特許第5845992号(P5845992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845992
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】印判
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/58 20060101AFI20151224BHJP
   B41K 1/50 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   B41K1/58 K
   B41K1/50 J
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-67201(P2012-67201)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199006(P2013-199006A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】大竹 拓哉
【審査官】 鈴木 友子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−194925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/58
B41K 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印判本体を嵌着した本体ホルダに印面を覆うスライドカバユニットを復帰ばねの付勢力によりスライド復帰自在とした印判であって、本体ホルダを外筒と内筒とからなるものとし、内筒内に略直筒状の印判本体を嵌着するとともに、外筒と複数の弾性係止片を形成した内筒との間隙に嵌着したスライドカバユニットを回動自在とし、このスライドカバユニットの回動によりスライドカバユニットと本体ホルダとを捺印スライド可能状態またはスライドロック状態に切換えるロック機構を設けたことを特徴とする印判。
【請求項2】
ロック機構が内筒の弾性係止片に設けられる外向き突起部と、スライドカバユニットの内鍔に形成される切欠とからなることを特徴とする請求項1に記載の印判。
【請求項3】
スライドカバユニットにシャッタ機構を組み込んだことを特徴とする請求項1または2に記載の印判。
【請求項4】
シャッタ機構に捺印可能状態と捺印不可状態を視認できる表示機構を持たせたことを特徴とする請求項3に記載の印判。
【請求項5】
表示機構がシャッタ機構の表示部と、本体ホルダの外筒の下端に形成された表示部ガイド切欠とからなることを特徴とする請求項4に記載の印判。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携行時に便利なスリムタイプの印判に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印判として、シャッタを備えるとともにロック機構を設けて携行時において不用意に印判本体がスライドし印面が露呈して衣服を汚すことがないようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、ロック機構やシャッタ機構を組み込むために太くなり、ポケットに入れて携行する場合、ポケットが膨らんでスーツと身体とが密着し難くなり、着心地が悪くなるうえに着こなしが悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−56710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポケットに入れても身体になじみ、着心地が悪くなることがないうえに、スーツの膨らみが目立たず着こなしが悪くならない印判を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、印判本体を嵌着した本体ホルダに印面を覆うスライドカバユニットを復帰ばねの付勢力によりスライド復帰自在とした印判であって、本体ホルダを外筒と内筒とからなるものとし、内筒内に略直筒状の印判本体を嵌着するとともに、外筒と複数の弾性係止片を形成した内筒との間隙に嵌着したスライドカバユニットを回動自在とし、このスライドカバユニットの回動によりスライドカバユニットと本体ホルダとを捺印スライド可能状態またはスライドロック状態に切換えるロック機構を設けたことを特徴とする印判である。
【0007】
なお、ロック機構が内筒の弾性係止片に設けられる外向き突起部と、スライドカバユニットの内鍔に形成される切欠とからなるものとしたり、スライドカバユニットにシャッタ機構を組み込んだものとしたり、シャッタ機構に捺印可能状態と捺印不可状態とを視認できる表示機構を持たせたものにしたり、表示機構をシャッタ機構の表示部と、本体ホルダの外筒の下端に形成された前記表示部嵌合切欠とからなるものとしたりすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、印判本体を嵌着した本体ホルダに印面を覆うスライドカバユニットを復帰ばねの付勢力によりスライド復帰自在とした印判であって、本体ホルダを外筒と内筒とからなるものとし、内筒内に略直筒状の印判本体を嵌着するとともに、外筒と複数の弾性係止片を形成した内筒との間隙に嵌着されるスライドカバユニットを回動自在とし、回動によりスライドカバユニットと本体ホルダとを捺印可能状態または捺印不可状態とに切換えるロック機構を設けたことにより、携行に便利なスリムな印判とすることができる。また、印判本体を内筒内に嵌着することにより内筒の弾性係止片は弾性を失い強固な構造体となるので、印判本体を嵌着することによりスライドカバユニットと内筒は一体化されることとなる。
【0009】
請求項2のように、ロック機構が内筒の弾性係止片に設けられる突起部と、スライドカバユニットの内鍔に形成される突起部通過切欠とからなるものとすることにより、突起部と突起部通過切欠とを一致または不一致にさせることにより、捺印可能状態または捺印不可状態への切換えが簡単なものとなる。
【0010】
請求項3のように、スライドカバユニットにシャッタ機構を組み込むことにより、携行時、不用意にインキを衣服等に付着させることを的確に防止することができる。
【0011】
請求項4のように、シャッタ機構に捺印可能状態と捺印不可状態を視認できる表示機構を持たせることにより、捺印が可能か不可かが一目瞭然となるうえに、ロックをしないでポケットに入れて携行して衣服を汚すトラブルを的確に防止できる。
【0012】
請求項5のように、表示機構がシャッタ機構の表示部と、本体ホルダの外筒の下端に形成された前記表示部嵌合切欠とからなるものとすることにより、ロック機構が破損した場合でも、ロック状態を維持できるので、携行時、衣服にインキを付着させるトラブルを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の好ましい実施形態の捺印可能状態を示す正面図である。
図2】同じく側面図である。
図3】同じく平面図である。
図4】同じく底面図である。
図5図3のA−A断面図である。
図6図3のB−B断面図である。
図7図3のC−C断面図である。
図8】捺印状態を示すB−B断面図である。
図9】ロック状態を示す側面図である。
図10】捺印可能状態を示す一部切欠斜視図である。
図11】突起部と突起部通過切欠のアンロック状態を示す要部の斜視図である。
図12】同じく視点を変えた要部の切欠斜視図である。
図13】ロック状態を示す一部切欠斜視図である。
図14】同じく突起部が突起部通過切欠に係合された状態を示す要部の斜視図である。
図15】同じく視点を変えた要部の斜視図である。
図16】本体ホルダの仰視斜視図である。
図17】同じく底面図である。
図18図17のD−D断面図である。
図19図17のE−E断面図である。
図20】スライドカバユニットのシャッタホルダを示す斜視図である。
図21】同じく平面図である。
図22】同じく正面図である。
図23】同じく側面図である。
図24図21のF−F断面図である。
図25】スライドカバユニットのコネクタの俯瞰斜視図である。
図26】同じく仰視斜視図である。
図27】同じく平面図である。
図28】同じく正面図である。
図29図27のG−G断面図である。
図30図27のH−H断面図である。
図31】スライドカバユニットのスライドの斜視図である。
図32】同じく平面図である。
図33】同じく底面図である。
図34図32のI−I断面図である。
図35図32のJ−J断面図である。
図36】シャッタの斜視図である。
図37】同じく断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
1は印判である。印判1は図5に示されるように、外筒2aと内筒2bからなる本体ホルダ2と、本体ホルダ2の内筒2bに嵌着される印判本体3と、本体ホルダ2にロック機構4を介してスライドとロックを自在とされる印面被套用のスライドカバユニット5と、スライドカバユニット5を復帰方向に付勢する復帰ばね6とからなる。なお、スライドカバユニット5はシャッタホルダ8とスライド9とコネクタ10とからなる。
【0015】
本体ホルダ2は図5,6に示されるように、外筒2aと内筒2b間にスライドカバユニット5の内鍔を嵌挿できる間隙2cをもたせるとともに、図17,18,19に示されるように、内筒2bに縦スリット2dにより4つに分割される複数の弾性係止片20を形成したもので、図18に示されるように、縦スリット2dの向き合う端縁に外向き突起部20aを180°間隔で上下に設けてその中間に係止溝20bを形成したものである。2eは縦スリット2dに続いて形成される係止縦溝であり、該係止縦溝2eは横断面を弧状として印判本体3の4本の縦隆条3aのうち2本を係止するもので、印判本体3の残りの2本は縦スリット2dに係止されて印判本体3を内筒2bに回り止めする。
【0016】
2fは内筒2に形成されるストッパ隆条であり、該ストッパ隆条2fは図10に示されるように、後記するスライドカバユニット5のスライド9の内鍔9aに形成される弧状切欠9bに係合され、本体ホルダ2に対してスライドカバユニット5の回動角を規制するものである。このストッパ隆条2fにより本体ホルダ2とスライドカバユニット5とが相対的に90°回動できるようになっている。
【0017】
2gは内筒2bの外面に180°間隔で形成された抜止めストッパ部であり、該抜止めストッパ部2gは図5,10,13に示されるように、スライド9に形成された弧状切欠9bと小切欠9cと係脱自在としている。
【0018】
2hは図16,17,18に示されるように、外筒2aに形成される表示部ガイド切欠であり、該表示部ガイド切欠2hは後記するシャッタ機構7の表示部7aを係合させるもので、図10,13に示されるように、該表示部7aと表示部ガイド切欠2hの位置の一致または不一致により本体ホルダ2とスライドカバユニット5がロックされているかアンロックとなっているかを目視確認できる表示機構11を構成している。また、表示機構11は本体ホルダ2とスライドカバユニット5のロックとアンロックを行う副ロック機構を備えている。
【0019】
印判本体3は図5に示されるように、内筒2bの内径と等しい略直筒状とし、その外周面には内筒2bに形成される係止縦溝2eに係止される複数の縦隆条3aが形成されている。30は印判本体3の先端に受金31をもって取り付けられる多孔性印材、32は印判本体3の先端凹段部に嵌合されるインキ吸蔵体であり、該インキ吸蔵体32の先端面は前記多孔性印材30の後端面と接触して多孔性印材30にインキを補給するものである。印判本体3を内筒2bに嵌着することにより、弾性係止片20は弾発しなくなるのでスライドカバユニット5は内筒2bに堅固に嵌着される。
【0020】
本体ホルダ2とスライドカバユニット5のスライド9をロック及びアンロックするロック機構4は図10,13に示されるように、スライドカバユニット5のスライド9の内鍔9aに形成された弧状切欠9bと小切欠9c及びコネクタ10の切欠10eとを組み合わせた複合切欠と、内筒2bの抜止めストッパ部2g及び、図11〜15に示されるように、内筒2bに形成される弾性係止片20の係止溝20bと該係止溝20bと係止されるコネクタ10の内鍔10dと、該内鍔10dに形成される係止溝20b通過用の切欠10eとからなる。
【0021】
このようなロック機構4はスライド9の内鍔9aに形成された弧状切欠9bと小切欠9cと内筒2bの抜止めストッパ部2gとを一致させるとともに、内筒2bに形成される弾性係止片20の係止溝20bとコネクタ10の内鍔10dに形成される切欠10eとを一致させることにより、捺印可能なスライド状態となる。また、この状態で内筒2bからスライドカバユニット5の着脱が可能となるため、印判本体3の交換やインキ補給が可能となる。このとき後記する表示機構11としてのシャッタ機構7の表示部7aと外筒2aの表示部ガイド切欠2hも一致するので、副ロック機能も解除されて捺印操作が可能となる。
【0022】
スライドカバユニット5のシャッタホルダ8は図20,21,22,23,24に示されるように、下端フランジ部を形成した筒部8aと、該筒部8aの上端に形成される小径の弧状短片部8bとからなる。筒部8aには切欠8cが形成されていてこの切欠8cは図36,37に示されるシャッタ機構7の表示部7aを嵌合させるものであり、また、前記した弧状短片部8bにはコネクタ10の内面に形成された係止突起10gを係止させる係止凹部8dが形成されていてコネクタ10とシャッタホルダ8とは一体化される。
【0023】
また、スライドカバユニット5のスライド9は、筒状の上端に内鍔9aを形成したもので、該内鍔9aには内筒5bを90°回動させる弧状切欠9bと小切欠9cとが形成されている。弧状切欠9bは図31,32に示されるように、90°の開きを持つもので、両端の手前に弧状の膨出部9eを形成して内筒2bを回動させた際、膨出部9eにより節度感を与えて90°回動したことを使用者が分かるようにして、過剰な回動により破損されることを防止している。
【0024】
さらに、スライドカバユニット5のコネクタ10は図25〜30に示されるように、下部の大径短筒部10aと上部のスライダ8嵌合用の小径筒部10bとからなり、大径短筒部10aに、シャッタ機構7の表示部7aと内側の左右係止片7cとの連繋片7dを係合させる縦スリット10cを設けるとともに、小径筒部10bの上端に形成される内鍔10dに外向き突起部20aを通過させる切欠10eを形成し、さらに、小径筒部10bの下部外周面にスライド9の横溝9dと係合する横隆起10fを180°間隔で形成したものである。なお、7dはスライドカバユニット5内を封鎖するシャッタ機構7のシャッタ羽根である。
【0025】
また、復帰ばね6は図5,6に示されるように、下端をスライドカバユニット5のスライド9に当接させ、上端を本体ホルダ2の外筒2aと内筒2bとの間隙2c上端に当接させたものである。
【0026】
このような印判1の組み立ては、本体ホルダ2にスライド9を嵌合したのち印判本体3を本体ホルダ2に嵌合したうえ、シャッタ機構7をコネクタ10に嵌着し、次に、シャッタホルダ8をコネクタ10に嵌合し、スライド9にコネクタ10を嵌合するという簡単な組み立て作業で完成できる。
【0027】
このように構成されたものは、捺印を行う際、表示機構11としての表示部7aと外筒2aの表示部ガイド切欠2hの位置とを確認し、表示部7aと外筒2bの表示部ガイド切欠2hとが一致していれば、表示機構11の副ロック機構は勿論、本体のロック機構4もアンロック状態に解除されているので、スライドカバユニット5のシャッタホルダ7の下端を捺印面に合わせて本体ホルダ2を押せば、スライドカバユニット5は外筒2aと内筒2bとの間隙2c内に収納されることとなる。
【0028】
このスライドカバユニット5の収納により、シャッタ機構7のシャッタ羽根7dは印判本体3に押されて開かれるので、印判本体3の印面は捺印面に当接されて捺印が行なわれることとなる。
【0029】
また、表示機構11として表示部7aと外筒2aの表示部ガイド切欠2hの位置が一致していなければ、本体ホルダ2とスライドカバユニット5はロックされて捺印スライドができない状態となっているので、ポケットに入れて携行しても本体ホルダ2はスライドカバユニット5に対してロックされているので、印面が露呈して衣服を汚損させることがない。
【0030】
ロック状態から捺印可能な状態に切換える場合は、本体ホルダ2とスライドカバユニット5とを相対的に90°回動させて、表示機構7の表示部7aと外筒2aの表示部ガイド切欠2hを合わせれば、スライド9の弧状切欠9bと小切欠9cは内筒2bの抜止めストッパ部2gとは一致し、また、コネクタ10の切欠10eと内筒2bの外向き突起部20aは一致するので、スライドカバユニット5はスライド可能な状態となるので、前記同様本体ホルダ2を押し下げれば捺印が行われる。
【符号の説明】
【0031】
1 印判
2 本体ホルダ
2a 外筒
2b 内筒
2c 間隙
2d 縦スリット
2e 係止縦溝
2f ストッパ隆条
2g 抜止めストッパ部
2h 表示部ガイド切欠
20 弾性係止片
20a 外向き突起部
20b 係止溝
3 印判本体
3a 縦隆条
30 多孔性印材
31 受金
32 インキ吸蔵体
33 環状隆起
4 ロック機構
5 スライドカバユニット
6 復帰ばね
7 シャッタ機構
7a 表示部
7b 係止片
7c 連繋片
7d シャッタ羽根
8 シャッタホルダ
8a 筒部
8b 弧状短片部
8c 切欠
8d 係止凹部
9 スライド
9a 内鍔
9b 弧状切欠
9c 小切欠
9d 横溝
9e 膨出部
10 コネクタ
10a 大径短筒部
10b 小径筒部
10c 縦スリット
10d 内鍔
10e 切欠
10f 横隆起
10g 係止突起
11 表示機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
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図19
図20
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図22
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図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
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