【実施例】
【0039】
次に、実施例について説明する。
<第1の造粒試験>
本発明者は、結晶水含有微粉鉱石の含有率及び結晶水含有微粉鉱石の組成と第1の擬似粒子の強度との関係を特定するために、第1の造粒試験を行った。具体的には、まず、70質量%のマグネタイトPF1(表1参照)と、30質量%の結晶水含有微粉鉱石とをドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第1の擬似粒子を生成した。
【0040】
ついで、第1の擬似粒子の圧壊強度を測定した。具体的には、完全乾燥させた第1の擬似粒子を4.75〜6.3mmに篩い分けた後、ミネベア製引張圧縮試験機PT−200Nを用いて、圧縮速度5mm/minの条件下で第1の擬似粒子を圧縮崩壊させた。そして、圧縮力のピーク値を圧壊強度とした。
【0041】
そして、結晶水含有微粉鉱石の組成、結晶水含有微粉鉱石の質量%を変化させて第1の造粒試験を繰り返し行なった。なお、結晶水の含有量はすべての結晶水含有微粉鉱石で7.8質量%とした。結果を
図3に示す。横軸は、結晶水含有微粉鉱石の結晶水含有微粉鉱石及びマグネタイトPF1の総質量に対する質量%を示す。縦軸は、圧壊強度を示す。
【0042】
「−250μm:80%、内−10μm:5%」の組成を有する結晶水含有微粉鉱石は、250μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して80質量%有する。また、この結晶水含有微粉鉱石は、10μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して5質量%有する。なお、粒度は上述した方法により測定された。
【0043】
同様に、「−250μm:90%、内−10μm:20%」の組成を有する結晶水含有微粉鉱石は、250μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して90質量%有する。また、この結晶水含有微粉鉱石は、10μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して20質量%有する。一方、「−10μm:100%」の組成を有する結晶水含有微粉鉱石は、すべての粒子が10μm以下の粒度を有する。
【0044】
図3によれば、マグネタイトPF1のみを造粒した場合、圧壊強度がほとんど認められなかった(結晶水含有微粉鉱石の質量%が0になるプロットを参照)。さらに、粒度が10μm以下の粒子の質量%が5質量%となる場合にも、圧壊強度がほとんど認められなかった。
【0045】
しかし、粒度が10μm以下の粒子の質量%を20質量%以上とすることで、圧壊強度が大幅に改善された。また、結晶水含有微粉鉱石の質量%が20質量%以上となる場合に、圧壊強度が大幅に改善された。一方、圧壊強度は、結晶水含有微粉鉱石の質量%が30質量%以上でほぼ横ばいになるが、結晶水含有微粉鉱石の質量%が多すぎると、圧壊強度がかえって低下することが予想される。この造粒試験によれば、結晶水含有微粉鉱石は、250μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して90質量%以上有することが好ましい。また、結晶水含有微粉鉱石は、10μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して20質量%以上有することが好ましい。さらに、結晶水含有微粉鉱石の含有率は、結晶水含有微粉鉱石及びマグネタイトペレットフィードの総質量に対して20〜40質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。
【0046】
<第2の造粒試験>
本発明者は、結晶水の含有量と第1の擬似粒子の強度との関係を特定するために、第2の造粒試験を行った。具体的には、まず、70質量%のマグネタイトPF1(表1参照)と、30質量%の結晶水含有微粉鉱石とをドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ここで、結晶水含有微粉鉱石として、すべての粒子が10μm以下の粒度を有する微粉鉱石を使用した。粒度は上述した方法により測定された。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第1の擬似粒子を生成した。
【0047】
ついで、第1の擬似粒子の圧壊強度を測定した。測定方法は第1の造粒試験と同様とした。そして、使用する結晶水含有微粉鉱石を表1のピソライトSF1、ピソライトSF2、マラマンバSF1、ヘマタイトSF1と順次変化させることにより、結晶水の含有量を変化させて第2の造粒試験を繰り返し行なった。結果を
図4に示す。横軸は、結晶水の含有量(結晶水含有微粉鉱石の総質量に対する結晶水の質量%)を示す。縦軸は、圧壊強度を示す。
図4に示すように、結晶水の含有量が5質量%以上となる場合に、圧壊強度が大幅に改善された。したがって、結晶水の含有量は5質量%以上が好ましい。
【0048】
<鍋試験による評価>
つぎに、各焼結鉱原料に対して鍋試験を行うことで、焼結鉱の生産率、焼結鉱の強度(シャッターインデックス(SI+10%))、被還元性(JIS−RI)、耐還元粉化指数(RDI)を評価した。鍋試験は、焼結反応を試験的に行うものである。具体的には、以下の処理を行った。
【0049】
[実施例1]
実施例1〜2は、第1の実施形態に対応するものである。まず、
図1に示すステップS10において、マグネタイトPF1(表1参照)をドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第1の擬似粒子を生成した(マグネタイトPF造粒ライン)。
【0050】
ついで、ステップS20において、他の焼結鉱原料をドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第2の擬似粒子を生成した(その他原料造粒ライン)。
【0051】
ついで、ステップS30において、第1の擬似粒子及び第2の擬似粒子を混合することで、焼結鉱原料を製造した。焼結鉱原料の組成を表2に示す。表2中、返鉱は、各実施例で製造された焼結鉱のうち、粒度が5mm以下となる焼結鉱である。また、処理フロー1は第1の実施形態の処理フローを示し、処理フロー2は第2の実施形態の処理フローを示す。また、他の焼結鉱原料に含まれる鉱石等の成分を表3に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
ついで、50kg鍋試験装置の試験鍋(内径300mm、高さ660mm)に約1.5kgの床敷鉱を投入した。ついで、約70kgの焼結鉱原料を投入した。焼結鉱原料の層厚は600mmであった。以下、焼結鉱原料からなる層を充填層とも称する。試験鍋の底面はメッシュ状となっており、ブロワが連結されている。ブロワは、試験鍋内の空気を下方に吸引することができる。
【0055】
次いで、充填層の表面を1.5分点火した。その後、吸引負圧1500mmAqで試験鍋内の空気を吸引した。吸引は、点火開始時点から吸引ガス温度が最大となる時点までの時間、すなわち焼結時間(min)だけ行われた。これにより、焼結鉱を製造した。
【0056】
[実施例3〜6]
実施例3〜6は、第2の実施形態に対応するものである。
図5にプロセスフローを示す。ステップS40において、ピソライトSF1を破砕することで、ピソライトSF1の粒度を10μm以下に調整した。これにより、結晶水含有微粉鉱石を生成した。結晶水含有微粉鉱石は、すべての粒子が10μm以下の粒度を有していた。
【0057】
ステップS50において、結晶水含有微粉鉱石と、マグネタイトPF1とを混合し、造粒することで、第1の擬似粒子を生成した。具体的には、結晶水含有微粉鉱石と、マグネタイトPF1とをドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第1の擬似粒子を生成した。
【0058】
ステップS60、S70において、実施例1のステップS20、S30と同様の処理を行った。これにより、焼結鉱を製造した。焼結鉱原料の組成を表2に示す。表2に示すように、実施例3〜6は、粒度調整したピソライトSF1(すなわち、結晶水含有微粉鉱石)の含有率が異なる。
【0059】
[実施例7]
実施例7は、第3の実施形態に対応するものである。実施例7では、
図5に示すプロセスフローに沿って焼結鉱を製造した。焼結鉱原料の組成を表2に示す。表2に示されるように、実施例7は、実施例1〜6よりも粉コークスの含有量が少ない。すなわち、0.28質量%分の粉コークスから得られる熱量が、マグネタイトPF1の酸化により得られる熱量に相当する。焼結鉱の光学顕微鏡写真を
図6に示す。
【0060】
[比較例]
図7に示すプロセスフローに従って、比較例に係る焼結鉱を製造した。すなわち、ステップS100において、表2に示す組成の原料をドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、焼結鉱原料を製造した。ステップS110において、焼結鉱原料を焼成することで、焼結鉱を製造した。すなわち、比較例では、マグネタイトPF1と他の焼結鉱原料とを単純混合し、焼結することで、焼結鉱を製造した。
【0061】
[参考例]
図7に示すプロセスフローに従って、参考例に係る焼結鉱を製造した。焼結鉱原料の組成を表2に示す。すなわち、参考例では、マグネタイトペレットフィードを含まない焼結鉱原料を用いて焼結鉱を製造した。
【0062】
[評価]
実施例1〜7、比較例、参考例の各々について、焼結鉱の生産率、焼結鉱の強度(シャッターインデックス(SI+10%))、被還元性(JIS−RI)、耐還元粉化指数(RDI)を評価した。
【0063】
ここで、生産率は、以下の式により算出した。
生産率(t/d/m
2)=粒度5mm以上の粒子の総質量(t)/焼結時間(day)/鍋の表面積(m
2)
【0064】
また、焼結鉱の強度は、以下のように測定された。すなわち、粒度5mm以上の粒子を粒度分布が変わらないように10kg採取し、2mの高さから4回鉄板上に落下させた。その後、粒度5〜10mmの粒子の総質量(10kg)に対する割合を測定し、これを焼結鉱の強度とした。
【0065】
また、被還元性は、JIS M8713に準じて測定された。具体的には、19.0〜22.4mmにふるい分けられた500gの焼結鉱を、900℃のもとで還元ガス(CO:30体積%、N2:70体積%)により180分間還元した。そして、還元前の被還元酸素量に対する還元酸素量の割合を測定し、これを被還元性とした。
【0066】
また、耐還元粉化指数は、JIS M8720に準じて測定された。具体的には、16〜20mmにふるい分けられた500gの焼結鉱を、550℃のもとで還元ガス(CO:30体積%、N2:70体積%)により30分間還元した。そして、焼結鉱を回転ドラムに充填し、900回転させた後、2.83mm以下の粒度を有する焼結鉱と他の焼結鉱とにふるい分けた。そして、2.83mm以下の粒度を有する焼結鉱の総質量(500g)に対する割合を耐還元粉化指数とした。
【0067】
実施例1〜7及び比較例を比較すると、実施例1〜7は、マグネタイトPF1を選択的に造粒して使用する事により、マグネタイトPF1の使用によるRDI低下を抑制することができた。具体的には、実施例1〜7では、参考例と同等のRDIが得られた。
【0068】
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6及び参考例を比較すると、マグネタイトPF1と10μm以下に粒度調整したピソライトSF1とを選択的に造粒して使用する事により、RDIを維持したまま生産率を参考例のレベルまで回復させることができた。さらに、10μm以下に粒度調整したピソライトSF1がマグネタイトPF及びピソライトSF1の総質量に対して20質量%以上であると参考例よりも大きな生産率を得ることができた。また、さらに、10μm以下に粒度調整したピソライトSF1がマグネタイトPF及びピソライトSF1の総質量に対して30質量%以上であると、その生産性向上効果は飽和した。この結果及び上述した第1の造粒試験の結果によれば、マグネタイトPF及び結晶水含有微粉鉱石の総質量に対する結晶水含有微粉鉱石の量は20〜40質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましいと言える。
【0069】
実施例6、実施例7、及び参考例を比較すると、マグネタイトPF1のマグネタイトがヘマタイトに酸化された際の発熱量の分だけコークス量を低下させても生産率の低下は見られなかった。さらにJIS−RIが改善した。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。