特許第5846145号(P5846145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5846145ロボットシステム、及び、ロボットシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5846145
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】ロボットシステム、及び、ロボットシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20151224BHJP
【FI】
   B25J19/06
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-54603(P2013-54603)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-180701(P2014-180701A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2013年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(72)【発明者】
【氏名】中村 民男
(72)【発明者】
【氏名】河野 大
(72)【発明者】
【氏名】巣山 崇
(72)【発明者】
【氏名】西邑 考史
(72)【発明者】
【氏名】松尾 智弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 伸一
(72)【発明者】
【氏名】河野 智樹
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−191420(JP,A)
【文献】 特開昭61−173886(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/085441(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作可能な作業用アームを有するロボットと、
移動体が装着した一以上の装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する装着部品検知手段と、
前記装着部品検知手段によって検知された検知結果に基づいて、前記ロボットの動作制御を変更する動作制御変更手段と、を備え、
前記動作制御変更手段は、前記装着物品の種類ごとに定められた重み付け値に基づいて、前記移動体の装着レベルを設定し、当該装着レベルに応じて、前記動作制御を変更する、ロボットシステム。
【請求項2】
前記ロボットは、前記作業用アームを支持する基台と、前記基台を移動させる移動機構とを有している、請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記動作制御変更手段は、前記移動体が装着した前記装着物品の数により、前記動作制御を変更する、請求項1又は2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記動作制御変更手段は、前記移動体が装着した前記装着物品が所定の条件を満たさない場合に、前記ロボットの動作停止、前記ロボットの動作速度の低減、前記ロボットのアクチュエータの出力の低減、及び、前記ロボットの動作領域範囲の縮小のうち少なくともいずれか一の動作制御を選択する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記動作制御変更手段は、特定の装着部品が検知されない場合に、前記ロボットの動作停止、警報の発信、前記ロボットの動作速度の低減、前記ロボットのアクチュエータの出力の低減、及び、前記ロボットの動作領域範囲の縮小のうち少なくともいずれか1つを実行する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記装着部品検知手段は、前記装着物品ごとに付されたICタグからデータを読み取って、前記装着物品の有無および種類を検知する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記装着部品検知手段は、前記装着物品ごとに付されたバーコードを照合して、前記装着物品の有無および種類を検知する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
移動体が装着した一以上の装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する装着部品検知ステップと、
前記装着部品検知ステップによって得られた検知結果に基づいて、動作可能な作業用アームを有するロボットの動作制御を変更する動作制御変更ステップと、を有する、ロボットシステムの制御方法であって、
前記動作制御変更ステップでは、前記装着物品の種類ごとに定められた重み付け値に基づいて、前記移動体の装着レベルが設定され、当該装着レベルに応じて、前記動作制御が変更される、ロボットシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ロボットシステム、及び、ロボットシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動作可能な作業用アームを有するロボットが提案されている。通常、作業用アームの周囲には安全柵を設けて作業用アームの動作領域と人とを仕切るようにしているが、作業対象物の補充などのために人が安全柵内に入る場合がある。また近年、作業用アームと人とが仕切られていない空間で両者が作業するケースも増えている。このようなロボットにおいては、作業用アームの動作領域に人などが侵入して、ロボットと人とが干渉してしまうリスクを回避するために、安全対策が図られている。例えば、人に取り付けた発信機と、この発信機に対応し装置に取り付けた受信機と、この受信機の出力信号を演算処理して装置に対する人の位置を検出する位置検出手段を備えたマン・マシン作業システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されたマン・マシン作業システムにおいては、位置検出手段によって、装置に対する人の位置関係が検出され、当該位置関係により人の動作領域が設定される。
【0004】
また、人(作業者)に対する安全対策としては、人の各部位を保護するための装着物品を装着することが挙げられる。このような装着物品は、ヘルメットやゴーグル等、人の各部位を個々に保護するものが多く、様々な種類の装着物品が提案されている。例えば、ヘルメットは人の頭部を保護し、ゴーグルは人の眼を保護する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4219870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、安全対策のための装着物品の選択が適切でなかったり、人(作業者)が装着物品を装着し忘れたりする場合がある。そして、適切な装着物品を装着していない状態で、ロボットの動作領域に人が侵入すると、動作領域に侵入した人の安全が十分に守られない場合がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、より安全性を向上したロボットシステム、及び、ロボットシステムの制御方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的側面としてのロボットシステムは、動作可能な作業用アームを有するロボットと、移動体が装着した一以上の装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する装着部品検知手段と、装着部品検知手段によって検知された検知結果に基づいて、ロボットの動作制御を変更する動作制御変更手段と、を備える。
【0009】
ロボットは、作業用アームを支持する基台と、基台を移動させる移動機構とを有していてもよい。
【0010】
動作制御変更手段は、移動体が装着した装着物品の数により、動作制御を変更してもよい。
【0011】
動作制御変更手段は、装着物品の種類ごとに定められた重み付け値に基づいて、移動体の装着レベルを設定し、当該装着レベルに応じて、動作制御を変更してもよい。
【0012】
動作制御変更手段は、移動体が装着した装着物品が所定の条件を満たさない場合に、ロボットの動作停止、ロボットの動作速度の低減、ロボットのアクチュエータの出力の低減、及び、ロボットの動作領域範囲の縮小のうち少なくともいずれか一の動作制御を選択してもよい。
【0013】
動作制御変更手段は、特定の装着部品が検知されない場合に、ロボットの動作停止、警報の発信、ロボットの動作速度の低減、ロボットのアクチュエータの出力の低減、及び、ロボットの動作領域範囲の縮小のうち少なくともいずれか1つを実行してもよい。
【0014】
装着部品検知手段は、装着物品ごとに付されたICタグからデータを読み取って、装着物品の有無および種類を検知してもよい。
【0015】
装着部品検知手段は、装着物品ごとに付されたバーコードを照合して、装着物品の有無および種類を検知してもよい。
【0016】
他の例示的側面としてのロボットシステムの制御方法は、移動体が装着した一以上の装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する装着部品検知ステップと、装着部品検知ステップによって得られた検知結果に基づいて、動作可能な作業用アームを有するロボットの動作制御を変更する動作制御変更ステップと、を有する。
【0017】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0018】
より安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1に係るロボットシステムの動作を説明するための模式図である。
図2】実施の形態1に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。
図3】変形例1に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。
図4】変形例2に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。
図5】変形例3に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。
図6】変形例4に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。
図7】ヘルメットに関する情報を有するICタグがヘルメットに付されている様子を示す説明図である。
図8】安全靴に関する情報を有するICタグが安全靴に付されている様子を示す説明図である。
図9】ゴーグルに関する情報を有するICタグがゴーグルに付されている様子を示す説明図である。
図10】手袋に関する情報を有するICタグが手袋に付されている様子を示す説明図である。
図11】防護服に関する情報を有するICタグが防護服に付されている様子を示す説明図である。
【実施するための形態】
【0020】
[実施の形態1]
以下、実施の形態1に係るロボットシステムについて、図面を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係るロボットシステムの動作を説明するための模式図である。図2は、実施の形態1に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。
【0021】
図1に示すように、ロボットシステム2は、ロボット3と、装着部品検知手段5と、動作制御変更手段6と、動作制御手段10と、を備える。ロボット3は、動作可能な作業用アーム4を有する。動作可能とは、エネルギーを物理的運動に変換するアクチュエータなどの機械要素によって、作業用アーム4が、伸縮、屈伸、旋回などの動作を実行できることをいう。
【0022】
動作制御手段10は、ロボット3や作業用アーム4の動作を制御するものである。予め教示された動作プログラムに従って作業用アーム4のアクチュエータへ動作指令を出力する一方、アクチュエータの位置情報などを監視し、作業用アーム4が動作指令に沿った動作をするよう制御する。また後述する動作制御変更手段6からの指令に従って、作業用アーム4の動作速度を変更したり、停止させたりする。
【0023】
その他にも、ロボットシステム2は動作プログラムや制御に必要なパラメータを記憶する記憶手段を有するが図では省略している。
【0024】
ロボット3は、後述する移動体9が周囲に存在しない場合には、予め教示された動作プログラムにて指定された速度で動作する。
【0025】
装着部品検知手段5は、移動体9が装着した一以上の装着物品7ごとに付された装着部品8を個々に検知する。動作制御変更手段6は、装着部品検知手段5によって検知された検知結果に基づいて、ロボット3の動作制御を変更するよう動作制御手段10に指令する。即ち、図2に示すように、実施の形態1に係るロボットシステムは、まず、装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する(装着部品検知ステップS1)。次に、装着部品の検知結果に基づいて、ロボットの動作制御を変更する(動作制御変更ステップS2)。
【0026】
図1に示すように、ロボットシステム2は、移動体9が装着した装着物品7の装着状況に応じて、ロボット3の動作制御を変更することができ、より安全性を向上することができる。例えば、移動体9が装着した装着物品7の選択が適切でない場合や、移動体9が装着物品7を装着し忘れた場合などに、現在の装着状況に適合するように、ロボット3の速度を低減するなど、動作を制限する方向に動作制御を変更することができる。また、このようなロボットシステム2は、移動体9の装着物品7の装着状況に合わせて、ロボット3の動作制御を変更するため、移動体9の装着物品7の装着状況が適切であればロボット3の過剰な速度制限や動作制限が少なくなり、タクトタイムが短縮し、ロボット3の生産性及び稼働率が向上する。
【0027】
図1に示すロボットシステム2は、床面、天井、壁面などに設置された、多関節の作業用アーム4を有するロボット3を備えている。ロボット3は、動作可能な作業用アーム4を有するものであれば、このようなロボット3に限定されることはない。例えば、図示は省略するが、ロボットは、作業用アームを支持する基台と、この基台を所定の範囲で平行移動させる移動機構とを有するものであってもよい。このような移動機構を有するロボットを備えたロボットシステムにおいては、動作制御手段による動作制御に、作業用アームの動作制御に加えて、上記移動機構の動作制御が含まれる。
【0028】
移動体9としては、例えば、人間、ハンドリフト、搬送台車の他、ロボット3以外の自走可能なロボットなどを挙げることができる。特に、人間、及び人力走行の移動体であることが好ましい。装着物品7は、移動体9が装着可能な物品であり、特に、移動体9が安全対策を目的として装着する物品であることが好ましい。例えば、移動体9が人の場合には、人の各部位を個々に保護する装着物品7を挙げることができる。また、装着物品7には、それぞれの装着物品7ごとに装着部品8が付されている。装着物品7ごとに付された装着部品8は、当該装着部品8に付された各装着物品7に関する情報、又は当該情報を一定の規則に従い変換したコード(識別子)を有していてもよい。図1においては、移動体9が人間であり、この移動体9は、装着物品7として、ヘルメット7a、及び安全靴7bを装着している。また、ヘルメット7a、及び安全靴7bのそれぞれには、装着部品8として、それぞれの装着物品7に関する情報を記憶したICタグ8a,8bが付されている。装着物品7としては、ヘルメット7a、及び安全靴7b以外に、図示は省略するが、例えば、手袋、ゴーグル、防護服、マスク、ネックプロテクタなどを挙げることができる。このような他の装着物品にも、それぞれの装着物品ごとに、装着部品が付されていることが好ましい。また、装着部品8は、上記したICタグ8a,8bの他、例えば、バーコードなどであってもよい。装着部品8は、上記した装着物品7に関する情報を有しておらず、単に、装着部品検知手段5によって、装着物品7の有無を検知するものであってもよい。図7は、ヘルメット7aに関する情報を有するICタグ8aがヘルメット7aに付されている(装備されている)様子を示す。図8は、安全靴7bに関する情報を有するICタグ8bが安全靴7bに付されている様子を示す。図9は、ゴーグル7cに関する情報を有するICタグ8cがゴーグル7cに付されている様子を示す。図10は、手袋7dに関する情報を有するICタグ8dが手袋7dに付されている様子を示す。図11は、防護服7eに関する情報を有するICタグ8eが防護服7eに付されている様子を示す。
【0029】
装着部品検知手段5は、装着物品7ごとに付された装着部品8であるICタグ8a,8bからデータを読み取って、装着物品7の有無および種類を検知してもよい。このような装着部品検知手段5としては、ICタグ8a,8bからデータを読み取るICタグリーダ5aを挙げることができる。図1に示すロボットシステム2における装着部品検知手段5は、移動体9が通過するゲート5b、及びゲート5bに配設されたICタグリーダ5aを有する。
【0030】
また図示は省略するが、ロボットシステム2の周囲をゲート5bおよびゲート5bに連結された安全柵で囲み、移動体9がロボットシステム2に接近する際には必ずゲート5bを通過するよう構成するのが望ましい。このような装着部品検知手段5によれば、移動体9がゲート5bを通過する際に、ICタグリーダ5aによって、装着物品7ごとに付されたICタグ8a,8bに記憶されたデータを読み取ることができる。また、図示は省略するが、装着部品検知手段は、装着物品ごとに付されたバーコードを照合して、装着物品の有無および種類を検知してもよい。このような装着部品検知手段としては、バーコードリーダを挙げることができる。
【0031】
動作制御変更手段6は、装着部品検知手段5によって検知された検知結果に基づいて動作制御手段10へ指令を出力する。動作制御手段10はこの指令を受けて、ロボット3の動作制御を変更する。動作制御変更手段6は、装着部品検知手段5による検知情報を受信する検知情報受信部6aと、検知情報受信部にて受信した検知情報から、移動体9の装着物品7の装着状況に適合したロボット3の動作制御を選択する動作制御選択部6bと、選択された動作制御を動作制御手段10に伝達する動作制御伝達部6cと、を有していてもよい。
【0032】
[変形例1]
図3は、変形例1に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。変形例1に係るロボットシステムにおいては、動作制御変更手段は、移動体が装着した装着物品の数、別言すれば、装着部品検知手段によって検知された装着物品の数により、ロボットの動作制御を変更する。即ち、図3に示すように、まず、装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する(装着部品検知ステップS1)。装着部品の検知方法は、実施の形態1に係るロボットシステムと同様である。次に、移動体が装着した装着物品の数に基づいて、ロボットの動作制御を変更する(動作制御変更ステップS2a)。例えば、移動体が装着した装着物品の数が多ければ、移動体の安全がより高いレベルで守られていることがあるため、ロボットの速度制限や動作制限を緩くしてもよい。例えば動作プログラムで指定された動作速度に近い速度でロボットを動作させるようにする。一方で、移動体が装着した装着物品の数が少なければ、移動体の安全が十分に守られていないことがあるため、ロボットの速度制限や動作制限を厳しくしてもよい。例えば動作プログラムで指定された動作速度の半分以下の速度でロボットを動作させるようにする。このように、ロボットの動作制御を選択する選択基準を、装着部品検知手段によって検知された装着物品の数とすることで、移動体の装着物品の装着状況に合わせて、ロボットの動作制御を適切に変更することができる。変形例1に係るロボットシステムのその他の構成については、実施の形態1に係るロボットシステムと同様であるので、説明を省略する。
【0033】
[変形例2]
図4は、変形例2に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。変形例2に係るロボットシステムにおいては、動作制御変更手段は、装着物品の種類ごとに定められた重み付け値に基づいて、移動体の装着レベルを設定し、当該装着レベルに応じて、動作制御を変更する。即ち、図4に示すように、まず、装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する(装着部品検知ステップS1)。装着部品の検知方法は、実施の形態1に係るロボットシステムと同様である。次に、装着物品の種類ごとに定められた重み付け値に基づいて、移動体の装着レベルを設定する(動作制御変更ステップS2b)。次に、装着レベルに基づいて、ロボットの動作制御を変更する(動作制御変更ステップS2c)。これにより、装着レベルが適切であればロボット3の速度制限や動作制限が少なくなり、タクトタイムが短縮し、ロボットの生産性及び稼働率が向上する。重み付け値は、装着物品の安全性を数値化するものである。例えば、高い防護性能をあまり必要としない装着物品を1点、高い防護性能を必要とする装着物品を10点とした、10点満点の重み付け値を挙げることができる。
【0034】
ここで、「高い防護性能を必要とする装着物品」とは、例えば、人間の頭や目を保護するための装着物品であって、装着しないことによる安全性のリスクが高いものをいう。ヘルメットやバイザー等がこれに該当してもよい。「高い防護性能をあまり必要としない装着物品」とは、例えば、装着しないことによる安全性のリスクがヘルメットやバイザー等に比較してあまり高くないものをいう。安全靴やグローブ等がこれに該当してもよい。
【0035】
また、同じ種類の装着物品であっても、装着物品の特色が異なる場合には、それぞれの特色に応じた重み付け値を定めてもよい。例えば、装着物品がヘルメットである場合、目を保護するためのバイザーを有するヘルメットと、このようなバイザーのないヘルメットとで、重み付け値の大きさを変えてもよい。更に、移動体のどの部位に各装着物品が装着されるかを考慮して、それぞれの装着物品の重み付け値を定めてもよい。例えば、ロボットと移動体とが干渉した際に、重大な損害が想定される部位に装着される装着物品については、重み付け値の大きさを、より大きくしてもよい。具体例を挙げると、人間の頭部に装着されるヘルメットには他の装着物品より大きな重み付け値を設定する等である。このようにして重み付け値の大きさを定め、移動体の装着レベルを設定することにより、より安全性を向上することができる。装着レベルは、移動体が装着した各装着物品の重み付け値の合計値から求めることができる。重み付け値の合計値が大きいほど、装着レベルが高く、移動体の安全対策がより充実していることとなる。また、重み付け値の合計値を、移動体が装着した装着物品の数で除算し、重み付け値の平均値から、装着レベルを求めてもよい。これにより、例えば、重み付け値の低い装着物品を大量に装着している場合などに、装着レベルが過剰に高くなってしまうことを抑制することができる。装着物品の重み付け値、及び装着レベルについては、ロボットが実行する動作内容などに応じて、適宜設定することができる。変形例2に係るロボットシステムのその他の構成については、実施の形態1に係るロボットシステムと同様であるので、説明を省略する。
【0036】
[変形例3]
図5は、変形例3に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。変形例3に係るロボットシステムにおいては、動作制御変更手段は、移動体が装着した装着物品が所定の条件を満たさない場合に、ロボットの動作停止、ロボットの動作速度の低減、ロボットのアクチュエータの出力の低減、及び、ロボットの動作領域範囲の縮小のうち少なくともいずれか1つの動作制御を選択する。即ち、図5に示すように、まず、装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する(装着部品検知ステップS1)。装着部品の検知方法は、実施の形態1に係るロボットシステムと同様である。次に、移動体が装着した装着物品が所定の条件を満たすか否かの判定を行う(動作制御変更ステップS2d)。所定の条件を満たす場合には、装着部品の検知結果に基づいて、ロボットの動作制御を変更する(動作制御変更ステップS2f)。また、所定の条件を満たさない場合には、特定の動作制御、即ち、ロボットの動作停止、ロボットの動作速度の低減、ロボットのアクチュエータの出力の低減、及び、ロボットの動作領域範囲の縮小のうち少なくともいずれか1つの動作制御を選択する(動作制御変更ステップS2e)。上述した特定の動作制御は、ロボットと移動体との干渉の恐れや、両者が干渉した際のリスクを低減するものであり、このような動作制御を選択することにより、安全性をより向上することができる。上記所定の条件については特に制限はないが、ロボットの動作内容に対し、移動体が装着した装着物品によって十分な安全性が確保されるか否かを、上記所定の条件の設定基準とすることが好ましい。例えば、装着物品の数により、ロボットの動作制御を変更する場合には、移動体が装着した装着物品の数を、所定の条件の設定基準としてもよい。また、重み付け値に基づいて、移動体の装着レベルを設定する場合には、所定の装着レベルに到達していることを、上記所定の条件の設定基準としてもよい。変形例3に係るロボットシステムのその他の構成については、実施の形態1に係るロボットシステムと同様であるので、説明を省略する。
【0037】
[変形例4]
図6は、変形例4に係るロボットシステムにおける、ロボットの動作制御を変更する手順を説明するフローチャートである。変形例4に係るロボットシステムにおいては、動作制御変更手段は、特定の装着部品が検知されない場合に、ロボットの動作停止、警報の発信、ロボットの動作速度の低減、ロボットのアクチュエータの出力の低減、ロボットの動作領域範囲の縮小のうち少なくともいずれか1つを実行する。即ち、図6に示すように、まず、装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する(装着部品検知ステップS1)。装着部品の検知方法は、実施の形態1に係るロボットシステムと同様である。次に、特定の装着部品が検知されたか否かの判定を行う(動作制御変更ステップS2g)。特定の装着部品が検知された場合には、装着部品の検知結果に基づいて、ロボットの動作制御を変更する(動作制御変更ステップS2i)。また、特定の装着部品が検知されない場合には、特定の動作制御、即ち、ロボットの動作停止、警報の発信、ロボットの動作速度の低減、ロボットのアクチュエータの出力の低減、ロボットの動作領域範囲の縮小のうち少なくともいずれか1つを実行する(動作制御変更ステップS2h)。これにより、ロボットと移動体との干渉の恐れや、両者が干渉した際のリスクを低減し、安全性をより向上することができる。特定の装着部品としては、ロボットと移動体とが干渉した際に、重大な損害が想定される部位に装着される装着物品であることが好ましい。具体例を挙げると、人間の頭部に装着されるヘルメットである。これにより、重大な損害の発生の抑制、又は当該損害の発生に対する警告を行うことができる。変形例4に係るロボットシステムのその他の構成については、実施の形態1に係るロボットシステムと同様であるので、説明を省略する。
【0038】
[実施の形態2]
以下、実施の形態2に係るロボットシステムの制御方法について説明する。実施の形態2に係るロボットシステムの制御方法は、図1に示す実施の形態1に係るロボットシステム2を制御する方法である。ロボットシステムの制御方法は、装着部品検知ステップと、動作制御変更ステップと、を有する。装着部品検知ステップは、図1に示すような、移動体9が装着した一以上の装着物品7ごとに付された装着部品8を個々に検知するステップである。動作制御変更ステップは、装着部品検知ステップによって得られた検知結果に基づいて、動作可能な作業用アーム4を有するロボット3の動作制御を変更するステップである。
【0039】
ここで、図2に示すフローチャートに基づいて、実施の形態2に係るロボットシステムの制御方法における制御の流れを、ステップ順に説明する。まず、装着部品検知ステップS1として、装着物品ごとに付された装着部品を個々に検知する。次に、動作制御変更ステップS2として、装着部品検知ステップS1によって得られた検知結果に基づいて、動作可能な作業用アームを有するロボットの動作制御を変更する。このようなロボットシステムの制御方法によれば、より安全性を向上することができる。また、移動体の装着物品の装着状況に合わせて、ロボットの動作制御を変更するため、ロボットの速度制限や動作制限が少なくなり、タクトタイムが短縮し、ロボットの生産性及び稼働率が向上する。
【0040】
また、ロボットシステムの制御方法は、変形例1から変形例4に係るロボットシステムにて説明したロボットシステムを制御する方法であってもよい。即ち、これまでに説明した各変形例のロボットシステムの構成に合わせて、装着部品検知ステップ、及び動作制御変更ステップを適宜変形してもよい。
【符号の説明】
【0041】
2:ロボットシステム
3:ロボット
4:作業用アーム
5:装着部品検知手段
5a:ICタグリーダ
5b:ゲート
6:動作制御変更手段
6a:検知情報受信部
6b:動作制御選択部
6c:動作制御伝達部
7:装着物品
7a:ヘルメット
7b:安全靴
8:装着部品
8a,8b:ICタグ
9:移動体
10:動作制御手段
S1:装着部品検知ステップ
S2,S2a,S2b,S2c,S2d,S2e,S2f,S2g,S2h,S2i:動作制御変更ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11