特許第5846288号(P5846288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5846288
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】フレーズデータ検索装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20151224BHJP
   G10G 1/04 20060101ALI20151224BHJP
   G06F 17/30 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   G10H1/00 102Z
   G10G1/04
   G06F17/30 170E
   G06F17/30 210A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-264033(P2014-264033)
(22)【出願日】2014年12月26日
(62)【分割の表示】特願2010-123612(P2010-123612)の分割
【原出願日】2010年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-111271(P2015-111271A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2014年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山内 明
(72)【発明者】
【氏名】守尾 崇
【審査官】 千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−178104(JP,A)
【文献】 特開2000−221978(JP,A)
【文献】 特開平02−157799(JP,A)
【文献】 特開平08−292762(JP,A)
【文献】 特開2009−025406(JP,A)
【文献】 特開2008−134375(JP,A)
【文献】 特開2000−315081(JP,A)
【文献】 特開平11−065561(JP,A)
【文献】 特開2004−258563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00
G06F 17/30
G10G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
元楽曲データから抽出された複数のフレーズデータを記憶すると共に、該フレーズデータの属性を表す属性情報を該フレーズデータに対応付けて記憶するフレーズ記憶手段と、
編集対象とする楽曲データを取得する対象楽曲取得手段と、
該対象楽曲取得手段により取得された楽曲データ内において編集範囲の先頭となる音符予定位置を指定する予定位置指定手段と、
該予定位置指定手段により指定された音符予定位置の、音符予定位置直後の小節線又は拍位置のタイミングである基準タイミングに対するずれを検出し、検出されたずれを表わす指定ずれ情報を生成するずれ検出手段と、
前記フレーズ記憶手段からフレーズデータを読み込むフレーズデータ読込み手段と、
該フレーズデータ読込み手段により読み込まれたフレーズデータに対応する属性情報を前記フレーズ記憶手段から読み出し、読み出した属性情報から元楽曲データにおける先頭音符の、先頭音符直後の小節線及び拍タイミングである基準タイミングに対するずれを表わす参照ずれ情報を抽出するずれ情報抽出手段と、
該ずれ情報抽出手段により抽出された前記参照ずれ情報を前記ずれ検出手段により生成された前記指定ずれ情報と比較し、両ずれ情報が一致する場合に、前記フレーズデータ読込み手段により読み込まれたフレーズデータを編集範囲の候補フレーズデータとして検出する候補検出手段と、
を具備することを特徴とするフレーズデータ検索装置。
【請求項2】
前記ずれ情報抽出手段において読み出された属性情報に、前記参照ずれ情報が含まれていない場合は、前記ずれ情報抽出手段において前記参照ずれ情報を検出することを特徴とする請求項1に記載のフレーズデータ検索装置。
【請求項3】
前記属性情報に、音符の分解能の情報が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載のフレーズデータ検索装置。
【請求項4】
前記属性情報に、拍子の情報が含まれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフレーズデータ検索装置。
【請求項5】
元楽曲データから抽出された複数のフレーズデータを記憶すると共に、該フレーズデータの属性を表す属性情報を該フレーズデータに対応付けて記憶するフレーズ記憶手段を具備し、フレーズデータ検索装置として機能するコンピュータに、
編集対象とする楽曲データを取得する対象楽曲取得ステップと、
該対象楽曲取得ステップで取得された楽曲データ内において編集範囲の先頭となる音符予定位置を指定する予定位置指定ステップと、
該予定位置指定ステップで指定された音符予定位置の、音符予定位置直後の小節線又は拍位置のタイミングである基準タイミングに対するずれを検出し、検出されたずれを表わす指定ずれ情報を生成するずれ検出ステップと、
前記フレーズ記憶手段からフレーズデータを読み込むフレーズデータ読込みステップと、
該フレーズデータ読込みステップで読み込まれたフレーズデータに対応する属性情報を前記フレーズ記憶手段から読み出し、読み出した属性情報から元楽曲データにおける先頭音符の、先頭音符直後の小節線及び拍タイミングである基準タイミングに対するずれを表わす参照ずれ情報を抽出するずれ情報抽出ステップと、
該ずれ情報抽出ステップで抽出された前記参照ずれ情報を前記ずれ検出ステップで生成された前記指定ずれ情報と比較し、両ずれ情報が一致する場合に、前記フレーズデータ読込みステップで読み込まれたフレーズデータを編集範囲の候補フレーズデータとして検出する候補検出ステップと、
から成る手順を実行させるフレーズデータ検索プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、楽曲の或る区間を作編曲するために、元の楽曲データから収集されたフレーズデータ群を参照して所望のフレーズデータを検索するフレーズデータ検索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、楽曲データを複数の区間に分け各区間のデータをフレーズデータとして抽出する装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された音楽情報分析装置では、音楽情報として入力された所望の曲のメロディ情報について音符情報の長さや休符の長さを分析してフレーズ分けが行われる。また、既存の楽曲からフレーズを収集してデータベース化し楽曲生成に利用する技術も知られている。例えば、特許文献2に開示された楽曲生成システムでは、既製の楽曲から小節単位で抽出した各フレーズに、キー、コード、出だし、終了、最初のフレーズ音、最後のフレーズ音、拍子、許容テンポの範囲などの属性を付与してデータベース化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−292762号公報
【特許文献2】特開2006−178104号公報
【0004】
しかしながら、従来のフレーズ分け技術では、所定の小節数や音符列の区切りなどでフレーズを抽出した場合、それぞれのフレーズが元の曲で使われていた位置関係が分らない。また、特許文献2のように抽出したフレーズに属性が付与されている場合、楽曲の出だし或いは終了に使うのに適しているかどうかは判別することができるが、その属性が付与されていないフレーズについて元の楽曲で使われていた位置関係は分らないし、楽曲の出だしや終了という属性では、小節内の位置までは判断することができない。さらに、楽曲の或る区間を作編曲するために、データベースから或るフレーズを使った場合、元の楽曲で強拍だった音符が弱拍で使われる、或いは、その逆に、元の楽曲で弱拍だった音符が強拍で使われる、といったことが起こり、再生時にビート感がフレーズの前後でずれたり他のパートとずれたような気持ちの悪い聴こえ方になることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、このような事情に鑑み、元の楽曲におけるフレーズデータの小節線或いは拍位置からのずれを考慮してフレーズ検索を行うことにより元々のフレーズデータが持っていたビート感を損なうことなく作編曲に活用することができるフレーズデータ検索システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のフレーズデータ検索装置は、元楽曲データから抽出された複数のフレーズデータを記憶すると共に、該フレーズデータの属性を表す属性情報を該フレーズデータに対応付けて記憶するフレーズ記憶手段と、編集対象とする楽曲データを取得する対象楽曲取得手段と、該対象楽曲取得手段により取得された楽曲データ内において編集範囲の先頭となる音符予定位置を指定する予定位置指定手段と、該予定位置指定手段により指定された音符予定位置の、音符予定位置直後の小節線又は拍位置のタイミングである基準タイミングに対するずれを検出し、検出されたずれを表わす指定ずれ情報を生成するずれ検出手段と、前記フレーズ記憶手段からフレーズデータを読み込むフレーズデータ読込み手段と、該フレーズデータ読込み手段により読み込まれたフレーズデータに対応する属性情報を前記フレーズ記憶手段から読み出し、読み出した属性情報から元楽曲データにおける先頭音符の、先頭音符直後の小節線及び拍タイミングである基準タイミングに対するずれを表わす参照ずれ情報を抽出するずれ情報抽出手段と、該ずれ情報抽出手段により抽出された前記参照ずれ情報を前記ずれ検出手段により生成された前記指定ずれ情報と比較し、両ずれ情報が一致する場合に、前記フレーズデータ読込み手段により読み込まれたフレーズデータを編集範囲の候補フレーズデータとして検出する候補検出手段とを具備することを最も主要な特徴としている。
【0007】
また、本発明のフレーズデータ検索装置において、前記ずれ情報抽出手段において読み出された属性情報に、前記参照ずれ情報が含まれていない場合は、前記ずれ情報抽出手段において前記参照ずれ情報を検出するようにしてもよい。
さらに、本発明のフレーズデータ検索装置において、前記属性情報に、音符の分解能の情報が含まれていたり、前記属性情報に、拍子の情報が含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
上記した本発明のフレーズデータ検索装置によれば、指定された音符予定位置の、音符予定位置直後の小節線又は拍位置のタイミングである基準タイミングに対するずれを表わす指定ずれ情報を生成すると共に、フレーズデータに対応する属性情報を前記フレーズ記憶手段から読み出し、読み出した属性情報から元楽曲データにおける先頭音符の、先頭音符直後の小節線及び拍タイミングである基準タイミングに対するずれを表わす参照ずれ情報を抽出して、指定ずれ情報に一致する参照ずれ情報のフレーズデータを候補フレーズデータとして検出している。
【0009】
従って、本発明のフレーズデータ検索装置によれば、フレーズ検索時に元楽曲におけるフレーズの小節線或いは拍位置(基準タイミング)からのずれを考慮することにより、元々のフレーズが有するビート感(強弱、間の取り方など)を再現してより自然なフレーズ合成を行うことができ、元々のフレーズデータが持っていたビート感を損なうことなく作編曲に活用することができる。また、元々のフレーズが持っていた強拍と弱拍の関係が作編曲後も維持されるので、安定した聴感を得ることができる。さらに、アウフタクト(弱起)の曲を作りたいときは、小節線からのずれ情報により元々アウフタクトであったフレーズが検索し易くなる。
【0010】
また、本発明のフレーズデータ検索装置において、ずれ情報抽出手段において読み出された属性情報に、参照ずれ情報が含まれていない場合は、ずれ情報抽出手段において参照ずれ情報を検出することにより、属性情報に参照ずれ情報が含まれていない場合にも、指定ずれ情報に一致するフレーズデータを候補フレーズデータとして検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の一実施例によるフレーズデータ検索システムの構成例を示す。
図2】この発明の一実施例によるフレーズデータのイメージ例を示す。
図3】この発明の一実施例によるフレーズデータ検索処理フロー例の一部である。
図4】この発明の一実施例によるフレーズデータ検索処理フロー例の他部である。
図5】この発明の一実施例による候補フレーズ抽出処理フロー例の一部である。
図6】この発明の一実施例による候補フレーズ抽出処理フロー例の他部である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔システム構成の概要〕
図1はこの発明の一実施例によるフレーズデータ検索システムの構成例を示す図であり、図1(1)はこの発明の一実施例によるフレーズデータ検索装置のハードウエア構成例を示す。このフレーズデータ検索装置は、電子的な音楽情報処理機能を有する一種のコンピュータであり、例えば、電子楽器のような電子音楽装置が用いられ、フレーズデータ検索モード時にフレーズデータ検索システムが構築される。このフレーズデータ検索装置は、中央処理装置(CPU)1、ランダムアクセスメモリ(RAM)2、読出専用メモリ(ROM)3、外部記憶装置4、入力操作部5、表示部6、音源7、通信インターフェース(I/F)8などを備え、これらの要素1〜8はバス9を介して互いに接続される。
【0013】
CPU1は、RAM2及びROM3と共にデータ処理部を構成し、フレーズデータ検索処理プログラムを含む所定の制御プログラムに従って、フレーズデータ検索処理を含む種々の音楽情報処理を実行する。RAM2は、これらの処理に際して必要な各種データを一時記憶するためのワーク領域として用いられ、例えば、フレーズデータ検索モード時には、編集対象である楽曲データ(Ms)を保持するための対象楽曲記憶領域や、候補抽出のために参照されるフレーズデータ(Pr)を保持するための参照フレーズ記憶領域、抽出された候補フレーズデータ(Prs)を格納するための「候補リスト」と呼ばれる候補フレーズ記憶領域などが設けられる。また、ROM3には、これらの処理を実行するために、各種制御プログラムや必要な各種制御データが予め記憶される。
【0014】
外部記憶装置4は、HD(ハードディスク)、FD(フレキシブルディスク)、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル多目的ディスク)、フラッシュメモリ等の半導体メモリなどの記憶媒体と、その駆動装置を含む。制御プログラムや種々の楽曲データ等、任意の情報を任意の記憶媒体に記憶することができ、所定の記憶媒体には、種々のフレーズデータ(Pr:Pr1,Pr2,…)を管理するためのフレーズデータベースPBが構築され、フレーズデータ作成モードでフレーズデータをフレーズデータベースPBに記憶することができる。また、記憶媒体は、着脱可能であってもよいし、このフレーズデータ検索装置に内蔵されていてもよく、着脱可能な記録媒体にはUSBメモリが含まれる。
【0015】
入力操作部5は、鍵盤などの演奏操作子やキースイッチなどの設定操作子と、これら操作子の操作を検出して検出内容に対応する操作情報をデータ処理部(1〜3)に導入する操作検出回路とにより構成される。データ処理部は、これら操作情報に基づきフレーズデータ検索装置各部を制御し、例えば、演奏操作子の操作に応じて演奏操作入力に対応する演奏情報を音源7に送り或いはRAM2の対象楽曲記憶領域に書き込み、また、設定操作子中のモード設定ボタンの操作に応じてフレーズデータ検索モード等で動作させる。表示部6は、演奏や設定に必要な各種情報を表示するLCD等のディスプレイや、入力操作部5中のスイッチ類に併設した内蔵ランプ等を備え、これらの表示・点灯内容をデータ処理部からの指令で制御し、演奏操作や設定操作などに関する表示援助を行う。
【0016】
音源7は、音源部やDSPを有し、入力操作部5からの演奏操作情報から得られる実演奏情報に基づいて、或いは、外部記憶装置4から読み出される楽曲データに基づいて、楽音信号を生成すると共にこの楽音信号に所定の効果を付与する。音源7に接続されるサウンドシステム10は、D/A変換部やアンプ、スピーカ等を備え、音源7から出力される楽音信号に基づく楽音を発生する。
【0017】
通信I/F8は、MIDI等の音楽用有線I/F、USB等の汎用ネットワークI/F或いは無線Lan等の汎用近距離無線I/F等を含み、外部電子音楽装置MMと交信することができる。例えば、外部電子音楽装置MMからMIDI形式の楽曲データを取得し、外部記憶装置4に記憶しておくことができる。
【0018】
〔フレーズデータ検索システムの概要〕
図1(2)は、この発明の一実施例によるフレーズデータ検索システムの機能ブロック図である。このフレーズデータ検索装置(電子音楽装置)のCPU1を含むデータ処理部(1〜3)は、フレーズデータ作成モードで動作するフレーズデータ抽出部Aと、フレーズデータ検索モードで動作する検索条件設定部B、候補フレーズ抽出部C及びフレーズ選択部Dとして機能することができる。外部記憶装置4に設けられたフレーズデータ記憶部PBには、フレーズデータ検索の際に参照される多数のフレーズデータPr:Pr1,Pr2,…が記憶され、フレーズデータベースが構築される。なお、参照記号「Pr」は、フレーズデータを総称的に表わし、フレーズデータベースは、フレーズデータ記憶部と同じ参照記号「PB」を付記して説明される。
【0019】
フレーズデータ抽出部Aは、フレーズデータ作成モードにおいて、フレーズデータ作成元になる楽曲データ(元楽曲データと呼ばれる)Mrから、フレーズを構成する音符列を時系列的に表わす音符列情報及び基準タイミング情報(tr)を含むフレーズデータPrを抽出し、抽出したフレーズデータPrの種々の属性を表わす属性情報(フレーズ属性情報ともいう)Arを付記してフレーズデータベースPBに送る。フレーズデータベースPBは、フレーズデータ抽出部AからのフレーズデータPrを記憶すると共に、属性に従って検索できるようにフレーズデータPrに対応付けて属性情報Arを記憶する。
【0020】
ここで、フレーズデータPrの音符列情報は、発音タイミング及び音高情報から成る複数の音符イベントで構成され、基準タイミング情報(tr)は、先頭音符イベントの直後の小節線及び拍タイミングを表わす情報である。属性情報Arは、フレーズデータPrの本体に付加して記憶してもよいし、フレーズデータPr本体とは別にフレーズデータPrに対応(リンク)させて記憶してもよい。また、属性情報(フレーズ属性情報ともいう)Arには、元楽曲データMrにおける基準タイミング(tr)に対する「ずれ」を表わすずれ情報Grを含ませることができ、このずれ情報Grは参照ずれ情報とも呼ばれる。
【0021】
<フレーズデータの抽出例>
図2は、この発明の一実施例によるフレーズデータの例のイメージ的に説明するための図であり、図2(1),(2)は、それぞれ、元楽曲データMr及び抽出されたフレーズデータPrを構成する音符列を示す。図2(1),(2)において、横軸は、右矢印の方向に時間が推移する時間軸を示し、「1:1」、「2:1」、…は「小節:拍」を表わし(1小節=4拍)、実線は小節線位置或いは小節線タイミングを表わし、破線は拍位置或いは拍タイミングを表わす。また、縦軸は、音高変化の傾向を大まかに示し、元楽曲データMr或いはフレーズデータPrを構成する音符イベントが、ブロックN1,N2,…で表わされる。なお、図2(1)では、前後の音符表記が省略されている。
【0022】
所定の外部記憶装置4から元楽曲データMrを読み出し、ユーザ操作により、元楽曲データMrに対して抽出しておきたい所望のフレーズを構成する音符列の始終端(例えば音符イベントN1〜音符イベントN7)が指定されると〔図2(1)〕、フレーズデータ抽出部Aは、指示された始終端間の音符列(例えば、音符イベントN1,N2,…,N7)のデータを、始端(音符イベントN1)直後の小節線タイミング或いは拍タイミングを表わす基準タイミングtrと共に、フレーズデータPrとして抽出し〔図2(2)〕、抽出したフレーズデータPrをフレーズデータベースPBに記憶する。その際、フレーズデータPrに対応してフレーズ属性情報Arも記憶される。
【0023】
フレーズ属性情報Arは、図2(3)に示すように、小節線及び拍位置からのずれ情報Grや、拍子、元楽曲情報(元楽曲データに関する名称等の項目情報)、分解能、その他フレーズ検索に必要な項目情報〔例えば、コードやキー(調)、拍子、テンポ等〕で構成される。例えば、図2において、(1)に示す元楽曲データMrから(2)に示す音符列N1〜N7から成るフレーズデータPraが抽出された場合、(3A)に示すように、基準タイミングtrに相当する第2小節線からのずれ情報=「1拍(480クロック)」、同拍位置「2:1」からのずれ情報=「1拍(480クロック)」となり、拍子は「4/4」、元楽曲情報は「○○○」、分解能は「16分音符(120クロック)」、…、となる。また、この例で音符N1が無く、音符列N2〜N7から成るフレーズデータPrbが抽出された場合には、(3B)に示すように、基準タイミングtrに相当する第1小節線からのずれ情報=「1/2拍(240クロック)」、同拍位置「2:1」からのずれ情報=「1/2拍(240クロック)」となり、拍子は「4/4」、元楽曲情報は「○○○」、分解能は「16分音符(120クロック)」、…、となる。
【0024】
さて、図1(2)に戻ると、検索条件設定部Bは、フレーズデータ検索モードにおいて、外部記憶装置4又は入力操作部5から楽曲データMsを編集対象として取得し、取得した楽曲データ(対象楽曲データという)Ms内の編集したい区間(編集範囲という)について種々の検索条件を設定する。ここで、対象楽曲データMsは、外部記憶装置4に予め記憶されている制作済み又は制作途中の楽曲データ、或いは、入力操作部5から演奏操作に応じて入力された演奏情報をRAM2の対象楽曲記憶領域に読み込むことによって、取得することができる。また、検索条件には、ビート感再現方式で検索する場合に備えて、対象楽曲データMsにおける基準タイミングに対するずれを表わす「指定ずれ情報」Gsを含ませることができ、指定ずれ情報Gsは、参照ずれ情報Grと同様の方法で抽出される。つまり、ユーザ操作により、編集範囲の先頭となる音符予定位置が指定されると、指定された音符予定位置の基準タイミング(楽曲データMsにおける音符予定位置直後の小節線又は拍タイミング)に対するずれを表わす指定ずれ情報Gsが生成される。
【0025】
候補フレーズ抽出部Cは、フレーズデータベースPBにアクセスし、検索条件設定部Bで設定された検索条件に従ってフレーズデータPr:Pr1,Pr2,…を参照し、これらの中から検索条件に合うフレーズデータを抽出し、抽出されたフレーズデータPrを候補フレーズデータPrsとしてRAM2内の候補リスト内に記憶していく。このフレーズ検索には、コードやキー(調)、拍子、テンポ等の検索キーで候補をサーチする一般的なキー検索方式の外に、ずれ情報を利用するビート感再現方式を用いることができ、ビート感再現方式で検索する場合は、指定ずれ情報Gsに合う参照ずれ情報Grを有する候補フレーズデータPrsが抽出され、両ずれ情報Gs,Grが表わすずれの差「Gs−Gr」(参照記号「Gs」,「Gr」は、「ずれ」そのものを表わす場合もある)が、抽出された候補フレーズデータPrsに対応付けて記憶される。なお、指定ずれGsが参照ずれGrよりも小さく、且つ、対象楽曲データMs中における「基準タイミングより参照ずれGr分だけ遡った位置」から音符予定位置までの範囲に先行音符イベントが存在する場合、この参照ずれGrを持つフレーズデータPrは、先行音符イベントに重なることになるので、候補フレーズPrsから削除される(図4のステップR12を参照)。
【0026】
フレーズ選択部Dは、候補リスト内に蓄積された候補フレーズデータPrsの中から最適なフレーズデータPrdを選択し、選択された最適フレーズデータPrdは、対象楽曲データMsの編集範囲に適用されて対象楽曲Ms内に組み込まれる。この場合、ユーザ操作に応じて最適なフレーズデータPrdが選択されるが、ビート感再現方式を用いた場合には、ずれの差「Gs−Gr」の大きさに応じた自動的な選択手法により候補フレーズデータPrsの数を絞ることができ、絞られた1つの候補フレーズデータ、或いは、絞られた複数の候補フレーズデータPrsから更にユーザ操作に応じて選択された1つの候補フレーズデータが、最適なフレーズデータPrdに決定される。そして、決定された最適フレーズデータPrdが基準タイミングを合わせて対象楽曲データMsに上書きされる。
【0027】
以上のように、この発明の一実施例によるビート感再現方式のフレーズデータ検索システムでは、予め元楽曲データMrから抽出された複数のフレーズデータPr:Pr1,Pr2,…がフレーズ記憶部PBに用意されており、対象楽曲データMsに対して編集範囲が設定されると、編集範囲の先頭音符の発音位置が音符予定位置に指定され、指定された音符予定位置の基準タイミング(音符予定位置の直後に現われる小節線又は拍位置)に対するずれを表わす指定ずれ情報Gsが生成される(B)。次いで、フレーズ記憶部PBから順次フレーズデータPrが読み込まれ、読み込まれた各フレーズデータについて、元楽曲データMrにおける基準タイミングtrに対するずれを表わす参照ずれ情報Grが抽出され、両ずれ情報Gr,Gsが一致すると、当該フレーズデータが、設定された編集範囲に適した候補フレーズデータPrsとして検出される(C)。
【0028】
〔処理フロー例〕
図3図4は、この発明の一実施例によるフレーズデータ検索処理の動作例を表わすフローチャートである。このフレーズデータ検索装置は、待機モードや実演奏モード、自動演奏モード等で動作しているときに、検索モード設定ボタンを操作することにより、フレーズデータ検索モードで動作し、図3のフレーズデータ検索処理を行うことができる。フレーズデータ検索処理がスタートすると、CPU1は、まず、ステップR1で、編集対象となる楽曲データ即ち対象楽曲データMsをRAM2の対象楽曲記憶領域に用意する。つまり、対象楽曲データMsを外部記憶装置4等から読み込み、必要な表示処理を行い、対象楽曲データMsが複数パートから成る場合は編集対象となるパート(対象パートという)を設定し、必要に応じて、対象楽曲データMsをクオンタイズしたり、入力操作部5から音符情報を入力するなどの処理を行い、検索画面を表示部6のディスプレイに表示する。
【0029】
次のステップR2では、例えば、図2(1)のように音符列で検索画面に表示されている対象楽曲データMs(複数パートから成る場合は対象パートのデータを意味する)に対するユーザ操作に応じて、当該対象楽曲データMs中のフレーズ検索を行う区間即ち編集範囲を指定し、続くステップR3で、フレーズ検索方式を選択し、ステップR4に進む。ステップR4では、選択されたフレーズ検索方式がビート感再現方式であるか否かを判定し、ビート感再現方式であれば(R4=YES)、ステップR5〜R12(図4)のビート感再現方式による検索処理ルーチンを実行してフレーズデータベースPBから候補フレーズデータPrsを抽出する。一方、ステップR4で、選択された検索方式がビート感再現方式でないと判定したときには(R4=NO)、ステップR13に進んで、ステップR3で選択された別のフレーズ検索方式に従い、候補フレーズデータPrsを抽出する。例えば、コード、キー、拍子或いはテンポ等の検索キーを用いてフレーズデータベースPBをサーチし、所望の候補フレーズデータPrsを抽出する。
【0030】
ビート感再現方式による検索処理については、まず、ステップR5(図4)で、ビート感再現検索画面を表示部6のディスプレイに表示し、同画面に対するレベル設定操作に応じて検索レベルを設定する。このシステム例では、検索レベルには、「完全一致」、「1/2拍以内」及び「レベル無し」があり、レベル設定操作がない場合は「レベル無し」が設定され、この場合、システムは、所定の許容上限値(例えば、1拍)以内の参照ずれ情報Grを持つフレーズデータPrを抽出するように動作する。
【0031】
次のステップR6では、必要に応じて、対象楽曲データMs(或いは対象パート)内に指定された区間(編集範囲)への音符イベントデータの入力を受け付ける。つまり、ビート感再現方式では、指定された音符の位置から始まるフレーズデータPrを抽出するので、指定区間(編集範囲)の開始位置(先頭)に音符が無い場合は、ユーザに音符入力を促し、音符入力操作があると、これに応じて音符イベントデータ入力が受け付けられる。続いて、ステップR7で、指定区間内の最初の音符イベントデータを抽出し、その発音タイミングを音符予定位置に指定する。
【0032】
次いで、ステップR8で、ユーザ操作に応じて、音符予定位置の基準タイミングにつき小節線を基準にするか拍位置を基準にするかを選択し、次のステップR9において、小節線を基準にする場合は、音符予定位置直後の小節線位置を探し、拍位置を基準にする場合には、音符予定位置直後の拍位置を探し、探した小節線位置或いは拍位置を基準タイミングに設定する。さらに、ステップR10では、音符予定位置のタイミング基準情報に対するずれ(クロック数など)を検出し、検出したずれ(指定ずれ)を表わす対象楽曲データMs側のずれ情報即ち指定ずれ情報Gsを得る。そして、ステップR11に進む。
【0033】
ステップR11では、フレーズデータベースPBにアクセスし、ずれ情報Gs,Grが(レベルに応じて)一致するフレーズデータPrを検索して候補Prsとする「候補フレーズ抽出処理」を実行する。候補フレーズ抽出処理の後は、ステップR12に進み、候補フレーズ抽出処理で候補Prsとされた各フレーズデータPrについて小節線或いは拍位置からのずれ情報Grを参照し、対象楽曲データMs中の基準タイミングの位置から参照したずれ情報Gr分だけ遡った範囲内に、音符予定位置よりも早い発音タイミングを持つ音符イベントが存在するか否かをチェックし、かかる音符イベントが存在する場合は当該フレーズデータPrを候補Prsから削除する。
【0034】
ステップR12(図4)或いはステップR13(図3)の処理の後は、ステップR14(図3)に進んで、検索方式を変更するか否かをユーザに打診し、検索方式を変更する場合は(R14=YES)、ステップR3に戻り、ステップR3〜R14の処理を繰り返し、検索方式を変更しない場合は(R14=NO)、ステップR15に進む。
【0035】
ステップR15では、ユーザの選択操作乃至自動的な所定の選択手法に従って、R3〜R13の処理で得られた各候補フレーズデータPrsの中から所望のフレーズデータPrdを選択し、対象楽曲データMs中の指定区間(編集範囲)に適用する。ここで、ビート感再現方式(R5〜R12)で得られた候補フレーズデータPrsから所望のフレーズデータPrdが選択された場合、所望フレーズデータPrd中における冒頭音符イベントの直後の小節線或いは拍位置を対象楽曲データMs中の基準タイミングの位置に合わせて、所望フレーズデータPrdを上書きで適用する。
【0036】
ステップR15でのフレーズデータの選択及び適用処理の後は、ステップR16で、別の区間(編集範囲)についてフレーズ検索を行うか否かをユーザに打診し、別区間につきフレーズ検索を行う旨のユーザ入力があったときは(R16=YES)、ステップR2に戻り、ステップR2〜R16の処理を繰り返す。そして、ステップR16で、フレーズ検索を行わない旨のユーザ入力があったと判定すると(R16=NO)、このフレーズデータ検索処理を終了し、元のモードに戻る。
【0037】
<候補フレーズ抽出処理>
図5及び図6は、この発明の一実施例による候補フレーズ抽出処理の例を表わすフローチャートである。この候補フレーズ抽出処理は、フレーズデータ検索処理のステップR11で実行され、最初のステップP1で、CPU1は、フレーズデータベースPBを参照し、対象楽曲データの現在の分解能に合うフレーズデータPrを新たに1つ参照すべき対象としてRAM2の参照フレーズ記憶領域に読み込む。次のステップP2では、参照対象としたフレーズデータPrの属性情報Arに参照ずれ情報Grが含まれているか否かを判定し、属性情報Arに参照ずれ情報Grが含まれていないときは(P2=NO)、ステップP3〜P4に順次進み、フレーズデータPrの基準タイミングからのずれ(参照ずれ)Grを検出する。つまり、ステップP3では、フレーズデータPr内の先頭音符イベントの発音タイミング情報及び基準タイミング情報trに基づいて、先頭音符から直後の小節線までの時間を抽出し、このフレーズデータPrの「小節線からのずれ情報Gr」としてRAM2の第1参照ずれ記憶領域に記憶する。また、ステップP3では、フレーズデータPr内の先頭音符イベントの発音タイミング情報及び基準タイミング情報trに基づいて、先頭音符から直後の拍位置までの時間を抽出し、このフレーズデータの「拍位置からのずれ情報Gr」としてRAM2の第2参照ずれ記憶領域に記憶する。
【0038】
ステップP2で属性情報Arに参照ずれ情報Grが含まれていると判定したとき(P2=YES)或いはステップP4の参照ずれ検出処理の後は、ステップP5に進み、現在、小節線を基準にすると選択(設定)されているか否かを判定する。ここで、小節線が基準に設定されているときは(P5=YES)、ステップP6で、対象楽曲データMs側で抽出した指定ずれ情報GsとフレーズデータPrの「拍位置からのずれ情報Gr」との差を検出した後、ステップP8に進み、拍位置が基準に設定されているときには(P5=NO)、ステップP7で、対象楽曲データMs側の指定ずれ情報GsとフレーズデータPrの「拍位置からのずれ情報Gr」との差を検出した後、ステップP8に進む。
【0039】
ステップP8では、検索レベルに「完全一致」が設定されているか否かを判定し、「完全一致」が設定されているときは(P8=YES)、ステップP9で、ずれ情報Gs,Grの差が「0」であるか否かを判定し、ずれ情報の差=「0」のときに(P9=YES)ステップP13(図6)に進む。また、「完全一致」が設定されていないときは(P8=NO)、ステップP10(図6)で、検索レベルに「1/2拍以内」が設定されているか否かを判定し、「1/2拍以内」が設定されているときは(P10=YES)、ステップP11で、ずれ情報Gs,Grの差が1/2拍以内であるか否かを判定し、ずれ情報の差≦「1/2拍」のときに(P11=YES)ステップP13に進む。さらに、検索レベルに「1/2拍以内」も設定されていない「レベル無し」のときは(P10=NO)、ステップP12で、ずれ情報Gs,Grの差が許容上限値(例えば、1拍)以内であるか否かを判定し、ずれ情報の差≦許容上限値のときに(P12=YES)ステップP13に進む。そして、ステップ13では、参照対象のフレーズデータPrを候補Prsに選定し、RAM2の候補リストに記録する。なお、候補リストに候補フレーズデータPrsを記録する際には、併せて、ずれ情報Gs,Grの差も、夫々の候補フレーズデータPrsに関連付けて記録しておく。
【0040】
ステップP9で、ずれ情報Gs,Grの差が「0」でない、ステップP11で、ずれ情報Gs,Grの差が1/2拍を超えている、或いは、ステップP12で、ずれ情報Gs,Grの差が許容上限値を超えていると判定したとき(P9=NO、P11=NO或いはP12=NO)、若しくは、ステップ13のリスト記録処理をした後は、ステップP14に進んで、参照可能なフレーズデータPrが未だ残っているか否かを判定する。ここで、参照可能フレーズデータPrが残っているときは(P14=YES)、ステップP1に戻り、ステップP1〜P14の処理を繰り返す。そして、参照可能フレーズデータPrが残っていないときは(P14=NO)、ステップP15で、候補となったフレーズデータPrsのずれ情報Grに差がある場合、この差の少ない順に候補Prsを並べ替え、この候補フレーズ抽出処理を終了し、フレーズデータ検索処理のステップR12にリターンする。
【0041】
〔種々の実施態様〕
以上、図面を参照しつつこの発明の好適な実施の一形態について説明したが、これは単なる一例であり、この発明は、発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、対象楽曲データ内の編集の先頭となる音符予定位置については、ユーザがその都度1つずつ指定してもよいし、例えば、楽曲データをいくつかの区間に自動或いは手動で分割した際に各区間内の先頭の音符位置を利用する等により、自動検出するようにしてもよい。例えば、サビの始まりや主旋律の始まり等、曲構成における要所でこの機能を活用するようにすると効果的である。
【0042】
対象楽曲データ(Ms)と参照フレーズデータ(Pr)で拍子が異なる場合は、例えば、フレーズデータの基準タイミングである小節線或いは拍位置を対象楽曲データの対応する位置に合わせて対象楽曲側の拍子で調整する。
【0043】
ずれ情報については、クロック数でもよいし、4分音符や8分音符などの音符長で表わしてもよい。或いは、拍数であってもよい。また、基準タイミングが小節線の場合は、拍数とクロック数の組み合わせでもよい。また、ずれ情報を参照する際には、実際のクロック数で一致を調べてもよいが、予め対象楽曲データと検索対象である各フレーズデータを同じ分解能でクオンタイズしておき、その状態でのずれ情報を参照するようにすれば、検索により候補として抽出されるフレーズデータの種類が豊富になる。
【0044】
フレーズデータは、クオンタイズの分解能ごとに記憶されていてもよいし、検索毎に指定の分解能でクオンタイズするようにしてもよい。分解能の指定は、複数種類選択できるようになっていればよい。また、候補フレーズデータが抽出された後、何れかのフレーズデータが最適フレーズに選択された場合、そのフレーズデータを元に基準の小節線か拍位置を合わせて音符データ列を生成する。その際の各音高変換は、例えば、各音符位置に有効な対象楽曲側に用意されたコードに合わせて行う、各音符の前後の音域に合わせて行う、ユーザ指定の音高に合わせて行う、或いは、調性に合わせて行う等の方法が採られる。
【0045】
参照するフレーズデータ群は、装置内に記憶されていてもよいし、ネットワーク接続された外部の記憶装置に記憶されていてもよい。また、個々のフレーズデータには、音符イベントだけでなく、ピッチベンドデータ等の表情付けに関するイベントも含まれる。
【0046】
フレーズデータに属性情報として小節線からのずれ情報と拍位置からのずれ情報が記憶されている場合、フレーズ検索の際、各フレーズの属性情報を参照すればよい。また、属性情報にずれ情報が記憶されていない場合、フレーズデータ内の最初の音符イベントデータとその直後に来る小節線および拍位置からのずれ情報を算出してそれぞれ属性情報として記憶するようにしてもよい。ずれ情報算出時の分解能も共に記憶しておくようにしてもよい。さらに、フレーズデータにずれ情報が属性情報として付加されていない場合、フレーズデータの元になった楽曲データが特定でき参照できるようであれば、元楽曲データを参照し、元楽曲データに対するフレーズデータの最初の音符位置のその音符直後の小節線もしくは拍位置からのずれ情報を算出し、フレーズデータの属性情報として記憶するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
Mr,Ms 元楽曲データ及び対象楽曲データ
Pr:Pr1,Pr2,…;Pra,Prb フレーズデータ(フレーズともいう)
Prs,Prd 候補[フレーズデータ]及び最適フレーズデータ
Ar;Ara,Arb [フレーズ]属性情報、
Gr,Gs [参照]ずれ情報及び指定ずれ情報(ずれ自体を示すこともある)
N1,N2,… 音符イベント
tr 基準タイミング[情報]
図1
図2
図3
図4
図5
図6