【実施例1】
【0012】
本発明の超低落差超低流量対応型水力発電装置1を
図1ないし
図6を用いて説明する。
この実施例の超低落差超低流量対応型水力発電装置1は、
図1に示すように、水路2と、水路2に配され回転軸3と回転軸3の外面3aに設けられた螺旋状羽根部材4とを有した羽根車5と、回転軸3を回転可能に支持する軸受け部6a,6bと、回転軸3に回転力伝達手段7a,7b,7cを介して取り付けられた発電機8a,8bとを備えた超低落差超低流量対応型水力発電装置であって、螺旋状羽根部材4は、螺旋状羽根部4aと、螺旋状羽根部4aの基部に一体的に設けられ回転軸3の外面3aに沿う内面形状4bを備えた回転軸取付部4cとを有し、羽根車5は回転軸3に複数の螺旋状羽根部材4を取り付けて構成されている。以下、各構成について順次詳述する。
【0013】
超低落差超低流量対応型水力発電装置1は、水の位置エネルギーと運動エネルギーを利用して羽根車5を回転させ、回転軸3に連接させた回転力伝達手段7a,7b,7cを介して発電機8a,8bを駆動させ電気エネルギーを得る装置である。
【0014】
水路2は、
図2に示すように、ハウジング(ケーシング)9内の正面側に傾斜して設けられ、配置した水流路の水を背面側(
図2中右側)から正面側(
図2中左側)に向かって流す部位である。この実施例では、透明なポリエチレンテレフタレート製シートを断面略半円弧状に湾曲させて形成されている。
【0015】
羽根車5は、水路2に流れる水の位置エネルギーと運動エネルギーを回転力に変換するためのものであり、回転軸3と回転軸3の外面3aに設けられた螺旋状羽根部材4とを有している。
【0016】
回転軸3は、回転力を回転力伝達手段7a,7b,7cを介して発電機8a,8bに伝達するためのものであり、ハウジング9の長手方向の中央付近に沿い、両端をそれぞれ軸受け部6a,6bに支持されて回転可能に配されている。
【0017】
この実施例の回転軸3は樹脂製管にて形成されており、回転軸がこのような樹脂材料にて形成されることにより、羽根車を軽量化でき軸受け部への負担が軽減されることで長寿命な超低落差超低流量対応型水力発電装置を構成できる。また、煩雑かつ困難な溶接作業が不要で、容易かつより低廉に羽根車を構成できる。さらに、金属で回転軸を形成し螺旋状羽根を溶接する従来の羽根車は、溶接のために回転軸に相応の厚みが要求され軽量化が困難であったが、回転軸を樹脂材料にて形成することにより溶接が不要となり、硬質な樹脂にてより軽量な羽根車が容易に構成できる。
【0018】
螺旋状羽根部材4は、水路2を流れる水の運動エネルギーにより羽根車5に回転力を付与するための部位であり、回転軸3の外面3aに形成されている。
【0019】
螺旋状羽根部材4は、
図3に示すように、螺旋状羽根部4aと、螺旋状羽根部4aの基部に設けられ回転軸3の外面3aに沿う内面形状4bを備えた回転軸取付部4cとが一体成形されて構成されている。
【0020】
そして、羽根車5は、同一形態の螺旋状羽根部材4を複数組み合わせて回転軸に取り付けることで構成されている。このように、超低落差超低流量対応型水力発電装置1では、同一形態の螺旋状羽根部材4を複数組み合わせることで、複雑で小型かつ回転効率が高い螺旋状羽根を構成でき、羽根車を容易かつ低廉に作製することができる。
【0021】
より具体的には、この実施例の羽根車5は、
図4に示すように、同一形態の4枚の螺旋状羽根部材4を四方からそれぞれ回転軸3の外面3aに取り付けることで回転軸取付部4cが環状に連接し、さらに、このような4枚1組となる螺旋状羽根部材4を回転軸3の長手方向に6列取り付ける(計24枚の螺旋状羽根部材4を回転軸3の外面3aに沿って取り付ける)ことにより、4条の螺旋状羽根を有した羽根車に構成されている。
【0022】
回転軸3の外面3aに螺旋状羽根部材4を取り付ける方法としては、ボルト等締結部材にて螺旋状羽根部材4を回転軸3の外面3aに固定する方法、接着剤(例えばエポキシ樹脂などの接着剤)にて螺旋状羽根部材4を回転軸3の外面3aに固着する方法などが好適であるが、この実施例では、螺旋状羽根部材4はボルト(図示しない)にて螺旋状羽根部材4を回転軸3の外面3aに固定されている。
【0023】
螺旋状羽根部材4の形成材料
としては、樹脂材料が好適であるが、この実施例では、ポリプロピレン(ペットボトルのキップのリサイクル品)にて形成されている。
【0024】
このように、超低落差超低流量対応型水力発電装置1では、螺旋状羽根部材4も樹脂材料にて形成されているため、回転軸に対する螺旋状羽根の煩雑かつ困難な溶接作業が不要で、螺旋状羽根の条数が多く小型化が要求される羽根車を備えた超低落差超低流量対応型水力発電装置であっても容易かつ低廉に作製できる。また、羽根車を軽量化でき軸受け部への負担が軽減されることで長寿命な超低落差超低流量対応型水力発電装置を構成できる。
【0025】
そして、回転軸3の上端部は、回転力伝達手段7a,7b,7cを介して発電機8a,8bに連結されている。
【0026】
具体的には、
図1に示すように、回転軸3の上端部には、回転力伝達手段(第1ギア)7aが固定されており、この回転力伝達手段(第1ギア)7aに噛合するように、回転力伝達手段(第2ギア)7b,回転力伝達手段(第3ギア)7cがそれぞれ取り付けられている。これら回転力伝達手段(第2ギア)7b,回転力伝達手段(第3ギア)7cはそれぞれ発電機8a,8bに連結されており、羽根車5が回転すると、発電機8a,8bがそれぞれ発電するように構成されている。
【0027】
ハウジング9の背面側は、
図1に示すように、上面側に上部カバー10が取り付けられ、両側面側に側部カバー11a,11bがそれぞれ取り付けられ、下面側に下部カバー12が取り付けられることにより、ハウジング9の他の区画板と共に、発電機8a,8bの配置部が液密に構成されており、水が流入して発電機8a,8bが損傷しないよう保護されている。
【0028】
なお、上流から流れてくる水は、
図5に示すように、下部カバー12が設けられていない部位の下面側からハウジング9内に流入し、水路2に流れるよう構成されている。
【0029】
また、下部カバー12の下面には、
図5に示すように、背面側から正面側に向かって両側に傾斜するよう取り付けられたV字形状の浮遊物除け13が設けられており、この浮遊物除け13が上流から流れてくる水の中に浮遊物が際するには、両側に振り分けるように作用し、浮遊物が水路2内に侵入しないように構成されている。
【0030】
つぎに、超低落差超低流量対応型水力発電装置1の使用方法について説明する。
超低落差超低流量対応型水力発電装置1を使用するには、まず、
図6に示すように、小川やU字溝20等水流路内に超低落差超低流量対応型水力発電装置1を載置して配設する。この配設に際して必要な場合はアンカーや鎖などの固定具を使用して超低落差超低流量対応型水力発電装置1を固定する。
【0031】
この状態で、上流から水が流れてくると、ハウジング9内に背面側下部から水が流入し水路2に流れる。水路2内の水は背面側から正面側に向かって流れ、これに伴って羽根車5が回転する。この回転によって回転力伝達手段(第1ギア)7a,回転力伝達手段(第2ギア)7b,回転力伝達手段(第3ギア)7cを介して発電機8a,8bに回転力が伝達され、発電機8a,8bがそれぞれ発電する。発電機8a,8bによって発生した電力は、近隣に設けられた電灯やイノシシ除け等の電力供給源として有効に活用することができる。
【0032】
さらに、
図7または
図8に示した本発明の超低落差超低流量対応型水力発電装置の他の実施例について説明する。
この実施例と前述した超低落差超低流量対応型水力発電装置1との相違は、螺旋状羽根部材の形態のみであり、他の部位は同一であるため、同一構成部位の説明および装置全体の図面は省略する。
【0033】
この実施例の螺旋状羽根部材34と前述した螺旋状羽根部材4との基本的な相違は、螺旋状羽根部材34が環状の回転軸取付部34cを有している点である。
【0034】
具体的には、螺旋状羽根部材34は、4枚の螺旋状羽根部34aと、螺旋状羽根部34aの基部に設けられ回転軸3の外面3aに沿う内面形状34b(この実施例では円筒形状)を備えた回転軸取付部34cとが樹脂材料にて一体成形されている。この螺旋状羽根部材34によれば、回転軸3に複数の螺旋状羽根部材を回転軸3の長手方向に沿って順次装着(換言すれば、複数の螺旋状羽根部材34内に回転軸3を挿入して回転軸3に取り付けるのみで羽根車を容易に構成できる。