(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガスタービンエンジンの入口の燃料流量計測値、温度計測値、圧力計測値及び回転数計測値と、前記差分演算器による複数種、複数個の差分値とに所定の時定数の時間遅れを伴って前記ニューラルネットワークに入力するフィルタを備えたことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン性能推定装置。
エンジンモデルの各要素の性能パラメータを変化させた後のセンサデータと、前記各要素の性能パラメータを変化させない場合のセンサデータとを用い、これらのセンサデータ間の差を教師データとして前記ニューラルネットワークの中間層、出力層の結合荷重を求めたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービン性能推定装置。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンエンジンのファン、圧縮機、タービン等の各モジュール性能を推定する際、各要素の出入口に圧力センサ、温度センサ等の計測センサを追加し、センサ計測値を取得して性能解析することにより効率、空気流量等のモジュール性能を確認し、要素の劣化や異常を判断していた。
【0003】
一方、精度の高い性能推定を確保する目的で、多数の計測センサをエンジン各部に追加することは、ガスタービンエンジンにとって重量増加となる。そこで従来は、エンジン開発実験時にのみ多数の計測センサをエンジン各部に追加するが、量産エンジンでは装備しないようにしている。そのため、量産エンジンに設置する計測センサ類は、制御に必要な情報を集める目的のためにだけ設置され、その数や種類が限られていた。例えば、ファン入口温度T2、ファン出口温度T28、圧縮機入口温度T3、圧縮機出口圧力CDP、タービン排気ガス温度T42、低圧軸回転数N1、高圧軸回転数N2を取得するセンサ類だけが設置されていた。
【0004】
ところが、限られた計測センサでは各モジュールの性能を確認することができないため、トレンド分析等により過去の経験等で専門家が判断するしかなかった。
【0005】
この専門家の判断をコンピュータにより行わせる技術として、例えば、特開2000−213395号公報(特許文献1)には、ニューラルネットワークを利用し、エンジンモデルパラメータを最適化するように自己学習し、かつ、そのニューラルネットを用いて空燃比制御するシステムが開示されている。また、特開2001−174366号公報(特許文献2)には、タービンエンジンの性能を監視するシステムとして、動作条件、実エンジンのセンサ値を利用し、エンジンモデルを動作させて諸パラメータを算出し、ニューラルネットワークにてエンジンの動作状態を診断するシステムが開示されている。さらに、特開平11−343916号公報(特許文献3)には、通常のエンジンに関するものであるが、エンジンの状態に関するデータを制御パラメータとするエンジン制御において、制御パラメータとしてのエンジンの状態に関するデータを、少なくとも、それとは異なる複数データを入力情報とするファジィニューラル回路網を用いて推定する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のガスタービン性能推定装置を改良するものであり、限られた計測センサの計測データからニューラルネットワークで学習し、各モジュールの性能特性を推定することにより、少ない数のセンサで各モジュールの性能特性を精度良く推定することができ、異常等の検知が可能なガスタービン性能推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガスタービンエンジンの所定箇所それぞれに設置された
、限られた数の複数種、複数個の制御用センサと、前記ガスタービンエンジンの入口に設置された温度センサ、圧力センサ及び回転数センサと、前記ガスタービンエンジンの燃料入口に設置された燃料流量センサと、前記温度センサの計測値、圧力センサの計測値、回転数センサの計測値、燃料流量センサの計測値それぞれを入力し、ノミナルモデルを使用する第1のエンジンダイナミックモデルソフトウェアを動作させて前記ガスタービンの所定箇所それぞれに設置された
、前記限られた数の複数種、複数個の制御用センサそれぞれの計測値を推定し、推定値を出力する第1エンジンシミュレータと、前記
限られた数の複数種、複数個の制御用センサの計測値それぞれと前記第1エンジンシミュレータの推定値それぞれとの差分を求める差分演算器と、前記温度計測値、圧力計測値、燃料流量計測値及び回転数計測値と、前記差分演算器による複数種、複数個の差分値とを入力とし、前記ガスタービンエンジンの
ダイナミックモデルの内部状態である性能特性係数を推定するニューラルネットワークと、前記温度計測値、圧力計測値、燃料流量計測値及び回転数計測値を入力し、前記ニューラルネットワークの出力する性能特性係数推定値を状態変数群として入力して
劣化モデルを構築し、当該劣化モデルを使用する第2のエンジンダイナミックモデルソフトウェアを動作させて前記ガスタービンエンジンの
センシングが困難な箇所を含む所定箇所それぞれの
物理量の推定値
を出力する第2エンジンシミュレータとを備えたガスタービン性能推定装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノミナルモデルを使用する第1のエンジンダイナミックモデルソフトウェアを動作させる第1エンジンシミュレータと劣化モデルを使用する第2のエンジンダイナミックモデルソフトウェアを動作させる第2エンジンシミュレータとをカスケードに並べ、各部の制御用センサの計測値と第1エンジンシミュレータの対応する制御用センサの推定値との差分をニューラルネットの入力として、ニューラルネットワークが推定し出力する性能特性係数を第2エンジンシミュレータの劣化モデルの状態変数群とすることで、推定計算が不安定になりがちなフィードバック系を切り離し、限られた数のセンサの計測データからニューラルネットワークで学習し、各モジュールの性能特性係数を推定することにより、少ない個数の制御用センサで各モジュールの性能特性を安定に精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のガスタービン性能推定装置の機能ブロック図。
【
図2】上記第1の実施の形態のガスタービン性能推定装置を含むガスタービンエンジン電子制御装置の機能ブロック図。
【
図3】上記第1の実施の形態のガスタービン性能推定装置で取得するガスタービンエンジンの各部の計測値を計測する制御用センサの配置を示す説明図。
【
図4】上記実施の形態のガスタービン性能推定装置におけるニューラルネットワークの説明図。
【
図5A】上記第1の実施の形態のガスタービン性能推定装置によるガスタービンエンジン各部の圧力、温度の計測値、推定値、ノミナル時のモデルの値を共に示したグラフ群その1。
【
図5B】上記第1の実施の形態のガスタービン性能推定装置によるガスタービンエンジン各部の圧力、温度の計測値、推定値、ノミナル時のモデルの値を共に示したグラフ群その2。
【
図6A】上記第1の実施の形態のガスタービン性能推定装置によるガスタービンエンジン各部の圧力、温度の計測値と推定値との差を示したグラフ群その1。
【
図6B】上記第1の実施の形態のガスタービン性能推定装置によるガスタービンエンジン各部の圧力、温度の計測値と推定値との差を示したグラフ群その2。
【
図7】本発明の第2の実施の形態のガスタービン性能推定装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態のガスタービン性能推定装置1の構成を示し、
図2はガスタービン性能推定装置1を含むガスタービンエンジン電子制御装置2の構成を示している。ガスタービン性能推定装置1は、第1エンジンシミュレータ11、差分演算器12、フィルタ13,14、ニューラルネットワーク15、第2エンジンシミュレータ16を備えている。第1エンジンシミュレータ11、第2エンジンシミュレータ16は、エンジンダイナミックモデルソフトウェアを搭載しており、その動作により実機のガスタービンエンジン3の動作をシミュレートし、燃料流量などの入力に対して実時間に動的に応答して各センサ設置部の圧力、温度の推定値y0(i),y_hat(i)を算出する。
【0013】
図3に示すように、実機であるガスタービンエンジン3は、モジュールとして吸気口31、ファン32、高圧縮機(HPC)33、燃焼器34、高圧タービン(HPT)35、低圧タービン(LPT)36、ミキサー37、排気口38を備えている。高圧縮機33と高圧タービン35とは高圧軸39により結合されていて、高圧タービン35にて高圧縮機33が回転され、空気を高圧縮する。ファン32と低圧タービン36とは低圧軸310により結合されていて、低圧タービン36の回転にてファン32が回転され、空気を低圧縮して高圧縮機33に送り込む。吸気口31から取り込まれる空気30の一部はコア流311となって高圧縮機33を通り圧縮され、燃焼器34にて燃料と混合、燃焼されて高圧タービン35、低圧タービン36に順に送り込まれ、これらを回転させ、ミキサー37に送り込まれる。給気口31から取り込まれる空気30の残りはバイパス流312となり、バイパスダクト40を通ってミキサー37に送り込まれる。ミキサー37では高温のコア流311とバイパス流312が混合され、その後、排気口38から排気流313として排出される。
【0014】
このガスタービンエンジン3の所定箇所に各種センサが設置されている。すなわち、吸気口入口(0)、ファン入口(2)、バイパスダクト入口(11)、バイパスダクト出口(15)、高圧縮機入口(28)、燃焼器入口(3)、高圧タービン入口(4)、低圧タービン入口(41)、低圧タービン出口(42)それぞれに、温度センサT0,T2,T11,T28,T3,T42と、圧力センサP2,P11,P28,P3,P41s,P42,P5sが設置されている。低圧軸回転数センサN1により低圧軸回転数、高圧軸回転数センサN2により高圧軸回転数がセンシングされる。ここで、Tx,Pxの添え字xは、ガスタービンエンジン3における上記各部の数字に対応している。そして、これらTx,Pxは該当する箇所のセンサの計測値をも表すものとして説明する。回転数N1,N2についても同様である。
【0015】
本実施の形態のガスタービン性能推定装置1では、第1エンジンシミュレータ11、フィルタ13,14、第2エンジンシミュレータ16それぞれに、作動点信号u(i)として表1に示す燃料流量WF、高圧縮機入口可変静翼角度VSV、エンジン入口温度T0を入力し、エンジン入口圧力としてP0が入力される。表1は、ガスタービンエンジン3の作動点の計測データとして取得するデータ群の種類を示す表である。
【表1】
【0016】
また、第1エンジンシミュレータ11には、性能
特性係数cとしてすべて0が設定される。そして、第1エンジンシミュレータ11は、ノミナル状態(使用開始初期の劣化や異常のない状態)でのガスタービンエンジン3の動作をシミュレーション計算し、各センサ計測点における温度、圧力、回転数の推定値y0(i)(i=1〜16)を出力する。ここで、性能
特性係数とは、各モジュールの性能を示す断熱効率や流量のノミナル状態に対する倍数値であり、第1エンジンシミュレータ11では0が設定される。
【0017】
差分演算器12は、表2に示す実機3の各所に設置された温度センサ、圧力センサそれぞれの計測値Tx,Pxを入力し、また低圧軸回転速度N1、高圧軸回転数N2を入力する。表2は、ガスタービンエンジン(実機)3の制御用センサ群とその計測値の対応を示す表であり、具体的には、センサ計測値Tx,Px,N1,N2とセンサ識別番号y(i)を対比した表である。
【表2】
【0018】
差分演算器12は、これらのセンサ計測値y(i)から第1エンジンシミュレータ11の算出したセンサ計測値の推定値y0(i)を引き算して差分Δy_hat(i)を求めて、フィルタ13に出力する。
【0019】
フィルタ13,14それぞれは、入力に対して一定の時定数の時間遅れの後に入力値をニューラルネットワーク15に対して出力する。性能
特性係数の推定値c_hat(i)は、センサ計測値y(i)に含まれるノイズの影響を受けるため、エンジンダイナミクスと干渉しないようにエンジン時定数(約1秒)より遅く、本推定装置の用途(計器や警報など)に応じて望まれる帯域より速い時定数、約5秒に設定するのが好ましい。
【0020】
図4にニューラルネットワーク15の内部を示す。このニューラルネットワーク15の入力層には、差分演算器12の出力ΔN1,ΔN2,…,ΔP5sと作動点入力u(i)であるWF,VSV,T0が入力される。ニューラルネットワーク15はこれらのΔN1,ΔN2,…,ΔP5s,WF,VSV,T0の入力に対する中間層の各ユニットの重みを初期学習により最適なものに設定してある。つまり、見本となる入力と出力のデータのセット(教師データ)を与えておき、可能な限りその入出力関係を再現するように反復計算により中間層、出力層の結合荷重を求めている。
【0021】
ニューラルネットワーク15は、出力層から推定したいパラメータC(i)(=c_hat(i))を出力する。表3は、ニューラルネットワーク15にて算出する性能
特性係数cとガスタービンエンジン各部物理量との対応表である。
【表3】
【0022】
表3に示すように、ニューラルネットワーク15にて推定したいパラメータC(i)は性能
特性係数であり、C1はsw_fh:FANハブ側流量、C2はse_fh:FANハブ側効率、C3はsw_ft:FANチップ側流量、等々である。そして、ニューラルネットワーク15にて得られた性能
特性係数C(i)(i=1〜12)は、第2エンジンシミュレータ16に入力される。
【0023】
第2エンジンシミュレータ16は、計算方法が第1エンジンシミュレータと同じであり、劣化時の性能
特性係数C(i)を用いて各センサ計測値の推定値y_hat(i)を算出して出力する。推定値y_hat(i)には、表2に示す種類以外に、通常ではセンシング困難な第2エンジンシミュレータ16で推定したエンジン推力をはじめとした
図3に示す各箇所の物理量(推力、空気流量、圧力、温度、エンタルピー、モーメンタム、流速など)が含まれる。
【0024】
図2に示したガスタービンエンジン電子制御装置2のシステム構成では、スロットル4の指令に対してレーティング計算部21が回転数要求N1ref,N2refなどを計算し、差分器22は実機3の回転数センサからの低圧軸回転数N1、高圧軸回転数N2とこの回転数要求N1ref,N2refとの差分ΔN1,ΔN2を求めてコントローラ23に出力する。コントローラ23は、回転数差値に基づき、実機3に対する供給燃料流量WF(=u1)を演算し、同時にHPC入口可変静翼角度VSV(=u2)も計算して実機3に出力し、これによりガスタービンエンジン実機3の回転を制御する。なお、エンジンを制御するための実機への入力となるパラメータ(操作変数)には、他にも圧縮機で圧縮された空気を主流から排出する抽気流量、タービンの動翼とケース間のクリアランスを調整するためのタービンケース冷却流量などがあるが、ここではWFとVSVについて示す。
【0025】
これと同時に、ガスタービン性能推定装置1では、第1エンジンシミュレータ11において、コントローラ23から燃料流量WF、HPC入口可変静翼角度VSV、センサT0からのエンジン入口温度T0、エンジン入口圧力P0を作動点データu1〜u4として入力し、ガスタービンエンジン3のノミナル状態での動作をシミュレーション演算し、センサy(i)(i=1〜16)の計測値のノミナル推定値y_0(i)を出力する。
【0026】
このガスタービン性能推定装置1における以降の演算動作は上述したものであり、第2エンジンシミュレータ16により、劣化モデル(ガスタービンエンジン3の劣化状態のモデル)におけるセンサy(i)(i=1〜16)の計測値の推定値y_hat(i)を出力する。
【0027】
このように、本実施の形態のガスタービン性能推定装置1では、限られた制御用センサの計測値y(i)と第1エンジンシミュレータ11におけるノミナル状態でのエンジンダイナミックモデルのシミュレーション演算による推定値y_0(i)との差分Δy_hat(i)を入力としたニューラルネットワーク15によって各モジュールの性能特性を推定し、これにより第2エンジンシミュレータ16におけるエンジンダイナミックモデルの内部状態である性能特性係数(ノミナル性能との差:c_hat(i))をチューニングする。そして第2エンジンシミュレータ16によるこの劣化モデルでのシミュレーション演算により、各センサの計測値y(i)に対応する推定値y_hat(i)を出力する。
【0028】
これにより、本実施の形態によれば、第2エンジンシミュレータ16のエンジンダイナミックモデルを常に実機3とオンラインで同定されている状態を保ちつつシミュレーション演算し、各センサの計測値y(i)に対応する推定値y_hat(i)を得ることができる。この各センサの劣化モデルでの推定値y_hat(i)は、これを技術者が見ることによりガスタービンエンジン3の各モジュールの状態を判断することができるものである。
【0029】
加えて、本実施の形態では、同じエンジンダイナミックモデルソフトウェアを実行する第1エンジンシミュレータ11と第2エンジンシミュレータ16とをカスケードに並べ(ノミナルモデルと劣化モデルと称する)、計測値y(i)とノミナルモデルの推定値y0(i)との差分をニューラルネットワーク15の入力として、ニューラルネットワーク15の出力である性能特性係数c_hat(i)を劣化モデルの状態変数とすることで、フィードバック系を切り離している。
【0030】
これにより、本実施の形態によれば、
図5A、
図5B、
図6A、
図6Bのグラフ群に示すように、性能特性係数の発振が抑えられ、センサ計測値y(i)と推定値y_hat(i)とがよく一致することとなり、各モジュールの性能特性が精度良く推定することができる。尚、
図5A、
図5Bは、各センサの計測値y(i)(i=1〜16)と本実施の形態により得た推定値y_hat(i)とを同時にプロットして示しており、
図6A、
図6Bは、各センサの計測値y(i)と本実施の形態により得た推定値y_hat(i)との差Δy_hat(i)(=y(i)−y_hat(i))を示している。
図5A、
図5Bでは両方のグラフが一致する方が推定値の精度の高いことを意味する。また
図6A、
図6Bでは、グラフの値が0に近いほど推定値の精度の高いことを意味する。そして、本実施の形態の演算結果によれば、両者間の差が小さく、精度の高い推定が行えていることが理解できる。例えば、変数y1は低圧軸回転数N1、y2は高圧軸回転数N2であるが、計測値と推定値との差は略±1%の範囲に収まっている。高圧タービン圧y13、低圧タービン圧y14についても計測値と推定値との差は略±0.5%の範囲に収まっている。
【0031】
[第2の実施の形態]
図7を用いて、第2の実施の形態のガスタービン性能推定装置1Aについて説明する。第2の実施の形態の特徴は、
図3に示したようにガスタービンエンジン3の所定箇所それぞれに設置された所定数の制御用センサTx,Pxと、ガスタービンエンジン3の入口に設置された温度センサT0及び圧力センサP0、ガスタービンエンジン3の燃料入口又は燃焼器入口に設置された燃料流量センサWFと、温度センサT0の計測値、圧力センサP0の計測値、燃料流量センサWFの計測値それぞれを入力し、エンジンダイナミックモデルソフトウェアを動作させてガスタービン3の所定箇所それぞれに設置された複数種、複数個の制御用センサそれぞれの計測値を推定し、推定値を出力するエンジンモデルシミュレータ51と、複数種、複数個の制御用センサTx,Pxの計測値y(i)それぞれとエンジンモデルシミュレータ51が推定した複数種、複数個の制御用センサの推定値y_hat(i)それぞれとの差分Δy_hat(i)を求める差分演算器52と、温度計測値T0、圧力計測値P0及び燃料流量計測値F0と、差分演算器52による複数種、複数個の差分値Δy_hat(i)とを入力とし、ガスタービンエンジン3の複数のモジュールそれぞれの性能特性係数C(i)を推定し、エンジンモデルシミュレータ51にフィードバックしてその内部状態である性能特性係数をチューニングするニューラルネットワーク15とを備えている。
【0032】
このニューラルネットワーク15は、感度行列演算部151によりノミナルモデル(新品時の特性を備えたモデル)と劣化モデルそれぞれの特性データの差ΔyからΔc/Δyの感度行列を作成し、オンライン学習する機能を備えている。すなわち、Δyから感度行列Δc/Δyをかけて求めた性能
特性係数パラメータを教師データとし、学習時間中はモーメンタム付きの最急降下法でΔyの2乗和を最小化する重みを探索する。このニューラルネットワーク15はガスタービンエンジンの使用により劣化した状態のモデル、つまり劣化モデルに対する性能特性係数C(i)を算出し、エンジンモデルシミュレータ51にフィードバックする。したがって、このエンジンモデルシミュレータ51の内部状態である性能特性係数はオンライン学習により劣化した実機3に一致するように逐次更新されることになる。
【0033】
本実施の形態のガスタービン性能推定装置によれば、限られた制御用センサ(計測値:y(i))とエンジンダイナミックモデルの推定値y_hat(i)との差分Δy_hat(i)を入力としたニューラルネットワーク15で各モジュールの性能特性を推定し、これをエンジンダイナミックモデルの内部状態である性能特性係数(ノミナル性能との差:c_hat(i))をチューニングすることにより、常にエンジンダイナミックモデルが実エンジンとオンラインで同定されている状態を保つことができ、精度の良い推定ができる。