特許第5847222号(P5847222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847222
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】乗客コンベア装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20151224BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20151224BHJP
   B66B 25/00 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   B66B29/00 Z
   B66B31/00 C
   B66B25/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-46333(P2014-46333)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-168552(P2015-168552A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2014年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 良太
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−188236(JP,A)
【文献】 特開2000−007257(JP,A)
【文献】 特開2010−064884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 − 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された複数の踏段と、前記踏段を定格速度又は前記定格速度より低い速度で駆動可能な駆動部と、前記踏段に乗り込んで移動する人の移動速度を検出するセンサと、前記センサが検出した速度が、予め設定された閾値速度を所定時間以上継続して超えた場合に、前記定格速度より低い低速度で前記踏段が移動するように前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記踏段の移動方向が下り方向である場合に前記駆動部を制御して設定する前記低速度よりも、前記踏段の移動方向が上り方向である場合に前記駆動部を制御して設定する前記低速度を低い速度に設定する乗客コンベア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベア装置において、前記制御部は、前記低速度で前記踏段が移動するように前記駆動部が制御された後に、前記センサが検出した速度が、前記閾値速度未満である場合は、前記踏段が前記定格速度で移動するように前記駆動部を制御する乗客コンベア装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乗客コンベア装置において、前記制御部が、前記定格速度より低い低速度で前記踏段が移動するように前記駆動部を制御する際に、速度が低下することを告知するためのアナウンスを行うアナウンス部を更に含む乗客コンベア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータなどの乗客コンベア装置は、無端状に連結された複数の踏段を備えている。駆動輪と従動輪との間に掛け渡された踏段チェーンが、無端状に回転することによって、複数の踏段が移動するようになっている。また、乗客コンベア装置においては、駆動輪を駆動するモータを制御することによって、踏段の移動速度を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−157264号公報
【特許文献2】特開2009−91051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転中の乗客コンベア装置に乗っているときに踏段昇降を行う利用者は、その危険性を理解していない可能性があると考えられる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、踏段昇降を行うことの危険性を利用者に理解してもらうことを期待できる乗客コンベア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の乗客コンベア装置は、複数の踏段と、駆動部と、センサと、制御部と、を備える。複数の踏段は、無端状に連結されている。駆動部は、踏段を定格速度及び定格速度より低い速度で駆動可能である。センサは、踏段に乗り込んで移動する人の移動速度を検出する。制御部は、センサが検出した速度が、予め設定された閾値速度を所定時間以上継続して超えた場合に、定格速度より低い低速度で踏段が移動するように駆動部を制御する。制御部は、踏段の移動方向が下り方向である場合に駆動部を制御して設定する低速度よりも、踏段の移動方向が上り方向である場合に駆動部を制御して設定する低速度を低い速度に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る乗客コンベア装置であるエスカレータの全体構成を示す縦断面図である。
図2図2は、本実施形態による乗客コンベア装置の処理に係る構成要素を示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態による乗客コンベア装置の動作例を示す説明図である。
図4図4は、本実施形態による乗客コンベア装置の動作例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態に係る乗客コンベア装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0009】
本実施形態では、無端状に連結された複数の踏段を周回移動させて動作する乗客コンベア装置の一例としてエスカレータを挙げて説明する。図1は、本実施形態に係る乗客コンベア装置であるエスカレータの全体構成を示す縦断面図である。
【0010】
図1に示すように、エスカレータ100は、トラスフレーム2の内部に、駆動輪3と従動輪4との間を無端状に連結された複数の踏段5を備えている。エスカレータ100は、駆動輪3に減速機6及び駆動チェーン7を介して、駆動部であるモータ(原動機)8から供給される動力により、複数の踏段5が駆動輪3と従動輪4との間を周回移動するよう構成される。本実施形態では、駆動輪3は上階側に配置され、従動輪4は下階側に配置される。モータ8及び制御部14は、上部機械室に設けられている。
【0011】
駆動輪3と従動輪4との間には踏段5の移動用の踏段チェーン9が掛け渡され、無端状に回転駆動するようになっている。そして、踏段チェーン9に、エスカレータ100の利用者(以下、乗客と呼ぶ)を乗せる踏段5が連結されている。踏段5は、踏段チェーン9の駆動と共に回転移動するようになっている。
【0012】
エスカレータ100が下降方向に稼動する場合、複数の踏段5は、上方の乗り口(上階側乗降口10)において進行方向に向けて隣接する踏段5同士が水平状でトラスフレーム2内から進出される。複数の踏段5は、上部遷移カーブにおいて隣接する踏段5間の段差を拡大してゆき階段状に遷移される。
【0013】
また、複数の踏段5は、中間傾斜部において階段状で下降され、下部遷移カーブにおいて隣接する踏段5間の段差を縮小してゆき水平状に遷移される。そして、複数の踏段5は、下方の降り口(下階側乗降口11)において再び水平状となってトラスフレーム2内に進入する。
【0014】
複数の踏段5は、トラスフレーム2内に進入された後に上方に反転される。複数の踏段5は、帰路側を水平状で上昇され、再度反転されて上階側乗降口10においてトラスフレーム2内から進出される。
【0015】
上昇方向に稼動するエスカレータ100では上記の逆の動作となる。上階側乗降口10及び下階側乗降口11において、踏段5は、乗客を乗せる上面の踏み面を水平状として、トラスフレーム2内から進出し、またはトラスフレーム2内へ進入する。
【0016】
また、エスカレータ100は、踏段5の進行方向における両脇に欄干12を備える。この欄干12の外周に沿って環状の手すりベルト13が取り付けられている。エスカレータ100は、上記の踏段5の移動に合わせて欄干12の手すりベルト13も踏段5と同方向に周回移動するよう構成されている。
【0017】
ここで、欄干12の左右の内デッキには、乗客を検知するセンサ15が設けられている。センサ15は、踏段5が移動する中間傾斜部など、乗客が通過する直線部分に設けられている。センサ15は、例えば、人感センサなどの反射型センサを中間傾斜部に沿って複数配置した構成である。
【0018】
踏段5の左右の幅に余裕がある場合、踏段5の上に立ち止まっている乗客の横を他の乗客が昇降することがある。エスカレータ100が設置される地域によって、踏段5の左側を乗客が昇降する場合と踏段5の右側を乗客が昇降する場合とがある。本実施形態のように、欄干12の左右の内デッキにセンサ15を設けておけば、エスカレータ100が設置される地域に関わりなく、昇降する乗客を検知できる。
【0019】
ここで、反射型センサは、乗客が検知範囲に進入し、その後に検知範囲から出たことを検知できる。1つの反射型センサは点状であるが、複数配置したセンサ同士の間隔が既知であれば、各センサからの検知出力信号の出力タイミング(出力される時間間隔)によって乗客の移動速度を算出できる。
【0020】
図2は、本実施形態による乗客コンベア装置の処理に係る構成要素を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態による乗客コンベア装置は、制御部14と、センサ15と、検出ユニット16と、モータ8と、踏段5と、アナウンス部17と、スピーカ18とを備えている。
【0021】
センサ15は、検知範囲を通過する乗客を検知し、図示しないケーブルなどを介して検知出力信号を検出ユニット16へ出力する。
【0022】
検出ユニット16は、センサ15の検知出力信号をリアルタイムで監視している。検出ユニット16は、センサ15の検知出力信号に基づき、乗客の通過速度を算出することができる。検出ユニット16の検出出力は、図示しないケーブルなどを介して制御部14に入力される。
【0023】
アナウンス部17は、制御部14がセンサ15及び検出ユニット16によって検知した乗客の速度が所定閾値を超えた場合に、音声信号を出力し、スピーカ18に入力する。アナウンス部17が出力する音声信号は、エスカレータ100の乗客に、エスカレータ100において踏段5の速度が減速することを伝えるアナウンスを行う音声を出力するための信号である。つまり、制御部14は、定格速度より低い低速度で踏段5が移動するように制御する際に、速度が低下することを告知するためのアナウンスを行うようにアナウンス部17を制御する。
【0024】
スピーカ18は、アナウンス部17から出力される音声信号を音声に変換する。スピーカ18は、例えば、欄干12近傍の壁内や天井内に設ければよい。
【0025】
このようなエスカレータ100の動作は、トラスフレーム2内に設置される制御部14によって、インバータ装置(図示せず)及びモータ8を制御することで実現される。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを有するコンピュータである。制御部14の機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとでエスカレータ100内の各種装置を動作させると共に、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0026】
次に、エスカレータ100の動作例について説明する。
【0027】
図3は、本実施形態による乗客コンベア装置の動作例を示す説明図である。本例では、乗客コンベア装置が上昇方向に運転する場合について説明する。
【0028】
制御部14は、エスカレータ100の運転中に乗客が踏段5を昇った場合(ステップS101)、異常が発生したものとし、乗客が定格速度より早い速度でセンサ15の検知範囲を所定時間以上通過したか否かを判定する(ステップS102)。例えば、制御部14は、乗客が定格速度の1.5倍から2倍を超える速度でセンサ15の検知範囲を30秒間通過した否かを判定する。
【0029】
制御部14は、乗客が定格速度を超える速度でセンサ15の検知範囲を所定時間以上通過したと判定すると(ステップS102でYes)、アナウンス部17が乗客に対して注意喚起のためのアナウンスを行うように制御する(ステップS103)。制御部14は、例えば、「エスカレータが危険を感知したためエスカレータが減速します」というアナウンスを流すように、アナウンス部17を制御する。つまり、制御部14は、定格速度より低い低速度で踏段5が移動するようにモータ8を制御する際に、速度が低下することを告知するためのアナウンスを行うように、アナウンス部17を制御する。
【0030】
その後、制御部14は、エスカレータ100の運転を低速運転モードに設定する(ステップS104)。すなわち、制御部14は、エスカレータ100が、定格速度より低い速度(例えば、定格速度の50%の速度)で運転するように制御する。つまり、制御部14は、センサ15によって検出された速度が、予め設定された閾値速度を所定時間以上継続して超えた場合に、定格速度より低い低速度で踏段5が移動するようにモータ8を制御する。これにより、乗客は踏段5を昇ると、定格速度より低い低速度で踏段5が移動することを認識する。
【0031】
さらに、制御部14は、乗客が定格速度より早い速度でセンサ15の検知範囲を通過しているか否かを判定する(ステップS105)。例えば、制御部14は、乗客が定格速度の1.5倍から2倍を超える速度でセンサ15の検知範囲を所定時間(例えば30秒間)以上通過しているか否かを判定する。
【0032】
制御部14は、乗客が、所定時間(例えば30秒間)、定格速度の1.5倍から2倍を超える速度でセンサ15の検知範囲を通過していない(定格速度の1.5倍から2倍以下の速度で通過)と判定すると(ステップS105でNo)、通常モードに戻し、定格速度で運転する(ステップS107)。つまり、制御部14は、低速度で踏段5が移動するようにモータ8を制御した後に、センサ15によって検出された速度が、所定時間、閾値速度未満である場合は、踏段5が定格速度で移動するようにモータ8を制御する。
【0033】
一方、制御部14は、ステップS105において、乗客が定格速度の1.5倍から2倍を超える速度でセンサ15の検知範囲を所定時間(例えば30秒間)以上通過したと判定した場合(ステップS105でYes)、低速運転モードで継続して運転するようにエスカレータ100を制御する(ステップS106)。
【0034】
なお、制御部14は、ステップS102において、乗客が定格速度より早い速度でセンサ15の検知範囲を所定時間(例えば30秒間)以上通過していないと判定した場合(ステップS102でNo)、通常モードに戻し、定格速度で運転する(ステップS107)。
【0035】
また、制御部14は、ステップS105において、定格速度ではなく、ステップS104で設定された低速度より早い速度でセンサ15の検知範囲を乗客が通過しているか否かを判定するようにしてもよい。こうすることにより、速度を低下させているにもかかわらず、依然として踏段5を昇る乗客がいる場合に(ステップS105でYes)、制御部14が低速モードをより継続するように制御することができる(ステップS106)。
【0036】
以上の動作を行うことにより、乗客は、上昇方向に運転しているエスカレータ100において踏段5を昇ると低速になり、踏段5を昇らないと元の速度に戻るので、踏段5を昇ることについての危険性を理解できる。
【0037】
図4は、本実施形態による乗客コンベア装置の他の動作例を示す説明図である。本例では、乗客コンベア装置が下降方向に運転する場合について説明する。
【0038】
制御部14は、エスカレータ100の運転中に乗客が踏段5を降りた場合(ステップS201)、異常が発生したものとし、乗客が定格速度より早い速度でセンサ15の検知範囲を所定時間以上通過したか否かを判定する(ステップS202)。例えば、制御部14は、乗客が定格速度の1.5倍から2倍を超える速度でセンサ15の検知範囲を15秒間通過した否かを判定する。
【0039】
制御部14は、乗客が定格速度を超える速度でセンサ15の検知範囲を所定時間以上通過したと判定すると(ステップS202でYes)、アナウンス部17が乗客に対して注意喚起のためのアナウンスを行うように制御する(ステップS203)。制御部14は、例えば、「エスカレータが危険を感知したためエスカレータが減速します」というアナウンスを流すように、アナウンス部17を制御する。つまり、制御部14は、定格速度より低い低速度で踏段5が移動するようにモータ8を制御する際に、速度が低下することを告知するためのアナウンスを行うように、アナウンス部17を制御する。
【0040】
その後、制御部14は、エスカレータ100の運転を低速運転モードに設定する(ステップS204)。すなわち、制御部14は、エスカレータ100が、定格速度より低い速度(例えば、定格速度の75%の速度)で運転するように制御する。つまり、制御部14は、センサ15によって検出された速度が、予め設定された閾値速度を所定時間以上継続して超えた場合に、定格速度より低い低速度で踏段5が移動するようにモータ8を制御する。これにより、乗客は踏段5を降りると、定格速度より低い低速度で踏段5が移動することを認識する。
【0041】
さらに、制御部14は、乗客が定格速度より早い速度でセンサ15の検知範囲を通過しているか否かを判定する(ステップS205)。例えば、制御部14は、乗客が定格速度の1.5倍から2倍を超える速度でセンサ15の検知範囲を所定時間(例えば15秒間)以上通過しているか否かを判定する。
【0042】
制御部14は、乗客が、所定時間(例えば15秒間)、定格速度の1.5倍から2倍を超える速度でセンサ15の検知範囲を通過していない(定格速度の1.5倍から2倍以下の速度で通過)と判定すると(ステップS205でNo)、通常モードに戻し、定格速度で運転する(ステップS207)。つまり、制御部14は、低速度で踏段5が移動するようにモータ8を制御した後に、センサ15によって検出された速度が、所定時間、閾値速度未満である場合は、踏段5が定格速度で移動するようにモータ8を制御する。
【0043】
一方、制御部14は、ステップS205において、乗客が定格速度の1.5倍から2倍を超える速度でセンサ15の検知範囲を所定時間(例えば15秒間)以上通過したと判定した場合(ステップS205でYes)、低速運転モードで継続して運転するようにエスカレータ100を制御する(ステップS206)。
【0044】
なお、制御部14は、ステップS202において、乗客が定格速度より早い速度でセンサ15の検知範囲を所定時間(例えば15秒間)以上通過していないと判定した場合(ステップS202でNo)、通常モードに戻し、定格速度で運転する(ステップS207)。
【0045】
また、制御部14は、ステップS205において、定格速度ではなく、ステップS204で設定された低速度より早い速度でセンサ15の検知範囲を乗客が通過しているか否かを判定するようにしてもよい。こうすることにより、速度を低下させているにもかかわらず、依然として踏段5を歩行している乗客がいる場合に(ステップS205でYes)、制御部14が低速モードをより継続するように制御することができる(ステップS206)。
【0046】
以上の動作を行うことにより、乗客は、下降方向に運転しているエスカレータ100において踏段5を降りると低速になり、踏段5を降りないと元の速度に戻るので、踏段5を降りることについての危険性を理解できる。
【0047】
以上のように、本実施形態の乗客コンベア装置によれば、乗客の速度が所定閾値を超えた場合にエスカレータ100の速度を低下させるので、乗客コンベア装置の踏段昇降を行うことの危険性を乗客に理解してもらうことが期待できる。
【0048】
また、本実施形態では、踏段5の移動方向が下り方向(下降方向)である場合にモータ8を制御して設定する低速度と踏段5の移動方向が上り方向(上昇方向)である場合にモータ8を制御して設定する低速度とに差を設けている。すなわち、踏段5の移動方向が下り方向(下降方向)である場合にモータ8を制御して設定する低速度よりも、踏段5の移動方向が上り方向(上昇方向)である場合にモータ8を制御して設定する低速度を低い速度に設定している。踏段5の移動方向が下り方向(下降方向)で、踏段5を速く降りようとする場合に、速度を低下させると、乗客がバランスを崩す可能性がある。これに対し、踏段5の移動方向が上り方向(上昇方向)で、踏段5を速く昇ろうとする場合は、乗客がバランスを崩す可能性が少ないので、踏段5の移動方向が下り方向の場合よりも速度を大きく低下(より低速度で運転)させても良いと考えられる。いずれの場合でも乗客が踏段昇降を行った場合には、より低い速度で運転することを乗客に認識させることができ、踏段昇降を行うことの危険性を乗客に理解してもらうことが期待できる。
【0049】
さらに、本実施形態では、定格速度より低い低速度で踏段5が移動するようにモータ8を制御する際に、速度が低下することを告知するためのアナウンスを行う。こうすることにより、踏段5が減速することを乗客に予め告知でき、安全な運転を実現できる。
【0050】
なお、本実施形態では、エスカレータ100が上昇方向に運転する場合に定格速度を超えた上記所定時間を30秒間とし、下降方向に運転する場合の上記所定時間を15秒間として異なる時間を設定している。つまり、上記所定時間について、上昇方向に運転する場合よりも下降方向に運転する場合を短い時間に設定している。これは、踏段5を降りる場合は、踏段5を昇る場合に比べて、安全性をより確保する必要があると考えられるためである。もっとも、両者を同じ時間(例えば30秒間)に設定してもよい。その他、上記所定時間については、適宜、適切な時間を設定すればよい。
【0051】
また、本実施形態では、乗客の移動速度の閾値を、定格速度の1.5倍から2倍を超える速度としている。この乗客の移動速度の閾値については、適宜、適切な速度を設定すればよい。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
3 駆動輪、4 従動輪、5 踏段、6 減速機、7 駆動チェーン、8 モータ、9 踏段チェーン、10 上階側乗降口、11 下階側乗降口、12 欄干、13 手すりベルト、14 制御部、15 センサ、16 検出ユニット、17 アナウンス部、18 スピーカ、100 エスカレータ
図1
図2
図3
図4