特許第5847316号(P5847316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5847316初期ロック状態、中間始動準備状態および薬剤送達状態を有する医療用送達装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847316
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】初期ロック状態、中間始動準備状態および薬剤送達状態を有する医療用送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20151224BHJP
【FI】
   A61M5/20
【請求項の数】23
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-533241(P2014-533241)
(86)(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公表番号】特表2014-527894(P2014-527894A)
(43)【公表日】2014年10月23日
(86)【国際出願番号】SE2012050961
(87)【国際公開番号】WO2013048310
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年5月23日
(31)【優先権主張番号】1150883-5
(32)【優先日】2011年9月27日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】61/539,650
(32)【優先日】2011年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503211493
【氏名又は名称】エス・ホー・エル・グループ・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】SHL GROUP AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル,マティアス
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/033790(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/112136(WO,A1)
【文献】 特表2008−521482(JP,A)
【文献】 特表2012−502761(JP,A)
【文献】 特表2013−521858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期ロック状態、中間始動準備状態および薬剤送達状態を有する薬剤送達装置であって、
近位端(11)および遠位端(12)を有するハウジング(10)と、
前記ハウジング(10)内に配置された薬剤容器ホルダ(20)と、
前記ハウジング(10)内に配置されたプランジャロッド(40)と、
前記ハウジング(10)および前記プランジャロッド(40)に対して回転可能なプランジャロッキング手段(60)とを備え、前記プランジャロッキング手段(60)は、前記薬剤送達装置の初期ロック状態において前記プランジャロッド(40)を初期ロック位置に保持し、前記プランジャロッド(40)をその初期ロック位置から前記薬剤送達装置の近位端の方に中間始動準備位置まで解放し、前記プランジャロッド(40)を前記中間始動準備位置に保持し、前記プランジャロッド(40)をその中間始動準備位置から前記薬剤送達装置の前記近位端の方に最終送達位置まで解放するように構成され、前記薬剤送達装置はさらに、
少なくとも前記ハウジング(10)の近位部に摺動可能に配置されたシールドスリーブ(70)と、
前記シールドスリーブ(70)に結合された第1の弾性部材(80)と、
前記薬剤容器ホルダ(20)に接続された、前記ハウジング(10)の前記近位端(11)におけるキャップアセンブリ(90)とを備え、前記キャップアセンブリ(90)は、取外し可能な外側キャップ(91)を備え、前記薬剤送達装置はさらに、
前記薬剤送達装置の前記初期ロック状態にロックされる投与量設定機構(100)を備え、
前記初期ロック位置において、前記シールドスリーブ(70)は、前記薬剤送達装置の前記近位端の方に第2の位置まで軸方向に移動可能である状態から前記外側キャップ(91)によってロックされ、
前記シールドスリーブ(70)は、前記外側キャップ(91)を取外した際に前記第1の弾性部材(80)によってその第2の位置に移動されると、前記プランジャロッキング手段(60)によって前記第2の位置にロックされ、
前記シールドスリーブ(70)がその第2の位置に移動することにより、前記投与量設定機構(100)が解放され、
前記投与量設定機構(100)による投与量設定は、その第2の位置での前記シールドスリーブ(70)のロッキングを解放し、このようにして薬剤送達の実行が可能になる、薬剤送達装置。
【請求項2】
前記シールドスリーブ(70)がその第2の位置に移動することにより、前記プランジャロッキング手段(60)が回転して、前記プランジャロッド(40)をその初期ロック位置からその中間始動準備位置に解放する、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記薬剤容器ホルダ(20)は、薬剤容器(30)を収容するように構成され、前記薬剤容器(30)は、前記薬剤容器(30)内に封止的におよび摺動可能に配置された栓(31)を有する、請求項1または2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記プランジャロッド(40)は、その近位端(41)が前記栓(31)と接触可能である状態で配置される、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記プランジャロッド(40)に結合された第2の弾性部材(50)をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記シールドスリーブが送達箇所に押し付けられた際に前記シールドスリーブ(70)が前記薬剤送達装置の遠位端の方に軸方向に移動することにより、前記プランジャロッキング手段(60)が回転移動を実行するように、前記シールドスリーブ(70)および前記プランジャロッキング手段(60)は動作的に接続される、請求項1から5のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記プランジャロッキング手段(60)の前記回転移動により、前記プランジャロッド(40)がその始動準備位置から解放される、請求項6に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記プランジャロッド(40)が解放されると、前記プランジャロッド(40)は、前記薬剤送達装置の前記近位端の方に駆動され、それによって薬剤送達が実行される、請求項7に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記第1の弾性部材(80)は、前記シールドスリーブが前記送達箇所から取外された際に前記シールドスリーブ(70)を前記薬剤送達装置の前記近位端の方にさらに駆動するように構成される、請求項から8のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記薬剤送達装置は、前記シールドスリーブが前記送達箇所から取外された際に前記薬剤送達装置の前記遠位端の方に移動することに対して前記シールドスリーブ(70)をロックするためのロッキング手段をさらに備える、請求項9に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
シールドスリーブロッキング手段は、前記プランジャロッキング手段(60)によって形成される、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記シールドスリーブ(70)と前記プランジャロッキング手段(60)との間の動作的接続は、カム・溝機構によって形成される、請求項6から11のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記第1の弾性部材(80)からの出力された軸方向の力により、前記シールドスリーブ(70)が前記薬剤送達装置の前記近位端の方にその初期ロック位置からその第2の位置まで予め定められた距離だけ前記ハウジング(10)に対して軸方向に移動可能であり、それによって前記薬剤送達装置がその始動準備状態になるように、前記第2の弾性部材(80)に動作的に結合されたシールドドライバ(120)をさらに備える、請求項1から12のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
前記キャップアセンブリは、前記薬剤容器ホルダ(20)に接続された保持部材(92)をさらに備える、請求項3から13のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記キャップアセンブリは、前記保持部材(92)内で同軸に移動可能なハブ(93)をさらに備え、近位端(95)および遠位端(96)を有する針(94)をさらに備える、請求項14に記載の薬剤送達装置。
【請求項16】
前記キャップアセンブリは、前記ハブ(93)および前記保持部材(92)に相互作用的に接続された内側キャップ(97)をさらに備え、前記外側キャップ(91)は、前記内側キャップ(97)に同軸に配置される、請求項15に記載の薬剤送達装置。
【請求項17】
前記外側キャップ(91)と前記内側キャップ(97)との間および前記内側キャップ(97)と前記保持部材(92)との間の係合は、前記外側キャップ(91)を取外すことにより、前記ハブ(93)が遠位に移動し、その結果、前記針(94)の前記遠位端(96)が薬剤容器(30)の近位端を貫通するように構成される、請求項16に記載の薬剤送達装置。
【請求項18】
前記投与量設定機構(100)は、前記ハウジング(10)から遠位に突き出る投与量ノブ(103)と前記投与量ノブ(103)に近位の投与量部材係合部(102)とを有する投与量部材(101)を備える、請求項1から17のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項19】
前記投与量設定機構(100)は、前記投与量部材係合部(102)に同軸の管状増加要素(110)をさらに備える、請求項18に記載の薬剤送達装置。
【請求項20】
前記投与量部材係合部(102)は、前記投与量部材(101)を前記管状増加要素(110)の嵌合内側ロック構造に回転ロックするための外側回転ロック構造(104)を備える、請求項19に記載の薬剤送達装置。
【請求項21】
前記管状増加要素(110)は、前記管状増加要素(110)をシールドリンク(120)の嵌合内側ロック構造に回転ロックするための外側ロック構造(112)を備える、請求項19または20に記載の薬剤送達装置。
【請求項22】
前記管状増加要素(110)は、前記第の弾性部材(80)のための遠位当接面を形成する外側周方向突起(111)を備える、請求項19から21のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【請求項23】
前記管状増加要素(110)は、前記管状増加要素(110)の回転移動中に前記管状増加要素(110)の遠位移動を可能にするように構成された、前記ハウジング(10)の遠位カム機能と嵌合する遠位カム機能を備える、請求項19から22のいずれか1項に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
初期ロック状態、中間始動準備状態および薬剤送達状態を有する薬剤送達装置を提供する。薬剤送達装置は、薬剤送達装置の近位端におけるキャップを取外すまで個々の投与量設定および薬剤送達の起動が防止されるように構成される。
【背景技術】
【0002】
背景
薬剤送達装置をできる限り事前に組立てられた状態に保つための1つの解決策として、針などの送達部材が予め取付けられた状態で薬剤送達装置を供給するという解決策がある。この解決策により、針の後端がしばしば容器の内部に突き出ることになり、これは、薬剤がある期間にわたって晒されると送達部材の材料と反応する場合には欠点になり得る。その点に関して、送達が実行されるまでは容器外に送達部材の後部を有することが望ましいであろう。注射を実行するために必要な動作の数を最小限にするために、いくつかの装置は、ボタンなどを押すことによって注射をする必要なしに、単に注射領域に対して押し付けられるだけでよく、これによって、針が注射領域を貫通し、装置が注射を実行する。それによって、送達手順が少なくとも1工程だけ減少する。
【0003】
先行技術の解決策の不利な点は、それらが時として信頼できないものであり、意図せずに作動される可能性があることである。US−A−6,893,420は、薬剤の混合が終了する前に自動貫通注射手段が解放されることを防止する突起をロックするためのロッキング手段を備えた装置を開示している。しかし、この装置には、ユーザが混合の終了後に装置からロッキング手段を積極的に取外さなければならず、それによって、特にこのような装置の緊急時の使用を考慮した場合に不都合であり得る不必要な工程を生じさせるという不利な点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、信頼性があって安全に使用でき、取扱う際に簡単に使用できる薬剤送達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
上記の問題のうちの1つまたはいくつかを克服するために、独立請求項1に係る薬剤送達装置を提供する。
【0006】
さらなる局面、改善点および変形例については、従属請求項、図面および説明に開示されている。
【0007】
本願において、「遠位」という用語が用いられる場合、これは、投与量送達箇所から離れる方を指し示す方向を指す。「遠位部/端」という用語が用いられる場合、これは、投与量送達箇所から最も遠く離れたところにある送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。対応して、「近位」という用語が用いられる場合、これは、投与量送達箇所の方を指し示す方向を指す。「近位部/端」という用語が用いられる場合、これは、投与量送達箇所の最も近くにある送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。
【0008】
本発明は薬剤送達装置を提供する。薬剤送達装置は、初期ロック状態、中間始動準備状態および薬剤送達状態を有する。
【0009】
実施例によれば、薬剤送達装置は、近位端および遠位端を有するハウジングを備えている。薬剤容器ホルダがハウジング内に配置されている。プランジャロッドもハウジング内に配置されている。
【0010】
薬剤送達装置のハウジングは、薬剤送達の進捗状況、すなわち、薬剤送達装置が依然として、薬剤がまだ注射されていない初期段階にあるか否か、または薬剤容器が既に空になっているか否か、をユーザが見ることができるようにする窓を備えていてもよい。ユーザは、ハウジングに収容された薬剤容器を見ることができる。
【0011】
好ましくは、ハウジングの近位端には、ユーザに設定投与量を示すために用いられるさらなる窓が設けられている。
【0012】
プランジャロッド、弾性部材およびプランジャロッドガイドロッドは、プランジャアセンブリを形成し得る。これら3つの要素は、好ましくは、プランジャ弾性部材が、少なくともその近位部がプランジャロッドの中心穴に受けられるという点において、同軸に配置される。さらに、プランジャロッドガイドロッドは、少なくともプランジャ弾性部材の遠位部の中に延びていてもよい。
【0013】
プランジャロッドは、プランジャロッド近位端とプランジャロッド遠位端とを備えている。その遠位部におけるプランジャロッドの外面には、少なくとも1つのプランジャロッド止めリブが配置されている。例えば、2つのこのようなリブが互いに180°の間隔をあけて設けられている。これらのプランジャロッド止めリブは、軸方向、すなわち薬剤送達装置の長手方向に延びている。このようなプランジャロッド止めリブは、薬剤容器ホルダの内面における対応する溝に摺動可能に受けられることができる。
【0014】
薬剤送達装置は、ハウジングおよびプランジャロッドに対して回転可能なプランジャロッキング手段をさらに備えている。プランジャロッキング手段は、薬剤送達装置の初期ロック状態においてプランジャロッドをその初期ロック位置に保持するように構成される。また、プランジャロッキング手段は、プランジャロッドをその初期ロック位置から薬剤送達装置の近位端の方に中間始動準備位置まで解放するように構成される。さらに、プランジャロッキング手段は、プランジャロッドを中間始動準備位置に保持し、プランジャロッドをその中間始動準備位置から薬剤送達装置の近位端の方に最終送達位置まで解放するように構成される。
【0015】
プランジャロッキング手段は、プランジャロッキング手段の内部段によって形成される内側当接面を備えていてもよい。このような当接面により、プランジャロッキング手段の近位部と比較してプランジャロッキング手段の直径がその遠位端において小さくなっている。この当接面は、薬剤容器ホルダのハウジングの遠位端に対する遠位支持面を形成する。
【0016】
さらに、プランジャロッキング手段は、互いに軸方向および周方向に間隔があいた2つのプランジャロッド当接面を有していてもよい。プランジャロッド当接面は、プランジャロッキング手段の内面から突き出ている。当接面は両方とも遠位に向いており、すなわちプランジャロッドの近位移動に対する当接部を形成する。より遠位の当接面は、プランジャロッドのための初期当接面を形成する。特に、薬剤送達装置がその初期ロック状態にあるときには、プランジャロッドの外面に設けられたプランジャロッド止めリブは、初期当接面に対して軸方向に当接する。中間始動準備状態においては、プランジャロッド止めリブは、回転方向および軸方向に移動された後、始動準備当接面を形成する第2の当接面に対して当接する。
【0017】
このように、薬剤送達装置の初期状態では、プランジャロッド止めリブは初期当接面に対して当接する。薬剤送達装置の始動準備状態では、プランジャロッド止めリブは始動準備当接面に対して当接する。したがって、プランジャロッキング手段はプランジャロッドに対して回転され、プランジャ弾性部材がプランジャロッドにかける力により、プランジャロッドは、薬剤送達装置の近位端の方に軸方向に移動された後、始動準備当接面に対して当接する。
【0018】
薬剤容器ホルダは、薬剤容器を収容するように構成されてもよい。薬剤容器は、薬剤容器内に封止的におよび摺動可能に配置された栓を有していてもよい。プランジャロッドは、その近位端が当該栓と接触可能である状態で配置されてもよい。
【0019】
薬剤容器ホルダは、その遠位部に、異なる軸方向長さを有する1つ以上の内側投与量溝を備えていてもよい。ユーザが投与量を設定すると、プランジャロッキング手段は、薬剤容器ホルダに対して回転され、薬剤容器ホルダにおける適切な内側投与量溝と位置合わせされる。
【0020】
少なくともハウジングの近位部に、シールドスリーブが摺動可能に配置され、さらなる弾性部材またはエネルギ蓄積部材がシールドスリーブに結合される。シールドスリーブは、ハウジングの視認窓と位置合わせされる窓を備えていてもよい。
【0021】
薬剤送達装置は、その近位端に、薬剤容器ホルダに結合されるかまたは接続されるキャップアセンブリを備えている。キャップアセンブリは、取外し可能な外側キャップを備えている。以下でより詳細に説明するように、外側キャップは薬剤送達装置の使用前に取外される。
【0022】
薬剤送達装置は、薬剤送達装置の使用前の意図しない投与量設定が防止されるように薬剤送達装置の初期ロック状態にロックされる投与量設定機構をさらに備えている。
【0023】
薬剤送達装置の初期ロック位置においては、シールドスリーブは、薬剤送達装置の近位端の方に第2の位置まで軸方向に移動可能である状態から外側キャップによってロックされる。シールドスリーブは、外側キャップを取外した際にプランジャ弾性部材によってその第2の位置に移動されると、プランジャロッキング手段によって第2の位置にロックされる。さらに、シールドスリーブがその第2の位置に移動することにより、投与量設定機構が解放され、その結果、この段階で投与量を設定することができる。投与量設定機構による投与量設定は、その第2の位置でのシールドスリーブのロッキングを解放し、このようにして薬剤送達の実行が可能になる。
【0024】
シールドスリーブがその第2の位置に移動することにより、プランジャロッキング手段が回転して、プランジャロッドをその初期ロック位置からその中間始動準備位置に解放し得る。
【0025】
シールドスリーブが送達箇所に押し付けられた際にシールドスリーブが薬剤送達装置の遠位端の方に軸方向に移動することにより、プランジャロッキング手段が回転移動を実行するように、シールドスリーブおよびプランジャロッキング手段が動作的に接続されることが好ましい。プランジャロッキング手段の回転移動により、プランジャロッドがその始動準備位置から解放され得る。さらに、プランジャロッドが解放されると、プランジャロッドは薬剤送達装置の近位端の方に駆動され、それによって薬剤送達が実行される。
【0026】
プランジャ弾性手段は、シールドスリーブが送達箇所から取外された際にシールドスリーブを薬剤送達装置の近位端の方にさらに駆動するように構成されてもよい。薬剤送達装置は、シールドスリーブが送達箇所から取外された際に薬剤送達装置の遠位端の方に移動することに対してシールドスリーブをロックするためのロッキング手段をさらに備えていてもよい。シールドスリーブロッキング手段は、プランジャロッキング手段によって形成されてもよい。
【0027】
シールドスリーブとプランジャロッキング手段との間の動作的接続は、カム・溝機構によって形成されてもよい。
【0028】
薬剤送達装置は、シールドドライバをさらに備えていてもよく、当該シールドドライバは、プランジャ弾性部材からの出力された軸方向の力により、シールドスリーブが薬剤送達装置の近位端の方にその初期ロック位置からその第2の位置まで予め定められた距離だけハウジングに対して軸方向に移動可能であり、それによって薬剤送達装置がその始動準備状態になるように、シールド弾性部材に動作的に結合される。
【0029】
シールドドライバは、遠位部と、その近位端におけるシールドドライバフランジとを有していてもよい。シールドドライバフランジは、少なくとも近位部がシールドドライバの外面の周囲に同軸に配置されるプランジャ弾性部材のための近位当接面の役割を果たす。薬剤送達装置の装填状態において、プランジャ弾性部材は、シールドドライバを完全に取囲んでいる。プランジャ弾性部材は、薬剤送達装置の始動準備を実行し、その後薬剤の送達を開始させる目的でシールドドライバを軸方向に移動させるために用いられる。
【0030】
薬剤容器ホルダは、好ましくは、シールドスリーブ内に同軸に配置される。薬剤送達装置の完全に組立てられた状態において、薬剤容器ホルダは、少なくともその近位部がシールドスリーブ内に位置する。薬剤容器ホルダの遠位部は、プランジャロッキング手段内に同軸に配置されてもよい。薬剤容器ホルダは、薬剤容器ホルダをハウジングに接続することができる径方向突出部などの1つ以上のハウジング接続機能を備えている。
【0031】
好ましい実施例において、キャップアセンブリは、薬剤容器ホルダに接続可能な保持部材をさらに備えている。キャップアセンブリは、保持部材内で同軸に移動可能なハブをさらに備えていてもよい。ハブは、近位端と遠位端とを有する針を備えていてもよい。キャップアセンブリは、ハブおよび保持部材に相互作用的に接続された内側キャップをさらに備えていてもよい。外側キャップは、内側キャップに同軸に配置されてもよい。外側キャップと内側キャップとの間および内側キャップと保持部材との間の係合は、外側キャップを取外すことによりハブが遠位に移動して針の遠位端が薬剤容器の近位端を貫通するように構成されてもよい。
【0032】
キャップアセンブリは、外側キャップとシールドフロントとの間に設けられた外側キャップクラッチをさらに備えていてもよい。薬剤送達装置の完全に組立てられた状態において、外側キャップクラッチは、外側キャップをキャップアセンブリから取外した際にユーザが誤った方向に過剰な力をかけることを防止する。したがって、キャップクラッチは、外側キャップが正しい回転方向に正確に取外されることを確実にする。
【0033】
シールドフロントは、1つ以上のシールドフロント係合構造を備えていてもよい。このような係合構造により、シールドフロントはシールドスリーブの近位部と接続可能である。すなわち、組立てられた状態において、シールドフロントはシールドスリーブの最も近位の端部を形成する。
【0034】
キャップアセンブリは、保持部材によって形成されるキャップサブアセンブリ90’を備えている。保持部材は、内側キャップをねじ留めすることができる外側ねじ山構造も備えていてもよい。内側キャップ内に、係合部を有するハブが位置している。ハブの係合部は、その遠位部が好ましくは保持部材の対応する係合構造に係合される。
【0035】
キャップアセンブリは、完全に組立てられた薬剤送達装置から外側キャップを取外すためにユーザが外側キャップを(例えば反時計回り方向に)回し始めると、外側キャップと内側キャップとのそれぞれの係合に起因して、外側キャップを近位に取外すための外側キャップの回転により、ハブが遠位に保持部材にねじ込まれ、それによって、針の鋭い遠位端が滅菌バリアを貫通し、その後薬剤容器の膜を貫通するように構成される。最終的に、外側キャップおよび内側キャップを取外すことができる。好ましくは、ねじ山のピッチは、薬剤容器の膜における針の遠位端の回転または「錐揉み」をできる限り防止する目的で、小さな回転角度で遠位方向へのハブの大きな長手方向移動があるように選択される。同時に、外側キャップと保持部材との間のねじ山のピッチは、好ましくは、動作を終了させるために握りを変えなければならないことを回避するように取外し動作を実行するためにユーザが外側キャップを好ましくは約半回転回転させるだけでよいように選択される。
【0036】
初期状態において、シールドドライバは、プランジャロッキング手段のカム・溝構造の外側溝構造への内側ガイド突出部と係合してもよい。すなわち、シールドドライバは、プランジャロッキング手段の軌道上のガイド手段によってプランジャロッキング手段に接続される。
【0037】
シールドドライバフランジは、シールドリンク回転ロック構造を提供する、ハウジングの内面に設けられた軸方向リブを受ける複数のシールドドライバフランジ窪みを備えていてもよい。このロック構造により、薬剤送達装置の初期状態では、シールドドライバは、ハウジングに回転可能にロックされるが、ハウジングに対して軸方向に摺動可能である。ハウジングは、その内面に、例えば1つ以上の軸方向リブの形態のシールドリンク回転ロック構造を備えていてもよい。
【0038】
薬剤送達装置の好ましい実施例において、投与量設定機構は、ハウジングから遠位に突き出る投与量ノブと投与量ノブに近位の投与量部材係合部とを有する投与量部材を備えている。さらに、投与量設定機構は、投与量部材係合部に同軸の管状増加要素を備えている。投与量部材係合が投与量設定機構内に同軸に配置されることが好ましい。
【0039】
投与量部材係合部は、投与量部材を管状増加要素の嵌合内側ロック構造に回転ロックするための外側回転ロック構造を備えていてもよい。管状増加要素は、管状増加要素をシールドリンクの嵌合内側ロック構造に回転ロックするための外側ロック構造を備えていてもよい。
【0040】
したがって、投与量部材は、外側回転ロック構造を有する近位投与量部材係合部と、その遠位端に投与量ノブとを備えていてもよい。投与量ノブは、投与量ノブを回転させることによって投与量を設定するためにユーザによって握持されてもよい。このような回転は、近位投与量部材係合部を介して薬剤送達装置の他の構成要素に伝達される。回転ロック構造は、管状増加要素の内面における対応するロック構造と相互作用してもよい。
【0041】
管状増加要素は、シールド弾性部材のための遠位当接面を形成する外側周方向突起を備えていてもよい。第1の弾性部材が、管状増加要素の突起に近位に遠位ハウジング部の内部に設けられた突起と接触してもよいということも本発明によって包含される。
【0042】
管状増加要素は、その外面に、シールドドライバの内面における対応するロック構造と係合するシールドリンクロック構造も備えていてもよい。
【0043】
管状増加要素は、ハウジングの遠位カム機能と嵌合する遠位カム機能も備えていてもよい。嵌合カム機能は、管状増加要素の回転移動中に管状増加要素の遠位移動を可能にするように構成される。
【0044】
以下の図面は、単に例示の目的で本発明の実施例を開示している。特に、図面内の開示内容は、本発明の保護の範囲を限定するよう意図したものではない。示される実施例は、特許請求の範囲内でさまざまに変形され得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の好ましい実施例に係る薬剤送達装置の斜視図である。
図2図1の好ましい実施例に係る薬剤送達装置の分解図である。
図3】本発明の好ましい実施例に係る薬剤送達装置の部分分解図である。
図4】本発明の好ましい実施例に係る薬剤送達装置のキャップアセンブリの分解図である。
図5】本発明の好ましい実施例に係る薬剤送達装置のキャップアセンブリの部品の分解図である。
図6】好ましい実施例に係る薬剤送達装置の断面図である。
図7】初期位置における本発明の好ましい実施例に係る薬剤送達装置のプランジャロッキング手段の斜視断面図である。
図8】本発明の好ましい実施例に係る薬剤送達装置のプランジャロッキング手段の別の斜視断面図である。
図9】初期状態における薬剤送達装置の2つの部分破断斜視図である。
図10】初期状態における薬剤送達装置の別の部分破断斜視図である。
図11図10と類似しているが、薬剤送達装置の始動準備状態における部分破断斜視図である。
図12】投与量設定の詳細を示す図である。
図13】投与量設定のさらなる詳細を示す図である。
図14】注射起動時の薬剤送達装置の部分破断斜視図である。
図15】注射後のロック状態における薬剤送達装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面の詳細な説明
図1は、本発明の好ましい実施例に係る薬剤送達装置1の斜視図を示す。薬剤送達装置1は、近位端2と遠位端3とを有しており、近位部または端11および遠位部または端12を有するハウジング10を備えている。薬剤送達装置1の組立てられた状態において、ハウジング10は、薬剤送達装置1の外面または外観を形成する。図1の斜視図では、薬剤送達装置1はまだ完全には組立てられておらず、シールドスリーブ70がハウジング10の近位端から突き出ている。薬剤送達装置1の完全な組立てについては、例えば図3を参照して以下でより詳細に説明する。
【0047】
薬剤送達装置1のハウジング10は、薬剤送達の進捗状況、すなわち、薬剤送達装置1が依然として、薬剤がまだ注射されていないその初期段階にあるか否か、または薬剤容器が既に空になっているか否か、をユーザが見ることができるようにする窓13を備える。窓13を介して、ユーザは、少なくともハウジング10の近位部に収容された薬剤容器を見ることができる。好ましい実施例では、ハウジング10の両側に位置する2つのこのような窓が設けられている。
【0048】
さらに、ハウジング10の位端12には、以下でより詳細に説明するようにユーザに設定投与量を示すために用いられるさらなる窓14が設けられている。ハウジング10の位端12には、投与量設定のための投与量ノブ103が遠位に突き出ている。
【0049】
図2は、図1に示される好ましい実施例の薬剤送達装置1の分解図を示す。シールドスリーブ70がハウジング10内に同軸に配置されており、当該シールドスリーブ70は、ハウジング10の窓13と位置合わせされる窓71も備えている。薬剤送達装置1は、シールドスリーブ70内に同軸に配置される薬剤容器ホルダ20をさらに備えている。薬剤送達装置1の完全に組立てられた状態では、薬剤容器ホルダ20は、少なくともその近位部がシールドスリーブ70内に位置する。薬剤容器ホルダ20の遠位部21は、プランジャロッキング手段60内に同軸に配置される。薬剤容器ホルダは、薬剤容器ホルダ20をハウジング10に接続することができる径方向突出部などの1つ(または2つの対向する)ハウジング接続機能を備えている(図1も参照)。
【0050】
図2に示される好ましい実施例では、薬剤容器ホルダ20は軸方向ガイドリブ24を備えている。好ましくは、軸方向ガイドリブは、薬剤容器ホルダ20の両側に配置され、その長手方向に延びている。ガイドリブ24は、シールドスリーブ70の近位部の内面に設けられた対応する溝構造に受けられ、その結果、シールドスリーブ70は、薬剤容器ホルダ20に対して軸方向に移動可能であり、また(円筒形の構成の場合)ハウジング10に対して回転される状態からロックされる。
【0051】
プランジャロッキング手段60は、概して円筒形の構成を有しており、外側溝構造61とシールドリンクロック構造62とを備えている。これらの要素については以下でより詳細に説明する。
【0052】
図2は、遠位部121と、その近位端にシールドドライバフランジ122とを有するシールドドライバ120をさらに示している。シールドドライバフランジ122は、少なくともその近位部がシールドドライバ120の外面の周りに同軸に配置される第1の弾性部材またはエネルギ蓄積部材80のための近位当接面の役割を果たす。薬剤送達装置の装填状態では、第1の弾性部材80がシールドドライバ120を完全に取囲んでいる。薬剤送達装置1の始動準備を実行して薬剤の送達を開始させる目的でシールドドライバ120を軸方向に移動させるために、第1の弾性部材、例えばばねが用いられる。この点については以下でより詳細に説明する。
【0053】
図2は、プランジャロッド40と(ばねなどの)第2の弾性部材50とプランジャロッドガイドロッド55とを備えるプランジャアセンブリも示している。これら3つの要素は、第2の弾性部材50が、少なくともその近位部がプランジャロッド40の中心穴に受けられるという点において、同軸に配置される。さらに、プランジャロッドガイドロッド55は、第2の弾性部材50の遠位部の中に延びている。
【0054】
プランジャロッドは、プランジャロッド近位端41とプランジャロッド遠位端42とを備えている。その遠位部42におけるプランジャロッド40の外面には、少なくとも1つのプランジャロッド止めリブ43が配置されている。例えば、2つのこのようなリブが互いに180°の間隔をあけて設けられている。これらのプランジャロッド止めリブ43は、軸方向、すなわち薬剤送達装置の長手方向に延びている。プランジャロッド止めリブ43は、以下で説明するように、薬剤容器ホルダ20の内面における対応する溝に摺動可能に受けられることができる。
【0055】
図2は、投与量設定機構100図6参照)の要素も示している。投与量設定機構100は、投与量部材101と、管状増加要素110と、係合要素105と、投与量ドラム108とを備えている。
【0056】
投与量部材101は、外側回転ロック構造104を有する近位投与量部材係合部102と、その遠位端に投与量ノブ103とを備えている。投与量ノブ103は、投与量ノブ103を回転させることによって投与量を設定するためにユーザによって握持される。このような回転は、以下でより詳細に説明するように、近位投与量部材係合部102を介して薬剤送達装置1の他の構成要素に伝達される。回転ロック構造104は、管状増加要素110の内面における対応するロック構造と相互作用する。管状増加要素110は、その外面に、シールドドライバ120の内面における対応するロック構造と係合するシールドリンクロック構造112をさらに備えている。
【0057】
管状増加要素110は、第1の弾性部材80のための遠位当接面の役割を果たす周方向突起111をさらに備えている。代替的に、第1の弾性部材80は、遠位ハウジング部の内部に設けられた突起と接触し、管状増加要素110の突起に対し近位にあってもよい。
【0058】
図2から分かるように、この好ましい実施例の薬剤送達装置の構成要素は全て、実質的に管状または円筒形である。
【0059】
図3は、本発明の好ましい実施例に係る完全に組立てられる前の薬剤送達装置の部分分解図を示す。図1に既に示されている要素に加えて、図3は、内部栓31を有する薬剤容器30を示している。図3は、いくつかある要素の中で特に、外側キャップ91と保持部材92とシールドフロント99とを備えるキャップアセンブリ90も示している。キャップアセンブリのさらなる構成要素については、図4および図5の文脈において以下で説明する。
【0060】
図3に示されている2つの矢印によって示されるように、キャップアセンブリ90および薬剤容器30は、薬剤送達装置1の既に事前組立てされた残りの部分に、その近位端から挿入される。このようにして、完全に組立てられた薬剤送達装置1が得られる。
【0061】
図4は、完全に組立てられた状態および一部が解体された状態における薬剤送達装置のキャップアセンブリを示す。図4から分かるように、外側キャップ91とシールドフロント99との間に外側キャップクラッチ911が設けられている。薬剤送達装置1の完全に組立てられた状態において、外側キャップクラッチ911は、外側キャップ91をキャップアセンブリから取外した際にユーザが誤った方向に過剰な力をかけることを防止する。したがって、キャップクラッチ911は、外側キャップが正しい回転方向に正確に取外されることを確実にする。
【0062】
シールドフロント99は、1つ以上のシールドフロント係合構造991(図4では、互いに90°の角度で間隔があいた4つのこのような係合構造を見ることができる)を備え、当該シールドフロント係合構造991によりシールドフロント99がシールドスリーブ70の近位部と接続される。すなわち、組立てられた状態では、シールドフロントはシールドスリーブ70の近位端の大部分を形成する。
【0063】
図4は、キャップサブアセンブリ90’をさらに示している。キャップサブアセンブリ90’は、図5の完全分解図に示されている。サブアセンブリ90’は保持部材92を備え、当該保持部材92は、保持部材の本体から遠位方向に突き出る遠位ロッキング構造922を有する。図5に示される実施例では、保持部材92は、2つの対向するロッキング構造922を備えている。これらのロッキング構造922により、組立てられた状態で、保持部材92はシールドスリーブ70に固定的に接続される。ロッキング構造は、ロッキング構造の遠位端において径方向に突き出るフック状要素によって形成される。ロッキング構造922の径方向内側には、突起部922aが設けられている。これらの突起部により、保持部材92は薬剤容器ホルダ20にロックされる。
【0064】
保持部材92は、内側キャップ97をねじ留めすることができる外側ねじ山構造923も備えている。内側キャップ97内に、係合部931を有するハブ93が位置している。ハブ93は、近位端95と遠位端96とを有する針94をさらに備えている。遠位端96は、薬剤容器30の近位端に配置された膜を貫通するように構成される。したがって、ハブ93は、針ホルダの役割を果たし、注射針94に固定的に接続される。
【0065】
図5に示されるサブアセンブリ90’の断面図から分かるように、ハブ93の係合931は、その遠位部が保持部材92の対応する係合構造921に係合される。針94を滅菌状態に保つために、2つの滅菌バリア924が設けられている。図5から分かるように、針94の遠位先端部は、バリア924から近位に間隔があいている。
【0066】
したがって、薬剤送達装置1の初期段階においては、針94の遠位先端部は薬剤容器30から十分に間隔があいており、完全に組立てられた状態では、針94の遠位先端部は滅菌バリア924から遠位に位置する。しかし、嵌合係合構造921および931は、例えば回転によるハブ93の遠位移動によって針を遠位にずらすことができるようなものである。
【0067】
キャップアセンブリ90は、完全に組立てられた薬剤送達装置から外側キャップ91を取外すためにユーザが外側キャップ91を(例えば反時計回り方向に)回し始めると、外側キャップ91と内側キャップ97とのそれぞれの係合に起因して、外側キャップ91を近位に取外すための外側キャップ91の回転により、ハブ93が遠位に保持部材92にねじ込まれ、それによって、針94の鋭い遠位端96が滅菌バリア924を貫通し、その後薬剤容器30の膜を貫通するように構成される。最終的に、外側キャップ91および内側キャップ97を取外すことができる。好ましくは、ねじ山のピッチは、薬剤容器30の膜における針94の遠位端96の回転または「錐揉み」をできる限り防止する目的で、小さな回転角度で遠位方向へのハブ93の大きな長手方向移動があるように選択される。同時に、外側キャップ91と保持部材92との間のねじ山のピッチは、好ましくは、動作を終了させるために握りを変えなければならないことを回避するように取外し動作を実行するためにユーザが外側キャップ91を約半回転回転させるだけでよいように選択される。
【0068】
図6は、完全に組立てられた状態における薬剤送達装置1の断面図を示す。図の左側部分から分かるように、ハブ93は依然として、針94の遠位端が薬剤容器30の膜から間隔があくように位置している。図6は、誤った方向への外側キャップ91の回転を防止する外側キャップクラッチ911も示している。図6は、内側キャップ97をねじ留めする保持部92上の外側ねじ山923も示している。図6では、シールドフロント係合構造991とシールドスリーブ70との間の係合も見ることができる。さらに、保持部材92の突起部922aは薬剤容器ホルダ20と係合する。
【0069】
薬剤送達装置1の遠位端では、第1の弾性部材80、すなわちシールドばねが、その装填状態でシールドドライバ120上に同軸に配置され、その近位端においてシールドドライバフランジ122に対して当接し、その遠位端において管状増加要素110の周方向突起111に対して当接していることが分かる。
【0070】
さらに、シールドスリーブ70は、その遠位面においてシールドドライバ120のシールドドライバフランジ122に対して当接している。
【0071】
図6は、薬剤容器ホルダ20をハウジング10に固定的に接続する薬剤容器ホルダ20の径方向ハウジング接続部22も示している。
【0072】
図7は、プランジャロッキング手段60の斜視断面図を示す。図7の上の図には、プランジャロッキング手段60の内部段によって形成される当接面64が示されており、当該当接面64により、プランジャロッキング手段60の近位部と比較してプランジャロッキング手段60の直径がその遠位端において小さくなっている。当接面64は、薬剤容器ホルダ20のハウジングの遠位端に対する遠位支持面を形成する。
【0073】
図7の真ん中の図には、2つの当接面67および68が示されている。より遠位の当接面67は、プランジャロッド40のための初期当接面を形成する。特に、薬剤送達装置1がその初期ロック状態にあるときには、プランジャロッド40の外面に設けられたプランジャロッド止めリブ43(図2参照)は、初期当接面67に対して軸方向に当接する。中間始動準備状態においては、図8の文脈においてより詳細に説明するように、プランジャロッド止めリブ43は、軸方向に始動準備当接面68まで回転移動される。
【0074】
最後に、図7の下の図は、薬剤容器ホルダ20のための当接面64および始動準備当接面68が薬剤送達装置1の長手方向軸に垂直な同一の平面に位置することを示している。
【0075】
図8は、薬剤送達装置1のさまざまな状態におけるプランジャロッキング手段60に対するプランジャロッド止めリブ43の位置および薬剤容器ホルダ20に対するプランジャロッキング手段60の位置を視覚化する一連の4つのステップを示す。
【0076】
図8における最も左側の図は、薬剤送達装置1の初期状態を示している。上記のように、この状態では、プランジャロッド止めリブ43は初期当接面67に対して当接する。薬剤送達装置1の始動準備状態では(図8における左から2番目の図)、プランジャロッド止めリブ43は始動準備当接面68に対して当接する。このようにして、プランジャロッキング手段60はプランジャロッド40に対して回転され、第2の弾性部材50がプランジャロッド40にかける力により、プランジャロッド40は、薬剤送達装置の近位端の方に軸方向に移動された後、始動準備当接面68に対して当接する。
【0077】
図8における右から2番目の図は、特定の投与量をいかに設定できるかを視覚化している。薬剤容器ホルダ20は、その遠位部21に、異なる軸方向長さを有する1つ以上の内側投与量溝23を備えている。(以下でより詳細に説明するように)投与量ノブ103を回転させることによってユーザが投与量を設定すると、プランジャロッドが始動準備当接面68に「留め置かれた」状態のプランジャロッキング手段60は、薬剤容器ホルダ20に対して回転され、その結果、始動準備当接面68の右側に示される間隙が適切な内側投与量溝と位置合わせされる。
【0078】
図8における右側の図は、注射が完了した時の薬剤送達状態を示している。プランジャロッド止めリブ43を有するプランジャロッド40は、薬剤送達装置1の近位端の方に軸方向にさらにずらされて、今では内側投与量溝23によって形成される当接面に対して当接していることが分かる。さらに、薬剤容器ホルダ20のための当接面64および始動準備当接面68が薬剤送達装置1の長手方向軸に垂直な同一の平面に位置しているので、上記平面と内側投与量溝23によって形成される上記当接面との間の距離は、投与量の精度を制御する寸法を有していると考えられる。
【0079】
図9は、初期状態における薬剤送達装置1の2つの部分破断斜視図を示す。上の図は、シールドドライバ120がプランジャロッキング手段60の外側溝構造61への内側ガイド突出部124と係合することを示している。すなわち、シールドドライバ120は、プランジャロッキング手段60の軌道上のガイド手段によってプランジャロッキング手段60に接続される。さらに、図9における下の図から分かるように、プランジャロッド止めリブ43の近位面は、プランジャロッキング手段60の初期当接面67に対して当接する(この図では、取囲んでいるプランジャロッキング手段60、シールドドライ120およびばね80が「取外されている」)。
【0080】
図10の部分破断斜視図は、投与量部材係合部102の回転ロック構造104がいかに管状増加要素110の嵌合内側ロック構造と係合するかを示している。さらに、管状増加要素110の外面におけるシールドリンクロック構造112がシールドドライバ120の対応する内側ロック構造に係合することが分かる。このように、管状増加要素110は、投与量部材101に回転可能にロックされるが、投与量部材101に対して軸方向に摺動可能である。また、シールドドライバ120は、管状増加要素110に回転可能にロックされるが、管状増加要素110に対して軸方向に摺動可能である。
【0081】
図10は、シールドドライバフランジ122が、シールドリンク回転ロック構造を提供する、ハウジング10の内面に設けられた軸方向リブ17を受ける複数のシールドドライバフランジ窪み123を備えることも示している。このロック構造により、薬剤送達装置1の初期状態では、シールドドライバ120は、ハウジング10に回転可能にロックされるが、ハウジング10に対して軸方向に摺動可能である。図10は、リブ17の高さがフランジ122に近位の第3の距離を減少させるという点において軸方向リブ17、すなわちシールドリンク回転ロック構造が段状の構成(段18を参照)を備えることも示している。段18を近位に通過すると、シールドドライバ120はもはや回転可能にロックされることはないが、ハウジングに対しては回転可能である。
【0082】
投与量部材101と管状増加要素110との間、管状増加要素110とシールドドライバ120との間、およびシールドドライバ120とハウジング10との間のロッキング係合により、外側キャップ91を取外す前に投与量ノブ103が回転することを防止する。
【0083】
図11は、図10と類似の部分破断斜視図を示す。しかし、図11は、始動準備状態における薬剤送達装置1を示す。外側キャップ91は既に取外されており、第1の弾性部材80がシールドドライバ120(したがってシールドスリーブ70)を近位方向に移動させた。それによって、内側ガイド突出部124が近位方向にプランジャロッキング手段60の外側溝構造61に移動した。外側溝構造61の形状により、近位方向への内側ガイド突出部124の移動は、初期状態から始動準備状態へのプランジャロッキング手段60の回転移動を生じさせる(図8参照)。したがって、この時、プランジャロッド止めリブ43は初期当接面67から始動準備当接面68に移動される(図11には図示せず)。
【0084】
さらに、この時、窪み123を有するシールドドライバフランジ122は、ハウジング10のリブ17の段18(図10参照)を越え、その結果、シールドドライバ120はハウジング10から解放される。このようにして、今では、投与量を設定するために投与量部材101を回転させることができる。
【0085】
一方、プランジャロッキング手段60の回転移動により、プランジャロッキング手段60の近位端における外向きに延びる突出部が移動して、シールドスリーブ70の遠位端における対応する当接面と係合する。これにより、シールドスリーブ70は、ハウジング10の近位端から延びる位置に軸方向にロックされる。したがって、薬剤送達装置1の始動準備状態では、薬剤送達装置1を不注意で使用することはできない。ユーザが薬剤送達装置1を送達箇所に押し付けた場合、シールドスリーブ70が後方に移動してハウジング10の中に入ることはない。これにより、適切な投与量が設定される前の薬剤送達装置の使用が防止される。
【0086】
投与量を設定するために投与量部材101を回転させると、投与量ドラム108、管状増加要素110、シールドドライバ120、プランジャロッキング手段60、プランジャロッド40、プランジャロッドガイドロッド55、および第1および第2の弾性部材80,50も回転され、その結果、プランジャロッド40のプランジャロッド止めリブ43は、薬剤容器ホルダ20内の選択された内側投与量溝23と位置合わせされる。
【0087】
投与量を設定する際のプランジャロッキング手段60のこの回転移動により、プランジャロッキング手段60の外向き延長部が移動して、シールドスリーブ70の遠位端との係合が解除される。したがって、シールドスリーブ70はもはや、プランジャロッキング手段60の外周上のこれらの外向きに延びる突出部によって軸方向にロックされない。薬剤送達装置1は今や使用可能な状態である。
【0088】
図12は、下の図に、投与量が設定される際に上記のようにともに回転する全ての要素を示している。
【0089】
図12に示される拡大図は、管状増加要素110の遠位カム機能113を示している。これらの回転構成要素が移動すると、投与量をダイヤルした際の管状増加要素110とハウジング10との間のカム機能により、管状増加要素110もハウジング10に対して軸方向に移動する。したがって、段階的に、管状増加要素110がハウジング10に対して回転され、その結果、ハウジング10の窓14を介して投与量ドラム108によってそれぞれの投与量が示される。
【0090】
これは、図13からも明らかである。図13は、近位に突き出るハウジング当接部109を有する投与量ドラム108を示す。これらのハウジング当接部109は、ハウジング10から遠位に突き出る対応する投与量ドラム当接部19と係合する。これにより、ユーザが誤った方向にドラムノブ103を回すこと、または、あり得る最後の投与量を通り過ぎてしまうことが防止される。
【0091】
図14は、注射起動時の薬剤送達装置1の部分破断斜視図を示す。シールドスリーブ70およびシールドドライバ120は押し下げられ、すなわち、ハウジング10に対して遠位に移動される。この移動により、シールドドライバ120は強制的にプランジャロッキング手段60を回転させ、その結果、プランジャロッド40は、始動準備当接面68から解放され、プランジャロッド40の止めリブ43が選択された内側溝23における選択された投与量止めに当接するまで、近位方向に前方に移動される。図14の上の図から分かるように、内側ガイド突出部124は、プランジャロッキング手段60に対して遠位方向に、傾斜した溝に沿って、(シールドドライバ120とともに)移動している。
【0092】
図15は、注射後のロック状態における薬剤送達装置1を示す。送達箇所から薬剤送達装置1を取外すと、第1の弾性部材80は、シールドスリーブ70が再びハウジング10から近位に突き出るように促す。シールドドライバ120は近位に移動され、その内側ガイド突出部124は最終的にシールドリンクロック構造62によってロックされる。このようにして、注射後、シールドドライバ120、したがってシールドスリーブ70は、プランジャロッキング手段60によってロックされる。
【0093】
さらに、上記の状態では、さらなる投与量設定を防止するために、投与量部材101は回転可能にロックされる。特に、投与量部材101は管状増加要素110を介して回転可能にロックされ、プランジャロッド40は薬剤容器ホルダ20に回転可能にロックされる。
【0094】
図面および上記の説明において本発明を詳細に図示し、説明してきたが、このような図示および説明は例証的または例示的なものであると考えられるべきであり、限定的なものであると考えられるべきではない。以下の特許請求の範囲内で当業者によって変更および変形がなされてもよいということが理解される。特に、本発明は、上記および下記のさまざまな実施例からの特徴の任意の組合せを有するさらなる実施例を包含する。
【0095】
さらに、特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という用語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外するものではない。単一のユニットは、特許請求の範囲に記載されるいくつかの特徴の機能を実現し得る。「本質的に(essentially)」、「約(about)」、「およそ(approximately)」などの用語は、特に属性または値と関連付けて、まさにその属性またはまさにその値もそれぞれ規定する。特許請求の範囲における参照符号はいずれも、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
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