(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847300
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】電動機用スラストワッシャ
(51)【国際特許分類】
F16C 17/04 20060101AFI20151224BHJP
H02K 5/24 20060101ALI20151224BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
F16C17/04 Z
H02K5/24 B
F16C33/20 A
F16C33/20 Z
【請求項の数】12
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-510703(P2014-510703)
(86)(22)【出願日】2012年3月20日
(65)【公表番号】特表2014-516140(P2014-516140A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】EP2012054908
(87)【国際公開番号】WO2012156133
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2013年11月18日
(31)【優先権主張番号】102011076081.4
(32)【優先日】2011年5月18日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ヴィンクラー
(72)【発明者】
【氏名】レーナ ベヘルファー
(72)【発明者】
【氏名】ディーター シューラー
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト キュンツェル
【審査官】
久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05683184(US,A)
【文献】
実開平04−056911(JP,U)
【文献】
米国特許第06707177(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/04
F16C 33/20
H02K 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機(10)用スラストワッシャ(28)であって、
前記スラストワッシャ(28)は、軸受(18)とロータ(14)との間でシャフト(16)上に配置されており、かつ、2つの端面(32,34)を含む封止領域を有しており、さらに、各端面(32,34)に、前記軸受(18)ないし前記ロータ(14)に対する少なくとも1つのラジアル支承部(50,52)をそれぞれ有する、
スラストワッシャ(28)において、
前記スラストワッシャ(28)は、少なくとも1つの硬性部材(54)および軟性部材(56)から形成されており、前記ラジアル支承部(50,52)のうち前記ロータ(14)および前記軸受(18)に接する部分が前記軟性部材(56)によって形成されている、
ことを特徴とするスラストワッシャ(28)。
【請求項2】
前記スラストワッシャ(28)は、前記軸受(18)と、ブラシ(38)からの力を受けて回転する前記ロータ(14)の電気コンタクト素子(24)および/または前記ロータ(14)の円板パケット(36)との間に配置されている、請求項1記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項3】
前記スラストワッシャ(28)は、前記軸受(18)へ潤滑剤を戻す潤滑剤戻し領域(44)を有しており、
前記ラジアル支承部(50,52)は、前記シャフト(16)の軸方向で離間した少なくとも2つの平面(60,62)を有しており、第1の平面(60)は前記ラジアル支承部(52)のうち前記軸受(18)ないし前記ロータ(14)に接する部分(58)によって形成されており、少なくとも1つの第2の平面(62)は前記第1の平面(60)と前記潤滑剤戻し領域(44)との間に配置されており、前記第2の平面(62)は前記軟性部材(56)および前記硬性部材(54)の双方から成る、請求項1または2記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項4】
前記潤滑剤戻し領域(44)は前記硬性部材(54)のみから成る、請求項3記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項5】
前記軟性部材(56)および前記硬性部材(54)は、前記シャフト(16)の軸方向で、前記第1の平面(60)と前記潤滑剤戻し領域(44)との間の前記第2の平面(62)上に配置されている、請求項3または4記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項6】
前記軟性部材(56)および前記硬性部材(54)は、前記シャフト(16)の軸方向で、前記第1の平面(60)と前記潤滑剤戻し領域(44)との間に、相互に離間して配置されており、前記硬性部材(54)は前記第1の平面(60)に平行な方向で前記軟性部材(56)よりも広い幅で延在しているが、前記シャフト(16)の軸方向において、前記硬性部材(54)よりも前記第1の平面(60)の方が突出するように形成されている、請求項3または4記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項7】
前記軟性部材(56)は、その内径において、各ラジアル支承部(50,52)間のシャフト側の軸方向に広がっている領域(64)の全体を取り囲むように構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項8】
前記硬性部材(54)および前記軟性部材(56)は同じ材料から形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項9】
前記硬性部材(54)および前記軟性部材(56)はハイトレル(R)から形成されている、請求項8記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項10】
前記スラストワッシャ(28)は一体型に構成されている、請求項8または9記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項11】
前記硬性部材(54)の硬度と前記軟性部材(56)の硬度とは少なくともショアD=5異なる、請求項1から10までのいずれか1項記載のスラストワッシャ(28)。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載のスラストワッシャ(28)を少なくとも1つ備えていることを特徴とする電動機(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念記載の電動機用スラストワッシャに関する。こうしたスラストワッシャは、軸受と、ロータ、特に、ブラシからの力を受けて回転する電気コンタクト素子および/またはロータの円板パケットとの間の、シャフト上に、配置可能である。スラストワッシャは、2つの端面を含む封止領域と、各端面に配置される軸受ないしロータに対する少なくとも1つのラジアル支承部とを有している。
【0002】
従来技術
通常、ヒータおよびエアコンディショナーのモータとして用いられる電動機は、雑音に関する高い要求を満足しなければならない。雑音への大きな影響は、電動機に存在する、通常数10分の1ミリメートル長さの遊びに動作中に励起される、いわゆる電機子縦揺れ(電機子の長手方向振動)である。電動機にはいわゆるスラストワッシャが設けられており、このスラストワッシャは、静止しているスライド軸受と回転する電機子もしくはロータとの間に配置され、摩擦耐性、表面特性、耐用期間などの、摩擦を低減する材料特性を有する。同様に、耐用期間、すなわち摩擦耐性に対する高い要求に基づいて、材料(通常はポリエステルエラストマーなどの弾性を有するプラスティック材料)は、低い固有弾性を有する。また、シャフトディスクもしくはシャフトリングを組み込むことも公知である。これらは静止している部材と回転している部材との接触部においてのみ機能する。
【0003】
スラストワッシャの弾性および緩衝性を所望に応じて選定することにより、軸方向の励振を補正でき、動作中に振動を緩衝して雑音が発生しないようにすることができる。独国出願第102004044340号明細書からは、例えば、上述した形式の電動機用スラストワッシャであって、2つの端面の当接部分がスラストワッシャに設けられたばね部材を介して相互に接続されているものが公知である。
【0004】
ここで、本発明の課題は、コストを低減しつつ、既存のスラストワッシャに比べて電機子縦揺れの減衰を改善でき、雑音励振をいっそう低減できる電動機用スラストワッシャを提供することである。
【0005】
発明の利点
本発明の請求項1の特徴を有する電動機用スラストワッシャは、付加的部材(例えばシャフトリングなど)を用いることなく、電機子縦揺れの減衰が改善され、雑音励振が低減されるという利点を有する。また、高い摩擦耐性および簡単な機械的構造が達成される。このために、本発明のスラストワッシャは、少なくとも1つの硬性部材および軟性部材から形成されており、ラジアル支承部のうち電動機のロータおよび/または軸受に接する部分が軟性部材によって形成されている。こうした構成により、動作中、大きな軸方向力が硬性部材に収容され、一方、電機子縦揺れに対して軟性部材が反対に作用するので、相応に励振が防止される。
【0006】
本発明の別の利点は、従属請求項および図面ないし以下の説明に記載されている特徴から得られる。
【0007】
ラジアル支承部は、さらに、シャフトの軸方向で離間された少なくとも2つの平面を有し、第1の平面はラジアル支承部のうち軸受ないしロータに接する部分によって形成され、少なくとも1つの第2の平面は第1の平面と潤滑剤戻し領域との間に配置され、この第2の平面が軟性部材および硬性部材の双方から成る。こうした配置により、弾性領域(軟性部材として構成された第1の平面)にかかる力が確実に吸収され、減衰特性が著しく改善される。ここで、第2の平面の硬性部材は、高い軸方向力がかかった場合の第1の平面の軟性部材の損傷を効果的に防止する。このために、有利には、軟性部材および硬性部材は、シャフトの軸方向で、第1の平面と潤滑剤戻し領域との間の第2の平面上に配置される。これに代えて、軟性部材および硬性部材が、シャフトの軸方向で、第1の平面と潤滑剤戻し領域との間に相互に離間して配置され、硬性部材が第1の平面の方向では軟性部材よりも広い幅で延在するが、第1の平面のレベルよりも下方にとどまるように構成してもよい。このようにすれば、軸方向で定義された係止が達成され、軟性部材による減衰が保証される。
【0008】
軸受からロータ、特に整流子へ向かう方向でのオイル漏れに対して付加的な密閉部を設ける必要性を回避するために、有利には、軟性部材は、その内径において、有利には2つのラジアル支承部間のシャフト側で軸方向に延在している領域の全体を取り囲むように構成される。
【0009】
本発明の別の有利な実施形態では、硬性部材および軟性部材は同じ材料、例えばハイトレル
(R)から形成されている。このようにすれば、スラストワッシャを一体型に構成でき、硬性部材および軟性部材の硬度(ショアDで表される)を少なくともショアD=5異ならせることができる。こうして、例えば2種のハイトレル
(R)材料(または同等の固有減衰率、摩擦耐性および熱耐性を有する材料)を使用することにより、軸方向の剛性、ひいては、軸方向の減衰率を低減することができる。
【0010】
図面
本発明を以下に
図1,
図2の実施例に則して説明する。図中、同じ機能を有する素子には同じ参照番号を付してある。図、実施例の説明および特許請求の範囲は、組み合わされた多くの特徴を含む。なお、当業者は、本発明の各特徴を、単独で考察することも任意に組み合わせて考察することもできる。特に、当業者は、種々の実施例の特徴を組み合わせて別の有利な実施例とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【0012】
実施例の説明
図1には、従来技術の回転式電動機10の一部が断面図で示されている。電動機10は車両内で例えばパワーウィンドウ機構やワイパ駆動機構のほか、有利にはヒータ機構やファン機構などで用いられるエレクトロモータ12であるが、ジェネレータであってもよい。
【0013】
エレクトロモータ12は、シャフト16に配置されている巻き回されたロータ14を含む。シャフト16は2つの軸受18によって支承されている。この実施例では、軸受18は焼結されてオイルに浸漬されている球面軸受ないしスライド軸受である。ただし、球軸受その他の軸受18も利用可能である。軸受18はそれぞれエレクトロモータ12のケーシング20の2つの端面に存在する軸受シールド22に配置されている。
【0014】
軸受18と電気コンタクト素子24として用いられる整流子26との間の、シャフト16上に、このシャフト16に対する収容孔30を備えたスラストワッシャ28が配置されている。スラストワッシャ28は、有利には、第1の端面32で軸受18に接しており、第2の端面34で整流子26に接しており、有利には、シャフト16上に押圧位置を有している。この押圧位置により、シャフト16上で封止が達成される。他の軸受18とロータ14もしくは円板パケット36ないし円板パケット36の絶縁板の折り返し部37との間には、第2のスラストワッシャ28が配置されている。ただし、第2のスラストワッシャ28は省略してもよいし、他の形状のワッシャを設けてもよい。1つまたは2つのスラストワッシャ28を介して、ロータはシャフト16の軸方向で軸受18に支持される。
【0015】
整流子26に代え、電気コンタクト素子24としてジェネレータのコレクタが設けられていてもよい。どちらのケースでも、電気コンタクト素子24の電気コンタクトは、ブラシ筒40にガイドされるブラシ38を介して行われる。ここで、ブラシ筒40は固定用ラッチを介して電動機10のブラシ支持体42に固定されている。
【0016】
図2には本発明のスラストワッシャ28の拡大図が示されている。このスラストワッシャ28は軸受18へ潤滑剤を戻す潤滑剤戻し領域44を有している。このために、スラストワッシャ28は、軸受18のうちスラストワッシャ28に面する端面46の上方に、リング状に延在している(
図1を参照)。スラストワッシャ28はその外縁に軸方向で突出するエッジ48を有しており、これによって、潤滑剤、例えばオイルが再び軸受18へ戻される。さらに、エッジ48は整流子26を潤滑剤から保護する。これに代えて、リング状領域44を円錐状もしくは湾曲状に構成することもできる。このようにすれば、
図1に示されているように、リング状領域44が軸受18の上方に冠状に延在することになり、オイルの戻り流を調整することができる。同様に、スラストワッシャ28は、リング状領域44のうち軸受18に面する側に、潤滑剤を戻すための、軸方向に周で取り巻く別の突出部を有してもよいが、このことについてはこれ以上詳しくは立ち入らない。重要なのは、ステータ、特に整流子26を軸受18のオイル流に対して密閉する密閉領域が設けられることである。
【0017】
スラストワッシャ28の第1の端面32には軸受18に対するラジアル支承部50が形成されており、スラストワッシャ28の第2の端面34にはロータ14に対するラジアル支承部54が形成されている。ロータ14ないし電機子は、支承部52に直接に載置されるか、または、整流子26を介して配置される。本発明によれば、スラストワッシャ28は少なくとも1つの硬性部材54および軟性部材56から成り、支承部52のうちロータ14に接する部分は軟性部材56によって形成されている。この部分はさらにロータ14を載置するための個々の円弧部分58に分割されている。
【0018】
支承部52は、シャフト16の軸方向で離間した2つの平面60,62を有しており、第1の平面60は支承部52のうちロータ14に接する円弧部分58によって形成されている。第2の平面62は、第1の平面60と潤滑剤戻し領域44との間に配置されており、軟性部材56および硬性部材54の双方から成っている。対して、潤滑剤戻し領域44は硬性部材54のみから成っている。こうした配置によって、弾性領域(すなわち軟性部材56として構成された第1の平面60)にかかる力が吸収され、減衰特性が著しく改善される。第2の平面62の硬性部材54は、ここでは、高い軸方向力がかかった場合の第1の平面60の軟性部材56の損傷を防止する。
【0019】
図2からは、第2の平面62の硬性部材54および軟性部材56が軸方向で同じレベルに配置されていることがわかる。これに代えて、2つの部材54,56がシャフト16の軸方向で相互に離間して配置され、硬性部材54が第1の平面60の方向で軟性部材56よりも広く延在するが、第1の平面60のレベルよりも下方にとどまるように構成してもよい。このようにすれば、軸方向で定義された係止が達成され、軟性部材56による減衰が保証される。
【0020】
軸受18からロータ14、特に整流子26へ向かう方向でのオイル漏れに対して付加的な密閉部を設ける必要性を回避するために、有利には、軟性部材56は、その内径において、有利には2つのラジアル支承部50,52間のシャフト側で軸方向に延在している領域64の全体を取り囲むように構成される。
【0021】
特に有利には、硬性部材54および軟性部材56は同じ材料、例えばハイトレル
(R)から形成される。この手段により、スラストワッシャ28を一体型に構成でき、硬性部材54および軟性部材56の硬度(ショアDで表される)を少なくともショアD=5異ならせることができる。こうして、2種のハイトレル
(R)材料を使用することにより、軸方向の剛性、ひいては、軸方向の減衰率を著しく低減することができる。2種のハイトレル
(R)材料の例として、Hytrel4056TPC-ET(ショアD=最大40)から成る2K輪郭を有するHytrel5555HS(ショアD=55±2)、または、同等の固有減衰率、摩擦耐性および熱耐性を有する材料が挙げられる。
【0022】
さらに指摘したいのは、実施例は
図1,
図2のものに限定されず、電動機10内の使用状態ないし配置状態が図と異なっていてもよいということである。さらに、本発明のスラストワッシャ28と電動機10内の他の要素(特に軸受18およびロータ14)との図示の寸法比も本発明にはさほどの影響を与えない。相応のことは、第1の平面60の円弧部分58や第2の支承部52の第2の平面62の硬性部材54および軟性部材56の形状および大きさにも当てはまる。またこれに代えてまたはこれに加えて、第1の支承部50が第2の支承部52の構造を有してもよいことを指摘しておく。