特許第5847250号(P5847250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5847250カーボンナノチューブフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847250
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20151224BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20151224BHJP
【FI】
   C01B31/02 101F
   B82Y40/00
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-150577(P2014-150577)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-3179(P2016-3179A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2014年7月24日
(31)【優先権主張番号】201410262024.4
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】魏 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−038238(JP,A)
【文献】 特開2013−234116(JP,A)
【文献】 特開2011−116637(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0248235(US,A1)
【文献】 Matthew A. MEITL, et al.,Solution Casting and Transfer Printing Single-Walled Carbon Nanotube Films,Nano Letters,2004年 7月29日,Volume 4, Issue 9,pp 1643-1647,Publication Date (Web): July 29, 2004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00 − 31/36
B82Y 40/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の代替基板を提供し、複数のカーボンナノチューブアレイをそれぞれ前記複数の代替基板の表面に移転する第一ステップであって、前記カーボンナノチューブアレイの形態はカーボンナノチューブフィルムを前記カーボンナノチューブアレイから連続的に引き出すことを保証する形態である第一ステップと、
前記複数の代替基板を並列に配列し、隣接する前記カーボンナノチューブアレイの側面を接触させ、分子間力によって、接合したカーボンナノチューブアレイを形成し、前記接合したカーボンナノチューブアレイの面積は前記カーボンナノチューブアレイの面積より大きい第二ステップと、
前記接合したカーボンナノチューブアレイから前記カーボンナノチューブフィルムを引き出す第三ステップと、を含み、
前記カーボンナノチューブフィルムは端と端で接続される複数のカーボンナノチューブを含むことを特徴とするカーボンナノチューブフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記代替基板の少なくとも一つの側面が、該代替基板と対応する前記カーボンナノチューブアレイの少なくとも一つの側面と同じ平面に存在することを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブフィルムの製造方法に関し、特に、カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルムを獲得する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube,CNT)は1991年に飯島によって発見され、21世紀において重要な新素材の1つであると期待されている。カーボンナノチューブは機械・電気・熱特性に優れていることから、エレクトロニクス、バイオテクノロジー、エネルギー、複合材料等、広範な分野での応用が期待されている。しかし、一本のカーボンナノチューブがナノスケールの大きさであるので、利用し難い。現在、複数のカーボンナノチューブを原材料として、大きい寸法の巨視的なカーボンナノチューブフィルムを形成することができる。
【0003】
特許文献1に、カーボンナノチューブアレイから直接にカーボンナノチューブフィルムが引き出されることが開示されている。該カーボンナノチューブフィルムは分子間力で端と端で接続される複数のカーボンナノチューブからなる自立構造体であり、優れた透明度及び巨視的な寸法を有する。カーボンナノチューブアレイから直接に引き出されるカーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されるので、カーボンナノチューブの軸方向における優れた導電性及び熱伝導性を有し、広範な分野で応用できる。例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ、スピーカ、加熱装置、薄膜トランジスタ、発光ダイオードなどの分野である。
【0004】
しかし、カーボンナノチューブフィルムはカーボンナノチューブアレイから引き出される。従って、カーボンナノチューブフィルムの幅はカーボンナノチューブアレイのサイズに制限される。従来技術においては、CVD方法によって、カーボンナノチューブアレイを成長基板に直接に成長する。成長基板のサイズは製造工程に制限され、また、化学気相堆積反応炉のサイズに制限される。現在、カーボンナノチューブアレイを成長する成長基板の直径の最大は8インチであり、大きい幅を有するカーボンナノチューブフィルムの生産を満足できない。
【0005】
特許文献2には、カーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす方法が掲示された。カーボンナノチューブアレイから引き出したカーボンナノチューブフィルムを、更に横方向に沿って引き伸ばす。これにより、カーボンナノチューブフィルムの幅を大きくさせる。しかし、カーボンナノチューブアレイから引き出したカーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブ同士の間の分子間力のみで相互に吸着して形成するカーボンナノチューブフィルムである。従って、該カーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす際、カーボンナノチューブフィルムは破壊され易く、大規模に応用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第101458975号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第101734644号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第101239712号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、前記課題を解決するために、本発明は、大きい寸法のカーボンナノチューブフィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は複数の代替基板を提供し、複数のカーボンナノチューブアレイをそれぞれ前記複数の代替基板の表面に移転する第一ステップであって、前記カーボンナノチューブアレイの形態はカーボンナノチューブフィルムを前記カーボンナノチューブアレイから連続的に引き出すことを保証する形態である第一ステップと、前記複数の代替基板を並列に配列し、隣接する前記カーボンナノチューブアレイの側面を接触させ、分子間力によって接合したカーボンナノチューブアレイを形成し、前記接合したカーボンナノチューブアレイの面積は前記カーボンナノチューブアレイの面積より大きい第二ステップと、前記接合したカーボンナノチューブアレイから前記カーボンナノチューブフィルムを引き出す第三ステップと、を含み、前記カーボンナノチューブフィルムは端と端で接続される複数のカーボンナノチューブを含む。
【0009】
本発明のカーボンナノチューブフィルムの製造方法において、前記代替基板の少なくとも一つの側面が、該代替基板と対応する前記カーボンナノチューブアレイの少なくとも一つの側面と同じ平面に存在する。
【発明の効果】
【0010】
従来の技術と比べて、本発明のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は以下の有利な効果を有する。カーボンナノチューブアレイを代替基板に移転し、且つカーボンナノチューブアレイの形態はカーボンナノチューブフィルムをカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できる形態である。幅が広いカーボンナノチューブフィルム或いは長さが長いカーボンナノチューブフィルムを製造しよう際、複数の代替基板を並列に配列し、複数のカーボンナノチューブアレイを相互に接触させることによって、接合したカーボンナノチューブアレイを形成し、形成したカーボンナノチューブアレイから幅が広く、或いは長さが長いカーボンナノチューブフィルムを引出すことできる。これにより、厚さが薄いカーボンナノチューブフィルムを直接に引き出して、カーボンナノチューブフィルムが破壊されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係るカーボンナノチューブフィルムの製造方法を示す図である。
図2】本発明の一つの例に係るカーボンナノチューブアレイの転移方法を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係るカーボンナノチューブアレイから引き出されたカーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
図4】本発明の実施形態1に係るカーボンナノチューブアレイから引き出されたカーボンナノチューブの構造を示す図である。
図5】本発明の一つの例に係るカーボンナノチューブアレイの転移方法を示す図である。
図6】本発明の実施形態2に係るカーボンナノチューブアレイの転移方法を示す図である。
図7】本発明の実施形態3に係るカーボンナノチューブアレイの転移方法を示す図である。
図8】本発明の実施形態3に係るカーボンナノチューブアレイの転移方法を示す図である。
図9】本発明の実施形態1に係る二つの並列に配列された代替基板における、接合したカーボンナノチューブアレイの側面を示す図である。
図10】本発明の実施形態1に係る代替基板における接合したカーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルムを引き出す工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。また、以下の各実施形態において、同じ構成要素は同じ符号を付与している。
【0013】
(実施形態1)
図1を参照すると、本実施形態はカーボンナノチューブフィルムの製造方法を提供する。本実施形態のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は、複数の代替基板30を提供し、複数のカーボンナノチューブアレイ10をそれぞれ複数の代替基板30の表面に移転するステップであって、カーボンナノチューブアレイ10の形態はカーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できる形態であるステップ(S1)と、複数の代替基板30を並列に配列し、隣接するカーボンナノチューブアレイ10の側面を接触させ、分子間力によって、接合したカーボンナノチューブアレイ80を形成し、接合したカーボンナノチューブアレイ80の面積はカーボンナノチューブアレイ10の面積より大きいステップ(S2)と、接合したカーボンナノチューブアレイ80からカーボンナノチューブフィルム40を引き出すステップ(S3)と、を含む。
【0014】
図2を参照すると、ステップ(S1)において、一つのカーボンナノチューブアレイ10を代替基板30に移転する方法は、代替基板30及び成長基板20を提供し、成長基板20の第三表面202にカーボンナノチューブアレイ10を有するステップであって、カーボンナノチューブアレイ10の形態はカーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できる形態であるステップ(S11)と、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から代替基板30の第四表面302に転移するステップであって、代替基板30に転移されたカーボンナノチューブアレイ10の形態はカーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できる形態であるステップ(S12)と、を含む。
【0015】
カーボンナノチューブフィルム40は、端と端で接続される複数のカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブフィルム40は、複数のカーボンナノチューブが分子間力で端と端で接続されて形成される巨視的なフィルムである。好ましくは、カーボンナノチューブフィルム40は、端と端で接続される複数のカーボンナノチューブのみからなる。
【0016】
カーボンナノチューブアレイ10は、CVD(化学気相堆積)法によって成長基板20の表面に成長する。カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブは相互に基本的に平行であり、且つ成長基板20の表面と垂直である。隣接するカーボンナノチューブは相互に接触して、且つ分子間力で結合される。
【0017】
成長条件を制御することによって、カーボンナノチューブアレイ10は基本的に不純物を含まない。不純物は、例えば、アモルファスカーボン或いは残留した触媒の金属粒である。カーボンナノチューブアレイ10が基本的に不純物を含まず、且つカーボンナノチューブが相互に緊密に接触して、且つ隣接するカーボンナノチューブとの間に、大きな分子間力を有するので、一部のカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブセグメント)を引き出す際、該一部のカーボンナノチューブと隣接するカーボンナノチューブが分子間力の作用によって端と端で接続され、連続的に引き出すことができ、自立構造体(カーボンナノチューブフィルム)を形成する。カーボンナノチューブが端と端で接続されて引き出される前記カーボンナノチューブアレイ10は、超配列カーボンナノチューブアレイである。超配列カーボンナノチューブアレイについては特許文献1に掲載されている。
【0018】
成長基板20は超配列カーボンナノチューブアレイの成長に適した基板であり、その材料は、例えば、P型シリコン、N型シリコン、或いは酸化シリコンである。
【0019】
カーボンナノチューブアレイ10から引き出されるカーボンナノチューブフィルム40は、端と端で接続される複数のカーボンナノチューブを含む。具体的に、カーボンナノチューブフィルム40は自立構造体であり、基本的に同じ方向に沿って配列される複数のカーボンナノチューブを含む。図3及び図4を参照すると、カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。複数のカーボンナノチューブの延伸する方向はカーボンナノチューブフィルムの表面と基本的に平行である。また、複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。具体的には、複数のカーボンナノチューブにおける各カーボンナノチューブは、延伸する方向における隣接するカーボンナノチューブと、分子間力で端と端とが接続されているので、カーボンナノチューブフィルムが自立構造を実現できる。更に、カーボンナノチューブフィルム40は、複数のカーボンナノチューブセグメントを含むことができる。複数のカーボンナノチューブセグメントは、長軸方向に沿って、分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメントは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブを含む。単一のカーボンナノチューブセグメントにおいて、複数のカーボンナノチューブの長さは同じである。
【0020】
また、カーボンナノチューブフィルム40は、少数のランダムなカーボンナノチューブを含む。しかし、大部分のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列されているので、このランダムなカーボンナノチューブの延伸方向は、大部分のカーボンナノチューブの延伸方向には影響しない。具体的には、カーボンナノチューブフィルム40における多数のカーボンナノチューブは、絶対的に直線状ではなくやや湾曲している。または、延伸する方向に完全に配列せず、少しずれている場合もある。従って、同じ方向に沿って配列されている多数のカーボンナノチューブの中において、隣同士のカーボンナノチューブが部分的に接触する可能性がある。実際に、カーボンナノチューブフィルム40は複数の空隙を有し、即ち、隣接するカーボンナノチューブの間に空隙を有する。これにより、カーボンナノチューブフィルム40は優れた透明度を有する。且つ、隣接するカーボンナノチューブの接触する部分の分子間力及び端と端で接続される部分の分子間力がカーボンナノチューブフィルム40の自立構造を維持できる。カーボンナノチューブフィルム40の厚さは0.5nm〜100μmであり、好ましくは、0.5nm〜10μmである。
【0021】
自立構造体とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブフィルム40を独立して利用することができる形態のことである。すなわち、カーボンナノチューブフィルム40を対向する両側から支持して、カーボンナノチューブフィルム40の構造を変化させずに、カーボンナノチューブフィルム40を懸架できることを意味する。カーボンナノチューブフィルム40におけるカーボンナノチューブが、分子間力で接続されて配列されているので、自立構造体が実現される。
【0022】
カーボンナノチューブアレイ10からカーボンナノチューブフィルムを引き出す方法は、特許文献3に掲載されている。
【0023】
図2を参照すると、代替基板30は固体の基板であり、第四表面302を有する。代替基板30は軟質基板でも良く、硬質基板でもよい。その材料は、金属、ガラス、石英、シリコン、酸化ケイ素、プラスチック、樹脂の何れか一種である。例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)或いはポリジメチルシロキサン(PDMS)である。好ましくは、代替基板30は弾性基板である。カーボンナノチューブアレイ10が第四表面302に設置される。カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から代替基板30の第四表面302に転移する工程において、カーボンナノチューブアレイ10の形態を基本的に維持し、カーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できる。即ち、カーボンナノチューブアレイ10は超配列カーボンナノチューブアレイの形態を維持する。
【0024】
カーボンナノチューブアレイ10の形態を維持することを前提に、カーボンナノチューブアレイ10を代替基板30に転移した後、カーボンナノチューブアレイ10は代替基板30の第四表面302に逆さに設置される。具体的には、カーボンナノチューブアレイ10は第一表面102と、第二表面104と、第一側面106と、を含む。第一表面102と第二表面104とは対向する。第一側面106は第一表面102及び第二表面104とそれぞれ連接する。各カーボンナノチューブは成長基板20の第三表面202に成長し、カーボンナノチューブアレイ10を形成する。各カーボンナノチューブの、成長基板20の第三表面202と隣接する一端をカーボンナノチューブの下端と定義し、下端と対向する端部をカーボンナノチューブの上端と定義する。成長基板20において、第一表面102はカーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブの下端に形成され、第二表面104はカーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブの上端に形成される。第一側面106はカーボンナノチューブアレイ10の外側におけるカーボンナノチューブの管壁からなる。カーボンナノチューブアレイ10の第一表面102は、成長基板20の第三表面202と近接し、或いは成長基板20の第三表面202に設置される。該第一表面102はカーボンナノチューブアレイ10における各カーボンナノチューブの成長下端である。第二表面104は成長基板20の第三表面202から離れ、カーボンナノチューブアレイ10における各カーボンナノチューブの成長上端である。カーボンナノチューブアレイ10を代替基板30に転移した後、カーボンナノチューブアレイ10の第二表面104は代替基板30の第四表面302と近接し、或いは代替基板30の第四表面302に設置される。カーボンナノチューブアレイ10の第一表面102は、代替基板30の第四表面302から離れている。カーボンナノチューブアレイ10の第一側面106はカーボンナノチューブの長手方向に沿って延伸する。カーボンナノチューブアレイ10が成長基板20に設置される場合、第一側面106は成長基板20の第三表面202と基本的に直交する。カーボンナノチューブアレイ10が代替基板30に移転した後、第一側面106は代替基板30の第四表面302と基本的に直交する。
【0025】
一つの例において、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から代替基板30に移転するステップ(S12)は、代替基板30の第四表面302を、カーボンナノチューブアレイ10の成長基板20と離れている第二表面104と接触させるステップ(S121)と、代替基板30及び成長基板20のうちの少なくとも一方を移動させて、代替基板30と成長基板20とを離れさせ、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させ、代替基板30に転移するステップ(S122)と、含む。
【0026】
ステップ(S12)を常温で行うことができる。ステップ(S121)及びステップ(S122)において、カーボンナノチューブアレイ10の形態はカーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できる形態である。カーボンナノチューブアレイ10が代替基板30に転移した後、カーボンナノチューブフィルム40を連続的に引き出すことができるために、代替基板30の第四表面302とカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104の間は分子間力のみで結合する。代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10の間の結合力(FBC)は、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブ同士の間の分子間力(FCC)より小さい。また、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10の間の結合力(FBC)は、成長基板20の第三表面202とカーボンナノチューブアレイ10の間の結合力(FAC)より大きい。これにより、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させ、代替基板30に転移させる。即ち、FAC<FBC<FCCである。カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させ、代替基板30に転移させる工程では、代替基板30の第四表面302がカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104と接触して発生する結合力(例えば、分子間力)のみによって、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させる。
【0027】
AC<FBC<FCCを満たすために、代替基板30の表面は適切な表面エネルギーを有することができ、且つ代替基板30の表面とカーボンナノチューブアレイ10の間に適切な表面エネルギーを有することができる。これにより、代替基板30の表面とカーボンナノチューブアレイ10とが接触することのみによって、代替基板30の表面とカーボンナノチューブアレイ10との間に、十分な結合力(例えば、分子間力)を発生させて、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させる。これにより、代替基板30の第四表面302がカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104と接触して発生する結合力(例えば、分子間力)のみによって、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させるために、適切な材料を選択して代替基板30を製造する。代替基板30の表面は平面である。本例において、代替基板30の材料はポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0028】
図5を参照すると、もう一つの例において、代替基板30の第四表面302がカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104との間の結合力(FBC)を高め、FAC<FBC<FCCを満たすために、代替基板30の第四表面302に複数の微構造体304を有することができる。これにより、第四表面302の表面積を増大でき、代替基板30の材料が変化しない条件で、代替基板30の第四表面302とカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104との間の結合力(FBC)を高める。複数の微構造体304を有する第四表面302はカーボンナノチューブアレイ10と十分に接触する。微構造体304は代替基板30の第四表面302における突起或いは溝である。微構造体304の形状は半球形、錐体、歯形、矩形、台形、階段形状或いは他の形状である。微構造体304は点状、線状、ストリップ状、片状を呈することができる。一つの例において、複数の微構造体304は相互に平行して且つ間隔をあけて設置される溝からなる構造体である。もう一つの例において、複数の微構造体304は相互に平行して且つ間隔をあけて均一に分布される半球形からなる構造体である。好ましくは、複数の微構造体304は代替基板30の第四表面302に均一に分布される。更に、好ましくは、微構造体304によって、平滑な表面の表面積より、微構造体304を有する代替基板30の第四表面302の表面積は30%〜120%増加する。代替基板30の第四表面302に複数の微構造体304を形成することによって、第四表面302の吸着力を増大し、(FBC)を高める。従って、代替基板30の材料はポリジメチルシロキサン(PDMS)に制限されず、ほかの弾性材料でも良く、例えば、プラスチック或いはゴムである。本例において、代替基板30の材料はポリメタクリル酸メチル(PMMA)或いはポリエチレン・テレフタレート(PET)である。
【0029】
カーボンナノチューブアレイ10が代替基板30の第四表面302に設置される際、カーボンナノチューブアレイ10が第四表面302と十分に接触できることを保証するために、代替基板30の第四表面302は適切な平滑度を維持する。好ましくは、微構造体304の突起の高さ或いは溝の深さはカーボンナノチューブアレイ10の高さの0.5%〜10%である。更に、好ましくは、微構造体304の突起の高さ或いは溝の深さは5μm〜100μmである。フォトリソグラフィ法、レーザーエッチング法、化学エッチング法によって、微構造体304を獲得する。
【0030】
代替基板30の第四表面302に複数の微構造体304を形成することによって、第四表面302の表面積を増大し、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10との間の結合力を高め、且つ代替基板30の材料の選択範囲が広がる。
【0031】
代替基板30を接着剤でカーボンナノチューブアレイ10に貼り付けることはしない。従来の接着剤によっても、FAC<FBCを満たし、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させることができる。しかし、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブ同士の間の分子間力が小さいので、従来の任意の接着剤では、FBC>FCCとなる。これにより、後のカーボンナノチューブフィルム40を引き出すステップを行うことができない。ステップ(S121)及びステップ(S122)において、代替基板30は固体状態を維持する。
【0032】
ステップ(S121)において、代替基板30の第四表面302とカーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブの上端とを十分に接触させるために、代替基板30にカーボンナノチューブアレイ10への小さい圧力(f)を印加できる。この圧力の大きさはカーボンナノチューブアレイ10の形態を維持でき、カーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことができることを保証する。
【0033】
代替基板30における複数の微構造体304により第四表面302は高度差を有する。第四表面302における溝がカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104と接触する際、第四表面302における突起が突起と接触するカーボンナノチューブに圧力を印加し、カーボンナノチューブアレイ10における突起と接触するカーボンナノチューブは微小の湾曲を発生する。複数の微構造体304が小さい高さを有するので、代替基板30が成長基板20と分離する工程で、カーボンナノチューブアレイ10が元の高さに回復でき、且つカーボンナノチューブアレイ10からカーボンナノチューブフィルム40を連続的に引き出すことができる。
【0034】
ステップ(S122)において、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させる工程では、好ましくは、カーボンナノチューブアレイ10におけるすべてのカーボンナノチューブを同時に成長基板20から脱離させる。即ち、代替基板30及び成長基板20のうちの少なくとも一方の移動方向は、成長基板20のカーボンナノチューブが成長する表面と垂直であり、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブを、カーボンナノチューブの成長方向に沿って成長基板20から脱離させる。代替基板30及び成長基板20が共に移動する場合、両者の移動方向は、成長基板20のカーボンナノチューブが成長する表面と垂直である。
【0035】
ステップ(S121)及びステップ(S122)において、まず、カーボンナノチューブアレイ10が成長基板20から押される力を受け、次に、代替基板30に向けて引かれる力を受ける。
【0036】
図1及び図9を参照すると、複数のカーボンナノチューブアレイ10を複数の代替基板30にそれぞれ移転した後、ステップ(S2)において、複数の代替基板30を同じ水平高度で並列に配列し、且つ隣接する代替基板30の第二側面306を相互に接触させる。複数の代替基板30を緊密に並列に配列することによって、複数の代替基板30におけるカーボンナノチューブアレイ10の第一側面106を相互に接触させる。即ち、隣接するカーボンナノチューブアレイ10の第一側面106におけるカーボンナノチューブを直接に接触させることを実現する。これにより、複数のカーボンナノチューブアレイ10を接合して、面積が大きく、接合したカーボンナノチューブアレイ80を形成する。隣接するカーボンナノチューブアレイ10の第一側面106におけるカーボンナノチューブが十分に緊密に接触する際、隣接するカーボンナノチューブアレイ10の第一側面106におけるカーボンナノチューブの間に十分な分子間力を発生し、該発生する分子間力はカーボンナノチューブアレイ10の内部におけるカーボンナノチューブ同士の間の分子間力と基本的に同じである。これにより、複数のカーボンナノチューブアレイ10を一体構造体に形成でき、接合したカーボンナノチューブアレイ80を形成する。接合したカーボンナノチューブアレイ80の面積は複数のカーボンナノチューブアレイ10の面積の総和と基本的に同じである。複数のカーボンナノチューブアレイ10の第一側面106を相互に接触させることによって、面積が大きい接合したカーボンナノチューブアレイ80を獲得する。接合したカーボンナノチューブアレイ80は少なくとも一つの方向における寸法を増大する。本実施形態において、接合したカーボンナノチューブアレイ80は第一方向(X)における寸法を増大する。
【0037】
複数の代替基板30におけるカーボンナノチューブアレイ10が相互に接触することを実現するために、代替基板30の少なくとも一つの第二側面306が、該代替基板30と対応するカーボンナノチューブアレイ10の少なくとも一つの第一側面106と一直線に合わさる。即ち、代替基板30の少なくとも一つの第二側面306が、該代替基板30と対応するカーボンナノチューブアレイ10の少なくとも一つの第一側面106と同じ平面に存在する。複数の代替基板30が並列に配列する際、複数の代替基板30の第二側面306を相互に接触させる。これにより、代替基板30の第四表面に設置されるカーボンナノチューブアレイ10の第一側面106を相互に接触させる。
【0038】
代替基板30に転移したカーボンナノチューブアレイ10の面積が代替基板30の第四表面302の面積より小さい場合、或いは代替基板30の形状及びカーボンナノチューブアレイ10の形状の原因で、隣接する代替基板30の第二側面306を接触させることが難しく、隣接するカーボンナノチューブアレイ10の第一側面106を接触させることが難しい場合、代替基板30を並列に配列する前に、代替基板30及びカーボンナノチューブアレイ10を切断するステップを有してもよい。このステップにおいて、代替基板30及びカーボンナノチューブアレイ10を切断することによって、代替基板30の少なくとも一つの第二側面306がカーボンナノチューブアレイ10の少なくとも一つの第一側面106と同じ平面に存在する。隣接する二つのカーボンナノチューブアレイ10の第一側面106の形状は相互に対応し、接触する面積を大きくする。
【0039】
レーザーエッチング法或いは機械切割法によって、代替基板30及びカーボンナノチューブアレイ10を切断する。
【0040】
本実施形態において、単結晶シリコン成長基板20に成長する二つのカーボンナノチューブアレイ10は二つの矩形の代替基板30の表面にそれぞれ移転し、レーザーエッチング法で線108に沿って切り、カーボンナノチューブアレイ10’を有する二つの正方形の代替基板30を形成する。
【0041】
更に、カーボンナノチューブアレイ10をカーボンナノチューブアレイ10の面積と同じである代替基板30の第四表面302に移転することができる。また、まず、代替基板30の第四表面302の面積と同じであるカーボンナノチューブアレイ10を形成し、次に、該カーボンナノチューブアレイ10を代替基板30の第四表面302に移転することができる。
【0042】
隣接するカーボンナノチューブアレイ10の第一側面106が相互に接触する際、接触面積が大きければ大きいほど、大きい分子間力を発生する。好ましくは、代替基板30は弾性基板であり、隣接する代替基板30の第二側面306を相互に接触させる工程で、代替基板30に圧力を印加し、代替基板30を圧縮して小さくし、隣接するカーボンナノチューブアレイ10の距離を短縮し、緊密に接触させる。
【0043】
図1及び図10を参照すると、ステップ(S3)が従来のカーボンナノチューブフィルムを引き出すステップと異なるのは、以下の点である。複数の代替基板30に移転した複数のカーボンナノチューブアレイ10が接合して、接合したカーボンナノチューブアレイ80を獲得し、接合したカーボンナノチューブアレイ80から、カーボンナノチューブフィルム40を引き出すのであり、成長基板20に直接に成長するカーボンナノチューブアレイ10から、カーボンナノチューブフィルム40を引き出すのではない。好ましくは、カーボンナノチューブフィルム40は、代替基板30の表面に逆さに設置される接合したカーボンナノチューブアレイ80から引き出される。即ち、接合したカーボンナノチューブアレイ80におけるカーボンナノチューブアレイ10の成長下部からカーボンナノチューブフィルム40を引き出す。
【0044】
ステップ(S3)において、任意の方向に沿って、接合したカーボンナノチューブアレイ80からカーボンナノチューブフィルム40を引き出すことができる。カーボンナノチューブアレイ10からカーボンナノチューブフィルムを直接に引き出すことに比べ、第一方向(X)と垂直である第二方向(Y)に沿って、接合したカーボンナノチューブアレイ80からカーボンナノチューブフィルム40を引き出す方が、引き出したカーボンナノチューブフィルム40の幅が大きい。また、第一方向(X)に沿って、接合したカーボンナノチューブアレイ80からカーボンナノチューブフィルム40を引き出す際、引き出したカーボンナノチューブフィルム40の長さが長い。これにより、接合したカーボンナノチューブアレイ80から引き出すカーボンナノチューブフィルム40の寸法は大きくなる。複数のカーボンナノチューブアレイ10が接合する際、緊密に接触するので、隣接するカーボンナノチューブアレイ10の間は十分な分子間力を有し、接合したカーボンナノチューブアレイ80は一体になる。これにより、接合したカーボンナノチューブアレイ80から一体化されたカーボンナノチューブフィルム40を引き出すことができ、引き出したカーボンナノチューブフィルム40はそれぞれ独立のカーボンナノチューブフィルムからなるものではない。複数のカーボンナノチューブアレイ10を接合する工程は、複数のカーボンナノチューブアレイ10の形態に影響を与えないので、接合したカーボンナノチューブアレイ80からカーボンナノチューブフィルム40を引き出すことができる。
【0045】
ステップ(S3)は代替基板30の表面における接合したカーボンナノチューブアレイ80に対して、引き道具50によって、カーボンナノチューブセグメントを選択するステップ(S31)と、引き道具50を移動させることによって、特定の速度で選択したカーボンナノチューブセグメントを引き、端と端で接続される複数のカーボンナノチューブセグメントを引き出し、連続なカーボンナノチューブ構造体40を形成するステップ(S32)と、を含む。
【0046】
ステップ(S31)において、カーボンナノチューブフィルムを引き出す場合、特定の幅を有する接着テープ或いは接着性を有するストリップを採用し接合したカーボンナノチューブアレイ80と接触させ、特定の幅を有するカーボンナノチューブセグメントを選択する。該カーボンナノチューブセグメントの幅方向は第一方向である。第一方向におけるカーボンナノチューブアレイ10の長さが増大されるので、選択できるカーボンナノチューブセグメントの幅を増大する。ステップ(S32)において、選択したカーボンナノチューブセグメントの引き出す方向は、接合したカーボンナノチューブアレイ80におけるカーボンナノチューブの成長方向と角αを成す。角αは0°〜90°(0°は含まず)であり、好ましくは、30°〜90°であり、選択したカーボンナノチューブセグメントの引き出す方向は第一方向と垂直である。
【0047】
ステップ(S122)はステップ(S3)と異なる。ステップ(S122)はカーボンナノチューブアレイ10全体を成長基板20から脱離でき、且つカーボンナノチューブアレイ10が成長基板20から脱離した後、カーボンナノチューブアレイ10の形態を維持できることを目指す。ステップ(S3)は接合したカーボンナノチューブアレイ80からカーボンナノチューブフィルム40を引き出すことを目指す。従って、接合したカーボンナノチューブアレイ80全体が代替基板30から脱離せず、一部のカーボンナノチューブ、例えば、カーボンナノチューブセグメントを代替基板30から脱離させ、引き出したカーボンナノチューブセグメントが隣接するカーボンナノチューブセグメントを動かし、隣接するカーボンナノチューブセグメントが端と端で接続されて引き出され、次々に代替基板30から脱離する。
【0048】
本発明のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は以下の有利な効果を有する。カーボンナノチューブアレイ10を代替基板30に移転し、且つカーボンナノチューブアレイ10の形態はカーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できる形態である。幅が広いカーボンナノチューブフィルム40或いは長さが長いカーボンナノチューブフィルム40を製造しようとする際、複数の代替基板30を並列に配列し、複数のカーボンナノチューブアレイ10を相互に接触させることによって、接合したカーボンナノチューブアレイ80を形成し、形成したカーボンナノチューブアレイ80から幅が広く、或いは長さが長いカーボンナノチューブフィルム40を引出すことできる。これにより、厚さが薄いカーボンナノチューブフィルムを直接に引き伸ばして、カーボンナノチューブフィルムが破壊されることを防止する。
【0049】
(実施形態2)
図6を参照すると、本実施形態はカーボンナノチューブフィルムの製造方法を提供する。本実施形態のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は実施形態1のカーボンナノチューブフィルムの製造方法と基本的に同じであるが、異なる点は以下である。代替基板30と成長基板20の間にスペーサ装置22が設置される。スペーサ装置22によって、代替基板30の第四表面302と成長基板20の第三表面202との距離を維持し、代替基板30の第四表面302と成長基板20の第三表面202との距離が非常に小さくないので、カーボンナノチューブアレイ10を倒すことを防止する。スペーサ装置22の代替基板30及び成長基板20の間における高さはカーボンナノチューブアレイ10の高さ以下である。これにより、カーボンナノチューブアレイ10がスペーサ装置22と高度差(Z)を有する。且つ、スペーサ装置22の高さは、カーボンナノチューブアレイ10を圧縮でき、カーボンナノチューブアレイ10からカーボンナノチューブフィルム40を連続的に引き出すことができないほどの圧縮されたカーボンナノチューブアレイ10の最小の高さより高い。ステップ(S121)において、スペーサ装置22及びカーボンナノチューブアレイ10は、代替基板30と成長基板20の間に設置される。
【0050】
スペーサ装置22は固体装置であり、好ましくは、剛性の素子である。スペーサ装置22によって、代替基板30と成長基板20の間に特定の空間を形成させる。且つ、スペーサ装置22の高さを制御することによって、代替基板30と成長基板20の間に精確な距離を制御する。スペーサ装置22の高さをhと定義し、カーボンナノチューブアレイ10の高さをhと定義する。hは0.9h〜1hである。
【0051】
スペーサ装置22の高さがカーボンナノチューブアレイ10の高さより小さい場合に、代替基板30がカーボンナノチューブアレイ10における、元々垂直するカーボンナノチューブを少し湾曲させる。代替基板30と成長基板20の間にスペーサ装置22が設置されるので、カーボンナノチューブが少し湾曲される。代替基板30を成長基板20と分離させる工程で、カーボンナノチューブアレイ10自身の弾性により、元の高さを回復でき、且つカーボンナノチューブフィルム40を引き出す状態を維持できる。
【0052】
スペーサ装置22を成長基板20に設置することができ、或いは、スペーサ装置22を代替基板30に設置することができる。その他、スペーサ装置22が代替基板30の一部であることができ、即ち、代替基板30は二つの突起を有する。適切な高さを有すれば、スペーサ装置22の形状は制限されず、塊状、片状、球状の何れか一種である。スペーサ装置22は複数でもよい。スペーサ装置22が複数である場合、カーボンナノチューブアレイ10の外縁と隣接する基板に均一に設置され、代替基板30と成長基板20の間に特定の間隔を提供する。一つの例において、スペーサ装置22は円環形であり、カーボンナノチューブアレイ10の外縁に設置される。もう一つの例において、スペーサ装置22は複数の円筒形であり、カーボンナノチューブアレイ10の外縁に均一に分布される。
【0053】
スペーサ装置22が代替基板30と成長基板20との間に設置されることは、代替基板30の第四表面302に微構造体304を有するかしないかと関係しない。即ち、実施形態において、スペーサ装置22を微構造体304と任意に組み合わせることができる。
【0054】
(実施形態3)
本実施形態はカーボンナノチューブフィルムの製造方法を提供する。本実施形態のカーボンナノチューブフィルムの製造方法は実施形態1のカーボンナノチューブフィルムの製造方法と基本的に同じであるが、ステップ(S32)がステップ(S12)と異なる。具体的には、ステップ(S32)は、代替基板30をカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104に設置し、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104との間に液相状態の媒体60を設置するステップ(S321)と、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104との間に設置された液相状態の媒体60を固体の媒体60’に固化させるステップ(S322)と、代替基板30及び成長基板20のうちの少なくとも一方を移動させて、代替基板30と成長基板20とを離れさせ、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から脱離させ、代替基板30に転移するステップ(S323)と、温度を上昇させることによって、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104との間の固体の媒体60’を除去するステップであって、固体の媒体60’を除去した後、カーボンナノチューブアレイ10の形態はカーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できる形態であるステップ(S324)と、を含む。
【0055】
ステップ(S321)において、液相状態の媒体60を細かい液滴或いは液膜の形態でカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104に設置する。液相状態の媒体60は水或いは低分子量有機溶剤である。低分子量有機溶剤はエチルアルコール、アセトン、メチルアルコールの何れか一種である。液相状態の媒体60がカーボンナノチューブアレイ10に浸透して、カーボンナノチューブアレイ10の形態に影響を与えることを防止するために、液相状態の媒体60の量は少ない。好ましくは、液相状態の媒体60はカーボンナノチューブを濡らさない液体であり、例えば、水である。カーボンナノチューブアレイ10の第二表面104における液相状態の媒体60は複数の液滴からなり、或いは液膜からなる。その液滴の直径及び液膜の厚さはそれぞれ10nm〜300μmである。代替基板30及びカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104は液相状態の媒体60とそれぞれ接触する。
【0056】
ステップ(S321)において、カーボンナノチューブアレイ10の形態を基本的に維持し、カーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できる。代替基板30はできるだけカーボンナノチューブアレイ10に圧力を印加しない。或いは代替基板30がカーボンナノチューブアレイ10に圧力(f)を印加する際、印加される圧力は小さい。この圧力の大きさは、カーボンナノチューブアレイ10の形態を維持でき、カーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引出させるように選択される。例えば、代替基板30がカーボンナノチューブアレイ10に圧力(f)を印加する際、カーボンナノチューブアレイ10を倒さない。好ましくは、圧力は0<f<2N/cmである。
【0057】
一つの例において、ステップ(S321)は、カーボンナノチューブアレイ10の第二表面104に層状の液相状態の媒体60を形成するステップ(S3211)と、代替基板30の表面を、液相状態の媒体60を形成したカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104と接触させるステップ(S3222)と、含む。具体的に、液相状態の媒体60を液滴に形成し、或いは液相状態の媒体60を霧化させ、カーボンナノチューブアレイ10の第二表面104にスプレーする。
【0058】
もう一つの例において、ステップ(S321)は、代替基板30の表面に層状の液相状態の媒体60を形成するステップ(S3211)と、液相状態の媒体60を形成した代替基板30の表面を、カーボンナノチューブアレイ10の第二表面104と接触させるステップ(S3222)と、含む。具体的に、液相状態の媒体60を液滴に形成し、或いは液相状態の媒体60を霧化させ、代替基板30の表面にスプレーする。
【0059】
ステップ(S322)において、代替基板30とカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104との間に設置された液相状態の媒体60を固体の媒体60’に固化させる。具体的には、温度を液相状態の媒体60の凝固点以下に低下させる。代替基板30及びカーボンナノチューブアレイ10が液相状態の媒体60と接触するので、液相状態の媒体60を固化した後、代替基板30及びカーボンナノチューブアレイ10は緊密に結合される。代替基板30をカーボンナノチューブアレイ10と更に緊密に結合させるために、好ましくは、代替基板30の材料は液相状態の媒体60を濡らす材料である。
【0060】
一つの例において、代替基板30、液相状態の媒体60、カーボンナノチューブアレイ10及び成長基板20からなる積層構造体の温度を、低温箱70の中で凝固点以下に低下させる。該低温箱70は冷蔵庫の冷凍室である。
【0061】
図8を参照すると、もう一つの例において、ステップ(S322)において、液相状態の媒体60をカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104に設置する際、まず、代替基板30の温度を凝固点以下に低下させる。次に、温度を凝固点以下に低下させた代替基板30を、液相状態の媒体60を有するカーボンナノチューブアレイ10の第二表面104と接触させる。具体的には、低温箱70の温度を凝固点以下に低下させて、代替基板30を低温箱70に特定の時間を置いた後、取り出す。代替基板30の温度は、カーボンナノチューブアレイ10の第二表面104における液相状態の媒体60を固体の媒体60’に変化させることができる。これにより、代替基板30、液相状態の媒体60、カーボンナノチューブアレイ10及び成長基板20からなる前記積層構造体を、低温箱70に置く必要がなくなる。
【0062】
ステップ(S323)において、カーボンナノチューブアレイ10が代替基板30と結合し、成長基板20から分離する。好ましくは、カーボンナノチューブアレイ10におけるすべてのカーボンナノチューブを同時に成長基板20から脱離させる。即ち、代替基板30及び成長基板20のうちの少なくとも一方の移動方向は、成長基板20のカーボンナノチューブが成長する表面と垂直であり、カーボンナノチューブアレイ10におけるカーボンナノチューブを、カーボンナノチューブの成長方向に沿って成長基板20から脱離させる。代替基板30及び成長基板20が共に移動する際、両者の移動方向は、成長基板20のカーボンナノチューブが成長する表面と垂直である。
【0063】
ステップ(S324)において、温度を上昇させることによって、固体の媒体60’を液相状態の媒体60に溶解させ、且つ液相状態の媒体60を乾燥させ、或いは固体の媒体60’を直接に昇華させ、固体の媒体60’を除去する。固体の媒体60’を除去する工程は、カーボンナノチューブアレイ10の形態に影響を与えない。固体の媒体60’の厚さが薄いので、固体の媒体60’を除去した後、カーボンナノチューブアレイ10は代替基板30の表面と接触でき、且つ分子間力で結合する。
【0064】
固体の媒体60’を除去した後、カーボンナノチューブフィルム40をカーボンナノチューブアレイ10から連続的に引き出すことを保証できるようにするために、ステップ(S321)からステップ(S324)まで、カーボンナノチューブアレイ10の形態を基本的に維持する必要がある。
【0065】
本実施形態において、カーボンナノチューブアレイ10を転移する工程において、固体の媒体60’によって、カーボンナノチューブアレイ10と代替基板30との間の結合力を増加させて、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20と分離させる。また、カーボンナノチューブ構造体40を引き出す前に、固体の媒体60’を除去し、カーボンナノチューブアレイ10と代替基板30との間の結合力を、カーボンナノチューブフィルム40を連続的に引き出すことができるまでに減少させる。これにより、代替基板30の材料は制限されず、従来の剛性基板でも良く、弾性基板でもよい。
【0066】
カーボンナノチューブアレイ10を代替基板30に移転することによって、カーボンナノチューブアレイ10が成長する工程及びカーボンナノチューブアレイ10からカーボンナノチューブフィルム40を引き出す工程において、カーボンナノチューブアレイ10を成長基板20から異なる代替基板30に設置して、カーボンナノチューブアレイ10からカーボンナノチューブフィルムを引き出す工程において、カーボンナノチューブアレイが設置される代替基板30はコストが低い材料からなることができ、カーボンナノチューブアレイ10の生産者はカーボンナノチューブアレイ10を代替基板に転移でき、カーボンナノチューブアレイ10と代替基板30とを共にユーザーに提供でき、コストが高い成長基板20は迅速に回収でき、生産プロセスを簡単にし、生産コストを低くする。
【符号の説明】
【0067】
10 カーボンナノチューブアレイ
102 第一表面
104 第二表面
106 第一側面
20 成長基板
22 スペーサ装置
202 第三表面
30 弾性代替基板
302 第四表面
304 微構造体
306 第二側面
40 カーボンナノチューブフィルム
50 引き工具
60 液相状態の媒体
60’ 固体の媒体
70 低温箱
80 接合したカーボンナノチューブアレイ
図1
図2
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図3