特許第5845752号(P5845752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845752
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】音響効果付与装置およびピアノ
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20151224BHJP
   G10F 1/02 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   G10H1/00 C
   G10H1/00 101C
   G10F1/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-200675(P2011-200675)
(22)【出願日】2011年9月14日
(65)【公開番号】特開2013-61540(P2013-61540A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小関 信也
(72)【発明者】
【氏名】奥山 福太郎
【審査官】 千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−524350(JP,A)
【文献】 特開平06−337679(JP,A)
【文献】 特開平05−073039(JP,A)
【文献】 特開平11−331979(JP,A)
【文献】 特開平04−191894(JP,A)
【文献】 特開平05−204376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00
G10F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵、前記鍵に対応して設けられた弦、および前記鍵の操作により当該鍵に対応する弦を打撃するハンマを有するピアノに用いられる音響効果付与装置であって、
前記ハンマによる前記弦への打撃を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に基づいて、前記打撃された弦の基本周波数に対応する周波数の正弦波信号を出力する信号出力手段と、
前記出力された正弦波信号を前記弦に伝達する信号伝達手段と、
前記信号出力手段から出力される正弦波信号の振幅を決定するための振幅調整値を、前記弦ごとに設定する設定手段と
を具備し、
前記信号出力手段は、前記設定手段によって設定された振幅調整値に基づいて前記正弦波信号の振幅を制御する
ことを特徴とする音響効果付与装置。
【請求項2】
前記設定手段は、
ユーザの操作を受け付ける操作手段を有し、
前記受け付けられた操作に応じて前記振幅調整値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の音響効果付与装置。
【請求項3】
前記設定手段は、
前記弦の振動を検出する振動検出手段を有し、
前記弦に対応する測定信号を前記信号伝達手段により当該弦に伝達させ、
前記振動検出手段によって検出された当該弦の振動の態様に基づいて当該弦ごとの前記振幅調整値を設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の音響効果付与装置。
【請求項4】
前記測定信号は、前記信号出力手段によって出力される正弦波信号であり、
前記設定手段は、前記測定信号の振幅と前記弦の振動の振幅との関係に基づいて、前記振幅調整値を設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の音響効果付与装置。
【請求項5】
複数の鍵と、
前記鍵に対応して設けられた弦と、
前記鍵の操作により当該鍵に対応する弦を打撃するハンマと、
前記ハンマによる前記弦への打撃を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に基づいて、前記打撃された弦の基本周波数に対応する周波数の正弦波信号を出力する信号出力手段と、
前記出力された正弦波信号を前記弦に伝達する信号伝達手段と、
前記信号出力手段から出力される正弦波信号の振幅を決定するための振幅調整値を、前記弦ごとに設定する設定手段と
を具備し、
前記信号出力手段は、前記設定手段によって設定された振幅調整値に基づいて前記正弦波信号の振幅を制御する
ことを特徴とするピアノ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アコースティックピアノの音を変化させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティックピアノにおいて、演奏により発生する音を変化させる技術が開発されている。例えば、鍵の挙動に応じて楽器音などのオーディオ信号を出力する電子音源を用いる技術がある。この場合には、アコースティックピアノからの音とともに、またはこの音が発生しない消音状態で、電子音源からの楽器音などが発音される。このように電子音源からの音を用いると、アコースティックピアノの発音による自然な感じが再現されないことがあった。そこで、自然なピアノ音を維持しつつ音響効果を付与するために、アコースティックピアノが発音するときの振動信号をリアルタイムに抽出し、音響効果を付与する演算処理を施して響板駆動信号を生成して響板を振動させる技術も開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−73039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術によっては、響板をスピーカとして用いて響板駆動信号を出力することにより、音響効果を付与することができる一方、様々な周波数成分が含まれた響板駆動信号による響板の振動が、ハンマの打弦により振動している弦に到達する場合がある。この場合には、双方の振動の関係によっては意図しない発音内容に変化することがあり、音響効果が付与されたピアノ音については、アコースティックピアノの自然な感じが少なくなってしまう場合もあった。
本発明は、アコースティックピアノの自然な感じを残しつつ、その発音に音響効果を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため、本発明は、複数の鍵、前記鍵に対応して設けられた弦、および前記鍵の操作により当該鍵に対応する弦を打撃するハンマを有するピアノに用いられる音響効果付与装置であって、前記ハンマによる前記弦への打撃を検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記打撃された弦の基本周波数に対応する周波数の正弦波信号を出力する信号出力手段と、前記出力された正弦波信号を前記弦に伝達する信号伝達手段と、前記信号出力手段から出力される正弦波信号の振幅を決定するための振幅調整値を、前記弦ごとに設定する設定手段とを具備し、前記信号出力手段は、前記設定手段によって設定された振幅調整値に基づいて前記正弦波信号の振幅を制御することを特徴とする音響効果付与装置を提供する。
【0006】
また、別の好ましい態様において、前記設定手段は、ユーザの操作を受け付ける操作手段を有し、前記受け付けられた操作に応じて前記振幅調整値を設定することを特徴とする。
【0007】
また、別の好ましい態様において、前記設定手段は、前記弦の振動を検出する振動検出手段を有し、前記弦に対応する測定信号を前記信号伝達手段により当該弦に伝達させ、振動検出手段によって当該測定信号により生じる当該弦の振動を検出し、当該弦の振動の態様に基づいて当該弦ごとの前記振幅調整値を設定することを特徴とする。
【0008】
また、別の好ましい態様において、前記測定信号は、前記信号出力手段によって出力される正弦波信号であり、前記設定手段は、前記測定信号の振幅と前記弦の振動の振幅との関係に基づいて、前記振幅調整値を設定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複数の鍵と、前記鍵に対応して設けられた弦と、前記鍵の操作により当該鍵に対応する弦を打撃するハンマと、前記ハンマによる前記弦への打撃を検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記打撃された弦の基本周波数に対応する周波数の正弦波信号を出力する信号出力手段と、前記出力された正弦波信号を前記弦に伝達する信号伝達手段と、前記信号出力手段から出力される正弦波信号の振幅を決定するための振幅調整値を、前記弦ごとに設定する設定手段とを具備し、前記信号出力手段は、前記設定手段によって設定された振幅調整値に基づいて前記正弦波信号の振幅を制御することを特徴とするピアノを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アコースティックピアノの自然な感じを残しつつ、その発音に音響効果を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態におけるグランドピアノの外観を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態におけるグランドピアノの内部構造を説明する図である。
図3】本発明の実施形態における振動部の取り付け位置を説明する図である。
図4】本発明の実施形態における音源装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態における音響効果付与装置の機能構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態における信号出力部の機能構成を示すブロック図である。
図7】本発明の実施形態における基本特性鍵テーブルの内容を説明する図である。
図8】本発明の実施形態における基本特性鍵テーブルの具体例を説明する図である。
図9】本発明の実施形態における基音OSC鍵テーブルの内容を説明する図である。
図10】本発明の実施形態における基音AEG鍵テーブルの内容を説明する図である。
図11】本発明の実施形態におけるタッチパネルに表示される設定画面の例を説明する図である。
図12】本発明の変形例1におけるグランドピアノの内部構造を説明する図である。
図13】本発明の変形例1における音響効果付与装置の機能構成を示すブロック図である。
図14】本発明の変形例2における音響効果付与装置の機能構成を示すブロック図である。
図15】本発明の変形例3における音響効果付与装置の機能構成を示すブロック図である。
図16】本発明の変形例5における音響効果の設定時の鍵の位置を説明する図である。
図17】本発明の変形例7におけるアップライトピアノの内部構造を示す図である。
図18】本発明の変形例8におけるグランドピアノの内部構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態におけるグランドピアノ1の外観を示す斜視図である。グランドピアノ1は、その前面に演奏者によって演奏操作がなされる鍵2が複数配列された鍵盤、およびペダル3を有する。また、グランドピアノ1は、前面部分に操作パネル13を有する音源装置10、および譜面台部分に設けられたタッチパネル60を有する。ユーザの指示は、操作パネル13およびタッチパネル60が操作されることにより、音源装置10に対して入力可能になっている。
【0013】
グランドピアノ1は、複数の発音モードのうち、ユーザの指示に応じた発音モードでの発音が可能になっている。この発音モードには、一般的なグランドピアノと同様の態様、ハンマによる打弦のみで発音させる通常発音モード、本発明の音響効果付与装置によって実現される態様で音響効果を付与して発音させる音響効果付与モード、および、ハンマによる打弦を阻止することにより消音させて電子音源により発音させる消音モードが含まれている。この音響効果付与モードにおいては、付与される音響効果を決定し、決定した内容を記憶させることができるようになっている。なお、通常発音モードおよび消音モードについては存在しなくてもよい。
【0014】
また、グランドピアノ1は、複数の演奏モードのうち、ユーザの指示に応じた演奏モードでの動作が可能になっている。この演奏モードには、ユーザが演奏操作をして発音させる通常演奏モード、および鍵を自動的に駆動して発音させる自動演奏モードが含まれている。なお、いずれか一方の演奏モードについては存在しなくてもよい。
【0015】
[グランドピアノ1の構成]
図2は、本発明の実施形態におけるグランドピアノ1の内部構造を説明する図である。この図においては、各鍵2に対応して設けられている構成については、1つの鍵2に着目して示し、他の鍵2に対応して設けられている部分については記載を省略している。
【0016】
各鍵2の後端側(演奏するユーザから見て鍵2の奥側)の下部には、演奏モードが自動演奏モードである場合において、ソレノイドを用いて鍵2を駆動する鍵駆動部30が設けられている。鍵駆動部30は、音源装置10からの制御信号に応じてソレノイドを駆動する。鍵駆動部30は、ソレノイドを駆動してプランジャを上昇させることにより、ユーザが押鍵したときと同様な状態を再現する一方、プランジャを下降させることにより、ユーザが離鍵したときと同様な状態を再現する。このように、通常演奏モードと自動演奏モードとの違いは、鍵2を駆動させるのがユーザの操作であるか、鍵駆動部30であるかの違いである。
【0017】
ハンマ4は、各鍵2に対応して設けられ、鍵2が押下されるとアクション機構(図示略)を介して力が伝達されて移動し、各鍵2に対応する弦5を打撃する。また、ダンパ8は、鍵2の押下量、およびペダル3のうちダンパペダル(以下、単にペダル3といった場合にはダンパペダルを示す)の踏込量に応じて、弦5と非接触状態または接触状態となる。ダンパ8は、弦5と接触しているときには、その弦5の振動を抑制する。
【0018】
ストッパ40は、消音モードに設定されているときに、ハンマ4による弦5への打撃を阻止する部材である。すなわち、発音モードが消音モードに設定されているときには、ハンマシャンクがストッパ40に衝突してハンマ4の弦5への打撃が阻止される一方、消音モード以外に設定されているときには、ストッパ40は、ハンマシャンクと衝突しない位置に移動するようになっている。ストッパ40は、音源装置10からの制御信号に応じて、ハンマ4の打弦を阻止する位置と阻止しない位置とに移動するように構成されている。
【0019】
鍵センサ22は、各鍵2の下部に設けられ、鍵2の挙動に応じた検出信号を音源装置10に出力する。この例においては、鍵センサ22は、鍵2の押下量を検出し、検出結果を示す検出信号を音源装置10に出力する。なお、鍵センサ22は、鍵2の押下量に応じた検出信号を出力していたが、鍵2が特定の押下位置を通過したことを示す検出信号が出力されるようにしてもよい。特定の押下位置とは、鍵2のレスト位置からエンド位置に至る範囲のいずれかの位置であり、複数箇所であることが望ましい。このように、鍵センサ22が出力する検出信号は、鍵2の挙動を音源装置10に認識させることができる信号であればどのようなものであってもよい。
【0020】
ハンマセンサ24は、各ハンマ4に対応して設けられ、ハンマ4の挙動に応じた検出信号を音源装置10に出力する。この例においては、ハンマセンサ24は、ハンマ4による弦5の打撃直前の移動速度を検出し、検出結果を示す検出信号を音源装置10に出力する。なお、この検出信号は、ハンマ4の移動速度そのものを示すものでなくてもよく、別の態様での検出信号として、音源装置10において移動速度が算出されるようにしてもよい。例えば、ハンマ4が移動中にハンマシャンクが通過する2つの位置について、ハンマシャンクが通過したことを示す検出信号が出力されるようにしてもよいし、一方の位置を通過してから他方の位置を通過するまでの時間を示す検出信号が出力されるようにしてもよい。このように、ハンマセンサ24が出力する検出信号は、ハンマ4の挙動を音源装置10に認識させることができる信号であればどのようなものであってもよい。
【0021】
ペダルセンサ23は、各ペダル3に対応して設けられ、ペダル3の挙動に応じた検出信号を音源装置10に出力する。この例においては、ペダル3の踏込量を検出し、検出結果を示す検出信号を音源装置10に出力する。なお、ペダルセンサ23は、ペダル3の踏込量に応じた検出信号を出力していたが、ペダル3が特定の踏込位置を通過したことを示す検出信号が出力されるようにしてもよい。特定の踏込位置とは、ペダルのレスト位置からエンド位置に至る範囲のいずれかの位置であり、ダンパ8と弦5とが完全に接触する状態と非接触の状態とを区別できる踏込位置であることが望ましく、複数箇所を特定の踏込位置とすることでハーフペダルの状態についても検出することができるようにすることがさらに望ましい。このように、ペダルセンサ23が出力する検出信号は、ペダル3の挙動を音源装置10に認識させることができる信号であればどのようなものであってもよい。
【0022】
なお、鍵センサ22、ペダルセンサ23、およびハンマセンサ24から出力される検出信号によって、音源装置10が、弦5に対するハンマ4の打撃タイミング(キーオンのタイミング)、打撃速度(ベロシティ)、およびその弦5に対するダンパ8の振動抑制タイミング(キーオフのタイミング)を、各鍵2(キーナンバ)に対応して特定することができるようになっていれば、鍵センサ22、ペダルセンサ23およびハンマセンサ24は、鍵2、ペダル3、ハンマ4の挙動を検出した結果を、他の態様での検出信号として出力してもよい。
【0023】
響板7は、響棒75および駒6が接続され、駒6を介して響板7の振動を各弦5に伝達するとともに、各弦5の振動が駒6を介して伝達される。
また、響板7には、振動部50が接続されている。振動部50は、響板7に対して振動を伝達するアクチュエータと、アクチュエータを駆動する駆動回路とを有する。この駆動回路は、音源装置10から出力される駆動波形信号を増幅してアクチュエータに供給することにより、アクチュエータを駆動波形信号が示す波形で振動させる。また、振動部50は、直支柱9に接続された支持部55によって支持されて、響板7に接続されている。なお、振動部50は、支持部55を用いずに響板7によって支持されるようにしてもよい。この場合には、振動部50は、駆動波形信号に応じた振動を慣性力によって響板7に伝達する。
【0024】
図3は、本発明の実施形態における振動部50の取り付け位置を説明する図である。図3に示すように、振動部50は、響板7のうち、複数存在する響棒75の間に接続されている。なお、この例においては、複数の振動部50が響板7に接続されているが、1つであってもよい。また、振動部50は、響棒75に接続されていてもよい。また、振動部50は、駒6に対応する響板7の位置に設けられてもよい。この場合、響板7は、振動部50と駒6とに挟まれた状態になる。
【0025】
[音源装置10の構成]
図4は、本発明の実施形態における音源装置10の構成を示すブロック図である。音源装置10は、制御部11、記憶部12、操作パネル13、通信部14、信号発生部15、およびインターフェイス16を有する。これらの各構成はバスを介して接続されている。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などの記憶装置を有する。制御部11は、記録装置に記憶されている制御プログラムに基づいて、音源装置10の各部およびインターフェイス16に接続された各構成を制御する。この例においては、制御部11は、制御プログラムを実行することにより、音源装置10および音源装置10に接続された構成の一部を、音響効果付与装置100(図5参照)として機能させる。
【0026】
記憶部12は、制御プログラムを実行しているときに用いられる各種設定内容を示す設定情報を記憶する。設定情報は、鍵センサ22、ペダルセンサ23、およびハンマセンサ24から出力される検出信号に基づいて、信号発生部15において生成する駆動波形信号の内容を決定するための情報である。例えば、押下された鍵2と生成する駆動波形信号との関係を規定するテーブルなどが含まれている。記憶部12は、各々内容の異なる設定情報を複数記憶している。設定情報の内容についての詳細は後述する。
【0027】
操作パネル13は、ユーザの操作を受け付ける操作ボタンなどを有する。この操作ボタンによりユーザの操作が受け付けられると、操作に応じた操作信号が制御部11に出力される。インターフェイス16に接続されたタッチパネル60は、液晶ディスプレイなどの表示画面を有し、その表示画面の表面部分には、ユーザの操作を受け付けるタッチセンサが設けられている。この表示画面には、制御部11のインターフェイス16を介した制御により、記憶部12に記憶された複数の設定情報のうち、一の設定情報を選択するための選択画面、各種モードの設定などを行う設定画面、楽譜などの各種情報が表示される。この例において用いられる設定画面の例については、後述する(図11参照)。また、タッチセンサにより利用者の操作が受け付けられると、操作に応じた操作信号がインターフェイス16を介して制御部11に出力される。ユーザから音源装置10への指示は、操作パネル13およびタッチパネル60などの操作手段によって受け付けられる操作により入力される。
【0028】
通信部14は、無線、有線などにより他の装置と通信を行うインターフェイスである。このインターフェイスには、DVD(Digital Versatile Disk)やCD(Compact Disk)などの記録媒体に記録された各種データを読み出し、読み出したデータを出力するディスクドライブが接続されていてもよい。通信部14を介して音源装置10に入力されるデータは、例えば、自動演奏に用いる楽曲データなどである。
【0029】
信号発生部15は、制御部11の制御により、正弦波信号を発生させてエンベロープを調整して、駆動波形信号として出力する音源を有する。
インターフェイス16は、音源装置10と外部の各構成とを接続するインターフェイスである。インターフェイス16に接続される各構成は、この例においては、鍵センサ22、ペダルセンサ23、ハンマセンサ24、鍵駆動部30、ストッパ40、振動部50およびタッチパネル60である。インターフェイス16は、鍵センサ22、ペダルセンサ23、ハンマセンサ24から出力される検出信号、およびタッチパネル60から出力される操作信号を、制御部11に出力する。また、インターフェイス16は、制御部11から出力された制御信号を鍵駆動部30およびストッパ40に出力し、信号発生部15から出力された駆動波形信号を振動部50に出力する。
続いて、制御部11が制御プログラムを実行することにより機能する音響効果付与装置100について説明する。なお、この制御プログラムは、発音モードが音響効果付与モードであるときに実行されるプログラムである。
【0030】
[音響効果付与装置100の機能構成]
図5は、本発明の実施形態における音響効果付与装置100の機能構成を示すブロック図である。音響効果付与装置100は、特定部110、検出部120、信号出力部130、信号伝達部140および設定部200を有する。図5に示すように、鍵2が操作されると、ハンマ4が弦5を打撃し、弦5が振動する。また、鍵2の操作、ペダル3の操作によりダンパ8が動作する。ダンパ8の動作により、弦5の振動の抑制状態が変化する。
【0031】
特定部110は、タッチパネル60により、記憶部12に記憶された複数の設定情報から1つの設定情報を選択させるユーザの操作を受け付ける。また、特定部110は、選択された設定情報を、信号出力部130において用いられる設定情報として、制御部11により特定する。
【0032】
検出部120は、鍵センサ22、ペダルセンサ23およびハンマセンサ24により、鍵2、ペダル3およびハンマ4の挙動をそれぞれ検出する。また、検出部120は、鍵センサ22、ペダルセンサ23およびハンマセンサ24から出力される検出信号に基づいて、ハンマ4による弦5の打撃タイミング(キーオンのタイミング)、打撃された弦5に対応する鍵2の番号(キーナンバ)、打撃速度(ベロシティ)、およびその弦5に対するダンパ8の振動抑制タイミング(キーオフのタイミング)を、信号出力部130で用いる情報(楽音制御情報)として、制御部11により特定する。この例においては、検出部120は、打撃タイミングおよび鍵2の番号については鍵2の挙動から特定し、打撃速度についてはハンマ4の挙動から特定し、振動抑制タイミングについては、鍵2およびペダル3の挙動から特定する。なお、打撃タイミングがハンマ4の挙動から特定されてもよいし、打撃速度が鍵2の挙動から特定されてもよい。
【0033】
検出部120は、特定したキーオンのタイミングにおいて、キーナンバ、ベロシティ、およびキーオンを示す楽音制御情報を、信号出力部130に出力する。また、検出部120は、キーオフのタイミングにおいて、キーナンバおよびキーオフを示す楽音制御情報を、信号出力部130に出力する。
【0034】
信号出力部130は、検出部120から出力される楽音制御情報に基づいて、信号発生部15により正弦波信号を発生して、駆動波形信号として信号伝達部140に出力する。ここで、正弦波信号の発生態様については、特定部110によって特定された設定情報に基づいて制御部11により指示される。信号出力部130における詳細な機能構成については後述する。
【0035】
信号伝達部140は、信号出力部130からの駆動波形信号を弦5に伝達する。信号伝達部140は、この駆動波形信号を振動部50に供給してアクチュエータを振動させ、響板7および駒6を介して、駆動波形信号が示す振動を弦5に伝達する。なお、駒6および響板7には、ハンマ4の打弦による弦5の振動も伝達される。
続いて、信号出力部130における詳細な機能構成について図6を用いて説明する。
【0036】
[信号出力部130の機能構成]
図6は、本発明の実施形態における信号出力部130の機能構成を示すブロック図である。信号出力部130は、制御部11によって実現される発音制御部131、信号発生部15により実現される正弦波発生部132、エンベロープ調整部133、および合成部134を有する。この例においては、正弦波発生部132は、基音OSC(Oscillator)、2倍音OSC、3倍音OSCおよび4倍音OSCを有する。基音OSC、2倍音OSC、3倍音OSCおよび4倍音OSCは、それぞれ、発音制御部131の制御にしたがって正弦波信号を出力する。
【0037】
エンベロープ調整部133は、基音AEG(Amplitude Envelope Generator)、2倍音AEG、3倍音AEGおよび4倍音AEGを有する。基音AEG、2倍音AEG、3倍音AEGおよび4倍音AEGは、基音OSC、2倍音OSC、3倍音OSCおよび4倍音OSCに対応して設けられ、入力された正弦波信号の振幅の時間変化を、発音制御部131の制御にしたがって調整して出力する。
【0038】
合成部134は、エンベロープ調整部133から出力された正弦波信号を合成(加算)して、駆動波形信号として信号伝達部140に出力する。
発音制御部131は、特定部110によって特定された設定情報、および検出部120によって出力された楽音制御情報に基づいて、正弦波発生部132およびエンベロープ調整部133の動作を制御する。すなわち、発音制御部131によってエンベロープ調整部133から出力される正弦波信号の周波数、振幅などが制御される。
【0039】
ここで、設定情報の内容について説明する。この例においては、設定情報には、複数のテーブルが含まれている。複数のテーブルとは、キーナンバと正弦波発生部132の全体の制御パラメータとの関係を定めた基本特性鍵テーブル、キーナンバと基音OSCの制御パラメータとの関係を定めた基音OSC鍵テーブル、キーナンバと基音AEGの制御パラメータを定めた基音AEG鍵テーブルを含む。設定情報には、基音OSC鍵テーブルと同様、2倍音OSC、3倍音OSC、4倍音OSCの制御パラメータとキーナンバとの関係を定めた2倍音OSC鍵テーブル、3倍音OSC鍵テーブル、4倍音OSC鍵テーブルについても含まれ、基音AEG鍵テーブルと同様、2倍音AEG、3倍音AEG、4倍音AEGの制御パラメータとキーナンバとの関係を定めた2倍音AEG鍵テーブル、3倍音AEG鍵テーブル、4倍音AEG鍵テーブルについても含まれている。このように、設定情報は、これらの各テーブルにおいて、駆動波形信号に含まれる正弦波信号の特徴を規定するようになっている。
【0040】
なお、以下の説明においては、2倍音OSC鍵テーブル、3倍音OSC鍵テーブル、4倍音OSC鍵テーブルについては、基音OSC鍵テーブルと適用される対象が異なるだけであるから、説明を省略する。また、2倍音AEG鍵テーブル、3倍音AEG鍵テーブル、4倍音AEG鍵テーブルについても同様に、基音AEG鍵テーブルと適用される対象が異なるだけであるから、説明を省略する。
【0041】
また、ベロシティと振幅レベルとの関係(ベロシティカーブ)を定めた情報についても複数種類が設定情報に含まれている。この情報は設定情報とは別に設けられていてもよい。また、ペダル3の踏込量に応じてダンパペダルの効きの程度(ハーフペダル時の効果など)を制御するためのパラメータを定めた情報についても設けられていてもよい。
【0042】
図7は、本発明の実施形態における基本特性鍵テーブルの内容を説明する図である。図8は、本発明の実施形態における基本特性鍵テーブルの具体例を説明する図である。基本特性鍵テーブルは、キーナンバ(Key No.)に対して、基音ピッチ(tuning)、主音量(volume)、不調和度(inharmonicity parameter)、ベロシティ調整(velocity adjust)が規定されている。
【0043】
基音ピッチについては、キーナンバに対応する鍵2が押下されたときにハンマ4によって打撃される弦5の基本周波数に相当するパラメータ(tn1、tn2、・・・)として定められ、基音OSCにおいて発生させる正弦波信号の周波数を決めるパラメータである。この例においては、このパラメータは、平均律からのずれ量をセント値で表したものであり、例えば、図8(a)に示す関係で定められている。この関係は、記憶部12に記憶されている複数の設定情報のうちの1つの例である。
なお、このパラメータは、ずれ量を周波数で表したものであってもよいし、ピッチの周波数そのものによって定められていてもよい。
【0044】
不調和度については、n倍音の周波数が基本周波数のn倍よりわずかに大きくなるアコースティックピアノの不調和性(インハーモニシティ)の程度を示すパラメータ(ih1、ih2、・・・)として定められ、2倍音OSC、3倍音OSCおよび4倍音OSCにおいて発生させる正弦波信号の周波数を決めるパラメータである。このパラメータ(inharmonicity parameter)は、どのように定義されたものであってもよいが、この例においては、特開平4−191894号公報に開示されているパラメータb値に相当するものとし、例えば、図8(b)に示す関係で定められている。この関係は、記憶部12に記憶されている複数の設定情報のうちの1つの例である。
【0045】
主音量については、正弦波発生部132において発生させる正弦波信号の振幅を全体的に制御するパラメータ(vm1、vm2、・・・)として定められている。
ベロシティ調整については、適用されるベロシティカーブを示すパラメータ(va1、va2、・・・)として定められている。
【0046】
図9は、本発明の実施形態における基音OSC鍵テーブルの内容を説明する図である。基音OSC鍵テーブルは、キーナンバ(Key No.)に対して、倍数(multiple)、従音量(level)、位相(phase)、ピッチ(pitch adjust)が規定されている。
倍数については、基音OSCにおいて発生させる正弦波信号の周波数と、上記基音ピッチとの関係とを定めるパラメータ(mp1、mp2、・・・)として定められている。通常は、基音OSC鍵テーブルにおいては、全てのキーナンバに対して「1倍」として定められ、2倍音OSC鍵テーブル、3倍音OSC鍵テーブル、4倍音OSC鍵テーブルにおいては「2倍」、「3倍」、「4倍」として定められる。
【0047】
従音量については、基音OSCにおいて発生させる正弦波信号の振幅を制御するパラメータ(lv1、lv2、・・・)として定められている。基音OSCから出力される正弦波信号の振幅は、ベロシティ調整に示されるベロシティカーブによって決まる出力レベル、主音量、および、この従音量によって決まる。そして、基音AEGによって振幅の時間変化が制御される。通常は、基音OSC鍵テーブルにおける従音量よりも、2倍音OSC鍵テーブルの方が小さくなり、3倍音OSC鍵テーブル、4倍音OSC鍵テーブルの方がより小さくなるように定められる。
【0048】
位相については、基音OSCにおいて発生させる正弦波信号の位相を制御するパラメータ(ph1、ph2、・・・)として定められている。
ピッチについては、基音OSCにおいて発生させる正弦波信号の周波数を、基本特性鍵テーブルによって決められる周波数からシフトさせるパラメータ(ps1、ps2、・・・)として定められている。
なお、基音OSC鍵テーブルにより規定される基音OSCから出力される正弦波信号は、これらのパラメータの組み合わせで定められる場合に限らず、様々な態様で定めることができる。
【0049】
図10は、本発明の実施形態における基音AEG鍵テーブルの内容を説明する図である。基音AEG鍵テーブルは、キーナンバ(Key No.)に対して、エンベロープを定めるパラメータ(ADSR)が定められ、この例においては、アタックタイム(attack time)、ディケイタイム(decay time)、ディケイレベル(decay level)、サスティンタイム(sustain time)、リリースタイム(release time)が規定されている。
【0050】
アタックタイムについては、正弦波信号の振幅を最大振幅(アタックレベル)に到達させるまでのキーオンからの時間のパラメータ(at1、at2、・・・)として定められている。ディケイタイムについては、正弦波信号の振幅をアタックレベルからディケイレベルまで到達させるまでの時間のパラメータ(dt1、dt2、・・・)として定められている。このディケイレベルについては、パラメータ(dl1、dl2、・・・)として定められている。サスティンタイムについては、キーオンの状態が維持された場合(キーオフが無い場合)に、正弦波信号の振幅をディケイレベルから0に減衰させるまでの時間のパラメータ(st1、st2、・・・)として定められている。リリースタイムについては、キーオフの後、正弦波信号の振幅を0に減衰させるまでの時間のパラメータ(rt1,rt2、・・・)として定められている。
なお、基音AEG鍵テーブルにより規定されるエンベロープは、これらのパラメータの組み合わせで定められる場合に限らず、様々な態様で定めることができる。
【0051】
図6に戻って説明を続ける。発音制御部131は、特定部110によって特定された設定情報における各テーブルを参照し、検出部120によって出力された楽音制御情報に基づいて、正弦波発生部132およびエンベロープ調整部133の動作を制御する。例えば、発音制御部131は、キーナンバ、ベロシティ、およびキーオンの楽音制御情報が入力されると、設定情報を参照し、キーナンバに対応する各種パラメータを用いて、正弦波発生部132に正弦波信号を発生させ、駆動波形信号を出力させる。キーオフの楽音制御情報が入力されると、リリースタイム経過後に正弦波発生部132における正弦波信号の発生を停止させる。
【0052】
なお、図6に示す正弦波発生部132およびエンベロープ調整部133の組については、1つの組のみ図示しているが、実際には複数組存在している。これにより、検出部120から出力された楽音制御情報により、複数のキーナンバについて同時にキーオンの状態になっている場合には、各キーナンバに対応して1つの組が割り当てられる。そして、各組から出力される正弦波信号については、合成部134において合成される。
【0053】
図5に戻って説明を続ける。設定部200は、音響効果付与装置100によって付与される音響効果を決定するための正弦波信号の特徴を設定するときに用いられる。設定部200は、タッチパネル60により、記憶部12に記憶される設定情報が規定する正弦波信号の特徴を設定させるユーザの操作を受け付ける。また、設定部200は、受け付けられた操作により設定された正弦波信号の特徴を規定する設定情報を、制御部11によって記憶部12に記憶させる。このとき、設定部200は、予め記憶部12に記憶されている設定情報の内容を基準として、ユーザに正弦波信号の特徴を設定させてもよいし、新たに設定情報の内容を規定するようにして、ユーザに正弦波信号の特徴を設定させてもよい。
以上が、音響効果付与装置100の機能構成についての説明である。
【0054】
[動作例]
続いて、本発明の実施形態におけるグランドピアノ1の動作例について説明する。まず、ユーザは、タッチパネル60を操作して、演奏モードを通常演奏モードとし、発音モードを音響効果付与モードとして設定する。また、ユーザは、タッチパネル60を操作して、記憶部12に記憶された複数の設定情報のうち、ユーザが所望する内容が規定された設定情報を選択する。
【0055】
以下の説明においては、選択された設定情報は、駆動波形信号が実際の弦5に近い振動を示すように規定されているものとする。例えば、基本特性鍵テーブルにおける基音ピッチについては、弦5の基本周波数と一致するように定められている。また、不調和度についても、弦5の2倍音、3倍音、4倍音の周波数の正弦波信号が駆動波形信号に含まれるように定められている。また、駆動波形信号(または各正弦波信号)の振幅のエンベロープも、弦5の振動の減衰態様に概ね一致するように、各パラメータが定められている。また、この例においては、選択された設定情報は、基本特性鍵テーブルにおける主音量については、全てのキーナンバについて、「0」(基準音量)とした相対的に設定されている。
まず、ユーザは、音響効果付与装置100によって付与される音響効果を設定する指示を入力する。ここでは、基本特性鍵テーブルにおける主音量(volume)を設定する指示が行われた場合について説明する。ユーザにより主音量を設定する指示が行われると、設定部200は、制御部11によりタッチパネル60に図11に示す設定画面を表示させる。
【0056】
図11は、本発明の実施形態におけるタッチパネル60に表示される設定画面の例を説明する図である。設定画面は、図11に示すように、横軸方向にキーナンバが鍵を示す画像により示されている。また、この例においては、主音量を設定するものであるから、縦軸は主音量(volume)として示されている。設定内容を示す線VCは、基本特性鍵テーブルにおける主音量を示す値であり、「0」の場合を音量の調整を基準値とし、+側にいくほど基準値より音量(正弦波信号の振幅)を増加させ、−側にいくほど減少させるものである。この増減は、ゲインの量を示すものであってもよいし、オフセットの量を示すものであってもよい。
【0057】
ユーザは、タッチパネル60上の一点に接触することにより、接触した点の横軸方向の位置に対応するキーナンバについて、その点の縦軸方向の位置に対応する主音量として設定する。例えば、図11(a)に示すように、接触点TCをユーザが触ることで、接触点TCの位置のキーナンバ「G2」に対して、その位置の主音量「−8」が設定される。この例においては、ユーザは、図11(b)に示すように、キーナンバと主音量との関係を設定したものとする。
設定部200は、このようにして設定されたキーナンバと主音量との関係になるように、ユーザによって選択された設定情報に規定されたパラメータを更新して記憶部12に記憶させる。なお、設定部200は、このようにパラメータが更新された設定情報を新たな設定情報として記憶部12に記憶させてもよい。
【0058】
ここで、上記の設定を行うに当たり、ユーザは、鍵2を操作してその結果の発音内容を聴くことができるようにしてもよい。この場合には、以下に説明するように、弦5におけるハンマ4の打撃により励起された振動と、駆動波形信号により励起された振動とによる発音内容を聴くようにしてもよいし、消音モードにしてハンマ4がストッパ40により弦5への打撃を阻止された状態で、駆動波形信号により励起された振動による発音内容を聴くようにしてもよい。そして、ユーザは、各鍵2について、所望する音量での発音となるように、上記設定を行うようにすればよい。
【0059】
この例において、図11(b)に示すキーナンバと主音量との関係は、信号伝達部140における駆動波形信号の弦5への伝達特性に基づいて決められたものとする。この伝達特性とは、響板7の形状、振動部50の取り付け位置などの影響により、信号出力部130から弦5までにおいて特定の周波数特性をいう。この例においては、この周波数特性においてピークとなる部分(共鳴する部分)を打ち消すように、キーナンバと主音量との関係が定められている。すなわち、ユーザは、各鍵2への操作により発音が大きく聴こえる鍵2のキーナンバに対応する主音量について、減少させるように設定したものとする。この関係は、図11(b)におけるキーナンバ「G2」近傍におけるディップ形状に現れている。
【0060】
信号出力部130においては、このようにして設定部200によってパラメータが更新された場合には、特定部110によって特定された設定情報そのものではなく、パラメータが更新された設定情報を用いて、駆動波形信号を出力する。
【0061】
ユーザが鍵2を操作すると、操作した鍵2に対応する弦5がハンマ4によって打撃され振動する。一方、検出部120によって、ハンマ4の打撃タイミングが特定されることにより、駆動波形信号が信号出力部130から出力される。この駆動波形信号が示す波形で振動部50が振動することにより響板7も振動し、駒6を介して弦5にも伝達される。
この駆動波形信号は、ハンマ4によって打撃された弦5についての基本周波数、およびインハーモニシティを考慮した2倍音の周波数、3倍音の周波数、および4倍音の周波数の正弦波信号を合成した信号である。
【0062】
したがって、この駆動波形信号は、ハンマ4によって打撃された弦5に対して、他の弦5よりも効果的に伝達される。これにより、弦5の振動は、ハンマ4の打撃により励起されるだけでなく、駆動波形信号によっても励起されることになり、駆動波形信号に応じた音響効果が付与された状態となる。また、ハンマ4の打撃により振動が励起された弦5に対して伝達される駆動波形信号は、その弦5の基本周波数、および倍音周波数の正弦波信号といった単純な信号で構成されるため、ピアノのサンプリング音などに見られる余分な周波数成分が含まれない。そのため、駆動波形信号を弦5に伝達したとしても、アコースティックピアノの自然な感じを残すことができる。
【0063】
また、上記のように設定されたキーナンバと主音量との関係を規定する設定情報が用いられて駆動波形信号が発生しているため、信号伝達部140における周波数特性のピークの影響を抑えた状態で、駆動波形信号が弦5に伝達される。そのため、同じベロシティになるように様々な鍵2を操作したときに、信号伝達部140における周波数特性のピークに近い駆動波形信号を出力する鍵2が操作された場合の発音とその他の鍵2が操作された場合の発音との音量の違いを抑えることもできる。
さらに、ユーザの指示に応じて、駆動波形信号に含まれる正弦波信号の特徴を様々に設定して記憶させることができるから、様々な音響効果を付与するテンプレートを作っておくことができる。また、響板7の振動特性、弦5の基本周波数などが異なるグランドピアノ1において音響効果付与装置100が用いられたとしても、これらの諸特性に応じて設定情報の内容を変更することができる。
【0064】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
[変形例1]
上述した実施形態においては、設定部200は、ユーザがタッチパネル60を操作して、設定情報におけるキーナンバと主音量との関係を設定していたが、別の態様により設定されるようにしてもよい。一つの態様としては、ユーザによって入力された指示(自動設定指示)により、設定部200が測定信号を発生させ、信号伝達部140を介して弦5に測定信号を伝達させ、測定信号による弦5の振動態様に基づいて、キーナンバと主音量との関係を設定する。この場合の構成について、図12図13を用いて説明する。
【0065】
図12は、本発明の変形例1におけるグランドピアノ1Aの内部構造を説明する図である。グランドピアノ1Aは、実施形態における構成に追加して、弦5の振動からの発音を収音するマイクロフォン80およびペダル駆動部31が設けられている。マイクロフォン80は、インターフェイス16を介して音源装置10と接続され、音源装置10に対して収音した内容を示す収音信号を出力する。なお、弦5の振動を検出することができる構成であれば、マイクロフォン80のように収音によるものでなくてもよく、例えば、ピエゾピックアップ、マグネティックピックアップなど、様々な振動検出手段が適用可能である。以下に説明する変形例2、3においても同様である。
ペダル駆動部31は、インターフェイス16を介して音源装置10と接続され、音源装置10からの制御信号に応じてペダル3を押下させる駆動をする。これにより音源装置10は、ダンパ8と弦5との接触状態を制御する。なお、ダンパ8と弦5との接触状態を制御できればよいから、ペダル3を介さずにダンパ8を直接駆動する構成であってもよい。以下に説明する変形例3においても同様である。
なお、本変形例におけるマイクロフォン80およびペダル駆動部31を含む構成について、実施形態における図4に対応するブロック図については記載を省略する。
【0066】
図13は、本発明の変形例1における音響効果付与装置100Aの機能構成を示すブロック図である。音響効果付与装置100Aは、実施形態における構成とは異なる設定部200Aを有している。設定部200Aは、マイクロフォン80(振動検出手段)によって弦5の振動を検出する。また、設定部200Aは、ペダル駆動部31によってダンパ8の弦5との接触状態を制御する。
設定部200Aは、ユーザによって入力された指示(自動設定指示)により、信号発生部15により測定信号を発生させて振動部50に出力し、振動部50を測定信号により振動させる。測定信号は、この例においては、ホワイトノイズである。このとき、設定部200Aは、ダンパ8と弦5とが非接触状態になるように、ペダル3を駆動させる。設定部200Aは、弦5の振動による発音をマイクロフォン80により収音し、収音信号の周波数分布に基づいて信号伝達部140における周波数特性を、制御部11によって算出する。そして、設定部200Aは、この周波数特性の逆特性に対応するように、設定情報におけるキーナンバと主音量との関係を、制御部11によって設定する。このとき、周波数特性における周波数値は、キーナンバに対応する弦5の基本周波数に対応するようにして設定する。このように設定することにより、実施形態の動作例において示した態様(図11(b))に相当する設定情報とすることができる。
【0067】
なお、算出した周波数特性の逆特性とすることにより、信号伝達部140における周波数特性のピークなどの影響を抑えることができるが、必ずしも逆特性でなくてもよく、予め決められた周波数特性の駆動波形信号が弦5に伝達されるように、設定情報におけるキーナンバと主音量との関係が設定されるようにすればよい。すなわち、キーナンバと主音量との関係は、必ずしも信号伝達部140における周波数特性のピークなどを打ち消すようにして、弦5に駆動波形信号が伝達されるように設定される場合に限らず、付与したい音響効果に合わせて周波数特性を補正するように設定されてもよい。このことは、実施形態のように、ユーザが設定する場合においても同様である。また、以下に説明する変形例2、3においても同様である。
【0068】
また、測定信号はホワイトノイズでなくてもよく、一定範囲の周波数帯域に分布した音を示す信号であればよい。また、設定部200Aは、各々周波数帯域が異なる測定信号を、それぞれ異なる期間に出力して、各測定信号の出力に対応して、測定信号の周波数帯域に含まれる周波数値のキーナンバと主音量との関係を設定するようにしてもよい。
【0069】
[変形例2]
上述した図12に示す構成を有するグランドピアノ1Aにおいて、変形例1における音響効果付与装置100Aとは異なる態様でキーナンバと主音量との関係を設定する音響効果付与装置100Bについて説明する。
【0070】
図14は、本発明の変形例2における音響効果付与装置100Bの機能構成を示すブロック図である。音響効果付与装置100Bにおける設定部200Bは、ユーザによって入力された指示(自動設定指示)により、鍵駆動部30により鍵2を順に駆動して信号出力部130から出力される駆動波形信号を測定信号として弦5に伝達させる。このとき、設定部200Bは、ハンマ4による弦5の打撃を阻止するようにストッパ40を駆動(消音モード)する。これにより、弦5は、ハンマ4に打弦されることなく、信号伝達部140により伝達された駆動波形信号(測定信号)によって振動する。なお、鍵2が駆動されているためダンパ8も併せて駆動されるから、変形例1に示すペダル駆動部31は、本変形例においては無くてもよい。
また、設定部200Bは、信号出力部130において用いられる測定信号用の設定情報を特定部110に特定させる。この測定信号用の設定情報とは、信号出力部130において出力される駆動波形信号(測定信号)が、駆動された鍵2に対応する弦5の基本周波数の正弦波信号であり、どの鍵2が駆動されても、その正弦波信号の振幅の最大値が一定値になるように規定された設定情報である。すなわち、この例においては、駆動波形信号(測定信号)には、2倍音OSC、3倍音OSC、4倍音OSCからの正弦波信号は含まれない。
【0071】
設定部200Bは、各鍵2の駆動に応じて弦5に伝達された駆動波形信号(正弦波信号)により振動した弦5の発音をマイクロフォン80により収音し、収音信号の最大振幅に基づいて、駆動した鍵2のキーナンバに対応する主音量を制御部11によって設定する。例えば、設定部200Bは、信号伝達部140における周波数特性のピークなどを打ち消すようにして、弦5に駆動波形信号を伝達する場合には、収音した信号の最大振幅が、予め決められた値(駆動された鍵2のベロシティに対応して決められた値であってもよい)であれば、主音量を「0」(基準音量)として設定し、最大振幅が大きいほど、主音量を小さく設定すればよい。
【0072】
[変形例3]
上述した図12に示す構成を有するグランドピアノ1Aにおいて、変形例1における音響効果付与装置100A、変形例2における音響効果付与装置100Bとは異なる態様でキーナンバと主音量との関係を設定する音響効果付与装置100Cについて説明する。
【0073】
図15は、本発明の変形例3における音響効果付与装置100Cの機能構成を示すブロック図である。音響効果付与装置100Cにおける設定部200Cは、変形例2のように各鍵2を順に駆動させて、信号出力部130に楽音制御情報を入力するのではなく、ユーザによって入力された指示により、各鍵2が順に駆動された場合に検出部120から出力される楽音制御情報を生成して、信号出力部130に出力する。すなわち、鍵2が駆動された場合と同様な状況で、信号出力部130に駆動波形信号を出力させる。このとき、設定部200Cは、ダンパ8と弦5とが非接触状態になるように、ペダル3を駆動させる。
変形例3については、変形例2における場合と、楽音制御情報が、鍵2を駆動した結果として検出部120から出力されるか、設定部200Cから出力されるかの違いであるため、設定部200Cについての他の機能について説明を省略する。
【0074】
[変形例4]
上述した実施形態、変形例においては、信号伝達部140における周波数特性の影響を補正するために、設定情報の基本特性鍵テーブルにおける主音量の値を設定していたが、駆動波形信号の振幅を調整するパラメータ(振幅調整値)であれば、他のパラメータにより設定してもよい。例えば、基音OSC鍵テーブル、2倍音OSC鍵テーブル、3倍音OSC鍵テーブル、および4倍音OSC鍵テーブルにおける従音量(level)であってもよい。このようにすれば、基音OSC、2倍音OSC、3倍音OSC、4倍音OSCのそれぞれから出力される正弦波信号のそれぞれに対して音量調整をすることもできる。
【0075】
この場合、基音OSC鍵テーブル、2倍音OSC鍵テーブル、3倍音OSC鍵テーブル、および4倍音OSC鍵テーブルのいずれかにおける従音量のみを設定するようにしてもよい。例えば、変形例1、2、3における構成において、基本特性鍵テーブルにおけるキーナンバと主音量との関係を設定するのではなく、基音OSC鍵テーブルにおけるキーナンバと従音量との関係を設定し、2倍音OSC鍵テーブル、3倍音OSC鍵テーブル、および4倍音OSC鍵テーブルのキーナンバと従音量との関係は予め決められた関係(例えば、全ての従音量を「0」(基準音量)とするなど)にするようにしてもよい。
【0076】
また、基音OSC鍵テーブルにおけるキーナンバと従音量との関係を設定した場合に、2倍音OSC鍵テーブル、3倍音OSC鍵テーブル、および4倍音OSC鍵テーブルにおけるキーナンバと従音量との関係も、正弦波信号の周波数との関係で連動して設定されるようにしてもよい。例えば、基音OSC鍵テーブルにおいて、キーナンバ「A3」に対応する従音量を設定した場合には、2倍音OSC鍵テーブルにおいては、キーナンバ「A3」の基音の周波数に近いキーナンバ「A2」に対応する従音量を連動して設定するようにすればよい。同様にして、3倍音OSC鍵テーブルにおいてはキーナンバ「A1」に対応する従音量、4倍音OSC鍵テーブルにおいてはキーナンバ「A0」に対応する従音量について、連動して設定されるようにすればよい。この場合には、2倍音OSC鍵テーブル、3倍音OSC鍵テーブル、および4倍音OSC鍵テーブルにおける従音量が基音OSC鍵テーブルに設定された従音量と同じ値に設定される場合に限らず、予め決められた連動関係(例えば比率など)に応じて、従音量が設定されるようにすればよい。
【0077】
[変形例5]
上述した実施形態において、設定部200は、音響効果の設定内容については、タッチパネル60において設定画面として表示していたが、鍵2を用いて設定内容が表されるようにしてもよい。例えば、キーナンバに対応した主音量に応じて鍵2を駆動して、鍵2の位置(レスト位置からエンド位置までのいずれかの位置)を変化させればよい。
【0078】
図16は、本発明の変形例5における音響効果の設定時の鍵2の位置を説明する図である。図16は、鍵2をグランドピアノ1の正面方向から見た図であり、図11(b)に示すキーナンバと主音量との関係を、鍵2の位置で表したものである。なお、図11において、黒鍵のレスト位置は「br」、エンド位置は「be」として示し、白鍵のレスト位置は「wr」、エンド位置は[we」として示している。
【0079】
設定部200は、ユーザの操作をタッチパネル60により受け付けて、設定されたキーナンバと主音量との関係にしたがって、鍵駆動部30を駆動して、鍵2の位置を変化させる。駆動態様としては、例えば、各キーナンバに対応して設定されたパラメータのうち、最大値をレスト位置、最小値をエンド位置となるようにすればよい。このときには、鍵2の駆動に伴う発音がされないように、設定部200は、ストッパ40を駆動してハンマ4による打弦を阻止し、また、信号出力部130から駆動波形信号が出力されないようにしてもよい。
なお、鍵2に限らず、別の可動部分を設定内容を表す部分として用いてもよい。例えば、ペダル3を駆動するペダル駆動部(不図示)を設け、設定部200は、ペダルに関する設定内容に応じてペダル3の位置を変化させることにより、設定内容を表すようにしてもよい。
【0080】
[変形例6]
上述した実施形態においては、ユーザがタッチパネル60を操作して、付与する音響効果の設定を行っていたが、鍵2を操作して設定するようにしてもよい。この場合には、設定部200は、鍵センサ22からの検出信号に基づいて鍵2の深さ(レスト位置からの移動量)を特定し、操作された鍵2に対応するキーナンバに対応したパラメータを、深さに応じた値に設定すればよい。どのタイミングにおける鍵2の深さを特定するかについては、例えば、ユーザによる操作パネル13の操作のタイミング、ペダル3を踏み込んだタイミング、鍵2の操作後一定時間経過したタイミングなど、予め決められたタイミングとすればよい。
【0081】
また、ユーザは、鍵2を操作することによりキーナンバを指定し、ペダル3の踏込量に応じてそのキーナンバに対応するパラメータの値を設定するようにしてもよい。この場合には、設定部200は、鍵センサ22からの検出信号に基づいて操作された鍵2を特定し、ペダルセンサ23からの検出信号に基づいてペダル3の踏込量を特定する。そして、設定部200は、操作された鍵2に対応するキーナンバに対応したパラメータを、ペダル3の踏込量に応じた値に設定すればよい。どのタイミングにおけるペダル3の踏込量を特定するかについては、例えば、ユーザによる操作パネル13の操作のタイミング、操作した鍵2の位置をレスト位置に戻したタイミング、ペダル3の操作後一定時間経過したタイミングなど、予め決められたタイミングとすればよい。
【0082】
[変形例7]
上述した実施形態においては、音響効果付与装置100をグランドピアノに用いた例を説明したが、アップライトピアノに用いてもよい。
【0083】
図17は、本発明の変形例5におけるアップライトピアノ1Dの内部構造を示す図である。図17において、アップライトピアノ1Dの各構成には、実施形態におけるグランドピアノ1の各構成と対応する符号に「D」を加えた符号を付している。アップライトピアノ1Aの場合においても、振動部50Dは、支柱9Dに接続された支持部55Dに支持され、響板7Dに接続されている。また、実施形態と同様に、振動部50Dは、響板7Dのうち、響棒75Dの間に接続されている。そのため、この例においても、実施形態と同様に、打弦に応じて生成される駆動波形信号は、振動部50Dの振動により響板7D、駒6Dを介して、弦5Dに伝達される。
このように、音響効果付与装置100については、グランドピアノ、アップライトピアノなどのアコースティックピアノにおいて用いることができる。
【0084】
[変形例8]
上述した実施形態においては、駆動波形信号を弦5に伝達する信号伝達部140は、振動部50、響板7および駒6により構成していたが、別の態様で構成してもよい。例えば、振動部50を駒6に取り付け、駒6を振動させて弦5に駆動波形信号を伝達してもよい。この場合には、信号伝達部140は、振動部50と駒6により構成されることになる。
また、駆動波形信号が直接弦5に伝達されるようにしてもよい。この場合には、以下の構成にすればよい。
【0085】
図18は、本発明の変形例6におけるグランドピアノ1Eの内部構造を説明する図である。この例における信号伝達部140は、駆動マグネット50Eにより構成される。駆動マグネット50Eは、電磁石であり、信号出力部130から入力される駆動波形信号が示す波形に応じた強度の磁力を発生させる。この磁力の発生により弦5には、駆動波形信号が示す波形での振動が励起され、駆動波形信号が伝達される。この駆動マグネット50Eは、各鍵2に対応する全ての弦5について磁力を及ぼすように設けられていればよい。なお、各弦5に対応して駆動マグネット50Eを設けることにより、弦5毎に振動を励起する構成としてもよい。この場合には、信号出力部130は、キーナンバに対応した弦5に振動を励起する駆動マグネット50Eに駆動波形信号を出力すればよい。
【0086】
[変形例9]
上述した実施形態においては、記憶部12には設定情報が複数種類記憶されていたが、1種類の設定情報のみが記憶されていてもよい。この場合には、記憶部12に記憶された設定情報を信号出力部130において用いればよいから、特定部110は不要である。
【0087】
[変形例10]
上述した実施形態において、記憶部12に記憶されている複数種類の設定情報は、音律が対応付けられていてもよい。例えば、平均律用の設定情報、純正律用の設定情報として記憶されていればよい。純正律用の設定情報については、基本音毎に存在するようにすればよい。このようにすれば、ユーザは、ピアノを調律した場合には、調律後の音律に対応する設定情報を選択するようにすればよい。
【0088】
[変形例11]
上述した実施形態においては、正弦波発生部132は、基音OSC、2倍音OSC、3倍音OSCおよび4倍音OSCを有していたが、より多くのOSCを有していていてもよいし、より少ないOSCを有していてもよい。すなわち、正弦波発生部132は、n倍音OSC(nは1以上の整数)を有する構成であればよい。また、基音OSCのみであってもよい。基音OSCのみの場合には、駆動波形信号は弦5の基本周波数の正弦波信号となるが、駆動波形信号が伝達された弦5は、基本周波数の振動成分のみが増加するのではなく、駆動波形信号のエネルギにより倍音成分についても増加する。
【0089】
[変形例12]
上述した実施形態においては、動作例の説明において選択された設定情報は、弦5の基本周波数の正弦波信号、およびインハーモニシティを考慮した2倍音、3倍音、4倍音の周波数の正弦波信号を発生させるものであった。設定情報は、このような態様で正弦波信号を発生させるものに限られない。これによっては、実施形態における動作例で説明した音響効果とは異なる効果が付与されることになるが、ユーザは所望の音響効果に応じて適宜設定情報を選択すればよい。以下、設定情報により発生させる正弦波信号について例示する。
【0090】
第1の例として、基本周波数の正弦波信号は実施形態と同様であるものとし、2倍音、3倍音、4倍音の周波数の正弦波信号については、インハーモニシティを考慮せず、基本周波数の2倍、3倍、4倍の周波数としてもよい。この場合、弦5の基本周波数については一致した正弦波信号が出力され、倍音については、インハーモニシティの影響分だけ弦5と異なる周波数の正弦波信号が出力されることになる。
第2の例として、各正弦波信号の周波数を全体的に数セントシフトさせたものであってもよい。
第3の例として、基音OSCからの正弦波信号の出力をせず、2倍音OSC、3倍音OSCおよび4倍音OSCからの正弦波信号の出力のみとしてもよい。この場合には、ハンマ4に打撃された弦5に伝達される駆動波形信号は、基本周波数の正弦波信号は含まれない。なお、2倍音OSC、3倍音OSCおよび4倍音OSCから出力される正弦波信号の周波数については、第1の例のように、インハーモニシティを考慮しない周波数であってもよい。
【0091】
上述した各例において示すように、弦5の基本周波数に対応して各OSCから出力される正弦波信号の周波数が決まるように設定情報が決められていれば、様々な例が適用可能である。これらの様々な設定情報を用いることで、様々な音響効果を付与することができる。
【0092】
なお、各設定情報が規定する正弦波信号の特徴のうち、他の設定情報と異なるパラメータについては、上述したように、正弦波信号の周波数、主音量、従音量に限らず、他のパラメータであってもよい。また、実施形態における例では、設定部200は、キーナンバと主音量との関係を設定していたが、様々なパラメータの設定が可能である。このとき、キーナンバとパラメータとの関係を設定する場合には、図11に示す設定画面において、縦軸方向を、設定対象となるパラメータとして、タッチパネル60に表示されるようにすればよい。このように、様々なパラメータの設定を行うことにより、様々な音響効果を付与することもできる。
【0093】
[変形例13]
上述した実施形態においては、複数設けられた振動部50は、それぞれ同じ駆動波形信号により振動するように構成されていたが、異なる駆動波形信号により振動するように構成されてもよい。例えば、複数の振動部50は、振動特性の周波数依存性が互いに異なるアクチュエータを有する構成にする。そして、信号出力部130は、正弦波発生部132から出力される正弦波信号を、その正弦波信号の周波数において効率的に振動するアクチュエータを有する振動部50に出力するようにすればよい。
【0094】
また、振動部50は、弦5の並ぶ方向に沿って配置されてもよい。この場合には、信号出力部130は、ハンマ4に打撃された弦5に最も近い振動部50に、その弦5に対応して出力された駆動波形信号を出力するようにすればよい。
【0095】
[変形例14]
上述した実施形態においては、エンベロープ調整部133は、基音OSC、2倍音OSC、3倍音OSCおよび4倍音OSCに対応した基音AEG、2倍音AEG、3倍音AEGおよび4倍音AEGを有し、各周波数の正弦波信号に対応してエンベロープの調整が可能であったが、各AEGが同じエンベロープの調整を行うようにしてもよい。この場合には、エンベロープ調整部133を用いず、合成部134から出力される駆動波形信号のエンベロープを調整する構成を設けてもよい。
【0096】
[変形例15]
上述した実施形態においては、設定情報は、テーブルの形式で正弦波信号の周波数などの各パラメータを規定していたが、キーナンバを変数とした演算式など他の形式でパラメータを規定するものであってもよい。設定部200によってキーナンバとパラメータとの関係が設定された場合においては、例えば、図11に示す線VCをn次関数として近似し、その近似された関数を演算式として規定する設定情報が記憶部12に記憶されるようにすればよい。
【0097】
[変形例16]
上述した実施形態においては、検出部120は、鍵2またはハンマ4の挙動を検出して、ハンマ4による弦5の打撃タイミングを特定していたが、別の態様により検出してもよい。例えば、検出部120は、ハンマ4の打撃による弦5の振動を、各弦5に対応して設けたピエゾピックアップ、マグネティックピックアップなどにより検出し、振動が検出された弦5に対応する鍵2の番号を特定し、検出されたタイミングを弦5の打撃タイミングとして特定すればよい。また、検出部120は、マイクロフォンなどにより弦5の振動による音を検出し、その音の周波数分布を解析することにより振動した弦5を特定し、鍵2の番号および打撃タイミングを特定してもよい。
【0098】
[変形例17]
上述した実施形態における各プログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、グランドピアノ1は、各プログラムをネットワーク経由でダウンロードしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1E…グランドピアノ、1D…アップライトピアノ、2,2D…鍵、3,3D…ペダル、4,4D…ハンマ、5,5D…弦、6,6D…駒、7,7D…響板、8,8D…ダンパ、9…直支柱、9D…支柱、10…音源装置、11…制御部、12…記憶部、13…操作パネル、14…通信部、15…信号発生部、16…インターフェイス、22,22D…鍵センサ、23,23D…ペダルセンサ、24,24D…ハンマセンサ、30,30D…鍵駆動部、40,40D…ストッパ、50,50D…振動部、50E…駆動マグネット、55,55D…支持部、60…タッチパネル、75,75D…響棒、100,100A,100B,100C…音響効果付与装置、110…特定部、120…検出部、130…信号出力部、131…発音制御部、132…正弦波発生部、133…エンベロープ調整部、134…合成部、140…信号伝達部、200,200A,200B,200C…設定部
図1
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