(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分Aの前記不飽和ポリエステル樹脂が、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、およびトリメチロールプロパンからなる群より選択されるポリオールと、マレイン酸、無水マレイン酸、およびフマル酸からなる群より選択される不飽和ジカルボン酸またはジカルボン酸無水物とを反応させることによって得られることを特徴とする、請求項1または2記載の樹脂配合物。
【背景技術】
【0002】
含浸化合物、注型化合物、および被覆化合物とは、任意で真空または圧力の追加的適用を伴う、浸漬含浸、後に続くUV/熱硬化処理を伴う熱浸漬含浸、細流技術、浸漬圧延法、オーバーフロー法、および巻線の含浸のための注型といった広く知られる方法により、電気産業において用いられる樹脂組成物を意味する。
【0003】
電子部品のための、例えば、エンジン巻線および変圧器巻線のための、含浸化合物、注型化合物、および被覆化合物は、多くの場合、ビニル性不飽和モノマー(反応性希釈剤として呼ばれている)、例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、アリルフタレート、およびモノマーもしくはオリゴマーのアクリルエステルもしくはビニルエステルを含む、不飽和ポリエステルをベースとする成形組成物である。そのような反応性希釈剤を含む系は、環境的および毒物学的な見地から問題がないわけではなく、作業場所において、および放出される空気の処理において、特別な排出抑制対策を必要とする。
【0004】
これらの種類の標準的な系は、例えば、M. Winkeler, Varnish and resin usage with various motor construction, IEEE Proceedings, 1999, p. 143(非特許文献1);M.Winkeler, Evaluation of electrical insulating resins for inverter duty application, IEEE Proceedings 1997, p. 145(非特許文献2);およびTh.J.Weiss, Heatless cure coating of electrical windings, IEEE Proceedings, 1993, p. 443(非特許文献3)に記載されている。
【0005】
電気部品のための含浸化合物、注型化合物、および被覆化合物は、それらの熱安定性および耐熱変形性に関して厳しい要件が課せられる。これに関して、後で硬化させることで熱安定的でありかつ高い耐熱変形性を有する被覆を得るために、不飽和ポリエステル樹脂をジヒドロジシクロペンタジエン構造で修飾することが公知である。
【0006】
EP-A 0 968 501(特許文献1)では、不飽和ポリエステル樹脂およびオリゴマーもしくはポリマーのビニルエステルを含む、電気および電子部品のための含浸化合物、注型化合物、および被覆化合物について開示されている。不飽和ポリエステル樹脂は、ジヒドロジシクロペンタジエン構造ユニットを含み、これは、ジヒドロジシクロペンタジエンオールのマレイン酸モノエステルの反応によって不飽和ポリエステル中に組み込まれる。含浸化合物、注型化合物、および被覆化合物は、エチレン性の不飽和モノマーで構成される反応希釈剤を含有しない。
【0007】
同様に、EP-A 1 122 282(特許文献2)には、不飽和ポリエステル樹脂をベースとする、モノマー不含で低排出の電気絶縁性組成物が記載されている。架橋剤として、該組成物は、ジヒドロジシクロペンタジエン構造ユニットを有する不飽和ポリエステルと、さらに、1-プロペニル、イソプロペニル、またはイソプレニルの構造ユニットを含むポリエステルとを含む。
【0008】
不飽和ポリエステルの硬化は反応収縮を伴うので、例えば、先行技術の被覆化合物では、クラックフリーの形態で20mmの厚さの比較的厚い層を製造することは不可能である。特に、大型の発電機およびモーターの含浸の場合、加工操作において、積層物スタックの特定の部分において厚い被覆が形成されることを防ぐことは、常に可能というわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本目的は、
(a)成分Aとして、80重量%〜99重量%の、不飽和ポリエステル樹脂、または、不飽和ポリエステル樹脂とさらなる樹脂との混合物;
(b)成分Bとして、1重量%〜20重量%のポリブタジエン;
(c)成分Cとして、0重量%〜5.0重量%の1種または複数種の添加剤;
(d)成分Dとして、0重量%〜5.0重量%の1種または複数種の硬化促進剤
を含み、成分A〜Dの合計が100重量%である、樹脂配合物によって達成される。
【0013】
驚くべきことに、不飽和ポリエステル樹脂と、該ポリエステル樹脂とは相溶性でない−換言すれば、任意の割合においてポリエステルと均一に混合することができない−ポリブタジエン樹脂とを含む二相系は、クラックフリーの硬化を受けて、電気特性、熱的特性、および機械的特性を示すことが明らかとなった。
【0014】
本発明の樹脂配合物は、厚い被覆においても硬化段階で非常に優れた耐クラック性を示すので、大型機械の電気絶縁のための被覆材料として非常に好適である。該樹脂配合物は、単独で、あるいは固体絶縁性材料と、例えば、モーター、変圧器、および発電機などの電気デバイスを絶縁する目的のためのテープと組み合わせて使用することができる。
【0015】
液状樹脂は、十分な貯蔵安定性を有しており、硬化状態において、貯蔵および加工に影響されない一貫した特性を有する。
【0016】
含浸のための本発明の配合物は、成分Aとして、例えば、EP-A 0 968 501またはEP-A 1 122 282に記載されているとおりの不飽和ポリエステル樹脂と、成分Bとして、好ましくは成分A中に分散相の形態において存在する、ポリブタジエンと、任意で成分Cとして、成分A中における成分Bのエマルションを安定化するための1種または複数種の添加剤と、任意で成分Dとして、1種または複数種の硬化促進剤とを含む。
【0017】
成分Aは、バインダーとして、不飽和ポリエステル樹脂または不飽和ポリエステル樹脂の混合物を含む。これらの樹脂は、グリコールなどのポリオール、マレイン酸およびフマル酸などの不飽和ポリカルボン酸と、さらに、連鎖停止剤としての単官能性アルコールおよびカルボン酸などの任意でさらなる成分とで構成される。ポリエステル樹脂は、鎖に位置する(chain-located)かまたは末端のイミド基、ジヒドロジシクロペンタジエン基、ならびにさらに、他の構造要素、例えば、末端プロペニル基またはイソプレニル基で修飾することができる。成分Aは、さらなる樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
成分Bは、ポリブタジエン樹脂を含み、該樹脂は、一般的に室温で液体であり、かつ二重結合以外に任意で他の反応基も含み得る。様々なポリブタジエン樹脂の混合物を使用することも可能である。これらの樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂と、または成分Aの樹脂混合物と均一に混和しない−すなわち、それらは、成分Aとエマルションを形成する。このエマルションにおいて、成分Bは、一般的に、成分A中に分散分布している−すなわち、成分Bは、分散相を形成し、成分Aは、エマルションの連続相を形成している。成分Bは、成分A中において自己乳化性であり得る。概して、それは、乳化剤の添加により、成分A中において乳化される。
【0019】
本発明により、成分Aは、本発明の樹脂組成物のバインダーとして、少なくとも1種の不飽和ポリエステル樹脂を含み、該樹脂は、任意でイミド基を含有していてもよい。不飽和ポリエステル樹脂は、従来のものであり、ポリオール、多官能性不飽和カルボン酸、および任意で連鎖停止剤としての単官能性化合物の反応によって調製される。不飽和ポリエステル樹脂の調製は、周知である。それは、典型的には160〜200℃の温度においてエステル化触媒を用いてまたは用いずに、成分を加熱する工程を伴う。反応は、典型的には、不活性ガス下において行われる。縮合反応中に形成される水は、好適な溶媒を用いて共沸により蒸留除去され得るか、または、真空蒸留によって除去され得る。反応の進行は、典型的には、酸価および/または粘度を測定することによってモニターされる。
【0020】
不飽和ポリエステルの調製にとって好ましいポリオールは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ヘキサンジオールおよび1,6-ヘキサンジオール、ペルヒドロビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリトリトール、ならびにジペンタエリトリトールから選択される。好ましいのは、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセロール、ネオペンチルグリコール、ならびにトリメチロールプロパンである。
【0021】
不飽和ポリエステルの調製にとって好ましい不飽和カルボン酸は、α,β-不飽和ジカルボン酸およびそれらの無水物、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、およびフマル酸などである。α,β-不飽和ジカルボン酸と、修飾作用を有するさらなるジカルボン酸、好ましくは、飽和脂肪族もしくは芳香族ジカルボン酸およびそれらの無水物、例えば、アジピン酸、コハク酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、および2,6-ナフタレンジカルボン酸などとの混合物も好ましい。無水マレイン酸および無水マレイン酸とアジピン酸との混合物は好ましい。
【0022】
同様に使用される連鎖停止剤は、一般的に、単官能性カルボン酸または単官能性アルコールであり、例えば、タル油脂肪酸、安息香酸、2-エチルヘキサン酸、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、tert-ブタノール、およびイソプレノール(3-メチル-3-ブテン-1-オール)である。同様に反応の相手として好ましいのは、連鎖停止剤として、ヘキサノール、イソプレノール、ならびにテトラヒドロフタル酸無水物とエタノールアミンとの反応生成物である。
【0023】
不飽和ポリエステル樹脂は、末端のまたは鎖に位置するイミド基によって修飾してもよい。末端イミド基は、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物とエタノールアミンとの反応生成物との反応によって導入することができる。連鎖停止剤として機能する、イミド基を含有するこれらの単官能性化合物およびさらなる好適な単官能性化合物は、DE-A 1 570 273に記載されている。
【0024】
鎖に位置するイミド基は、例えば、イミド基を含有する化合物との反応によって導入することができる。これらの化合物は、一方がカルボン酸無水物基と、さらにさらなる官能基とを有し、他方が第一級アミノ基とさらなる官能基とを有する化合物間での反応によって得られる。これらのさらなる官能基は、不飽和ポリエステル樹脂のポリオール成分またはポリカルボン酸成分と反応することができる基であり、かつ、その反応の際にポリマー鎖中に組み込まれる基である。一般的に言えば、これらのさらなる官能基は、カルボン酸基またはヒドロキシル基である。第一級アミノ基またはカルボン酸無水物基が、さらなる官能基としてこれらの成分中に存在することも可能である。好適な化合物は、DE 1 720 323に記載されている。
【0025】
カルボン酸無水物基およびさらなる官能基を有する好適な化合物は、ピロメリト酸二無水物およびトリメリト酸無水物である。しかしながら、他の芳香族カルボン酸無水物も想到され、そのような例は、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物または2つのべンゼン環を有するテトラカルボン酸の二無水物であり、この場合、カルボキシル基は、3,3',4および4'の位置にある。
【0026】
第一級アミノ基を有する化合物の例は、特に、ジ第一級(diprimary)ジアミン、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、および他の脂肪族ジ第一級ジアミンである。
【0027】
また、芳香族ジ第一級ジアミン、例えば、ベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、スルホキシド、エーテル、およびチオエーテル、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ならびにまた、分子中に3つのベンゼン環を有するジアミン、例えば、ビス(4-アミノフェノキシ)-1,4-ベンゼンなども好適である。
【0028】
最後に、脂環式ジアミン、例えば、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジアミンなども想到される。
【0029】
例えば、イミド基は、1molのトリメリト酸無水物と2molの言及されたジ第一級ジアミンを反応させることによって得ることができる化合物との反応によって、ポリマー鎖中に導入することができる。
【0030】
さらなる官能基を有する好適なアミノ含有化合物は、アミノアルコール、例えば、モノエタノールアミンおよびモノプロパノールアミンなど、ならびにまた、アミノカルボン酸、例えば、グリシン、アミノプロパン酸、アミノカプロン酸、またはアミノ安息香酸などである。
【0031】
例えば、イミド基は、1molのピロメリト酸二無水物と2molの言及されたアミノアルコールまたはアミノカルボン酸を反応させることによって得ることができる化合物との反応によっても、ポリマー鎖中に導入することができる。
【0032】
例えば、イミド基は、1molのトリメリト酸無水物と1molの言及されたアミノカルボン酸を反応させることによって得ることができる化合物との反応によっても、ポリマー鎖中に導入することができる。
【0033】
さらに、EP 1 122 282に記載されているとおりのポリエステル樹脂は、ジヒドロジシクロペンタジエンに由来する構造ユニットを有し得る。これらの構造ユニットは、ジヒドロジシクロペンタジエンオールとの反応によって、またはジシクロペンタジエンによるマレイン酸の付加体との反応によって、不飽和ポリエステルまたはポリエステルイミド中に導入され得る。さらに、不飽和ポリエステル樹脂は、EP 1 122 282に記載されているのと同様に、シクロペンタジエンによるグラフト化の結果として、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸構造を含有し得る。
【0034】
不飽和ポリエステル樹脂は、追加的に、末端プロペニル基またはイソプレニル基を有していてもよく、これらは、プロペニルエーテルもしくはイソプレニルエーテルまたはプロペニルエステルもしくはイソプレニルエステル基の形態において存在し得、かつ、EP 1 122 282に記載されているとおりに、イソプロペニルベンジル-m-イソプロピルイソシアネート、1-プロペニルグリシジルエーテル、またはイソプレノールとの反応によって、ポリエステルまたはポリエステルイミド中に導入され得る。イソプレノールを使用することが好ましい。
【0035】
本発明の一態様において、成分Aのポリエステルは、鎖に位置するかまたは末端のイミド基を有する。別の態様において、成分Aのポリエステルは、ジヒドロジシクロペンタジエン基を有する。本発明の好ましい一態様において、成分Aのポリエステルは、鎖に位置するかまたは末端のイミド基と、ジヒドロジシクロペンタジエン基とを有する。本発明の別の態様において、成分Aのポリエステルは、プロペニル基またはイソプレニル基を有する。特定の一態様において、成分Aは、鎖に位置するかまたは末端のイミド基とジヒドロジシクロペンタジエン基とを有するポリエステル(ポリエステル1)だけでなく、プロペニル基またはイソプレニル基を有するポリエステル(ポリエステル2)も含む。例えば、成分Aは、50〜90重量部のポリエステル1と10〜50重量部のポリエステル2との混合物を含み得る。
【0036】
成分Aは、さらに、安定化剤(重合抑制剤)も含み得る。これらは、当業者に公知であるアルキル化フェノール、ヒドロキノン、およびベンゾキノン、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、および2,4-ジ-tert-ブチルフェノールなどである。それらは、概して、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して0.001〜0.500重量部の量で存在する。
【0037】
不飽和ポリエステル樹脂またはポリエステル樹脂混合物以外に、成分Aは、ポリエステル樹脂とは異なる他の樹脂もさらに含み得る。混合物成分としてとりわけ好適なのは、エポキシ樹脂である。
【0038】
好適なエポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、およびフェノールノボラックもしくはクレゾールノボラックをベースとするエポキシドノボラックである。それらは、典型的には、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とエピクロロヒドリンまたはメチルエピクロロヒドリンとの反応により、それぞれグリシジルエーテルまたはメチルグリシジルエーテルとして得られる。成分Aは、エポキシ樹脂と同様に、エポキシ樹脂を硬化させるために必要な量の硬化剤も含む。好適な硬化剤は、ルイス酸であり、これは、一般的にBF
3またはBCl
3と第三級アミンとの錯体であり、その例は、BCl
3-ジメチルオクチルアミン、BF
3-トリメチルアミン、およびBF
3-トリブチルアミンである。好適な硬化剤は、さらに、カルボン酸無水物、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびドデシルコハク酸無水物などである。ルイス酸硬化剤は、概して、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部の量で存在する。無水物は、エポキシ樹脂に対して等量で使用される。
【0039】
本発明の一態様において、成分Aは、不飽和ポリエステル樹脂のみを含む。別の態様において、成分Aは、成分Aのすべての構成成分に対して、65%〜90重量%の不飽和ポリエステル樹脂と10%〜35重量%のエポキシ樹脂とを含む。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、好ましくは88%〜98重量%、より好ましくは92%〜98重量%の成分Aを含む。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、成分Bとして、室温(23℃)で液体であるポリブタジエン樹脂を含む。ポリブタジエン樹脂は、それらの分子量、室温(23℃)でのそれらの粘度、およびシス立体配置およびトランス立体配置の二重結合の割合によって、より密接に特徴付けられる。好適なポリブタジエンは、ポリスチレン標準物質に対してGPCによって測定された、1800〜4500、好ましくは2200〜3800の範囲の数平均分子量を有する。好適なポリブタジエンは、さらに、一般的に、23℃において、500〜150,000mPa.s、好ましくは500〜30,000mPa.s、とりわけ500〜10,000mPa.sの粘度を有する。好適なポリブタジエンは、例えば、ポリブタジエンに存在するすべての二重結合に対して70%〜80%の範囲における高い割合のシス立体配置の二重結合を有する1,4-結合ブタジエンユニットを有し得る。好適なのは、例えば、75%〜77%の範囲における高い割合の1,4-シス二重結合および23℃において700〜860mPa.sの粘度を有するポリブタジエンである。さらに、例えば、23℃において2700〜3300mPa.sの粘度を有するポリブタジエン、ならびに23℃において100,000mPa.sの粘度を有するポリブタジエンも好適である。
【0042】
好適なポリブタジエンは、官能性末端基も有し得る。例えば、23℃において1000〜20,000mPa.sの範囲の粘度を有するOH-末端ポリブタジエンが好適である。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、好ましくは、成分A〜Dの合計に対して、2%〜10重量%、より好ましくは4%〜6重量%のポリブタジエンを含む。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、さらに、エマルション安定化添加剤も含み得る。概して、すべての成分の合計に対して、0.01%〜5.0重量%、好ましくは0.1%〜4重量%、より好ましくは0.1%〜3重量%の安定化添加剤が使用される。
【0045】
好適なエマルション安定化添加剤の1つは、フュームドシリカである。フュームドシリカが使用される場合、それは、最初にポリブタジエン中に組み込まれる。結果として得られるペーストが、続いて成分A中に組み込まれる。さらなるエマルション安定化添加剤は、長鎖アルキル基を有する、好ましくは該アルキル基中に10〜30個のC原子を有する、アルキルトリメトキシシランである。
【0046】
本発明の一態様において、フュームドシリカは、成分A〜Dのすべての合計に対して0.01重量%〜5重量%の量で使用される。本発明の別の態様において、アルキルトリメトキシシランはさらに使用され、安定化添加剤の総量が成分A〜Dの合計に対して0.01重量%〜5重量%である。
【0047】
あるいは、本発明の樹脂組成物は、エマルション安定化添加剤として、極性および無極性のブロックまたは側鎖を有するポリマーを含み得る。この種類の相溶性ポリマーは市販されている。好適なポリマーは、不飽和ポリエステル樹脂と相溶性のある極性ブロック、および、ポリブタジエンと相溶性のある無極性のブロックもしくは側鎖を有する。好適なポリマーは、例えば、アクリレートモノマーの極性ブロックと、C
4〜C
16炭化水素基の側鎖を有する無極性ブロックとを有する。一般的に言えば、これらの相溶性ポリマーの濃度は、成分A〜Dのすべての合計に対して、0.2重量%〜3.0重量%である。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、さらに、成分Dとして、5重量%までの1種または複数種の硬化促進剤を含み得る。これらの促進剤が存在する場合、含まれる量は、概して、0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%、より好ましくは1重量%〜5重量%である。好適な硬化促進剤は、UV光または熱によって活性化することができるラジカル形成重合開始剤である。好適なラジカル形成重合開始剤は、当業者に公知である。UV光によって活性化することができる好ましい重合開始剤は、4,4'-ジメチルベンジルケタール、4,4'-ジメトキシベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。熱によって活性化することができる好ましい重合開始剤は、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、およびtert-ブチルペルベンゾエートである。様々なラジカル開始剤の組み合わせも使用することができる。
【0049】
本発明の樹脂組成物の調製において、硬化促進剤は、成分Aまたは成分Bに添加され得る。あるいは、硬化促進剤は、処理前まで樹脂組成物に添加され得ない。
【0050】
したがって、本発明の組成物は、硬化促進剤を既に含有している、成分A、B、任意でCおよびDの組成物だけでなく、処理の直前まで硬化促進剤が加えられない、成分A、B、および任意でCを含む組成物も包含する。
【0051】
本発明は、さらに、電気部品または電子部品および電気デバイスまたは電子デバイスのための含浸化合物、注型化合物、および被覆化合物としての、本発明の樹脂配合物の使用にも関する。
【0052】
本発明の樹脂配合物は、当技術分野において一般的な手順、例えば、浸漬、浸漬圧延、細流、注型、真空含浸、または真空圧力含浸などにより、電気機械の巻線中に導入することができる。熱硬化は、オーブン内において、もしくは巻線のジュール熱によって、または両方の選択肢の組み合わせによって行われ得る。配合物が光開始剤を含む場合、それは、UV光により、積層されたスタックにおいて硬化され得る。これは、特に硬化がジュール熱によって実施される場合に望ましい。したがって、成分の内部領域において、ジュール熱によって硬化を行う一方で、表面において、UV光の照射によって硬化を行うことができる。
【0053】
本発明を、以下の実施例によってより詳細に説明する。
【実施例】
【0054】
使用されるポリエステル樹脂は、EP 1 122 282の実施例3および4に記載されている。70重量部のポリエステル1(下記の実施例1を参照のこと)と30重量部のポリエステル2(下記の実施例2を参照のこと)との混合物を使用する。混合物を、3重量%のtert-ブチルペルベンゾエートで活性化する。実施例3〜6において、この混合物を略して樹脂と呼ぶ。
【0055】
実施例1
不飽和ポリエステル(ポリエステル1)の調製
初期装入物として、
1441.5gの無水マレイン酸(17.7mol)、
1molのテトラヒドロフタル酸と1molのエタノールアミンの反応生成物546.6g(2.8mol)、
56.0gの水(3.1mol)
を、上部に蒸留装置を備える撹拌フラスコに量り取る。
【0056】
初期装入物を90℃まで加熱する。これは発熱反応を生じる。次いで、
398.0gのジシクロペンタジエン93%(2.8mol)
の供給流を、約116〜128℃において30分間かけて加え、反応混合物を、1時間、125℃に維持する。加熱器を外し、
491.0gのヒマシ油(OH価160)、
1009.3gの2-メチルプロパン-1,3-ジオール(11.2mol)、
7.4gのジブチルスズオキシド
の混合物を、撹拌しながら混和させる。ゆっくりと窒素を流しながら、さらに、130℃まで急速に加熱し、その後、6時間かけて190℃まで徐々に温度を上げ、その間に、生成された縮合の水を蒸留により除去する。
【0057】
実施例2
低粘度イソプレノール末端ポリエステル(ポリエステル2)の調製
加熱器および水分離器を備えた撹拌フラスコ中に、
1753.7gのアジピン酸、
1033.6gのイソプレノール、
368.4gのグリセロール、
200.0gのトルエン、
6.0gのジブチルスズオキシド
を量り取る。
【0058】
窒素をゆっくりと流しながら、この混合物を、急速に130℃まで加熱する。次いで、激しく沸騰している水を循環させながら分離する。3時間後、水の形成が低下する。温度を、約2時間かけて190℃まで徐々に温度を上げ、その間に、トルエンと少量の水を蒸留により除去する。
【0059】
実施例3
23℃で3000mPa.sの粘度を有するポリブタジエン420gと、フュームドシリカ18gとからペーストを調製する。このペースト46gを、820gの樹脂に組み込む。本発明の配合物は、わずかに濁っており、21,000mPa.sの粘度を有する。それを、100×100×20mmの寸法の鋳型に注ぎ、160℃で2時間硬化させる。クラックフリーの成形物が得られる。
【0060】
実施例4
23℃で3000mPa.sの粘度を有するポリブタジエン450gに、15gのヘキサデシルトリメトキシシランを溶解させる。次いで、15gのフュームドシリカを加える。ペースト化した後、このペースト50gを、890gの樹脂に加えてその中に組み込む。本発明の配合物は、わずかに濁っており、19,000mPa.sの粘度を有する。それを、100×100×20mmの寸法の鋳型に注ぎ、160℃で2時間硬化させる。クラックフリーの成形物が得られる。
【0061】
実施例5
23℃で3000mPa.sの粘度を有するポリブタジエン50g、無極性側鎖を有する市販のアクリレートベースの添加剤20g、および樹脂910gを混合する。この混合物から、分散機ディスクを使用してエマルションを調製する。このエマルションは、わずかに濁っており、9000mPa.sの粘度を有する。エマルションを、100×100×20mmの寸法を有する鋳型に注ぎ、160℃で2時間硬化させる。クラックフリーの成形物が得られる。
【0062】
実施例6
23℃で800mPa.sの粘度を有するポリブタジエン52g、無極性側鎖を有する市販のアクリレートベースの添加剤21g、および樹脂930gを混合する。この混合物から、分散機ディスクを使用してエマルションを調製する。このエマルションは、わずかに濁っており、8000mPa.sの粘度を有する。エマルションを、100×100×20mmの寸法を有する鋳型に注ぎ、160℃で2時間硬化させる。クラックフリーの成形物が得られる。
【0063】
比較例1
樹脂を、100×100×20mmの寸法を有する鋳型に注ぎ、160℃で2時間硬化させる。結果として得られる成形物は、たくさんのクラックを生じている。
【0064】
比較例2
2gのフュームドシリカを、890gの樹脂に組み込む。生成物は、わずかに濁っている。それを、100×100×20mmの寸法を有する鋳型に注ぎ、160℃で2時間硬化させる。結果として得られる成形物は、クラックを生じている。
【0065】
比較例3
23℃で3000mPa.sの粘度を有するポリブタジエン45gを、890gの樹脂に組み込む。生成物は、わずかに濁っている。それを100×100×20mmの寸法を有する鋳型に注ぎ、160℃で2時間硬化させる。不均一な成形物が得られる。その内部には、クラックが生じている。それは、表面に液膜を有している。