(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5846587
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】耐雷ファスナ、航空機、耐雷ファスナの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
B64C 1/00 20060101AFI20151224BHJP
B64D 45/02 20060101ALI20151224BHJP
F16B 37/14 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
B64C1/00 A
B64D45/02
F16B37/14 C
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-124329(P2013-124329)
(22)【出願日】2013年6月13日
(62)【分割の表示】特願2009-279601(P2009-279601)の分割
【原出願日】2009年12月9日
(65)【公開番号】特開2013-224142(P2013-224142A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2013年6月13日
【審判番号】不服2014-25134(P2014-25134/J1)
【審判請求日】2014年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-90552(P2009-90552)
(32)【優先日】2009年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508208007
【氏名又は名称】三菱航空機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(72)【発明者】
【氏名】別所 正博
(72)【発明者】
【氏名】西村 渉
(72)【発明者】
【氏名】石川 直元
(72)【発明者】
【氏名】神納 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】野原 敏勝
(72)【発明者】
【氏名】橋上 徹
(72)【発明者】
【氏名】都築 環
【合議体】
【審判長】
氏原 康宏
【審判官】
一ノ瀬 覚
【審判官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/143092(WO,A1)
【文献】
西独国特許出願公開第3842991(DE,A)
【文献】
米国特許第4826380(US,A)
【文献】
米国特許第4832049(US,A)
【文献】
仏国特許出願公開第2626629(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/00 - 7/00
B64B 1/00
B64D 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の機体を構成する第一の部材と、前記機体の内部側に配置される第二の部材とを貫通し、前記第二の部材側に突出するファスナ本体と、
前記ファスナ本体に装着されることにより、前記第一の部材に対して前記第二の部材を締結するカラーと、
前記ファスナ本体および前記カラーを覆うように前記第二の部材側に設けられる絶縁性材料からなるキャップと、を備え、
前記キャップは、その内周面に形成された、前記ファスナ本体の先端部を収容する有底状の穴を有し、
前記穴の内周面には、少なくとも一箇所、前記穴の中心軸方向に沿って延びる溝が形成されており、かつ、
前記キャップの頂部の厚さは、前記第二の部材に面する前記キャップの開口端部側の厚さよりも厚く形成されており、
前記キャップの内部に絶縁性のシーラント剤が充填されているとともに、
前記ファスナ本体にはネジ溝が形成されており、前記ネジ溝が前記カラーから突出して前記シーラント剤と接触することを特徴とする耐雷ファスナ。
【請求項2】
前記第二の部材は金属材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項3】
前記第二の部材と前記カラーとの間に挟み込まれるワッシャをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の耐雷ファスナ。
【請求項4】
前記ファスナ本体および前記カラーは、金属材料により形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の耐雷ファスナ。
【請求項5】
前記カラーの外周面に、外周側に向けて突出する段部またはつば部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の耐雷ファスナ。
【請求項6】
前記ファスナ本体は金属材料により形成されており、かつ前記ファスナ本体の表面に絶縁コーティングが形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の耐雷ファスナ。
【請求項7】
前記ワッシャは、絶縁材料により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の耐雷ファスナ。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の耐雷ファスナを備えた航空機。
【請求項9】
前記第一の部材は翼パネルであることを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項10】
航空機の機体を構成する第一の部材と、前記機体の内部側で前記第一の部材に取り付けられる第二の部材とを重ねた状態で、前記機体の外部側からファスナ本体を貫通させる工程と、
ネジ溝が形成された前記ファスナ本体に、前記機体の内部側からカラーを装着し、
前記ネジ溝を前記カラーから突出させる工程と、
前記ファスナ本体および前記カラーを覆うようにして、絶縁性材料からなるキャップを取り付ける工程と、
を備え、
前記キャップは、その内周面に形成された、前記ファスナ本体の先端部を収容する有底状の穴を有し、
前記穴の内周面には、少なくとも一箇所、前記穴の中心軸方向に沿って延びる溝が形成されており、かつ、
前記キャップの頂部の厚さは、前記第二の部材に面する前記キャップの開口端部側の厚さよりも厚く形成されており、
前記キャップは、その内部に未硬化の絶縁性のシーラント剤が充填された状態で、取り付けられ、
前記カラーから突出した前記ネジ溝が前記シーラント剤と接触することを特徴とする耐雷ファスナの取り付け方法。
【請求項11】
前記キャップの一端部が、前記第二の部材の表面に接触するようにして、前記キャップが取り付けられることを特徴とする請求項10に記載の耐雷ファスナの取り付け方法。
【請求項12】
前記ファスナ本体に、前記機体の内部側からワッシャを装着した後に前記カラーを装着することを特徴とする請求項10または11に記載の耐雷ファスナの取り付け方法。
【請求項13】
前記ワッシャは、絶縁材料により形成されていることを特徴とする請求項12に記載の耐雷ファスナの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の機体、特に翼に用いられる耐雷ファスナ、
航空機、耐雷ファスナの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の機体を構成する翼は中空構造となっており、翼表面を形成する翼面パネルは、翼内部にある構造材にファスナ部材(留め具)によって固定されている。
ファスナ部材は、ピン状のファスナ本体を、翼および翼に取り付けられる部材の双方に形成された貫通孔に翼の外部側から挿入し、その先端部を翼の内部側から固定金具で固定することで、翼と部材とを締結する。
【0003】
ところで、航空機においては、落雷対策を万全に期す必要がある。翼面パネルとファスナ部材が異なる材料で形成されている場合、落雷時に、翼面パネルとファスナ部材との間の電位差により、翼面パネルとファスナ部材の界面に沿った方向にアーク放電(スパーク)が発生する。翼の内部空間には燃料タンクが収められているため、この被雷時におけるアーク放電の発生を確実に抑える必要がある。
【0004】
そこで、従来、
図9に示すように、翼1の内部側において、翼面パネルに相当する第一の部材2および翼の内部に取り付けられる第二の部材3を貫通するファスナ部材4のファスナ本体4aおよび固定金具4bから離間した状態にキャップ6が取り付けられ、ファスナ本体4aおよび固定金具4bとの間に空気で満たされた空隙7を形成する構造が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−7398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、キャップ6をファスナ部材4に対して位置決めできる構造とはなっておらず、キャップ6の取付位置は作業者に依存する。このため、キャップ6の中心とファスナ部材4の中心とが大きくずれる可能性もある。空隙7においてファスナ部材4とキャップ6との間隙が小さい場所が生じると、キャップ6の機能(絶縁性)が低下する。最悪の場合、キャップ6がファスナ部材4に接触してしまった状態で取り付けられれば、キャップ6の機能そのものが大きく損なわれることもある。
また、キャップ6は、
図9(a)に示すように、接着剤9で第二の部材3に取り付けられたり、
図9(b)に示すようにゴム(絶縁材料)10で外周をカバーしているため、取付現場において、接着作業、ゴム10の塗布作業が必要であり、作業の手間がかかる。航空機の翼1の内部は、言うまでもなく空間が狭く、奥まった位置において上記したような作業を行うのは作業性が非常に悪い。しかも、このようなファスナ部材4は、翼1の全体に数千〜数万箇所設けられるため、作業性の悪化はコスト上昇に直結する。
さらに、上記したような作業は、いわゆる手作業であり、作業者によって、施工品質にばらつきが出やすく、これは信頼性にも影響する。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、絶縁性を確実に確保したうえで、作業性および品質安定性を向上し、ひいては翼の製造コストを低減することのできる耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもとになされた本発明の耐雷ファスナは、航空機の機体を構成する第一の部材と、機体の内部側に配置される第二の部材とを貫通し、第二の部材側に突出するファスナ本体と、ファスナ本体に装着されることにより、第一の部材に対して第二の部材を締結するカラーと、ファスナ本体およびカラーを覆うように第二の部材側に設けられる絶縁性材料からなるキャップと、を備え
る。本発明の耐雷ファスナにおいて、キャップは、その内周面に形成された、ファスナ本体の先端部を収容する有底状の穴を有し、この穴の内周面には、少なくとも一箇所、穴の中心軸方向に沿って延びる溝が形成されている。また、キャップの頂部の厚さは、第二の部材に面するキャップの開口端部側の厚さよりも厚く形成されている。そして、本発明の耐雷ファスナは、キャップの内部に絶縁性のシーラント剤が充填されているとともに、ファスナ本体にはネジ溝が形成されており、ネジ溝がカラーから突出してシーラント剤と接触することを特徴とする。
なお、このような耐雷ファスナは、翼に限らず、航空機の機体を構成する他の部位においても適用可能である。
【0009】
第二の部材は金属材料により形成することができる。
また、第二の部材とカラーとの間に挟み込まれるワッシャをさらに備えることができる。
ファスナ本体およびカラーは、金属材料により形成することができる。
【0010】
カラーの外周面に、外周側に向けて突出する段部またはつば部を形成してもよい。
ファスナ本体を金属材料により形成した場合には、ファスナ本体の表面に絶縁コーティングを形成することが好ましい。
【0011】
キャップは、その内周面に、前記ファスナ本体の先端部を収容する有底状の穴を形成してもよい。
また、ワッシャは、絶縁材料により形成することができる。
【0012】
本発明は、上述した耐雷ファスナを備えた航空機をさらに提供する。
第一の部材として、例えば翼パネルが例示される。
第一の部材をCFRPから形成し、かつ、ファスナ本体は金属材料により形成することができる。この場合、第一の部材の表面に形成された塗膜が、ファスナ本体の後端部を覆うことが好ましい。
このような塗膜しては、銅を含んだ塗料が例示される。
【0013】
また、本発明は、
上記の構成を有する耐雷ファスナの取り付け方法も提供する。まず、航空機の機体を構成する第一の部材と、機体の内部側で第一の部材に取り付けられる第二の部材とを重ねた状態で、機体の外部側からファスナ本体を貫通させる。次いで、ネジ溝が形成されたファスナ本体に、機体の内部側からカラーを装着し、ネジ溝をカラーから突出させる。そして、ファスナ本体およびカラーを覆うようにして、絶縁性材料からなるキャップを取り付ける。このキャップは、その内部に未硬化の絶縁性のシーラント剤が充填された状態で取り付けられ、カラーから突出したネジ溝がシーラント剤と接触することを特徴とする。
【0014】
キャップの一端部が、第二の部材の表面に接触するようにして、キャップが取り付けられることが好ましい。
また、ファスナ本体に、機体の内部側からワッシャを装着した後に、カラーを装着することができる。ワッシャは、例えば絶縁材料により形成される。
【0015】
上記方法に用いるキャップとして、その内周面に、ファスナ本体の先端部を収容する有底状の穴が形成されているものを用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、絶縁性を確実に確保したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質で、第一の部材と第二の部材とを締結するファスナ部材の先端にキャップを取り付けることができる。
また、キャップとファスナ
本体との
間に絶縁性のシーラント剤
が配置されるため、燃料に対するファスナ
本体のシール性能を確保することが可能である。さらに、シーラント剤は、極めて強靱なアーク防止効果を有するため、キャップが破損した状態でもアーク防止効果を保持し、キャップ及びシーラント剤で2重のアーク防止機能を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態における耐雷ファスナを示す断面図である。
【
図4】キャップの外周面にスリット加工を施した例を示す図である。
【
図5】キャップの頭部に突起を設けた例を示す図である。
【
図6】キャップの頭部に摘まみ部を設けた例を示す図である。
【
図8】本実施の形態における耐雷ファスナの他の例を示す断面図である。
【
図9】従来の耐雷ファスナの例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法を適用した航空機の機体を構成する翼の一部の断面図である。
この
図1に示すように、翼20は、その外殻が、例えば炭素繊維と樹脂との複合材料であるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)や、アルミ合金等の金属材料からなる翼パネル(第一の部材)21になって形成されている。翼20の内部に設けられる、補強のための構造材や燃料タンク、各種の機器が、アルミ合金等の金属材料により形成されたステー等の部材(第二の部材)22を介して翼パネル21に固定されている。そして、ステー等の部材22は、ファスナ部材24によって翼パネル21に取り付けられている。
【0019】
ファスナ部材24は、ピン状のファスナ本体25と、翼20の内部側でファスナ本体25に装着されるカラー26と、ワッシャ28と、から構成される。
ファスナ本体25およびカラー26は、強度の面から一般に金属材料により形成される。ピン状をなしたファスナ本体25は、先端部にネジ溝(係合部)25aが形成され、後端部は先端部側より拡径したテーパ状の拡径部25bとされている。このファスナ本体25は、翼パネル21および部材22を貫通して形成された孔21a、22aに翼20の外側から挿入され、後端部の拡径部25bを孔21aのテーパ面に突き当てた状態で、先端部を翼20の内方に突出させる。
カラー26は、筒状で、その内周面にはファスナ本体25のネジ溝25aに噛み合うネジ溝26aが形成されている。このカラー26は、翼20の内方に突出したファスナ本体25のネジ溝25aにねじ込まれる。これによって、翼パネル21と部材22とは、ファスナ本体25の拡径部25bとカラー26とによって挟み込まれ、部材22が翼パネル21に固定されている。
なお、この状態で、ファスナ本体25の先端部25cは、カラー26よりも翼20の内周側に突出し、さらに、ネジ溝25aの一定長をカラー26から翼20の内周側に露出させている。
【0020】
上記ファスナ本体25の後端部は、そのままでは翼20の表面に露出することになるため、翼20が複合材からなる場合、翼20の表面全体がCu(銅)を含んだ塗料からなる塗膜27によってファスナ本体25の後端部が覆われ、これによって落雷時に電流がファスナ部材24に集中するのを防いでいる。
また、ファスナ本体25への雷の直撃を防ぐために、ファスナ本体25は、その表面を樹脂等の絶縁材料でコーティングするのが好ましい。
【0021】
ワッシャ28は、所定の厚さを有した環状で、例えばポリイミド等の絶縁材料により形成されている。ワッシャ28を絶縁材料で形成することで、部材22とワッシャ28との界面においてアーク放電が生じるのを防止する。
【0022】
さて、翼20の内部空間側において、ファスナ部材24には、キャップ30が装着され、キャップ30の内部に、絶縁性を有したシーラント剤34が充填されている。
図2、
図3に示すように、キャップ30は、断面円形で、一端部30a側のみが開口し、他端部30b側に向けてその内径および外径が漸次縮小する形状とされている。このキャップは、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、ナイロン樹脂等の絶縁性を有した樹脂により形成するのが好ましい。
【0023】
キャップ30の他端部30b側の内周面(以下、これを底面31と称する)には、断面円形の有底状の穴(被係合部)32が形成されており、この穴32の内周面には、ファスナ本体25のネジ溝25aに噛み合うネジ溝32aが形成されている。このキャップ30は、一端部30aの端面を部材22に押し当てた状態で、穴32にファスナ本体25の先端部25cが挿入されるようになっている。このとき、ファスナ本体25のネジ溝25aにキャップ30のネジ溝32aが噛み合うことで、キャップ30がファスナ部材24に対し、容易かつ確実に位置決め固定できるようになっている。
【0024】
このようなキャップ30は、キャップ30をファスナ部材24に装着したときに、ワッシャ28、ファスナ本体25およびカラー26との間に、予め定められた間隙が形成されるよう、内周面36の内径が設定されている。特に、キャップ30の開口側である一端部30aにおいては、キャップ30の内周面とワッシャ28およびファスナ本体25との間に、所定寸法t以上の間隙を確保できるよう、キャップ30が形成されている。
【0025】
また、キャップ30の内周面36は、一端部30a側が、その内径が一定とされたストレート部36aとされ、さらに、ストレート部36aから穴32に向けて、その内径が漸次縮小するテーパ部36bが形成されている。
そして、ストレート部36aとテーパ部36bが隣接する部分の角部36c、テーパ部36bと穴32とが隣接する部分の角部36dは、所定の曲率半径を有したR形状とされている。
このようにして、キャップ30の内周面36は、ストレート部36aから角部36c、テーパ部36b、角部36dへと、スムーズに連続する面とされている。これにより、キャップ30内にシーラント剤34を充填する際に、シーラント剤34に空気を巻き込んだり、内周面36(特に角部36c、36d等)においてシーラント剤34に空隙ができたりするのを防ぐようになっている。
【0026】
キャップ30をファスナ部材24に装着した状態では、キャップ30の内部に、絶縁性を有したシーラント剤34が充填される。このシーラント剤34が、キャップ30の内周面とファスナ本体25およびカラー26との間に介在することで、キャップ30とファスナ部材24との間の絶縁性がさらに高まる。そして、キャップ30の開口側である一端部30aにおいては、キャップ30の内周面36とワッシャ28およびファスナ本体25との間のシーラント剤34が、所定寸法t以上の厚さを有しているので、キャップ30の内周面36とワッシャ28およびファスナ本体25との界面における絶縁性能が確保される。
【0027】
翼パネル21および部材22を締結するファスナ部材24に、キャップ30を装着するときには、キャップ30の内部に、未硬化のシーラント剤34を充填しておく。そして、翼20の内部空間において、内方に向けて突出した各ファスナ部材24のファスナ本体25に、キャップ30を押し付ける。
このとき、キャップ30内に充填されたシーラント剤34が、キャップ30の一端部30aの開口部から溢れ出てくる。キャップ30内の全域にシーラント剤34が均等に行き渡るよう、シーラント剤34がキャップ30の全周から溢れ出るのが好ましい。このため、キャップ30の一端部30aの表面37は平滑面であるのが好ましく、また、一端部30aの内周縁部38は、バリやカエリ等が生じないように形成するのが好ましい。
ファスナ本体25に、キャップ30を押し付けていくと、キャップ30の内部には穴32が形成されているので、ファスナ部材24をキャップ30の中心に確実かつ容易に位置決めできる。これにより、キャップ30とファスナ部材24とがずれて、キャップ30とファスナ部材24との間の間隙が場所によって狭くなることもなく、ファスナ部材24がキャップ30に直接接触してしまうことも防止できる。
【0028】
キャップ30のファスナ部材24への位置決めを容易に行うため、穴32の周縁部を、その内径が穴32の奥側に向けて漸次縮小するテーパ面とすることも有効である。
【0029】
キャップ30の穴32をファスナ本体25に押し付けた後は、キャップ30を回転させてファスナ本体25にねじ込んでいく。
このとき、穴32内にシーラント剤34が充填されていると、穴32にファスナ本体25の先端部25cが挿入される。さらにキャップ30のねじ込みにともなってファスナ本体25が穴32内に侵入してくると、穴32内のシーラント剤34の行き場がなく、シーラント剤34の圧力が高まってファスナ本体25の先端部を穴32の所定の深さまで挿入できないこともある。
そこで、キャップ30の穴32の内周面には、少なくとも一箇所、穴32の中心軸方向に沿って延びる溝33を形成するのが好ましい。
図2、
図3の例では、2本の溝33が穴32に形成されている。もちろん、溝33を3本以上形成することも可能である。
このように、穴32に溝33を形成しておくことで、穴32にファスナ本体25の先端部が挿入されてくると、これに伴い、穴32内の余剰のシーラント剤は、溝33を通して穴32から押し出されるようになっている。これにより、穴32内のシーラント剤34に空隙が残存するのを防ぐとともに、穴32へのファスナ本体25の挿入、つまりファスナ部材24へのキャップ30の取り付けを容易に行うことができる。
【0030】
そして、キャップ30の一端部30aの端面が部材22に押し当てられるまでキャップ30をねじ込んだら、キャップ30のねじ込みを完了する。するとこの状態で、ファスナ本体25に形成されたネジ溝25aとキャップ30の穴32のネジ溝32aとが噛み合うことで、キャップ30がファスナ部材24に確実に固定保持される。
また、充填したシーラント剤34が硬化すれば、このシーラント剤34も、キャップ30のファスナ部材24への固定効果を発揮する。
このようにしてキャップ30が装着されたファスナ部材24が耐雷ファスナである。
【0031】
ここで、キャップ30の外周面に何かがぶつかった場合の衝撃等によって、キャップ30が脱落してしまう可能性がある。このような場合においても、キャップ30とともに、硬化したシーラント剤34が脱落することなく、シーラント剤34がファスナ本体25の頭部を覆った状態を維持するようにするのが好ましい。
この目的のため、キャップ30とシーラント剤34との接着力が、シーラント剤34とファスナ部材24との接着力より弱くなるよう、シーラント剤34の材料を選定するのが好ましい。このようにキャップ30とシーラント剤34との接着力が、シーラント剤34とファスナ部材24との接着力より弱ければ、キャップ30に衝撃等が加わった場合にも、キャップ30がシーラント剤34から剥離してキャップ30のみが脱落し、ファスナ部材24はシーラント剤34によって覆われた状態を維持するので、耐雷性能を維持できる。
【0032】
また、ファスナ部材24からのシーラント剤34の剥離を防ぐため、例えば、カラー26の外周面に、外周側に向けて張り出す段部26cや、つば部26d等を形成するようにしてもよい。
【0033】
ところで、キャップ30は、作業者が工具を用いてねじ込んでもよいし、手でねじ込んでもよい。
例えば、キャップ30を作業者が工具でねじ込む場合、
図2、
図3に示すように、キャップ30の他端部30bの頭部30cを、工具形状に対応した六角形状、六角穴形状等とすることができる。
また、キャップ30を作業者が手でねじ込む場合、
図4に示すように、キャップ30の外周面30dに、スリット加工、あるいはローレット加工、ダイヤカット加工等を施し、滑り止めとすることができる。もちろん、
図4の例では、キャップ30の外周面30d全体にスリット加工が施されているが、その一部のみに施すようにしても良い。さらに、
図5に示すように、キャップ30の他端部30bに、周方向に間隔を隔てて複数個所(2箇所以上)の突起35を形成しても良い。突起35の数や形状等は何ら問うものではない。
【0034】
加えて、
図6に示すように、キャップ30の頭部30eに対し、所定の外径を有したロッド部30fを介し、適宜形状の摘まみ部30gを形成することもできる。このような構成においては、作業者は、摘まみ部30gを回すことでキャップ30をファスナ部材24に取り付ける。このとき、ロッド部30fの一部30hを細くする等して、キャップ30の予め規定された締付けトルクに到達したときにロッド部30fの一部30hがねじ切れるような強度に設定しておくことで、作業者は、キャップ30を規定トルクで確実に締め付けて取り付けることができる。
【0035】
上述したようにして、キャップ30に穴32を形成し、この穴32にネジ溝32aを形成しておくことで、ファスナ部材24にキャップ30を確実かつ容易に位置決めして取り付けることができ、取付後においてもキャップ30の脱落を確実に防止できる。
また、キャップ30をファスナ部材24にねじ込んでしまえば、シーラント剤34の硬化を待つ必要はなく、キャップ30の取り付けを迅速に行うことができる。
これにより、絶縁性を確実に確保したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質で取り付けることができる。
また、キャップ30は、樹脂で形成することで、量産が容易となり、製造コストを抑えるとともに、量産により肉厚を管理しやすく、キャップ30の軽量化を図ることもできる。
【0036】
ところで、上記したようなキャップ30は、切削加工により形成することもできるが、量産性を考慮すると射出成形で形成するのが好ましい。射出成形の場合、穴32のネジ溝32aを形成するのが困難(形成した後に、キャップ30を回転させて外す必要がある)であるため、ネジ溝32aは、穴32にヘリサートをねじ込むことで取り付けても良い。
【0037】
なお、上記実施形態においては、穴32に溝33を形成することで、穴32の内部に充填したシーラント剤34の余剰分を押し出すようにしたが、これに限るものではなく、例えば、
図7に示すように、キャップ30の頭部30cに貫通孔40を形成し、この貫通孔40から余剰分のシーラント剤34をキャップ30の外部に押し出すようにすることもできる。
【0038】
また、上記実施形態においては、ファスナ部材24のファスナ本体25の先端部に形成されたネジ溝25aにキャップ30をねじ込むようにしたが、ファスナ部材24において翼20の内方に突出した部分にキャップ30がねじ込まれるのであれば、他の異なる構成とすることが可能である。
例えば、
図8に示すように、翼20の内部側でファスナ本体25に装着されるカラー26の外周面にネジ溝26bを形成し、このネジ溝26bに、キャップ30の内周面に形成されたネジ溝32bをねじ込むようにしても良い。
さらには、ファスナ部材24のファスナ本体25の先端部に形成されたネジ溝25aにキャップ30をねじ込む構成に限らず、キャップ30をファスナ本体25の先端部に嵌め合う構成とすることも可能である。その場合、例えば、ファスナ本体25の先端部の外周面に、周方向に連続する溝または凸条を形成し、キャップ30の穴32に、ファスナ本体25の溝に係合する凸状や突起、またはファスナ本体25の凸状に係合する溝を形成し、キャップ30をファスナ本体25に嵌め合わせる構成とすることも可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
20…翼、21…翼パネル(第一の部材)、21a…孔、22…部材(第二の部材)、24…ファスナ部材、25…ファスナ本体、25a…ネジ溝(係合部)、25b…拡径部、25c…先端部、26…カラー、26a…ネジ溝、30…キャップ、30a…一端部、30b…他端部、30c…頭部、30d…外周面、30e…頭部、30f…ロッド部、30g…摘まみ部、31…底面、32…穴(被係合部)、32a…ネジ溝、33…溝、34…シーラント剤、35…突起、40…貫通孔