(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
星型結線され、電気角において互いにずれて配置された第1および第2の多相巻線(23、24)を含む固定子(22)、および回転子(21)を有する回転電機(12)と、
第1の電池(13)と前記第1の多相巻線(23)との間に接続される第1のインバータ回路(15)と、
第2の電池(14)と前記第2の多相巻線(24)との間に接続される第2のインバータ回路(16)と、
前記第1の多相巻線(23)の中性点と前記第2の多相巻線(24)の中性点とを接続する中性点回路(25)と、
前記第1および第2のインバータ回路に含まれる複数のスイッチ素子の少なくとも一部をスイッチング駆動し、前記第1および第2の多相巻線の少なくとも一部の相巻線に通電することにより、前記回転電機をリアクトルとして利用して前記第1の電池と前記第2の電池との間において電力を移動させる制御装置(31)とを備え、
前記制御装置は、
前記第1の電池と前記第2の電池との間における電力の移動量を判定する手段(37、44、154、254)と、
前記移動量に応じて、前記移動量が小さくなるほど前記相巻線の数を減少させるように前記スイッチング駆動によって通電される前記相巻線の数を切替えるスイッチング制御手段(41、42、43)を備えることを特徴とする電力変換装置。
さらに、前記少相通電手段により通電される前記相巻線を切換える相切換手段(364)を備えることを特徴とする請求項3、請求項6、請求項7、請求項9、請求項10、および請求項11のいずれかに記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1において、電力変換装置10は、車両に搭載されている。車両は負荷(LD)11と、この負荷11を回転駆動する回転電機12とを有する。回転電機12は、回転子21と、固定子22とを備える。回転子21は、負荷11と作動的に連結されている。よって、回転電機12は、負荷11を駆動することができる。また、回転電機12は、負荷11から回転動力を得て回転することもある。回転電機12は、電動機および/または発電機として機能することができる。
【0013】
負荷11の一例は、車両に搭載された機器である。負荷11の他の一例は、車両の推進装置である。例えば、負荷11は、道路走行車両の駆動輪を含むことができる。さらに、負荷11は、内燃機関などの動力源を含むことができる。ひとつの例において、負荷11と回転電機12とは、電動車両のための推進装置を提供する。電動車両は、回転電機12のみを動力源とする電気自動車、または内燃機関と回転電機12とを動力源とするハイブリッド自動車である。この場合、回転電機12は、選択的に電動機または発電機として利用される。他のひとつの例において、負荷11は内燃機関であり、回転電機12は車両用の発電機を提供することができる。
【0014】
回転電機12は、同期機である。回転子21は、複数の磁極を備える。回転子21は、複数の磁極のそれぞれを予め決められた極性に励磁する。回転子21は、磁極を励磁するための永久磁石を備えることができる。固定子22は、多相巻線を備える。固定子22は、二組の多相巻線23、24を備える。多相巻線23、24は、星形結線されている。回転電機12は、二つの多相巻線23、24を有するデュアル巻線型の回転電機12とも呼ばれる。
【0015】
多相巻線23、24は、三相巻線である。第1の多相巻線23は、複数の巻線X、Y、Zを備える。以下の説明において、複数の巻線は、X相巻線、Y相巻線、Z相巻線と呼ばれることがある。第2の多相巻線24は、複数の巻線U、V、Wを備える。以下の説明において、複数の巻線は、U相巻線、V相巻線、W相巻線と呼ばれることがある。
【0016】
多相巻線23と、多相巻線24とは、近接する2つの巻線が、電気角に関して互いにずれるように固定子22に配置されている。多相巻線23と、多相巻線24との間のずれ角度の中心値は、π/6、すなわち30度である。図示の例では、X相巻線とU相巻線との間、Y相巻線とV相巻線との間、Z相巻線とW相巻線との間が30度だけずれている。回転電機12は、星型結線され、電気角において互いにずれて配置された第1および第2の多相巻線23、24を含む固定子22、および回転子21を有する。
【0017】
多相巻線23の中性点と多相巻線24の中性点との間には、それらを電気的に接続する中性点回路25が設けられている。中性点回路25には、中性点回路25を開閉するためのリレー26が設けられている。
【0018】
電力変換装置10は、車両に搭載された2つの電池13、14の間に設けられている。電池13、14は、充放電可能な二次電池である。電池13、14は、定格電圧、容量などの仕様の少なくとも一部が異なる電池、または同じ電池である。電池13、14は、鉛蓄電池、リチウムイオン電池などによって提供することができる。ひとつの例においては、第1の電池13の第1定格電圧V1は、第2の電池14の第2定格電圧V2より低い。電力変換装置10は、これら電池13、14間における電力の移動を可能とする。例えば、電力変換装置10は、第1の電池13から第2の電池14に電力を供給し、充電する第1方向の電力変換作動を提供する。追加的に、または代替的に、電力変換装置10は、第2電池14から第1の電池13に電力を供給し、充電する第2方向の電力変換作動を提供する。
【0019】
電力変換装置10は、多相巻線23に接続された第1のフルブリッジ回路15を備える。フルブリッジ回路15は、多相巻線23に接続された交流端と、電池13に接続された直流端とを有する。直流端の間には、平滑用の容量素子C1が設けられている。フルブリッジ回路15は、回転電機12の相数に一致する数のスイッチングレグを有する。それぞれのレグは、上アームと下アームとを備える。上アームは、ハイサイドのスイッチ素子を有する。下アームは、ローサイドのスイッチ素子を有する。フルブリッジ回路15は、ハイサイドのスイッチ素子Q1、Q3、Q5と、ローサイドのスイッチ素子Q2、Q4、Q6を備える。フルブリッジ回路15は、三相のインバータ回路15とも呼ばれる。フルブリッジ回路15は、第1のインバータ回路15とも呼ばれる。第1のインバータ回路15は、第1の電池13と第1の多相巻線23との間に接続されている。
【0020】
電力変換装置10は、多相巻線24に接続された第2のフルブリッジ回路16を備える。フルブリッジ回路16は、多相巻線24に接続された交流端と、電池14に接続された直流端とを有する。直流端の間には、平滑用の容量素子C2が設けられている。フルブリッジ回路16は、回転電機12の相数に一致する数のスイッチングレグを有する。それぞれのレグは、上アームと下アームとを備える。上アームは、ハイサイドのスイッチ素子を有する。下アームは、ローサイドのスイッチ素子を有する。フルブリッジ回路16は、ハイサイドのスイッチ素子Q7、Q9、Q11と、ローサイドのスイッチ素子Q8、Q10、Q12を備える。フルブリッジ回路16は、三相のインバータ回路16とも呼ばれる。フルブリッジ回路16は、第2のインバータ回路16とも呼ばれる。第2のインバータ回路16は、第2の電池14と第2の多相巻線24との間に接続されている。
【0021】
複数のスイッチ素子Q1−Q12は、大容量の半導体スイッチング素子によって提供される。例えば、IGBT素子、パワーMOS−FETなどを用いることができる。それぞれのスイッチ素子Q1−Q12は、制御端子を有する。制御端子には、回路を開閉するための制御信号が与えられる。スイッチ素子Q1−Q12は、それらのスイッチング状態を切換えるように、すなわちON状態(閉路)とOFF状態(開路)とを切換えるように制御される。それぞれのスイッチ素子Q1−Q12は、逆方向に通電可能なダイオード要素を含んでいる。
【0022】
電力変換装置10は、回転電機12を電動機および/または発電機として機能させるための回転電機のための制御装置でもある。回転電機12が電動機として利用される場合、第1のインバータ回路15は、電池13から多相巻線23へ三相電力を供給するように制御される。回転電機12が発電機として利用される場合、第1のインバータ回路15は、多相巻線23に誘起された三相電力を整流し、電池13に供給するように制御される。回転電機12が電動機として利用される場合、第2のインバータ回路16は、電池14から多相巻線24へ三相電力を供給するように制御される。回転電機12が発電機として利用される場合、第2のインバータ回路16は、多相巻線24に誘起された三相電力を整流し、電池14に供給するように制御される。
【0023】
さらに、回転電機12が停止しているときに、インバータ回路15、16は、電池13、14間での電力移動を可能とするように昇圧チョッパ回路、および/または降圧チョッパ回路として機能するように制御される。言い換えると、インバータ回路15、16は、昇圧コンバータ回路、および/または降圧コンバータ回路として機能するように制御される。このとき、多相巻線23、24は、平滑化のためのリアクトルを提供する。電力変換装置10は、双方向の昇降圧型電力変換器として機能することができる。これにより、電池13から電池14の充電、および電池14から電池13の充電の両方が可能となる。なお、インバータ回路15、16が電力変換装置として機能するとき、回転子21は回転しない。
【0024】
電力変換装置10は、インバータ回路15、16を制御するための制御システムを備える。制御システムは、制御装置(CNTR)31を備える。制御装置31は、複数のスイッチ素子Q1−Q12を制御する。制御装置31は、リレー26を制御する。制御システムは、電力変換装置10の作動状態を検出する複数のセンサを備える。制御装置31は、複数のセンサから検出信号を入力する。制御装置31は、複数のセンサによって検出される作動状態に応じて、複数のスイッチ素子Q1−Q12を制御する。
【0025】
制御装置31は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置31は、処理装置(CPU)と、プログラムを記憶する記憶媒体としてのメモリ(MMR)とを有する。制御装置は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクによって提供されうる。プログラムは、制御装置31によって実行されることによって、制御装置31をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置31を機能させる。制御装置31が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0026】
複数のセンサは、複数の電圧センサと、複数の電流センサとを含む。電圧センサ32は、電池13の両端における電圧V1を検出する。電圧センサ33は、電池14の両端における電圧V2を検出する。電圧センサ32、33は、第1および第2の電池13、14の電圧V1、V2を検出する電圧検出手段を提供する。複数のセンサは、多相巻線23、24のそれぞれの相電流を検出する電流センサ34、35を含む。図中には、X相電流を検出する電流センサ、およびU相電流を検出する電流センサに符号34、35が付されている。この実施形態では、X相電流、Y相電流、Z相電流、U相電流、V相電流、およびW相電流を検出可能である。複数のセンサは、中性点回路25に流れる中性点電流を検出する電流センサ36を含む。さらに、複数のセンサは、回転子21の回転角度、すなわち回転位置を検出する位置検出器(POSM)37を備える。位置検出器37は、回転電機12に設けられた回転角度センサ、または電流値などに基づいて回転位置を推定する角度推定処理によって提供される。
【0027】
制御装置31は、インバータ回路15、16のスイッチ素子Q1−Q12のスイッチング状態を制御することにより、インバータ回路15、16および回転電機12を電力変換回路として機能させるスイッチング制御部(SWDM)41を備える。スイッチング制御部41は、スイッチ素子Q1−Q12のひとつまたは複数のON−OFF状態を高い周波数で切換えることにより、インバータ回路15、16および回転電機12をチョッパ回路として機能させる。言い換えると、スイッチング制御部41は、スイッチ素子Q1−Q12のひとつまたは複数をスイッチング駆動する。これにより、多相巻線23、24に含まれる複数の相巻線の少なくともひとつ、またはそれらの組み合わせに流れる電流が高い周波数で増減される。以下の説明において、スイッチング駆動の語は、スイッチ素子の状態を高い周波数で切換えることを意味する場合がある。
【0028】
スイッチング制御部41は、インバータ回路15およびインバータ回路16の少なくとも一方のスイッチ素子をスイッチング駆動する。スイッチング制御部41は、インバータ回路15のスイッチ素子だけをスイッチング駆動してもよい。スイッチング制御部41は、インバータ回路16のスイッチ素子だけをスイッチング駆動してもよい。スイッチング制御部41は、インバータ回路15、16両方のスイッチ素子をスイッチング駆動してもよい。
【0029】
例えば、電池13の電圧を降圧し、電池14へ供給する場合、スイッチング制御部41は、インバータ回路15をスイッチング駆動し、インバータ回路16を固定的な状態に駆動する。この場合、インバータ回路15に含まれるスイッチ素子Q1−Q6の少なくとも一部がスイッチング駆動される。インバータ回路16に含まれるスイッチ素子Q7−Q12は、多相巻線24から出力される電流を電池14に供給するように固定的にONまたはOFFに駆動される。これにより電力変換装置10は降圧型のチョッパ回路として機能する。
【0030】
例えば、電池13の電圧を昇圧し、電池14へ供給する場合、スイッチング制御部41は、インバータ回路16をスイッチング駆動し、インバータ回路15を固定的な状態に駆動する。この場合、インバータ回路16に含まれるスイッチ素子Q7−Q12の少なくとも一部がスイッチング駆動される。インバータ回路15に含まれるスイッチ素子Q1−Q6は、電池13から多相巻線23へ電流を供給するように固定的にONまたはOFFに駆動される。これにより電力変換装置10は昇圧型のチョッパ回路として機能する。
【0031】
スイッチング制御部41は、リレー26の開閉状態も制御する。スイッチング制御部41は、インバータ回路15、16および回転電機12を電力変換回路として機能させるとき、リレー26を閉路させる。これにより中性点回路25が提供される。
【0032】
スイッチング制御部41は、多相巻線23、24のいずれか一方または両方において、通電される相巻線の数を変化させる相数切換部42、43を有する。相数切換部42、43は、スイッチング駆動によって交流が流される相巻線の数を、第1の数と、この第1の数より多い第2の数とに切換える。
【0033】
相数切換部42、43は、第1の数の相巻線に通電する少相通電部(LPHM)42を含むことができる。少相通電部42は、第1の数の相巻線に対応するスイッチ素子だけをスイッチング駆動する。少相通電部42は、残りのスイッチ素子を固定的に駆動する。
【0034】
相数切換部42、43は、第2の数の相巻線に通電する多相通電部(MPHM)43を含むことができる。多相通電部43は、第2の数の相巻線に対応するスイッチ素子だけをスイッチング駆動する。多相通電部43は、残りのスイッチ素子を固定的に駆動する。第2の数が多相巻線23、24の相数に対応する場合、多相通電部43は、すべてのスイッチ素子をスイッチング駆動する。
【0035】
例えば、少相通電部42がひとつの相巻線に給電する場合、多相通電部43は、2つまたは3つの相巻線に給電する。少相通電部42が2つの相巻線に給電する場合、多相通電部43は、3つの相巻線に給電する。
【0036】
図2は、ひとつの相巻線だけに通電される一相通電1Pの一例を示す。図示の例では、多相巻線23のX相巻線だけに通電されている。インバータ回路15だけがスイッチング駆動される場合、一相通電1Pは、X相巻線だけ、Y相巻線だけ、またはZ相巻線だけへの通電によって提供することができる。また、インバータ回路16だけがスイッチング駆動される場合、一相通電1Pは、U相巻線だけ、V相巻線だけ、またはW相巻線だけへの通電によって提供することができる。
【0037】
図3は、2つの相巻線だけに通電される二相通電2Pの一例を示す。図示の例では、多相巻線23のX相巻線とY相巻線だけに通電されている。インバータ回路15だけがスイッチング駆動される場合、二相通電2Pは、X相巻線とY相巻線、Y相巻線とZ相巻線、またはZ相巻線とX相巻線への通電によって提供することができる。また、インバータ回路16だけがスイッチング駆動される場合、二相通電2Pは、U相巻線とV相巻線、V相巻線とW相巻線、またはW相巻線とU相巻線への通電によって提供することができる。
【0038】
図4は、すべての相巻線に通電される三相通電3Pを示す。インバータ回路15だけがスイッチング駆動される場合、図示されるように、三相通電3PはX相巻線とY相巻線とZ相巻線への通電によって提供することができる。インバータ回路16だけがスイッチング駆動される場合、三相通電3Pは、U相巻線とV相巻線とW相巻線への通電によって提供することができる。
【0039】
図5に図示されるように、通電される相巻線の数は、鉄損Pirに差を与える。図中において、横軸は変換される電力、すなわち出力電力Pout(W)を示す。縦軸は、鉄損Pir(W)を示す。破線および菱形は、一相通電1Pを示す。実線および四角形は、二相通電2Pを示す。一点鎖線および三角形は、三相通電3Pを示す。相数が少ないほど、鉄損Pirは小さい。出力電力Poutが変化しても、鉄損Pirはほぼ一定である。
【0040】
図6に図示されるように、通電される相巻線の数は、銅損Pcpに差を与える。図中において、横軸は出力電力Pout(W)を示す。縦軸は、銅損Pcp(W)を示す。相数が多いほど、銅損Pcpは小さい。出力電力Poutが小さいほど、銅損Pcpは小さい。出力電力Poutが増加すると、銅損Pcpは増加する。出力電力Poutの増加に対する銅損Pcpの増加割合は、相数が多いほど、小さい。
【0041】
出力電力Poutが小さい領域では、銅損Pcpの絶対値は小さい。しかも、相数に起因する差は小さい。その一方で、出力電力Poutが小さい領域では、相数が少ないほど、鉄損Pirが抑制される。よって、鉄損Pirを抑制するように相数を選択することが有利となる。
【0042】
出力電力Poutが大きい領域では、銅損Pcpの絶対値は大きい。しかも、相数に起因する差は大きい。このため、出力電力Poutが大きい領域では、相数が多いほど、銅損Pcpが抑制される。その一方で、出力電力Poutが大きい領域では、相数が少ないほど、鉄損Pirが抑制される。しかし、出力電力Poutが大きい領域では、銅損Pcが鉄損Pirを上回る場合もある。この場合、銅損Pcpを抑制するように相数を選択することが有利となる。
【0043】
図7に図示されるように、通電される相巻線の数は、回転電機12をリアクトルとして利用した電力変換装置10の変換効率EFFに差を与える。図中において、横軸は出力電力Pout(W)を示す。縦軸は、変換効率EFF(%)を示す。
【0044】
一相通電1Pは、出力電力Poutが小さい領域において高い効率EFFを提供する。しかし、一相通電1Pは、出力電力Poutが大きくなると、銅損Pcpの増加に起因して、効率EFFが低下する。
【0045】
二相通電2Pは、出力電力Poutが小さい領域において一相通電1Pより低い効率EFFを提供する。二相通電2Pは、出力電力Poutが大きくなると、銅損Pcpの増加に起因して、効率EFFが低下する。しかし、二相通電2Pは、出力電力Poutが大きい領域においても、一相通電1Pより高い効率EFFを提供する。二相通電2Pは、出力電力Poutが中間的な値をとる領域において、一相通電1Pより高く、三相通電3Pより高い効率EFFを提供する。ただし、この領域の幅は狭い。
【0046】
三相通電3Pは、出力電力Poutが小さい領域において一相通電1Pより低く、しかも二相通電2Pより低い効率EFFを提供する。三相通電3Pにおいても、出力電力Poutが大きくなると、銅損Pcpが増加する。しかし、三相通電3Pにおいては、銅損Pcpの増加割合が小さい。このため、三相通電3Pは、出力電力Poutが大きい領域において高い効率EFFを提供する。三相通電3Pは、出力電力Poutが大きい領域において、一相通電1Pより高く、二相通電2Pより高い効率EFFを提供する。
【0047】
図1に戻り、少相通電部42が利用される場合、大きなインダクタンスを確保できるから、鉄損Pirを抑制するために有利である。しかし、少ない数の相巻線に通電するから、変換される電力が大きくなると銅損Pcpが大きくなる。この結果、変換される電力が大きい領域において、電力変換効率が低下する。多相通電部43が利用される場合、充電経路のインダクタンスは三相間の漏れインダクタンスでありインダクタンスが小さい。このため、スイッチング駆動に起因して巻線に流れるリップル電流が大きくなる。このリップル電流は、回転子21および固定子22に大きな磁束密度の変動を与えるから、鉄損Pirが大きくなる。この鉄損Pirは、変換される電力が小さい領域において、電力効率が低くなる大きな要因となる。このため、多相通電部44は、銅損Pcpを抑制するために有利であるが、鉄損Pirが大きい。
【0048】
制御装置31は、さらに、電力変換装置10によって変換されている電力、すなわち出力電力Poutが所定の閾値を上回るか否かを判定する電力判定部(PWDM)44を備える。出力電力Poutは、回転電機12の多相巻線23、24を経由して移動する電力でもある。ここでは、電力の瞬時値、または所定期間にわたる電力の積分値を用いることができる。出力電力Poutは、電力変換装置10の出力電流Ioutと出力電圧Voutから算出することができる。出力電圧Voutはほぼ一定であるから、出力電力Poutは、出力電流Ioutによって示すことができる。出力電流Ioutは中性点回路25に流れる電流によって示すことができる。出力電流Ioutは多相巻線23、24に流れる電流の総和によって示すことができる。
【0049】
相数切換部42、43は、2つの多相巻線23、24の片方における通電される相巻線の数を切り替えることにより、広い電力範囲にわたって高い電力変換効率を実現する。相数切換部42、43は、変換される電力に応じて、通電される相巻線の数を切換える。相数切換部42、43は、電力判定部44の判定結果に応答して、相巻線の数を少なくとも2段階に切換える。相数切換部42、43は、電力判定部44により電力が閾値を下回る小電力状態が判定されるとき、通電される相巻線の数を第1の数とする。相数切換部42、43は、電力判定部44により電力が閾値を上回る大電力状態が判定されるとき、通電される相巻線の数を第2の数とする。電力が閾値と等しい場合、相巻線の数は、第1の数、または第2の数とすることができる。
【0050】
言い換えると、変換される電力に応じて、少相通電部42と、多相通電部43とが選択的に利用される。電力判定部44により小電力状態が判定されるとき、少相通電部42によりインバータ回路15、16が制御される。電力判定部44により大電力状態が判定されるとき、多相通電部43によりインバータ回路15、16が制御される。
【0051】
制御装置31は、第1および第2のインバータ回路15、16に含まれる複数のスイッチ素子の少なくとも一部をスイッチング駆動する。これにより、制御装置31は、第1および第2の多相巻線23、24の少なくとも一部の相巻線に通電することにより、回転電機12をリアクトルとして利用して第1の電池13と第2の電池14との間において電力を移動させる。制御装置31は、第1の電池13と第2の電池14との間における電力の移動量を判定する手段37、44を備える。制御装置31は、電力の移動量に応じて、スイッチング駆動によって通電される相巻線の数を切替えるスイッチング制御手段41、42、43を備える。この構成により、電池間における電力の移動量に適した数の相巻線が利用される。このため、相巻線の数の切換えに応じて、電力変換装置の特性を変化させることができる。
【0052】
図7に戻り、この実施形態では、出力電力Poutの閾値は、出力電流Ioutの閾値Ithによって与えられる。この実施形態では、一相通電1Pと二相通電2Pとが切替えられる。これにより、太実線EMB1で示される効率EFFが得られる。
【0053】
図8は、電力変換処理150を示す。電力変換処理150は、制御装置31により実行される。ステップ151では、電力変換の要求があるか否かが判定される。例えば、回転電機12が停止しており、電池13の電力を、電池14へ供給する必要があるか否かが判定される。追加的に、または代替的に、回転電機12が停止しており、電池14の電力を、電池13へ供給する必要があるか否かが判定されてもよい。
【0054】
ステップ152では、リレー26がON状態に駆動される。これにより、中性点回路25が閉路される。ステップ153では、電力変換装置10を機能させるための基本機能に基づいてインバータ回路15、16が制御される。ステップ153は、出力電力Poutを検出するための実行される。ステップ153では、三相通電が実行される。三相通電では、インバータ回路15、16の一方のすべてのスイッチ素子Q1−Q6、Q7−Q12がスイッチング駆動される。三相通電では、インバータ回路15、16の他方が固定的に駆動される。これにより、多相巻線23、24のすべての相巻線に通電される。ステップ153により、電力変換装置10はコンバータ回路として機能する。ステップ153が実行されることにより、出力電力Poutを示す出力電流Ioutが検出される。出力電流は、複数の電流センサ34、35、36により検出された電流値から得られる。
【0055】
電力変換装置10を降圧回路として機能させる場合、インバータ回路15のすべてのスイッチ素子Q1−Q6がスイッチング駆動され、インバータ回路16が固定的に駆動される。電力変換装置10を昇圧回路として機能させる場合、インバータ回路16のすべてのスイッチ素子Q7−Q12がスイッチング駆動され、インバータ回路15が固定的に駆動される。
【0056】
ステップ154では、出力電流Ioutと所定の閾値Ith1とが比較される。ここでは、出力電力Poutが所定の閾値を上回るか否かの判定が提供される。出力電流Ioutが閾値Ith1を上回る場合、三相通電3Pのためにステップ155へ進む。出力電流Ioutが閾値Ith1を上回らない場合、三相通電3Pのためにステップ156へ進む。ステップ154における判定特性には、ヒステリシスが設けられている。
【0057】
ステップ155では、三相通電3Pが実行される。ステップ155は、多相通電部43を提供する。
【0058】
ステップ156では、一相通電1Pが実行される。ステップ156は、少相通電部42を提供する。一相通電では、インバータ回路15、16の一方の一部のスイッチ素子だけがスイッチング駆動される。一相通電では、インバータ回路15、16の他方が固定的に駆動される。これにより、多相巻線23、24の一部の相巻線に通電される。
【0059】
電力変換装置10を降圧回路として機能させることにより、電池13から電池14へ給電する場合がある。この場合、上流側のインバータ回路15のスイッチ素子Q1−Q6の一部だけがスイッチング駆動され、下流側のインバータ回路16が固定的に駆動される。例えば、X相巻線だけに通電するようにスイッチ素子Q1、Q2だけがスイッチング駆動される。
【0060】
電力変換装置10を昇圧回路として機能させることにより、電池13から電池14へ給電する場合がある。この場合、下流側のインバータ回路16のスイッチ素子Q7−Q12の一部だけがスイッチング駆動され、上流側のインバータ回路15が固定的に駆動される。例えば、U相巻線だけに通電するようにスイッチ素子Q7、Q8だけがスイッチング駆動される。
【0061】
また、電力変換装置10を昇圧回路として機能させ電池14から電池13へ給電する場合がある。この場合、下流側のインバータ回路15のスイッチ素子Q1−Q6の一部だけがスイッチング駆動され、上流側のインバータ回路16が固定的に駆動される。例えば、X相巻線だけに通電するようにスイッチ素子Q1、Q2だけがスイッチング駆動される。
【0062】
電力変換装置10を降圧回路として機能させることにより、電池14から電池13へ給電する場合がある。この場合、上流側のインバータ回路16のスイッチ素子Q7−Q12の一部だけがスイッチング駆動され、下流側のインバータ回路15が固定的に駆動される。例えば、U相巻線だけに通電するようにスイッチ素子Q7、Q8だけがスイッチング駆動される。
【0063】
ステップ157では、電力変換の要求があるか否かが判定される。電力変換の要求がある場合、ステップ154へ戻る。電力変換の要求がなくなった場合、ステップ158へ進む。
【0064】
ステップ158では、インバータ回路15、16の制御が停止される。これにより、多相巻線23、24への通電が停止される。テップ159では、リレー26がOFF状態に駆動される。これにより、中性点回路25が開路される。ステップ151−159により、一連の充電処理が終了し、再び待機状態に戻る。
【0065】
この実施形態では、ステップ156は、電力の移動量Ioutが所定の閾値Ith1を下回るとき、所定の数の相巻線に通電する少相通電手段42を提供する。ステップ156は、電力の移動量が所定の閾値Ith1を下回るとき、ひとつの相巻線に通電する一相通電手段を提供する。ステップ155は、電力の移動量Ioutが所定の閾値Ith1を上回るとき、少相通電手段42より多い数の相巻線に通電する多相通電手段43を提供する。ステップ155は、電力の移動量が閾値Ith1を上回るとき、3つの相巻線に通電する三相通電手段を提供する。この結果、スイッチング制御手段41、42、43は、移動量が小さくなるほど相巻線の数を減少させる。
【0066】
図9は、制御装置31による制御機能を示す。図中には、電池13から電池14を充電するために、電力変換装置10を降圧回路として機能させる場合が図示されている。図示の例では、X相巻線だけに通電するように、インバータ回路15のスイッチ素子Q1、Q2だけがスイッチング駆動される。
【0067】
スイッチング制御部41は、制御要素41a−41hを備える。これらの制御要素41a−41hによって少相通電部42と、多相通電部43とが提供される。加算器41aは、
出力電圧Vout、すなわち充電される電池14の電圧V2と電圧指令値Vout*との偏差を求める。偏差は、フィードバック制御器(FB)41bに入力される。フィードバック制御器41bは、例えば、PID制御器、PI制御器、ヒステリシス制御器によって提供される。加算器41cは、フィードバック制御器41bから出力されるフィードバック制御量と、出力電圧Voutとを加算する。ここでは、出力電圧Voutは、フィードフォワード項として加算されている。乗算器41dは、加算器41cの出力を、入力電圧Vin、すなわち電池13の電圧V1で除算する。これにより、上アームのスイッチ素子Q1をスイッチング駆動するためのデューティ信号のデューティ比が求められる。
【0068】
デューティ比は、パルス幅変調器(PWM)41eに入力される。パルス幅変調器41eは、入力されたデューティ比をもつ矩形波を出力する。パルス幅変調器41eの出力は、上アームのスイッチ素子Q1をスイッチング駆動するための制御信号である。反転器41fは、下アームのスイッチ素子Q2をスイッチング駆動するための制御信号を生成する。デッドタイム生成器(DTM)41gは、上アームと下アームとの導通を回避するように、制御信号にデッドタイムを付与する。反転器41fおよびデッドタイム生成器41gは、他のレグにも対応して設けられている。制御要素41a−41gは、第1および第2の電池13、14のうち、充電される電池14の電圧Vout、V2を目標電圧Vout*にフィードバック制御するようにスイッチ素子Q1−Q6の制御信号のデューディ比を設定するフィードバック制御部を提供する。
【0069】
デッドタイム生成器41gから出力された制御信号は、ゲート回路41hに入力される。ゲート回路41hは、選択信号T1、T2、T3に応じて、制御信号の出力許可、または出力停止を制御する。ゲート回路41hは、複数のAND論理回路によって構成されている。ゲート回路41hは、選択信号T1、T2、T3がハイレベルであるときに対応する制御信号の出力を許可する。ゲート回路41hは、選択信号T1、T2、T3がローレベルであるときに対応する制御信号の出力を停止する。ゲート回路41hは、通電される相巻線に対応するスイッチ素子Q1、Q2にフィードバック制御部から出力される制御信号を与え、通電されない相巻線に対応するスイッチ素子Q3−Q6に、当該スイッチ素子をOFF状態に駆動する信号を与える相選択部を提供する。
【0070】
電力判定部44は、出力電流Ioutと、閾値Ith1とを入力し、選択信号T1、T2、T3を出力する。電力判定部44は、出力電力Poutが閾値Pthを上回るか否かを、出力電流Ioutが閾値Ith1を上回るか否かに基づいて判定する。出力電流Ioutが閾値Ith1を上回る場合、選択信号T1、T2、T3は、ハイレベルである。出力電流Ioutが閾値Ith1を上回らない場合、選択信号T1だけがハイレベルとされ、選択信号T2、T3は、ローレベルである。
【0071】
この構成によると、出力電流Ioutが所定の閾値Ith1を上回る場合(Iout>Ith1)、スイッチ素子Q1−Q6のすべてに制御信号が与えられ、三相通電3Pが実行される。出力電流Ioutが閾値Ith1を下回る場合(Iout<Ith1)、または、出力電流Ioutが閾値Ith1と等しい場合(Iout=Ith1)、X相巻線に対応付けられたスイッチ素子Q1、Q2だけに制御信号が与えられ、一相通電1Pが実行される。
【0072】
この例では、スイッチング制御手段41、42、43は、第1および第2の電池13、14のうち、電圧が高い電池13に接続されたインバータ回路15を少相通電手段42により駆動する。スイッチング制御手段41、42、43は、第1および第2の電池13、14のうち、電圧が低い電池14に接続されたインバータ回路16のハイサイドのスイッチ素子Q7、Q9、Q11をON状態に固定的に駆動する。
【0073】
図10は、電力変換装置10が降圧回路として機能することにより、電池13から電池14へ充電する場合の、出力電流Ioutと、スイッチ素子Q1−Q12の制御信号とを示す。図示されるように、制御信号は、電力変換装置10をチョッパ回路として機能させることができる周期TDをもつ矩形波である。
【0074】
出力電流Ioutが閾値Ith1を下回るとき、スイッチ素子Q1、Q2だけがスイッチング駆動される。スイッチ素子Q3−Q6はスイッチング駆動を停止し、OFF状態に固定される。これにより、一相通電1Pが実行される。インバータ回路16のスイッチ素子Q7−Q12は、直流出力DCが可能な状態に固定的に制御される。具体的には、インバータ回路16の上アームを提供するスイッチ素子Q7、Q9、Q11が常時、継続的にON状態に駆動される。
【0075】
時刻t11において、出力電流Ioutが閾値Ith1を上回ると、三相通電3Pが実行される。三相通電3Pにおいては、インバータ回路15はすべてのアームを提供するすべてのスイッチ素子Q1−Q6がスイッチング駆動される。インバータ回路16のスイッチ素子Q7−Q12は、直流出力DCが可能な状態に固定的に制御される。
【0076】
この実施形態によると、出力電力が小さい領域において、効率EFFが高い一相通電1Pが選択される。また、出力電力が大きい領域において、効率EFFが高い三相通電3Pが選択される。このため、出力電力に応じて、スイッチング駆動される相数が切替えられる。この結果、出力電力が低い領域から高い領域にわたって、高い効率EFFを提供することができる。
【0077】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、一相通電1Pと三相通電3Pとを切換えた。これに加えて、この実施形態では、二相通電2Pも選択可能とされる。この実施形態では、出力電力Poutが大きくなるに従って、一相通電1P、二相通電2P、および三相通電3Pが順に選択される。
【0078】
図11は、電力変換処理250を示す。電力変換処理250においては、上述のステップ154に代えてステップ254が採用されている。電力変換処理250においては、ステップ261が追加的に採用されている。
【0079】
ステップ254では、2つの閾値Ith2、Ith3が用いられる。ステップ254では、出力電流Ioutと、閾値Ith2、Ith3とが比較される。閾値Ith2は、閾値Ith3より小さい。出力電流Ioutが閾値Ith2を下回る場合、一相通電1Pが選択される。出力電流Ioutが閾値Ith2を上回り、閾値Ith3を下回る場合、二相通電2Pが選択される。出力電流Ioutが閾値Ith3を上回る場合、三相通電3Pが選択される。
【0080】
ステップ261では、二相通電2Pが実行される。二相通電2Pにおいては、多相巻線23、24の一方における2つの相巻線へ通電するように、インバータ回路15、16の一方における一部のスイッチ素子がスイッチング制御される。
【0081】
ステップ261は、ステップ156に対して多相通電部43を提供する。ステップ261は、ステップ155に対して少相通電部42を提供する。二相通電では、インバータ回路15、16の一方の一部のスイッチ素子だけがスイッチング駆動される。二相通電では、インバータ回路15、16の他方が固定的に駆動される。これにより、多相巻線23、24の一部の相巻線に通電される。
【0082】
電力変換装置10を降圧回路として機能させることにより、電池13から電池14へ給電する場合がある。この場合、上流側のインバータ回路15のスイッチ素子Q1−Q6の一部だけがスイッチング駆動され、下流側のインバータ回路16が固定的に駆動される。例えば、X相巻線とY相巻線だけに通電するようにスイッチ素子Q1−Q4だけがスイッチング駆動される。
【0083】
電力変換装置10を昇圧回路として機能させることにより、電池13から電池14へ給電する場合がある。この場合、下流側のインバータ回路16のスイッチ素子Q7−Q12の一部だけがスイッチング駆動され、上流側のインバータ回路15が固定的に駆動される。例えば、U相巻線とV相巻線だけに通電するようにスイッチ素子Q7−Q10だけがスイッチング駆動される。
【0084】
また、電力変換装置10を昇圧回路として機能させ電池14から電池13へ給電する場合がある。この場合、下流側のインバータ回路15のスイッチ素子Q1−Q6の一部だけがスイッチング駆動され、上流側のインバータ回路16が固定的に駆動される。例えば、X相巻線とY相巻線だけに通電するようにスイッチ素子Q1−Q4だけがスイッチング駆動される。
【0085】
電力変換装置10を降圧回路として機能させることにより、電池14から電池13へ給電する場合がある。この場合、上流側のインバータ回路16のスイッチ素子Q7−Q12の一部だけがスイッチング駆動され、下流側のインバータ回路15が固定的に駆動される。例えば、U相巻線とV相巻線だけに通電するようにスイッチ素子Q7−Q10だけがスイッチング駆動される。
【0086】
この実施形態では、ステップ156は、電力の移動量が所定の第1閾値Ith2を下回るとき、ひとつの相巻線に通電する一相通電手段を提供する。ステップ156は、電力の移動量が所定の閾値Ith2を下回るとき、所定の数の相巻線に通電する少相通電手段42を提供する。これとの対比において、ステップ261は、電力の移動量が所定の閾値Ith2を上回るとき、ステップ156より多い数の相巻線に通電する多相通電手段43を提供する。ステップ261は、電力の移動量が第1閾値Ith2を上回り、かつ第1閾値より大きい第2閾値Ith3を下回るとき、2つの相巻線に通電する二相通電手段を提供する。ステップ261は、電力の移動量が所定の閾値Ith3を下回るとき、所定の数の相巻線に通電する少相通電手段42を提供する。これとの対比において、ステップ155は、電力の移動量が所定の閾値Ith3を上回るとき、ステップ261より多い数の相巻線に通電する多相通電手段43を提供する。ステップ155は、電力の移動量が第2閾値Ith3を上回るとき、3つの相巻線に通電する三相通電手段を提供する。
【0087】
図12に図示されるように、この実施形態では、閾値Ith2、Ith3によって一相通電1Pと、二相通電2Pと、三相通電3Pとが切替えられる。これにより、太実線EMB2で示される効率EFFが得られる。
【0088】
図13は、電力変換装置10が降圧回路として機能することにより、電池13から電池14へ充電する場合の、出力電流Ioutと、スイッチ素子Q1−Q12の制御信号とを示す。
【0089】
出力電流Ioutが閾値Ith2を下回るとき、スイッチ素子Q1、Q2だけがスイッチング駆動される。スイッチ素子Q3−Q6はスイッチング駆動を停止し、OFF状態に固定される。これにより、一相通電1Pが実行される。
【0090】
時刻t21において、出力電流Ioutが閾値Ith2を上回ると、二相通電2Pが実行される。二相通電2Pにおいては、スイッチ素子Q1−Q4だけがスイッチング駆動される。スイッチ素子Q5、Q6はスイッチング駆動を停止し、OFF状態に固定される。これにより、二相通電2Pが実行される。
【0091】
時刻t22において、出力電流Ioutが閾値Ith3を上回ると、三相通電3Pが実行される。
【0092】
この実施形態によると、出力電力の増加につれて、一相通電1P、二相通電2P、および三相通電3Pが順に選択される。このため、出力電力に応じて、スイッチング駆動される相数が切替えられる。この結果、出力電力が低い領域から高い領域にわたって、高い効率EFFを提供することができる。
【0093】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、一相通電1Pにおいて通電される相巻線は、X相巻線に固定されている。これに代えて、この実施形態では、一相通電1Pにおいて通電される相巻線が、循環的に切換えられる。
【0094】
図14は、電力変換処理350を示す。電力変換処理350においては、上述の電力変換処理150に加えて、ステップ364が採用されている。ステップ364では、一相通電1Pの継続時間に基づいて、通電される相巻線を循環的に切換える処理が実行される。ステップ364では、ひとつの相巻線へのスイッチング駆動に起因する連続的な通電継続期間が所定期間に制限される。ステップ364では、ひとつの相巻線へのスイッチング駆動による通電が所定期間継続すると、他の相巻線への切換が実行される。例えば、インバータ回路15および多相巻線23においては、X相巻線からY相巻線への切換え、Y相巻線からZ相巻線への切換え、およびZ相巻線からX相巻線への切換えが提供される。ステップ364は、少相通電手段42、156により通電される相巻線を切換える相切換手段を提供する。
【0095】
図15は、この実施形態の作動の一例を示す。時刻t0と時刻t31との間においてX相巻線への通電によって一相通電1Pが提供される。時刻t31と時刻t32との間においてY相巻線への通電によって一相通電1Pが提供される。時刻t32と時刻t11との間においてZ相巻線への通電によって一相通電1Pが提供される。
【0096】
これにより、一部のスイッチ素子および一部の相巻線への負荷の集中が抑制される。例えば、一部の相巻線への通電集中に起因する温度上昇を抑制できる。また、一部のスイッチ素子にスイッチング駆動が集中することに起因する劣化を抑制することができる。
【0097】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、予め定められたひとつまたは複数の相に通電することにより電力変換を実行した。これに代えて、この実施形態では、回転電機12の回転子21の停止位置に応じて、通電されるべき相が選択される。ここでは、回転子21の磁極によって規定されるd軸の角度angle(d)に最も近い電気角を実現するひとつまたは複数の相が選択される。
【0098】
図16は、電力変換処理450を示す。電力変換処理450においては、電力変換処理250に加えて、ステップ463、464、465、466が採用される。
【0099】
ステップ463では、位置検出器37から回転子21の停止位置が検出される。回転子21の停止位置は、d軸の角度angle(d)によって示される。
【0100】
ステップ464では、d軸の角度angle(d)に最も近い電気的な角度を実現するひとつの相巻線が選択される。ステップ156では、ステップ464によって選択された相巻線へ通電することにより一相通電1Pが実行される。
【0101】
図17は、回転子21の停止位置の一例を示す。図中には、回転子21のd軸の方向dが図示されている。図示される場合、X相巻線に通電することにより得られる電気的な角度angle(x)が、d軸の角度angle(d)に最も近い。図示される場合、ステップ464では、X相巻線が選択される。
【0102】
図16に戻り、ステップ465では、位置検出器37から回転子21の停止位置が検出される。ステップ466では、d軸の角度angle(d)に最も近い電気的な角度を実現する2つの相巻線が選択される。ステップ261では、ステップ466によって選択された2つの相巻線へ通電することにより二相通電2Pが実行される。
【0103】
図18は、回転子21の停止位置の一例を示す。図中には、回転子21のd軸の方向dが図示されている。図示される場合、X相巻線とZ相巻線とに通電することにより得られる電気的な角度angle(x+z)が、d軸の角度angle(d)に最も近い。図示される場合、ステップ466では、X相巻線とZ相巻線とが選択される。
【0104】
ステップ463、465は、回転子21の停止位置を検出する位置検出手段を提供する。ステップ464、466は、少相通電手段42、156、261により通電される相巻線を、回転子21の停止位置におけるd軸の角度angle(d)に近い電気角を提供できる相巻線に設定する相選択手段を提供する。ステップ464は、少相通電手段156がひとつの相巻線に通電する場合、回転子21のd軸の角度に最も近い電気角を提供できる相巻線を選択する相選択手段を提供する。ステップ466は、少相通電手段261が2つの相巻線に通電する場合、回転子21のd軸の角度に最も近い電気角を提供できる2つの相巻線を選択する相選択手段を提供する。
【0105】
この実施形態によると、一相通電1Pまたは二相通電2Pを実施するときに、通電される相巻線によって実現される固定子22の磁界方向が、回転子21のd軸の近傍に位置付けられる。これにより、回転電機12が電力変換装置10の一部として利用される場合にも、回転子21の回動を抑制できる。また、スイッチング駆動に起因する回転子21の振動を抑制できる。この結果、スイッチング駆動に起因する騒音を抑制できる。
【0106】
(他の実施形態)
発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示であって、発明の技術的範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、それぞれ独立して実施可能である。発明のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0107】
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【0108】
一相通電1Pは、X相巻線、Y相巻線、またはZ相巻線への通電によって提供してもよい。同様に、一相通電1Pは、U相巻線、V相巻線、またはW相巻線への通電によって提供してもよい。さらに、すべての相より少ない数の相巻線に通電する場合、通電する相巻線を循環的に切換えてもよい。例えば、二相通電2Pにおいても、通電する相巻線の組み合わせを循環的に切換えることができる。