特許第5845996号(P5845996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845996
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20151224BHJP
   B65H 5/38 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   G07D9/00 416C
   B65H5/38
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-69686(P2012-69686)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-200790(P2013-200790A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】若林 円
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−250572(JP,A)
【文献】 特開2009−057144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
B65H 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉状の媒体を双方向に搬送する搬送路の一方側において当該媒体の一面側を構成する第1搬送ガイドと、
上記第1搬送ガイドにおける上記搬送路の他方側の先端に設けられ、上記媒体の搬送方向に沿って伸びる爪状の突起が上記一面における上記媒体の搬送方向と交差する交差方向に沿って離散的に配置された第1爪状部と、
上記搬送路の他方側において上記媒体の上記一面側を構成する第2搬送ガイドと、
上記第2搬送ガイドにおける一方側の先端に設けられ、上記媒体の搬送方向に沿って伸びる爪状の突起が上記交差方向に沿って離散的に配置され、上記第1爪状部と歯合する第2爪状部と、
上記第1搬送ガイドにおける一方側の先端であって、上記第1爪状部における上記媒体の搬送路と反対側に、当該第1爪状部及び上記第2爪状部が歯合した場合に、当該第2爪状部との間に隙間を空けながら当該第2爪状部と重なる位置に設けられた第1鍔状部と
を具えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
上記第1鍔状部は、
上記搬送路の搬送方向に関し、当該第1鍔状部の少なくとも一部が、上記第1爪状部の少なくとも一部と重なるよう配置された
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
上記第2搬送ガイドにおける他方側の先端であって、上記第2爪状部における上記媒体の搬送路と反対側に、当該第2爪状部に近接して設けられた第2鍔状部
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
上記第1鍔状部及び上記第2鍔状部は、
上記第1爪状部と上記第2爪状部とが互いに歯合する場合に、一方の上記搬送ガイドにおける上記鍔状部と上記爪状部との間に他方の上記搬送ガイドにおける上記鍔状部が入り込み、上記第1搬送ガイド及び上記第2搬送ガイドの相対的な移動又は回転を規制するよう互いに係合する
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
上記第2搬送ガイドにおける他方側の先端であって、上記第2爪状部における上記媒体の搬送路と反対側に設けられ、中心軸を交差方向に沿わせた柱状でなる第2鍔状部
をさらに具え、
上記第1鍔状部は、上記第1爪状部に近接する方向へ隆起したロック爪を有し、上記第1爪状部と上記第2爪状部とが互いに歯合する際に、当該ロック爪を上記第2鍔状部に係合させる
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
上記第1搬送ガイド及び上記第2搬送ガイドは、
少なくとも一方が移動又は回動することにより、上記第1鍔状部を上記第2爪状部と干渉させることなく、上記第1爪状部と上記第2爪状部とを互いに歯合させ、又は上記第1爪状部と上記第2爪状部との歯合を解除させる
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
上記第1鍔状部は、
上記第1爪状部と上記第2爪状部とが互いに歯合する際に、上記第2搬送ガイドに設けられた被係合部に対し、上記第1搬送ガイド及び上記第2搬送ガイドの相対的な移動又は回転を規制するよう係合する
ことを特徴とする請求項6に記載の媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置に関し、例えば紙幣等の媒体を投入して所望の取引を行う現金自動預払機(ATM)等に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するようになされている。
【0003】
現金自動預払機としては、例えば顧客との間で紙幣の授受を行う紙幣入出金口と、投入された紙幣の金種及び真偽を鑑別する鑑別部と、投入された紙幣を一時的に保留する一時保留部と、金種ごとに紙幣を格納する紙幣カセットとを有し、搬送路を介して紙幣を搬送するものが提案されている。
【0004】
この現金自動預払機は、入金取引において、顧客が紙幣入出金口に紙幣を投入すると、投入された紙幣を搬送路により搬送して鑑別部で鑑別し、正常紙幣と鑑別された紙幣を一時保留部で保留する一方、取引すべきでないと鑑別された紙幣を紙幣入出金口へ戻して顧客に返却する。続いて現金自動預払機は、顧客により入金金額が確定されると、一時保留部に保留した紙幣を鑑別部により金種を再鑑別し、鑑別された金種に応じて各紙幣カセットへ収納する。
【0005】
ところで現金自動預払機では、保守作業の効率化等の観点から、一時保留部や紙幣カセット等の各部分がモジュール化されており、他の部分との分離・連結や開閉等を容易に行い得るようになされている。
【0006】
ここで現金自動預払機の各部分は、隣接する他の部分との間で搬送路が形成されている場合、この搬送路を一時的に切断し、再度結合させる必要がある。そこで現金自動預払機の各部分は、搬送路に沿って紙幣を案内する紙幣ガイドをそれぞれに設け、紙幣を受け渡す箇所(以下これを受渡部と呼ぶ)において、互いの紙幣ガイド同士を分離し、又は連結させるようになされている。
【0007】
特にこの搬送路において紙幣を双方向に搬送させる場合には、受渡部において、いずれの方向へも円滑に進行させる必要がある。
【0008】
そこで現金自動預払機のなかには、受渡部において、互いの紙幣ガイドにおける先端部分に搬送方向に沿って延びる爪状部を紙幣の幅方向に複数並べるよう配置し、連結させたときには互いを噛み合わせるようになされたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−250572公報(第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、かかる構成の現金自動預払機では、紙幣ガイドの先端部分に設けた爪状部を、搬送方向と直交する幅方向に細く又は薄く構成してその数を増加させることにより、紙幣をより円滑に搬送することができる。
【0011】
しかしながら、爪状部を幅方向に細く又は薄く構成した場合、その強度が必然的に弱くなってしまうため、保守作業時における取扱いの不注意等により容易に破損してしまう、という問題があった。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、円滑な受け渡しと破損の防止とを両立させ得る媒体処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため本発明の媒体処理装置においては、紙葉状の媒体を双方向に搬送する搬送路の一方側において当該媒体の一面側を構成する第1搬送ガイドと、第1搬送ガイドにおける搬送路の他方側の先端に設けられ、媒体の搬送方向に沿って伸びる爪状の突起が一面における媒体の搬送方向と交差する交差方向に沿って離散的に配置された第1爪状部と、搬送路の他方側において媒体の一面側を構成する第2搬送ガイドと、第2搬送ガイドにおける一方側の先端に設けられ、媒体の搬送方向に沿って伸びる爪状の突起が交差方向に沿って離散的に配置され、第1爪状部と歯合する第2爪状部と、第1搬送ガイドにおける一方側の先端であって、第1爪状部における媒体の搬送路と反対側に、当該第1爪状部及び第2爪状部が歯合した場合に、当該第2爪状部との間に隙間を空けながら当該第2爪状部と重なる位置に設けられた第1鍔状部を設けるようにした。
【0014】
本発明は、第1搬送ガイドと第2搬送ガイドとを分離したときには第1鍔状部により第1爪状部を保護でき、第1爪状部及び第2爪状部を歯合させて第1搬送ガイド及び第2搬送ガイドを連結したときには搬送路を形成して媒体を円滑に搬送させることができる。さらに本発明は、第1爪状部及び第2爪状部を歯合させたときに第2爪状部と第1鍔状部との間に隙間を空けるため、第1搬送ガイドと第2搬送ガイドとの相対位置が搬送路と離接する離接方向にずれを有していたとしても、第1鍔状部及び第2爪状部の当接による破損を回避できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、円滑な受け渡しと破損の防止とを両立させ得る媒体処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】現金自動預払機の構成を示す略線的斜視図である。
図2】紙幣入出金機の構成を示す略線図である。
図3】入出金部及び一時保留部の開放を示す略線図である。
図4】下部ユニットのスライドを示す略線図である。
図5】搬送M部の開放を示す略線図である。
図6】受渡部の構成を示す略線図である。
図7】第1の実施の形態による搬送M側前ガイドの構成を示す略線的斜視図である。
図8】第1の実施の形態による紙幣カセット側前ガイドの構成を示す略線的斜視図である。
図9】第1の実施の形態における爪状部の歯合(1)を示す略線的斜視図である。
図10】第1の実施の形態における爪状部の歯合(2)を示す略線図である。
図11】第2の実施の形態による搬送M側前ガイドの構成を示す略線的斜視図である。
図12】第2の実施の形態における爪状部の歯合(1)を示す略線的斜視図である。
図13】第2の実施の形態における爪状部の歯合(2)を示す略線図である。
図14】第3の実施の形態による受渡部の構成を示す略線図である。
図15】第3の実施の形態における爪状部の歯合を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0018】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになされている。
【0019】
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣BLの投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所、すなわち前面の上部から上面に渡る部分が斜めに切り落とされたような形状となっており、この部分に接客部3が設けられている。
【0020】
接客部3は、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
【0021】
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
【0022】
入出金口5は、顧客が入金する紙幣BLが投入されると共に、顧客へ出金する紙幣BLが排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになされている。因みに紙幣BLは、例えば長方形の紙で構成されている。
【0023】
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。
【0024】
テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられるようになされている。
【0025】
レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
【0026】
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0027】
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣BLに関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。
【0028】
主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等の種々の処理を行うようになされている。
【0029】
また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部9Aを有しており、この記憶部9Aに種々の情報を記憶させるようになされている。
【0030】
因みに筐体2は、前面側やその後面側等の一部の側面が開閉可能な扉により構成されている。すなわち筐体2は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、図1に示したように各扉を閉塞することにより、紙幣入出金機10内に収納している紙幣BLを保護する。一方筐体2は、作業者等が保守作業を行う保守作業時には、必要に応じて各扉を開放することにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせ得るようになされている。
【0031】
紙幣入出金機10は、図2に側面図を示すように、紙幣入出金機筐体12の内部に、長方形の紙葉状でなる紙幣BLに関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。また紙幣入出金機10の各部分は、紙幣制御部11により制御されるようになされている。
【0032】
紙幣制御部11(図1)は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣BLの搬送先を決定する処理等、種々の処理を行うようになされている。
【0033】
紙幣制御部11は、例えば顧客が紙幣BLを入金する入金取引を行う場合、操作表示部6を介して所定の操作入力を受け付けた後、入出金口5のシャッタを開いて入出金部13内へ紙幣BLを投入させる。
【0034】
入出金部13は、図示しない収容器に紙幣BLが投入されると、入出金口5(図1)のシャッタを閉じて当該収容器から紙幣BLを1枚ずつ取り出し、搬送F部14へ受け渡す。搬送F部14は、紙幣BLを短辺方向に沿って進行させ、認識部15へ搬送する。
【0035】
認識部15は、その内部で紙幣BLを搬送しながら、光学素子や磁気検出素子等を用いて当該紙幣BLの金種及び真偽、並びに損傷の程度等を認識し、その鑑別結果を紙幣制御部11へ通知する。これに応じて紙幣制御部11は、取得した鑑別結果に基づいて当該紙幣BLの搬送先を決定する。
【0036】
このとき搬送R部16は、認識部15において正常紙幣と鑑別された紙幣BLを一時保留部17へ搬送する等して一時的に保留させる一方、取引すべきでないと鑑別されたリジェクト紙幣を入出金部13へ搬送して顧客に返却する。
【0037】
その後紙幣制御部11は、操作表示部6(図1)を介して顧客に入金金額を確定させ、一時保留部17に保留している紙幣BLを搬送R部16により認識部15へ搬送してその金種及び損傷の程度等を認識させ、その鑑別結果を取得する。
【0038】
そして紙幣制御部11は、紙幣BLの損傷の程度が小さければ、これを再利用すべき紙幣BLとして搬送F部14及び搬送M部18により搬送させてその金種に応じた紙幣カセット19に収納させる。因みに紙幣入出金機10には、4個の紙幣カセット19A、19B、19C及び19D(以下これらをまとめて紙幣カセット19と呼ぶ)が前後方向に整列されている。
【0039】
また紙幣制御部11は、紙幣BLの損傷の程度が大きければ、これを再利用すべきでない紙幣BLとして搬送F部14、搬送M部18及び搬送R部16によりリジェクトカセット20へ搬送して収納させるようになされている。
【0040】
また紙幣制御部11は、例えば顧客が紙幣BLを出金する出金取引を行う場合、操作表示部6(図1)を介して所定の操作入力を受け付けた後、出金すべき金額に応じた紙幣BLを紙幣カセット19から繰り出させ、搬送M部18及び搬送F部14を介して認識部15へ搬送させる。
【0041】
続いて紙幣制御部12は、この紙幣BLを認識部15により認識させた上で入出金部13へ搬送し、入出金口5(図1)のシャッタを開いて紙幣BLを顧客に取り出させる。
【0042】
ところで紙幣入出金機10は、内部の保守作業等の効率を高めるべく、図2に示したように各部分が互いに連結された運用可能な状態から、各部分を一時的に切り離して移動や回転等させ得るようになされている。
【0043】
具体的に紙幣入出金機10では、例えば図3に示すように、入出金部13の前下端を回動中心として、紙幣入出金機筐体12に対し入出金部13全体を前方へ持ち上げるように回動させることができる。また紙幣入出金機10では、一時保留部17の前上端を回動中心として、紙幣入出金機筐体12に対し一時保留部17全体を上方へ持ち上げるように回動させることもできる。
【0044】
さらに紙幣入出金機10では、下側の搬送M部18及び紙幣カセット19をまとめて下部ユニット21としており、図4に示すように、紙幣入出金機筐体12に対し下部ユニット21前方へ引き出すように移動させることができる。
【0045】
この下部ユニット21は、下部ユニット筐体22内に4個の紙幣カセット19が装着されており、その上部に搬送M部18が取り付けられている。
【0046】
搬送M部18は、図5(A)及び(B)に示すように、右下端の回動部18Xを介して下部ユニット筐体22に取り付けられており、当該回動部18Xを回動中心として下部ユニット筐体22に対し右上方へ持ち上げるよう回動するようになされている。
【0047】
以下では、搬送M部18を下部ユニット筐体22に連結させること(図4等)を閉塞と呼び、当該搬送M部18を右上方へ持ち上げること(図5)を開放と呼ぶ。
【0048】
因みに下部ユニット21では、下部ユニット筐体22に対し紙幣カセット19を着脱し得るようになされている。具体的に下部ユニット21では、搬送M部18を開放した状態(図5)において、紙幣カセット19を上方へ持ち上げれば下部ユニット筐体22から取り外すことができ、また下部ユニット筐体22と位置を合わせて紙幣カセット19を下方へ降ろせば装着することができる。
【0049】
[1−2.受渡部の構成]
ところで紙幣入出金機10の下部ユニット21では、搬送M部18と紙幣カセット19との間に形成される受渡部25(図4)において、紙幣BLを双方向へ搬送すると共に、搬送M部18の閉塞又は開放に伴ってその搬送経路を連結又は分離することになる。
【0050】
受渡部25は、図6に模式的に示すように、搬送M部18側の搬送M側受渡部30と、紙幣カセット19側の紙幣カセット側受渡部40とにより構成されている。
【0051】
因みに搬送M側受渡部30及び紙幣カセット側受渡部40は、搬送M部18及び紙幣カセット19の間で紙幣を受け渡すという目的のため、図5に示したように、搬送M部18及び紙幣カセット19の各本体部分からそれぞれ相手側へ突出するように構成されている。
【0052】
搬送M側受渡部30には、紙幣BLが搬送される搬送路Cの前後をそれぞれ覆うように、搬送M側前ガイド31及び搬送M側後ガイド32が配置されている。換言すれば、搬送M側受渡部30では、搬送M側前ガイド31及び搬送M側後ガイド32の間に形成された隙間が搬送路Cとなっている。
【0053】
搬送M側前ガイド31及び搬送M側後ガイド32は、互いの間に形成された搬送路Cに沿って紙幣BLを上方向又は下方向へ案内するようになされている。
【0054】
また搬送M側受渡部30には、搬送路Cを前後から挟むように駆動ローラ33及び従動ローラ34が配置されている。因みに駆動ローラ33及び従動ローラ34は、搬送M側前ガイド31及び搬送M側後ガイド32にそれぞれ形成された所定形状の孔部からその一部を搬送路C側へ突出させている。
【0055】
駆動ローラ33は、図示しないモータから駆動力が伝達されることにより、双方向に回転し得るようになされている。従動ローラ34は、自在に回転し得るようになされると共に、図示しないスプリングにより駆動ローラ33に押し付けられている。
【0056】
一方、紙幣カセット側受渡部40は、おおむね搬送M側受渡部30と上下対称に構成されている。
【0057】
すなわち紙幣カセット側受渡部40には、搬送路Cの前後をそれぞれ覆うように紙幣カセット側前ガイド41及び紙幣カセット側後ガイド42が配置され、搬送路Cを前後から挟むように駆動ローラ43及び従動ローラ44が配置されている。
【0058】
かかる構成により受渡部25は、駆動ローラ33及び従動ローラ34の間又は駆動ローラ43及び従動ローラ44の間に紙幣BLを挟んだ状態で駆動ローラ33又は43が回転されると、その駆動力を当該紙幣BLに伝達することにより搬送路Cに沿って上方向又は下方向へ進行させる。
【0059】
このとき搬送M側前ガイド31及び紙幣カセット側前ガイド41並びに搬送M側後ガイド32及び紙幣カセット側後ガイド42は、それぞれ紙幣BLを搬送路Cに沿って進行させるよう案内することになる。
【0060】
ところで搬送M側受渡部30の搬送M側前ガイド31は、図7に示すように、板状に形成された本体部31Aの下辺である先端部31Bから、下方へ向けて複数の爪状部31Cが突出するように立設されている。
【0061】
爪状部31Cは、上下に比較的長く、前後に比較的短く、且つ左右方向に薄い、いわば薄板状の突起として構成されており、さらに搬送方向と直交する左右方向に沿って、所定間隔ごとに複数配置されている。
【0062】
また爪状部31Cの後下端部、すなわち搬送路C側の最下端部は、左右方向から見て長方形における後下側の頂点近傍が切り落とされたような、いわば面取りされたような形状となっている。
【0063】
搬送M側後ガイド32は、搬送M側前ガイド31とほぼ前後対称に構成されており、その下端部分に爪状部31Cと同様の爪状部32C(図示せず)が形成されている。
【0064】
一方、紙幣カセット側受渡部40の紙幣カセット側前ガイド41は、図7と対応する図8に示すように、本体部31A及び先端部31Bをそれぞれ上下対称に構成したような本体部41A及び先端部41Bと、複数の爪状部31Cをそれぞれ上下対称に構成し、且つ左右方向の位置を半周期分ずらしたような複数の爪状部41Cを有している。
【0065】
さらに紙幣カセット側前ガイド41は、爪状部41Cの前側、すなわち搬送路Cと反対側に、鍔状部41Dが形成されている。
【0066】
鍔状部41Dは、先端部41Bの前側端部から上方へ向けて一様に延設されたような形状、すなわち上下方向に比較的短く、左右方向に長い板状となっており、その後面側において各爪状部41Cの前面と接合されている。
【0067】
因みに鍔状部41Dにおける前後方向の厚さは、爪状部41Cにおける左右方向の厚さよりも十分に大きく、これによりある程度の強度を確保できるようになされている。
【0068】
鍔状部41Dの上端は、上下方向に関し、爪状部41Cの下端と上端との間に位置している。すなわち爪状部41Cは、前側から見て、その全てではなく下端(先端部41B側)からある程度の範囲が鍔状部41Dにより覆われるものの、その上端近傍を鍔状部41Dの上端よりも上方へ突出させるよう、いわば上方へはみ出すように配置されている。
【0069】
紙幣カセット側後ガイド42は、紙幣カセット側前ガイド41とほぼ前後対称に形成されており、その上端部分に爪状部41Cと同様の爪状部42C(図示せず)が複数立設され、当該爪状部42Cの後側に鍔状部41Dと同様の鍔状部42D(図示せず)が形成されている。
【0070】
このように受渡部25は、紙幣カセット側前ガイド41及び紙幣カセット側後ガイド42において、爪状部41C及び42Cの外側、すなわち搬送路Cと反対側に、鍔状部41D及び42Dがそれぞれ形成されている。
【0071】
[1−3.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による受渡部25は、搬送M部18側の搬送M側前ガイド31に爪状部31Cを設け、紙幣カセット19側の紙幣カセット側前ガイド41に爪状部41C及び鍔状部41Dを設けた。
【0072】
受渡部25は、搬送M部18が閉塞されると、搬送M部18の搬送M側受渡部30と紙幣カセット19の紙幣カセット側受渡部40とを上下方向に近接させる。
【0073】
このとき受渡部25では、図9及び図10に示すように、搬送M側前ガイド31の爪状部31Cと紙幣カセット側前ガイド41の爪状部41Cとを、左右方向に交互に位置させるように噛み合わせて互いに歯合させる。また受渡部25は、搬送M側後ガイド32の爪状部32Cと紙幣カセット側後ガイド42の爪状部42Cとについても、同様に歯合させる。
【0074】
これにより受渡部25は、前側については連結された搬送M側前ガイド31及び紙幣カセット側前ガイド41により滑らかな後面を形成し、後側については連結された搬送M側後ガイド32及び紙幣カセット側後ガイド42により滑らかな前面を形成するため、両者の間に1本の滑らかな搬送路Cを形成する。
【0075】
このとき鍔状部41Dは、爪状部41Cの前側、すなわち爪状部41Cを挟んで搬送路Cの反対側に位置しているため、爪状部31C等の搬送M側前ガイド31側の部品と干渉することなく、また搬送路C側に影響を与えることもない。
【0076】
すなわち受渡部25は、従来の現金自動預払機における受渡部と同様、爪状部同士を歯合させることにより、滑らかな搬送路Cを形成することができる。
【0077】
一方受渡部25は、搬送M部18が開放されると、搬送M部18と紙幣カセット19との間で搬送路Cを分離し、図5に示したように、搬送M側前ガイド31の爪状部31Cと紙幣カセット側前ガイド41の爪状部41Cとを引き離す。
【0078】
搬送M側受渡部30及び紙幣カセット側受渡部40は、図5に示したように、搬送M部18及び紙幣カセット19の各本体部分からそれぞれ相手側へ向けて伸びている。このためそれぞれの先端である搬送M側前ガイド31の爪状部31C及び紙幣カセット側前ガイド41の爪状部41Cは、特にその周囲から突出することになる。
【0079】
この点において受渡部25は、爪状部41Cの前側に鍔状部41Dを形成しているため、前方から異物が衝突したとしても、当該鍔状部41Dにより爪状部41Cを保護し、破損を防止することができる。
【0080】
また受渡部25では、爪状部41C及び31Cの枚数を増加させれば紙幣をより円滑に受け渡すことが可能となるが、その反面、爪状部41C及び31Cにおける左右方向の厚さがどうしても薄くなってしまう。
【0081】
これに対し鍔状部41Dは、厚さの制約が無いことから、十分に厚く構成することにより十分な強度を得ることができる。
【0082】
さらに爪状部41Cは、その前端部分において鍔状部41Dと接合されているため、従来の爪状部と比較して強度を高めることができ、異物等の衝突時における破損の危険性を低下させることができる。
【0083】
このため受渡部25は、例えば保守作業時に保守作業員の不注意や事故等により他の部品や工具等を紙幣カセット側前ガイド41に当接させ、或いは搬送M部18の閉塞時に紙幣カセット19との間に工具等を挟み込んだような場合にも、鍔状部41Dにより爪状部41Cを保護することができ、実際に破損する可能性を格段に低減できる。
【0084】
さらに受渡部25では、搬送M部18が開放され始めたとき又は閉塞し終えるときのように当該搬送M部18と紙幣カセット19との距離が比較的短い場合、紙幣カセット側受渡部40に対する搬送M側受渡部30の移動方向を、ほぼ上下方向、すなわちほぼ搬送路Cの搬送方向と見なし得る。
【0085】
このとき受渡部25では、搬送M側前ガイド31の爪状部31Cを鍔状部41Dの後側でほぼ上下方向に移動させることになる。
【0086】
このため受渡部25では、搬送M側前ガイド31の爪状部31Cと紙幣カセット側前ガイド41の爪状部41Cとを噛み合わせたときのみならず、搬送M部18が開放又は閉塞により回動される際にも、搬送M側前ガイド31の各部分と鍔状部41Dと干渉させることがない。
【0087】
これと同様に紙幣カセット側後ガイド42の爪状部42Cは、後側に鍔状部42Dが形成されているため、後方から異物が衝突したとしても当該鍔状部42Dにより保護され、破損を防止することができる。
【0088】
ところで爪状部41Cは、搬送路C側である後方について、紙幣の搬送を確保する目的から鍔状部を形成することができず、後方からの異物等の衝突に対し保護が不十分となってしまう。また爪状部42Cも、同様に搬送路C側である前方の保護が不十分となってしまう。
【0089】
しかしながら紙幣カセット側受渡部40では、紙幣カセット側前ガイド41と紙幣カセット側後ガイド42とが搬送路Cを挟んで対向しているため、爪状部41C、搬送路C及び爪状部42Cを一括りとして見たときに、前後に鍔状部41D及び42Dをそれぞれ配置することになるため、爪状部41C及び42Cを前後両方向から包括的に保護することができる。
【0090】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による受渡部25は、搬送M側前ガイド31に爪状部31Cを設け、紙幣カセット側前ガイド41に爪状部41C及び鍔状部41Dを設けた。このため受渡部25は、搬送M部18の開放時に周囲から突出する爪状部41Cを鍔状部41Dにより前側から保護することができる。また受渡部25は、搬送M部18の閉塞時には、鍔状部41Dを何ら干渉させることなく、紙幣カセット側前ガイド41の爪状部41Cと搬送M側前ガイド31の爪状部31Cとを互いに歯合させて一連の滑らかな搬送路Cを形成することができ、この搬送路Cに沿って紙幣を円滑に搬送することができる。
【0091】
[2.第2の実施の形態]
[2−1.受渡部の構成]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態における受渡部25に代えて、受渡部125が設けられている。受渡部125は、受渡部25と比較して、搬送M側受渡部30に代わる搬送M側受渡部130を有する点が相違するものの、紙幣カセット側受渡部40等の他の部分については同様に構成されている。
【0092】
すなわち紙幣カセット側前ガイド41及び紙幣カセット側後ガイド42には、爪状部41Cの前側及び爪状部42Cの後側に鍔状部41D及び42Dがそれぞれ設けられている。
【0093】
搬送M側受渡部130は、第1の実施の形態による搬送M側受渡部30と比較して、搬送M側前ガイド131及び搬送M側後ガイド132を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0094】
搬送M側前ガイド131は、図7と対応する図11に示すように、本体部31A、先端部31B及び爪状部31Cとそれぞれ対応する本体部131A、先端部131B及び爪状部131Cを有し、さらに鍔状部131Dを有している。
【0095】
本体部131Aは、第1の実施の形態による本体部31Aと同様の形状に構成されている。先端部131Bは、第1の実施の形態による先端部31Bと比較して、前方向へ延長されている。
【0096】
因みに先端部131Bにおける延長分は、紙幣カセット側前ガイド41における鍔状部41Dの前後方向の厚さよりも長くなっている。
【0097】
爪状部131Cは、全体的に爪状部31Cと類似した形状に構成され、先端部131Bから下方へ向けて突出するように設けられている。さらに爪状部131Cは、上側の一部分、いわば先端部131Bに対する「付け根」の一部分が当該先端部131Bの延長分に合わせて前方向へ延長されることにより、延長部131CXが延設されている。
【0098】
第2鍔状部としての鍔状部131Dは、第1の実施の形態における紙幣カセット側前ガイド141の鍔状部41Dと同様の左右方向に長い薄板状に形成されており、先端部131Bの前端から下方向へ向けて延設されている。
【0099】
鍔状部131Dの後面側は、上部においてのみ爪状部131Cにおける延長部131CXの前面と接合されており、他の部分については隙間が設けられている。
【0100】
鍔状部131Dの下端は、上下方向に関し、爪状部131Cの下端と上端との間に位置している。すなわち爪状部131Cは、前側から見て、その全てではなく上端(先端部131B側)からある程度の範囲が鍔状部131Dにより覆われるものの、その下端近傍を鍔状部131Dの下端よりも下方へ突出しており、いわば下方へはみ出している。
【0101】
搬送M側後ガイド132は、搬送M側前ガイド131とほぼ前後対称に形成されており、その下辺に爪状部131Cと同様の爪状部132C(図示せず)が複数立設され、当該爪状部132Cの後側に鍔状部131Dと同様の鍔状部132D(図示せず)が形成されている。
【0102】
このように受渡部125は、紙幣カセット側前ガイド41及び紙幣カセット側後ガイド42に加えて、搬送M側前ガイド131及び搬送M側後ガイド132においても、爪状部131C及び132Cの外側、すなわち搬送路Cと反対側に鍔状部131D及び132Dがそれぞれ形成されている。
【0103】
[2−2.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態による受渡部125は、第1の実施の形態と同様に紙幣カセット側前ガイド41に爪状部41C及び鍔状部41Dを設けた。これに加えて受渡部125は、搬送M側前ガイド131に爪状部131C及び鍔状部131Dを設けた。
【0104】
受渡部125は、搬送M部18が閉塞されると、搬送M側受渡部130と紙幣カセット側受渡部40とを上下方向に近接させる。
【0105】
このとき受渡部125では、図9及び図10と対応する図12及び図13に示すように、搬送M側前ガイド131の爪状部131Cと紙幣カセット側前ガイド41の爪状部41Cとを、左右方向に交互に位置させるように噛み合わせて互いに歯合させる。また受渡部125は、搬送M側後ガイド132の爪状部132Cと紙幣カセット側後ガイド42の爪状部42Cとについても、同様に歯合させる。
【0106】
これにより受渡部125は、第1の実施の形態と同様、連結された搬送M側前ガイド131及び紙幣カセット側前ガイド41と、連結された前側ガイド132及び前側ガイド42との間に、1本の滑らかな搬送路Cを形成する。
【0107】
このとき鍔状部131Dは、爪状部131Cの前側であって、且つ鍔状部41Dの前側に、すなわち前方向から見て当該鍔状部41Dと一部分を重ねるように、爪状部131Cを挟んで搬送路Cの反対側に位置している。
【0108】
このため鍔状部131Dは、爪状部41Cや鍔状部41D等の搬送M側前ガイド41側の部品と干渉することなく、また搬送路C側に影響を与えることもない。
【0109】
すなわち受渡部125は、従来の現金自動預払機における受渡部と同様、爪状部同士を歯合させることにより、滑らかな搬送路Cを形成することができる。
【0110】
一方受渡部125は、搬送M部18が開放されると、搬送M部18と紙幣カセット19との間で搬送路Cを分離し、図5に示した場合と同様に、搬送M側前ガイド131の爪状部131Cと紙幣カセット側前ガイド41の爪状部41Cとを引き離す。
【0111】
このとき受渡部125は、爪状部41Cについて、第1の実施の形態と同様、前側に鍔状部41Dを形成しているため、前方から異物が衝突したとしても、当該鍔状部41Dにより保護し、破損を防止することができる。
【0112】
また受渡部125は、爪状部131Cについても、前側に鍔状部131Dを形成しているため、前方から異物が衝突したとしても、当該鍔状部131Dにより保護し、破損を防止することができる。
【0113】
特に下部ユニット21では、紙幣カセット19に紙幣が装填される場合、図4に示したように紙幣入出金機筐体12から引き出され、且つ図5に示したように搬送M部18が開放された状態で、当該紙幣カセット19が上方向に引き抜かれ、また下方向へ挿入される。このとき搬送M側受渡部130の搬送M側前ガイド131及び搬送M側後ガイド132は、搬送M部18の開き角度によっては、紙幣カセット19と衝突する恐れがある。
【0114】
この点についても受渡部125では、鍔状部131D及び132Dにより爪状部131C及び132Cを保護することができるので、これらの破損を防止することができる。
【0115】
さらに受渡部125では、搬送M部18と紙幣カセット19との距離が比較的短い場合、第1の実施の形態と同様、紙幣カセット側受渡部40に対する搬送M側受渡部130の移動方向を、ほぼ上下方向、すなわちほぼ搬送路Cの搬送方向と見なし得る。
【0116】
このとき受渡部125では、搬送M側前ガイド31の爪状部31Cを鍔状部41Dの後側で、また鍔状部131Dを鍔状部41Dの前側で、それぞれほぼ上下方向に移動させることになる。
【0117】
このため受渡部125では、搬送M側前ガイド131の爪状部131Cと紙幣カセット側前ガイド41の爪状部41Cとを噛み合わせたときのみならず、搬送M部18が開放又は閉塞により回動される際にも、搬送M側前ガイド131の各部分と鍔状部41Dと干渉させることがない。
【0118】
これと同様に搬送M側後ガイド132の爪状部132Cは、後側に鍔状部132Dが形成されているため、後方から異物が衝突したとしても、当該鍔状部132Dにより保護され、破損を防止することができる。
【0119】
その他の点についても、第2の実施の形態による受渡部125は、第1の実施の形態による受渡部25と同様の作用効果を奏し得る。
【0120】
以上の構成によれば、第2の実施の形態による受渡部125は、搬送M側前ガイド131に爪状部131C及び鍔状部131Dを設け、紙幣カセット側前ガイド41に爪状部41C及び鍔状部41Dを設けた。このため受渡部125は、搬送M部18の開放時に周囲から突出する爪状部41Cを鍔状部41Dにより前側から保護すると共に爪状部131Cを鍔状部131Dにより前側から保護することができる。また受渡部125は、搬送M部118の閉塞時には、鍔状部41D及び131Dを何ら干渉させることなく、紙幣カセット側前ガイド41の爪状部41Cと搬送M側前ガイド131の爪状部131Cとを互いに歯合させて一連の滑らかな搬送路Cを形成することができ、この搬送路Cに沿って紙幣を円滑に搬送することができる。
【0121】
[3.第3の実施の形態]
[3−1.受渡部の構成]
第3の実施の形態では、第1の実施の形態による受渡部25に代えて、受渡部225が設けられている。受渡部225は、受渡部25と比較して、搬送M側受渡部30及び紙幣カセット側受渡部40に代わる搬送M側受渡部230及び紙幣カセット側受渡部240を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0122】
搬送M側受渡部230は、第1の実施の形態による搬送M側受渡部30と比較して、搬送M側前ガイド231及び搬送M側後ガイド232を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0123】
搬送M側前ガイド231は、図14に示すように、本体部31A、先端部31B及び爪状部31Cとそれぞれ対応する本体部231A、先端部231B及び爪状部231Cを有し、さらにロック体231Dを有している。
【0124】
本体部231Aは、第1の実施の形態における本体部31Aと同様、全体的に板状に形成されており、前側の一部分にロック体231Dを支持する支持部231AYが形成されている。
【0125】
本体部231Aの下辺である先端部231Bには、下方へ向けて爪状部31Cと同様の形状でなる複数の爪状部231Cが突出するように立設されている。
【0126】
係合部としてのロック体231Dは、全体として左右方向に長く上下方向に短い板状に形成されており、下端部分の後面側には、左右方向から見て下側が細い楔形のロック爪231DXが後方へ隆起するように設けられている。
【0127】
またロック体231Dは、後面上寄りに設けられた軸受部231DYに回動軸231Eが挿通されることにより、当該回動軸231Eを中心に解除方向S1又は係合方向S2へ回動し得るようになされている。
【0128】
因みにロック体231Dは、図示しないスプリングにより係合方向S2へ付勢されると共に、本体部231Aの支持部231AYにより、係合方向S2への回動範囲をロック体231Dの上面を搬送路Cとほぼ平行となる状態(図14(B))までに規制されている。
【0129】
搬送M側後ガイド232は、搬送M側前ガイド231とほぼ前後対称に形成されており、その下辺に爪状部231Cと同様の爪状部232C(図示せず)が複数立設され、当該爪状部232Cの後側にロック体231Dと同様のロック体232D(図示せず)が形成されている。
【0130】
一方、紙幣カセット側受渡部240は、第1の実施の形態による紙幣カセット側受渡部40と比較して、紙幣カセット側前ガイド41に代わる紙幣カセット側前ガイド241及び紙幣カセット側後ガイド242を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0131】
紙幣カセット側前ガイド241は、本体部41A、先端部41B、爪状部41C及び鍔状部41Dとそれぞれ対応する本体部241A、先端部241B、爪状部241C及びロックシャフト241Dを有している。
【0132】
本体部241Aは、第1の実施の形態における本体部41Aと同様、全体的に板状に形成されている。また本体部241Aの上辺である先端部241Bには、上方へ向けて爪状部41Cと同様の形状でなる複数の爪状部241Cが突出するように立設されている。
【0133】
本体部241Aの左右側面における上端近傍には、左右に薄い正方形板状でなる支持部241Eがそれぞれ取り付けられている。左右の支持部241Eの間には、左右方向に細長い円柱状のロックシャフト241Dが爪状部241Cの前側を左右に渡されるよう支持されている。
【0134】
被係合部としてのロックシャフト241Dは、上下方向に関しては爪状部241Cの下端(すなわち先端部241Bに対する取付部分)と上端との間となり、前後方向に関しては爪状部241Cの前面からある程度の隙間を空けるような位置となるよう、支持部241Eにより支持されている。
【0135】
紙幣カセット側後ガイド242は、紙幣カセット側前ガイド241とほぼ前後対称に形成されており、その上辺に爪状部241Cと同様の爪状部242C(図示せず)が複数立設され、当該爪状部242Cの後側にロックシャフト241Dと同様のロックシャフト242D(図示せず)が形成されている。
【0136】
このように受渡部225は、搬送M側前ガイド231及び搬送M側後ガイド232に回動可能なロック体231D及び232Dがそれぞれ設けられると共に、紙幣カセット側前ガイド241及び紙幣カセット側後ガイド242に円柱状のロックシャフト241D及び242Dがそれぞれ設けられている。
【0137】
[3−2.動作及び効果]
以上の構成において、第3の実施の形態による受渡部225は、搬送M側前ガイド231における爪状部231Cの前側に、下端にロック爪231DXを有するロック体231Dを設け、回動軸231Eを中心にロック体231を解除方向S1又は係合方向S2へ回動し得るようにした。
【0138】
また受渡部225は、紙幣カセット側前ガイド241における爪状部241Cの前側に、支持部241Eを介して円柱状のロックシャフト241Dを設けた。
【0139】
受渡部225は、搬送M部18が閉塞されると、図15に示すように、搬送M側前ガイド231の爪状部231Cと紙幣カセット側前ガイド241の爪状部241Cとを、左右方向に交互に位置させるように噛み合わせて互いに歯合させる。
【0140】
これにより受渡部225は、第1の実施の形態と同様、連結された搬送M側前ガイド231及び紙幣カセット側前ガイド241の後側に、1本の滑らかな搬送路Cを形成する。
【0141】
また受渡部225は、このときロック体231Dのロック爪231DXをロックシャフト241Dに係合させ、ロック体231に作用する付勢力によりその係合状態を維持する。
【0142】
このため受渡部225は、搬送M側前ガイド231と紙幣カセット側前ガイド241とが歯合された状態、すなわち搬送路Cの状態を維持することができる。
【0143】
一方受渡部225は、ロック体231Dが解除方向S1へ回動されてロックシャフト241Dとの係合を解除した状態で、搬送M部18が持ち上げられると、当該搬送M部18が回動部18Xを中心に回動して開放される。
【0144】
このとき受渡部225は、搬送M部18と紙幣カセット19との間で搬送路Cを分離し、図5に示した場合と同様に、搬送M側前ガイド231の爪状部231Cと紙幣カセット側前ガイド241の爪状部241Cとを引き離す。
【0145】
このとき受渡部225は、爪状部231Cについて、第2の実施の形態における鍔状部131Dに相当するロック体231Dを前側に形成しているため、前方から異物が衝突したとしても、当該ロック体231Dにより保護し、破損を防止することができる。
【0146】
また受渡部225は、爪状部241Cについても、第1の実施の形態における鍔状部41Dに相当するロックシャフト241Dを前方に形成しているため、前方から異物が衝突したとしても、当該ロックシャフト241Dにより保護し、破損を防止することができる。
【0147】
さらに受渡部225は、前後両側でロック体231D及び232Dをそれぞれロックシャフト241D及び242Dに係合させるため、前後方向の位置を高精度に合わせることができる。
【0148】
その他の点についても、第3の実施の形態による受渡部225は、第1の実施の形態による受渡部25及び第2の実施の形態による受渡部125と同様の作用効果を奏し得る。
【0149】
以上の構成によれば、第3の実施の形態による受渡部225は、搬送M側前ガイド231に爪状部231C及び回動可能なロック体231Dを設け、紙幣カセット側前ガイド241に爪状部241C及びロックシャフト241Dを設けた。このため受渡部225は、搬送M部18の開放時に周囲から突出する爪状部231Cをロック体231Dにより前側から保護すると共に、爪状部241Cをロックシャフト241Dにより前側から保護することができる。また受渡部225は、搬送M部18の閉塞時には、ロック体231Dのロック爪231DXをロックシャフト241Dに係合させることにより、紙幣カセット側前ガイド241の爪状部241Cと搬送M側前ガイド231の爪状部231Cとを互いに歯合させ一連の滑らかな搬送路Cを形成した状態を維持することができ、この搬送路Cに沿って紙幣を円滑に搬送することができる。
【0150】
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、紙幣カセット側受渡部40の鍔状部41Dを平板状とした場合について述べた。
【0151】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第3の実施の形態におけるロック体231Dやロックシャフト241Dのように、種々の形状としても良い。この場合、要は爪状部41Cの前側に位置することにより、当該爪状部41Cを前方からの異物等の衝突から保護することができれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様であり、また搬送M側受渡部130の鍔状部131Dについても同様である。
【0152】
また上述した第1の実施の形態においては、鍔状部41Dの下端を爪状部41Cと同様に先端部41Bから立設させて下端を揃え、上端を爪状部41Cの上端よりも下側とするようにした場合について述べた。
【0153】
しかしながら本発明はこれに限らず、鍔状部41Dを少なくとも爪状部41Cの前側における近傍に配置していれば良く、これにより爪状部41Cをある程度保護することができる。好ましくは、例えば第3の実施の形態におけるロック体231Dのように、鍔状部41Dの下端を爪状部41Cの下端(先端)よりも上方(すなわち先端部41Bから見て遠方)としても良く、あるいはロックシャフト241Dのように、その上端(いわゆる付け根側)を爪状部41Cの上端よりも下側に位置させるように、すなわち付け根側に隙間を空けるようにしても良い。要は、上下方向に関し、鍔状部41Dの少なくとも一部が爪状部41Cの少なくとも一部に重なることにより、爪状部41Cをその近傍において保護できれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様であり、また搬送M側受渡部130の鍔状部131Dについても同様である。
【0154】
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送M部18と紙幣カセット19との距離が比較的短い箇所において、鍔状部41Dが設けられた紙幣カセット側前ガイド41を、搬送M側前ガイド31に対し搬送方向に沿って移動させるようにした場合について述べた。
【0155】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば入出金部13や一時保留部17(図2)のように紙幣入出金機筐体12に対し回動することにより搬送路を分離する箇所(すなわち受渡部)において、各ガイドを搬送路Cから引き離す方向、すなわち紙幣カセット側前ガイド41であれば前方向へ移動させるようにしても良い。要は、紙幣カセット側前ガイド41又は搬送M側前ガイド31の移動時に、鍔状部41Dが搬送M側前ガイド31の各部と干渉しなければ良い。第2の実施の形態における搬送M側受渡部130の鍔状部131Dや第3の実施の形態における搬送M側受渡部230のロック体231Dについても同様である。
【0156】
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送路Cの前側にある紙幣カセット側前ガイド41に鍔状部41Dを設けると共に、後側にある紙幣カセット側後ガイド42に鍔状部42Dを設けるようにした場合について述べた。
【0157】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば前側の紙幣カセット側前ガイド41に鍔状部41Dを設けるのみとし、後側には鍔状部42Dを設けないようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0158】
さらに上述した第3の実施の形態においては、搬送M側前ガイド231の爪状部231Cを保護するロック体231Dを、紙幣カセット側前ガイド241の爪状部241Cを保護するロックシャフト241Dに係合させるようにした場合について述べた。
【0159】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣カセット側前ガイド241に爪状部241Cを保護しない単なる被係合部を設けてこれにロック体231Dを係合させるようにしても良く、或いは搬送M側前ガイド231に爪状部231Cを保護しない単なる係合部を設けてこれをロックシャフト241Dに係合させるようにしても良い。
【0160】
さらに上述した第3の実施の形態においては、搬送路Cの後側にある搬送M側後ガイド232及び紙幣カセット側後ガイド242にロック体232D及びロックシャフト242Dをそれぞれ設けるようにした場合について述べた。
【0161】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば搬送路Cの後側にある搬送M側後ガイド232及び紙幣カセット側後ガイド242に、第2の実施の形態と同様の鍔状部132D及び142Dをそれぞれ設けるようにしても良い。
【0162】
さらに上述した第3の実施の形態においては、搬送M部18の閉塞時に、搬送M側前ガイド231におけるロック体231Dのロック爪231DXを、紙幣カセット側前ガイド241のロックシャフト241Dに係合させるようにした場合について述べた。
【0163】
しかしながら本発明はこれに限らず、搬送M側前ガイド231に種々の形状でなる係合部を設けると共に紙幣カセット側前ガイド241に種々の形状でなる被係合部を設け、搬送M部18の閉塞時にこれらを互いに係合させるようにしても良い。またこの場合、搬送M側前ガイド231に被係合部を設けると共に紙幣カセット側前ガイド241に係合部を設けるようにしても良い。
【0164】
さらに上述した第1の実施の形態においては、金融機関等において顧客との間で現金に関する取引を行う現金自動預払機1の受渡部25において、媒体としての紙幣BLを搬送するようにした場合について述べた。
【0165】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば金融機関等において職員が現金に関する各種処理を行うための出納システムに組み込まれる受渡部に適用するようにしても良く、或いは商品券や金券、入場券等のような紙葉状の媒体を受け渡す種々の装置に適用するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0166】
さらに上述した第3の実施の形態においては、第1搬送ガイドとしての搬送M側前ガイド231と、第1爪状部としての爪状部231Cと、第2搬送ガイドとしての紙幣カセット側前ガイド241と、第2爪状部としての爪状部241Cと、第1鍔状部としてのロック体231Dとによって媒体処理装置としての下部ユニット21を構成する場合について述べた。
【0167】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる第1搬送ガイドと、第1爪状部と、第2搬送ガイドと、第2爪状部と、第1鍔状部によって媒体処理装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、紙幣等の紙状の媒体を搬送する際には連結して搬送路を形成する一方、保守作業等の際に分離して当該搬送路を切り離す種々の装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0169】
1……現金自動預払機、10……紙幣入出金機、18……搬送M部、18X……回動部、19……紙幣カセット、21……下部ユニット、22……下部ユニット筐体、25、125、225……受渡部、30、130、230……搬送M側受渡部、31、131、231……搬送M側前ガイド、31C、32C、131C、132C、231C、41C、42C、241C、242C……爪状部、32、132……搬送M側後ガイド、41D、42D、131D、132D……鍔状部、231D、232D……ロック体、231DX……ロック爪、241D、242D……ロックシャフト、BL……紙幣、C……搬送路。

図1
図2
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