特許第5845911号(P5845911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5845911ポリイミド前駆体水溶液組成物、及びポリイミド前駆体水溶液組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845911
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体水溶液組成物、及びポリイミド前駆体水溶液組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20151224BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20151224BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   C08L79/08 A
   C08K5/3445
   C08J5/18CFG
【請求項の数】9
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2012-5694(P2012-5694)
(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2013-144752(P2013-144752A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛成
(72)【発明者】
【氏名】高崎 範
(72)【発明者】
【氏名】中山 知則
(72)【発明者】
【氏名】廣重 健輔
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−310639(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065131(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/086627(WO,A1)
【文献】 特開2012−062344(JP,A)
【文献】 特開2011−018909(JP,A)
【文献】 特開2002−226582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00−73/26
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分とが反応して得られる、下記化学式(1)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸が、前記ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分に対して1.6倍モル以上のイミダゾール類と共に、水溶媒中に溶解してなるポリイミド前駆体水溶液組成物。
【化1】
化学式(1)において、
Aは、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及びフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基からなる群から選択される1種以上であり、
Bは、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及びフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基からなる群から選択される1種以上であり、
ただし、Aの50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、50モル%以下が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、及び/又は
Bの50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であり、50モル%以下が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。
【請求項2】
イミダゾール類が、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−エチル−2−メチルイミダゾール、及び1−メチル−4−エチルイミダゾールからなる群から選択されるイミダゾール類であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体水溶液組成物。
【請求項3】
有機溶媒の含有量が5質量%未満であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリイミド前駆体水溶液組成物。
【請求項4】
有機溶媒を実質的に含まないことを特徴とする請求項3に記載のポリイミド前駆体水溶液組成物。
【請求項5】
水を反応溶媒として、イミダゾール類の存在下に、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物を50モル%以下含むテトラカルボン酸成分と、分子量が500以下である脂肪族ジアミン、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンを50モル%以上含み、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンを50モル%以下含むジアミン成分とを反応させて、ポリイミド前駆体の水溶液組成物を製造することを特徴とするポリイミド前駆体水溶液組成物の製造方法。
【請求項6】
イミダゾール類の使用量が、テトラカルボン酸二無水物に対して1.6倍モル以上であることを特徴とする請求項に記載のポリイミド前駆体水溶液組成物の製造方法。
【請求項7】
電気装置、電子装置、光学装置、表示装置、タッチパネル、太陽電池、又はLED照明装置の製造における請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体水溶液組成物の使用。
【請求項8】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分とが反応して得られる、下記化学式(1)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸が、前記ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分に対して1.6倍モル以上のイミダゾール類と共に、水溶媒中に溶解してなるフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【化2】
化学式(1)において、
Aは、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及びフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基からなる群から選択される1種以上であり、
Bは、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及びフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基からなる群から選択される1種以上であり、
ただし、Aの50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、50モル%以下が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、及び/又は
Bの50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であり、50モル%以下が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。
【請求項9】
表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイスの製造方法であって、
請求項に記載のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物をキャリア基板上に塗布し、加熱処理して固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記ポリイミド樹脂膜上に回路を形成する工程、及び、前記回路が表面に形成されたポリイミド樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程を含むことを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体水溶液組成物、及びポリイミド前駆体水溶液組成物の容易な製造方法に関する。このポリイミド前駆体水溶液組成物は、有機溶媒を用いたポリイミド前駆体溶液組成物に較べて環境適応性が高いので好適である。本発明の製造方法は、水以外の溶媒を必要としないので、従来のものよりも有機溶媒の含有量が少ないポリイミド前駆体水溶液組成物、さらには、より環境適応性が高い有機溶媒を含まない水溶媒からなるポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができる。そして、このポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて好適にポリイミドを得ることができる。特に、本発明の特定のポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて得られるポリイミドは、高い透明性、可とう性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの優れた特性を有している。
【0002】
さらに、本発明は、フレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体水溶液組成物、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、薄膜太陽電池の受光素子等の受光デバイスの基板用のポリイミド前駆体水溶液組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリイミドは、耐熱性、機械的強度、電気特性、耐溶剤性などの特性が優れるために、電気電子産業分野などで広く用いられている。しかし、ポリイミドは有機溶媒への溶解性が悪いので、通常は、ポリイミド前駆体のポリアミック酸を有機溶媒に溶解した溶液組成物を、例えば基材表面上に塗布し、次いで高温で加熱して脱水閉環(イミド化)させることでポリイミドを得ている。このポリイミドを製造するためのポリアミック酸溶液組成物は有機溶媒を含み、高温での加熱処理が必要なことから、環境面で必ずしも好適ではなく、場合によっては用途が限定されることもあった。
【0004】
また近年、高度情報化社会の到来に伴い、光通信分野の光ファイバーや光導波路等、表示装置分野の液晶配向膜やカラーフィルター用保護膜等の光学材料の開発が進んでいる。特に表示装置分野で、ガラス基板代替として軽量でフレキシブル性に優れたプラスチック基板の検討が行なわれており、曲げたり丸めたりすることが可能なディスプレイの開発が盛んに行われている。そして、その様な用途に用いることができる、より高性能の光学材料が求められている。
【0005】
一般に、ポリイミドは分子内共役や電荷移動錯体の形成により本質的に黄褐色に着色する。その解決策として、例えばフッ素を導入したり、主鎖に屈曲性を与えたり、嵩高い側鎖を導入するなどして電荷移動錯体の形成を阻害し、透明性を発現させる方法が提案されている(非特許文献1)。また、原理的に電荷移動錯体を形成しない半脂環式または全脂環式ポリイミド樹脂を用いることにより透明性を発現させる方法も提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献2)。特に、脂環式テトラカルボン酸二無水物及び/又は脂環式ジアミンをモノマー成分として使用すること、及び、分子内にフッ素を導入することは透明ポリイミドを得るための有効な方法である。
【0006】
水溶性ポリイミド前駆体に関しては、例えば、特許文献4には、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合させてポリアミド酸を得、これを必要に応じて加水分解した後、このワニスを水中に投入してポリアミド酸を粉砕し、ポリアミド酸に含まれる反応溶媒を抽出、除去し、これを乾燥してポリアミド酸を得、次いで、このポリアミド酸を水中で2−メチルアミノジエタノールなどの特定のアミン化合物と反応させて水溶性ポリアミド酸塩にして、ポリアミド酸塩水溶液組成物を得ることが提案されている。しかし、このポリアミド酸塩水溶液組成物(ポリイミド前駆体組成物)は、高分子量化し難く、また得られるポリイミドの特性にも改良の余地があった。
【0007】
特許文献5には、有機溶媒中でテトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを反応させて得られたポリアミック酸(ポリイミド前駆体)と1,2−ジメチルイミダゾ−ル及び/又は1−メチル−2−エチルイミダゾ−ルとを反応させた後、反応混合物から分離取得してなる水溶性ポリイミド前駆体が提案されている。しかし、特許文献5の実施例で得られた水溶性ポリイミド前駆体は、それを用いて得られる芳香族ポリイミドが非結晶性のもののみであった。特許文献5で得られた水溶性ポリイミド前駆体は、得られるポリイミドが非結晶性で熱融着性を有しており、有機あるいは無機繊維製の織物あるいは不織布の結合剤として好適に用いられるものであるが、用途によってはポリイミドの特性に改良の余地があった。さらに、ここでは、ポリイミド前駆体の水溶液組成物は、水溶性ポリイミド前駆体を有機溶媒中で調製後、一旦分離し、この分離した水溶性ポリイミド前駆体を水溶媒に溶解する方法によって得られており、極めて複雑な操作が必要であった。しかも、有機溶媒中で調製された水溶性ポリイミド前駆体からは有機溶媒を完全に除去できない(完全に除去しようとして加熱処理するとイミド化が起こり、水に対する溶解性がなくなる)ために、得られるポリイミド前駆体水溶液組成物は有機溶媒を含むことになる。
【0008】
また、特許文献6には、溶媒が有機溶媒、具体的にはN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどであるポリイミド前駆体樹脂組成物を用いたフレキシブルデバイス基板の製造方法が提案されている。一方で、上記の通り、環境適応性の観点から、水溶媒を求める声もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−348374号公報
【特許文献2】特開2005−15629号公報
【特許文献3】特開2002−161136号公報
【特許文献4】特開平8−59832号公報
【特許文献5】特開2002−226582号公報
【特許文献6】特開2010−202729号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Polymer,47,2337(2006)
【非特許文献2】M.Hasegawa,High Perform.Polym.13,S93−S106(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の目的は、水溶媒を使用していて環境適応性が良好であり、しかも、それを用いて得られるポリイミドは、高い透明性を有し、且つ、可とう性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの特性にも優れるものであり、好ましくは溶媒が水以外の有機溶媒を含まないポリイミド前駆体水溶液組成物を提供することである。また、水以外の溶媒を必要とせずに、このポリイミド前駆体水溶液組成物を容易に製造できる方法を提供することである。
【0012】
本発明の第2の目的は、水溶媒を使用していて環境適応性が良好であり、しかも、それを用いて得られるポリイミドフレキシブルデバイス用基板は、高い透明性を有し、且つ、可とう性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの特性にも優れ、液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板等の表示デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板、薄膜太陽電池用基板等の受光デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板等として好適に用いることができるものであり、好ましくは溶媒が水以外の有機溶媒を含まないフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の事項に関する。
1. テトラカルボン酸成分とジアミン成分とが反応して得られる、下記化学式(1)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸が、前記ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分に対して1.6倍モル以上のイミダゾール類と共に、水溶媒中に溶解してなるポリイミド前駆体水溶液組成物。
【0014】
【化1】
化学式(1)において、
Aは、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及びフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基からなる群から選択される1種以上であり、
Bは、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及びフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基からなる群から選択される1種以上であり、
ただし、Aの50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、50モル%以下が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、及び/又は
Bの50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であり、50モル%以下が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。
2. イミダゾール類が、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−エチル−2−メチルイミダゾール、及び1−メチル−4−エチルイミダゾールからなる群から選択されるイミダゾール類であることを特徴とする前記項1に記載のポリイミド前駆体水溶液組成物。
3. 有機溶媒の含有量が5質量%未満であることを特徴とする前記項1〜2のいずれかに記載のポリイミド前駆体水溶液組成物。
4. 有機溶媒を実質的に含まないことを特徴とする前記項3に記載のポリイミド前駆体水溶液組成物。
5. 前記項1〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体水溶液組成物を加熱処理して得られるポリイミド。
6. 膜厚10μmのフィルムでの400nmの光透過率が60%以上であることを特徴とする前記項5に記載のポリイミド。
7. 膜厚10μmのフィルムでの全光線透過率が80%以上であることを特徴とする前記項5に記載のポリイミド。
8. 前記項1〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて得られたポリイミドフィルムであって、
膜厚10μm換算で400nmの光透過率が60%以上であることを特徴とするポリイミドフィルム。
9. 前記項1〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて得られたポリイミドフィルムであって、
膜厚10μm換算で全光線透過率が80%以上であることを特徴とするポリイミドフィルム。
10. 水を反応溶媒として、イミダゾール類の存在下に、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物を50モル%以上含み、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物を50モル%以下含むテトラカルボン酸成分と、分子量が500以下である脂肪族ジアミン、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンを50モル%以上含み、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンを50モル%以下含むジアミン成分とを反応させて、ポリイミド前駆体の水溶液組成物を製造することを特徴とするポリイミド前駆体水溶液組成物の製造方法。
11. イミダゾール類の使用量が、テトラカルボン酸二無水物に対して1.6倍モル以上であることを特徴とする前記項10に記載のポリイミド前駆体水溶液組成物の製造方法。
12. 電気装置、電子装置、光学装置、表示装置、タッチパネル、太陽電池、又はLED照明装置の製造における前記項1〜4のいずれかに記載のポリイミド前駆体水溶液組成物の使用。
13. 電気装置、電子装置、光学装置、表示装置、タッチパネル、太陽電池、又はLED照明装置の基板、又は保護膜としての前記項5〜7のいずれかに記載のポリイミド、又は前記項8〜9のいずれかに記載のポリイミドフィルムの使用。
14. 前記項5〜7のいずれかに記載のポリイミド、又は前記項8〜9のいずれかに記載のポリイミドフィルムを含む電気装置、電子装置、光学装置、表示装置、タッチパネル、太陽電池、又はLED照明装置。
15. テトラカルボン酸成分とジアミン成分とが反応して得られる、下記化学式(1)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸が、前記ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分に対して1.6倍モル以上のイミダゾール類と共に、水溶媒中に溶解してなるフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【0015】
【化2】
化学式(1)において、
Aは、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及びフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基からなる群から選択される1種以上であり、
Bは、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及びフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基からなる群から選択される1種以上であり、
ただし、Aの50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、50モル%以下が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、及び/又は
Bの50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であり、50モル%以下が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。
16. 表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイスの製造方法であって、
前記項15に記載のフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物をキャリア基板上に塗布し、加熱処理して固体状のポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記ポリイミド樹脂膜上に回路を形成する工程、及び、前記回路が表面に形成されたポリイミド樹脂膜を前記キャリア基板から剥離する工程を含むことを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
17. 前記項16に記載のフレキシブルデバイスの製造方法により製造された表示デバイス又は受光デバイスであるフレキシブルデバイス。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、水溶媒を使用していて環境適応性が良好であり、しかも、それを用いて得られるポリイミドは、高い透明性を有し、且つ、可とう性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの特性にも優れるものであり、好ましくは溶媒が水以外の有機溶媒を含まないポリイミド前駆体水溶液組成物を提供することができる。また、本発明によれば、含まれるポリイミド前駆体(ポリアミック酸)が高分子量であるポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることもできる。そして、このポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて、優れた特性を有するポリイミドを得ることができる。このような優れた特性を有するポリイミドが得られるポリイミド前駆体水溶液組成物は従来にはなかったものである。また、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び/又は分子量が500以下である脂肪族ジアミンを用いることにより、あるいはフッ素基(フッ素原子)を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物及び/又はフッ素基(フッ素原子)を含有する芳香族ジアミンを用いることにより、特に高い透明性を有するポリイミドを得ることができる。
【0017】
特に、本発明によって得られる特定の組成のポリイミド前駆体の水溶液組成物から得られるポリイミドは、高い透明性を有し、且つ、可とう性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの特性にも優れているので、電気装置、電子装置、光学装置に好適に用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置、タッチパネルや、太陽電池、LED照明装置の基板、又は保護膜などとして好適に用いることができる。特に、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、薄膜太陽電池の受光素子等の受光デバイスなどのフレキシブルデバイスの基板として好適に用いることができる。
【0018】
また、本発明によって、水溶媒を使用していて環境適応性が良好であり、しかも、それを用いて得られるポリイミドフレキシブルデバイス用基板は、高い透明性を有し、且つ、可とう性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの特性にも優れ、液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板等の表示デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板、薄膜太陽電池用基板等の受光デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板等として好適に用いることができるものであり、好ましくは溶媒が水以外の有機溶媒を含まないフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することができる。このフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物は、有機溶媒を用いたポリイミド前駆体溶液組成物に較べて環境適応性が高いので好適である。しかも、このポリイミド前駆体樹脂組成物を用いて得られる特定の組成のポリイミドフレキシブルデバイス用基板は、高い透明性を有し、且つ、可とう性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの特性にも優れており、特に高い透明性、可とう性が要求される液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板等の表示デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板、薄膜太陽電池用基板等の受光デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板等として、特にフレキシブルディスプレイ用基板として好適に用いることができる。
【0019】
さらに、本発明によって、水以外の溶媒を必要とせずに、より環境適応性が高いポリイミド前駆体水溶液組成物を容易に製造できる方法を提供することができる。この製造方法によって、極めて簡便に(直接的に)ポリイミド前駆体水溶液組成物、特には有機溶媒の含有量が5質量%未満、さらには有機溶媒を含まない水溶媒からなるポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができる。このような有機溶媒の含有量が極めて少ないポリイミド前駆体水溶液組成物は従来にはなかったものであり、水溶媒中でテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させてポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることを可能にした本発明の製造方法によって製造可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、水を反応溶媒として、イミダゾール類の存在下に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて、ポリイミド前駆体水溶液組成物を製造する。ただし、反応させるテトラカルボン酸二無水物の50モル%以下が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物、好ましくは2〜3個の芳香族環を有するフッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物であるか、または、反応させるジアミンの50モル%以下が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミン、好ましくは1〜2個の芳香族環を有し、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンであり、50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミン及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミン、好ましくは1〜2個の芳香族環を有するフッ素基を含有する芳香族ジアミンである。反応させるテトラカルボン酸二無水物の50モル%以下が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物、好ましくは2〜3個の芳香族環を有するフッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、且つ、反応させるジアミンの50モル%以下が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミン、好ましくは1〜2個の芳香族環を有し、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンであり、50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミン及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミン、好ましくは1〜2個の芳香族環を有するフッ素基を含有する芳香族ジアミンであってもよい。
【0021】
「水を反応溶媒として」とは、溶媒の主成分として水を用いることを意味する。したがって、水以外の有機溶媒を全溶媒中50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下の割合で用いてもよい。なお、ここで言う有機溶媒には、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸成分、ジアミン成分、ポリアミック酸等のポリイミド前駆体、及びイミダゾール類は含まれない。
【0022】
前記有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、m−クレゾール、フェノール、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0023】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物の製造方法においては、環境適応性が高いので、反応溶媒が、有機溶媒の含有量が5質量%未満である溶媒であることが好ましく、水以外の有機溶媒を含まない水溶媒であることが特に好ましい。反応溶媒の組成は、製造するポリイミド前駆体水溶液組成物の所望の溶媒組成に応じて適宜選択することができ、ポリイミド前駆体水溶液組成物の所望の溶媒組成と同一であることが好ましい場合がある。
【0024】
本発明で用いるイミダゾール類(化合物)としては、下記化学式(10)の化合物を好適に挙げることができる。
【0025】
【化3】
化学式(10)において、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、或いは炭素数が1〜5のアルキル基である。
【0026】
本発明で用いるイミダゾール類としては、25℃における水に対する溶解度が0.1g/L以上、特に1g/L以上であることが好ましい。
【0027】
さらに、化学式(10)のイミダゾール類においては、X〜Xが、それぞれ独立に、水素原子、或いは炭素数が1〜5のアルキル基であって、X〜Xのうち少なくとも2個が、炭素数が1〜5のアルキル基であるイミダゾール類、すなわち置換基として2個以上のアルキル基を有するイミダゾール類がより好ましい。
【0028】
置換基として2個以上のアルキル基を有するイミダゾール類は水に対する溶解性が高いので、それらを用いることによって、ポリイミド前駆体水溶液組成物を容易に製造することができる。これらのイミダゾール類としては、1,2−ジメチルイミダゾール(25℃における水に対する溶解度は239g/L、以下同様)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(1000g/L)、4−エチル−2−メチルイミダゾール(1000g/L)、及び1−メチル−4−エチルイミダゾール(54g/L)などが好適である。
【0029】
なお、25℃における水に対する溶解度は、当該物質が、25℃の水1L(リットル)に溶解する限界量(g)を意味する。この値は、ケミカル・アブストラクトなどのデータベースに基づいた検索サービスとして知られるSciFinder(登録商標)によって容易に検索することができる。ここでは、種々の条件下での溶解度のうち、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)Software V11.02(Copyright 1994−2011 ACD/Labs)によって算出されたpHが7における値を採用した。
【0030】
なお、用いるイミダゾール類は一種であっても、複数種の混合物であってもよい。
【0031】
本発明で用いるイミダゾール類の使用量は、原料のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応によって生成するポリアミック酸のカルボキシル基に対して、好ましくは0.8倍当量以上、より好ましくは1.0倍当量以上、さらに好ましくは1.2倍当量以上である。イミダゾール類の使用量がポリアミック酸のカルボキシル基に対して0.8倍当量未満では、均一に溶解したポリイミド前駆体水溶液組成物を得るのが容易でなくなる場合がある。また、イミダゾール類の使用量の上限は、特に限定されないが、通常は10倍当量未満、好ましくは5倍当量未満、より好ましくは3倍当量未満である。イミダゾール類の使用量が多過ぎると、非経済的になるし、且つポリイミド前駆体水溶液組成物の保存安定性が悪くなることがある。
【0032】
本発明において、イミダゾール類の量を規定するポリアミック酸のカルボキシル基に対する倍当量とは、ポリアミック酸のアミド酸基を形成するカルボキシル基1個に対して何個(何分子)の割合でイミダゾール類を用いるかを表す。なお、ポリアミック酸のアミド酸基を形成するカルボキシル基の数は、原料のテトラカルボン酸成分1分子当たり2個のカルボキシル基を形成するものとして計算される。
【0033】
したがって、本発明で用いるイミダゾール類の使用量は、原料のテトラカルボン酸二無水物に対して(ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分に対して)、好ましくは1.6倍モル以上、より好ましくは2.0倍モル以上、さらに好ましくは2.4倍モル以上である。
【0034】
本発明で用いるイミダゾール類の特徴は、原料のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応によって生成するポリアミック酸(ポリイミド前駆体)のカルボキシル基と塩を形成して水に対する溶解性を高めるだけでなく、さらにポリイミド前駆体をイミド化(脱水閉環)してポリイミドにする際に、極めて高い触媒的な作用を有することにある。この結果、本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物を用いると、例えばより低温且つ短時間の加熱処理によっても、容易に、極めて高い物性を有するポリイミドやフレキシブルデバイス用基板を製造することが可能になる。
【0035】
前述の通り、本発明においては、好ましくは、水を反応溶媒として、イミダゾール類の存在下に、好ましくは置換基として2個以上のアルキル基を有するイミダゾール類の存在下に、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることによって、ポリイミド前駆体水溶液組成物を極めて簡便に(直接的に)製造することが可能である。
【0036】
この反応は、テトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸二無水物)とジアミン成分とを略等モル用い、イミド化反応を抑制するために100℃以下、好ましくは80℃以下の比較的低温で行なわれる。限定するものではないが、通常、反応温度は25℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは50℃〜80℃であり、反応時間は0.1〜24時間程度、好ましくは2〜12時間程度であることが好ましい。反応温度及び反応時間を前記範囲内とすることによって、生産効率よく高分子量のポリイミド前駆体水溶液組成物を容易に得ることができる。なお、反応は、空気雰囲気下でも行うことができるが、通常は不活性ガス雰囲気下、好ましくは窒素ガス雰囲気下で好適に行われる。
【0037】
また、テトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸二無水物)とジアミン成分とを略等モルとは、具体的にはモル比[テトラカルボン酸成分/ジアミン成分]で0.90〜1.10程度、好ましくは0.95〜1.05程度である。
【0038】
本発明で用いるテトラカルボン酸二無水物は、50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、50モル%以下が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物、好ましくは2〜3個の芳香族環を有するフッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物である。ただし、反応させるジアミン成分の50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミン及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンであり、50モル%以下が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンである場合は、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物のみ、または、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物が50モル%以上、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物が50モル%以下のテトラカルボン酸成分を用いることもできる。
【0039】
本発明で用いるフッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物などを好適に挙げることができる。
【0040】
本発明で用いる脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’ −テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,2:4,5−二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3;5,6−テトラカルボン酸二無水物などを好適に挙げることができる。
【0041】
本発明で用いるフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5,5’−[2,2,2−トリフルオロ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチリデン]ジフタル酸無水物、5,5’−[2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−(トリフルオロメチル)プロピリデン]ジフタル酸無水物、1H−ジフロ[3,4−b:3’,4’−i]キサンテン−1,3,7,9(11H)−テトロン、5,5’−オキシビス[4,6,7−トリフルオロ−ピロメリット酸無水物]、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、4−(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、1,4−ジフルオロピロメリット酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物などを好適に挙げることができる。
【0042】
フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、及びフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物はそれぞれ一種である必要はなく、複数種の混合物であってもよい。
【0043】
本発明で用いるジアミンは、50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミン及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミン、好ましくは1〜2個の芳香族環を有するフッ素基を含有する芳香族ジアミンであり、50モル%以下が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミン、好ましくは1〜2個の芳香族環を有し、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンである。ただし、反応させるテトラカルボン酸成分の50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、50モル%以下が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物である場合は、フッ素基を含有しない芳香族ジアミンのみ、または、フッ素基を含有しない芳香族ジアミンが50モル%以上、脂肪族ジアミン及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンが50モル%以下のジアミン成分を用いることもできる。
【0044】
本発明で用いるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンとしては、25℃における水に対する溶解度が0.1g/L以上であれば特に限定されないが、1〜2個の芳香族環を有する芳香族ジアミンが好ましい。25℃の水に対する溶解度が0.1g/L未満の芳香族ジアミンを用いた場合には、均一に溶解したポリイミド前駆体水溶液組成物を得るのが難しくなる場合がある。また、芳香族ジアミンが2個を越える芳香族環を持つ場合には、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L未満になる場合があり、その結果、均一に溶解したポリイミド前駆体水溶液組成物を得るのが難しくなる場合がある。
【0045】
本発明で用いる脂肪族ジアミンとしては、分子量(モノマーの場合は分子量、ポリマーの場合は重量平均分子量を示す)が500以下であれば特に限定されないが、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上である脂肪族ジアミン、又は、1〜2個の脂環を有する脂環式ジアミンが好ましい。分子量が500を超える脂肪族ジアミンを用いた場合には、均一に溶解したポリイミド前駆体水溶液組成物を得るのが難しくなる場合がある。
【0046】
本発明で用いるフッ素基を含有する芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、1〜2個の芳香族環を有するフッ素基を含有する芳香族ジアミンが好ましい。フッ素基を含有する芳香族ジアミンが2個を越える芳香族環を持つ場合には、均一に溶解したポリイミド前駆体水溶液組成物を得るのが難しくなる場合がある。
【0047】
本発明で用いる好ましいフッ素基を含有しない芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン(25℃における水に対する溶解度は120g/L、以下同様)、m−フェニレンジアミン(77g/L)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(0.19g/L)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(0.24g/L)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(0.54g/L)、2,4−トルエンジアミン(62g/L)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(1.3g/L)、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン(200g/L)、2,4−ジアミノトルエン(62g/L)などを例示できるが、水溶性が高く、得られるポリイミドが優れた特性を有するので、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、及びそれらの混合物が好ましく、さらにp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、及びそれらの混合物がより好ましい。
【0048】
本発明で用いる好ましい脂肪族ジアミンとしては、trans−1,4−ジアミノシクロへキサン(1000g/L、分子量:114)、cis−1,4−ジアミノシクロへキサン(1000g/L、分子量:114)、1,6−ヘキサメチレンジアミン(1000g/L、分子量:116)、1,10−デカメチレンジアミン(1000g/L、分子量:172)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1000g/L、分子量:142)、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(999g/L、分子量:142)、重量平均分子量が500以下のポリオキシプロピレンジアミンなどを挙げることができる。
【0049】
本発明で用いるフッ素基を含有する芳香族ジアミンとしては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−ジアミノベンゼン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−ベンゼン(ジメタンアミン)、2,2’−ジフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、2,2’,6,6’−テトラフルオロ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−オキシビス(2,3,5,6−テトラフルオロアニリン)などを好適に挙げることができる。
【0050】
フッ素基を含有しない芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、及びフッ素基を含有する芳香族ジアミンはそれぞれ一種である必要はなく、複数種の混合物であってもよい。フッ素基を含有しない芳香族ジアミンは、これらの水に対する溶解度が高いジアミンと他のジアミンとを組み合わせて、ジアミン成分全体として25℃における水に対する溶解度が0.1g/L以上になるようにして用いることもできる。
【0051】
なお、25℃における水に対する溶解度(25℃の水に対する溶解度)が0.1g/L以上のジアミンとは、当該ジアミンが25℃の水1L(1000ml)に0.1g以上溶解することを意味する。25℃における水に対する溶解度は、当該物質が、25℃の水1L(リットル)に溶解する限界量(g)を意味する。この値は、ケミカル・アブストラクトなどのデータベースに基づいた検索サービスとして知られるSciFinder(登録商標)によって容易に検索することができる。ここでは、種々の条件下での溶解度のうち、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)Software V11.02(Copyright 1994−2011 ACD/Labs)によって算出されたpHが7における値を採用した。
【0052】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物を構成するポリアミック酸は、前記化学式(1)で表される繰返し単位からなる。
【0053】
化学式(1)のAは、ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分に由来する化学構造であって、好ましくは2〜3個の芳香族環を有するフッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又は脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基である。
【0054】
化学式(1)のAは、得られるポリアミック酸が水に対して十分な溶解性を有すると共に、得られるポリイミドが高い透明性を有し、高い特性のポリイミドフレキシブルデバイス用基板等を容易に得るためには、50モル%以下が、好ましくは2〜3個の芳香族環を有するフッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であることが好ましい。ただし、化学式(1)のBの50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であり、50モル%以下が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である場合は特に限定されず、50モル%以上が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、50モル%以下が、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であってもよい。
【0055】
本発明においては、得られるポリイミドの特性から、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位である前記化学式(1)のAが、下記化学式(2)〜(7)のいずれか一種以上であることが好ましく、主として下記化学式(2)、(3)及び(5)のいずれか一種以上であることが特に好ましく、下記化学式(2)〜(3)のいずれか一種以上であることがさらに好ましい。
【0056】
【化4】
【0057】
化学式(1)のBは、ポリアミック酸のジアミン成分に由来する化学構造であって、好ましくは1〜2個の芳香族環を有し、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又は分子量が500以下である脂肪族ジアミン、好ましくは水に対する溶解度が0.1g/L以上である脂肪族ジアミン、あるいは、1〜2個の脂環を有する脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミン、好ましくは1〜2個の芳香族環を有するフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基である。
【0058】
化学式(1)のBは、得られるポリアミック酸が水に対して十分な溶解性を有すると共に、得られるポリイミドが高い透明性を有し、高い特性のポリイミドフレキシブルデバイス用基板等を容易に得るためには、50モル%以下が、好ましくは1〜2個の芳香族環を有し、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であり、50モル%以上が、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であることが好ましい。ただし、化学式(1)のAの50モル%以上が、脂肪族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基であり、50モル%以下が、フッ素基を含有しない芳香族テトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた4価の基である場合は特に限定されず、50モル%以上が、25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるフッ素基を含有しない芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であり、50モル%以下が、分子量が500以下である脂肪族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基、及び/又はフッ素基を含有する芳香族ジアミンからアミノ基を除いた2価の基であってもよい。
【0059】
本発明においては、得られるポリイミドの特性から、フッ素基を含有しない芳香族ジアミンに由来する構成単位である前記化学式(1)のBが、下記化学式(8)〜(9)のいずれか一種以上であることが好ましい。
【0060】
【化5】
【0061】
本発明によって得られるポリイミド前駆体水溶液組成物においては、ポリイミド前駆体(実質的にポリアミック酸)に起因する固形分濃度に基づいて温度30℃、濃度0.5g/100mL(水溶解)で測定した対数粘度が、特に限定されないが、0.2以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.8以上、特に好ましくは1.0以上または超の高分子量であることが好適である場合がある。ある実施態様においては、対数粘度が前記範囲よりも低い場合には、ポリイミド前駆体の分子量が低いことから、本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物を用いても、高い特性のポリイミド、或いはポリイミドフレキシブルデバイス用基板等を得ることが難しくなることがある。
【0062】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物は、ポリイミド前駆体(実質的にポリアミック酸)に起因する固形分濃度が、特に限定されるものではないが、ポリイミド前駆体と溶媒との合計量に対して、好ましくは5質量%〜45質量%、より好ましくは7質量%〜40質量%、さらに好ましくは9質量%〜30質量%であることが好適である。固形分濃度が5質量%より低いと生産性、及び使用時の取り扱いが悪くなることがあり、45質量%より高いと溶液の流動性がなくなることがある。
【0063】
また、本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物の30℃における溶液粘度は、特に限定されないが、好ましくは1000Pa・sec以下、より好ましくは0.1〜500Pa・sec、さらに好ましくは0.1〜300Pa・sec、特に好ましくは0.1〜200Pa・secであることが取り扱い上好適である。溶液粘度が1000Pa・secを超えると、流動性がなくなり、金属やガラスなどへの均一な塗布が困難となることがあり、また、0.1Pa・secよりも低いと、金属やガラスなどへの塗布時にたれやハジキなどが生じることがあり、また高い特性のポリイミド、或いはポリイミドフレキシブルデバイス用基板等を得ることが難しくなることがある。
【0064】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物は、水溶媒を用いるが、水以外の有機溶媒、例えばポリアミック酸を調製する際に用いられる公知の有機溶媒を全溶媒中50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下の割合で用いてもよい。すなわち、本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物は、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸が、イミダゾール類と共に、水単独、または水の割合が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である水と有機溶媒との混合物である水溶媒(水性溶媒)中に溶解しているものである。
【0065】
前記有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、m−クレゾール、フェノール、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0066】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物においては、有機溶媒の含有量が5質量%未満である溶媒であること、より好ましくは水溶媒が水以外の有機溶媒を含まないこと、すなわち水単独溶媒であることが、環境適応性の観点から特に好ましい。
【0067】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物は、特許文献4,5などの方法に準じ、
(i) 有機溶媒を反応溶媒とし、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応して得られたポリアミド酸を水中に投入してポリアミド酸粉末を得、そのポリアミド酸粉末を水溶媒中でイミダゾール類(好ましくは2個以上のアルキル基を有するイミダゾール類)と共に混合溶解して水溶液組成物を得る方法、
(ii) 有機溶媒を反応溶媒とし、イミダゾール類(好ましくは2個以上のアルキル基を有するイミダゾール類)の存在下にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応して水溶性ポリイミド前駆体を得、それを分離後、水溶媒に溶解する方法、或いは、
(iii) 有機溶媒を反応溶媒とし、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応してポリアミック酸を得、そのポリアミック酸を、有機溶媒を反応溶媒として、イミダゾール類(好ましくは2個以上のアルキル基を有するイミダゾール類)と反応して水溶性ポリイミド前駆体を得、それを分離後、水溶媒に溶解する方法
などでも得ることができる。但し、前述の通り、有機溶媒の含有量が極めて少ない、さらには有機溶媒を含まないポリイミド前駆体水溶液組成物を得るためには、ポリイミド前駆体を有機溶媒中で調製することは好ましくない。
【0068】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物は、通常は加熱処理によって水溶媒を除去するとともにイミド化(脱水閉環)することによって好適にポリイミドを得ることができる。加熱処理条件は、特に限定されないが、概ね100℃以上、好ましくは120℃〜600℃、より好ましくは150℃〜500℃で、更に好ましくは150℃〜350℃で、好ましくは段階的に温度を上げながら、0.01時間〜30時間、好ましくは0.01〜10時間加熱処理することが好ましい。
【0069】
この加熱処理は、常圧下で好適に行うこともできるが、水溶媒を効率よく除去するために減圧下で行ってもよい。また、初期段階で減圧下、比較的低温で加熱処理して脱泡処理してもよい。いきなり加熱処理温度を高くすると、発泡などの不具合が生じて良好な特性を有するポリイミドを得ることができないことがある。
【0070】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物は、比較的低温(例えば150℃〜300℃、好ましくは180℃〜250℃)で加熱処理するだけで、通常の有機溶媒を用いたポリイミド前駆体(ポリアミック酸)溶液組成物を用いた場合に較べて遜色ない、優れた特性を有するポリイミドを容易に得ることができる。
【0071】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物から得られるポリイミドは高い透明性を有する。本発明によれば、例えば、本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて、膜厚10μm換算で400nmの光透過率が60%以上、さらには70%以上、さらには80%以上、さらには85%以上であるポリイミドフィルムを得ることができる。また、本発明によれば、例えば、本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて、膜厚10μm換算で全光線透過率が80%以上、さらには85%以上、さらには90%以上であるポリイミドフィルムを得ることができる。
【0072】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物から得られるポリイミドは高い透明性を有しているので、透明性が要求される電気装置、電子装置、光学装置に好適に用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置、タッチパネルや、太陽電池、LED照明装置の基板、又は保護膜などとして好適に用いることができる。特に、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、薄膜太陽電池の受光素子等の受光デバイスなどのフレキシブルデバイスの基板として好適に用いることができる。
【0073】
なお、本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物は、得られるポリイミドの用途に応じて、他の添加成分を含有していてもよい。
【0074】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物は、フレキシブルデバイス基板用のポリイミド前駆体樹脂組成物として特に好適に用いることができる。
【0075】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法においては、ポリイミド前駆体水溶液組成物、具体的には前記化学式(1)で表される繰返し単位からなるポリアミック酸が、前記ポリアミック酸のテトラカルボン酸成分に対して1.6倍モル以上のイミダゾール類と共に、水溶媒中に均一に溶解してなるポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材の表面に塗布或いは吹き付けしてポリイミド前駆体水溶液組成物層からなる塗膜を形成し、そのポリイミド前駆体水溶液組成物を加熱処理してポリイミドフレキシブルデバイス用基板を得る。
【0076】
本発明において、ポリイミド前駆体水溶液組成物は、加熱処理によって水溶媒を除去するとともにイミド化(脱水閉環)することによって好適にポリイミドフレキシブルデバイス用基板を得ることができる。加熱処理条件は、特に限定されないが、概ね100℃以上、好ましくは120℃〜600℃、より好ましくは150℃〜500℃で、更に好ましくは150℃〜350℃で、好ましくは段階的に温度を上げながら、0.01時間〜30時間、好ましくは0.01〜10時間加熱処理することが好ましい。
【0077】
この加熱処理は、常圧下で好適に行うこともできるが、水溶媒を効率よく除去するために減圧下で行ってもよい。また、初期段階で減圧下、比較的低温で加熱処理して脱泡処理してもよい。いきなり加熱処理温度を高くすると、発泡などの不具合が生じて良好なフレキシブルデバイス用基板を得ることができないことがある。
【0078】
本発明のポリイミドフレキシブルデバイス用基板の製造方法においては、比較的低温(例えば150℃〜300℃、好ましくは180℃〜250℃)で加熱処理するだけで、通常の有機溶媒を用いたポリイミド前駆体(ポリアミック酸)溶液組成物を用いた場合に較べて遜色ない優れた特性を有するポリイミドフレキシブルデバイス用基板を容易に得ることができる。
【0079】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法においては、ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリイミド前駆体水溶液組成物)を支持体であるキャリア基板上に塗布し、加熱処理して固体状のポリイミド樹脂膜を形成し、このポリイミド樹脂膜上に回路を形成した後、回路が表面に形成されたポリイミド樹脂膜をキャリア基板から剥離する。
【0080】
ポリイミド前駆体水溶液組成物の塗布は、キャリア基板(支持体)上に均一な厚みの塗膜を形成できる方法であれば、いずれも適用できる。例として、ダイコーティングやスピンコーティング、スクリーン印刷による塗布が可能である。
【0081】
キャリア基板上にポリイミド前駆体水溶液組成物からなる塗膜を形成し、比較的低温で加熱処理して水溶媒除去を行って自己支持性膜(皮膜の流動が発生しない状態、水溶媒の除去と共に重合及び一部イミド化反応が進んでいる)を形成し、次いで自己支持性膜をそのままの状態、或いは必要に応じて基材から剥がした状態で加熱処理して脱水・イミド化する方法によってフレキシブルデバイス用基板を好適に得ることができる。ここで用いた「水溶媒除去」或いは「脱水・イミド化」は、当該工程で、それぞれ水溶媒除去のみ或いは脱水・イミド化のみが進行することを意味しない。水溶媒除去工程でも相当程度の脱水・イミド化は進行するし、脱水・イミド化工程でも残存水溶媒の除去が進行する。
【0082】
本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物は、得られるポリイミドフレキシブルデバイス用基板の用途に応じて、他の添加成分を含有していてもよい。また、得られるポリイミドフレキシブルデバイス用基板は、さらに他の樹脂層を積層したものであってもよい。
【0083】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法において、ポリイミド樹脂膜の厚さは、1〜20μmであることが望ましい。厚さが1μm未満である場合、ポリイミド樹脂膜が十分な耐性を保持できず、フレキシブルデバイス基板として使用したとき応力に耐えきれず破壊されることがある。また、ポリイミド樹脂膜の厚さが20μmを超えて厚くなると、フレキシブルデバイスの薄型化が困難となってしまう。フレキシブルデバイスとして十分な耐性を保持しながら、より薄膜化するには、ポリイミド樹脂膜の厚さは、2〜10μmであることがより望ましい。
【0084】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法においては、以上のようにして形成したポリイミド樹脂膜の上に、表示デバイス又は受光デバイスに必要な回路を形成する。この工程はデバイスの種類により異なる。例えば、TFT液晶ディスプレイデバイスを製造する場合には、ポリイミド樹脂膜の上に、例えばアモルファスシリコンのTFTを形成する。TFTは、ゲート金属層、窒化ケイ素ゲート誘電体層、ITI画素電極を含む。この上に、さらに液晶ディスプレイに必要な構造を、公知の方法によって形成することも出来る。本発明において得られるポリイミド樹脂膜は耐熱性、靱性等各種特性に優れるので、回路等を形成する手法は特に制限されない。
【0085】
以上のようにして回路等を表面に形成したポリイミド樹脂膜をキャリア基板から剥離する。剥離方法に特に制限はなく、例えばキャリア基板側からレーザー等を照射することで剥離を行うことができる。本発明により得られるポリイミド樹脂膜は、高い可とう性、靭性を有するので、キャリア基板(支持体)と単に物理的に剥離することも可能である。
【0086】
本発明におけるフレキシブルデバイスとしては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーといった表示デバイス、太陽電池、CMOSなどの受光デバイスを挙げることが出来る。本発明は、特に、薄型化かつフレキシブル性を付与したいデバイスへの適用に好適である。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0088】
以下の例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
【0089】
<固形分濃度>
試料溶液(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定する。固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
【0090】
固形分濃度[質量%]=(w2/w1)×100
【0091】
<対数粘度>
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒は水)になるように希釈した。この希釈液を、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T)を測定した。対数粘度は、ブランクの水の流下時間(T)を用いて、次式から算出した。
【0092】
対数粘度={ln(T/T)}/0.5
【0093】
<溶液粘度(回転粘度)>
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
【0094】
<ポリイミドフレキシブルデバイス用基板の状態観察>
発泡または割れなどの不具合が全くないものを○、発泡または割れなどの不具合がある領域が全体の30%以下のものを△、発泡または割れなどの不具合がある領域が全体の30%を越えているものを×とした。
【0095】
<光透過率測定>
光透過率測定装置(大塚電子社製MCPD−300)を用いて、ポリイミドフレキシブルデバイス用基板の膜厚を10μmに換算した、全光線透過率および400nmにおける光透過率を測定した。
【0096】
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
t−DCDA:trans−ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’ −テトラカルボン酸二無水物
c−DCDA:cis−ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’ −テトラカルボン酸二無水物
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(25℃における水に対する溶解度:0.19g/L)
PPD:p−フェニレンジアミン(25℃における水に対する溶解度:120g/L)
t−CHDA:trans−1,4−ジアミノシクロへキサン(25℃における水に対する溶解度:1000g/L、分子量:114)
HMD:1,6−ヘキサメチレンジアミン(25℃における水に対する溶解度:1000g/L、分子量:116)
DAB:1,4−ジアミノブタン(25℃における水に対する溶解度:1000g/L、分子量:88)
DAP:1,3−プロパンジアミン(25℃における水に対する溶解度:1000g/L、分子量:74)
D2000:ジェファーミンD2000(三井化学社製、重量平均分子量2041のジアミン化合物)
1074:PRIAMINE1074(クローダジャパン社製、重量平均分子量548のジアミン化合物)
1,2−DMZ:1,2−ジメチルイミダゾール(25℃における水に対する溶解度:239g/L)
【0097】
〔実施例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにt−CHDAの20.97g(0.184モル)と、1,2−DMZの44.14g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの54.03g(0.184モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.8質量%、溶液粘度1.2Pa・s、対数粘度0.72のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0098】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0099】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−1に示した。
【0100】
〔実施例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにHMDの21.24g(0.183モル)と、1,2−DMZの43.92g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの53.76g(0.183モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.4質量%、溶液粘度0.7Pa・s、対数粘度0.63のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0101】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0102】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−1に示した。
【0103】
〔実施例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにDABの17.29g(0.196モル)と、1,2−DMZの47.15g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの57.71g(0.196モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.2質量%、溶液粘度0.3Pa・s、対数粘度0.45のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0104】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0105】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−1に示した。
【0106】
〔実施例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにt−CHDAの20.55g(0.180モル)と、1,2−DMZの43.24g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの15.88g(0.054モル)及びc−DCDAの38.57g(0.126モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.2質量%、溶液粘度0.1Pa・s、対数粘度0.27のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0107】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0108】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−1に示した。
【0109】
〔実施例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにt−CHDAの20.18g(0.177モル)と、1,2−DMZの42.48g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にODPAの54.82g(0.177モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.5質量%、溶液粘度0.1Pa・s、対数粘度0.43のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0110】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0111】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−1に示した。
【0112】
〔実施例6〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにODAの23.31g(0.116モル)と、1,2−DMZの27.97g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液に6FDAの51.69g(0.116モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度13.0質量%、溶液粘度2.5Pa・s、対数粘度0.13のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0113】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0114】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−1に示した。
【0115】
〔実施例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにPPDの14.69g(0.136モル)と、1,2−DMZの32.64g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液に6FDAの60.31g(0.136モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度13.4質量%、溶液粘度4.5Pa・s、対数粘度0.62のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0116】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0117】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−1に示した。
【0118】
〔実施例8〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにt−CHDAの15.34g(0.134モル)と、1,2−DMZの32.28g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液に6FDAの59.66g(0.134モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.2質量%、溶液粘度0.1Pa・s、対数粘度0.40のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0119】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0120】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−1に示した。
【0121】
〔実施例9〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにt−CHDAの20.37g(0.178モル)と、1,2−DMZの42.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にt−DCDAの54.63g(0.178モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.4質量%、溶液粘度0.5Pa・s、対数粘度0.20のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0122】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0123】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−2に示した。
【0124】
〔実施例10〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにHMDの20.63g(0.178モル)と、1,2−DMZの42.67g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にt−DCDAの54.37g(0.178モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.2質量%、溶液粘度0.6Pa・s、対数粘度0.25のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0125】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0126】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−2に示した。
【0127】
〔実施例11〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにDABの16.76g(0.190モル)と、1,2−DMZの45.70g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にt−DCDAの58.24g(0.190モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.3質量%、溶液粘度0.4Pa・s、対数粘度0.25のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0128】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0129】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−2に示した。
【0130】
〔実施例12〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにDAPの14.61g(0.197モル)と、1,2−DMZの47.39g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にt−DCDAの60.39g(0.197モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.0質量%、溶液粘度0.3Pa・s、対数粘度0.27のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0131】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0132】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−2に示した。
【0133】
〔実施例13〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにt−CHDAの20.37g(0.178モル)と、1,2−DMZの42.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にc−DCDAの54.63g(0.178モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.2質量%、溶液粘度0.4Pa・s、対数粘度0.18のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0134】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0135】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−2に示した。
【0136】
〔実施例14〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにHMDの20.63g(0.178モル)と、1,2−DMZの42.67g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にc−DCDAの54.37g(0.178モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.2質量%、溶液粘度0.5Pa・s、対数粘度0.18のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0137】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0138】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−2に示した。
【0139】
〔実施例15〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにDABの16.76g(0.190モル)と、1,2−DMZの45.70g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にc−DCDAの58.24g(0.190モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.3質量%、溶液粘度0.2Pa・s、対数粘度0.19のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0140】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0141】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−2に示した。
【0142】
〔実施例16〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにDAPの14.61g(0.197モル)と、1,2−DMZの47.39g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にc−DCDAの60.39g(0.197モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.0質量%、溶液粘度0.1Pa・s、対数粘度0.17のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0143】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0144】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−2に示した。
【0145】
〔実施例17〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにODAの8.64g(0.043モル)及びHMDの15.05g(0.129モル)と、1,2−DMZの41.49g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの38.09g(0.129モル)及びt−DCDAの13.22g(0.043モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度12.1質量%、溶液粘度1.2Pa・s、対数粘度0.49のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0146】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0147】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−3に示した。
【0148】
〔実施例18〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の425gを加え、これにODAの19.24g(0.096モル)及びt−CHDAの3.66g(0.032モル)と、1,2−DMZの30.79g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの9.42g(0.032モル)及び6FDAの42.68g(0.096モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度13.4質量%、溶液粘度4.5.Pa・s、対数粘度0.22のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0149】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0150】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−3に示した。
【0151】
〔実施例19〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにODAの9.37g(0.047モル)及びHMDの21.76g(0.187モル)と、1,2−DMZの56.26g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの68.87g(0.234モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度16.0質量%、溶液粘度0.7Pa・s、対数粘度0.72のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0152】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0153】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−3に示した。
【0154】
〔実施例20〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにPPDの5.29g(0.049モル)及びHMDの22.74g(0.196モル)と、1,2−DMZの58.80g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの71.97g(0.245モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度15.7質量%、溶液粘度1.4Pa・s、対数粘度0.86のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0155】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0156】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表1−3に示した。
【0157】
〔参考例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの20.25g(0.101モル)と、1,2−DMZの24.31g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの29.75g(0.101モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度8.7質量%、溶液粘度32.0Pa・s、対数粘度0.42のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0158】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0159】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表2に示した。
【0160】
〔参考例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度9.1質量%、溶液粘度63.0Pa・s、対数粘度1.86のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0161】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0162】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表2に示した。
【0163】
〔参考例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの11.16g(0.056モル)及びPPDの6.03g(0.056モル)と、1,2−DMZの26.80g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの32.81g(0.112モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度8.7質量%、溶液粘度52.2Pa・s、対数粘度0.54のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0164】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0165】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表2に示した。
【0166】
〔参考例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにPPDの16.03g(0.148モル)及びt−CHDAの11.29g(0.099モル)と、1,2−DMZの59.38g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの72.68g(0.247モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度16.7質量%、溶液粘度27.2Pa・s、対数粘度1.04のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0167】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0168】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表2に示した。
【0169】
〔参考例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにPPDの18.70g(0.173モル)及びHMDの8.61g(0.074モル)と、1,2−DMZの59.38g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの72.68g(0.247モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度16.1質量%、溶液粘度30.2Pa・s、対数粘度0.82のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0170】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0171】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表2に示した。
【0172】
〔参考例6〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにPPDの26.64g(0.246モル)と、1,2−DMZの59.20g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの50.73g(0.172モル)及びt−DCDAの22.63g(0.074モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度16.2質量%、溶液粘度107.5Pa・s、対数粘度0.87のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0173】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0174】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表2に示した。
【0175】
〔参考例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにPPDの28.36g(0.262モル)と、1,2−DMZの63.03g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの54.00g(0.184モル)及びH−PMDAの17.63g(0.079モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度16.5質量%、溶液粘度8.7Pa・s、対数粘度0.60のポリイミド前駆体水溶液を得た。
【0176】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが10μmのポリイミドフレキシブルデバイス用基板を形成した。
【0177】
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフレキシブルデバイス用基板について、状態観察及び特性の評価結果を表2に示した。
【0178】
〔比較例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにHMDの17.35g(0.149モル)及びジェファーミンD2000の33.85g(0.017モル)と、1,2−DMZの39.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの48.80g(0.166モル)を加え、70℃で6時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができなかった。
【0179】
結果を表3に示した。
【0180】
〔比較例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにHMDの23.06g(0.198モル)及びPRIAMINE1074の12.07g(0.022モル)と、1,2−DMZの53.00g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの64.87g(0.220モル)を加え、70℃で6時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができなかった。
【0181】
結果を表3に示した。
【0182】
〔比較例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにODAの21.75g(0.109モル)及びジェファーミンD2000の24.63g(0.012モル)と、1,2−DMZの29.01g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液に6FDAの53.61g(0.121モル)を加え、70℃で6時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができなかった。
【0183】
結果を表3に示した。
【0184】
〔比較例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の400gを加え、これにODAの33.30g(0.166モル)及びPRIAMINE1074の10.11g(0.018モル)と、1,2−DMZの44.41g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にc−DCDAの56.59g(0.184モル)を加え、70℃で6時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができなかった。
【0185】
結果を表3に示した。
【0186】
【表1-1】
【0187】
【表1-2】
【0188】
【表1-3】
【0189】
【表2】
【0190】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明によって、水以外の溶媒を必要とせずに、より環境適応性が高いポリイミド前駆体水溶液組成物を容易に製造できる方法を提供することができる。この製造方法によって、極めて簡便に(直接的に)有機溶媒の含有量が極めて少ないポリイミド前駆体水溶液組成物、特には有機溶媒を含まない水溶媒からなるポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができる。
【0192】
さらには、本発明によって、水溶媒を使用していて環境適応性が良好であり、しかも、それを用いて得られるポリイミドは、高い透明性を有し、且つ、可とう性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの特性にも優れるものであり、好ましくは溶媒が水以外の有機溶媒を含まない、ポリイミド前駆体水溶液組成物を提供することができる。本発明のポリイミド前駆体水溶液組成物を加熱処理して得られるポリイミドは、電気装置、電子装置、光学装置等に好適に用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置、タッチパネルや、太陽電池、LED照明装置の基板、又は保護膜などとして好適に用いることができる。特に、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示デバイス、薄膜太陽電池の受光素子等の受光デバイスなどのフレキシブルデバイスの基板として好適に用いることができる。
【0193】
また、本発明によって、水溶媒を使用していて環境適応性が良好なフレキシブルデバイス基板用ポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することができる。しかも、本発明によって得られるポリイミドフレキシブルデバイス用基板は、高い透明性を有し、且つ、可とう性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの優れた特性を有するために、液晶ディスプレイ用基板、有機ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板等の表示デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板、薄膜太陽電池用基板等の受光デバイスとしてのフレキシブルデバイス基板等として好適に用いることができる。