康状態が悪化していないものと判断することを特徴とする健康状態監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の健康状態監視システムにおいて、
前記区画領域外に設けられ、前記ユーザの動きを検出する区画外ジェスチャ検知部をさらに備え、
前記判断部は、前記区画内ジェスチャ検知部と前記区画外ジェスチャ検知部の情報に基づいて、前記ユーザの前記区画領域内への入退室を判断することを特徴とする健康状態監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康状態監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会が社会的問題になりつつあり、マンションや介護施設などで一人暮らしをする高齢者が増えている。このような場合、近親者が介護することが望ましいが、常時一緒にいることは難しく、遠隔で高齢者の健康状態を監視できるシステムの開発が望まれている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、脈拍数、心拍数等の生理学的特徴の情報からユーザがベッドから離床しようとしているかどうかを判定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−263305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のシステムでは、生理学的特徴に基づいて離床を判定しているため、正確な判定が難しい。すなわち、この特許文献1のシステムでは、ユーザが離床したのか、あるいはユーザの健康状態が悪化したのかを区別できない場合がある。
【0006】
本発明の目的は、より正確にユーザの健康状態を監視することを可能とする健康状態管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る健康状態監視システムは、所定の区画領域内における寝具上のユーザの生体情報を検出するバイタル検知部と、前記区画領域内に設けられ、前記ユーザの動きを検出する区画内ジェスチャ検知部と、前記バイタル検知部に加え、前記区画内ジェスチャ検知部から送信される情報も考慮して、前記ユーザの健康状態を判断する判断部と、を備え、前記判断部は、前記生体情報に基づいて前記ユーザの健康状態が悪化したと推測されるときに、前記区画内ジェスチャ検知部からの情報に基づいて前記ユーザが前記寝具から離れたことを確認した場合は、健康状態が悪化していないものと判断することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る健康状態監視システムにおいて、前記区画領域外に設けられ、前記ユーザの動きを検出する区画外ジェスチャ検知部をさらに備え、前記判断部は、前記区画内ジェスチャ検知部と前記区画外ジェスチャ検知部の情報に基づいて、前記ユーザの前記区画領域内への入退室を判断することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの生体情報を検出するバイタル検知部に加えて、ユーザの動きを検出する区画内ジェスチャ検知部から得られる情報に基づいて、ユーザの健康状態を監視している。これにより、より正確にユーザの健康状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の健康状態監視システムの構成図である。
図2】本発明に係る実施形態の健康状態監視システムがユーザの健康状態を監視する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、健康状態監視システム10を示す図である。健康状態監視システム10は、バイタル検知部12a,12b,12cと、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cと、区画外ジェスチャ検知部16a,16b,16cと、判断部18とを備える。
【0014】
ここでは、健康状態監視システム10が、3つの部屋20a,20b,20cと、トイレ22と、管理人室24とを備える介護施設26に設置されるものとして説明するが、もちろん、その他の施設、例えば、高齢者用マンション等に設置されてもよい。
【0015】
バイタル検知部12a,12b,12cは、所定の区画領域内である部屋20a,20b,20cにおける寝具21a,21b,21c上のユーザ8a,8b,8cの生体情報を検出する。バイタル検知部12a,12b,12cは、寝具21a,21b,21cにおいて、ユーザ8a,8b,8cが横たわった際の胸部に対応する位置に応じて設置されることが好ましい。バイタル検知部12a,12b,12cが検出する生体情報として、例えば、ユーザ8a,8b,8cの脈拍、呼吸、体動等が含まれている。ユーザ8a,8b,8cは、ここでは、人、特に高齢者であるとして説明するが、人以外の動物、例えば、犬や猫であってもよい。
【0016】
バイタル検知部12a,12b,12cは、マイクロ波ドップラセンサを用いて、ユーザ8a,8b,8cの身体にマイクロ波を照射し、その反射波を受信することで、非接触かつストレスなく被測定者の脈拍、呼吸を測定する。
【0017】
ここで、上述した反射波には、脈拍、呼吸、体動が混入している。脈拍、呼吸、体動は、固有の周波数成分を有している。一般的に、呼吸に関わる周波数は、脈拍に関わる周波数よりも低い。このような傾向もあるから、マイクロ波ドップラセンサから得られる信号をフーリエ変換した周波数成分の分布からピーク値を選択する周波数閾値範囲を、脈拍や呼吸を検出するようにそれぞれ設定することで、脈拍と呼吸とを計測できる。
【0018】
体動は、ユーザ8a,8b,8cの体が痙攣などを起こしていなければ、一般的にはその周波数は低く、周波数分布のピーク値も低いため、脈拍や呼吸と容易に見分けることができる。
【0019】
区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cは、部屋20a,20b,20c内に設けられ、ユーザ8a,8b,8cの動きを検出する。区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cは、各部屋のドア23a,23b,23cの近傍に設置されることが好適である。
【0020】
区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cの例としては、マイクロソフト社のKINECT(登録商標)がある。区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cは、三角測量方式やTOF(Time Of Flight)方式等を用いた距離画像センサであり、ユーザ8a,8b,8cの移動範囲内の距離画像をあらかじめ定めた時間間隔ごとに求めて出力する。区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cは、所定のパターンをもったレーザをスクリーンの投射面の前の空間領域に投射して、ユーザ8a,8b,8cの身体から反射した光のパターンの歪みに基づいて画素毎の距離データを算出し、画素毎の距離データに基づきそれらのモーションを検出することができる。
【0021】
また、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cは、距離画像を出力する代わりに、距離画像を解析することで得られる特徴量を出力するものであってもよい。例えば、距離画像を解析することで、ユーザ8a,8b,8cの動きを抽出し、抽出した三次元位置を特徴量として時々刻々、出力してもよい。
【0022】
区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cの他の例としては、LEAP MOTION社のモーションセンサがある。なお、区画内ジェスチャ検知部14は上記したものに限定されるものではない。
【0023】
区画外ジェスチャ検知部16a,16b,16cは、部屋20a,20b,20c外に設けられ、ユーザ8a,8b,8cの動きを検出する。区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cは、共用廊下25のうち、各部屋のドア23a,23b,23cからユーザ8a,8b,8cが出てくる様子を撮影可能な位置に設置されることが好適である。
【0024】
バイタル検知部12a,12b,12c、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14c及び区画外ジェスチャ検知部16a,16b,16cが検出した情報は、管理人室24のコンピュータ25へ伝送され、インターネット28を経由して、遠隔監視センタ30のコンピュータである判断部18に伝送される。
【0025】
判断部18は、バイタル検知部12a,12b,12cに加え、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14c及び区画外ジェスチャ検知部16a,16b,16cから送信される情報も考慮して、ユーザ8a,8b,8cの健康状態を判断する。
【0026】
判断部18は、バイタル検知部12a,12b,12cによって検出された生体情報、すなわち脈拍、呼吸、体動に基づいて、ユーザ8a,8b,8cの健康状態を判断する。
【0027】
判断部18は、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cによって検出された情報に基づいて、ユーザ8a,8b,8cが寝具21a,21b,21cから離れているか否かを判断する。
【0028】
判断部18は、区画外ジェスチャ検知部16a,16b,16cによって検出された情報に基づいて、ユーザ8a,8b,8cがトイレ22等のために共用廊下25を移動しているか否かを判断する。
【0029】
判断部18は、バイタル検知部12a,12b,12c及び区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cからの情報に基づいて、ユーザ8a,8b,8cの健康状態が悪化していると判断した場合には、管理人室24のコンピュータ25に警告を行う。しかし、判断部18は、バイタル検知部12a,12b,12cによって検出された生体情報からユーザ8a,8b,8cの健康状態が悪化していると推定される場合であっても、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cからの情報に基づいてユーザ8a,8b,8cが寝具21a,21b,21cから離れていると判断した場合には、ユーザ8a,8b,8cの健康状態が悪化したとは判断しない。
【0030】
判断部18は、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14c及び区画外ジェスチャ検知部16a,16b,16cによって検出された情報に基づいて、ユーザ8a,8b,8cへの入退室を判断することができる。
【0031】
続いて、上記構成の健康状態監視システム10の作用を説明する。図2は、健康状態監視システム10がユーザ8a,8b,8cの健康状態を監視する手順を示すフローチャートである。
【0032】
最初に、ユーザ8a,8b,8cの生体情報を取得する(S2)。この工程は、バイタル検知部12a,12b,12cの機能によって実行される。
【0033】
次に、ユーザ8a,8b,8cの動きを検出する(S4)。この工程は、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cの機能によって実行される。
【0034】
次いで、ユーザ8a,8b,8cの生体情報、すなわち、脈拍、呼吸、体動に基づいて、ユーザ8a,8b,8cの健康状態が悪化したか否かを判断する(S6)。この工程は、判断部18の機能によって実行される。ユーザ8a,8b,8cの健康状態が悪化していないと判断した場合には、再びS2の工程へと戻る。
【0035】
ユーザ8a,8b,8cの健康状態が悪化したと判断した場合には、ユーザ8a,8b,8cが寝具21a,21b,21cから離れたか否かを判断する(S8)。この工程は、判断部18の機能によって実行される。ユーザ8a,8b,8cが寝具21a,21b,21cから離れたと判断した場合には、ユーザ8a,8b,8cの健康状態は悪化していないものと結論づけて再びS2の工程へと戻る。
【0036】
ユーザ8a,8b,8cが寝具21a,21b,21cから離れていないと判断した場合には、ユーザ8a,8b,8cの健康状態は悪化しているものと結論づけて、管理人室24のコンピュータ25に警告を行う(S10)。この工程は、判断部18の機能によって実行される。この警告により、管理人室24の管理人は、ユーザ8a,8b,8cの様子を確認し、必要に応じて救急車を呼ぶといった対応を迅速に行うことができる。
【0037】
このように、健康状態監視システム10によれば、ユーザ8a,8b,8cの生体情報に基づいて、ユーザ8a,8b,8cの健康状態が悪化したと推定される場合であっても、ユーザ8a,8b,8cが寝具21a,21b,21cから離れたと判断した場合には、健康状態が悪化したと結論づけずに継続して監視を続ける。すなわち、誤った判断を防止することができる。これにより、より正確にユーザ8a,8b,8cの健康状態を監視することができる。
【0038】
また、健康状態監視システム10において、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14c及び区画外ジェスチャ検知部16a,16b,16cによって検出された情報に基づいて、ユーザ8a,8b,8cへの入退室を判断し、そのユーザ8a,8b,8cの生活習慣を記録することが好ましい。この場合、例えば、トイレ22等に行く際の時間が記録されていた場合、その平均時間に比べて、極端に長い時間退室している場合には、部屋20a,20b,20cの外で健康状態の悪化等が生じた可能性があるため、判断部18は管理人室24のコンピュータ25に警告を行うようにすることもより好適である。
【0039】
なお、健康状態監視システム10によれば、上記のように、より正確にユーザ8a,8b,8cの健康状態を監視することができ、独居高齢者の孤独死などを未然に防止することができる。したがって、孤独死が発生したことによる介護施設26等の風評被害等も未然に防止することができる利点がある。
【0040】
また、健康状態監視システム10において、トイレ22のドアや建屋のエントランスに区画外ジェスチャ検知部を設けることによって、ユーザ8a,8b,8cがトイレに入ったことや建屋から出ようとしていることを把握することも可能である。このような動きを管理人室24に伝えることでユーザ8a,8b,8cの徘徊防止にも貢献することができる。
【0041】
そして、健康状態監視システム10によれば、区画内ジェスチャ検知部、区画外ジェスチャ検知部を用いて、ユーザ8a,8b,8cを検出しているため、顔情報の認証といった個人情報を取得する必要がなく、かつ、ユーザ8a,8b,8cをそれぞれ識別することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
8a,8b,8c ユーザ、10 健康状態監視システム、12a,12b,12c バイタル検知部、14a,14b,14c 区画内ジェスチャ検知部、16a,16b,16c 区画外ジェスチャ検知部、18 判断部、20a,20b,20c 部屋、21a,21b,21c 寝具、22 トイレ、23a,23b,23c ドア、24 管理人室、25 共用廊下、25 コンピュータ、26 介護施設、28 インターネット、30 遠隔監視センタ。
【要約】
【課題】より正確にユーザの健康状態を監視することを可能とする健康状態管理システムを提供することである。
【解決手段】部屋20a,20b,20cにおける寝具21a,21b,21c上のユーザ8a,8b,8cの生体情報を検出するバイタル検知部12a,12b,12cと、部屋20a,20b,20c内に設けられ、ユーザ8a,8b,8cの動きを検出する区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14cと、バイタル検知部12a,12b,12cに加え、区画内ジェスチャ検知部14a,14b,14から送信される情報も考慮して、ユーザ8a,8b,8cの健康状態を判断する判断部18と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2