(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847179
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】製剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20151224BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20151224BHJP
A01N 43/54 20060101ALI20151224BHJP
A01N 43/653 20060101ALI20151224BHJP
A01N 43/56 20060101ALI20151224BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N25/04 101
A01N43/54 A
A01N43/653 G
A01N43/56 C
A01P3/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-521273(P2013-521273)
(86)(22)【出願日】2011年7月26日
(65)【公表番号】特表2013-535464(P2013-535464A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】IB2011053325
(87)【国際公開番号】WO2012014152
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年6月26日
(31)【優先権主張番号】1012586.2
(32)【優先日】2010年7月27日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500371307
【氏名又は名称】シンジェンタ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン アラステア ベル
(72)【発明者】
【氏名】アン ウォーラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー スティーブン ウェイルズ
【審査官】
中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−501906(JP,A)
【文献】
特表2010−513700(JP,A)
【文献】
IKEJIRI M,A NOVEL AND EFFICIENT METHOD FOR INSIDE SELECTIVE ESTERIFICATION OF TERMINAL VIC-DIOLS,TETRAHEDRON LETTERS,NL,ELSEVIER,2004年 2月 2日,V45 N6,P1243-1246
【文献】
MARCEL G R,ESTROGENIC POTENCY OF FOOD-PACKAGING-ASSOCIATED PLASTICIZERS AND ANTIOXIDANTS 以下備考,JOURNAL OF AGRICULTURAL AND FOOD CHEMISTRY,2006年 6月 1日,V54 N12,P4407-4416,AS DETECTED IN ER[ALPHA] AND ER[BETA] REPORTER GENE CELL LINES
【文献】
E P KUENDIG,TRUNCATED CINCHONA ALKALOIDS AS CATALYSTS IN ENANTIOSELECTIVE MONOBENZOYLATION 0F MESO-1,2-DIOLS,CHEM.COMM.,2008年 1月 1日,P3519-3521
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬および式(I)
【化1】
の化合物
を含む製剤であって、
式中、R
1が水素、メチル、エチル、プロピル、またはブチルであり、R
2がメチルまたはエチルであり、
かつR
3が水素、メチル、またはエチルであり
、前記農薬が、ストロビルリン、トリアゾール、またはピラゾールであり、そして、前記製剤が、乳剤またはエマルション製剤である、製剤。
【請求項2】
R1が水素である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
R3が水素である、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記農薬が、アゾキシストロビン、ジフェノコナゾール、またはイソピラザムである、請求項1、2または3に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種のアルキレングリコールベンゾアート化合物を溶剤として、特に製剤において、具体的には農薬製剤また環境にやさしい製剤において使用すること、およびある種の新規な化合物に関する。本発明の溶剤は、ストロビルリン類、トリアゾール類、およびコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(SDHI)の系列の有害生物防除剤(pesticide)を可溶化(具体的にはピラゾール類、好適にはピラザムに対する化学作用)する場合に特に効果的であることが分かる。
【背景技術】
【0002】
現今では薬剤師は、新しい製剤を開発するときに複数の環境基準に対処する必要がある。理想的には好適な溶剤は、低い水溶解性、有害生物防除剤または他の有機分子に対する優れた溶解力、植物または動物の再生可能な資源から製造されること、低い皮膚刺激性、例えばミジンコ属に対する低い生態毒性、低い揮発性有機成分、および高い引火点のうちの多数または全部の特性を示すはずである。本発明の化合物はそれぞれこれらの特性の全部または多数、具体的にはすぐれた溶解力を示し、これら化合物は溶剤として効果的に使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
したがって本発明は、式(I)
【化1】
(式中、R
1は、水素、メチル、エチル、プロピル、またはブチルであり、R
2は、メチルまたはエチルであり、R
3は、水素、メチル、またはエチルであり、nは1、2、または3である)の化合物を含む製剤を提供する。
【0004】
プロピルおよびブチル基は、直鎖または分岐鎖である。例としてはiso−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルがある。
【0005】
好適にはR
1はHである。
【0006】
好適にはR
2はメチルである。
【0007】
好適にはR
3はHである。
【0008】
好適にはnは1である。
【0009】
本発明は、好適には農薬製剤における式(I)の化合物の使用法を提供する。
【0010】
本発明の化合物は、溶剤として使用することができる。
【0011】
本発明により開示される化合物の多くは新規なものである。
【0012】
したがってさらなる態様において本発明は、その化合物が安息香酸2−ヒドロキシプロピル、安息香酸2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、1,2ブタンジオール−2−ベンゾアート、1,2ブタンジオール−1−ベンゾアート、または1−プロパノール−2(2−ヒドロキシプロピル)−1−ベンゾアートでないという条件で、上記で定義される式(I)の化合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
表1は、式(I)の好適な化合物の構造式および幾つかの分光学的データを提供する。
【0015】
本発明の化合物は簡単に調製することができる。例えばグリコールエーテルを、適切な脱離基を有する芳香族化合物、例えば塩化ベンゾイルと反応させる。
【0016】
本発明の化合物は、様々な最終用途(農薬製剤を含めた)に、具体的には溶剤として使用することができる。これらの溶剤は、除草剤、防かび剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、および殺虫剤(および植物成長調節剤)を含めた種々様々な材料と共に使用することができる。
【0017】
本発明は、式(I)の化合物の全ての異性体または異性体の混合物を包含し、また式(I)の化合物の2種類以上の異なる化合物の混合物を包含する。
【0018】
本発明の化合物は、農薬を含めた様々な材料の溶液を調合するために使用することができる。これら溶液は、乳化または分散濃縮液として、水または油エマルションとして、マイクロカプセル製剤、エアゾル噴霧液、または煙霧製剤として製剤化することができ、またそれらをさらに、例えば乾性散布用の顆粒状材料または粉末に製剤化することも、または水分散性製剤として製剤化することもできる。こうして形成される溶液はまた、直接に土壌あるいは植物上で使用することも、または他の非農薬用途で使用することもできる。
【0019】
このような用途の例には、製紙、水処理、林業用途、環境衛生処理、地方自治体のプールおよび他の水路における、また河川、湖水、貯水池、あるいは海岸近傍での用途における、また大気への放出をできるだけ少なくするか制御しなければならない、また大気の汚染が望ましくない用途における使用法が挙げられる。例には、屋外用または屋内用ペイント、被覆剤、ワニス、ワックス、または他の保護層、あるいは乳白剤、着色剤、または遮断剤における、染色、着色、またはインク用途における、家庭、庭園、または産業用途用に設計されるクリーニング製品における、また産業界、家庭、あるいは自然環境で用いられる石鹸または洗剤用途における使用法が挙げられる。本発明の化合物はまた、シャンプー、家庭用洗浄剤において、また家庭用クリーナー(例えば、オーブンクリーナーおよび表面クリーナー)において使用することもできる。
【0020】
本発明の化合物は、種々様々な農薬、医薬、および他の商業的に高価な化合物に対するひときわすぐれた溶解力を有し、しかもこの溶解力は、泥、油脂、またはワックスの溶解にまで及ぶ。
【0021】
本発明を下記の実施例により例示する。その中で、g=グラム、℃=セ氏温度である。
【0022】
別段の指定がない限り、各濃度は重量百分率として表される。
【0023】
本発明の溶剤は、ストロビルリン類、トリアゾール類、およびコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(SDHI)の系列に属する有害生物防除剤を可溶化(具体的にはピラゾール類、好適にはピラザムに対する化学作用)する場合に特に効果的である。このことは、有害生物防除剤アゾキシストロビン、ジフェノコナゾール、およびイソピラザムの溶解度が、プロピレングリコールベンゾアート溶剤では一連の一般に使用される溶剤よりもより高いことを示す実施例において実証される。驚くべきことにプロピレングリコールベンゾアート中でのシプロジニル、クロロタロニル、およびビシクロピロンの溶解度は、同様の一連の一般に使用される溶剤の場合よりも低い。溶解度は20℃におけるw/w百分率として示す。
【実施例】
【0024】
実施例1
この実施例は、本発明の溶剤中での複数の農薬有効成分のそれぞれ(表1の化合物1および2)の高い溶解度を例示する。
【0025】
ガラス瓶を有効成分(AI)で約8分の1満たし、次いで溶剤(この実施例ではプロピレングリコールベンゾアートまたはブチレングリコールベンゾアート)を瓶が約3分の1満たされるまで加えた。得られた試料をWhirlimixer(商標)により混合し、次いで25℃で貯蔵した。試料を数日ごとに調べ、固形有効成分が存在しない場合、追加の有効成分を加えた。また液体が残っていない場合、追加の溶剤を加えた。この手順を、試料が平衡に達するまで有効成分または溶剤のどちらかの最終添加後4週間のあいだ繰り返した。次いで上澄み液層を有効成分濃度に関してガスクロマトグラフィーにより分析し、結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
実施例2
この実施例は、本発明の溶剤が、ストロビルリン類、トリアゾール類、およびコハク酸デヒドロゲナーゼ阻害剤(SDHI)の系列に属する有害生物防除剤を可溶化(具体的にはピラゾール類、好適にはピラザムに対する化学作用)する場合に特に効果的であることを示す。表3aおよび3bは、溶剤プロピレングリコールベンゾアート(表1の化合物1)中での有害生物防除剤アゾキシストロビン、ジフェノコナゾール、イソピラザム、シプロジニル、クロロタロニル、およびビシクロピロンの溶解度を示す。比較のために、一般的に利用されている溶剤一覧の溶解度も表中に示されている。データは、ほとんどの場合、プロピレングリコールベンゾアートが、最初の3種類の農薬(それぞれトリアゾール、SDHI、およびストロビルリン)に対してその他の一般の溶剤よりもより優れた溶媒であることを示す。溶解度は、20℃におけるw/w百分率として示す。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】