(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冬季において、取り入れた外気(OA)を、排気(EA)と全熱交換可能な全熱交換器に通し、前記全熱交換器を通過した外気(OA)を還気(RA)と混合して混合空気(M)とし、前記混合空気(M)を冷却コイル又は加熱コイルにより冷却又は加熱し、所定の加湿を行って一定の給気温度(Ts)をもつ給気(SA)を送出する空調機の制御方法であって、
(a)外気温度(To)と、前記全熱交換器における零又は一定値のいずれかである全熱交換効率(η)との対応関係を予め設定するステップと、
(b)現在の外気温度(To)を検知するステップと、
(c)検知した前記現在の外気温度(To)を基に、予め設定された対応する全熱交換効率(η)を取得するステップと、
(d)取得した前記全熱交換効率(η)となるように前記全熱交換器を制御するステップと、
(e)検知した前記現在の外気温度(To)及び所定の一定値である還気温度(Tr)と取得した前記全熱交換効率(η)とを基に、全熱交換後の外気温度(Tox)を算出するステップと、
(f)算出した前記全熱交換後の外気温度(Tox)及び検知した前記所定の一定値である還気温度(Tr)を基に、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)と等しくなるように、給気(SA)に占める外気(OA)の割合である外気量比率(q)を算出するステップと、
(g)算出した前記外気量比率(q)となるように取り入れる外気(OA)の量を制御するステップと、を有することを特徴とする
冬季における空調機の制御方法。
冬季において、取り入れた外気(OA)を、排気(EA)と全熱交換可能な全熱交換器に通し、前記全熱交換器を通過した外気を還気(RA)と混合して混合空気(M)とし、前記混合空気(M)を冷却コイル又は加熱コイルにより冷却又は加熱し、所定の加湿を行って一定の給気温度(Ts)をもつ給気(SA)を送出する空調機の制御方法であって、
(a)冬季を複数の期間に区分した各期間と、前記全熱交換器における零又は一定値のいずれかである全熱交換効率(η)との対応関係を、少なくとも当該期間の開始前に予め設定するステップと、
(b)各期間中、予め設定された前記全熱交換効率(η)を維持するステップと、
(c)各期間中、現在の外気温度(To)及び現在の還気温度(Tr)を検知するステップと、
(d)検知した前記現在の外気温度(To)及び現在の還気温度(Tr)と予め設定された前記全熱交換効率(η)とを基に、全熱交換後の外気温度(Tox)を算出するステップと、
(e)算出した前記全熱交換後の外気温度(Tox)及び検知した前記現在の還気温度(Tr)を基に、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)と等しくなるように、給気(SA)に占める外気(OA)の割合である外気量比率(q)を算出するステップと、
(f)算出した前記外気量比率(q)となるように取り入れる外気(OA)の量を制御するステップと、を有し、
(a1)前記各期間と全熱交換効率(η)の対応関係は、当該期間について想定される外気温度(To)が所定の閾値温度(Tth)未満である場合は前記全熱交換効率(η)を一定値とし、前記閾値温度(Tth)以上である場合は前記全熱交換効率(η)を零とするように設定することを特徴とする
冬季における空調機の制御方法。
前記閾値温度(Tth)は、冬季の空調設計における外気温度、還気温度及び全熱交換効率の各設計値から算出した全熱交換後の外気温度に相当することを特徴とする請求項2に記載の冬季における空調機の制御方法。
前記現在の外気温度(To)及び現在の還気温度(Tr)を検知するステップに替えて、現在の外気温度(To)を検知するステップとし、かつ、前記全熱交換後の外気温度(Tox)を算出するステップ及び前記外気量比率(q)を算出するステップにおける前記現在の還気温度(Tr)に替えて、所定の一定値である還気温度(Tr)を用いることを特徴とする請求項2又は3に記載の冬季における空調機の制御方法。
冬季において、取り入れた外気(OA)を、排気(EA)と全熱交換可能な全熱交換器に通し、前記全熱交換器を通過した外気を還気(RA)と混合して混合空気(M)とし、前記混合空気(M)を冷却コイル又は加熱コイルにより冷却又は加熱し、所定の加湿を行って一定の給気温度(Ts)をもつ給気(SA)を送出する空調機の制御方法であって、
(a)冬季を複数の期間に区分した各期間と、前記全熱交換器における零又は一定値のいずれかである全熱交換効率(η)との対応関係を、少なくとも当該期間の開始前に予め設定するステップと、
(b)冬季を複数の期間に区分した各期間と、給気(SA)に占める外気(OA)の割合である外気量比率(q)との対応関係を、少なくとも当該期間の開始前に予め設定するステップと、
(c)各期間中、予め設定された前記全熱交換効率(η)及び前記外気量比率(q)を維持するステップと、を有し、
(a1)前記各期間と全熱交換効率(η)の対応関係は、当該期間について想定される外気温度(To)が、所定の閾値温度(Tth)未満である場合は前記全熱交換効率(η)を一定値とし、前記閾値温度(Tth)以上である場合は前記全熱交換効率(η)を零とするように設定し、
(b1)前記各期間と外気量比率(q)の対応関係は、当該期間について想定される外気温度(To)及び想定される還気温度(Tr)と前記設定された全熱交換効率(η)とを基に、全熱交換後の外気温度(Tox)を算出し、算出した前記全熱交換後の外気温度(Tox)と前記想定される還気温度(Tr)とを基に、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)と等しくなるように前記外気量比率(q)を算出し設定することを特徴とする
冬季における空調機の制御方法。
前記閾値温度(Tth)は、冬季の空調設計における外気温度、還気温度及び全熱交換効率の各設計値から算出した全熱交換後の外気温度に相当することを特徴とする請求項5に記載の冬季における空調機の制御方法。
前記外気量比率(q)を算出する際に、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)と等しくなるようにすることに替えて、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)より所定の温度だけ低くなるようにすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の冬季における空調機の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冬季は、厳冬期のように比較的外気温度が低い時期と、初冬や晩冬のように比較的外気温度が高い時期があり、冬季全体を通して省エネルギーを実現できる空調機制御方法は未だ提示されていない。また、そのような空調機制御方法は、既存のシステム構成を大きく変更することなく簡易に実施できることが望ましい。
【0006】
現状では、一般的なビル空調設備では、冬季全体を通して一定の設定、例えば、全熱交換器の交換比率や給気(外気と還気からなる)における外気量比率を一定とする設定により、制御を行っている(この一般的な制御方法の具体的な問題点については、後述する本発明の制御方法とともに説明する)。この結果、外気と還気を混合した混合空気の温度が一定に設定された給気温度より高くなった場合は、混合空気の温度を給気温度に冷却するために冬季であっても冷却コイルにおいて冷水が使用されることになり、非常に大きなエネルギーを消費している。冬季に冷水を使用することはエネルギーの無駄であり、冬季の冷水使用量を零にして温水のみを使用することが望ましく、さらに、冷水も温水も使用せずに一定の給気温度を維持できることが理想的である。
【0007】
以上の現状に鑑み、本発明は、冬季における空調機の制御方法において、既存のシステム構成を大きく変更することなく簡易に行うことができ、大きな省エネルギー効果を上げることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を提供する。なお、括弧内の記号は、後述する図面中の符号であり参考のために付するものである。
【0009】
本発明の第1の形態は、冬季において、取り入れた外気(OA)を、排気(EA)と全熱交換可能な全熱交換器に通し、前記全熱交換器を通過した外気(OA)を還気(RA)と混合して混合空気(M)とし、前記混合空気(M)を冷却コイル又は加熱コイルにより冷却又は加熱し、所定の加湿を行って一定の給気温度(Ts)をもつ給気(SA)を送出する空調機の制御方法であって、
(a)外気温度(To)と、前記全熱交換器における零又は一定値のいずれかである全熱交換効率(η)との対応関係を予め設定するステップと、
(b)現在の外気温度(To)
を検知するステップと、
(c)検知した前記現在の外気温度(To)を基に、予め設定された対応する全熱交換効率(η)を取得するステップと、
(d)取得した前記全熱交換効率(η)となるように前記全熱交換器を制御するステップと、
(e)検知した前記現在の外気温度(To)及び
所定の一定値である還気温度(Tr)と取得した前記全熱交換効率(η)とを基に、全熱交換後の外気温度(Tox)を算出するステップと、
(f)算出した前記全熱交換後の外気温度(Tox)及び検知した前記
所定の一定値である還気温度(Tr)を基に、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)と等しくなるように、給気(SA)に占める外気(OA)の割合である外気量比率(q)を算出するステップと、
(g)算出した前記外気量比率(q)となるように取り入れる外気(OA)の量を制御するステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の形態は、冬季において、取り入れた外気(OA)を、排気(EA)と全熱交換可能な全熱交換器に通し、前記全熱交換器を通過した外気を還気(RA)と混合して混合空気(M)とし、前記混合空気(M)を冷却コイル又は加熱コイルにより冷却又は加熱し、所定の加湿を行って一定の給気温度(Ts)をもつ給気(SA)を送出する空調機の制御方法であって、
(a)冬季を複数の期間に区分した各期間と、前記全熱交換器における零又は一定値のいずれかである全熱交換効率(η)との対応関係を、少なくとも当該期間の開始前に予め設定するステップと、
(b)各期間中、予め設定された前記全熱交換効率(η)を維持するステップと、
(c)各期間中、現在の外気温度(To)及び現在の還気温度(Tr)を検知するステップと、
(d)検知した前記現在の外気温度(To)及び現在の還気温度(Tr)と予め設定された前記全熱交換効率(η)とを基に、全熱交換後の外気温度(Tox)を算出するステップと、
(e)算出した前記全熱交換後の外気温度(Tox)及び検知した前記現在の還気温度(Tr)を基に、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)と等しくなるように、給気(SA)に占める外気(OA)の割合である外気量比率(q)を算出するステップと、
(f)算出した前記外気量比率(q)となるように取り入れる外気(OA)の量を制御するステップと、を有し、
(a1)前記各期間と全熱交換効率(η)の対応関係は、当該期間について想定される外気温度(To)が所定の閾値温度(Tth)未満である場合は前記全熱交換効率(η)を一定値とし、前記閾値温度(Tth)以上である場合は前記全熱交換効率(η)を零とするように設定することを特徴とする。
【0012】
上記第2の形態において、前記閾値温度(Tth)は、冬季の空調設計における外気温度、還気温度及び全熱交換効率の各設計値から算出した全熱交換後の外気温度に相当することを特徴とする。
【0013】
上記第2の形態において、前記現在の外気温度(To)及び現在の還気温度(Tr)を検知するステップに替えて、現在の外気温度(To)を検知するステップとし、かつ、前記全熱交換後の外気温度(Tox)を算出するステップ及び前記外気量比率(q)を算出するステップにおける前記現在の還気温度(Tr)に替えて、所定の一定値である還気温度(Tr)を用いてもよい。
【0014】
本発明の第3の形態は、冬季において、取り入れた外気(OA)を、排気(EA)と全熱交換可能な全熱交換器に通し、前記全熱交換器を通過した外気を還気(RA)と混合して混合空気(M)とし、前記混合空気(M)を冷却コイル又は加熱コイルにより冷却又は加熱し、所定の加湿を行って一定の給気温度(Ts)をもつ給気(SA)を送出する空調機の制御方法であって、
(a)冬季を複数の期間に区分した各期間と、前記全熱交換器における零又は一定値のいずれかである全熱交換効率(η)との対応関係を、少なくとも当該期間の開始前に予め設定するステップと、
(b)冬季を複数の期間に区分した各期間と、給気(SA)に占める外気(OA)の割合である外気量比率(q)との対応関係を、少なくとも当該期間の開始前に予め設定するステップと、
(c)各期間中、予め設定された前記全熱交換効率(η)及び前記外気量比率(q)を維持するステップと、を有し、
(a1)前記各期間と全熱交換効率(η)の対応関係は、当該期間について想定される外気温度(To)が、所定の閾値温度(Tth)未満である場合は前記全熱交換効率(η)を一定値とし、前記閾値温度(Tth)以上である場合は前記全熱交換効率(η)を零とするように設定し、
(b1)前記各期間と外気量比率(q)の対応関係は、当該期間について想定される外気温度(To)及び想定される還気温度(Tr)と前記設定された全熱交換効率(η)とを基に、全熱交換後の外気温度(Tox)を算出し、算出した前記全熱交換後の外気温度(Tox)と前記想定される還気温度(Tr)とを基に、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)と等しくなるように前記外気量比率(q)を算出し設定することを特徴とする。
【0015】
上記第3の形態において、前記閾値温度(Tth)は、冬季の空調設計における外気温度、還気温度及び全熱交換効率の各設計値から算出した全熱交換後の外気温度に相当することを特徴とする。
【0016】
上記第1〜第3の形態において、前記外気量比率(q)を算出する際に、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)と等しくなるようにすることに替えて、前記混合空気(M)の混合空気温度(Tm)が前記一定の給気温度(Ts)より所定の温度だけ低くなるようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明による冬季における空調機の制御方法は、現在の、又は、想定される外気温度及び還気温度に基づいて全熱交換効率及び外気量比率を制御し、外気と還気を混合した混合空気の温度が、一定の給気温度とほぼ等しくなるようにすることにより、冬季における冷水及び温水、特に冷水の使用による消費熱量を零又は零近傍とするように省エネルギーを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(1)システム構成の概要
図1は、本発明による冬季における空調機(空気調和機)の制御方法を適用される空調システムの全体構成を概略的かつ模式的に示した図である。本発明は、セントラル空調方式の空調機に適用される。本発明では、一応、11月〜4月の期間を冬季としているが、季節の境目は厳密である必要はない。
【0020】
セントラル空調方式における空調機1は、エアハンドリングユニットとも称され、基本的に建物毎に設けられている。インテリアゾーン2は、建物内の空調対象となる各室を代表的に示したものである。空調機1には、外気ダンパ15から外気OAが取り込まれ、インテリアゾーン2からの還気RAと混合されて混合空気Mとなり、加熱コイル11又は冷却コイル12を通過する際に必要に応じて熱交換により加熱又は冷却される。空調機の熱源である温水及び冷水は、建物毎に作られる場合と、一定地域内で1つの熱源プラントから複数の建物に供給される場合がある。加熱又は冷却された混合空気は、さらに加湿器13で必要に応じて加湿され、給気SAとしてインテリアゾーン2に送られる。インテリアゾーン2から空調機1へ戻る空気は、還気RAと排気EAからなる。排気EAは、還気RAとは分岐して全熱交換器14を通過し、必要に応じて外気OAとの間で全熱交換を行った後、排気される。
【0021】
空調機1には、上記の内部機器類を制御するための制御装置(図示せず)が設けられている。
図1では、制御装置による主な制御の流れを模式的に点線で示している。空調設計では、一定の給気温度Tsが設定されている。一定の給気温度Tsを維持するために、給気温度センサt1により検知した給気温度Tsに基づいて加熱コイル11の温水量調整弁11a又は冷却コイル12の冷水量調整弁12aを制御する(点線C1参照)。また、空調設計では、一定の室内相対湿度も設定されており、加湿器13を制御して給気SAの湿度を制御する(点線Ch参照)。これらは一般的な制御方法であるので、詳細説明を省略する。
【0022】
本発明の制御方法では、全熱交換器14における全熱交換効率ηと、給気SAに占める外気OAの割合である外気量比率qの制御を行うことを特徴とする。
【0023】
全熱交換効率ηは、基本的には、全熱交換器14を稼働させるか停止させるかにより制御する。全熱交換効率ηの数値は、通常、全熱交換器14により決まっており、例えば50%である。全熱交換器14の制御方法については後述するが、一例では、外気温度センサt2により検知した現在の外気温度Toに基づいて全熱交換器14の稼働又は停止を決定する(点線C2参照)。
【0024】
外気量比率qは、主として外気ダンパ15の開度により制御する。給気SAの量Qsは、空調設計により一定値に設定され、常に一定に維持される。外気量比率qが増すと、給気SAに占める外気OAの量Qoが増え、還気RAの量Qrが減る(その分、排気EAの量が増える)。q、Qs、Qo、Qrの関係は次のようになる。
q(%)=Qo/Qs*100, Qs(一定)=Qo+Qr
【0025】
外気量比率qの調整により、混合空気温度Tmを調整することができる。外気量比率qの制御方法については後述するが、一例では、全熱交換後の現在の外気温度Toxと、還気温度センサt3により検知した現在の還気温度Trに基づいて外気量比率qを算出し、外気ダンパ15の開度を制御する(点線C3参照)。なお、全熱交換後の外気温度Toxは、全熱交換器14が停止しているときは外気温度Toと同じである。なお、外気温度To及び還気温度Trの温度測定の不安定さを補うために、図示しないが、混合空気Mの温度Tmを直接計測する温度センサを設けて連続的に監視してもよい。
【0026】
(2)本発明の制御方法の基本原理の説明
本発明の制御方法の基本原理を、厳冬期の場合と厳冬期以外の場合のそれぞれの例について説明する。
【0027】
(2−1)厳冬期の例
先ず、従来の制御方法における厳冬期に生じやすい問題点を説明する。なお、本明細書では、空調機の設計条件が以下の通りとなっている場合を例として説明する。従来の一般的な制御では、冬季を通して全熱交換器は常に稼働させ(すなわち全熱交換効率は常に一定)ており、かつ、外気量比率qは常に一定とされている。
【0028】
<設計条件>
・室内温度(還気温度)Tr :22℃
・室内相対湿度(還気相対湿度):45%
・給気温度Ts :20℃(一定)
・外気温度To :−2℃
・外気絶対湿度 :0.0015kg/kg
・全熱交換効率η :50%(従来は一定)
・外気量比率q :27%(従来は一定)
【0029】
給気温度Tsは、常に設計値となるように制御される。また、室内温度(還気温度)Trは、経験的に給気温度Ts+2℃程度であり、これを設計値とする。仮に、外気温度To及び還気温度Trが上記の設計値の通りであれば、全熱交換後の外気温度Tox(以下の[式1]で算出)は10℃となる。さらに、混合空気温度Tm(以下の[式2]で算出)は18.8℃となるので、加熱コイルにより温水と熱交換させ、給気温度Tsの20℃とする。
【0030】
全熱交換後の外気温度Toxの算出式:
[式1] Tox=To+(Tr−To)*η/100
【0031】
混合空気温度Tmの算出式:
[式2] Tm=Tr−(Tr−Tox)*q/100
【0032】
<実際の条件>
実際には、外気OA及び還気RAは変動する。例えば、外気温度Toは、当然に毎日変動し、また1日の中でも変動する。また、室内温度すなわち還気温度Trも、インテリアゾーン内の種々の条件により実際には変動する。
【0033】
図2は、実際の外気温度Toが6℃、還気温度Trが25℃となった場合の空調機における制御状況を湿り空気線図上に表したものである。外気OA及び還気RAの実際の値を図上に示している。還気RAの点を通り、顕熱比線SHFに平行な線と、給気温度Tsの設計値20℃との交点が給気SAとなる。全熱交換後の外気OXは、RAとOAを結ぶ直線上に位置する。全熱交換後の外気OXの温度Toxは、上記[式1]から算出され、この場合は15.5℃となる。
【0034】
さらに、全熱交換後の外気OXと還気RAが、外気量比率qで混合されると、混合空気Mは、RAとOXを結ぶ直線上に位置する。混合空気温度Tmは、上記[式2]から算出され、この場合は22.4℃となる。
【0035】
図2の例において混合空気Mを給気SAとするには、温度については混合空気温度Tmを給気温度Tsまで冷却する必要がある(黒矢印参照)。このために冷却コイルにおいて冷水との熱交換が行われる。なお、湿度については、加湿器により混合空気Mの湿度から給気SAの湿度まで加湿される(白矢印参照)。このように、実際の還気温度Trが設計値より高くなると、冬季、特に厳冬期でありながら冷水が使用されるというエネルギーの無駄が生じる。
【0036】
図3は、
図2に示した問題点を解消するための本発明の制御方法の第1の基本原理を、湿り空気線図上に表したものである。
図3において、
図2と異なる点は、外気量比率qを27%から55%に増やすように制御した点である。この場合の混合空気温度Tmを上記[式2]から算出すると19.8℃となる。この場合、混合空気Mを給気SAとするには、温度については混合空気温度Tmを給気温度Tsまで加熱することになる(黒矢印参照)。従って、加熱コイルにおいて温水との熱交換が行われる。このように、外気量比率qを増すことにより、混合空気温度Tmを下げることができる。混合空気温度Tmを給気温度Tsよりも下げることができれば、冷水は不要となる。理想的には、混合空気温度Tmが給気温度Tsと等しくなれば、冷水も温水も不要となり、最も省エネルギーとなる。
【0037】
(2−2)厳冬期以外の例
次に、従来の制御方法において厳冬期以外に生じやすい問題点を説明する。設計条件は、
図2の厳冬期の例と同じであり、全熱交換器は常に稼働(すなわち全熱交換効率は常に一定)であり、また、外気量比率qも常に一定である。
【0038】
<実際の条件>
図4は、上記の設計条件において、実際の外気温度Toが16℃となった場合の空調機における制御状況を湿り空気線図上に表したものである。上記[式1]及び[式2]により混合空気温度Tmを算出すると21.2℃となる。
【0039】
この場合、混合空気Mを給気SAとするには、温度については混合空気温度Tmを給気温度Tsまで冷却する必要がある(黒矢印参照)。このために冷却コイルにおいて冷水との熱交換が行われる。このように、厳冬期以外の冬季には、外気温度Toが設計値よりも遙かに高くなるため、冬季でありながら冷水を使用するという無駄が生じることとなる。
【0040】
図5は、
図4に示した問題点を解消するための本発明の制御方法の第2の基本原理を、湿り空気線図上に表したものである。
図5において、
図4と異なる点は、全熱交換効率ηを0%(すなわち全熱交換器停止)とするように制御した点である。従って、外気温度Toと全熱交換後の温度Toxは一致し、Tox=Toとなる(上記[式1]でη=0として算出される)。この場合の混合空気温度Tmは、上記[式2]から算出すると20.4℃となる。この場合も、給気温度Tsとするために冷却が必要であるが、
図4の場合と比較してみると、
図5の場合は混合空気温度Tmが給気温度Tsにより近いので、冷水の使用量が低減されることになる。
【0041】
図6は、
図4に示した問題点を解消するために、
図3と
図5にそれぞれ示した本発明の制御方法の第1と第2の基本原理を組み合わせた制御方法を、湿り空気線図上に表したものである。
図6において、
図5と異なる点は、全熱交換効率ηを0%(すなわち全熱交換器停止)としたことに加え、外気量比率qを27%から33%に増やすように制御した点である。この場合の混合空気温度Tmを上記[式1][式2]から算出すると20.0℃となる。この場合は、加熱も冷却も不要であり、理想的な省エネルギーとなる。
【0042】
図6に示したように、混合空気温度Tmが常に給気温度Tsと一致するように制御できれば、理想的である。実際には外気温度To及び還気温度Trは常に変動している。従って、外気温度To及び還気温度Trの変化に応じて、全熱交換効率η及び外気量比率qが変化するように制御することにより、理想的な省エネルギーを実現できる。
【0043】
(3)本発明による空調機制御方法
図6の例から判るように、冷水及び温水の使用量に関して最も省エネルギーを実現できるのは、リアルタイムに全熱交換効率η及び外気量比率qを制御することである。その一方で、リアルタイム方式は、現時点の変動値を検知するための機器、それらと連携させる制御機器及び制御プログラム等にコストを要することが予想され、既存のシステムへの追加機能としての実施が困難な場合も考えられる。
この観点から、簡易方式として、冬季をいくつかの期間に区分し、各期間毎に全熱交換効率η及び外気量比率qを予め設定した最適値に固定して制御する方法も有用と考えられる。
以下、本発明の制御方法として、第1の実施形態ではリアルタイム方式、第2の実施形態ではリアルタイム方式と期間毎設定方式の併用方式、第3の実施形態では期間毎設定方式の各方式について具体的に説明する。
【0044】
(3−1)第1の実施形態(リアルタイム方式)
図7は、全熱交換効率η及び外気量比率qの双方をリアルタイムに変動するように制御するリアルタイム方式による空調機制御方法の一例を概略的に示したフロー図である。
【0045】
リアルタイム方式では、現在の外気温度Toに基づいて、予め設定された全熱交換効率ηとなるように制御するとともに、現在の外気温度To及び現在の還気温度Trに基づいて、混合空気温度Tmが給気温度Tsとなるように外気量比率qを制御する。
【0046】
先ず、準備段階のステップS11において、外気温度Toと全熱交換効率ηの対応関係を予め設定しておく。
【0047】
ここで
図8を参照する。
図8は、現在の外気温度Toと全熱交換効率ηとの対応関係の設定例を示す表である。一例として、現在の外気温度Toが所定の閾値温度Tth未満のときは全熱交換効率ηを50%(全熱交換器稼働)とし、現在の外気温度Toが閾値温度Tth以上のときは全熱交換効率ηを0%(全熱交換器停止)とするように設定する。
【0048】
ここで、所定の閾値温度Tthは、例えば外気温度To、還気温度Tr、及び全熱交換効率ηを上記の設計条件における設計値として上記[式1]から算出される外気温度Toxとする。上記の設計条件の場合、設計値はTo=−2℃、Tr=22℃、η=50%であるので、Tth=10℃となる。上記[式1]によると、全熱交換効率ηが別の値(例えば25%、75%等)の場合は閾値温度Tthも変わることになる。しかし、簡易方式として、その地域及び/又はその建物について経験的に妥当であれば、全熱交換効率ηの値に関わらず閾値温度Tthを常に一定(例えば10℃)として、全熱交換器の稼働・停止を決定してもよい。
【0049】
なお、一般的な全熱交換器は一定の全熱交換効率ηを有するが、複数の全熱交換効率ηを設定できる全熱交換器であっても本発明を適用可能である。その場合、稼働時の全熱交換効率ηの各値(η1、η2等)と停止のいずれかを、複数の閾値温度Tthを境界として選択する。
【0050】
なお、
図8のような設定表は、通常、空調機の制御装置に導入される制御プログラムの一部に含まれ、制御装置内の記憶装置に予め記憶される(他の実施形態でも同様)。
【0051】
再び
図7を参照する。ステップS12〜S17は、冬季において空調機の稼働中に繰り返し行われる制御の1つのサイクルを示している。1つのサイクルは、例えば一定時間毎(30分に1回、1時間に1回、2時間に1回等)に行われる。先ず、現在の外気温度To及び還気温度Trを、それぞれ外気温度センサ及び還気温度センサにより検知する(ステップS12)。
【0052】
ステップS12で検知した現在の外気温度Toに基づいて
図8の全熱交換効率の設定を参照し、対応する全熱交換効率ηを取得する(ステップS13)。そして、取得した全熱交換効率ηに基づき、全熱交換器の稼働又は停止を制御する(ステップS14)。
【0053】
また、ステップS12で検知した現在の外気温度To及び現在の還気温度Trと、ステップS13で取得した全熱交換効率ηとを基に、上記[式1]より全熱交換後の外気温度Toxを算出する(ステップS15)。算出した全熱交換後の外気温度Tox及びステップS12で検知した現在の還気温度Trを基に、以下の[式3]により外気量比率qを算出する(ステップS16)。
【0054】
外気量比率qの算出式:
[式3] q=(Tr−Ts)/(Tr−Tox)*100
(Ts:設計条件による給気温度)
(全熱交換効率η=0%の場合は、上記[式1]よりTox=To)
【0055】
上記の[式3]は、上記[式2]においてTm=Tsとし、変形したものである。qを算出したならば、外気量Qo=qQsとなるように外気ダンパの開度を制御する(ステップS17)。Qsは給気量であり、常に一定である。
【0056】
図9(a)(b)は、
図7に示した制御方法による冷水及び温水の消費熱量のシミュレーションの例を示した表である。ここでは、簡単とするために、検知される現在の還気温度Trを23℃として計算を行った。
【0057】
図9(a)は、厳冬期の例として、2月3日の9時〜17時の間、2時間毎に
図7のステップS12〜S17を行った場合を示している。9時と11時は外気温度Toが10℃未満なので全熱交換器を稼働させ、13時は外気温度Toが10℃以上なので全熱交換器を停止させ、15時は外気温度Toが10℃未満なので再び稼働させている。外気量比率qはTm=Tsとなるように毎回変動させている。
【0058】
図9(b)は、厳冬期以外の例として、4月8日の9時〜17時の間、2時間毎に
図7のステップS12〜S17を行った場合を示している。9時は外気温度Toが10℃未満なので全熱交換器を稼働させ、11時以降は10℃以上なので停止させている。外気量比率qはTm=Tsとなるように毎回変動させている。
【0059】
なお、冷水又は温水の消費熱量は、一般的には以下の[式4]により算出される(各変数の数値例及び定数の数値も示す)が、ここでは外気量比率qをTm=Tsとなるように制御するので、冷水及び温水の消費熱量Hは常に零となり、理想的な省エネルギー制御を実現できる。
【0060】
冷水又は温水の消費熱量の算出式:
[式4] H(MJ)=Qs*ρ*Cp*(Tm−Ts)*h/10
6
Qs:給気量(500000m
3)
ρ:空気密度(1.2kg/m
3)
Cp:空気定圧比熱(1.006J/kg・K)
h:空調機の稼働時間(2h)
【0061】
なお、
図9の例では、2時間毎に制御しているので、実際にはその間に外気温度To及び還気温度Trが変化し、冷水又は温水を消費することがあるが、通常は、制御を行った時点から大きく外れることはないと予想される。従って、平均的にみれば1日を通して冷水及び温水の消費熱量はほぼ零となる。理論的には、制御間隔を短くするほど、すなわち文字通りのリアルタイム制御に近づけるほど、より省エネルギーとなる。
【0062】
図7に示した第1の実施形態の制御方法において、より簡易な変形形態も考えられる。
図7のステップS12において、現在の外気温度Toのみを検知し、現在の還気温度Trは検知しない。そして、
図7のステップS15及びステップS16の現在の還気温度Trに替えて、過去のデータによる平均的な還気温度Tr、又は、還気温度Trの設計値等の所定の一定値を用いて算出を行う。これは、実際の外気温度Toの変動に比べて実際の還気温度Trはそれほど大きく変動しないことを前提としている。
【0063】
(3−2)第2の実施形態(期間毎設定方式とリアルタイム方式の併用)
図10は、期間毎設定方式とリアルタイム方式を併用した方式による空調機制御方法の一例を概略的に示したフロー図である。
【0064】
併用方式では、全熱交換効率ηについては、冬季を複数の期間に分け、各期間中は全熱交換効率を予め設定した一定の値に維持する。一方、外気量比率qについては、第1の実施形態と同様に現在の外気温度To及び現在の還気温度Trに基づいて、混合空気温度Tmが給気温度Tsとなるように制御する。
【0065】
先ず、準備段階のステップS21において、冬季を複数の期間に区分する。区分単位は、例えば、1ヶ月、半月、10日、一週間、1日等である。また各区分の長さが等しくなくともよい。続いて、各期間と全熱交換効率ηの対応関係を予め設定する。すなわち、各期間毎に全熱交換器を稼働させるか停止させるかを予め設定する。設定方法は、例えばステップ21a及び21bによる。先ずステップS21aにおいて、上記の設計条件による外気温度To、還気温度Tr、全熱交換効率ηの設計値を用いて上記[式1]によりToxを算出し、算出したToxを閾値温度Tthとする。次にステップ21bにおいて、各期間について想定される外気温度Toが閾値温度Tth未満か以上かにより、当該期間の全熱交換効率ηを設定する。
【0066】
ここで
図11を参照する。
図11(a)(b)は、各期間と全熱交換効率ηとの対応関係の設定例を示す表である。
図11(a)では1ヶ月を1期間として冬季を6期間に分け、また、
図11(b)では半月を1期間として冬季を12期間に分け、各期間について想定される外気温度Toに基づいてそれぞれ全熱交換効率ηを設定している。
【0067】
図11(a)(b)において、「想定される外気温度」とは、例えば、過去の統計データ、その地方の基準値、天気予報データ等から想定される各期間における昼間の平均外気温度である(以下の第3の実施形態でも同様)。「昼間」は、例えば、一般的な営業時間である9時から17時までの8時間、あるいは、8時から18時までの10時間等、対象建物に応じて適宜決定する。そして、想定される外気温度Toが、所定の閾値温度Tth未満であれば全熱交換器を稼働させ、所定の閾値温度Tth以上であれば全熱交換効率を停止させるように予め設定する。設計条件から算出された
図11の設定例の閾値温度Tthは、
図8の例と同様に10℃である。
【0068】
なお、過去の統計データやその地方の基準値から外気温度を想定する場合は、冬季の開始前に全ての期間の設定が可能である。一方、天気予報のデータを用いて外気温度を想定する場合は、当該期間の開始時までに設定を行えばよい(以下の第3の実施形態でも同様)。例えば、1日を1期間とする場合は、前日の天気予報を基に翌日について想定される外気温度を取得し、それに基づいて翌日の全熱交換効率を設定する。
【0069】
再び
図10を参照すると、ステップS22及びS23は、各期間の開始時に行われる制御である。先ず、各期間の開始時に、上記ステップS21で行った設定を参照し、対応する全熱交換効率を取得する(ステップS22)。そして、取得した全熱交換効率ηに基づき、全熱交換器の稼働又は停止を制御する(ステップS23)。この全熱交換器の稼働又は停止の状態は、当該期間中は一定に維持される。
【0070】
ステップS24〜S27は、空調機の稼働中に繰り返し行われる制御の1つのサイクルを示している。1つのサイクルは、一定時間毎(30分に1回、1時間に1回、2時間に1回等)に行われる。先ず、現在の外気温度To及び現在の還気温度Trを、それぞれ外気温度センサ及び還気温度センサにより検知する(ステップS24)。
【0071】
ステップS24で検知した現在の外気温度To及び現在の還気温度Trと、ステップS22で取得した全熱交換効率ηとを基に、上記[式1]より全熱交換後の外気温度Toxを算出する(ステップS25)。算出した全熱交換後の外気温度Toxと、ステップS24で検知した現在の還気温度Trとを基に、上記[式3]より外気量比率qを算出する(ステップS26)。
【0072】
算出した外気量比率qを基に、外気量Qo=qQsとなるように外気ダンパの開度を制御する(ステップS27)。Qsは給気量であり、常に一定である。
【0073】
図12(a)(b)は、
図10に示した制御方法を適用した場合における、冷水及び温水の消費熱量のシミュレーションの例を示した表である。ここでは、簡単とするために、検知される現在の還気温度Trを23℃として計算を行った。
【0074】
図12(a)は、厳冬期の例として、上記第1の実施形態と同じ2月3日の9時〜17時の間、2時間毎に
図10のステップS24〜S26を行った場合を示している。例えば
図11(a)の設定によれば、2月3日は全熱交換効率ηが50%に固定される期間内にあるので、全熱交換器は常に稼働している。外気量比率qはTm=Tsとなるように毎回変動させている。
【0075】
図12(b)は、厳冬期以外の例として、上記第1の実施形態と同じ4月8日の9時〜17時の間、2時間毎に
図10のステップS24〜S26を行った場合を示している。例えば
図11(a)の設定によれば、4月8日は全熱交換効率ηが0%に固定される期間内にあるので、全熱交換器は常に停止している。外気量比率qはTm=Tsとなるように毎回変動させている。
【0076】
なお、冷水又は温水の消費熱量は、上記[式4]により算出されるが、外気量比率qをTm=Tsとなるように制御するので、冷水及び温水の消費熱量は常に零となり、理想的な省エネルギー制御を実現できる。
【0077】
なお、
図12の例は、上述した第1の実施形態における
図9の例と同様に、2時間毎に制御しているので、実際にはその間に外気温度To及び還気温度Trが変化し、冷水又は温水を消費することがあるが、通常は、制御を行った時点から大きく外れることはないと予想される。従って、平均的にみれば、1日を通して冷水及び温水の消費熱量はほぼ零となる。理論的には、制御間隔を短くするほど、すなわち文字通りのリアルタイム制御に近づけるほど、より省エネルギーとなる。
【0078】
図10に示した第2の実施形態の制御方法において、より簡易な変形形態も考えられる。
図10のステップS24において、現在の外気温度Toのみを検知し、現在の還気温度Trを検知しない。そして、
図10のステップS25及びステップS26の現在の還気温度Trに替えて、過去のデータによる平均的な還気温度Tr、又は、還気温度Trの設計値等の所定の一定値を用いて算出を行う。これは、実際の外気温度Toの変動に比べて実際の還気温度Trはそれほど大きく変動しないことを前提としている。
【0079】
(3−3)第3の実施形態(期間毎設定方式)
図13は、期間毎設定方式による空調機制御方法の一例を概略的に示したフロー図である。
【0080】
期間毎設定方式では、全熱交換効率η及び外気量比率qの双方について、冬季を複数の期間に分け、各期間中は全熱交換効率及び外気量比率をそれぞれ予め設定した一定の値に維持する。期間毎設定方式では、期間毎に予め設定した設定値に固定した制御を行うので、上述したリアルタイム方式に比べて、簡易かつ低コストに実施することができる。また、既存のシステムへの追加機能として実現することも比較的容易である。
【0081】
先ず、準備段階のステップS31において、冬季を複数の期間に区分し、各期間と全熱交換効率ηの対応関係を予め設定する。このステップS31(ステップ31a、31b)については、上述した第2の実施形態における
図7のステップS21(ステップ21a、21b)と同様である。
【0082】
さらに、もう1つの準備段階のステップS32において、冬季を複数の期間に区分し、各期間と外気量比率qの対応関係を予め設定する。なお、ステップS31とS32は独立して設定することができ、外気量比率qについての期間の区分方法は、全熱交換効率ηについての期間の区分方法とは異なっていてもよい。外気量比率qの設定方法は、例えばステップ32a及び32bによる。先ずステップS32aにおいて、各期間について想定される外気温度To及び想定される還気温度Trと、ステップ31で設定された当該期間の全熱交換効率ηとを基に、上記[式1]により全熱交換後の外気温度Toxを算出する。次にステップ32bにおいて、ステップ31bで算出した全熱交換後の外気温度Toxと、各期間について想定される還気温度Trを基に、上記[式3]により外気量比率qを算出する。
【0083】
ステップ32a及び32bにおける「想定される還気温度」は、対象建物の過去の統計データ等から各期間について適切な値を決定して用いることが好適である。各期間毎の還気温度Trの変動が少ない場合は、簡易とするために冬季全体の平均値等の一定値を用いてもよい。さらに別の例として、簡易とするために還気温度Trの設計値を用いてもよい。
【0084】
ここで
図14を参照する。
図14(a)(b)は、各期間と全熱交換効率η及び外気量比率qとの対応関係の設定例を示す表である。
図14(a)では、1ヶ月を1期間として冬季を6期間に分け、また、
図14(b)では、半月を1期間として冬季を12期間に分けている。全熱交換効率ηの設定方法に関しては、第2の実施形態の
図11と同様であり、各期間について想定される外気温度Toに基づいてそれぞれ全熱交換効率ηを設定している。
【0085】
各期間の全熱交換効率ηを設定したならば、設定した全熱交換効率ηと、想定される外気温度を基に、上記[式1]より各期間について全熱交換後の外気温度Toxを算出する(全熱交換効率0%のときは、Tox=To)。簡単とするために、この例では、想定される還気温度Trを常に23℃として計算を行った。算出した全熱交換後の外気温度Toxを用いて、上記[式3]により各期間の外気量比率qを算出する。
【0086】
算出された外気量比率qは、各期間について想定される外気温度及び想定される還気温度を基にしたTm=Tsとなるときの値であるので、これを当該期間の設定値とすれば、最も省エネルギーを実現できる確率が高いといえる。
【0087】
なお、
図14の例では、外気量比率qの算出値をそのまま設定値としている。しかしながら、外気量比率qの算出値そのまま設定値とする替わりに、算出値に基づいた概算値(例えば端数を四捨五入した値)や近似値(例えば±10〜15%の範囲の値)を設定値としてもよい。算出の根拠とした統計や予報により想定される外気温度及び統計により想定される還気温度は、実際の外気温度及び還気温度に近い可能性が高いとはいえるが、必ず一致するものではないためである。本明細書で「Tm=Tsとなるように算出された外気量比率q」という場合には、算出値自体を当然含むとともに、その概算値や近似値も含むものとする。
【0088】
なお、想定される外気温度及び還気温度として、過去の統計データやその地方の基準値を用いる場合は、冬季の開始前に全ての期間の設定が可能である。一方、天気予報のデータを用いる場合は、当該期間の開始前に設定を行えばよい。例えば、1日を1期間とする場合は、前日の天気予報に基づいて翌日の外気温度を想定し、設定値を算出する。
【0089】
再び
図13を参照する。ステップS33〜S36は、各期間の開始時に行われる制御である。先ず、上記ステップS31で設定した全熱交換効率ηについての各期間の開始時に当該期間に対応する全熱交換効率ηの設定値を取得する(ステップS33)。そして、取得した全熱交換効率ηの設定値に基づき、全熱交換器の稼働又は停止を制御する(ステップS34)。この全熱交換器の稼働又は停止の状態は、当該期間中は一定に維持される。
【0090】
次に、上記ステップS32で設定した外気量比率qについての各期間の開始時に当該期間に対応する外気量比率qの設定値を取得する(ステップS35)。そして、取得した外気量比率qの設定値に基づき、外気ダンパの開度を制御する(ステップS36)。この外気量比率qは、当該期間中は一定に維持される。
【0091】
期間毎設定方式では、外気量比率qは、上述した第1及び第2の実施形態のように1つの期間中にTm=Tsとなるように制御されるのではなく、1つの期間中は固定されている。従って、実際の外気温度To及び還気温度Trの変動によりTmが変動し、Tm>Tsとなったときは冷却コイルで冷水が使用され、Tm<Tsとなったときは加熱コイルで温水が使用されることとなる。この結果、随時、冷水消費熱量又は温水消費熱量が生じることになる。それでも、ステップS31及びS32の設定によれば、Tmの変動はTsの近傍に留まる確率が高くなり、消費熱量を最小とすることができる。
【0092】
図15(a)(b)は、
図13及び
図14に示した、全熱交換効率及び外気量比率の期間毎設定方式の制御方法を適用した場合における、冷水及び温水の消費熱量のシミュレーションの例を示した表である。
【0093】
図15(a)は、厳冬期の例として、
図14(b)の設定例に従って2月前半の2月3日〜7日の5日間に
図13のステップS33〜S36の制御を行った場合を示している。当該期間の全熱交換効率ηの設定値は50%、外気量比率qの設定値は33%である。1日毎の冷水・温水の消費熱量を計算するために、各日の外気温度Toとして実際の昼間平均外気温度を用いた。簡単とするために実際の還気温度Trを23℃として計算を行った。冷水又は温水の消費熱量Hは、以下の[式5]により算出した。なお、比較例として、外気量比率qを27%とした場合と、40%とした場合の計算結果を併せて示す。
【0094】
[式5] H(MJ)=Qs*ρ*Cp*(Tm−Ts)*h/10
6
Qs:給気量(500000m
3)
ρ:空気密度(1.2kg/m
3)
Cp:空気定圧比熱(1.006J/kg・K)
h:空調機の稼働時間(10h)
Tm:[式2]より算出
Ts:設定値(20℃)
【0095】
比較例の外気量比率27%の場合は、混合気温度Tmがいずれも給気温度Tsより上回るので冷水消費熱量のみとなり、その合計を消費熱量として評価する。設定値の外気量比率33%の場合と、比較例の外気量比率40%の場合は、混合気温度Tmが給気温度Tsを上回る日と下回る日が存在するので冷水消費熱量と温水消費熱量のいずれかを生じ、これらの合計を消費熱量として評価する。本発明による設定値の外気量比率33%の場合の消費熱量を100%とすると、2つの比較例の消費熱量はそれぞれ192%、151%となる。
【0096】
図15(b)は、厳冬期以外の例として、
図14(b)の設定例に従って4月後半のうち4月21日〜25日の5日間に
図13のステップS33〜S36の制御を行った場合を示している。当該期間の全熱交換効率ηの設定値は0%、外気量比率qの設定値は40%である。比較例は、外気量比率qを33%とした場合と、47%とした場合である。
図15(a)と同様に消費熱量Hを算出した。
【0097】
設定値の外気量比率40%の場合の消費熱量を100%とすると、2つの比較例の消費熱量はそれぞれ117%、119%となる。
【0098】
図13のステップS32に示した外気量比率qの設定方法では、1つの期間について1つの想定される外気温度To(例えば昼間平均外気温度)及び1つの想定される還気温度Trのみを用いている。これに対し、実際の外気温度Toは毎日変化するとともに、一日のうちでも最低気温から最高気温の間で変化する。また実際の還気温度Trも一定ではなく変化する。このように、設定値の根拠となる外気温度及び還気温度と実際のそれらは、必ずしも一致するものではないが、
図15に示したシミュレーション結果は、本発明による設定方法及びそれを用いた制御方法が、実際に冷水及び温水の消費熱量の節減に有効であることを裏付けている。
【0099】
図16(a)(b)は、
図14(a)(b)に示した各期間と全熱交換効率η及び外気量比率qとの対応関係の設定例の別の例であり、ここでは、全熱交換効率ηを25%としている。閾値温度Tthは、
図14と同じく10℃とした。この例では、全熱交換器を稼働させる厳冬期において、全熱交換効率ηが
図14の例に比べて低いため、最適な(混合空気温度Tmを給気温度Tsと一致させる)外気量比率qは小さくなる。例えば2月前半は、
図14の例ではq=33%であったが、
図16の例ではq=22%となる。
【0100】
図17は、
図16の設定例を適用した場合における、
図15(a)と同様の、厳冬期の冷水及び温水の消費熱量のシミュレーションの例を示した表である。厳冬期以外の例は、
図15(b)と同じとなるので省いている。
【0101】
図17では、設定例の外気量比率22%とともに、比較例として外気量比率qを15%とした場合と、30%とした場合の計算結果を併せて示す。設定値の外気量比率22の場合の消費熱量を100%とすると、2つの比較例の消費熱量はそれぞれ296%、233%となる。
図16及び
図17に示した例においても、理論上は消費熱量を最小限とすることはできるが、全熱交換効率ηが小さく排気EAからの熱回収量が極めて少ない点を考慮すると、全熱交換効率ηが大きい
図14及び
図15に示した例の方が好ましいといえる。
【0102】
以上の第1〜第3の各実施形態の制御方法において、外気量比率qの算出に用いた上記[式3]は、上記[式2]においてTm=Tsとし、変形したものである。この算出法により外気量比率qを設定すると、実際の混合空気温度Tmの変動においては、給気温度Tsより低い(温水を使用する)場合と、高い(冷水を使用する)場合の双方が均等に生じ得る。そこで、冬季における冷水使用を避けることを優先する場合は、上記[式2]においてTm=Ts−Δtとすればよい。すなわち、混合空気温度Tmが、給気温度Tsより若干低くなるようにする(Tm<Ts)。この場合、上記[式3]は次の[式3’]となる。
【0103】
[式3’] q=(Tr−Ts+Δt)/(Tr−Tox)*100
(Ts:設計条件による給気温度)
(全熱交換効率η=0%の場合は、上記[式1]よりTox=To)
【0104】
上記[式3’]のΔtは、例えば0.5℃、1.0℃、2.0℃等に設定する。Tm<Tsとした場合の外気量比率qは、Tm=Tsとした場合より高くなる。Δtを大きくすると、冷水使用量より温水使用量が優勢となり、さらに大きくすると冷水使用量が零となり温水使用量のみとすることができる(例えば、
図15及び
図17のシミュレーション例において、外気量比率qの高い比較例がこれに相当する)。但し、Δtを大きくとりすぎると温水使用量が大きくなりすぎ消費熱量が大きくなってしまうので、温水使用量の上限を目安として設定した上でΔtを設定するとよい。
【解決手段】外気温度と、全熱交換器における零又は一定値のいずれかである全熱交換効率との対応関係を予め設定するステップと、現在の外気温度及び現在の還気温度を検知するステップと、検知した現在の外気温度を基に、予め設定された全熱交換効率を取得するステップと、取得した全熱交換効率なるように全熱交換器を制御するステップと、検知した現在の外気温度及び現在の還気温度と取得した全熱交換効率とを基に、全熱交換後の外気温度を算出するステップと、算出した全熱交換後の外気温度及び検知した現在の還気温度を基に、混合空気の混合空気温度が一定の給気温度と等しくなるように、給気に占める外気の割合である外気量比率を算出するステップと、算出した外気量比率となるように取り入れる外気の量を制御するステップとを有する。