特許第5846049号(P5846049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5846049
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/16 20060101AFI20151224BHJP
【FI】
   C22B1/16 L
   C22B1/16 C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-128947(P2012-128947)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-253281(P2013-253281A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】河内 慎治
(72)【発明者】
【氏名】石丸 真吾
【審査官】 向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−320778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄分の含有率が総質量に対して60質量%以上となり、前記鉄分の一部を構成するFeOの含有率が総質量に対して15質量%以上となり、250μm以下の粒度を有する粒子の含有率が総質量に対して80質量%以上となるマグネタイトペレットフィードと、前記マグネタイトペレットフィード以外の鉄系原料と、カルシウムフェライトを生成する副原料と、含む焼結鉱原料のうち、前記マグネタイトペレットフィードを含み、かつ、前記副原料を含まない原料を造粒することで、第1の擬似粒子を生成するステップと、
前記焼結鉱原料のうち、前記マグネタイトペレットフィードを含まず、かつ、前記鉄系原料及び前記副原料を含む他の原料を造粒することで、第2の擬似粒子を生成するステップと、
前記第1の擬似粒子と前記第2の擬似粒子とを、前記マグネタイトペレットフィードの割合が前記第1の擬似粒子及び前記第2の擬似粒子に含まれる全鉄鉱石の総質量に対して10質量%以上となるように混合するステップと、を含むことを特徴とする、焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
結晶水の含有率が総質量に対して5質量%となり、250μm以下の粒度を有する粒子の含有率が総質量に対して90質量%以上となり、10μm以下の粒度を有する粒子の含有率が総質量に対して20質量%以上となる結晶水含有微粉鉱石と、前記マグネタイトペレットフィードとを、前記結晶水含有微粉鉱石の含有率が前記結晶水含有微粉鉱石及び前記マグネタイトペレットフィードの総質量に対して20〜40質量%となるように混合し、造粒することで、前記第1の擬似粒子を生成するステップを含むことを特徴とする、請求項1記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
前記他の原料は、前記第1の擬似粒子と前記第2の擬似粒子とを焼結するのに必要な熱量から、前記マグネタイトペレットフィードの酸化により得られる熱量を減算した熱量分の凝結材を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱の製造方法、特に、原料としてマグネタイトペレットフィードを多量に使用する場合の焼結鉱製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製銑プロセスで原料となる鉄鉱石のうち、粒度が10mm以下となる粉鉱石は粒度が小さいので、そのまま高炉に投入されると、高炉内の目詰まりの原因となる可能性がある。即ち、粉鉱石によって高炉内での還元ガスの流路が妨げられる可能性がある。そこで、粉鉱石は、そのまま高炉に投入されるのではなく、凝結材(粉コークス、無煙炭等の燃料)及び副原料(石灰石、蛇紋岩等の焼結鉱のSiO、CaO、MgO成分を調整するための原料)と共に焼き固められた焼結鉱として高炉に投入される。特許文献1〜3には、焼結鉱の製造方法が開示されている。
【0003】
ところで、近年、高品位の粉鉱石(ヘマタイトを多く含む粉鉱石)の供給量が低減してきたこと等に鑑み、ペレットフィード(PF)を焼結鉱原料として使用することが期待されている。従来、ペレットフィードとして、ヘマタイト系のものが主流として流通していたが、近年では、マグネタイト系のものも開発されつつある。
【0004】
本願が対象とするペレットフィードは、マグネタイト系のそれである。マグネタイトペレットフィードは、マグネタイトを主たる構成鉱物として含む。ペレットフィードは、元来鉄分の含有量が少ない原鉱を粒度が0.1mm以下になるまで粉砕し、粉砕した原料を選鉱して鉄分を高めることで製造される。ペレットフィードは精鉱とも称される。このような精鉱は、ペレット用原料として用いられるのでペレットフィードと称されるが、一部は焼結用原料として流通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−185104号公報
【特許文献2】特許第3344151号公報
【特許文献3】特許第3902629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、マグネタイトペレットフィードと他の焼結鉱原料とを単純に混合し、焼結鉱を製造した場合、ヘマタイトペレットフィードでは認められなかった、焼結鉱のRDI(還元粉化指数)が低下するという問題が判ってきた。一方、特許文献1〜3は、この問題に何ら寄与しなかった。
【0007】
すなわち、特許文献1は、FeO源(すなわち、マグネタイト)と高アルミナ鉄鉱石とを単純混合する技術を開示するだけなので、FeO源としてマグネタイトペレットフィードを使用しても、焼結鉱のRDIは改善しない。また、特許文献2は、粉鉱石にマグネタイトペレットフィードをコーティングする技術を開示するが、この技術は焼結鉱のRDIの改善に何ら寄与しない。また、マグネタイトペレットフィードの使用可能量も少ない。また、特許文献3に開示された技術は、マグネタイトペレットフィードとは全く関係ないマラマンバを対象としている。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、マグネタイトペレットフィードを使用することができ、かつ、焼結鉱のRDIを改善することが可能な、新規かつ改良された焼結鉱の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、鉄分の含有率が総質量に対して60質量%以上となり、鉄分の一部を構成するFeOの含有率が総質量に対して15質量%以上となり、250μm以下の粒度を有する粒子の含有率が総質量に対して80質量%以上となるマグネタイトペレットフィードと、マグネタイトペレットフィード以外の鉄系原料と、カルシウムフェライトを生成する副原料と、含む焼結鉱原料のうち、マグネタイトペレットフィードを含み、かつ、副原料を含まない原料を造粒することで、第1の擬似粒子を生成するステップと、焼結鉱原料のうち、マグネタイトペレットフィードを含まず、かつ、鉄系原料及び副原料を含む他の原料を造粒することで、第2の擬似粒子を生成するステップと、第1の擬似粒子と第2の擬似粒子とを、マグネタイトペレットフィードの割合が第1の擬似粒子及び第2の擬似粒子に含まれる全鉄鉱石の総質量に対して10質量%以上となるように混合するステップと、を含むことを特徴とする、焼結鉱の製造方法が提供される。
【0010】
ここで、結晶水の含有率が総質量に対して5質量%となり、250μm以下の粒度を有する粒子の含有率が総質量に対して90質量%以上となり、10μm以下の粒度を有する粒子の含有率が総質量に対して20質量%以上となる結晶水含有微粉鉱石と、マグネタイトペレットフィードとを、結晶水含有微粉鉱石の含有率が結晶水含有微粉鉱石及びマグネタイトペレットフィードの総質量に対して20〜40質量%となるように混合し、造粒することで、第1の擬似粒子を生成するステップを含んでいてもよい。
【0011】
また、他の原料は、第1の擬似粒子と第2の擬似粒子とを焼結するのに必要な熱量から、マグネタイトペレットフィードの酸化により得られる熱量を減算した熱量分の凝結材を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、焼結鉱中のマグネタイトとカルシウムフェライトとの接触面積が低減され、ひいては、RDIも改善される。したがって、本発明によれば、マグネタイト微粉原料を使用することができ、かつ、焼結鉱のRDIを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る焼結鉱の製造方法を示すプロセスフローである。
図2】本発明の第2の実施形態に係る焼結鉱の製造方法を示すプロセスフローである。
図3】結晶水含有微粉鉱石の質量%と圧壊強度との相関関係を示すグラフである。
図4】結晶水の含有量と圧壊強度との相関関係を示すグラフである。
図5】実施例3〜6のプロセスフローである。
図6】実施例7で製造された焼結鉱の光学顕微鏡写真である。
図7】比較例のプロセスフローである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<1.第1の実施形態>
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る焼結鉱の製造方法について説明する。図1は、第1の実施形態のプロセスフロー(処理フロー)を示す。
【0016】
ステップS10において、マグネタイトペレットフィードを造粒することで、第1の擬似粒子を生成する。すなわち、第1の実施形態では、マグネタイトペレットフィードを選択的に造粒する。
【0017】
ここで、マグネタイトペレットフィードは、マグネタイト系原鉱を選鉱して得られるペレット用製鉄原料である。ペレットフィードは、通常、鉄分30%前後の原鉱を粒度が0.1mm以下になるまで粉砕し、鉄分が60%程度まで高まるように、磁力選鉱と比重選鉱を組み合わせて選鉱することで製造される。このようなペレットフィードは精鉱とも称される。
【0018】
表1に、マグネタイトペレットフィードの具体例(成分)を示す。表1から判るように、選鉱処理によって得られるマグネタイトペレットフィードは、マグネタイトペレットフィードの総質量に対して60質量%以上の鉄分と、マグネタイトペレットフィードの総質量に対して15質量%以上のFeOとを含む。さらに、マグネタイトペレットフィードは、250μm以下の粒度を有する粒子をマグネタイトペレットフィードの総質量に対して80質量%以上有する。言い換えれば、鉄分の含有率が総質量に対して60質量%以上となり、鉄分の一部を構成するFeOの含有率が総質量に対して15質量%以上となる。また、250μm以下の粒度を有する粒子の含有率が総質量に対して80質量%以上となる。
【0019】
なお、鉄分の質量%、FeOの質量%、250μm以下の粒度を有する粒子の質量%の上限値はペレットフィードのすべてが純粋なマグネタイト鉱物となる理論的上限において、鉄分の質量%は72.4%、FeOの質量%は31.4%となる。また、250μm以下の粒度を有する粒子の質量%に上限値はないが、100%に近いほど造粒しやすくなるので好ましい。
【0020】
【表1】
【0021】
表1中、「T.Fe」、「FeO」、「CaO」、「SiO」、「Al」、「MgO」、「Mn」、及び「CW」は、それぞれマグネタイトペレットフィード1〜3の総質量に対する全ての鉄(2価鉄及び3価鉄)、2価鉄、酸化カルシウム、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化マグネシウム、マンガン、及び結晶水の質量%を示す。なお、鉄はペレットフィード中でヘマタイトまたはマグネタイトとして存在する。また、2価鉄の質量%はFeO換算値である。
【0022】
また、マグネタイトPF1は、250μm以下の粒度を有する粒子をマグネタイトPF1の総質量に対して95質量%有する。マグネタイトPF2は、250μm以下の粒度を有する粒子をマグネタイトPF2の総質量に対して95質量%有する。マグネタイトPF3は、250μm以下の粒度を有する粒子をマグネタイトPF3の総質量に対して100質量%有する。もちろん、本実施形態のマグネタイトペレットフィードはこれらの例に限定されない。
【0023】
ここで、粒度は、目開きの大きさが異なる篩を用いて測定される。すなわち、目開きが250μmの篩を用意し、測定対象の鉱石をこの篩にかける。この篩を通過した粒子は、粒度が250μm以下となる。同様に、目開きが10μmの篩を用意し、測定対象の鉱石をこの篩にかける。この篩を通過した粒子は、粒度が10μm以下となる。マグネタイトペレットフィードの造粒は、例えば、マグネタイトペレットフィード及び水をドラムミキサーに投入し、攪拌することで行われる。造粒物の粒度は、質量平均で2〜4mmが好ましい。2mm未満であると、後述の表面積抑制作用が小さくRDI改善効果が小さくなる。また、4mmを超えると、本質的に加熱時間が短い焼結法にあっては中心まで温度が上昇せず、焼結不良により歩留・強度が低下する弊害を招く。
【0024】
ステップS20において、他の焼結鉱原料を造粒することで、第2の擬似粒子を生成する。ここで、他の焼結鉱原料としては、例えば、ヘマタイト粉鉱石(ヘマタイトシンターフィード(SF))、凝結材(粉コークス等)、雑原料(スケール等)及び副原料(石灰石等)等が挙げられる。
【0025】
ステップS30において、第1の擬似粒子と第2の擬似粒子とを、マグネタイトペレットフィードの含有率が鉄鉱石の総質量に対して10質量%以上となるように混合することで、焼結鉱原料を生成する。ここで、鉄鉱石の総質量は、第1の擬似粒子中の鉄鉱石と、第2の擬似粒子中の鉄鉱石との総質量である。そして、焼結鉱原料を焼結(焼成)することで、焼結鉱を製造する。ここに、マグネタイトペレットフィードの量が10質量%未満の場合は、通常焼結法においてもRDIの悪化が顕著ではなく、逆に本発明を採用する効果が大きくないためである。また、RDI改善効果が得られるという観点では、マグネタイトペレットフィードの含有率の上限値は特に制限はない。しかし、50質量%を超えると造粒物の焼結が困難となり歩留・強度が低下するため、好ましくない。
【0026】
このように、第1の実施形態では、マグネタイトペレットフィードを選択的に造粒するので、焼結鉱中のマグネタイトとカルシウムフェライトとの接触面積が低減される。焼結鉱中のマグネタイトは、マグネタイトペレットフィード由来のものであり、焼結中に酸化されなかったマグネタイトと、ヘマタイトに酸化された後にマグネタイトに還元されたマグネタイトとを含む。一方、カルシウムフェライトは、溶融した石灰石にヘマタイトが溶け込み、凝固したものである。石灰石に溶け込むヘマタイトとしては、ヘマタイトSFに含まれるヘマタイトと、マグネタイトペレットフィード中のマグネタイトが酸化されることで生成されたヘマタイトが挙げられる。
【0027】
図6に、後述する実施例7により製造された焼結鉱の光学顕微鏡写真を示す。この写真中、「HEM」はヘマタイトを示す。「MAG」、「CF」、及び「P」は、それぞれ、マグネタイト、カルシウムフェライト、及び気孔を示す。この光学顕微鏡写真に示されるように、焼結鉱中のマグネタイトとカルシウムフェライトとの接触面積が低減されている。マグネタイトは選択的に造粒されているので、焼結鉱原料中でマグネタイトがまとまって存在しているからである。そして、このような構造の焼結鉱は、RDIが改善される。
【0028】
すなわち、本発明者は、焼結鉱のRDIについて鋭意検討を重ねた結果、マグネタイトが多く残存する焼結鉱の還元粉化は、焼結鉱中の残留マグネタイトを取り巻くカルシウムフェライト系融液の生成が抑制され、残留マグネタイト界面が脆弱となり、そこで亀裂が発生しやすくなることで起こることを見出した。したがって、この界面の面積、すなわちマグネタイトとカルシウムフェライトとの接触面積が低減されれば、RDIも改善される。そこで、本発明者は、マグネタイトとカルシウムフェライトとの接触面積を低減可能な方法について鋭意検討を重ね、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法に想到した。
【0029】
第1の実施形態によれば、マグネタイトペレットフィードを、生産性を減ずることなく使用することができ、かつ、焼結鉱のRDIを改善することができる。
【0030】
<2.第2の実施形態>
次に、図2を参照して、第2の実施形態に係る焼結鉱の製造方法について説明する。図2は、第2の実施形態のプロセスフロー(処理フロー)を示す。
【0031】
ステップS40において、結晶水を鉄鉱石の総質量に対して5質量%以上含有する結晶水含有鉄鉱石を破砕することで、結晶水含有鉄鉱石の粒度を10μm以下に調整する。これにより、結晶水含有微粉鉱石を生成する。結晶水含有微粉鉱石は、結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して5質量%以上の結晶水を含む。結晶水の質量%の上限値は特に制限はないが、例えば15質量%となる。
【0032】
さらに、結晶水含有微粉鉱石は、250μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して90質量%以上有する。また、結晶水含有微粉鉱石は、10μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して20質量%以上有する。すなわち、結晶水の含有率が総質量に対して5質量%となり、250μm以下の粒度を有する粒子の含有率が総質量に対して90質量%以上となる。また、10μm以下の粒度を有する粒子の含有率が20質量%以上となる。なお、250μm以下の粒度を有する粒子、10μmの粒度を有する粒子の質量%の上限値は特に制限はないが、例えば90質量%となる。結晶水の含有量、粒度がこれらの範囲となる場合、結晶水含有微粉鉱石は、マグネタイトペレットフィード同士をより強固に結着させることができる。
【0033】
ステップS50において、結晶水含有微粉鉱石と、マグネタイト微粉鉱石とを、結晶水含有微粉鉱石の割合が結晶水含有微粉鉱石及びマグネタイトペレットフィードの総質量に対して20〜40質量%、好ましくは20〜30質量%となるように混合し、造粒することで、第1の擬似粒子を生成する。マグネタイトペレットフィードと結晶水含有微粉鉱石とをこの割合で混合することで、結晶水含有微粉鉱石は、マグネタイトペレットフィード同士をより強固に結着させることができる。ステップS60、S70において、第1の実施形態のステップS20、S30と同様の処理を行う。
【0034】
このように、第2の実施形態では、マグネタイトペレットフィード及び結晶水含有微粉鉱石を選択的に造粒する。結晶水含有微粉鉱石は、マグネタイトペレットフィード同士を結着させるバインダとして機能する。したがって、第2の実施形態では、第1の擬似粒子の強度が向上する。
【0035】
第2の実施形態によれば、第1の擬似粒子の強度が向上するので、焼結鉱の生産率が向上する。
【0036】
<3.第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、他の焼結鉱原料は、第1の擬似粒子と第2の擬似粒子とを焼結するのに必要な熱量から、マグネタイトペレットフィードの酸化により得られる熱量を減算した熱量分の凝結材を含む。
【0037】
すなわち、マグネタイトペレットフィードは、ヘマタイトに酸化されることで発熱する。したがって、第1の擬似粒子と第2の擬似粒子とを焼結するのに必要な熱量分の凝結材を他の焼結鉱原料に含めた場合、焼結時に石灰石等が過剰に溶融し、焼結鉱の気孔を過剰に塞いでしまう可能性がある。この結果、焼結鉱の被還元性が低下する可能性がある。そこで、第3の実施形態では、第1の擬似粒子と第2の擬似粒子とを焼結するのに必要な熱量から、マグネタイトペレットフィードの酸化により得られる熱量を減算した熱量分の凝結材を他の焼結鉱原料に含める。これにより、石灰石等の過剰な溶融が抑制される。
【0038】
第3の実施形態によれば、石灰石等の過剰な溶融が抑制されるので、焼結鉱の被還元性(JIS−RI)が向上する。
【実施例】
【0039】
次に、実施例について説明する。
<第1の造粒試験>
本発明者は、結晶水含有微粉鉱石の含有率及び結晶水含有微粉鉱石の組成と第1の擬似粒子の強度との関係を特定するために、第1の造粒試験を行った。具体的には、まず、70質量%のマグネタイトPF1(表1参照)と、30質量%の結晶水含有微粉鉱石とをドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第1の擬似粒子を生成した。
【0040】
ついで、第1の擬似粒子の圧壊強度を測定した。具体的には、完全乾燥させた第1の擬似粒子を4.75〜6.3mmに篩い分けた後、ミネベア製引張圧縮試験機PT−200Nを用いて、圧縮速度5mm/minの条件下で第1の擬似粒子を圧縮崩壊させた。そして、圧縮力のピーク値を圧壊強度とした。
【0041】
そして、結晶水含有微粉鉱石の組成、結晶水含有微粉鉱石の質量%を変化させて第1の造粒試験を繰り返し行なった。なお、結晶水の含有量はすべての結晶水含有微粉鉱石で7.8質量%とした。結果を図3に示す。横軸は、結晶水含有微粉鉱石の結晶水含有微粉鉱石及びマグネタイトPF1の総質量に対する質量%を示す。縦軸は、圧壊強度を示す。
【0042】
「−250μm:80%、内−10μm:5%」の組成を有する結晶水含有微粉鉱石は、250μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して80質量%有する。また、この結晶水含有微粉鉱石は、10μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して5質量%有する。なお、粒度は上述した方法により測定された。
【0043】
同様に、「−250μm:90%、内−10μm:20%」の組成を有する結晶水含有微粉鉱石は、250μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して90質量%有する。また、この結晶水含有微粉鉱石は、10μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して20質量%有する。一方、「−10μm:100%」の組成を有する結晶水含有微粉鉱石は、すべての粒子が10μm以下の粒度を有する。
【0044】
図3によれば、マグネタイトPF1のみを造粒した場合、圧壊強度がほとんど認められなかった(結晶水含有微粉鉱石の質量%が0になるプロットを参照)。さらに、粒度が10μm以下の粒子の質量%が5質量%となる場合にも、圧壊強度がほとんど認められなかった。
【0045】
しかし、粒度が10μm以下の粒子の質量%を20質量%以上とすることで、圧壊強度が大幅に改善された。また、結晶水含有微粉鉱石の質量%が20質量%以上となる場合に、圧壊強度が大幅に改善された。一方、圧壊強度は、結晶水含有微粉鉱石の質量%が30質量%以上でほぼ横ばいになるが、結晶水含有微粉鉱石の質量%が多すぎると、圧壊強度がかえって低下することが予想される。この造粒試験によれば、結晶水含有微粉鉱石は、250μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して90質量%以上有することが好ましい。また、結晶水含有微粉鉱石は、10μm以下の粒度を有する粒子を結晶水含有微粉鉱石の総質量に対して20質量%以上有することが好ましい。さらに、結晶水含有微粉鉱石の含有率は、結晶水含有微粉鉱石及びマグネタイトペレットフィードの総質量に対して20〜40質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。
【0046】
<第2の造粒試験>
本発明者は、結晶水の含有量と第1の擬似粒子の強度との関係を特定するために、第2の造粒試験を行った。具体的には、まず、70質量%のマグネタイトPF1(表1参照)と、30質量%の結晶水含有微粉鉱石とをドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ここで、結晶水含有微粉鉱石として、すべての粒子が10μm以下の粒度を有する微粉鉱石を使用した。粒度は上述した方法により測定された。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第1の擬似粒子を生成した。
【0047】
ついで、第1の擬似粒子の圧壊強度を測定した。測定方法は第1の造粒試験と同様とした。そして、使用する結晶水含有微粉鉱石を表1のピソライトSF1、ピソライトSF2、マラマンバSF1、ヘマタイトSF1と順次変化させることにより、結晶水の含有量を変化させて第2の造粒試験を繰り返し行なった。結果を図4に示す。横軸は、結晶水の含有量(結晶水含有微粉鉱石の総質量に対する結晶水の質量%)を示す。縦軸は、圧壊強度を示す。図4に示すように、結晶水の含有量が5質量%以上となる場合に、圧壊強度が大幅に改善された。したがって、結晶水の含有量は5質量%以上が好ましい。
【0048】
<鍋試験による評価>
つぎに、各焼結鉱原料に対して鍋試験を行うことで、焼結鉱の生産率、焼結鉱の強度(シャッターインデックス(SI+10%))、被還元性(JIS−RI)、耐還元粉化指数(RDI)を評価した。鍋試験は、焼結反応を試験的に行うものである。具体的には、以下の処理を行った。
【0049】
[実施例1]
実施例1〜2は、第1の実施形態に対応するものである。まず、図1に示すステップS10において、マグネタイトPF1(表1参照)をドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第1の擬似粒子を生成した(マグネタイトPF造粒ライン)。
【0050】
ついで、ステップS20において、他の焼結鉱原料をドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第2の擬似粒子を生成した(その他原料造粒ライン)。
【0051】
ついで、ステップS30において、第1の擬似粒子及び第2の擬似粒子を混合することで、焼結鉱原料を製造した。焼結鉱原料の組成を表2に示す。表2中、返鉱は、各実施例で製造された焼結鉱のうち、粒度が5mm以下となる焼結鉱である。また、処理フロー1は第1の実施形態の処理フローを示し、処理フロー2は第2の実施形態の処理フローを示す。また、他の焼結鉱原料に含まれる鉱石等の成分を表3に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
ついで、50kg鍋試験装置の試験鍋(内径300mm、高さ660mm)に約1.5kgの床敷鉱を投入した。ついで、約70kgの焼結鉱原料を投入した。焼結鉱原料の層厚は600mmであった。以下、焼結鉱原料からなる層を充填層とも称する。試験鍋の底面はメッシュ状となっており、ブロワが連結されている。ブロワは、試験鍋内の空気を下方に吸引することができる。
【0055】
次いで、充填層の表面を1.5分点火した。その後、吸引負圧1500mmAqで試験鍋内の空気を吸引した。吸引は、点火開始時点から吸引ガス温度が最大となる時点までの時間、すなわち焼結時間(min)だけ行われた。これにより、焼結鉱を製造した。
【0056】
[実施例3〜6]
実施例3〜6は、第2の実施形態に対応するものである。図5にプロセスフローを示す。ステップS40において、ピソライトSF1を破砕することで、ピソライトSF1の粒度を10μm以下に調整した。これにより、結晶水含有微粉鉱石を生成した。結晶水含有微粉鉱石は、すべての粒子が10μm以下の粒度を有していた。
【0057】
ステップS50において、結晶水含有微粉鉱石と、マグネタイトPF1とを混合し、造粒することで、第1の擬似粒子を生成した。具体的には、結晶水含有微粉鉱石と、マグネタイトPF1とをドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、第1の擬似粒子を生成した。
【0058】
ステップS60、S70において、実施例1のステップS20、S30と同様の処理を行った。これにより、焼結鉱を製造した。焼結鉱原料の組成を表2に示す。表2に示すように、実施例3〜6は、粒度調整したピソライトSF1(すなわち、結晶水含有微粉鉱石)の含有率が異なる。
【0059】
[実施例7]
実施例7は、第3の実施形態に対応するものである。実施例7では、図5に示すプロセスフローに沿って焼結鉱を製造した。焼結鉱原料の組成を表2に示す。表2に示されるように、実施例7は、実施例1〜6よりも粉コークスの含有量が少ない。すなわち、0.28質量%分の粉コークスから得られる熱量が、マグネタイトPF1の酸化により得られる熱量に相当する。焼結鉱の光学顕微鏡写真を図6に示す。
【0060】
[比較例]
図7に示すプロセスフローに従って、比較例に係る焼結鉱を製造した。すなわち、ステップS100において、表2に示す組成の原料をドラムミキサーに投入し、1分間撹拌した。ついで、ドラムミキサーに水を投入してさらに7分間撹拌した。これにより、焼結鉱原料を製造した。ステップS110において、焼結鉱原料を焼成することで、焼結鉱を製造した。すなわち、比較例では、マグネタイトPF1と他の焼結鉱原料とを単純混合し、焼結することで、焼結鉱を製造した。
【0061】
[参考例]
図7に示すプロセスフローに従って、参考例に係る焼結鉱を製造した。焼結鉱原料の組成を表2に示す。すなわち、参考例では、マグネタイトペレットフィードを含まない焼結鉱原料を用いて焼結鉱を製造した。
【0062】
[評価]
実施例1〜7、比較例、参考例の各々について、焼結鉱の生産率、焼結鉱の強度(シャッターインデックス(SI+10%))、被還元性(JIS−RI)、耐還元粉化指数(RDI)を評価した。
【0063】
ここで、生産率は、以下の式により算出した。
生産率(t/d/m)=粒度5mm以上の粒子の総質量(t)/焼結時間(day)/鍋の表面積(m
【0064】
また、焼結鉱の強度は、以下のように測定された。すなわち、粒度5mm以上の粒子を粒度分布が変わらないように10kg採取し、2mの高さから4回鉄板上に落下させた。その後、粒度5〜10mmの粒子の総質量(10kg)に対する割合を測定し、これを焼結鉱の強度とした。
【0065】
また、被還元性は、JIS M8713に準じて測定された。具体的には、19.0〜22.4mmにふるい分けられた500gの焼結鉱を、900℃のもとで還元ガス(CO:30体積%、N2:70体積%)により180分間還元した。そして、還元前の被還元酸素量に対する還元酸素量の割合を測定し、これを被還元性とした。
【0066】
また、耐還元粉化指数は、JIS M8720に準じて測定された。具体的には、16〜20mmにふるい分けられた500gの焼結鉱を、550℃のもとで還元ガス(CO:30体積%、N2:70体積%)により30分間還元した。そして、焼結鉱を回転ドラムに充填し、900回転させた後、2.83mm以下の粒度を有する焼結鉱と他の焼結鉱とにふるい分けた。そして、2.83mm以下の粒度を有する焼結鉱の総質量(500g)に対する割合を耐還元粉化指数とした。
【0067】
実施例1〜7及び比較例を比較すると、実施例1〜7は、マグネタイトPF1を選択的に造粒して使用する事により、マグネタイトPF1の使用によるRDI低下を抑制することができた。具体的には、実施例1〜7では、参考例と同等のRDIが得られた。
【0068】
実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6及び参考例を比較すると、マグネタイトPF1と10μm以下に粒度調整したピソライトSF1とを選択的に造粒して使用する事により、RDIを維持したまま生産率を参考例のレベルまで回復させることができた。さらに、10μm以下に粒度調整したピソライトSF1がマグネタイトPF及びピソライトSF1の総質量に対して20質量%以上であると参考例よりも大きな生産率を得ることができた。また、さらに、10μm以下に粒度調整したピソライトSF1がマグネタイトPF及びピソライトSF1の総質量に対して30質量%以上であると、その生産性向上効果は飽和した。この結果及び上述した第1の造粒試験の結果によれば、マグネタイトPF及び結晶水含有微粉鉱石の総質量に対する結晶水含有微粉鉱石の量は20〜40質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましいと言える。
【0069】
実施例6、実施例7、及び参考例を比較すると、マグネタイトPF1のマグネタイトがヘマタイトに酸化された際の発熱量の分だけコークス量を低下させても生産率の低下は見られなかった。さらにJIS−RIが改善した。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

図1
図2
図3
図4
図5
図7
図6