(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フロントカバーとリアカバーで形成される架台内壁面にX線照射窓となるドームカバーシートを更に有し、前記架台の開口径の変更に追従してカバーシート長を調整するカバーシート調整部を有する請求項1記載のX線CT装置。
【背景技術】
【0002】
医療用画像診断装置の一つであるX線CT(Computed Tomography)装置では、X線管から発生したX線が被検体を透過し、X線管に対向して配置されるX線検出器のペアが被検体の回りを回転しながら撮影することで被検体の断層画像を得ることができる。このX線管とX線検出器のペアを回転させる部分を回転部といい、これら回転部を支える部分を固定部という。従来、固定部の外装カバーは、主としてフロントドームカバーとリアドームカバーからなり、対向するX線管とX線検出器の間の寝台が入る部分に開口部(架台ドーム)を形成する。これらは一体成型の部品または複数の部品を組み合わせて構成される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、この架台ドーム内壁面には、高速に回転する回転部に被検体が手などを誤って入れたりしないように、安全性の観点からX線照射窓としてのドームカバーシートを備えている。通常、このドームカバーシートは、取り付け前はシート状であり、フロントドームカバーとリアドームカバーとで形成される架台ドーム内壁面に円筒状に取り付ける。製品によっては最初から円筒状のものも存在する。従って、これらの外装カバーを組み立てた架台ドームのドーム径は固定であり、可変できる構造ではない。
【0004】
X線管とX線検出器の距離を近づけると機構的に拡大撮影を行うことが可能である。現在のドームカバー構造で拡大撮影を行うためは、最初からドーム径を小さく設計して回転部内部のスペースを確保し、X線管とX線検出器の距離(SID:Source Image Distance)を短くする以外に実現できない。しかしこのように単純にドーム径を小さくしてしまうと、例えば体格の大きな被検体の場合などで、通常撮影時であるにもかかわらずドーム径を大きくしたいという要求に応えられなくなるという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について
図1から
図9に示す図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
本実施形態のX線CT装置の架台10は、フロントドームカバー11とリアドームカバー12からなり、これらで形成される架台ドーム13内壁面にX線照射窓としてのドームカバーシート14を備える。フロントドームカバー11とリアドームカバー12それぞれは、固定カバー15と、複数に分割された可動カバー16と、隣接する各可動カバー16を接続する伸縮素材17とから構成される。この各可動カバー16に放射状にスライドさせる機構を持たせて、架台ドーム径が伸縮できるようにする。異なるドーム径に伸縮させる時に発生する可動カバー16間の隙間は、伸縮素材17で吸収できるようにする。伸縮素材17は、素材自体に伸縮性があってもよいし、蛇腹のような構造でもよい。本実施形態では説明を分かりやすくするために、フロントドームカバー11とリアドームカバー12を対称構造としているので架台正面と架台背面とは同じ構造である。また製品によっては存在するサイドカバーやトップカバーなどをフロントドームカバー11およびリアドームカバー12に含め一体化して示している。
【0011】
このようなドーム径が可変できるX線CT装置の寝台18に患者(被検体)を横臥させ、この架台ドーム13内に寝台18を移動させて、ドーム径に応じた撮影倍率の断面画像をスキャンして取得する。
【0012】
図2は本実施形態のX線CT装置におけるドーム径可変構造をX−Z平面の断面図で示し、
図3は正面から見た図を示している。また、
図4では、ドーム径可変構造のうち、スライド機構部とテンション調整部の一例について示している。
【0013】
図2に示すように、本実施形態のドーム径可変構造は、後述するシステム制御部(81)からの制御命令により架台ドーム13のドーム径を可変するように駆動するドーム径駆動部21とドーム径の可変に伴い、ドームカバーシート14のシート長を調整するカバーシート調整部22を有する。
【0014】
このドーム径駆動部21はフロントドームカバー11側、およびリアドームカバー12側の、固定カバー15と分割された複数の可動カバー16との間に設置されるドーム径伸縮のためのスライド機構23を制御する。
【0015】
また、カバーシート調整部22は、可変されたドーム径に対して最適なシート長となるようにドームカバーシート14の長さを調整するカバーシート伸縮部24と、ドーム径を可変しても可動カバー16とドームカバーシート14が密着するように、ドームカバーシート14にテンションをかけるテンション調整部25を有している。
【0016】
図3に示すように、例えば、可動カバー16は等分に4分割されており、この可動カバー16と固定カバー15の間に配置されるスライド機構23によりに各可動カバー16が、矢印に示すように放射状に方向移動する。
【0017】
このスライド機構23についての一例を
図4に示す。スライド機構23は、可動カバー16側に設置されるラバー231およびモータ232と、固定カバー15側に固定されるアイドラ233a、233bから構成されており、モータ232を回転することにより可動カバー16を固定カバー15に対してスライドさせることができる。このスライド機構23はリニアモータのようなものでも構わない。
【0018】
また放射状に方向移動したことによる各可動カバー16間には隙間が生じるが、この隙間は伸縮素材17にて吸収し、架台10の内部が見えないようにする。
【0019】
カバーシート調整部22については、帯状のドームカバーシート14を仮定する。例えばカバーシート伸縮部24の構造の一例としては、帯状のドームカバーシート14の片側を架台ドーム13の内壁面に固定し、もう片側を
図3に示すバネ等にて引っ張る構造にする。ドーム径拡大時はバネが伸びている状態にし、ドーム径収縮時は、伸びたバネの収縮する力を利用して、ドームカバーシート14を自動的に引っ張るようにする。
【0020】
また、ドーム径可変の際、ドームカバーシート14が弛むことなくドーム径に追従するために、
図4に示すように、ドームカバーシート14にはテンション調整部25を配置する。このテンション調整部25は、例えばアイドラ233cなどを取り付けて、常にドームカバーシート14にテンションをかけて固定カバー16に密着させ、架台ドーム13の円形を保つようにする。
【0021】
以上述べたように、第1の実施形態によれば、複数に分割された可動カバーを放射状に方向移動することによりドーム径を可変することが可能となる。
【0022】
(第2の実施形態)
本実施形態では、スライド機構として環状方向にスライドする機構を採用する。
図5は、環状スライド機構を有するX線CT装置のドーム径可変構造の正面図であり、
図6はドーム径可変構造の詳細図を示している。
【0023】
本実施形態のドーム可変構造は、8等分した可動カバー16と、この各可動カバー16それぞれにテレスコピック構造体51を設け、この8つの可動カバー15を組み合わせることにより全体として円形テレスコピック構造が形成されている。
【0024】
ここで言う円形テレスコピック構造とは、各可動カバー15の隣り合うテレスコピック構造体51が互いにかみ合うことにより、略円形のドーム径形状を保ちながらドーム径の拡大、もしくは縮小が可能となる構造のことを言う。従って、ドーム径可変のために、各テレスコピック構造体51はかみ合わせ部がスライドできる構造を持つ。
【0025】
図5の矢印で示すように、スライド機構23(環状)は、ドーム径駆動部21の指示によりドーム径をワイヤなどの長さで既定し、ドーム径を可変する。言わば巾着袋と同じような原理で、円形テレスコピック構造に通したワイヤを押し引きすることによって、テレスコピック構造を伸縮させて、ドーム径を可変させる。各可動カバー16間の隙間は、図示していないが第1の実施形態のように伸縮素材にて吸収し、回転部内部が見えないようにする。
【0026】
また、カバーシート調整部22の構成は、第1の実施形態と同じとすることができる。ドーム径の可変動作に伴い、帯状のドームカバーシート14片側を固定し、もう片側をバネ等にて引っ張る構造にする。
【0027】
図6に示すように、各可動カバー16とテレスコピック構造体51は固定されて一体構造になっており、さらに各可動カバー16の裏面には、点線矢印で示すワイヤ61をガイドする例えば円筒状のワイヤガイド62が配置されており、このワイヤガイド62によってドームの円形が保たれる。
【0028】
このように、第2の実施形態によれば、複数に分割された可動カバーを円形テレスコピックに組み合わせ、さらに環状方向にスライドさせることで架台ドームのドーム径を可変できる。
【0029】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、ドーム径を大きくする方向にできるテレスコピック構造を示したが、本実施形態ではドーム径を収縮する方向にできる円形テレスコピック構造について説明する。
【0030】
各可動カバー16が、テレスコピック構造体となるように設計され、ドーム径が収縮する方向に対して、各可動カバー16が隣の可動カバー16内に重なり円形テレスコピック構造を形成するものである。
【0031】
本実施形態は、第2の実施形態と合わせて設計することにより、ドーム径の拡大および縮小が可能となる。
【0032】
(第4の実施形態)
本実施形態は、第1から第3で説明したドーム径可変構造を有するX線CT装置について説明する。
図8は、ドーム径可変構造を有するX線CT装置を示している。本実施形態のX線CT装置は、被検体PをX線でスキャンするための架台10と、被検体Pを架台ドーム13内に移動する寝台18と、X線CT装置全体を制御するシステム制御部81と、架台10から得られた投影データを処理し、医用画像を再構成するコンピュータとしての再構成部82とを有する。
【0033】
ドーム径可変構造を有するX線CT装置架台10の内部構造は、被検体Pを中心にして回転運動する回転部83とそれ以外の固定部84から構成される。回転部83には、X線を発生するX線管831、X線管831から放射され被検体Pを透過したX線を検出するX線検出器832、X線検出器832の検出データをデジタルデータに変換して収集するデータ収集装置(DAS:Data Acquisition System)833、およびデータ収集装置833で取得された投影データを回転部83外の再構成部82へ非接触で伝送する非接触データ伝送装置834から構成される。
【0034】
システム制御部81は、X線を発生するためにX線管831に印加する電圧を発生する高電圧発生装置835、架台ドーム13のドーム径を可変するドーム径駆動部21、ドーム径の可変に伴い、X線管821とX線検出器832の距離(SID)を可変するSID駆動部836、へリカルスキャンなどのスキャン条件に基づいて回転部83を回転させる回転駆動部837、および被検体Pが横臥する寝台18を架台ドーム13内に移動させる寝台駆動部838から構成される。
【0035】
再構成部82は、非接触データ伝送装置834から転送された投影データから、診断に必要な医用画像を再構成し、この再構成された医用画像は、再構成部82に接続された図示しないモニタなどに表示される。また、ドーム径駆動部21によるドーム径の可変、およびSID駆動部836によるSID変更により撮影倍率を変えた医用画像を再構成しモニタなどに表示可能となる。システム制御部81と再構成部82は一般的には処理能力の高いコンピュータを基本にして構成される。
【0036】
次に
図9を用いて、通常撮影および拡大撮影を行うスキャン手順について説明する。
【0037】
まず、医師または検査技師は、被検体Pを寝台18に横臥させ、被検体Pに対して取得すべき部位の医用画像のスキャン条件の入力行う。ステップST901では、システム制御部81がこの入力されたスキャン条件を取得する。
【0038】
ステップST902では、医師または検査技師は、さらに通常撮影か拡大撮影かなどの撮影モード種別または撮影倍率を選択する。また、撮影倍率を変えなくとも被検体Pの体格によってドーム径を拡大する必要がある場合にはドーム径の大きさを選択する。
【0039】
ステップST903では、システム制御部81はステップST902で選択された撮影モード、撮影倍率、被検体Pの体格などの入力条件により最適なドーム径を計算し、計算されたドーム径になるようにドーム径駆動部21を制御する。
【0040】
またステップST904では、拡大撮影などの撮影モード種別または撮影倍率が変更された場合に、システム制御部81は、最適な倍率になるようにSIDの調整を行う。
【0041】
ステップST905では、寝台駆動部838を制御して寝台18に横臥する被検体Pを架台ドーム13内に移動する。そしてスキャンを開始する。
【0042】
そしてステップST906では、撮影モード・撮影条件に応じたスキャンが終了する。そして取得した投影データを再構成部82で医用画像として再構成する。
【0043】
以上説明したように、第4の実施形態によれば、架台ドーム13のドーム径とSIDを可変させることにより、撮影倍率を変えた医用画像を取得することが可能となる。
【0044】
<その他の実施形態>
実施形態1から3においては、カバーシート調整部22を設けた。ドームカバーシート14は、X線管831から照射されるX線を通過させる照射窓として機能する他に、被検体や操作者が高速に回転する回転部に誤って手などを入れてしまわないように、安全性の観点から備えられている。現在、このドームカバーシート14の材質として透明、もしくは半透明なシートが用いられており、具体的には伸縮性の乏しいPET(ポリエチレンテレフタレート)系の素材であるマイラーが使用されていることが多い。
【0045】
しかし、ドームカバーシート14の材質は、X線を減衰なく通過させ、しかも被検体が手などを入れないようにできる材質であればよいため、必ずしもマイラーを使用しなくてもよい。すなわち、ドームカバーシート14の材質をX線の減衰が少ない円筒形の伸縮素材で構成すれば、ドーム径の可変に対し柔軟に変形が可能となる。その場合、カバーシート調整部22の機能は自動的に達成される。
【0046】
従って、第4の実施形態によれば、ドームカバーシートをX線の減衰が少ない円筒形の伸縮素材で構成することにより、ドーム径の可変に応じてドームカバーシートも自動的に可変する効果を有する。
【0047】
以上述べたように本実施形態のX線CT装置によれば、外装カバーにドーム径を可変できる機構を有しているのでドーム径を小さくすることができる。ドーム径を小さくできれば内部スペースを確保することが可能となり、X線管をX線検出器に近づけて行う拡大撮影が可能となる。しかも通常撮影時にはドーム径を大きくできるため、体格の大きい人に対して柔軟に対応可能であるなど、ユーザニーズに応えることが可能となる。
【0048】
本発明は、上記実施態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施形態で示した可動カバーの形状は例示にすぎず、さらに分割数などは必要に応じて変更可能である。分割数が多いほど円形なドーム形状で可変することができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。