(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847192
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】エンケファリナーゼ阻害剤の新規投与形態
(51)【国際特許分類】
A61K 31/223 20060101AFI20151224BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20151224BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20151224BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20151224BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20151224BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20151224BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20151224BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20151224BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20151224BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20151224BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20151224BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20151224BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20151224BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20151224BHJP
A61K 47/34 20060101ALI20151224BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20151224BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20151224BHJP
【FI】
A61K31/223
A61K31/4178
A61K9/10
A61K47/12
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/14
A61K47/08
A61P1/00
A61P1/08
A61P1/12
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K47/34
A61K47/24
!A61K45/00
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-542560(P2013-542560)
(86)(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公表番号】特表2014-503512(P2014-503512A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】EP2011072315
(87)【国際公開番号】WO2012076691
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】10306397.0
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501379856
【氏名又は名称】ビオプロジェ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ステファヌ ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】マルク モリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャンヌ−マリー ルコント
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ リニョー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ロベール
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−シャルル シュヴァルツ
【審査官】
澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/102171(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/039719(WO,A1)
【文献】
特表2005−500363(JP,A)
【文献】
特表2007−522202(JP,A)
【文献】
YIYAO DAOBAO ,26(1),p.57-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72,
A61K31/00−31/80,
A61K47/00−47/48,
A61P 1/00−43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3.5から5の間に含まれるpHを有し、エンケファリナーゼ阻害剤がラセカドトリルまたはデキセカドトリルである経口投与に適したエンケファリナーゼ阻害剤の水性懸濁剤。
【請求項2】
前記pHが4から4.5の間に含まれる、請求項1に記載の水性懸濁剤。
【請求項3】
1種または複数の緩衝剤をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の水性懸濁剤。
【請求項4】
前記緩衝剤がクエン酸ナトリウム、乳酸およびそれらの混合物から選択される、請求項3に記載の水性懸濁剤。
【請求項5】
1種または複数の増粘および/または懸濁化剤をさらに含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の水性懸濁剤。
【請求項6】
前記増粘および/または懸濁化剤が、セルロースおよびその誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース混合物;合成ポリマー、例えば架橋ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポロキサマーおよびカルボマー;ショ糖;または他の天然ポリマー、例えばアルギン酸、ガム(キサンタン、グアー、寒天、ローカストビーン、アラビアゴム、トラガント、カラギーナンが含まれる);クレー、例えばケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルミニウム・メタヒドロキシド、ベントナイト、マグネシウム・ヘクトライト;エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の水性懸濁剤。
【請求項7】
前記増粘および/または懸濁化剤(複数可)がヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、およびそれらの混合物から選択される、請求項6に記載の水性懸濁剤。
【請求項8】
少なくとも1種の保存剤をさらに含む、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の水性懸濁剤。
【請求項9】
前記保存剤が安息香酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸およびそれらの塩、より好ましくは安息香酸ナトリウムから選択される、請求項8に記載の水性懸濁剤。
【請求項10】
少なくとも1種の甘味剤および/または着香剤をさらに含む、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の水性懸濁剤。
【請求項11】
オンダンセトロンをさらに含む、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の水性懸濁剤。
【請求項12】
− 少なくとも1種のエンケファリナーゼ阻害剤:2から5g/lの懸濁剤、
− 少なくとも1種の増粘および/または懸濁化剤:4から16g/lの懸濁剤、
− 所望のpHに調整するための緩衝剤
を含む、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の水性懸濁剤。
【請求項13】
以下の成分
− 保存剤:1から6g/lの懸濁剤、および/または
− 甘味剤:550から650g/lの懸濁剤、および/または
− 着香剤:0.8から5g/lの懸濁剤
のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の水性懸濁剤。
【請求項14】
− オンダンセトロン:0.1から0.5g/lの懸濁剤
をさらに含む、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の水性懸濁剤。
【請求項15】
pHを3.5から5の間に調整するために、エンケファリナーゼ阻害剤の水性懸濁剤に緩衝剤を添加するステップを含む、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の水性懸濁剤の調製方法。
【請求項16】
下痢、急性胃腸炎、および/または嘔吐を伴う急性下痢の治療および/または予防に使用するための、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の前記エンケファリナーゼ阻害剤の水性懸濁剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラセカドトリルまたはデキセカドトリルなどのエンケファリナーゼ阻害剤の新規な製剤、その調製方法、および下痢治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ラセカドトリルおよびデキセカドトリルは、特有の腸における分泌抑制作用を有する強力なエンケファリナーゼ阻害剤である。乳児および小児を含めて、ラセカドトリルは興味深い下痢止め作用を示す。この化合物は水に不溶性であり、こうした幼い患者については顆粒状散剤から即席で調製される懸濁剤の形態で投与される必要があると記載されている(例えば、特許文献1参照)。これは、開発されて以来、何百万人もの患者に既に使用されている市販の小児用製剤である。
【0003】
それにもかかわらず、この市販の小児用製剤はいくつかの不都合を示す。第一に、小児または乳児の年齢または体重に厳密に釣り合った用量が最適には必要とされるが、散剤から出発する場合これを容易には順守することができない。懸濁剤を調製するための散剤の使用には、多数の単位投薬量を必要とする。商業的には、幼い患者の年齢/体重に合わせた強さの懸濁剤を調製するために一様でない数で使用しなければならない、異なる重量のラセカドトリルを含有するサシェ剤として提供されている。
【0004】
このことによって、医師の処方による用量を念頭に置いて親が調製する方法が難しくなるため、間違いの危険性が生じる。加えて、こうした多数の製剤の価格は、例えば小児科で使用されることが多い形態であるシロップ剤の価格よりも本質的に高くなる。さらに、散剤を水に再懸濁させることにより調製された懸濁剤は、有効成分全部を確実に投与するために激しい混合および迅速な投与が要求され得る。さもなければ、ラセカドトリルの顆粒剤は沈澱する可能性があるため、用量全部は患者に投与されない恐れがある。最後に、患者の年齢/体重に準じた厳密な用量は、現在の市販の小児用製剤では順守することができない。
【0005】
したがって、ラセカドトリルまたはデキセカドトリルなどのエンケファリナーゼ阻害剤の水性懸濁剤を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/97801号
【特許文献2】国際出願第PCT/IB2005/000351号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、その苦味および水性媒体中のその分解プロファイルゆえに、ラセカドトリルの水性懸濁剤を提供することに対してこれまで先入観があった。特に、ラセカドトリルの安定的な懸濁剤を調製することの難しさの一つとして、この化合物の加水分解のリスクがある。この化合物はエステル基を有し、易酸化性の活性が低い化合物へ容易に加水分解され得る。
【0008】
5−HT
3受容体アンタゴニスト、特にオンダンセトロンおよびグラニセトロンなどの制吐剤は、急性胃腸炎治療のためのエンケファリナーゼ阻害剤と共に使用されてきた(例えば、特許文献2参照)。実際には、オンダンセトロンは、成人に関してはコーティング錠剤、非経口形態または坐剤の形態で、乳児および小児に関しては非経口形態またはシロップ剤の形態で投与される。したがって、エンケファリナーゼ阻害剤と5−HT
3受容体アンタゴニストとの両方を同時に投与するために単一製剤を提供することが望ましい。しかし、非常に異なる濃度で2つの有効成分を混合した均一な散剤は、一般に得られ難い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
今驚くべきことに、本発明者らは、ラセカドトリルまたはデキセカドトリルなどのエンケファリナーゼ阻害剤のいくつかの水性懸濁剤が予想外に上記の要件を満たすことができることを発見した。
【0010】
本発明の製剤は、乳児または小児の年齢または体重によって変動する量で便宜的に投与できるエンケファリナーゼ阻害剤の安定的な水性懸濁剤を含む。さらに、オンダンセトロンが懸濁剤の水相に可溶性であるため、2つの有効成分の濃度が大きく異なるにもかかわらず均一な製剤を容易に得ることができる。
【0011】
本発明の安定的な水性懸濁剤は、特に懸濁剤のpHを慎重に調整することによって可能になる。本発明の水性懸濁剤は、予想外なことに、安定性、散剤から構成される既知の懸濁剤を超える経口バイオアベイラビリティの改善を示し、かつ、げっ歯類において無毒性である。
【0012】
したがって第一の目的によれば、本発明は、3.5から5の間に含まれるpHを有する、経口投与に適したエンケファリナーゼ阻害剤の水性懸濁剤に関する。
【0013】
前記エンケファリナーゼ阻害剤は、ラセカドトリルまたはデキセカドトリルとされ得る。
【0014】
前記pHは、4から4.5の間、より好ましくは4から4.2の間に含まれ、さらにより詳細には約4である。
【0015】
前記pHは所望のpH範囲内に水性懸濁剤のpHを調整することができる適切な緩衝剤、特にクエン酸ナトリウム、希釈乳酸(例えば5%乳酸)を含めた乳酸および/またはそれらの混合物の存在によって達成されてもよい。
【0016】
前記緩衝剤は、所望のpHを達成するのに十分な濃度で一般に存在する。
【0017】
前記懸濁剤は、一般に、少なくとも1種の増粘剤および/または懸濁化剤(複数可)、好ましくは少なくとも1種の増粘剤を含む。
【0018】
前記増粘剤は、セルロースおよびその誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース混合物;合成ポリマー、例えば架橋ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポロキサマーおよびカルボマーから選択されてもよい。
【0019】
前記懸濁化剤は、ショ糖;または他の天然ポリマー、例えばアルギン酸、ガム(キサンタン、グアー、寒天、ローカストビーン、アラビアゴム、トラガント、カラギーナンが含まれる);クレー、例えばケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルミニウム・メタヒドロキシド、ベントナイト、マグネシウム・ヘクトライト;エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステルから選択されてもよい。
【0020】
好ましくは、本発明の懸濁剤は、少なくとも1種のセルロース誘導体および少なくとも1種の天然ポリマー、好ましくはヒドロキシエチルセルロースおよびキサンタンガムを含む。
【0021】
本発明の水性懸濁剤は、薬学的に許容される担体、希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクル、例えば保存剤、フィラー、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着香剤、着色剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤を含む群から選択される一成分を追加的に含んでもよい。
【0022】
微生物の活動の阻止は、様々な抗菌性および抗真菌性の薬剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確保することができる。
【0023】
水に加えて、適切な担体、希釈剤、溶剤またはビヒクルの例としては、エタノール、ポリオール、それらの適切な混合物、植物油(例えばオリーブ油)が挙げられる。
【0024】
一般に本発明の水性懸濁剤は、少なくとも1種の保存剤、特に安息香酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸およびそれらの塩から選択される保存剤、より好ましくは安息香酸ナトリウムを含む。
【0025】
一般に本発明の水性懸濁剤は、ショ糖などの少なくとも1種の甘味剤を含む。
【0026】
一般に本発明の水性懸濁剤は、人工香料などの少なくとも1種の着香剤を含む。
【0027】
本発明は、オンダンセトロンを追加的に含む上で定義された水性懸濁剤をさらに包含する。
【0028】
本発明の典型的な水性懸濁剤は、
− 少なくとも1種のエンケファリナーゼ阻害剤:2から5g/lの懸濁剤、好ましくは約4g/l、
− 少なくとも1種の増粘および/または懸濁化剤(複数可)、好ましくは少なくとも1種の増粘剤:4から16g/lの懸濁剤、
− 所望のpHに調整するための緩衝剤
を含んでもよい。
【0029】
水性懸濁剤は、以下の成分のうちの一つを追加的に含んでもよい。
− 保存剤:1から6g/lの懸濁剤、および/または
− 甘味剤:550から650g/lの懸濁剤、および/または
− 着香剤:0.8から5、好ましくは0.8から1.2g/lの懸濁剤。
【0030】
本発明の特定の水性懸濁剤は、
− オンダンセトロン:0.1から0.8g/lの懸濁剤、好ましくは0.05から0.5、より好ましくは約0.4g/l
をさらに含んでもよい。
【0031】
組成物は、製薬分野で周知である任意の方法によって調製することができる。そのような方法は、水性懸濁剤の成分を混ぜ合わせることを含み、有効成分と1種または複数の補助成分を構成する担体とを組み合わせるステップを含む。一般に組成物は、一様にかつ密接に有効成分と液体担体もしくは微粉砕固形担体またはその両方とを組み合わせ、次に必要ならば生成物を成形して調製される。
【0032】
本発明の方法は、3.5から5の間にpHを調整するために、緩衝剤をエンケファリナーゼ阻害剤の水性懸濁剤へ添加するステップを含む。
【0033】
調製方法は、以下の予備ステップをさらに含んでもよい。
− 任意選択の甘味剤および/または保存剤を、任意選択で水へ添加するステップ、
− エンケファリナーゼ阻害剤ならびに少なくとも1種の増粘および/または懸濁化剤(複数可)ならびに任意選択のオンダンセトロン、着香剤(複数可)および/または保存剤(複数可)を、任意選択の甘味剤を含有していてもよい水に分散させるステップ。
【0034】
また、調製方法は以下の予備ステップをさらに含んでもよい。
− 任意選択の甘味剤(複数可)、着香剤(複数可)、保存剤(複数可)および/またはオンダンセトロンを有するエンケファリナーゼ阻害剤を水に分散させるステップ、ならびに
− 少なくとも1種の増粘および/または懸濁化剤(複数可)を添加するステップ。
【0035】
最終的な懸濁剤を得るために分散物を攪拌してもよい。
【0036】
pHは、第一の緩衝剤とエンケファリナーゼ阻害剤分散物とを混合し、次いで最終懸濁剤へ第二の緩衝剤を添加することにより調整してもよい。
【0037】
前記分散は、一般に、室温から70℃の間に含まれる温度で攪拌しながら行う。
【0038】
好ましくは、前記分散ステップは、任意の保存剤を水に溶解するステップに続いて行う。
【0039】
この方法は、懸濁剤を粉砕することによって懸濁化粒子のサイズを均質化する追加的なステップをさらに含んでもよい。
【0040】
別の好ましい態様によれば、本発明の水性懸濁剤によって、小児または赤ん坊に関して6mg未満の用量の投与を可能にする1.5mg/kg体重の正確な投与が可能になる。
【0041】
一般に2.5mlの水性懸濁剤は、市販品として入手可能なラセカドトリルコーティング顆粒のサシェ剤と同一用量(10mg)のラセカドトリルを送達する。
【0042】
別の好ましい態様によれば、本発明の水性懸濁剤は、投薬単位あたり1および8mg、好ましくは、成人に関しては2から8mgの間の、小児または赤ん坊に関しては0.2から4mgのオンダンセトロン投与を可能にする。
【0043】
一般に2.5mlの水性懸濁剤は、0.25mgから2mgのオンダンセトロン、好ましくは約0.5mgのオンダンセトロンを送達する。
【0044】
別の主題によれば、本発明は、下痢および/または急性胃腸炎の治療および/または予防に使用するためのエンケファリナーゼ阻害剤の水性懸濁剤にも関する。
【0045】
好ましい態様によれば、水性懸濁剤がオンダンセトロンをさらに含む場合、本発明は嘔吐を伴う急性の下痢の治療および/または予防に使用するための前記水性懸濁剤にも関する。
【0046】
さらに好ましい態様によれば、前記下痢は、成人、小児または赤ん坊の化学療法誘導性下痢、カルチノイド性下痢、旅行者の下痢、様々な細菌、ウイルスまたは寄生虫によって誘発される下痢である。
【0047】
別の好ましい態様によれば、前記治療は、好ましくは1日あたり2から4回の経口投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】ラセカドトリル水性懸濁剤(48mg/kg)を雄のスイス・マウス(n=4)に経口投与した後のラセカドトリルの生理活性部分の薬物動態プロファイルを示す図である。
【
図2】ラセカドトリル水性懸濁剤(10mg/2.5mL)の安定性を図示し、ラセカドトリルの分解生成物(二硫化ベンジルチオルファン)濃度に対するラセカドトリル水性懸濁剤のpHの影響を示す図である。
【
図3】ラセカドトリルとオンダンセトロンとの水性懸濁剤(10mg/1mg/2.5mL)の安定性を図示し、貯蔵の際に出現するラセカドトリルの分解生成物(二硫化ベンジルチオルファン)濃度に対するラセカドトリル/オンダンセトロン水性懸濁剤のpHの影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の実施例を本発明の非限定的な例示として提供する。
【0050】
実施例1:ラセカドトリル水性懸濁剤の調製
経口懸濁剤500mLあたりとして:
175mLの精製水に、2.500gの安息香酸ナトリウムを完全に溶解するまで撹拌しながらゆっくりと添加した。この溶液を連続的に攪拌しながら約60℃に加熱し、300.000gのショ糖を添加した。ゆっくりと連続して攪拌しながら、次にこの溶液を約30℃に冷却し、以下の材料を高速分散しながらゆっくりと添加した。
ラセカドトリル 2.000g
キサンタンガム 2.500g
ヒドロキシエチルセルロース 2.500g
イチゴフレーバー 0.500g
【0051】
ゆっくりとした攪拌を約30分間継続し、次にゆっくりと混合しながら3.750gのクエン酸ナトリウムを添加した。ゆっくりした攪拌を約20分間続けた。次に、そうして得られた懸濁剤のpHを乳酸溶液5%m/vで4.0に調整した。
【0052】
連続してゆっくりと攪拌しながら、最終容積(500mL)の懸濁剤を精製水で調整した。
【表1】
【0053】
実施例2a:ラセカドトリル/オンダンセトロン水性懸濁剤
経口懸濁剤500mLあたりとして:
175mLの精製水に、2.500gの安息香酸ナトリウムを完全に溶解するまで攪拌しながらゆっくりと添加した。この溶液を、連続的に攪拌しながら約60℃に加熱し、300.000gのショ糖を添加した。ゆっくりと連続して攪拌しながら、次にこの溶液を約30℃に冷却し、以下の材料を高速分散しながらゆっくりと添加した。
ラセカドトリル 2.000g
オンダンセトロン 0.100g
キサンタンガム 2.500g
ヒドロキシエチルセルロース 2.500g
イチゴフレーバー 0.500g
【0054】
ゆっくりとした攪拌を約30分間継続し、次にゆっくりと混合しながら3.750gのクエン酸ナトリウムを添加した。ゆっくりした攪拌を約20分間続けた。次に、そうして得られた懸濁剤のpHを乳酸溶液5%m/vで4.0に調整した。
【0055】
連続してゆっくりと攪拌しながら、最終容積(500mL)の懸濁剤を精製水で調整した。
【表2】
【0056】
実施例2b:ラセカドトリル/オンダンセトロン水性懸濁剤
経口懸濁剤2500Lあたりとして
約315Lの精製水に、約67%で溶液中にあるショ糖1500kgを攪拌しながら添加した。連続的に攪拌しながら、完全に溶解/分散するまで投入する。
− 安息香酸ナトリウム 7.50kg
− オンダンセトロン 0.5kg
− ラセカドトリル 10kg
− ヒドロキシエチルセルロース 12.50kg
− キサンタンガム 12.50kg
− クエン酸ナトリウム 18.75kg
− イチゴフレーバー 7.70kg
【0057】
次に、攪拌しながら、そうして得られた懸濁剤のpHを乳酸溶液60%m/vで4.0から4.2以内に調整する。
【0058】
連続して攪拌しながら、精製水で最終容積(2500L)の懸濁剤を調整する。
【0059】
懸濁剤を8時間連続的に粉砕することによって懸濁化粒子のサイズを均質化し、次いで、ゆっくりと攪拌しながらおよび真空下で懸濁剤を40℃の温度に加熱して、気泡を懸濁剤から移動させる。
【0060】
実施例3:薬物動態プロファイル
ラセカドトリルを、水に再懸濁した散剤の形態および実施例1の水性懸濁剤の形態で24匹のマウス(値あたりn=4)へ経口投与した(48mg/kg)。ラセカドトリル(DT326)の有効成分の血漿中濃度を測定する。
図1に結果を示す。この結果は、水性懸濁剤で投与された場合のラセカドトリルのバイオアベイラビリティが、水に再懸濁した散剤の形態で投与した場合のものと比較して50%増加することを示す。
【0061】
実施例4:安定性
実施例1の懸濁剤(10mgラセカドトリル/2.5mL)および実施例2の懸濁剤(10mgラセカドトリル/1mgオンダンセトロン/2.5ml)のpHを4、4.5および5に調整した。各懸濁剤に対するこの3つの試料を、次の促進条件下、40℃/75%の相対湿度で6週間貯蔵した。
【0062】
貯蔵に引き続いて、ラセカドトリルの分解生成物(二硫化ベンジルチオルファン)%を各pH値について測定した。
図2および
図3に結果を示す。加水分解は一般に酸性条件で増大するため、これらの結果は、分解は、pHが低下するにしたがって予想外に低下することを示す。これらの結果およびラセカドトリルの特性の点から見て、pHの最適範囲は3.5から5の間に含まれると考えることができる。
【0063】
実施例5:懸濁剤の粒子サイズ分布プロファイル
実施例2bで得られた懸濁剤中のラセカドトリルの粒子サイズ分布プロファイルを、レーザー回折測定を用いて決定し、上限が約750μmであり、1μmから約70μmの範囲内の粒子が容積で50%に相当する2モード分布が示される。このプロファイルは、懸濁剤が(小さな粒子による)バイオアベイラビリティの改善、および(大きな粒子による)安定性の改善の両方を示すという点で有利である。