(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の視差生成部は、画面全体の視差値を決定するための複数の基本奥行きモデルを有し、前記立体映像信号による画像の構図に応じて前記複数の基本奥行きモデルから1つを選択して前記第1の視差値データを生成するか、前記複数の基本奥行きモデルから複数を選択して合成することによって前記第1の視差値データを生成することを特徴とする請求項1記載の立体画像生成装置。
前記ヒストグラム幅検出部は、前記立体映像信号による画像に含まれる複数の被写体の内、ヒストグラムの最大値を有する被写体のヒストグラムの幅を求めることを特徴とする請求項3記載の立体画像生成装置。
前記第1の視差生成ステップは、前記立体映像信号による画像の構図に応じて、画面全体の視差値を決定するための複数の基本奥行きモデルから1つを選択して前記第1の視差値データを生成するか、前記複数の基本奥行きモデルから複数を選択して合成することによって前記第1の視差値データを生成することを特徴とする請求項5記載の立体画像生成方法。
前記ヒストグラム幅検出ステップは、前記立体映像信号による画像に含まれる複数の被写体の内、ヒストグラムの最大値を有する被写体のヒストグラムの幅を求めることを特徴とする請求項7記載の立体画像生成方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の立体画像生成装置及び立体画像生成方法の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1において、立体画像生成装置1には、3D信号記録装置2とステレオ表示装置3とが接続されている。立体画像生成装置1は、入力信号取得部11,3D信号デコード部12,3D信号視差検出部13,立体度判定部14,書き割り度判定部15,画像信号変換部16を備える。立体の程度を立体度、書き割り現象の程度を書き割り度と称することとする。
【0022】
立体画像生成装置1の各部の動作について
図2のフローチャートを参照しながら説明する。入力信号取得部11は、3D映像信号送信源である3D信号記録装置2から出力された3D映像信号及び3Dフォーマット識別信号を取得する(ステップS1)。入力信号取得部11は、例えば入力端子及び入力インタフェースを含む部分である。3Dフォーマット識別信号とは、3Dコンテンツのフォーマットが、サイド・バイ・サイド方式,トップ・アンド・ボトム方式,ライン・バイ・ライン方式,フィールドシーケンシャル方式等のいずれであるかを示す信号である。入力信号取得部11が取得した3D映像信号及び3Dフォーマット識別信号は、3D信号デコード部12へと供給される。
【0023】
3D信号デコード部12は、3D映像信号を、3Dフォーマット識別信号に基づいて左目画像信号と右目画像信号とに分離する(ステップS2)。左目画像信号と右目画像信号は、3D信号視差検出部13及び画像信号変換部16へと供給される。左目画像信号と右目画像信号とはステレオ画像ペアを構成する。
【0024】
3D信号視差検出部13は、例えば視差算出手法の代表例であるステレオマッチング手法を用いて、ステレオ画像ペアの左目画像信号(または右目画像信号)を基準として左目画像信号と右目画像信号との間の3D信号視差値DPTを1画素単位で検出する(ステップS3)。ステレオマッチング手法とは、一方の撮像画像(基準画像)中にある画素ブロック、即ち、基準画像の一部を構成する小領域毎の画素群に関して、その相関先を他方の撮像画像(比較画像)において特定することで、撮像画像(基準画像)中の画素ブロック毎に視差値を求める手法である(特許文献1参照)。3D信号視差値DPTの値が正の場合は飛び出し方向、負の場合は奥行き方向(引っ込み方向)とする。
【0025】
3D信号視差値DPTは、立体度判定部14及び書き割り度判定部15へと供給される。立体度判定部14は、入力された3D信号視差値DPTに基づいて、3D映像信号の立体度Fを判定する(ステップS4)。
図3を用いて、立体度判定部14の具体的構成及び動作について説明する。
図3に示すように、立体度判定部14は、最大視差値検出部141,最小視差値検出部142,差分算出部143,閾値比較部144を備える。
【0026】
最大視差値検出部141は、3D信号視差値DPTの1フレーム期間内における最大値を最大3D信号視差値DPT_MAXとして算出する。最小視差値検出部142は、3D信号視差値DPTの1フレーム期間内における最小値を最小3D信号視差値DPT_MINとして算出する。本実施形態では、3D信号視差値DPTの値が正の場合を飛び出し方向、負の場合を奥行き方向としているので、最大3D信号視差値DPT_MAXはステレオ画像内で最も手前に位置している被写体の視差値となり、最小3D信号視差値DPT_MINはステレオ画像内で最も奥に位置している被写体の視差値となる。
【0027】
差分算出部143は、最大3D信号視差値DPT_MAXと最小3D信号視差値DPT_MINとの差分である3D視差差分値DIFを式(1)に基づいて算出する。3D視差差分値DIFは常に正の値となる。
DIF=DPT_MAX-DPT_MIN …(1)
【0028】
閾値比較部144は、
図4に示すように、3D視差差分値DIFと閾値TH1,TH2とを比較し立体度Fを出力する。閾値TH1,TH2の値は適宜設定すればよい。3D視差差分値DIFが閾値TH1より小さければ立体度Fの値は0となり、閾値TH2より大きければ立体度Fの値は1となる。3D視差差分値DIFが閾値TH1と閾値TH2との間では、3D視差差分値DIFは0から1へと線形に増加する値となる。ステレオ画像内の被写体間の視差値の差が大きくなればなるほど被写体間の前後関係がはっきりしているということであり、立体度Fが大きくなる。立体度Fは
図1の画像信号変換部16へと供給される。
【0029】
図1,
図2に戻り、書き割り度判定部15は、3D信号視差値DPTに基づいて、3D映像信号の書き割り度を判定する(ステップS5)。
【0030】
図5を用いて、書き割り度判定部15の具体的構成及び動作について説明する。
図5に示すように、書き割り度判定部15は、最大視差値検出部151,最小視差値検出部152,差分算出部153,視差値正規化部154,ヒストグラム検出部155,ピークヒストグラム幅算出部156,閾値比較部157を備える。最大視差値検出部151,最小視差値検出部152,差分算出部153は、立体度判定部14内の最大視差値検出部141,最小視差値検出部142,差分算出部143と同様に動作する。最大視差値検出部141,最小視差値検出部142,差分算出部143と、最大視差値検出部151,最小視差値検出部152,差分算出部153とを共用化してもよい。
【0031】
視差値正規化部154には、3D信号視差値DPTと最小3D信号視差値DPT_MINと3D視差差分値DIFとが入力される。視差値正規化部154は、式(2)に基づいて3D信号視差値DPTをオフセットさせて、オフセット視差値DPT_OFSとする。3D信号視差値DPTをオフセット視差値DPT_OFSに変換することによって、3D信号視差値DPTの最小値が0となり、オフセット視差値DPT_OFSは正の値となる。
DPT_OFS=DPT-DPT_MIN …(2)
【0032】
さらに、視差値正規化部154は、式(3)に基づいてオフセット視差値DPT_OFSを正規化して、正規化視差値DPT_Nとする。視差値正規化部154での正規化処理は、後段のヒストグラム検出部155で視差値のヒストグラムを検出する際に、検出レンジを常にフルレンジとするために行う。オフセット視差値DPT_OFSを正規化して正規化視差値DPT_Nとすることにより、正規化視差値DPT_Nは0〜255の範囲で整数値をとる。ここでは8ビットに正規化したが、正規化するレンジは8ビットに限定されない。
DPT_N=DPT_OFS×255/DIF …(3)
【0033】
ヒストグラム検出部155は、正規化視差値DPT_Nのヒストグラムを検出する。ヒストグラム検出部155は、正規化視差値DPT_Nの各値に対応した256個のカウンタD_CNT[i](iは0〜255の整数)を備える。カウンタD_CNT[i]は正規化視差値DPT_Nの各値がいくつ存在するかをカウントする。ヒストグラム検出部155は、カウンタD_CNT[i]のカウント値に255を乗じ、3D映像信号の総画素数で割って正規化した値を視差値ヒストグラムD_HIST[i](iは0〜255の整数)として出力する。
【0034】
ピークヒストグラム幅算出部156は、視差値ヒストグラムD_HIST[i]に基づいて、ピークヒストグラム幅D_HIST_WIDを算出する。
【0035】
図6のフローチャートを用いて、ピークヒストグラム幅算出部156の具体的な動作について説明する。ピークヒストグラム幅算出部156は、ステップ101〜S106にて、視差値ヒストグラムD_HIST[i]の中から最大値を示すiの値をI_MAXとして求める。
図6において、iは0〜255の整数、tempはそれぞれの時点における一時的な最大値、temp_iは0〜255のいずれかを示す値である。
図6において、ステップS101にてi=0,temp=0,temp_i=0に設定し、ステップS102にてi<256であるか否かを判定する。
【0036】
ステップS102にてi<256であれば(YES)、ステップS103にてD_HIST[i]>tempであるか否かを判定する。D_HIST[i]>tempであれば(YES)、ステップS104にてtemp=D_HIST[i]、temp_i=iに設定し、ステップS105にてi=i+1としてステップS102に戻る。ステップS103にてD_HIST[i]>tempでなければ(NO)、ステップS105にてi=i+1としてステップS102に戻る。ステップS102にてi<256でなければ(NO)、ステップS106にてI_MAX=temp_iとする。これにて、最大値を示すiの値がI_MAXとして検出される。
【0037】
ピークヒストグラム幅算出部156は、ステップS107〜S113にてiの値をI_MAXから1ずつ増やしていき、D_HIST[i]が最初に所定の閾値TH_HISTより小さくなるiの値をI_Pとして求める。ステップS107にてi=I_MAXとし、ステップS108にてi=i+1とし、ステップS109にてi<256であるか否かを判定する。i<256でなければ(NO)、ステップS110にてtemp_i=255としてステップS113に移行させ、i<256であれば(YES)、ステップS111にてD_HIST[i]<TH_HISTであるか否かを判定する。
【0038】
D_HIST[i]<TH_HISTであれば(YES)、ステップS112にてtemp_i=iとしてステップS113に移行させ、D_HIST[i]<TH_HISTでなければ(NO)、ステップS108に戻す。ステップS113にてI_P=temp_iとする。これにて、iの値をI_MAXから1ずつ増やして、D_HIST[i]が最初に閾値TH_HISTより小さくなるI_Pのiの値が検出される。
【0039】
ピークヒストグラム幅算出部156は、ステップ114〜S120にてiの値をI_MAXから1ずつ減らしていき、D_HIST[i]が最初に所定の閾値TH_HISTより小さくなるiの値をI_Mとして求める。ステップ114にてi=I_MAXとし、ステップS115にてi=i-1とし、ステップS116にてi>0であるか否かを判定する。i>0でなければ(NO)、ステップS117にてtemp_i=0としてステップS120に移行させ、i>0であれば(YES)、ステップS118にてD_HIST[i]<TH_HISTであるか否かを判定する。
【0040】
D_HIST[i]<TH_HISTであれば(YES)、ステップS119にてtemp_i=iとしてステップS120に移行させ、D_HIST[i]<TH_HISTでなければ(NO)、ステップS115に戻す。ステップS120にて、I_M=temp_iとする。これにて、iの値をI_MAXから1ずつ減らして、D_HIST[i]が最初に閾値TH_HISTより小さくなるI_Mのiの値が検出される。最後に、ステップS121にて、I_PからI_Mを減算してピークヒストグラム幅D_HIST_WIDを算出する。
【0041】
入力された3D映像信号による画像が
図7に示すような画像であったとする。
図7の画像は、遠景を背景として人物を撮影したような構図を示している。
図7に示す構図は、被写体として、空SK,山MT,木TR,人物PNを含んでいる。この
図7に示す画像を3D映像信号とした場合、iの値と視差値ヒストグラムD_HIST[i]との関係は
図8のようになる。視差値ヒストグラムD_HIST[i]における空SK,山MT,木TR,人物PNそれぞれの部分を破線にて囲んで示している。視差値ヒストグラムD_HIST[i]の最大値は山MTに基づくヒストグラムの部分にあり、I_MAXは64である。I_Pは67、I_Mは61であり、ピークヒストグラム幅D_HIST_WIDは6となる。
【0042】
図5に戻り、閾値比較部157は、ピークヒストグラム幅算出部156より入力されたピークヒストグラム幅D_HIST_WIDと、所定の閾値TH3,TH4とを比較して書き割り度Kを算出する。
図9に示すように、ピークヒストグラム幅D_HIST_WIDが閾値TH3より小さければ書き割り度Kは1、ピークヒストグラム幅D_HIST_WIDが閾値TH4より大きければ書き割り度Kは0となる。ピークヒストグラム幅D_HIST_WIDが閾値TH3と閾値TH4との間では、書き割り度Kは1から0へと線形に減少する値となる。
【0043】
3D映像信号による画像の中で最も面積を占めている被写体内の視差値の差が小さくなるほど、書き割り現象として認識されやすくなり、書き割り度Kは高い値となる。
【0044】
図1,
図2に戻り、画像信号変換部16には、立体度Fと書き割り度Kとが入力される。画像信号変換部16は、3D信号デコード部12より出力されたステレオ画像ペアである左目画像信号と右目画像信号との内の少なくとも一方の信号の画素をシフトさせて視差を調整して出力する(ステップS6)。画像信号変換部16は、例えば特許文献1に記載されているような疑似立体画像生成装置を応用することによって実現できる。特許文献1に記載されている疑似立体画像生成装置はいわゆる2D3D変換と称されており、2D画像から疑似立体画像を生成する装置である。
【0045】
図10を用いて、画像信号変換部16の具体的構成及び動作について説明する。
図10に示すように、画像信号変換部16は、基本奥行きモデル視差生成部1601,左目擬似凹凸視差生成部1602,右用擬似凹凸視差生成部1603,左目視差調整部1604,右目視差調整部1605,左目シフト画像生成部1606,右目シフト画像生成部1607を備える。
【0046】
基本奥行きモデル視差生成部1601は、基本奥行きモデルを複数備えている。
図11〜
図13は基本奥行きモデルの例を示している。基本奥行きモデルとは画面全体の視差値を決定するためのモデルであり、平面上のそれぞれの画素を
図11〜
図13に示すような非平面形状の特性が有する飛び出し方向または奥行き方向にシフトさせる計算式にて構成することができる。基本奥行きモデル視差生成部1601は、入力された左目画像信号の特徴に基づいて複数の基本奥行きモデルから1つを選択したり、複数の基本奥行きモデルを混合させたりして、基本奥行きモデル視差値DPT_MDLを出力する。基本奥行きモデル視差値DPT_MDLは、正の値のときには飛び出し方向、負の値のときは奥行き方向の視差を意味する。
【0047】
ここでは、左目画像信号の特徴に基づいて基本奥行きモデル視差値DPT_MDLを生成したが、右目画像信号の特徴に基づいて基本奥行きモデル視差値DPT_MDLを生成してもよく、左目画像信号及び右目画像信号双方の特徴に基づいて基本奥行きモデル視差値DPT_MDLを生成してもよい。
【0048】
左目擬似凹凸視差生成部1602は、入力された左目画像信号の特徴から画像内の被写体の凹凸情報を画素単位で推測して、左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Lとして出力する。人間は、凹凸情報を推測する際に赤い物が手前に位置しているように認識しやすいという視覚特性を有する。左目擬似凹凸視差生成部1602は、この視覚特性を利用し、式(4)を用いて左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Lを算出する。式(4)中のR_LEFTとは左目画像信号のR信号を表す。
DPT_EMBS_L= R_LEFT-128 …(4)
【0049】
本実施形態では、R信号が8ビットで0〜255の値をとり、R信号であるR_LEFTが中央値の128のとき左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Lは0になる。ここでは、左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Lを算出する際にR信号を用いたが、R信号に限定されるものではなく、G信号もしくはB信号、または、RGB信号のいずれかの組み合わせ、さらには輝度信号を用いて左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Lを算出してもよい。
【0050】
左目視差調整部1604は、基本奥行きモデル視差生成部1601から出力された基本奥行きモデル視差値DPT_MDLと左目擬似凹凸視差生成部1602から出力された左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Lとをゲイン調整しながら合成して調整後左目擬似立体視差値DPT_L_Gnを生成する。左目視差調整部1604は、式(5)に基づいて基本奥行きモデル視差値DPT_MDLと左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Lとを合成する。
DPT_L_Gn=DPT_MDL×Gf+DPT_EMBS_L×Gk …(5)
【0051】
式(5)中のGfは基本奥行きモデル視差値DPT_MDLに対するゲインである。ゲインGfは
図14に示すような特性を有し、立体度Fに応じた値となる。ゲインGfは、立体度Fが0のときG1なる任意の設定値であり、立体度Fが1に近付くに従って線形的に減少し、立体度Fが1のとき0となる。式(5)中のGkは左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Lに対するゲインである。ゲインGkは
図15に示すような特性を有し、書き割り度Kに応じた値となる。ゲインGkは、書き割り度Kが0のとき0であり、書き割り度Kが1に近付くに従って線形的に増加し、書き割り度Kが1のときG2なる任意の設定値となる。
【0052】
ゲインGfが
図14に示すような特性を有し、ゲインGkが
図15に示すような特性を有するので、入力されたステレオ画像ペア(3D映像信号)による画像の被写体の前後感が乏しいときは基本奥行きモデル視差値DPT_MDLが強調され、ステレオ画像ペアによる画像内の被写体自体の凹凸感(立体感)が乏しいときは左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Lが強調される。
【0053】
左目シフト画像生成部1606は、左目視差調整部1604より出力された調整後左目擬似立体視差値DPT_L_Gnに基づいて、左目画像信号の画素をシフトして左目シフト画像を生成する。左目シフト画像は視差調整後左目画像信号として出力される。
【0054】
図16及び
図17を用いて、左目シフト画像生成部1606におけるシフト画像の生成方法について説明する。
図16は入力ステレオ画像ペアの一例を示している。
図16において、被写体OB1は飛び出し方向の視差を有し、被写体OB2は視差なし、被写体OB3は奥行き方向の視差を有している。
図17(A)は、調整後左目擬似立体視差値DPT_L_Gnが示す視差値の例を示している。ここでは簡略化のため被写体OB1〜OB3それぞれの被写体内では視差値が均一となっているとし、被写体OB1は視差20、被写体OB2は視差0、被写体OB3は視差−20であるとする。
【0055】
左目シフト画像生成部1606は、それぞれの視差値の半分の値を画素シフト量とし、値が正なら右方向に値が負なら左方向に被写体の画素をシフトさせる。
図17(B)は左目シフト画像を示している。被写体OB1は右方向に10画素シフトされて被写体OB1s1となっており、被写体OB3は左方向に10画素シフトされて被写体OB3s1となっている。被写体OB1,OB3をシフトすることによって、被写体OB1,OB3と被写体OB1s1,OB3s1との差の部分は正しい被写体の画素が存在しないオクリュージョン領域Roccとなる。左目シフト画像生成部1606は、オクリュージョン領域Rocc内の画素を、その画素に対して左右水平方向に存在する正しくシフトすることができた画素の中から、最も近傍の画素の情報を用いて補間する。
【0056】
右目擬似凹凸視差生成部1603は、左目擬似凹凸視差生成部1602と同様に、入力された右目画像信号の特徴から画像内の被写体の凹凸情報を画素単位で推測して、右目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Rとして出力する。右目擬似凹凸視差生成部1603は、式(6)を用いて右目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Rを算出する。式(6)中のR_RIGHTとは右目画像信号のR信号を表す。ここでも、R信号に限定されるものではなく、G信号もしくはB信号、または、RGB信号のいずれかの組み合わせ、さらには輝度信号を用いてもよい。
DPT_EMBS_R= R_RIGHT-128 …(6)
【0057】
右目視差調整部1605は、左目視差調整部1604と同様に、基本奥行きモデル視差生成部1601から出力された基本奥行きモデル視差値DPT_MDLと右目擬似凹凸視差生成部1603から出力された右目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Rとをゲイン調整しながら合成して調整後右目擬似立体視差値DPT_R_Gnを生成する。右目視差調整部1605は、式(7)に基づいて基本奥行きモデル視差値DPT_MDLと右目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Rとを合成する。
DPT_R_Gn=DPT_MDL×Gf+DPT_EMBS_R×Gk …(7)
【0058】
右目視差調整部1605でも同様に、入力されたステレオ画像ペア(3D映像信号)による画像の被写体の前後感が乏しいときは基本奥行きモデル視差値DPT_MDLが強調され、ステレオ画像ペアによる画像内の被写体自体の凹凸感(立体感)が乏しいときは右目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Rが強調される。
【0059】
右目シフト画像生成部1607は、右目視差調整部1605より出力された調整後右目擬似立体視差値DPT_R_Gnに基づいて、右目画像信号の画素をシフトして右目シフト画像を生成する。右目シフト画像は視差調整後右目画像信号として出力される。
【0060】
図18(A)は、調整後右目擬似立体視差値DPT_R_Gnが示す視差値の例を示しており、被写体OB1は視差20、被写体OB2は視差0、被写体OB3は視差−20である。右目シフト画像生成部1607は、それぞれの視差値の半分の値を画素シフト量とし、値が正なら左方向に値が負なら右方向に被写体の画素をシフトさせる。
図18(B)は右目シフト画像を示している。被写体OB1は左方向に10画素シフトされて被写体OB1s2となっており、被写体OB3は右方向に10画素シフトされて被写体OB3s2となっている。
【0061】
被写体OB1,OB3をシフトすることによって、被写体OB1,OB3と被写体OB1s2,OB3s2との差の部分は正しい被写体の画素が存在しないオクリュージョン領域Roccとなる。
図18(B)では、被写体OB3が右方向にシフトしたことによって、
図18(A)の元の画像で被写体OB2と被写体OB3とが重なっていた領域に被写体OB3の画素が存在しなくなり、この部分もオクリュージョン領域Roccとなる。右目シフト画像生成部1607は、オクリュージョン領域Rocc内の画素を、その画素に対して左右水平方向に存在する正しくシフトすることができた画素の中から、最も近傍の画素の情報を用いて補間する。
【0062】
以上のようにして、立体画像生成装置1より出力されたステレオ画像ペアである左目画像信号及び右目画像信号は、ステレオ表示装置3へと供給されて、3D画像が表示されることになる。
【0063】
図19を用いて本実施形態による効果について説明する。
図19(A)は、
図7の画像のそれぞれの被写体の視差値を概念的に示している。
図19(C)に示すように、視差がゼロのときの値を128、奥行き方向の最大視差を0、飛び出し方向の最大視差を255とし、視差を0〜255で白黒の濃淡で表現している。
図19では、ハッチングを異ならせることによって白黒の濃淡を表現している。
図7に示すように、遠方の風景と人物が同時に写っている場合、本実施形態によらない場合には、
図19(A)に示すように、被写体間の視差の差は表現されるものの、被写体内での視差の差は被写体間の視差の差に比べて小さな値となるため、被写体自体の立体感が乏しく個々の被写体が平面的に見えてしまう。即ち、書き割り現象として視認されてしまう。
【0064】
図19(B)は、本実施形態によるそれぞれの被写体の視差値を概念的に示している。
図19(A)と
図19(B)とを比較すれば分かるように、
図19(B)では、木TRにおける幹と葉の部分で視差に差が付いており、木TRの立体感が表現されている。空SKや山MTも同様に視差に差が付いて表現される。人物PNでも同様に視差に差が付いて顔の立体感が表現される。
図19(B)では表現されていないが、実際には、例えば木TRにおける幹の中や葉の中でも視差の差が付いて表現される。即ち、書き割り現象が低減される。
【0065】
例えば遠景のみを撮影したような構図の場合には、立体度判定部14で判定される立体度Fが比較的低くなる。従って、式(5)及び式(7)における基本奥行きモデル視差値DPT_MDLに対するゲインGfは比較的大きな値となり、立体感が改善される。
【0066】
図7に示すような遠景を背景として人物を撮影したような構図の場合には、立体度判定部14で判定される立体度Fが比較的高くなる。従って、式(5)及び式(7)における基本奥行きモデル視差値DPT_MDLに対するゲインGfは比較的小さな値となり、ゲインGfによる立体感の改善はわずかとなる。一方、書き割り度判定部15で判定される書き割り度Kが比較的高くなる。従って、式(5),式(7)における左目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_L,右目擬似凹凸視差値DPT_EMBS_Rに対するGkが比較的高くなり、書き割り現象が低減されることとなる。
【0067】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。画像信号変換部16では、左目画像信号と右目画像信号の一方のみの画素シフト量を求め、左目画像信号と右目画像信号の一方のみ視差を調整したシフト画像としてもよい。
【0068】
また、本実施形態では2視点映像信号を対象とし、画素をシフトさせることによって書き割り現象が生じるような構図における個々の被写体の立体感を改善したが、任意の複数視点映像信号の画素をシフトさせることによって同様に個々の被写体の立体感を改善することが可能である。即ち、本発明の立体画像生成装置及び立体画像生成方法は、2視点映像信号を対象とする場合に限定されることはなく、3視点以上の多視点映像信号を対象とすることもできる。