特許第5846648号(P5846648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5846648
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】アームレスト
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/54 20060101AFI20151224BHJP
   B60N 2/46 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   A47C7/54 F
   A47C7/54 E
   B60N2/46
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-4126(P2013-4126)
(22)【出願日】2013年1月12日
(65)【公開番号】特開2014-133064(P2014-133064A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2014年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】591283501
【氏名又は名称】備前発条株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088993
【弁理士】
【氏名又は名称】板野 嘉男
(74)【代理人】
【識別番号】100107917
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 英俊
(72)【発明者】
【氏名】山根 孟士
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳三
(72)【発明者】
【氏名】田村 健吾
(72)【発明者】
【氏名】花谷 香
(72)【発明者】
【氏名】谷口 靖
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0115275(US,A1)
【文献】 特開平09−299186(JP,A)
【文献】 特開2009−173059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/54
B60N 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームを上方回動させた収納位置と、下方回動させて略水平にした使用位置とに亘って回動可能に構成したアームレストであり、シートフレームにアームの一端を回動可能に支持する回動支軸とストッパピンを設け、アームに、ストッパピンの当接でアームを使用位置に留める上当面と収納位置に留める横当面を有するストッパ通路を形成するとともに、回動支軸が挿入される回動孔を中心から偏心させた角度調整ピースを嵌合するとともに、角度調整ピースの挿入姿勢を変えることで回動孔及び回動支軸の位置を変え、使用位置におけるアーム高さを変更することを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
使用位置において、ストッパピンが回動支軸の真上に設けられていて上当面に当接されており、かつ、角度調整ピースにおける回動孔の偏心方向が略水平方向であり、横当面が角度調整ピースの偏心量相当の幅を持つ略水平な面を含むものであり、使用位置高さの変換にかかわらず、収納されたアームの前後方向位置をほぼ同じにした請求項1のアームレスト。
【請求項3】
角度調整ピースにおける回動孔の偏心位置が二つ又は二つ以上である請求項1又は2のアームレスト。
【請求項4】
アームの骨格を鉄板とし、骨格以外を一般的な樹脂とするとともに、角度調整ピースが挿入される個所は一般的な樹脂より高強度の樹脂とした請求項1〜3いずれかのアームレスト。
【請求項5】
角度調整ピースが高強度の樹脂又は金属で構成される請求腰1〜4いずれかのアームレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームを下方に回動させた使用位置の高さ(角度ともいう)が変更可能なアームレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アームレストには種々の構造のものがあるが、搭乗者の体格や使い勝手を考慮して使用位置ではアームの先方の高さが変更できるものがある。下記特許文献1に示されるものがそうであるが、この先行例のものは、回動するアームの使用位置を決定する当接面の位置を直接変更する思想のもので、構造が複雑で部品点数が多くコストの高いものになっている。アームレストの高さ調整は望ましいが、使用する座席によっては希望の高さに設定されれば、その後の高さ調整は不要である。この点でユーザーサイドで変更できる必要性は乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2009−179821
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高さの調整機構を従来のストッパピンの当接位置を直接調整する構造に代えて、アームの回転中心の位置を変更して調整するもので、まったく新たな設計思想に基づくものである。これにより、アームの高さ調整ができるのはもちろんのこと、部品点数が少なく構造が簡単でコストの安いアームレストの提供を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、アームを上方回動させた収納位置と、下方回動させて略水平にした使用位置とに亘って回動可能に構成したアームレストであり、シートフレームにアームの一端を回動可能に支持する回動支軸とストッパピンを設け、アームに、ストッパピンの当接でアームを使用位置に留める上当面と収納位置に留める横当面を有するストッパ通路を形成するとともに、回動支軸が挿入される回動孔を中心から偏心させた角度調整ピースを嵌合するとともに、角度調整ピースの挿入姿勢を変えることで回動孔及び回動支軸の位置を変え、使用位置におけるアーム高さを変更することを特徴とするアームレストを提供したものである。
【0006】
そして、以上のアームレストにおいて、本発明は、請求項2に記載した、使用位置において、ストッパピンが回動支軸の真上に設けられていて上当面に当接されており、かつ、角度調整ピースにおける回動孔の偏心方向が略水平方向であり、横当面が角度調整ピースの偏心量相当の幅を持つ略水平な面を含むものであり、使用位置高さの変換にかかわらず、収納されたアームの前後方向位置をほぼ同じにした構成、請求項3に記載した、角度調整ピースにおける回動孔の偏心位置が二つ又は二つ以上である構成、請求項4に記載した、アームの骨格を鉄板とし、骨格以外を一般的な樹脂とするとともに、角度調整ピースが挿入される個所は一般的な樹脂より高強度の樹脂とした構成、請求項5に記載した、角度調整ピースが高強度の樹脂又は金属で構成される構成を提供する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によると、使用位置での高さ変更調整を希望するときには、回動支軸とアームとの間に介在する回動孔の位置が偏心した角度調整ピースの向きを変えることで回動孔の位置の変更が可能になる。図4でこれを説明すると、アーム(6)の回動範囲の回動角度はストッパピン(3)の中心(T)と回動支軸(2)の中心(P)を結ぶ線分T−Pと収納時のストッパピンの中心(R)と回動支軸の中心(P)を結ぶ線分R−Pで形成する角度である。なお、回動支軸の中心(P)は回動孔(Q)の中心でもある。また、ストッパピンの中心位置(T、R)は横当面(7b)又はは上当面(7a)の配置位置で決まる。よって、回動孔(5)の位置を変えることでアームにおける回動中心が移動し、回動角度及び回動範囲が変わり、使用位置におけるアームの高さが変わる。なお、言うまでもなく、回動支軸及びストッパピンはシートフレームに固定で動かないことから、回動孔の位置を変更すると、アームが首振り状態で動くことになる。
【0008】
この場合、請求項2の構成である、「ストッパピンが回動支軸の真上に裳蹴られていて上当面に当接されており」、「角度調整ピースにおける回動孔の偏心方向が略水平方向であり、横当面が角度調整ピースの偏心量相当の幅を持つ略水平な面を含むものであり」であるから、使用位置高さの変換にかかわらず、シートバックに収納されたアームは上下方向の位置は変わるものの、前後方向の変化は微小で、シートバック面からの出入りによる不都合は生じない。
【0009】
請求項3の構成によると、確度調整ピースとアームとの嵌合をセレーションやスプライン嵌合することで位相(偏心量)変更を多段階にできる。請求項4及び5の構成によると、全体又はアームの基端部を軽量な樹脂で形成し、必要な個所のみ強度的に優れる高強度の樹脂又は金属にする複合構造で、材料配分を効率的にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】アームレストをシートに取り付けた状態を示す側面図である。
図2】主たる部材の分解斜視図である。
図3】角度調整ピースの回動孔の配置位置とアームの回動確度及び位置との関係を 示す側面図である。
図4】回動支軸、回動孔、上当面、横当面とストッパ通路及び偏心と確度変化の関 係を示す平面図である。
図5】アームの基端部の縦断面図で、鋼板によるじしの被覆補強の状態をも示すも のである。
図6】樹脂製アームの基端部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は取付状態を示す側面図、図2は主たる部材の分解斜視図、図5はアームの基端部の縦断面図であるが、このアームレストは、シートフレーム1の側面ブラケットに、回動支軸2とストッパピン3を突設しておく。回動支軸2には角度調整ピース4が嵌合される。本例の角度調整ピース4は円盤の前面に小判形をした突起部4aが突設されており、突起部4aの内部に中心からδだけ偏心して回動孔5が形成されている。そして、回動孔5を回動支軸2に嵌合している。
【0012】
本例では、ストッパピン3に対応する位置のアーム6には回動支軸2を中心にした略1/4アールのストッパ通路7が形成されており、このストッパ通路7にストッパピン3が嵌入されている。したがって、アーム6を回動すれば、ストッパピン3はストッバ通路7を移動し、その両端面、つまり、上当面7aと横当面7bとで移動が規制される。ただ、ストッパ通路7は扇形をしている必要はなく、開放されていてもよいし、なくてもよい。要は、ストッパピン3が干渉せずに動き、上当面7aと横当面7bでの荷重を受け止めるものであればよい。アーム6の特に使用位置の変更はアーム6に配置される回動孔5の位置の変更で調整する。
【0013】
図2は主たる部材の分解斜視、図3図4は回動支軸2の偏心とアーム6の回動角度及び位置の関係を示す側面図、平面図である。例えば、図3の状態(角度調整ピース4の回動孔5が左側に偏心している場合)で角度調整ピース4 を図示の状態で入れ替えて回動孔5を右側に偏心させると、使用位置におけるアーム6は角度αだけ回動角度が減少する。この角度αはそのままアーム6の回動角度の減少につながり、結果として使用時点のアーム6の位置は高く設定される。この場合、アーム6を右側に寄せるということはストッパ通路7も右側に寄せることであるから、その幅も使用位置、収納位置ともに影響を受け、上当面7aの幅はbでよいが、横当面7bの幅はb+δとなる(図4)。
【0014】
この場合、アーム6の偏心量は2〜5mm程度、若しくは偏心角度にして3〜10°程度を設定するのが適する。具体的には、285mmのアーム6で10°偏心させると先端の高さにして50mmの変化になる。しかし、収納位置にしたときのストッパピン3の横当面7bとの当接位置は右側に寄るだけである。したがって、収納姿勢にしたとしても、シートバック面からアームが飛び出したり窪んだりする問題は生じない。ただ、収納位置にした場合、アーム6の先端はεだけ低くなっている。これを厳密にするためには、図4で示すように、回動支軸2に対してストッパピン3が真上に位置する関係にし、回動孔5の偏心方向と横当面7bの端辺を平行、かつ、水平に設計することになる。
【0015】
アーム6の回動範囲は一般に110〜130°である。設定角度によっては前記の条件である「回動孔5の偏心方向と横当面7bの端辺を平行、かつ、水平に設計」が守れないことが懸念される。このような場合は、横当面7bに傾斜を持たす等の調整を加えた変形横当面7bで対応することになる。
【0016】
ところで、アーム6の骨格は樹脂と金属(鋼板)を組み合わすことが重量、価格の面で合理化できて好ましい。その場合、上当面7aや横当面7bには大きな荷重がかかるから(上当面7aで900N程度、横当面7bで600N程度)、鋼板で補強するのが好ましい(図4図5、特に、図5は上当面7aや横当面7bの補強の状態も示している)。特に、使用位置にしたときには、人がこれに寄り掛かったりするから、単に下方荷重だけではなく、曲げ荷重もかかり、上当面7aの補強は絶対的である。この点、樹脂と鋼板との組合せ構造はガラス繊維や炭素繊維を混ぜた成形品に比べてきわめて経済的である。
【0017】
以上は、角度調整ピース4を180°入れ換えた場合であるが、これだけでは使用位置の変更は二段階のみである。そこで、角度調整ピース4を大きくして偏心量の異なる複数個の回動孔5を設け、必要なものを採択するという考え方もあるし、偏心量の異なる角調整ピース4を複数種類用意するという考え方もある(図示省略)。この他、図3のように、アーム6と角度調整ピース4の嵌合面のセレーション等4aで多段階に変換する方法もある。これらによると、細かな調整ができることになる。
【0018】
このように、本発明は高さ調整における従来の下限位置の直接規制、直接調整とはまったく異なる逆発想の設計思想に基づくもので、アームの回動孔の位置を変えることで線分T−PとR−Pでなす角度を変え、回動角度調整、すなわち、回動範囲を変え、結果として高さを変えるもので、従来のものに比べて格段にシンプルな高さ調整式アームレストを提供できたものである。
【符号の説明】
【0019】
1 シートフレーム
2 回動支軸
P 回動支軸の中心
3 ストッパピン
R 使用位置におけるストッパピンの中心
S 収納位置におけるストッパピンの中心
4 角度調整ピース
4a 突起部
4b 回動孔のセレーション
5 回動孔
Q 回動孔の中心
6 アーム
7 ストッパ通路
7a 〃 の上当面
7b 〃 の横当面
δ 回動孔の偏心量
α 回動角度の変更角度
ε 収納位置におけるアーム先端高さの差
b ストッパピンの直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6