特許第5846111号(P5846111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5846111
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】車両用液圧ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20151224BHJP
   B60T 13/16 20060101ALI20151224BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   B60T13/138 A
   B60T13/16
   B60T13/68
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-256091(P2012-256091)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-101095(P2014-101095A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 聡
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−71681(JP,A)
【文献】 特開2012−214209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00−13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内孔を有するシリンダボディと、このシリンダボディの前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な反力液室を形成しブレーキ操作部材によって駆動可能な入力ピストンと、この入力ピストンに対して同軸的に配置されかつ前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な駆動液室と作動液を給排可能な圧力室を形成し前記入力ピストンまたは前記駆動液室に供給される作動液によって駆動されるマスタピストンとを備えているマスタシリンダと、
前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて、電気制御装置によって作動を制御される電動式液圧源と電磁弁を備えていて、前記電動式液圧源が前記反力液室と前記駆動液室に作動液を供給可能であり、前記電磁弁が前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を別個に制御可能または維持可能である液圧制御回路を備えていて、
前記電気制御装置は、
前記ブレーキ操作部材の作動量と作動経過時間に基づいて、前記ブレーキ操作部材が所定の作動状態で設定時間以上に維持されているとのブレーキ維持条件を判定するモード判定手段と、
このモード判定手段により、前記ブレーキ維持条件が不成立であると判定されたときに、前記電動式液圧源を作動状態で保持し、前記電磁弁を前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて制御して、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を制御する通常モード制御手段と、
前記モード判定手段により、前記ブレーキ維持条件が成立していると判定されたときに、前記電動式液圧源を停止状態で保持し、前記電磁弁を設定状態に維持して、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を維持するエコモード制御手段
を備えている車両用液圧ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用液圧ブレーキ装置において、前記ブレーキ維持条件として、車速センサの出力によって検出可能な車速ゼロが追加されている車両用液圧ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用液圧ブレーキ装置において、前記ブレーキ維持条件として、シフトポジションセンサの出力によって検出可能であるシフトポジションがPまたはNレンジであることが追加されている車両用液圧ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用液圧ブレーキ装置において、前記ブレーキ維持条件として、車両前方障害物検出センサの出力によって検出可能である障害物有が追加されている車両用液圧ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用液圧ブレーキ装置に関し、例えば、電気自動車、ハイブリッド車両等の車両において回生制動装置とともに使用可能な車両用液圧ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用液圧ブレーキ装置は、例えば、下記の特許文献1に記載されている。下記の特許文献1の図1に記載されている車両用液圧ブレーキ装置は、シリンダ内孔を有するシリンダボディと、このシリンダボディの前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な反力液室を形成しブレーキ操作部材(例えば、ブレーキペダル)によって駆動可能な入力ピストンと、この入力ピストンに対して同軸的に配置されかつ前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な駆動液室と作動液を給排可能な圧力室を形成し前記入力ピストンまたは前記駆動液室に供給される作動液によって駆動されるマスタピストンとを備えているマスタシリンダと、前記ブレーキ操作部材の作動量(操作量)に応じて前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を別個に制御可能な液圧制御回路を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−20707号公報
【0004】
上記特許文献1の図1に記載されている車両用液圧ブレーキ装置では、
前記液圧制御回路が、一つの電動式液圧源(ポンプ・モータ)と、この電動式液圧源の吸入路に接続されているとともに還流路に接続されていて作動液を収容するリザーバと、前記電動式液圧源の吐出路と前記反力液室を接続する第1供給経路と、この第1供給経路と前記還流路を接続する第1排出経路と、前記電動式液圧源の吐出路と前記駆動液室を接続する第2供給経路と、この第2供給経路と前記還流路を接続する第2排出経路とを備えるとともに、
前記第1供給経路と前記第1排出経路の接続部より上流にて前記第1供給経路に介装された常開型電磁式の第1開閉弁と、前記第2供給経路と前記第2排出経路の接続部より上流にて前記第2供給経路に介装された常開型電磁式の第2開閉弁と、前記第1供給経路にて前記第1開閉弁に対して並列に配置されて上流側への流れを許容する第1供給逆止弁と、前記第2供給経路にて前記第2開閉弁に対して並列に配置されて上流側への流れを許容する第2供給逆止弁と、前記第1排出経路に介装されて前記反力液室に供給される液圧を前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて制御する常閉型電磁式の第1制御弁と、前記第2排出経路に介装されて前記駆動液室に供給される液圧を前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて制御する常閉型電磁式の第2制御弁と、前記第1排出経路にて前記第1制御弁に対して並列に配置されて上流側への流れを許容する第1排出逆止弁と、前記第2排出経路にて前記第2制御弁に対して並列に配置されて上流側への流れを許容する第2排出逆止弁を備えている。
【発明の概要】
【0005】
ところで、上記特許文献1の図1に記載されている車両用液圧ブレーキ装置では、一つの電動式液圧源(ポンプ・モータ)から吐出・供給される作動液を反力液室と駆動液室に分配供給可能に構成されていて、液圧制御回路がシンプルかつ安価に構成されている。しかし、当該車両用液圧ブレーキ装置においては、アキュムレータが設けられていないため、ブレーキ操作部材の操作中(ブレーキ作動中)は、常に電動式液圧源(ポンプ・モータ)を作動状態で保持する必要がある。このため、当該車両用液圧ブレーキ装置において、ブレーキ作動が維持されるとき(例えば、信号停止や踏切停止や渋滞停止等により、ブレーキ作動が設定時間以上に維持されるとき)には、消費電力が嵩むのみならず、電動式液圧源(ポンプ・モータ)の作動に伴う振動・騒音が課題となることがある。
【0006】
本発明は、上記した課題を解消すべくなされたものであり、
シリンダ内孔を有するシリンダボディと、このシリンダボディの前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な反力液室を形成しブレーキ操作部材によって駆動可能な入力ピストンと、この入力ピストンに対して同軸的に配置されかつ前記シリンダ内孔にシリンダ軸方向に移動可能に組付けられて前記シリンダボディ内に作動液を給排可能な駆動液室と作動液を給排可能な圧力室を形成し前記入力ピストンまたは前記駆動液室に供給される作動液によって駆動されるマスタピストンとを備えているマスタシリンダと、
前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて、電気制御装置によって作動を制御される電動式液圧源(ポンプ・モータ)と電磁弁を備えていて、前記電動式液圧源が前記反力液室と前記駆動液室に作動液を供給可能であり、前記電磁弁が前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を別個に制御可能または維持可能である液圧制御回路を備えていて、
前記電気制御装置は、
前記ブレーキ操作部材の作動量と作動経過時間に基づいて、前記ブレーキ操作部材が所定の作動状態で設定時間以上に維持されているとのブレーキ維持条件を判定するモード判定手段と、
このモード判定手段により、前記ブレーキ維持条件が不成立であると判定されたときに、前記電動式液圧源(ポンプ・モータ)を作動状態で保持し、前記電磁弁を前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて制御して、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を制御する通常モード制御手段と、
前記モード判定手段により、前記ブレーキ維持条件が成立していると判定されたときに、前記電動式液圧源(ポンプ・モータ)を停止状態で保持し、前記電磁弁を設定状態に維持して、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を維持するエコモード制御手段
を備えている車両用液圧ブレーキ装置
に特徴がある。
【0007】
上記した本発明の実施に際して、前記ブレーキ維持条件は、適宜変更が可能であり、例えば、車速センサの出力によって検出可能な車速ゼロが追加されていること、または、シフトポジションセンサの出力によって検出可能であるシフトポジションがPまたはNレンジであることが追加されていること、或いは、車両前方障害物検出センサの出力によって検出可能である障害物有が追加されていること等の変更も可能である。
【0008】
上記した本発明の車両用液圧ブレーキ装置においては、前記電気制御装置が、前記モード判定手段と、前記通常モード制御手段と、前記エコモード制御手段を備えている。このため、前記ブレーキ維持条件が不成立であると判定されたときには、前記電動式液圧源(ポンプ・モータ)が作動状態で保持され、前記電磁弁が前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて制御されて、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧が制御される。また、前記ブレーキ維持条件が成立していると判定されたときには、前記電動式液圧源(ポンプ・モータ)が停止状態で保持され、前記電磁弁が設定状態に維持されて、前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧が維持され、ブレーキが保持される。
【0009】
したがって、本発明の車両用液圧ブレーキ装置においては、所定のブレーキ作動が維持されるとき(例えば、信号停止や踏切停止や渋滞停止等により、ブレーキ作動が設定時間以上に維持されるとき)には、電動式液圧源(ポンプ・モータ)が停止状態で保持されて、電動式液圧源(ポンプ・モータ)での消費電力を無くすことが可能であるとともに、電動式液圧源(ポンプ・モータ)の作動に伴う振動・騒音を無くすことが可能である。また、上述したように電動式液圧源(ポンプ・モータ)が停止状態で保持されるようにしたため(不必要な駆動を無くすようにしたため)、電動式液圧源(ポンプ・モータ)におけるメカ部品の耐久・寿命にも効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による車両用液圧ブレーキ装置の一実施形態を概略的に示す全体構成図である。
図2図1に示した車両用液圧ブレーキ装置の要部の非作動状態を示す部分構成図である。
図3図1に示した車両用液圧ブレーキ装置の要部の通常ブレーキ作動状態を示す部分構成図である。
図4図1に示した車両用液圧ブレーキ装置の要部のブレーキ保持状態を示す部分構成図である。
図5図1に示した車両用液圧ブレーキ装置の要部の電気系失陥時におけるブレーキ作動状態を示す部分構成図である。
図6図1に示したブレーキECUが実行するブレーキ作動制御プログラムのフローチャートである。
図7図6に示したエコモード制御プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明による車両用液圧ブレーキ装置(以下、単にブレーキ装置という)の一実施形態を概略的に示したものであり、このブレーキ装置100は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル10と、このブレーキペダル10の踏込操作に基づいて作動可能なマスタシリンダ20、ホイールシリンダFL・FR・RL・RR、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30、液圧制御回路40およびブレーキECU(電気制御装置)50等を備えている。
【0012】
ブレーキペダル10は、ドライバによって踏み込まれることにより、マスタシリンダ20のシリンダボディ21に組付けられている入力ピストン22を駆動(押動)可能に構成されている。ブレーキペダル10の操作量(作動量)は、ストロークセンサS1と踏力センサS2によって検出されるように構成されている。ストロークセンサS1と踏力センサS2の検出信号はブレーキECU50に伝えられるように構成されていて、ブレーキECU50でストロークセンサ値Sと踏力センサ値Fが把握できるように構成されている。なお、ブレーキ操作部材は、ブレーキペダル10に限定されるものではなく、例えば、ブレーキレバー等であっても実施可能である。
【0013】
マスタシリンダ20は、リザーバRに接続されるとともにブレーキ液圧制御用アクチュエータ30と液圧制御回路40に接続されるシリンダ内孔21aを有するシリンダボディ21と、このシリンダボディ21に組付けた入力ピストン22と前後一対のマスタピストン23、24と前後一対のスプリング25、26等を備えている。
【0014】
入力ピストン22は、シリンダボディ21のシリンダ内孔21aにシリンダ軸方向に移動可能に組付けられていて、シリンダボディ21a内に作動液(ブレーキ液)を給排可能な反力液室C1を形成しており、後端部がシリンダボディ22外に突出していてブレーキペダル10によって駆動可能とされている。また、入力ピストン22は、後方のマスタピストン23に係合・離脱可能な小径部22aを有していて、図1の状態(復帰位置状態)では後方のマスタピストン23に対して所定量Lo軸方向に離れている。
【0015】
後方のマスタピストン23は、入力ピストン22に対して同軸的に配置されかつシリンダ内孔21aにシリンダ軸方向に移動可能に組付けられていて、入力ピストン22との間にあるシリンダボディ21内に作動液を給排可能な駆動液室C2を形成し、前方のマスタピストン24との間にあるシリンダボディ21内に作動液を給排可能な圧力室C3を形成している。また、後方のマスタピストン23は、スプリング25によって図1の位置(復帰位置)に向けて付勢されていて、入力ピストン22の小径部22aまたは駆動液室C2に供給される作動液によってスプリング25の付勢力に抗して駆動されるように構成されている。
【0016】
前方のマスタピストン24は、入力ピストン22および後方のマスタピストン23に対して同軸的に配置されかつシリンダ内孔21aにシリンダ軸方向に移動可能に組付けられていて、シリンダボディ21の底壁間にあるシリンダボディ21内に作動液を給排可能な圧力室C4を形成している。また、前方のマスタピストン24は、スプリング26によって図1の位置(復帰位置)に向けて付勢されていて、スプリング25または圧力室C3内の作動液によってスプリング26の付勢力に抗して駆動されるように構成されている。
【0017】
上記した反力液室C1と駆動液室C2は、液圧制御回路40に接続されている。一方、各圧力室C3、C4は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30に接続されている。なお、反力液室C1と各圧力室C3、C4は、各ピストン22、23、24が図1の復帰位置にあるとき、リザーバRに連通しているものの、各ピストン22、23、24が復帰位置から所定量以上に前方へ移動することにより、リザーバRとの連通が遮断されるように構成されている。
【0018】
なお、マスタシリンダ20の上述以外の構成は、特開2012−20707号公報の図1に記載されている車両用液圧ブレーキ装置におけるマスタシリンダの構成と同じであるため、その説明は省略する。また、ホイールシリンダFL・FR・RL・RRと、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ30の各構成は、特開2012−20707号公報の図1に記載されている車両用液圧ブレーキ装置におけるホイールシリンダと、ブレーキ液圧制御用アクチュエータの各構成と同じであるため、その説明は省略する。
【0019】
ところで、この実施形態の液圧制御回路40は、反力液室C1と駆動液室C2に作動液を供給可能な一つの電動式液圧源41(ポンプPとモータM)と、この電動式液圧源41の吸入路411に接続されているとともに還流路412に接続されていて作動液を収容するリザーバRと、電動式液圧源41の吐出路413と反力液室C1を接続する第1供給経路414と、この第1供給経路414と還流路412を接続する第1排出経路415と、電動式液圧源41の吐出路413と駆動液室C2を接続する第2供給経路416と、この第2供給経路416と還流路412を接続する第2排出経路417とを備えている。
【0020】
また、液圧制御回路40は、第1開閉弁V1と、第2開閉弁V2と、メイン逆止弁V3と、第1逆止弁V4と、第2逆止弁V5と、第1制御弁V6と、第2制御弁V7を備えているとともに、一対の圧力センサS3、S4を備えている。第1開閉弁V1は、常開型で電磁式の開閉弁であり、第1供給経路414と第1排出経路415の接続部X1より上流にて第1供給経路414に介装されている。第2開閉弁V2は、常開型で電磁式の開閉弁であり、第2供給経路416と第2排出経路417の接続部X2より上流にて第2供給経路416に介装されている。
【0021】
メイン逆止弁V3は、電動式液圧源41の吐出路413に介装されていて、上流側への作動液の流れを規制するように構成されている。第1逆止弁V4は、第1供給経路414にて第1開閉弁V1に対して並列に配置されていて、下流側への作動液の流れを規制するように構成されている。第2逆止弁V5は、第2供給経路416にて第2開閉弁V2に対して並列に配置されていて、下流側への作動液の流れを規制するように構成されている。第1制御弁V6は、第1排出経路415に介装されていて、電動式液圧源41から反力液室C1に供給される液圧をブレーキペダル10の作動量に応じて制御するように構成されている。第2制御弁V7は、第2排出経路417に介装されていて、電動式液圧源41から駆動液室C2に供給される液圧をブレーキペダル10の作動量に応じて制御するように構成されている。
【0022】
圧力センサS3は、第1供給経路414内の圧力を検出するセンサであり、その検出信号はブレーキECU50に伝えられることで、ブレーキECU50で第1供給経路414内の圧力Prが把握できるように構成されている。一方、圧力センサS4は、第2供給経路416内の圧力を検出するセンサであり、その検出信号はブレーキECU50に伝えられることで、ブレーキECU50で第2供給経路416内の圧力Psが把握できるように構成されている。
【0023】
上記した電動式液圧源41と第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第1制御弁V6、第2制御弁V7等(液圧制御回路40の電気機器)は、各センサS1〜S4の検出信号等に基づいて、ブレーキECU(電気制御装置)50によって各作動を制御されるように構成されている。
【0024】
また、この実施形態では、通常のブレーキ作動時(ブレーキペダル10の作動量が維持されることなく変化しているブレーキ作動時)において、駆動液室C2内の液圧(電動式液圧源41から吐出路413に吐出されて第2供給経路416に供給される作動液が第2制御弁V7によって減圧制御されて得られる液圧)が反力液室C1内の液圧(電動式液圧源41から吐出路413に吐出されて第1供給経路414に供給される作動液が第1制御弁V6によって減圧制御されて得られる液圧)に比して高くなるように設定されている。なお、ブレーキペダル10の作動量が維持されているか否かの判定は、ストロークセンサS1と踏力センサS2の検出信号に基づいて、ブレーキECU50にて実行される。
【0025】
ブレーキECU50は、図6に示したブレーキ作動制御プログラムを備えるとともに、図7に示したエコモード制御プログラムを備えている。図6に示したブレーキ作動制御プログラムは、所定の演算周期(例えば、数msec)毎に繰り返し実行されるものであり、踏力センサS2によって検出される踏力センサ値Fが閾値F1を超えているとき(ブレーキペダル10の作動量(操作量)が所定量以上であるとき)に、プログラムの実行が開始され(ステップ201)、ステップ202にてストロークセンサ値Sと踏力センサ値Fが読み込まれる。また、ステップ203にて、ストロークセンサ値Sと踏力センサ値Fの変化量が演算されて、それぞれが規定値(A、B)以下か否かが判定される。
【0026】
ステップ203にて「No」と判定される場合(例えば、ブレーキペダル10の操作量(作動量)が変化している通常のブレーキ作動時)には、ステップ204とステップ205が実行されてステップ206にてプログラムの実行が終了する。なお、ステップ204では、ステップ203にて「Yes」と判定され始めてからの経過時間t1のカウントがゼロにリセットされ、ステップ205では、通常モード制御プログラム(詳細は省略)が実行されて、ブレーキペダル10の作動量に応じて、電動式液圧源41から反力液室C1に供給される液圧と、電動式液圧源41から駆動液室C2に供給される液圧がそれぞれ制御される。
【0027】
また、ステップ203にて「Yes」と判定される場合(例えば、ブレーキペダル10の操作量(作動量)が維持されているブレーキ作動時)には、ステップ207とステップ208が実行される。ステップ207では、ステップ203にて「Yes」と判定され始めてからの経過時間t1のカウントがアップされ、ステップ208では、経過時間t1のカウント値から経過時間t1が設定時間To以上か否かが判定される。
【0028】
ステップ208にて「No」と判定される場合(ブレーキ維持条件が不成立である場合)には、ステップ205が実行されてステップ206にてプログラムの実行が終了する。また、ステップ208にて「Yes」と判定される場合(ブレーキ維持条件が成立している場合)には、ステップ210が実行されてステップ206にてプログラムの実行が終了する。ステップ210では、図7に示したエコモード制御プログラムが実行され、ステップ211にてエコモード制御プログラムの実行が開始された後に、ステップ212が実行されて、第2供給経路416内の圧力Psが第1供給経路414内の圧力Pr以上か否かが判定される。
【0029】
ステップ212にて「Yes」と判定される場合には、ステップ213とステップ214が実行される。ステップ213では、第1開閉弁V1をON(通電状態)とする信号が出力されるとともに、第2開閉弁V2、第1制御弁V6、第2制御弁V7、モータM等をOFF(非通電状態)とする信号が出力されて、液圧制御回路40の電気機器が図4に示したようになる。ステップ214では、ステップ206に戻るプログラムが実行される。
【0030】
また、ステップ212にて「No」と判定される場合には、ステップ215とステップ214が実行される。ステップ215では、第2開閉弁V2をON(通電状態)とする信号が出力されるとともに、第1開閉弁V1、第1制御弁V6、第2制御弁V7、モータM等をOFF(非通電状態)とする信号が出力される。ステップ214では、ステップ206に戻るプログラムが実行される。
【0031】
上記のように構成したこの実施形態においては、電気系が正常である場合、液圧制御回路40における電動式液圧源(ポンプ・モータ)41、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、第1制御弁V6、第2制御弁V7等の電気機器が正常に作動可能である。このため、ブレーキペダル10の作動量(操作量)が所定量以上であるときにおいて、ブレーキペダル10の作動量が維持されることなく変化しているブレーキ作動時(通常のブレーキ作動時)には、図6のステップ201,202、203、204、205、206が実行されて、図3に示したように、液圧制御回路40の第1制御弁V6と第2制御弁V7が、ブレーキペダル10の作動量(操作量)に応じて、反力液室C1内の液圧と駆動液室C2内の液圧を別個に制御する。したがって、この場合には、ブレーキペダル10の作動量(操作量)に応じた液圧(反力液室C1内の液圧と駆動液室C2内の液圧)が得られて、所期の反力と制動力が得られる。
【0032】
また、この実施形態では、電気系が失陥した場合(例えば、電源失陥時)、液圧制御回路40において、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41が停止状態となり、第1開閉弁V1と第2開閉弁V2が開状態となり、第1制御弁V6と第2制御弁V7が閉状態となる(図5参照)。このため、メイン逆止弁V3により電動式液圧源41の吐出路413が上流側への作動液の流れを規制された状態で、反力液室C1が、第1開閉弁V1と第1チェック弁V4が介装されている第1供給経路414と、第2開閉弁V2と第2チェック弁V5が介装されている第2供給経路416を通して、駆動液室C2に連通接続される。
【0033】
したがって、この場合には、ブレーキペダル10の作動量(操作量)に応じて、反力液室C1内の作動液が、図5に示したように、上述した第1供給経路414と第2供給経路416を通して、駆動液室C2に遅れなく供給されて、マスタピストン23、24が無効ストロークなく作動する。このため、マスタシリンダ20が的確に作動し、所期の制動力を発生させることが可能である。
【0034】
ところで、この実施形態では、一つの電動式液圧源(ポンプ・モータ)41から吐出・供給される作動液を反力液室C1と駆動液室C2に分配供給可能に構成されていて、従来の車両用液圧ブレーキ装置(上記特許文献1の図1に記載されている車両用液圧ブレーキ装置)と同様に、液圧制御回路40がシンプルかつ安価に構成されている。
【0035】
また、この実施形態では、電気系が正常である場合、ブレーキペダル10の作動量(操作量)が所定量以上であるときにおいて、同ブレーキ作動が維持されるとき(例えば、信号停止や踏切停止や渋滞停止等により、ブレーキ作動が設定時間(秒単位にて設定可能である)以上に維持されるとき)、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41が停止状態で保持され、各電磁弁V1、V2、V6、V7が設定状態(図4に示した状態)に維持されて、反力液室C1内の液圧と駆動液室C2内の液圧が維持され、ブレーキが保持される。
【0036】
したがって、この実施形態において、所定のブレーキ作動が維持されるときには、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41が停止状態で保持されて、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41での消費電力を無くすことが可能であるとともに、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41の作動に伴う振動・騒音を無くすことが可能である。また、上述したように電動式液圧源(ポンプ・モータ)41が停止状態で保持されるようにしたため(不必要な駆動を無くすようにしたため)、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41におけるメカ部品の耐久・寿命にも効果が期待できる。
【0037】
なお、上記した実施形態において、通常のブレーキ作動時(図3参照)に、回生制動が要求される状態にて、第2開閉弁V2が通電されるように設定すれば、第2開閉弁V2は第2供給経路416を閉じて、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41から駆動液圧室C2への液圧供給を遮断する。このため、この場合には、回生制動装置(図示省略)にて制動力が得られ、マスタシリンダ20にてブレーキ操作反力は得られるものの制動力が得られない状態とすることが可能であり、高い回生効率を確保したブレーキ作動を得ることが可能である。
【0038】
また、上記した実施形態において、自動ブレーキ作動(ブレーキペダル10の作動(操作)によらないブレーキ作動)が要求される状態にて、第1開閉弁V1が通電されるように設定すれば、第1開閉弁V1は第1供給経路414を閉じて、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41から反力液圧室C1への液圧供給を遮断する。なお、自動ブレーキ作動が要求される状態では、第1開閉弁V1が通電状態とされる他に、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41が駆動状態とされ、第2制御弁V7が制御状態とされる。このため、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41から駆動液圧室C2に液圧が供給されるとともに、同液圧が第2制御弁V7によって制御されて、所望のブレーキ作動が得られる。
【0039】
なお、上記した実施形態において、通常のブレーキ作動が得られているとき、反力液室(C1)内の液圧が駆動液室(C2)内の液圧に比して高くなるように設定されておれば、上述したブレーキ作動の維持時において、第1開閉弁(V1)、第1制御弁(V6)、第2制御弁(V7)が非作動状態に保持され、第2開閉弁(V2)が作動状態(通電による閉状態)に保持され、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41が停止状態で保持される。したがって、このときにも、上述した作用効果と同様の作用効果を得ること(電動式液圧源(ポンプ・モータ)41での消費電力を無くすこと、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41の作動に伴う振動・騒音を無くすこと、電動式液圧源(ポンプ・モータ)41におけるメカ部品の耐久・寿命を高めること)が可能である。
【0040】
上記した実施形態においては、図6に示したステップ203と208によって、ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)10が所定の作動状態で設定時間以上に維持されているとのブレーキ維持条件を判定するように構成して実施した。
【0041】
しかし、本発明の実施に際しては、図6に示したステップ203〜210間に、例えば、車速センサの出力によって検出可能な車速ゼロを判定するステップ、または、シフトポジションセンサの出力によって検出可能であるシフトポジションがPまたはNレンジであることを判定するステップ、或いは、車両前方障害物検出センサの出力によって検出可能である障害物有を判定するステップを適宜に追加して実施することも可能である。これらの場合には、ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)10が所定の作動状態で設定時間以上に維持されているとのブレーキ維持条件に、車速ゼロであること、または、シフトポジションがPまたはNレンジであること、或いは、車両前方に障害物が有ること等が適宜に追加される。
【0042】
また、上記した実施形態においては、液圧制御回路40の構成が図1図5に示した構成(一つの電動式液圧源(ポンプ・モータ)41と、4個の電磁弁V1、V2、V6、V7を備えている構成)である実施形態について説明したが、本発明の実施に際して、液圧制御回路の構成は、前記ブレーキ操作部材の作動量に応じて、電気制御装置によって作動を制御される電動式液圧源(ポンプ・モータ)と電磁弁を備えていて、前記電動式液圧源が前記反力液室と前記駆動液室に作動液を供給可能であり、前記電磁弁が前記反力液室内の液圧と前記駆動液室内の液圧を別個に制御可能または維持可能であればよく、電動式液圧源(ポンプ・モータ)と電磁弁の個数や構成は、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
100…車両用液圧ブレーキ装置、10…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、20…マスタシリンダ、21…シリンダボディ、21a…シリンダ内孔、22…入力ピストン、23…マスタピストン、C1…反力液室、C2…駆動液室、C3…圧力室、40…液圧制御回路、41…電動式液圧源(ポンプとモータ)、411…電動式液圧源の吸入路、412…還流路、413…電動式液圧源の吐出路、414…第1供給経路、415…第1排出経路、416…第2供給経路、417…第2排出経路、R…リザーバ、V1…第1開閉弁、V2…第2開閉弁、V3…メイン逆止弁、V4…第1逆止弁、V5…第2逆止弁、V6…第1制御弁、V7…第2制御弁、S1…ストロークセンサ、S2…踏力センサ、S3、S4…圧力センサ、50…ブレーキECU(電気制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7