(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5845505
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】モータおよび電力伝達機構
(51)【国際特許分類】
H02K 13/00 20060101AFI20151224BHJP
【FI】
H02K13/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-120221(P2015-120221)
(22)【出願日】2015年6月15日
【審査請求日】2015年7月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141533
【氏名又は名称】有限会社石井プラスチック
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 暎夫
(72)【発明者】
【氏名】石井 真
【審査官】
槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−528072(JP,A)
【文献】
特公昭36−009908(JP,B1)
【文献】
実公昭35−026019(JP,Y1)
【文献】
実公昭35−012831(JP,Y1)
【文献】
実公昭37−001126(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子と、該整流子に接触して電流を供給する一対の供給部と、を備えた電動機であって、
各供給部が、
環状であってその内部に前記整流子が配置された通電部と、
該通電部を、該通電部の中心軸周りに回転可能に保持する通電部保持部と、
該通電部保持部を、前記通電部の内面が前記整流子の外面と接触するように付勢する付勢部と、を備えており、
前記一対の供給部は、
前記通電部の中心軸が前記整流子の中心軸と平行となるように、前記整流子の中心軸の方向に並ぶように配設されており、
前記整流子は、
該整流子の中心軸周りに配置された複数の端子を備えており、
該複数の端子は、
その外面が曲面であって、その曲率半径が前記通電部の内径と同じ長さになるように形成されている
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
整流子と、該整流子に接触して電流を供給する一対の供給部と、を備えた電動機であって、
各供給部が、
環状であってその内部に前記整流子が配置された通電部と、
該通電部を、該通電部の中心軸周りに回転可能に保持する通電部保持部と、
該通電部保持部を、前記通電部の内面が前記整流子の外面と接触するように付勢する付勢部と、を備えており、
前記一対の供給部は、
前記通電部の中心軸が前記整流子の中心軸と平行となるように、前記整流子の中心軸の方向に並ぶように配設されており、
前記付勢部は、
前記整流子の回転軸と直交する面に沿った前記通電部保持部の移動を案内する案内部を備えており、
該案内部は、
前記整流子を挟むように配置された一対のガイド軸を備えている
ことを特徴とするモータ。
【請求項3】
前記通電部保持部は、
ケースと、
該ケースに固定された外輪と、
該外輪の内部に配置され、該外輪に対して該外輪の中心軸周りに回転可能に設けられた内輪と、を備えており、
該内輪に、前記通電部が固定されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のモータ。
【請求項4】
前記通電部は、
前記通電部保持部の前記外輪および前記内輪を介して外部と電気的に接続可能に設けられている
ことを特徴とする請求項3記載のモータ。
【請求項5】
整流子に接触して電流を供給する一対の供給部を備えており、
各供給部が、
環状であってその内部に前記整流子が配置された通電部と、
該通電部を、該通電部の中心軸周りに回転可能に保持する通電部保持部と、
該通電部保持部を、前記通電部の内面が前記整流子の外面と接触するように付勢する付勢部と、を備えており、
前記一対の供給部は、
前記通電部の中心軸が前記整流子の中心軸と平行となるように、前記整流子の中心軸の方向に並ぶように配設されており、
前記整流子は、
該整流子の中心軸周りに配置された複数の端子を備えており、
該複数の端子は、
その外面が曲面であって、その曲率半径が前記通電部の内径と同じ長さになるように形成されている
ことを特徴とする電力伝達機構。
【請求項6】
整流子に接触して電流を供給する一対の供給部を備えており、
各供給部が、
環状であってその内部に前記整流子が配置された通電部と、
該通電部を、該通電部の中心軸周りに回転可能に保持する通電部保持部と、
該通電部保持部を、前記通電部の内面が前記整流子の外面と接触するように付勢する付勢部と、を備えており、
前記一対の供給部は、
前記通電部の中心軸が前記整流子の中心軸と平行となるように、前記整流子の中心軸の方向に並ぶように配設されており、
前記付勢部は、
前記整流子の回転軸と直交する面に沿った前記通電部保持部の移動を案内する案内部を備えており、
該案内部は、
前記整流子を挟むように配置された一対のガイド軸を備えている
ことを特徴とする電力伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよび電力伝達機構に関する。さらに詳しくは、回転子に巻線が設けられた整流子を有するモータおよび電力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、種々の場面で使用されており、例えば、電動工具や自動車等の駆動源として使用されている。モータにおいて、回転子に設けられた整流子(コミュテータ)に対する電力の供給はブラシを介して行われている。ブラシは、整流子と接触するように配置されており、整流子との接点で電流がブラシから整流子に供給されている。
【0003】
ところで、モータを作動させると整流子は回転子ともに回転し、整流子とブラシの間に摩擦が発生する。このため、ブラシや整流子が摩擦によって摩耗すると、両者間の接触に不具合が生じ、ブラシから整流子への電流の供給が十分にできなくなる。
【0004】
従来、ブラシや整流子が摩擦しても両者間の接触状態を維持するために、バネなどによってブラシを整流子に押し付ける機構が開発されている。しかし、摩耗が大きくなると、バネによる押し付けだけではブラシと整流子を十分に接触させることができなくなるという問題がある。
【0005】
そこで、摩耗が大きくなっても、ブラシと整流子との間に十分な接触力を発生させるために、特許文献1に記載するような構造が開発されている。
【0006】
特許文献1の技術では、整流子の内側に鉄製スリーブを配置しており、カーボンブラシ側にスプリングに加えて永久磁石を設けている。このため、永久磁石が鉄製スリーブに引き寄せられることで、スプリングによる付勢力と永久磁石の吸引力により安定した接触状態を維持することができる旨が記載されている。一方、カーボンブラシが磨耗した状態では、スプリングの付勢力は弱くなるが、永久磁石と鉄製スリーブの距離が短くなり永久磁石の吸引力が強くなるので、スプリングの付勢力が弱くなっても永久磁石によって安定した接触状態を維持することができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−114972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、特許文献1の技術では、摩耗した際にブラシと整流子の接触状態は維持できるものの、スプリングに加えて永久磁石の吸引力が加わるので、両者間の接触力が強くなる。つまり、整流子が回転した際における両者間で発生する摩擦力は大きくなり、ブラシや整流子の摩耗が促進される可能性がある。すると、ブラシと整流子の寿命が短くなり、両者を頻繁に交換しなければならなくなる可能性がある。
【0009】
また、大型の電動機であれば、ブラシと整流子を交換できるものもあるが、小型の電動機の場合、ブラシと整流子の交換が困難な場合がある。すると、ブラシと整流子の交換ができない電動機では、電動機自体を交換しなければならなくなる。そして、ブラシと整流子を交換できるものであっても、設置場所によっては、非常に交換が難しい場合もある。
【0010】
ブラシと整流子の摩耗自体を減らすことができれば、電動機の寿命を長くでき、また、メンテナンスの回数も低減できるので、望ましい。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、ブラシと整流子の摩耗を少なくでき、ブラシと整流子の寿命を長くできるモータおよび電力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明のモータは、整流子と、該整流子に接触して電流を供給する一対の供給部と、を備えた電動機であって、各供給部が、
環状であってその内部に前記整流子が配置された通電部と、該通電部を、該通電部の中心軸周りに回転可能に保持する通電部保持部と、該通電部保持部を、前記通電部の内面が前記整流子の外面と接触するように付勢する付勢部と、を備えており、前記一対の供給部は、前記通電部の中心軸が前記整流子の中心軸と平行となるように、前記整流子の中心軸の方向に並ぶように配設されており、前記整流子は、該整流子の中心軸周りに配置された複数の端子を備えており、該複数の端子は、その外面が曲面であって、その曲率半径が前記通電部の内径と同じ長さになるように形成されていることを特徴とする。
第2発明のモータは、
整流子と、該整流子に接触して電流を供給する一対の供給部と、を備えた電動機であって、各供給部が、環状であってその内部に前記整流子が配置された通電部と、該通電部を、該通電部の中心軸周りに回転可能に保持する通電部保持部と、該通電部保持部を、前記通電部の内面が前記整流子の外面と接触するように付勢する付勢部と、を備えており、前記一対の供給部は、前記通電部の中心軸が前記整流子の中心軸と平行となるように、前記整流子の中心軸の方向に並ぶように配設されており、前記付勢部は、前記整流子の回転軸と直交する面に沿った前記通電部保持部の移動を案内する案内部を備えており、該案内部は、前記整流子を挟むように配置された一対のガイド軸を備えていることを特徴とする。
第3発明のモータは、第1または2発明において、前記通電部保持部は、ケースと、該ケースに固定された外輪と、該外輪の内部に配置され、該外輪に対して該外輪の中心軸周りに回転可能に設けられた内輪と、を備えており、該内輪に、前記通電部が固定されていることを特徴とする。
第4発明のモータは、第3発明において、前記通電部は、前記通電部保持部の前記外輪および前記内輪を介して外部と電気的に接続可能に設けられていることを特徴とする。
第5発明の電力伝達機構は、整流子に接触して電流を供給する一対の供給部を備えており、各供給部が、
環状であってその内部に前記整流子が配置された通電部と、該通電部を、該通電部の中心軸周りに回転可能に保持する通電部保持部と、該通電部保持部を、前記通電部の内面が前記整流子の外面と接触するように付勢する付勢部と、を備えており、前記一対の供給部は、前記通電部の中心軸が前記整流子の中心軸と平行となるように、前記整流子の中心軸の方向に並ぶように配設されており、前記整流子は、該整流子の中心軸周りに配置された複数の端子を備えており、該複数の端子は、その外面が曲面であって、その曲率半径が前記通電部の内径と同じ長さになるように形成されていることを特徴とする。
第6発明の電力伝達機構は、
整流子に接触して電流を供給する一対の供給部を備えており、各供給部が、環状であってその内部に前記整流子が配置された通電部と、該通電部を、該通電部の中心軸周りに回転可能に保持する通電部保持部と、該通電部保持部を、前記通電部の内面が前記整流子の外面と接触するように付勢する付勢部と、を備えており、前記一対の供給部は、前記通電部の中心軸が前記整流子の中心軸と平行となるように、前記整流子の中心軸の方向に並ぶように配設されており、前記付勢部は、前記整流子の回転軸と直交する面に沿った前記通電部保持部の移動を案内する案内部を備えており、該案内部は、前記整流子を挟むように配置された一対のガイド軸を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、
整流子の回転に伴って通電部も回転するので、整流子と通電部の間の摩擦を小さくできる。すると、整流子および通電部の摩耗を抑えることができるから、整流子および通電部の寿命を長くでき、モータ自体の寿命も長くできる。しかも、複数の端子と通電部の接触面積を大きくできるので、通電抵抗を小さくできる。そして、端子と通電部の接触面圧を小さくできるので、両者の摩耗を抑制することができる。
第2発明によれば、整流子の回転に伴って通電部も回転するので、整流子と通電部の間の摩擦を小さくできる。すると、整流子および通電部の摩耗を抑えることができるから、整流子および通電部の寿命を長くでき、モータ自体の寿命も長くできる。
しかも、一対のガイド軸で通電部保持部を案内するので、整流子と通電部を安定した状態で接触させることができる。
第3発明によれば、通電部の外輪がケースに固定されているので、通電部を安定して保持することができる。
第4発明によれば、電気的に接続する部分の摩耗を少なくできるので、モータを長寿命化できる。
第5発明によれば、
整流子の回転に伴って通電部も回転するので、整流子と通電部の間の摩擦を小さくできる。すると、整流子および通電部の摩耗を抑えることができるから、整流子および通電部の寿命を長くでき、モータ自体の寿命も長くできる。しかも、複数の端子と通電部の接触面積を大きくできるので、通電抵抗を小さくできる。そして、端子と通電部の接触面圧を小さくできるので、両者の摩耗を抑制することができる。
第6発明によれば、整流子の回転に伴って通電部も回転するので、整流子と通電部の間の摩擦を小さくできる。すると、整流子および通電部の摩耗を抑えることができるから、整流子および通電部の寿命を長くできる。
しかも、一対のガイド軸で通電部保持部を案内するので、整流子と通電部を安定した状態で接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】(A)は
図1のIIA−IIA線断面図であり、(B)は
図1のIIB−IIB線断面図である。
【
図3】(A)は他の実施形態のモータ1の概略断面図であり、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態のモータは、回転子に巻線が設けられた整流子を有する電動機であって、整流子やモータを長寿命化できるようにしたことに特徴を有している。
【0016】
本実施形態のモータの用途はとくに限定されないが、例えば、電動工具などのモータや車両、船舶、航空機等に使用することができる。とくに、一日の間で長時間(例えば10時間以上連続して)駆動することが必要なモータや、メンテナンスが行いにくい部分で使用されるモータに適している。例えば、池などの水面に設置して水を攪拌して曝気する攪拌機等のモータに使用できる。そして、このモータを太陽電池で駆動するようにしておけば、水面に設置したままで放置しても、長期間、水を攪拌する機能を維持することが可能となる。
【0017】
また、本実施形態のモータに採用されている機構は、整流子を有しているモータであれば、交流モータと直流モータのいずれにも採用することができる。
【0018】
(本実施形態のモータ1)
つぎに、本実施形態のモータ1を説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のモータ1は、整流子5に電流を供給する供給部10の構造に特徴を有するものである。本実施形態のモータ1において、供給部10の構造以外は、一般的なモータと実質的に同等の構造を有している。つまり、本実施形態のモータ1は、中空な本体ケース2と、本体ケース2内に配置された永久磁石で構成されて固定子3と、この固定子3が発生する磁界中に配置された回転子4と、を備えている。この回転子4は、その中心軸を貫通する軸シャフト4bを備えており、その両端が本体ケース2に回転可能に保持されている。そして、軸シャフト4bの一端は本体ケース2から外部に突出しており、その一端から外部に駆動力を出力できるようになっている。
【0020】
また、回転子4は、固定子3が発生する磁界の位置に巻線4aが設けられている。また、回転子の軸方向の一端には、巻線4aと電気的に接続された整流子5が設けられている。この整流子5は、複数の端子5aを備えており、この複数の端子5aは、回転子4の軸を囲むように配設されている。具体的には、複数の端子5aは、回転子4の軸を中心軸として、その中心軸周りに等角度間隔で配置されている(
図2参照)。
【0021】
したがって、本実施形態のモータ1の整流子5に、供給部10を介して電流を供給すれば、回転子4が回転し、軸シャフト4bの一端から外部に駆動力を出力できる。
【0022】
なお、本実施形態のモータ1は、軸シャフト4bの一端から駆動力を加えて回転子4を回転させれば、発電機として機能させることができる。つまり、回転子4の回転により発生した電流を供給部10から取り出せば、外部に電力を供給することができる。例えば、風力発電の風車の回転軸を軸シャフト4bに連結すれば、発電された電力を外部に供給することができる。また、水力発電の水車の回転軸を軸シャフト4bに連結すれば、発電された電力を外部に供給することができる。
【0023】
(供給部10について)
図1および
図2に示すように、本実施形態のモータ1は、一対の供給部10,10を備えている。この一対の供給部10,10は、整流子5の中心軸の方向に並ぶように配設されている。つまり、回転子4の軸シャフト4bの軸方向に沿って並ぶように配設されている。
【0024】
一対の供給部10,10は、実質的に同じ構造を有しているので、以下では、
図1の右側に位置する供給部10を代表として、説明する。
【0025】
図2(A)に示すように、供給部10は、平板上のケース10aを備えている。このケース10aには、中空な貫通孔10hが形成されており、この貫通孔10hに通電部保持部12が設けられている。
【0026】
この通電部保持部12は、ケース10aに固定された外輪13と、外輪13の内部に配置された内輪14を備えている。外輪13と内輪14は、その中心軸が同軸となるように配設されている。しかも、内輪14は、外輪13に対して相対的に移動できるように、外輪13に連結されている。具体的には、内輪14は、外輪13に対して中心軸の軸方向には移動できないが、外輪13に対してその中心軸周りに回転できるように設けられている。例えば、通電部保持部12として、公知のベアリングを採用すれば、上記のごとき構成とすることができる。
【0027】
この通電部保持部12の内輪14の内部には、導電性を有する素材、例えば、カーボンや鉄、銅合金などで形成された通電部11が取り付けられている。この通電部11は、環状の部材であり、その中心軸が内輪14の中心軸と一致するように内輪12に固定されている。つまり、通電部11は、内輪12とともに、外輪13に対して(言い換えればケース10aに対して)、内輪12の中心軸周りに回転できるように設けられている。
【0028】
そして、上記のごとき構成を有する供給部10は、付勢部15に保持された状態で、整流子5が通電部11の内部に位置し、かつ、通電部11の中心軸が整流子5の中心軸(つまり回転子4の軸シャフト4bの中心軸)と平行となるように配置されている。
【0029】
具体的には、付勢部15は、一対のガイド軸16,16を備えている。この一対のガイド軸16,16は、整流子5を挟むように配置されており、その両端部が本体ケース2に連結されている。具体的には、一対のガイド軸16,16は、その軸が整流子5の中心軸と直交する面に内に位置するように配設されている。
【0030】
この一対のガイド軸16,16に、ケース10aは、通電部11の中心軸が整流子5の中心軸と平行となり、かつ、一対のガイド軸16,16に沿って移動できるように連結されている。つまり、ケース10aは、通電部11の中心軸を整流子5の中心軸と平行に保ったまま移動できるように、一対のガイド軸16,16に連結されている。
【0031】
そして、本体ケース2の内面とケース10aとの間には、バネなどの付勢部材17が設けられている。つまり、ケース10aは、常時、整流子5に向かって付勢された状態に維持されている。言い換えれば、整流子5に対して通電部11の内面が押し付けられた状態となるように、ケース10aは維持されているのである。
【0032】
しかも、一対の供給部10,10は、付勢部15の付勢部材17によって付勢されたときに、各通電部11が、整流子5の複数の端子5aのうち互いに異なる端子5aに接触するように配設されている。例えば、一方の供給部10の通電部11は、一方の供給部10の通電部11が接触するに端子5aに対して、180度回転した位置の端子5aに接するように配設されている。
【0033】
以上のごとき構成であるので、本実施形態のモータ1において、一対の供給部10,10の通電部11間に電圧を印加すれば、一般的なモータの一対のブラシと同様に、整流子5に対して電力を供給することができる。
【0034】
しかも、電力が供給されることによって回転子4が回転して整流子5が回転した場合に、整流子5とともに通電部11も回転させることができる。具体的には、整流子5の外面が回転する方向と同じ方向に通電部11を回転させることができる。すると、整流子5と通電部11が接触したまま一緒に移動する状態となるので、両者間で発生する摩擦を小さくできる。したがって、整流子5および通電部11の摩耗を抑えることができるから、整流子5および通電部11の寿命を長くでき、モータ1の寿命も長くできる。なお、上述した通電部11の内面が特許請求の範囲にいう移動部に相当する。
【0035】
(一対の供給部10,10の配置について)、
一対の供給部10,10は、付勢部15の付勢部材17によって付勢されたときに、整流子5の複数の端子5aのうち異なる端子5aに通電部11が接触するように配設されていればよい。整流子5の中心軸周りにおける一対の供給部10,10の相対的な位置はとくに限定されない。
【0036】
しかし、上述したように、一対の供給部10,10の通電部11が整流子5の中心軸周りに互いに180度回転した位置となるように配設されていることが望ましい。かかる配置とすれば、回転子4の軸シャフト4bに対して半径方向から加わる力を相殺できる。つまり、付勢部15によって通電部11が整流子5に押し付けられた際に回転子4の軸シャフト4bに加わる力を相殺できる。すると、押し付け力が回転子4の回転に対する抵抗となりにくくなるので、回転子4をスムースに回転させることができる。
【0037】
なお、上述した供給部10のケース10aが特許請求の範囲にいう付勢部15のケースに相当する。
【0038】
(外部と電力のやり取りについて)
通電部11に対して外部から電力を供給する方法はとくに限定されず、通電部11に常時接触させておくことができる接触部を設ければよい。しかし、導電性を有する部材(例えば金属金物や導電性カーボン等)によって通電保持部12の全体を形成すれば、通電保持部12の外輪13を外部電源などと接続すれば、通電部11に電力を供給することができる。この場合、移動しない部材(外輪13)に電力を供給すればいいので、安定して外部から電力を供給することができる。
【0039】
(通電部保持部12について)
上述したように、通電部保持部12がベアリングによって形成されていれば、内輪14が回転した際に、回転抵抗を少なくすることができる。つまり、内輪14と外輪13との間や、内輪14および外輪13とその間に配置されている部材との間の摩擦などを小さくできるので好ましい。しかし、内輪14が外輪13に対して回転でき、しかも、その摩擦を小さくできるのであれば、通電部保持部12の構造(つまり内輪14と外輪13の連結構造)はとくに限定されない。例えば、内輪14と外輪13が摺動可能であって、内輪14と外輪13の間に導電性の潤滑剤のみが介在するような構成としてもよい。
【0040】
また、通電保持部12を上記のごとき構成(内輪と外輪とを備えた構成)とした場合、通電保持部12の内輪14を通電部11として使用することも可能である。この場合、通電部11と通電保持部12の内輪14の中心軸を合せなくてもよいので、モータの製造が容易になる。
【0041】
なお、通電保持部は、必ずしも内輪と外輪とを備えた構成としなくてもよい。ケース10aに対して、通電部11をその中心軸周りに回転できるように保持できる構成であればよい。しかし、通電保持部を上記のごとき構成(内輪と外輪とを備えた構成)とすれば、公知のベアリングを使用できるので、通電部11の回転をスムースにできるし、モータを安価に製造することができる。
【0042】
(整流子5について)
整流子5は、その中心軸周りに配置された複数の端子5aを備えているが、複数の端子5aの外面は、曲面であってその曲率半径が通電部11の半径(中空部の半径)と同じ長さになるように形成されていることが望ましい。その場合、複数の端子5aと通電部11の接触面積を大きくできるので、通電抵抗を小さくできる。つまり、複数の端子5aの外面と通電部11の内面を面接触させることができるので、複数の端子5aと通電部11との間を電流が流れる際の通電抵抗を小さくできる。しかも、複数の端子5aと通電部11の接触面積が大きくなれば、両者間の接触面圧を小さくできるので、両者の摩耗も抑制することができる。
【0043】
(供給部の他の例)
なお、供給部は、
図3に示すような構造としてもよい。
図3に示すように、整流子5を挟むように、一対の供給部20,20を設ける。各供給部20は、一対のベアリング21,21間に導電性の素材(例えばカーボンやアルミなど)からなるベルト22を巻きかけて形成されている。このベルト22は、整流子5の外面に面接触するように配設されている。そして、一対のベアリング21,21の内輪には軸部材23の一端が固定されている。この軸部材23の他端はケース2に固定されている。そして、一対の供給部20,20は、各供給部20の一方の軸部材23がそれぞれ電源に接続されている。例えば、直流電源の場合には、一対の供給部20,20のうち、一方の供給部20の一方の軸部材23が電源の陽極に接続され、他方の供給部20の一方の軸部材23が電源の陰極に接続される。したがって、電源から通電すれば、一対の供給部20,20を介して、整流子5に電力を供給することができる。しかも、整流子5の回転に伴って各供給部20のベルト22が整流子5と面接触したまま移動するので、整流子5とベルトの間で摩擦による摩耗が発生することを防止することができる。このベルト22が特許請求の範囲にいう通電部に相当し、ベルト22において整流子5と面接触する面が特許請求の範囲にいう移動部に相当する。
【0044】
なお、ベルト22と整流子5の接触状態を調整できる付勢力調整部を設けておくことが望ましい。付勢力調整部の構成はとくに限定されない。例えば、ベルト22において一対のベアリング21,21間を、位置する部分を整流子5に向けて押し付けるローラ部材等を設ければ、ベルト22と整流子5の接触状態を調整できる。
【0045】
また、一対の供給部20,20の配設位置を調整すれば、付勢力調整部を設けなくても、ある程度の力でベルト22を整流子5に向けて押し付けておくことができる。つまり、ベルト22において整流子5に接触した部分が若干外方に凹むように(
図3(B)参照)、一対の供給部20,20の設置位置を設定する。すると、一対の供給部20,20を配設するだけで、ある程度の力でベルト22と整流子5とが接触した状態に維持することができる。
【0046】
さらに、通電保持部を、一対のベアリングで構成してもよい。つまり、一対のベアリングによって整流子5を両側から挟み、かつ、一対のベアリングの回転軸と整流子5の回転軸が平行となるように配設する。そして、一対のベアリングの外輪が整流子5に接するように配置する。この場合、一対のベアリングの内輪に軸を連結し、その軸を電源に接続すれば、一対のベアリングから整流子5に電力を供給できる。そして、一対のベアリングは回転しながら整流子5に接触するので、両者の摩擦による摩耗を防止することができる。なお、この構成の場合にが、ベアリングの外輪が通電部に相当し、ベアリングの外輪の外面が特許請求の範囲にいう移動部に相当する。
【0047】
(電力伝達機構)
上述したモータ1に採用されている供給部は、単体でも、使用できる。つまり、回転する整流子と外部との間を電気的に接続する部材として使用できる。その場合でも、整流子の回転に伴って通電部の移動部が移動するので、整流子と通電部の間の摩擦を小さくできる。すると、整流子および通電部の摩耗を抑えることができるから、整流子および通電部の寿命を長くできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のモータは、電動工具や車両、太陽光発電の電力を利用して駆動する機器のモータ、風力や水力を利用した発電の発電機として適している。
【符号の説明】
【0049】
1 モータ
3 固定子
4 回転子
5 整流子
5a 端子
10 供給部
11 通電部
12 通電保持部
13 外輪
14 内輪
15 付勢部
16 ガイド軸
【要約】
【課題】ブラシと整流子の摩耗を少なくでき、ブラシと整流子の寿命を長くできるモータおよび電力伝達機構を提供する。
【解決手段】整流子5と、整流子5に接触して電流を供給する一対の供給部10,10と、を備えたモータ1であって、各供給部10が、環状に形成され、その内部に整流子5が配置された通電部11と、通電部11を、通電部11の中心軸周りに回転可能に保持する通電部保持部12と、通電部保持部12を、整流子5に接触するように付勢する付勢部15と、を備えており、一対の供給部10,10は、通電部11の中心軸が整流子5の中心軸と平行となるように、整流子5の中心軸の方向に並ぶように配設されている.
【選択図】
図1