(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
《1》第1の実施形態
《1−1》第1の実施形態の構成
〈プリンタ11〉
図1は、本発明に係る第1の実施形態の画像形成装置としてのプリンタ11の構成例を概略的に示す構成図である。プリンタ11は、例えば、電子写真方式を用いるカラープリンタである。プリンタ11は、主要な構成として、媒体カセット12と、画像形成ユニット13,14,15,16,17を含む画像形成部22と、転写部19と、定着器20とを有している。
【0010】
媒体カセット12は、媒体(「印刷媒体」又は「記録媒体」又は「転写材」とも言う。)21を積層した状態で収納する。媒体カセット12は、プリンタ11内の下部に着脱自在に装着される。媒体カセット12に収納されている媒体21は、1枚ずつ取り出され、取り出された媒体21は、媒体搬送路を矢印D1方向に進み、画像形成部22に送られる。
【0011】
画像形成部22は、媒体搬送路に沿って着脱自在に配置された画像形成ユニット13〜17を有している。画像形成ユニット13〜17の各々によって形成された現像剤像(「トナー像」とも言う。)は、転写部19によって、媒体搬送路に沿って搬送される媒体21の上面に転写される。直列に配列された画像形成ユニット13〜17は、互いに同じ構成を有しているが、互いに異なる色のトナーを使用する。すなわち、画像形成ユニット13〜17で使用されるトナーはそれぞれ、白色(W)トナー、ブラック(K)トナー、イエロー(Y)トナー、マゼンタ(M)トナー、シアン(C)トナーである。ただし、画像形成ユニットの数及びトナーの種類は、この例に限定されない。
【0012】
転写部19は、媒体21を静電吸着して搬送する転写ベルト33と、駆動部により回転されて転写ベルト33を駆動するドライブローラ34と、ドライブローラ34と対を成して転写ベルト33を張架するテンションローラ35と、画像形成ユニット13〜17の各感光ドラム53〜57に対向して配置され、トナー画像を媒体21に転写するよう電圧を印加する転写ローラ27〜31と、転写ベルト33上に付着したトナーを掻き取ってクリーニングする転写ベルトクリーニングブレード38と、転写ベルトクリーニングブレード38により掻き取られることで回収されたトナーを収容する廃棄トナータンク39とを有する。
【0013】
〈画像形成ユニット13〉
次に、白色(W)のトナーを備える画像形成ユニット13の構成について説明する。なお、ブラック(K)のトナーを備える画像形成ユニット14、イエロー(Y)のトナーを備える画像形成ユニット15、マゼンタ(M)のトナーを備える画像形成ユニット16、及びシアン(C)のトナーを備える画像形成ユニット17は、トナーの種類(色)が異なる点を除いて、画像形成ユニット13と同一の構成を有する。画像形成ユニット13は、現像剤担持体としての現像ローラ40と、現像剤供給回収体としての供給ローラ41と、現像剤層規制部材としての現像ブレード42と、トナー43を収容する現像剤収容体としてのトナーカートリッジ44と、潜像担持体としての感光ドラム53と、帯電部材としての帯電ローラ45と、現像剤除去部材としてのクリーニングブレード46とを有している。
【0014】
感光ドラム53は、導電性支持体と、その外周を覆う光導電層とを有する。導電性支持体としては、例えば、アルミニウムの金属パイプが用いられ、光導電層としては、例えば、電荷発生層及び電荷輸送層を順に積層した構造が用いられる。
【0015】
帯電ローラ45は、感光ドラム53の周面に接しており、例えば、金属シャフトとその外周を覆う半導電性エピクロロヒドリンゴム層とを有する。
【0016】
露光装置としてのLEDヘッド47は、例えば、複数のLED素子(発光ダイオード)とレンズアレイとを有し、複数のLED素子から出力される照射光を感光ドラム53の表面に結像させる。露光装置の光源としては、レーザー発光素子などの他の光源を使用することもできる。
【0017】
現像剤担持体としての現像ローラ40は、感光ドラム53の周面に接して配置され、例えば、金属シャフトと、その外周を覆う半導電性ウレタンゴム層とを有する。
【0018】
現像ローラ40の表面に接する現像ブレード42は、ステンレス又はリン青銅などを用いて形成された板バネであり、現像ローラ40の表面の現像剤層の厚さを規制する。
【0019】
画像形成部22で各色のトナー像が転写された媒体21は、媒体搬送路を
図1中の矢印D2方向に搬送されて定着器20に送られる。定着器20は、例えば、発熱ローラ48と、加圧ローラ49と、加圧ベルト50とを備えている。
【0020】
〈トナー43〉
次に、現像剤としてのトナー43について説明する。トナー43は、少なくとも結着樹脂を含有する母粒子に、無機微粉体又は有機微粉体などが適宜表面処理されたものである。この結着樹脂は、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、又は、スチレン−ブタジエン系樹脂などである。
【0021】
トナーは、結着樹脂に、以下のような着色剤、離型剤、帯電制御剤、処理剤等の公知の成分が適宜混合され、又は、表面処理されることによって製造される。
【0022】
着色剤としては、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のトナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を単独、もしくは、複数種併用して使用することができる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、パーマネントブラウンFG、ピグメントグリーンB、ピグメントブルー15:3、ソルベントブルー35、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、キナクリドン、カーミン6B、ナフトール、又はジスアゾイエロー、イソインドリン等などを用いることができる。結着樹脂に添加される着色剤の含有量は、結着樹脂100〔重量部〕に対して2〜25〔重量部〕とすることが望ましく、より好ましい範囲は、2〜15〔重量部〕である。
【0023】
また、白色トナーの着色剤としては、例えば、酸化チタンなどがあり、表面処理されていても、複数種併用されていてもよい。結着樹脂に添加される着色剤の含有量は、結着樹脂100〔重量部〕に対して、20〜100〔重量部〕の範囲内とすることが望ましく、より好ましい範囲は、50〜100〔重量部〕の範囲内である。
【0024】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、パラフィンワックス、又は、カルナバワックスなどを用いることができる。そして、離型剤の含有量は、結着樹脂100〔重量部〕に対して、0.1〜20〔重量部〕の範囲内とすることが望ましく、より好ましい範囲は、0.5〜12〔重量部〕の範囲内であり、また、複数種のワックスを併用してもよい。
【0025】
帯電制御剤としては、例えば、正帯電性トナーの場合には、4級アンモニウム塩系帯電制御剤、負帯電性トナーの場合には、アゾ系錯体帯電制御剤、サリチル酸系錯体帯電制御剤、又は、カリックスアレン系帯電制御剤などを用いることができる。この帯電制御剤の含有量は、結着樹脂100〔重量部〕に対して、0.05〜15〔重量部〕の範囲内とすることが望ましく、より好ましい範囲は、0.1〜10〔重量部〕の範囲内である。
【0026】
処理剤は、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上のために添加され、シリカ、チタニア、又はアルミナ等を用いることができる。処理剤の含有量は、結着樹脂100〔重量部〕に対して、0.01〜10〔重量部〕とすることが望ましく、より好ましい範囲は、0.05〜8〔重量部〕である。
【0027】
〈白色(W)トナー〉
第1の実施形態で用いた白色トナーについて説明する。白色トナーとしては、結着樹脂としてポリエステル樹脂を100〔重量部〕と、トナーの帯電制御剤として、ボントロンE−84(BONTRON E−84)(商品名)(オリエント化学工業株式会社製)を1.0〔重量部〕と、着色剤として酸化チタンを95〔重量部〕と、離型剤として、「カルナウバワックス(CARNAUBA WAX)(商品名)」(カルナウバワックス1号粉末、株式会社加藤洋行製)を4.0〔重量部〕と、をヘンシェルミキサーにて混合した後、二軸押出機により溶融混練し、冷却後、直径2〔mm〕のスクリーンを有するカッターミルで粗砕化した後、衝突版式粉砕機を用いて粉砕し、更に風力分級機を用いて分級を行い、トナー母粒子を得た。
次に、得られたトナー母粒子を100〔重量部〕として、外添工程として疎水性シリカR972(商品名)(日本アエロジル株式会社製、平均粒径16〔nm〕)を3.0〔重量部〕加え、ヘンシェルミキサーで3分間攪拌を行うことで、平均粒径7.0〔μm〕の白色のトナーを得た。
この白色トナーでは、トナーの平均粒径は、粒度分布測定装置(コールターマルチサイザー3、ベックマン・コールター株式会社製、アパチャー径100〔μm〕)にて測定することができる。
【0028】
この白色トナーの粉体色相を測定したところ、(L*,a*,b*)色空間座標軸で、
L*=94.64、 a*=−1.25、 b*=2.94
であった。粉体色相は、分光色差計(日本電色工業株式会社製、SE−2000、光源(2度視野))によって測定することができる。粉体色相の測定に際しては、分光色差計に付属する粉体測定用セルにトナーを5g入れて測定を行った。
【0029】
また、白色トナーの緩み見掛け密度を測定したところ、0.60〔g/cm
3〕であった。トナーの緩み見掛け密度の測定は、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製、PT−S型、開き目710〔μm〕ふるい、100〔cc〕カップ)にて測定することができる。
【0030】
白色トナーの熱物性については、軟化温度Tswが81〔℃〕であり、白色トナーの流出開始温度Tfwが98〔℃〕であり、白色トナーの溶融温度Tmwが151〔℃〕である。
【0031】
トナーの各熱物性である軟化温度Ts、流出開始温度Tf、溶融温度Tmは、流動特性評価装置(株式会社島津製作所製、CFT−500D、トナー量1.0〔g〕、ダイ径1.0〔mm〕、ダイ長さ1.0〔mm〕、荷重10〔kg〕、開始温度50〔℃〕、予熱時間300〔sec〕、昇温速度3〔℃/min〕、昇温法)にて測定できる。トナーの各物性は、測定で得られた昇温法流動曲線において、軟化温度Tsは、内部空隙が消失し1つの相となる温度、流出開始温度Tfは、トナーが流動状態に変化する温度、溶融温度Tmは1/2法によって算出される温度である。
【0032】
〈シアン(C)トナー〉
第1の実施形態で用いたシアントナーについて説明する。シアントナーとしては、結着樹脂として、白色トナーとは熱特性の異なるポリエステル樹脂を用い、その結着樹脂を100〔重量部〕と、帯電制御剤としてボントロンE−84(オリエント化学工業株式会社製)を0.5〔重量部〕と、着色剤としてピグメントブルー15:3(商品名)を4.0〔重量部〕と、離型剤として、カルナウバワックス(商品名)(株式会社加藤洋行製、カルナウバワックス1号粉末)4.0〔重量部〕と、をヘンシェルミキサーにて混合した後、二軸押出機により溶融混練し、冷却後、直径2〔mm〕のスクリーンを有するカッターミルで粗砕化し、その後、衝突版式粉砕機を用いて粉砕し、更に風力分級機を用いて分級を行い、トナー母粒子を得た。
【0033】
次に、外添工程として、得られたトナー母粒子を100〔重量部〕に対し、疎水性シリカR972(商品名)(日本アエロジル株式会社製、R972、平均粒径16〔nm〕)を3.0〔重量部〕加え、ヘンシェルミキサーで3分間攪拌を行うことで、平均粒径7.0〔μm〕のシアン色のトナーを得た。トナーの緩み見掛け密度を測定したところ、0.35〔g/cm
3〕であった。このシアントナーを、シアントナー1と呼ぶ。
【0034】
シアントナー1の熱物性については、軟化温度Tscが80〔℃〕であり、トナーの流出開始温度Tfcが94〔℃〕であり、トナーの溶融温度Tmcが114〔℃〕であった。
【0035】
また、シアントナー1の製造方法と同様にして、配合する着色剤の種類を変えることで、ブラック色、マゼンタ色、イエロー色のトナーを得ることができる。
【0036】
〈ブラック(K)トナー〉
ブラックトナーには、着色剤としてカーボンブラックを用いている。得られたブラックトナーの平均粒径は7.0〔μm〕であり、緩み見掛け密度は0.35〔g/cm
3〕であった。このブラックトナーを、ブラックトナー1と呼ぶ。ブラックトナー1の熱物性については、軟化温度Tskが80〔℃〕であり、トナーの流出開始温度Tfkが94〔℃〕であり、トナーの溶融温度Tmkが114〔℃〕であった。
【0037】
〈マゼンタ(M)トナー〉
マゼンタトナーには、着色剤にナフトールを用いた。得られたマゼンタトナーの平均粒径は7.0〔μm〕であり、緩み見掛け密度は0.35〔g/cm
3〕であった。これをマゼンタトナー1と呼ぶ。マゼンタトナー1の熱物性については、軟化温度Tsmが81〔℃〕であり、トナーの流出開始温度Tfmが95〔℃〕であり、トナーの溶融温度Tmmは115〔℃〕であった。
【0038】
〈イエロー(Y)トナー〉
イエロートナーには、着色剤にイソインドリンを用いた。得られたイエロートナーの平均粒径は、7.0〔μm〕であり、緩み見掛け密度は、0.35〔g/cm
3〕であった。これを、イエロートナー1と呼ぶ。イエロートナー1の熱物性については、軟化温度Tsyが80〔℃〕であり、トナーの流出開始温度Tfyが94〔℃〕であり、トナーの溶融温度Tmyが114〔℃〕であった。
【0039】
なお、白色トナー以外の色のトナーである、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーをまとめてカラートナーと呼ぶ。
【0040】
〈トナーの付着量〉
第1の実施形態では、白色トナーの流出開始温度Tfが、定着時における媒体表面温度Mtよりも高くなるような、白色トナーを使用している。また、第1の実施形態では、白色トナー及びカラートナー(各単色現像剤)の付着量の良好である範囲は、カラートナーでは、0.4〜0.6〔mg/cm
2〕であり、より好ましくは、0.4〜0.5〔mg/cm
2〕である。また、白色トナーの好適な付着量は、0.8〜1.1〔mg/cm
2〕であり、より好ましくは、0.9〜1.1〔mg/cm
2〕である。
【0041】
《1−2》第1の実施形態の動作
次に、上述した構成を有するプリンタ11の動作について説明する。感光ドラム53は、モータなどの駆動手段により矢印D5方向に一定周速度で回転する。感光ドラム53の表面に接触して設けられた帯電ローラ45は、矢印D9方向に回転しながら、帯電ローラ用高圧電源によって供給される直流電圧を感光ドラム53の表面に印加し、この表面を一様に帯電させる。次に、感光ドラム53に対向して設けられたLEDヘッド47によって、画像信号に対応した光を感光ドラム53の一様均一に帯電された表面に照射し、光照射部分の電位を光減衰して静電潜像を形成する。トナー43は、図示しない供給ローラ用高圧電源によって電圧が印加され、
図1中の矢印D3方向に回転する供給ローラ41より、現像ローラ40に供給される。
【0042】
現像ローラ40は、感光ドラム53に密着して配置されており、現像ローラ用高圧電源によって電圧が印加されている。現像ローラ40は、供給ローラ41により搬送されたトナー43を吸着し、これを
図1中矢印D4方向に搬送する。この搬送過程で、供給ローラ41より下流側にあって現像ローラ40に圧接して配置された現像ブレード42は、現像ローラ40が回転することで現像ローラ40表面に付着したトナーから余分な部分を掻き取り、現像ローラ40表面にトナーの薄層を形成する。
【0043】
感光ドラム53と現像ローラ40間には、高圧電源によってバイアス電圧が印加されているため、現像ローラ40と感光ドラム53の間には、感光ドラム53に形成された静電潜像に伴う電界が発生する。このため、現像ローラ40上の帯電したトナーは、静電気力により感光ドラム53上の静電潜像部分に付着し、この部分を現像してトナー画像を形成する。なお、感光ドラム53の回転開始で始まるこの現像プロセスは、所定のタイミングで開始される。
【0044】
図1のように媒体カセット12に収容された媒体(例えば、記録紙)21は、媒体カセット12から媒体ガイドに沿って矢印D1方向に1枚ずつ取り出され、転写部19へと送られる。なお、上述した画像形成プロセスは、媒体21が矢印D1方向に搬送される間の所定のタイミングで開始される。
【0045】
その後、白色(W)の画像形成ユニット13の感光ドラム53と、転写ベルト33を介して圧接状態で対向して配置され、図示しない転写ローラ用高圧電源によって電圧が印加された転写ローラ27によって、転写ベルト33に静電吸着して搬送される媒体21上に、上記した現像プロセスによって感光ドラム53上に形成された白色のトナー画像を転写する転写プロセスが行われる。
【0046】
その後、媒体21は、転写ベルト33上を矢印D6方向に沿って進み、画像形成ユニット13及び転写ローラ27による現像プロセス及び転写プロセスと同様のプロセスによって、画像形成ユニット14と転写ローラ28によってブラックの現像剤画像が、画像形成ユニット15と転写ローラ29によってイエローの現像剤画像が、画像形成ユニット16と転写ローラ30によってマゼンタの現像剤画像が、そして画像形成ユニット17と転写ローラ31によってシアンの現像剤画像が、順次媒体21上に転写される。各色の現像剤画像が転写された媒体21は、
図1中矢印D2方向へと搬送される。
【0047】
各色のトナー画像が転写された媒体21は、発熱ローラ48と加圧ローラ49、加圧ベルト50へ搬送される。現像剤画像が転写された媒体21は、図示しない温度制御手段によって制御されて所定の表面温度に保たれ、矢印D11方向に回転する発熱ローラ48と、矢印D12方向に回転する加圧ローラ49、加圧ベルト50の間へ進む。そこで、発熱ローラ48の熱が媒体21上のトナー画像を溶融し、更に媒体21上で溶融したトナー画像を発熱ローラ48と加圧ローラ49、加圧ベルト50との圧接部で加圧することによりトナー画像が媒体21に定着する。
【0048】
トナー画像が定着した媒体21は、矢印D7方向に搬送され、プリンタ11の外部へと送出される。
【0049】
転写後の感光ドラム53の表面には、若干のトナーが残留する場合がある。この残留したトナーは、クリーニングブレード46によって除去される。
【0050】
また、連続通紙時の媒体21と次の媒体21の間では、各画像形成ユニット13〜17の感光ドラム53〜57から、一部の帯電不良のトナーが転写ベルト33に転写される場合がある。転写ベルト33に転写されたこのトナーは、転写ベルト33が矢印D6方向及び矢印D8方向に回転移動する際に、転写ベルトクリーニングブレード38によって転写ベルト33から除去されて廃棄トナータンク39に収容される。
【0051】
《1−3》試験1
上記に示すトナーを用いた画像形成装置において、通紙速度を200〔mm/sec〕に設定し、印刷媒体に透明フィルム(住友スリーエム株式会社製、OHP用紙、CG3720、A4サイズ、177〔g/m
2〕)を用いて、現像ローラ40及び供給ローラ41に印加する電源電圧を調節することで、画像形成ユニット13〜17におけるトナー現像量を制御し、印刷媒体上トナー付着量を調整する試験を行った。
画像形成ユニット14〜17の各色トナーにおいて、印刷媒体上のトナー付着量がそれぞれ、0.50〔mg/cm
2〕(=100〔%〕duty、duty=印刷密度、露光装置全照射時)になるよう設定した。また、画像形成ユニット13における印刷媒体上の白色トナー付着量は、カラートナーとの緩み見掛け密度の違いを考慮し、
0.86〔mg/cm
2〕
(=0.50〔mg/cm
2〕×(0.60〔g/cm
3〕/0.35〔g/cm
3〕))
になるよう設定した。
【0052】
画像形成装置の定着器20における定着温度は、媒体21を通過させる前のトナーを転写していない状態で定着器20を加熱し、露光装置から感光ドラムを露光させないようにして印刷時と同速度で透明フィルムを搬送させ、
図1のように定着直後(透明フィルム通過直後)の媒体表面温度Mt〔℃〕を測定した。表面温度測定装置60は、ポータブル型非接触温度計(ユーロトロン株式会社製、IRtecP500+Mk2、放射率0.95)にて矢印D9で示されるように、媒体21が発熱ローラ48と加圧ローラ49の接触部から排出後20〔mm〕の位置で測定し、定着直後の媒体表面温度Mtは、10枚の媒体についての測定値の平均値とした。その結果、発熱ローラ48の表面温度が155〔℃〕で、媒体表面温度Mtは、85〔℃〕であった。
【0053】
そして、次に、媒体上に白色トナーを転写し、その白色トナーの上層にカラートナーを転写するようにして、
図2に示すようなテストパターン(テストパターン1〜テストパターン4)を順に印刷した。
図2中の各位置(1)〜(4)における濁度(Haze値)を濁度計(日本電色工業株式会社製、Haze meter(ヘイズメータ)、NDH−2000)を用いて測定した。
Haze値は、全光線透過率Ttに対する拡散光透過率Tdの比であり、次式
Haze値〔%〕=(Td/Tt)×100
によって算出できる。
結果は、
図3に表1として示す。テストパターン1〜テストパターン4の測定結果から白色トナーの濁度は、いずれのカラートナーの濁度より大きく、白色トナー単色での画像濁度は、88〔%〕であり、カラートナーYMCKの濁度は、最大でも70〔%〕であった。また、白色トナーと重ねて印刷した場合、いずれも濁度は、白色トナー単色での濁度以上であった。
【0054】
この印刷された媒体において、印刷画像における下地の色の影響を確認するため、下台紙として色紙を敷いて色再現性を確認した。測定時に印刷した透明フィルムの印刷面とは、反対側面に下台紙として黒色紙(紀州製紙株式会社製、色上質紙、厚口、黒色、90〔g/m
2〕)、又は、青色紙(紀州製紙株式会社製、色上質紙、厚口、ブルー色、90〔g/m
2〕)を敷き、透明フィルム上各位置における色相を、XRite528(商品名)(エックスライト社製、D50光源(2度視野))にて測定した。測定結果は、
図4及び
図5に表2及び表3として示し、
図6にグラフで示している。
図6における黒丸「●」で示す点〈1〉は、台紙に黒色紙で白色トナーとの重ねが無いYMCRGBの各色の点、黒三角「▲」で示す点〈2〉は、台紙に黒色紙で白色トナーとの重ねが有るYMCRGBの各色の点、黒四角「■」で示す点〈3〉は、台紙に青色紙で白色トナーとの重ねが無いYMCRGBの各色の点、黒菱型「◆」で示す点〈4〉は、台紙に青色紙で白色トナーとの重ねが有るYMCRGBの各色の点である。
図6の結果より、点〈1〉と〈2〉、又は、点〈3〉と〈4〉の比較でYMCRGBの各色で白色トナーと重ねて印刷した場合に色再現範囲が大きくなり、良好な色再現結果が得られ、白色トナーを重ねて印刷していない場合、色再現範囲は、狭くなっている。特に、青色紙を台紙にしたときは、レッド色の色再現性が悪くなった半面、ブルー色の色再現性は、悪くなっていないことから透明フィルムの下に台紙として敷いた色つき紙の色の影響を大きく受けていると考えられる。
【0055】
また、ブラック(K)トナーに関しては、台紙が黒色紙のときの彩度
c*=(a*
2+b*
2)
1/2
より白色トナーとの重ね有無を比べるといずれも、c*=1.3で同じである。しかし、
台紙が青色紙のときは、白色トナー重ね無しで、c*=3.8、白色トナー重ね有りで、c*=2.9と、白色トナーと重ねた場合の方が彩度c*が小さく、ブラック(K)トナーは、より黒い色を再現できた。
【0056】
この結果から白色トナー単色での画像濁度を88〔%〕(
図3におけるWの値)以上、カラートナー単色での画像濁度を70〔%〕(
図3におけるY,M,C,Kの値)以下にし、白色(W)トナーの上にカラー(Y,M,C,K)トナーを重ねて印刷することで、透明フィルム上に色再現の良好で下地の色の影響が少ない印刷を得ることができる。
【0057】
次に、同測定箇所において、光沢度を、光沢度計(株式会社村上色彩技術研究所製、GM−26D、受光角75度)を用いて測定した。この結果より、カラー(Y,M,C,K)トナーの光沢度は、いずれも35〔%〕であり、良好な光沢度が得られた。カラー画像としては、光沢度25〔%〕以上、好ましくは、30〔%〕以上が望ましい。
【0058】
次に、定着器20の定着ローラ(加熱ローラ)48の表面温度を調整することで、定着直後の媒体表面温度Mtを変えた。
【0059】
定着ローラ表面温度が145〔℃〕のとき、定着直後の媒体表面温度Mtは、81〔℃〕であった。このとき、カラートナーの光沢度は、いずれも30〔%〕であり、良好な光沢度が得られた。
【0060】
定着ローラ表面温度が135〔℃〕のとき、定着直後の媒体表面温度Mtは、77〔℃〕であった。このとき、カラートナーの光沢度は、いずれも18〔%〕であり、光沢度は、不十分であった。
【0061】
定着ローラ表面温度が175〔℃〕のとき、定着直後の媒体表面温度Mtは、94〔℃〕であった。このとき、カラートナーの光沢度は、いずれも45〔%〕であり、良好な光沢度が得られた。
【0062】
定着ローラ表面温度が185〔℃〕のとき、定着直後の媒体表面温度Mtは、99〔℃〕であった。このとき、印刷媒体が定着直後の定着ローラから剥離時に、一部トナーが定着ローラに付着するホットオフセットが発生したため印刷画像上光沢性が不均一で画像不良となり、光沢度測定が不可能であった。
【0063】
光沢度の観点からは、定着直後の媒体表面温度Mtは、81〔℃〕以上94〔℃〕以下にすることで良好な光沢度が得られた。印刷媒体の表面定着温度をカラートナーの軟化温度Ts〔℃〕未満では、それぞれのトナー粒子の表面は、均一状態にならないが、軟化温度Ts〔℃〕以上で媒体上のトナー層が均一となるため定着したトナーの表面光沢性が高くなり、流出開始温度Tf〔℃〕より大きいと、媒体上トナーの内部凝集力が弱くなり、そのトナーの一部は、定着ローラに付着するようになるが、トナーの流出開始温度Tf以下では、媒体上のトナーは、ゴム状の状態であり、定着オフセットの発生しない範囲で定着することができる。
【0064】
《1−4》試験2
試験1において、白色トナーの製造で、白色トナー以外の色トナー(ブラックトナー1、シアントナー1、マゼンタトナー1、イエロートナー1)と同じポリエステル樹脂を用い、他は、同様にして白色トナーを製造した。得られた白色トナーの平均粒径は、7.0〔μm〕であり、緩み見掛け密度は、0.60〔g/cm
3]であった。これを、白色トナー2と呼ぶ。白色トナー2の熱物性については、軟化温度Tsw=82〔℃〕であり、トナーの流出開始温度Tfw=97〔℃〕であり、トナーの溶融温度Tmw=116〔℃〕であった。このとき白色トナーの粉体色相を測定したところ、(L*,a*,b*)色空間座標軸上の値は、
L*=94.51、 a*=−1.17、 b*=2.78であった。
試験1において、白色トナー1の代わりに白色トナー2を用いる以外は、同様にして、定着直後の媒体表面温度Mtを85〔℃〕に設定して印刷試験を行った。白色トナーの濁度は、70〔%〕であり、カラートナー並みであった。結果は、
図7及び
図8に表4及び表5として示し、
図9に(L*,a*,b*)色空間座標軸上のグラフで示すとおりである。
図6における黒丸「●」で示す点〈1〉は、台紙に黒色紙で白色トナーとの重ねが無いYMCRGBの各色の点、黒三角「▲」で示す点〈2〉は、台紙に黒色紙で白色トナーとの重ねが有るYMCRGBの各色の点、試験2の場合には、試験1の場合に比べ、色再現範囲が大きく狭まることが確認された。試験1と試験2から、白色トナーの濁度を大きくすることで、拡散光の割合が増え、下地の色の影響を受けにくくなる。上記結果からカラートナーの下に濁度が88〔%〕以上の白色トナーを下地として形成すれば、記録媒体の色味の影響を受けにくくすることができ、したがって上層のカラートナーの色再現性が良好になると考えられる。
【0065】
《1−5》試験3
試験1において、ブラック(K)トナー、シアン(C)トナー、マゼンタ(M)トナー、イエロー(Y)トナーの製造で、白色(W)トナー1と同じポリエステル樹脂を用い、他は、同様にして白色以外のトナーを製造した。得られたトナーの平均粒径は、それぞれ7.0〔μm〕であり、緩み見掛け密度は、それぞれ0.35〔g/cm
3〕であった。このときのトナーをそれぞれ、ブラックトナー2、シアントナー2、マゼンタトナー2、イエロートナー2と呼ぶ。
【0066】
熱特性は、ブラックトナー2において軟化温度Ts=82〔℃〕であり、トナーの流出開始温度Tf=97〔℃〕、トナーの溶融温度Tm=146〔℃〕であった。シアントナー2において軟化温度Ts=82〔℃〕であり、トナーの流出開始温度Tf=97〔℃〕、トナーの溶融温度Tm=146〔℃〕であった。マゼンタトナー2において軟化温度Ts=82〔℃〕であり、トナーの流出開始温度Tf=97〔℃〕、トナーの溶融温度Tm=146〔℃〕であった。イエロートナー2において軟化温度Ts=82〔℃〕であり、トナーの流出開始温度Tf=97〔℃〕、トナーの溶融温度Tm=146〔℃〕であった。上記トナーで印刷試験を行ったところ、いずれのトナーも単色で光沢度が11〔%〕以下と白色トナー1同様に光沢度は、低くなり、フルカラー印刷での画質が悪い結果となった。
【0067】
《1−6》試験4
試験1において、印刷媒体に青色紙(紀州製紙株式会社製、色上質紙、厚口、ブルー紙、90〔g/m
2〕)を用い、他は、試験1同様にして試験を行った。定着ローラ表面温度が165〔℃〕のとき、媒体表面定着温度は、85〔℃〕となった。このとき、色再現範囲は、
図10に示す表6、
図11に示すような結果となり、良好な色再現性が得られた。
図11における黒丸「●」で示す点〈1〉は、台紙に青色紙で白色トナーとの重ねが無いYMCRGBの各色の点、黒三角「▲」で示す点〈2〉は、台紙に青色紙で白色トナーとの重ねが有るYMCRGBの各色の点を示す。
【0068】
また、青色紙に替えて、黄色紙(紀州製紙株式会社製、色上質紙、厚ロ、黄色紙、90〔g/m
2〕)及び赤色紙(紀州製紙株式会社製、色上質紙、厚ロ、赤色紙、90〔g/m
2〕)でも同様に良好な色再現結果が得られた。
【0069】
《1−7》試験5
また、下記のトナーを用いたときの効果を確認した。
・白色(W)トナー: ヘイズ値=91.1〔%〕、 フローデータTsw=82〔℃〕、 Tfw=99〔℃〕、 Tmw=155〔℃〕、 グロス値=10.0、 粉体色相L*=80,1、 a*=−2.5、 b*=−3.1
・ブラック(K)トナー: ヘイズ値=59〔%〕、 フローデータTsk=70〔℃〕、 Tfk=84〔℃〕、 Tmk=101〔℃〕、 グロス値=39.9、 粉体色相K L*=14.0、 a*=−0.1、 b*=−1.3
・イエロー(Y)トナー: ヘイズ値=59〔%〕、 フローデータTsy=70〔℃〕、 Tfy=83〔℃〕、 Tmy=101〔℃〕、 グロス値=41.0、 粉体色相Y L*=89.3、 a*=−9.9、 b*=−108.2
・マゼンタ(M)トナー: ヘイズ値=60〔%〕、 フローデータTsm=71〔℃〕、 Tfm=84〔℃〕、 Tmm=102〔℃〕、 グロス値=40.1、 粉体色相M L*=38.0、 a*=63,2、 b*=7.9
・シアン(C)トナー: ヘイズ値=59〔%〕、 フローデータTsc=70〔℃〕、 Tfc=83〔℃〕、 Tmc=101〔℃〕、 グロス値=41.0、 粉体色相C L*=36.0、 a*=2.2、 b*=−50.3
【0070】
濁度が88〔%〕のトナーを用いると、透明フィルムに画像形成する際に良好な色再現性が実現することができる。そのため、上記のように濁度が91.1〔%〕のトナーを用いる場合にも、同様に透明フィルムに画像形成する際に良好な色再現性が実現することができる。一方で、濁度が70〔%〕以下のカラートナーを用いると高い光沢度を有し、かつ、良好な色再現性が実現することができる。そのため、上記のように濁度が約60〔%〕のトナーを用いる場合も同様に高い光沢度を有し、かつ、良好な色再現性が実現することができる。
白色トナーの濁度が88〔%〕以上、カラートナーの濁度が約70〔%〕以下であれば下地の色の影響を受けにくく、高い光沢画像を得ることができる。
【0071】
《1−8》第1の実施形態の効果
以上に説明したように、白色画像の濁度を、カラートナーによる画像の濁度よりも高くすることにより、下地の色の影響を受けにくく、高い光沢画像を得ることができる。言い換えれば、白色画像の濁度を相対的に高くすることにより、下地の色の影響を受けにくくすることができ、カラートナーによる画像の濁度を相対的に低くすれば、より高い光沢画像を得ることができる。より望ましくは、白色トナーの濁度を88〔%〕以上で、カラートナーの単色での濁度を70〔%〕以下にすれば、下地の色の影響を受けにくく、高い光沢画像を得ることができる。さらに望ましくは、カラートナーの軟化温度Ts〔℃〕以上、流出開始温度Tf〔℃〕以下の媒体定着表面温度を採用すれば、下地の色の影響を受けにくく、媒体の色などに制限が無く、且つ、高い光沢を持つ画像を得ることができる。
【0072】
《2》第2の実施形態
《2−1》第2の実施形態の構成
図12は、本発明に係る第2の実施形態の画像形成装置211を概略的に示す構成図である。
図12において、
図1(第1の実施形態)における構成要素と同一又は対応する構成要素には、同じ符合を付す。第2の実施形態の画像形成装置211は、シアントナー用画像形成ユニット17を記録媒体搬送方向の最上流側に配置し、白色トナー用画像形成ユニット13を記録媒体搬送方向の最下流側に配置した点が、第1の実施形態の画像形成装置と相違する。言い換えれば、第2の実施形態の画像形成装置211は、第1の実施形態の画像形成装置(プリンタ)11におけるシアントナー用画像形成ユニットと白色トナー用画像形成ユニットとを入れ替えた構成を有する。この相違点を除き、第2の実施形態の画像形成装置211は、第1の実施形態の画像形成装置11と同じである。
【0073】
《2−2》第2の実施形態の動作
第1の実施形態の試験1において、印刷媒体にアイロンプリント用紙(例えば、株式会社クイックアート製、淡色地用転写紙CR)を用いて、印刷速度を50〔mm/sec〕、媒体定着温度90〔℃〕に設定し、アイロンプリント用紙にカラートナーを転写させた後、白色トナーが最上層になるよう転写・印刷させた。印刷させた印刷紙を黒色のポリエステル製布地の上に重ね、プレス機にて170〔℃〕、20〔sec〕、500〔kg/cm
2〕にて、トナーをアイロンプリント用紙から布地へ転写させた。その結果、布地上にトナーが定着され、色再現性が良好な画像が得られた。
【0074】
また、画像形成ユニット13と画像形成ユニット17の位置を入れ替えない場合における試験1と同様の構成によって、アイロンプリントを実施したところ、布地上に白色トナーが最上層となり、全体的に白色画像となってしまい、色再現性が損なわれた。
【0075】
《2−3》第2の実施形態の効果
以上に説明したように、第1の実施形態の画像形成装置において、トナーカートリッジを入れ替えるだけで、アイロンプリント用紙への良好な印刷を実現することができる。
【0076】
《3》他の利用形態
第1及び第2の実施形態では、本発明をプリンタに適用した場合を説明したが、本発明は、ファクシミリ、複写装置、複合機(MFP、Multi Function Peripherals)などのような電子写真方式を用いる他の装置にも適用可能である。