特許第5847287号(P5847287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847287
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】高い熱伝導率を有するポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20151224BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20151224BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20151224BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20151224BHJP
   H01L 33/64 20100101ALI20151224BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K3/04
   C08K3/22
   C08J5/00
   H01L33/00 450
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-503090(P2014-503090)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2014-523449(P2014-523449A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】EP2012055821
(87)【国際公開番号】WO2012136590
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2013年11月5日
(31)【優先権主張番号】1152863
(32)【優先日】2011年4月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】キム, テギュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ヨンチュル
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−535876(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/107514(WO,A1)
【文献】 特開2009−292889(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0219381(US,A1)
【文献】 特表2010−534257(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0270577(US,A1)
【文献】 特開2009−084551(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0069483(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0217332(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
C08J 5/00
H01L 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、組成物の全重量に関して表わされる重量パーセントで、
a)ポリアミドマトリックスと、
b)2重量%〜0重量%のアルミナと、
c)20重量%〜50重量%のグラファイトと、
d)5重量%〜40重量%の難燃剤系と
を含んでなる組成物。
【請求項2】
組成物の全重量に関して、20重量%〜80重量%のポリアミドを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
20重量%〜40重量%のグラファイトを含んでなることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記グラファイトが、樹脂中のマスターバッチの形態で前記組成物に添加されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記難燃剤系が、リンを含んでなる難燃剤、窒素を含んでなる有機化合物型の難燃剤およびハロゲン化誘導体を含んでなる難燃剤よりなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤を含んでなることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記難燃剤系が、少なくとも1種のホスホン酸もしくはその塩、または1種のホスフィン酸もしくはその塩を含んでなることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
繊維充填材および/または非繊維充填材を含んでなることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物から得られる発光ダイオードに関連する部品。
【請求項9】
前記組成物を押出成形、成型または射出によって成形することによって製造される、請求項に記載の部品。
【請求項10】
少なくとも1つの発光ダイオードと、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物から得られる1つの部品とを含んでなる照明デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱伝導率を示し、特定の割合のアルミナおよびグラファイト、さらには難燃剤系を含んでなるポリアミドマトリックスをベースとする組成物に関する。この組成物は、特に、発光ダイオードを含んでなる照明デバイスのための部品を調製するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、成型および/または射出成型部品などの様々な物品の製造に広範囲に使用される合成ポリマーである。工業用ポリアミドは、剛性、衝撃強さ、特に比較的高温における寸法安定性、表面外観、密度および重量の特定の特性が特に望ましい、自動車車両、電気またはエレクトロニクス分野などの様々な分野において、多数の物品の調製に使用される。所与の用途のための材料の選択は、特定の特性に関して必要とされる性能のレベル、およびその費用によって一般に導かれる。実際に、性能および/または費用に関して必要条件を満たすことが可能な新規材料は常に求められている。
【0003】
従来技術から、様々な用途に良好な熱伝導率を示す工業用ポリアミドを、特に電気およびエレクトロニクス分野において、半導体、エンジン、または発光するか、もしくは光と相互作用する部品に使用される場合に使用することが知られている。そのように、発光ダイオード(LED)は、電流が通った時に発光することが可能な電子部品である。この電流は強い熱を生じ、過熱点と、それによって生じる損傷を防ぐため、分散することが望ましい。
【0004】
LEDを含んでなるそのような物品の調製のために、例えば、グラファイトまたは窒化ホウ素などのポリマーの熱伝導率を増加させることが可能な添加剤を使用することによって、ポリアミド製の部品を使用することが知られている。しかしながら、ポリアミド中でグラファイトを使用することによって、特に文献FR2596567号明細書に記載されるように、電気伝導率の強い増加も生じる。
【0005】
したがって、様々な用途のために、機械特性および難燃剤特性に関して良好な妥協を示すと同時に、高い熱伝導率および低い電気伝導率、すなわち、良好な電気絶縁を示すポリアミドをベースとする組成物を考案することが必要とされている。
【0006】
さらに、アルミナは、ポリアミド中で非常に高い割合で使用される場合、ある程度の熱伝導率を与えることが可能であることは知られていた。しかしながら、マトリックス中のアルミナのそのような割合によって、ポリアミド組成物の機械特性および流動学的特性の急激な悪化が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
出願人は、特定の割合のグラファイトとアルミナとの組み合わせが上記課題を解決することを可能にし、そして機械特性および難燃剤特性に関して良好な妥協を示すと同時に、高い熱伝導率および適切な電気伝導率を示すポリアミド組成物を得ることを可能にすることを実証した。
【0008】
このことは、グラファイトが上述のようにポリアミド中で熱伝導率および電気伝導率を増加させること、またアルミナ非常に高い割合で使用される場合、電気伝導率に影響を及ぼすことなく、熱伝導率を増加させること知られたので、驚くべきことである
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の第1の対象は、少なくとも、組成物の全重量に関して表わされる重量パーセントで、
a)ポリアミドマトリックスと、
b)2重量%〜30重量%のアルミナと、
c)15重量%〜50重量%のグラファイトと、
d)5重量%〜40重量%の難燃剤系と
を含んでなる組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ポリアミドマトリックスは、好ましくは熱可塑性ポリアミド、より好ましくは半結晶熱可塑性ポリアミドを含んでなる。特に半結晶脂肪族または半芳香族ポリアミドが好ましい。
【0011】
本発明のポリアミドは、特にPA6.6、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA10.6、PA12.12、PA4.6、MXD6またはPA92などの、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族または環式または脂環式またはアリール脂肪族ジアミンとの重縮合、あるいはポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドまたはポリアラミドなどの、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と、脂肪族または芳香族ジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、あるいはそれらのブレンドおよび(コ)ポリアミドからなる群から選択される。また本発明のポリアミドは、少なくとも1種のアミノ酸もしくはラクタムとそれ自体との重縮合によって得られるポリアミド、あるいはそれらのブレンドおよび(コ)ポリアミドからも選択可能であり、アミノ酸としては、例えば、PA6、PA7、PA11、PA12またはPA13などのラクタム環の加水分解開環によって生じるものも可能である。特に、コポリアミドの種類としてポリアミド6/6.6が記載されてよい。
【0012】
6型のポリアミドおよび6.6型のポリアミドは特に好ましい。6型のポリアミドは、特に、少なくとも90重量%のカプロラクタムまたはアミノカプロン酸モノマー残基を含んでなるポリアミドを意味するものとして理解される。6.6型のポリアミドは、特に、少なくとも90重量%のアジピン酸とヘキサメチレンジアミンモノマー残基とを含んでなるポリアミドを意味するものとして理解される。
【0013】
ポリアミドは、特に、6型ポリアミドに関して、1000秒−1の煎断速度で、250℃の温度で、ISO 11443規格に従って測定された、10〜1200Pa.秒、そして特に6.6型ポリアミドに関して、1000秒−1の煎断速度で、280℃の温度で、ISO 11443規格に従って測定された、10〜700Pa.秒の見かけの溶融粘度を示すことができる。
【0014】
特に、ポリアミドモノマーの重合の前または間あるいは溶融押出成形間に、特に、ポリアミドのモノマーまたはポリアミドと反応可能であるアミンまたはカルボン酸官能基を示す二官能性および/または単官能性化合物などの鎖長を変性するモノマーの添加によって、変動可能な分子量のポリアミドが使用されてよい。
【0015】
カルボン酸は、カルボン酸および例えば、酸無水物、酸塩化物またはエステルなどのそれらの誘導体を意味するものとして理解される。アミンは、アミンおよびアミド結合を形成することが可能なそれらの誘導体を意味するものとして理解される。
【0016】
重合の開始時、重合の間または重合終了時に、いずれの種類の脂肪族もしくは芳香族モノカルボン酸またはジカルボン酸、あるいはいずれの種類の脂肪族または芳香族モノアミンまたはジアミンアミンを使用することも可能である。
【0017】
非常に特に、様々な割合の他のポリアミドモノマーを任意に含んでなることができる、少なくともアジピン酸と、ヘキサメチレンジアミンまたはヘキサメチレンジアミンアジペートなどのそれらの塩とから得られるポリアミドが使用されてもよい。この目的のために、ポリアミド6.6/6.Tが記載されてよい。
【0018】
本発明によるポリアミドは、ブレンド、特に溶融ブレンドによって得られてもよい。例えば、ポリアミドをもう1種のポリアミドと、またはポリアミドをポリアミドオリゴマーと、またはポリアミドを、特に、ジアミン、ジカルボン酸、モノアミンおよび/またはモノカルボン酸などの鎖長を変性するモノマーとブレンドすることが可能である。特に、イソフタル酸、テレフタル酸または安息香酸をポリアミドに、例えば、約0.2重量%〜2重量%の含有量で添加することが可能である。
【0019】
本発明の組成物は、特に、上記ポリアミド、またはこれらのポリアミドのブレンドもしくは(コ)ポリアミドから誘導されるコポリアミドを含んでなることも可能である。
【0020】
特に、重合間に、ポリアミドモノマーの存在下で、アミン官能基またはカルボン酸官能基型の少なくとも3つの同一反応性官能基を含んでなる少なくとも1つの多官能基化合物をブレンドすることによって得られる高メルトフローの分枝状ポリアミドが使用されてもよい。
【0021】
高メルトフローのポリアミドとして、星型巨大分枝鎖と、適切であるならば、直鎖巨大分子鎖とを含んでなる星型ポリアミドが使用されてもよい。そのような星型巨大分子鎖を含んでなるポリマーは、例えば、国際公開第97/24388号パンフレットおよび国際公開第99/64496号パンフレットに記載されている。
【0022】
これらの星型ポリアミドは、特に、重合間に、ポリアミドモノマーの存在下で、アミノ酸もしくはカプロラクタムなどのラクタム、アミン官能基またはカルボン酸官能基型の少なくとも3つの同一反応性官能基を含んでなる少なくとも1つの多官能基化合物をブレンドすることによって得られる。カルボン酸は、例えば、カルボン酸および酸無水物、酸塩化物またはエステルなどのそれらの誘導体を意味するものとして理解される。アミンは、アミンおよびアミド結合を形成することが可能なそれらの誘導体を意味するものとして理解される。
【0023】
組成物は、本発明の変性されたポリアミドに加えて、1種またはそれ以上の他のポリマー、好ましくはポリアミドまたはコポリアミドを含んでなることが可能である。また組成物は、所望の最終特性次第で、本発明による変性されたポリアミドと、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリ乳酸樹脂、ポリスルホン樹脂、エラストマー樹脂またはこれらのブレンドなどの1種またはそれ以上の他のポリマーとの混合物を含んでなることができる。
【0024】
本発明の組成物は、組成物の全重量に関して、20重量%〜80重量%、好ましくは20重量%〜60重量%、より好ましくは25重量%〜55重量%のポリアミドを含んでなることが可能である。
【0025】
アルミナまたは酸化アルミニウムは、化学式Alの化合物であり、特に、0.1〜100μmの平均径を有する粒子の形態で供給されることが可能である。アルミナは、特に50μm未満の平均径を示すことができる。
【0026】
本発明による組成物は、好ましくは、2重量%〜20重量%のアルミナ、より好ましくは2重量%〜15重量%のアルミナを含んでなる。
【0027】
グラファイトは天然または人工由来であることが可能であり、フレーク、粉末、塊、粒子または凝集体の形態であることが可能である。グラファイト粒子の径は、0.1〜100μmであることが可能である。特に、文献、Plastics Additives,Hanser Publishers,4th Edition,1996に記載されるグラファイトが記載されてよい。
【0028】
グラファイトは、そのままで、または樹脂、例えば、ポリオレフィンをベースとする、エラストマーをベースとする、またはフェノール系樹脂中のマスターバッチの形態で使用することができる。
【0029】
本発明による組成物は、好ましくは、20重量%〜40重量%のグラファイト、より好ましくは20重量%〜35重量%のグラファイトを含んでなる。
【0030】
本発明による難燃剤系は、いずれの種類の難燃剤、すなわち、当業者に周知である火炎伝播を低減することが可能であり、そして/または難燃剤特性を有する化合物を含んでなることも可能である。これらの難燃剤は、難燃剤組成物で通常使用され、特に、例えば、参照として本明細書に引用される米国特許第6344158号明細書、米国特許第6365071号明細書、米国特許第6211402号明細書および米国特許第6255371号明細書に記載されている。
【0031】
都合よく、難燃剤系は、以下からなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤を含んでなる。
リンを含んでなる難燃剤、例えば、
−ホスフィンオキシド、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、トリ(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシドおよびトリ(3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)ホスフィンオキシド、
−ホスホン酸もしくはそれらの塩またはホスフィン酸もしくはそれらの塩、例えば、ホスフィン酸の亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムまたはマンガン塩、特にジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩またはジメチルホスフィン酸の亜鉛塩、
−環式ホスホネート、例えば、環式二リン酸エステル、例えば、Antiblaze 1045、
−有機ホスフェート、例えばトリフェニルホスフェート、
−無機ホスフェート、例えば、アンモニウムポリホスフェートおよびナトリウムポリホスフェート、
−赤リン、例えば、安定化されたか、またはコーティングされた形態、粉末として、またはマスターバッチの形態。
窒素を含んでなる有機化合物型の難燃剤、例えば、トリアジン、シアヌル酸および/またはイソシアヌル酸、メラミンまたはその誘導体、例えば、メラミンシアヌレート、メラミンオキサレート、フタレート、ボレート、スルフェート、ホスフェート、ポリホスフェートおよび/またはピロホスフェート、縮合メラミン生成物、例えば、メレム、メラムおよびメロン、トリ(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ベンゾグラナミン、グアニジン、アラントインおよびグリコールウリル。
ハロゲン化誘導体を含んでなる難燃剤、例えば、
−臭素誘導体、例えば、PBDPO(ポリブロモジフェニルオキシド)、BrPS(ポリブロモスチレンおよび臭素化ポリスチレン)、ポリ−(ペンタブロモベンジルアクリレート)、臭素化インダン、テトラデカ−ブロモジフェノキシベンゼン(Saytex 120)、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタンまたはAlbemarleからのSaytex 8010、テトラブロモビスフェノールAおよび臭素化エポキシオリゴマー。特に、臭素化誘導体の中でも、ポリジブロモスチレン、例えば、ChemturaからのPDBS−80、臭素化ポリスチレン、例えば、AlbemarleからのSaytex HP 3010またはDead Sea Bromine GroupからのFR−803P、デカブロモジフェニルエーテル(DBPE)またはDead Sea Bromine GroupからのFR−1210、オクタブロモジフェニルエーテル(OBPE)、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンまたはDead Sea Bromine GroupからのFR−245、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)またはDead Sea Bromine GroupからのFR−1025、およびテトラブロモビスフェノールAのエポキシ末端オリゴマーまたはポリマー、例えば、Dead Sea Bromine GroupからのF−2300およびF2400が記載されてよい。
−塩素化化合物、例えば、塩素化脂環式化合物、例えば、Dechlorane Plus(登録商標)(OxyChemによって販売される。CAS 13560−89−9を参照のこと)。
【0032】
難燃剤系は、好ましくは、少なくとも1種のホスホン酸もしくはその塩、または1種のホスフィン酸もしくはその塩を含んでなる。
【0033】
これらの化合物は、単独で、または組み合わせて、時には相乗作用を引き起こして使用することができる。特に、ホスフィンオキシド、ホスホン酸もしくはそれらの塩、またはホスフィン酸もしくはそれらの塩、および環式ホスホネートなどのリンを含んでなる化合物と、メラム、メレム、メラミンホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラミンピロホスフェートまたはアンモニウムポリホスフェートなどの窒素を含んでなる誘導体との相乗作用を生じる組み合わせが好ましい。
【0034】
組成物は、特に、ホスフィン酸またはそれらの塩などのリンを含んでなる難燃剤の使用において、組成物の全重量に関して、5重量%〜20重量%の難燃剤を含んでなることができる。
【0035】
組成物は、例えば、繊維充填材および/または非繊維充填材などの強化充填材またはバルキング充填材を含んでなることができる。繊維充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、天然繊維、アラミド繊維およびナノチューブ、特に炭素ナノチューブが記載されてよい。天然繊維としては、麻および亜麻が記載されてよい。特に、非繊維充填材の中では、全ての微粒子または薄板状充填材、および/または剥離可能もしくは剥離不可のナノ充填材、カーボンブラック、アルミノシリケート粘土、モンモリロナイト、ジルコニウムホスフェート、カオリン、炭酸カルシウム、珪藻土、マイカ、シリカ、二酸化チタン、ゼオライト、タルク、ウォラストナイト、ポリマー充填材、例えば、ジメタクリレート粒子、ガラスビーズまたはガラス粉末が記載されてよい。強化充填材の重量による濃度は、組成物の全重量に関して、都合よく、1重量%〜50重量%、好ましくは15重量%〜50重量%であることができる。
【0036】
本発明の組成物は、成型または押出成形された物品の製造のために使用されるポリアミドをベースとする組成物で通常使用されるいずれかの添加剤を含んでなることもできる。したがって、添加剤の例として、熱安定剤、U.V.安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、顔料、染料、可塑剤または衝撃強さ変性剤が挙げられてよい。例として、酸化防止剤および熱安定剤は、例えば、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化銅、立体障害型フェノール化合物または芳香族アミンである。U.V.安定剤は、一般にベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンまたはHALSである。
【0037】
衝撃強さ変性剤の種類に関する限定はない。それは一般に、この目的のために使用することができるエラストマーポリマーである。適切なエラストマーの例は、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/プロピレン/無水マレイン酸コポリマーまたはEPDM(エチレン/プロピレン/ジエンモノマー)コポリマーであって、任意にグラフト化された無水マレイン酸を有するものである。エラストマーの重量による濃度は、組成物の全重量に関して、都合よく0.1%〜15%である。
【0038】
本発明の組成物は、一般に、一軸または二軸押出機で、ポリアミド樹脂を溶融媒体として保持するために十分な温度で、様々な成分をブレンドすることによって得られる。一般に、得られたブレンドはロッドの形態で押出成形され、これを切断して、顆粒を形成する。グラファイトおよびアルミナなどの添加剤は、一緒に、または別々に、加熱条件下または冷却条件下でブレンドすることによってポリアミドに添加することができる。
【0039】
化合物および添加剤の添加は、純粋な状態で、または例えばポリアミド樹脂などの樹脂中の濃縮ブレンドの形態で、これらの化合物を溶融ポリアミドに添加することによって実行することができる。
【0040】
得られる顆粒は、射出、射出成型、押出成形および押出成形−吹込み成型プロセスなどの物品製造のための供給プロセスに出発材料として使用される。本発明による物品は、特に、押出成形または射出物品であることができる。
【0041】
本発明は、例えば、シートおよび膜の押出成形または押出成形−吹込み成型などの押出成形、例えば、圧縮成型、熱成型または回転成型などの成型、あるいは、例えば、射出成型または射出−吹込み成型などの射出などのいずれかのプラスチック変換技術によって、本発明の組成物を成形することによって得られる物品に関する。
【0042】
したがって、本発明の組成物は、特に、遮断器、スイッチ、コネクタなどの部品などの電気的または電子的接続の分野で使用される物品の製造のために適切である。
【0043】
本発明の組成物は、特に、パッケージ、ハウジング、支持体、反射器、ケース、ふた、ソケット、基部またはその他のものなどの発光ダイオードと関連する部品、あるいはそれによって運転中の発光ダイオードから生じる熱量を放出することが可能となる半導体またはその他のものと関連する部品の製造に適切である。これらの部品は、特に押出成形、成型または射出によって、本発明による組成物を成形することによって製造される。
【0044】
本発明のもう1つの対象は、少なくとも1つの発光ダイオードと、上記ポリアミド組成物から得られる1つの部品とを含んでなる照明デバイスである。本発明は、特に、少なくとも1つの発光ダイオードと、上記ポリアミド組成物から得られる1つの部品とを含んでなるダイオードランプまたは半導体発光供給源に関する。好ましくは、LEDはハイパワーLEDであり、それぞれ10Wを超える電力を有する。LEDは、好ましくは、半導体材料の全く同一のウエハ上で製造される。
【0045】
本発明の原理の理解を促進するために、特有の言い回しが説明に使用される。それにもかかわらず、この特有の言い回しを用いることによって、本発明の範囲の限定が想定されないことを理解すべきである。関連する技術的分野に精通する当業者は、一般知識に基づいて、修正および改善を特に想定することができる。
【0046】
「および/または」という用語は、「および」、「または」、およびこれらの用語に関連する要素の全ての他の可能な組み合わせ意味するものを含む。
【0047】
本発明の他の詳細または利点は、純粋に指示のために以下に示される実施例に照らして、より明確に明白になる。
【実施例】
【0048】
実験項
実施例1:組成物の調製
使用された化合物:
−Technyl(登録商標)27 A00の名称のもと、Rhodia Engineering Plasticsによって販売されている、2.7の相対粘度を有する(規格ISO 307に従って、溶媒として硫酸を使用する)ポリアミド6.6
−マスターバッチ:20重量%のフェノール−ホルムアルデヒド/80重量%のグラファイト
−アルミナ(酸化アルミニウム)KAM
−Owens Corning VetrotexからのOCV 983ガラス繊維
−難燃剤系:ClariantからのExolit(登録商標)OP1230およびメラミンポリホスフェートMelapur(登録商標)200
−調合物添加剤:熱安定剤および潤滑剤。全調合物の0.2重量%。
【0049】
様々な割合の添加剤および充填剤と含んでなる組成物を製造するために、ポリアミドおよび様々な添加剤を、押出成形によって、二軸押出機によってブレンドする(バレル温度:250〜290℃、流速:30kg/時間、回転:250rpm)。次いで、最終組成物を押出成形し、顆粒化し、次いで、射出成型する。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
測定は、以下の規格に従って実行された:
−規格ASTM D−256に従うIzod衝撃強さ
−規格ASTM D638に従う最終曲げ強さおよび曲げ弾性率
−規格ASTM D257に従う表面抵抗率(Standard Test Methods for DC Resistance or Conductance of Insulating Materials)
−規格ASTM E1461に従う熱伝導率(Standard Test Method for Thermal Diffusivity by the Flash Method)。
【0052】
したがって、ポリアミド組成物中の高い割合のグラファイトおよび低い割合のアルミナの本発明による組み合わせによって、機械特性、電流に対する抵抗率特性および熱伝導率特性においてユニークな妥協を得ることが可能となり、これによって、この組成物が、半導体または発光ダイオードに関連する用途のための物品製造に関して適切となることは明らかである。