【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
上記の問題のうちの1つまたはいくつかを克服するために、独立請求項1に係る薬剤送達装置を提供する。
【0006】
さらなる局面、改善点および変形例については、従属請求項、図面および説明に開示されている。
【0007】
本願において、「遠位」という用語が用いられる場合、これは、投与量送達箇所から離れる方を指し示す方向を指す。「遠位部/端」という用語が用いられる場合、これは、投与量送達箇所から最も遠く離れたところにある送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。対応して、「近位」という用語が用いられる場合、これは、投与量送達箇所の方を指し示す方向を指す。「近位部/端」という用語が用いられる場合、これは、投与量送達箇所の最も近くにある送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。
【0008】
本発明は薬剤送達装置を提供する。薬剤送達装置は、初期ロック状態、中間始動準備状態および薬剤送達状態を有する。
【0009】
実施例によれば、薬剤送達装置は、近位端および遠位端を有するハウジングを備えている。薬剤容器ホルダがハウジング内に配置されている。プランジャロッドもハウジング内に配置されている。
【0010】
薬剤送達装置のハウジングは、薬剤送達の進捗状況、すなわち、薬剤送達装置が依然として、薬剤がまだ注射されていない初期段階にあるか否か、または薬剤容器が既に空になっているか否か、をユーザが見ることができるようにする窓を備えていてもよい。ユーザは、ハウジングに収容された薬剤容器を見ることができる。
【0011】
好ましくは、ハウジングの近位端には、ユーザに設定投与量を示すために用いられるさらなる窓が設けられている。
【0012】
プランジャロッド、弾性部材およびプランジャロッドガイドロッドは、プランジャアセンブリを形成し得る。これら3つの要素は、好ましくは、プランジャ弾性部材が、少なくともその近位部がプランジャロッドの中心穴に受けられるという点において、同軸に配置される。さらに、プランジャロッドガイドロッドは、少なくともプランジャ弾性部材の遠位部の中に延びていてもよい。
【0013】
プランジャロッドは、プランジャロッド近位端とプランジャロッド遠位端とを備えている。その遠位部におけるプランジャロッドの外面には、少なくとも1つのプランジャロッド止めリブが配置されている。例えば、2つのこのようなリブが互いに180°の間隔をあけて設けられている。これらのプランジャロッド止めリブは、軸方向、すなわち薬剤送達装置の長手方向に延びている。このようなプランジャロッド止めリブは、薬剤容器ホルダの内面における対応する溝に摺動可能に受けられることができる。
【0014】
薬剤送達装置は、ハウジングおよびプランジャロッドに対して回転可能なプランジャロッキング手段をさらに備えている。プランジャロッキング手段は、薬剤送達装置の初期ロック状態においてプランジャロッドをその初期ロック位置に保持するように構成される。また、プランジャロッキング手段は、プランジャロッドをその初期ロック位置から薬剤送達装置の近位端の方に中間始動準備位置まで解放するように構成される。さらに、プランジャロッキング手段は、プランジャロッドを中間始動準備位置に保持し、プランジャロッドをその中間始動準備位置から薬剤送達装置の近位端の方に最終送達位置まで解放するように構成される。
【0015】
プランジャロッキング手段は、プランジャロッキング手段の内部段によって形成される内側当接面を備えていてもよい。このような当接面により、プランジャロッキング手段の近位部と比較してプランジャロッキング手段の直径がその遠位端において小さくなっている。この当接面は、薬剤容器ホルダのハウジングの遠位端に対する遠位支持面を形成する。
【0016】
さらに、プランジャロッキング手段は、互いに軸方向および周方向に間隔があいた2つのプランジャロッド当接面を有していてもよい。プランジャロッド当接面は、プランジャロッキング手段の内面から突き出ている。当接面は両方とも遠位に向いており、すなわちプランジャロッドの近位移動に対する当接部を形成する。より遠位の当接面は、プランジャロッドのための初期当接面を形成する。特に、薬剤送達装置がその初期ロック状態にあるときには、プランジャロッドの外面に設けられたプランジャロッド止めリブは、初期当接面に対して軸方向に当接する。中間始動準備状態においては、プランジャロッド止めリブは、回転方向および軸方向に移動された後、始動準備当接面を形成する第2の当接面に対して当接する。
【0017】
このように、薬剤送達装置の初期状態では、プランジャロッド止めリブは初期当接面に対して当接する。薬剤送達装置の始動準備状態では、プランジャロッド止めリブは始動準備当接面に対して当接する。したがって、プランジャロッキング手段はプランジャロッドに対して回転され、プランジャ弾性部材がプランジャロッドにかける力により、プランジャロッドは、薬剤送達装置の近位端の方に軸方向に移動された後、始動準備当接面に対して当接する。
【0018】
薬剤容器ホルダは、薬剤容器を収容するように構成されてもよい。薬剤容器は、薬剤容器内に封止的におよび摺動可能に配置された栓を有していてもよい。プランジャロッドは、その近位端が当該栓と接触可能である状態で配置されてもよい。
【0019】
薬剤容器ホルダは、その遠位部に、異なる軸方向長さを有する1つ以上の内側投与量溝を備えていてもよい。ユーザが投与量を設定すると、プランジャロッキング手段は、薬剤容器ホルダに対して回転され、薬剤容器ホルダにおける適切な内側投与量溝と位置合わせされる。
【0020】
少なくともハウジングの近位部に、シールドスリーブが摺動可能に配置され、さらなる弾性部材またはエネルギ蓄積部材がシールドスリーブに結合される。シールドスリーブは、ハウジングの視認窓と位置合わせされる窓を備えていてもよい。
【0021】
薬剤送達装置は、その近位端に、薬剤容器ホルダに結合されるかまたは接続されるキャップアセンブリを備えている。キャップアセンブリは、取外し可能な外側キャップを備えている。以下でより詳細に説明するように、外側キャップは薬剤送達装置の使用前に取外される。
【0022】
薬剤送達装置は、薬剤送達装置の使用前の意図しない投与量設定が防止されるように薬剤送達装置の初期ロック状態にロックされる投与量設定機構をさらに備えている。
【0023】
薬剤送達装置の初期ロック位置においては、シールドスリーブは、薬剤送達装置の近位端の方に第2の位置まで軸方向に移動可能である状態から外側キャップによってロックされる。シールドスリーブは、外側キャップを取外した際にプランジャ弾性部材によってその第2の位置に移動されると、プランジャロッキング手段によって第2の位置にロックされる。さらに、シールドスリーブがその第2の位置に移動することにより、投与量設定機構が解放され、その結果、この段階で投与量を設定することができる。投与量設定機構による投与量設定は、その第2の位置でのシールドスリーブのロッキングを解放し、このようにして薬剤送達の実行が可能になる。
【0024】
シールドスリーブがその第2の位置に移動することにより、プランジャロッキング手段が回転して、プランジャロッドをその初期ロック位置からその中間始動準備位置に解放し得る。
【0025】
シールドスリーブが送達箇所に押し付けられた際にシールドスリーブが薬剤送達装置の遠位端の方に軸方向に移動することにより、プランジャロッキング手段が回転移動を実行するように、シールドスリーブおよびプランジャロッキング手段が動作的に接続されることが好ましい。プランジャロッキング手段の回転移動により、プランジャロッドがその始動準備位置から解放され得る。さらに、プランジャロッドが解放されると、プランジャロッドは薬剤送達装置の近位端の方に駆動され、それによって薬剤送達が実行される。
【0026】
プランジャ弾性手段は、シールドスリーブが送達箇所から取外された際にシールドスリーブを薬剤送達装置の近位端の方にさらに駆動するように構成されてもよい。薬剤送達装置は、シールドスリーブが送達箇所から取外された際に薬剤送達装置の遠位端の方に移動することに対してシールドスリーブをロックするためのロッキング手段をさらに備えていてもよい。シールドスリーブロッキング手段は、プランジャロッキング手段によって形成されてもよい。
【0027】
シールドスリーブとプランジャロッキング手段との間の動作的接続は、カム・溝機構によって形成されてもよい。
【0028】
薬剤送達装置は、シールドドライバをさらに備えていてもよく、当該シールドドライバは、プランジャ弾性部材からの出力された軸方向の力により、シールドスリーブが薬剤送達装置の近位端の方にその初期ロック位置からその第2の位置まで予め定められた距離だけハウジングに対して軸方向に移動可能であり、それによって薬剤送達装置がその始動準備状態になるように、シールド弾性部材に動作的に結合される。
【0029】
シールドドライバは、遠位部と、その近位端におけるシールドドライバフランジとを有していてもよい。シールドドライバフランジは、少なくとも近位部がシールドドライバの外面の周囲に同軸に配置されるプランジャ弾性部材のための近位当接面の役割を果たす。薬剤送達装置の装填状態において、プランジャ弾性部材は、シールドドライバを完全に取囲んでいる。プランジャ弾性部材は、薬剤送達装置の始動準備を実行し、その後薬剤の送達を開始させる目的でシールドドライバを軸方向に移動させるために用いられる。
【0030】
薬剤容器ホルダは、好ましくは、シールドスリーブ内に同軸に配置される。薬剤送達装置の完全に組立てられた状態において、薬剤容器ホルダは、少なくともその近位部がシールドスリーブ内に位置する。薬剤容器ホルダの遠位部は、プランジャロッキング手段内に同軸に配置されてもよい。薬剤容器ホルダは、薬剤容器ホルダをハウジングに接続することができる径方向突出部などの1つ以上のハウジング接続機能を備えている。
【0031】
好ましい実施例において、キャップアセンブリは、薬剤容器ホルダに接続可能な保持部材をさらに備えている。キャップアセンブリは、保持部材内で同軸に移動可能なハブをさらに備えていてもよい。ハブは、近位端と遠位端とを有する針を備えていてもよい。キャップアセンブリは、ハブおよび保持部材に相互作用的に接続された内側キャップをさらに備えていてもよい。外側キャップは、内側キャップに同軸に配置されてもよい。外側キャップと内側キャップとの間および内側キャップと保持部材との間の係合は、外側キャップを取外すことによりハブが遠位に移動して針の遠位端が薬剤容器の近位端を貫通するように構成されてもよい。
【0032】
キャップアセンブリは、外側キャップとシールドフロントとの間に設けられた外側キャップクラッチをさらに備えていてもよい。薬剤送達装置の完全に組立てられた状態において、外側キャップクラッチは、外側キャップをキャップアセンブリから取外した際にユーザが誤った方向に過剰な力をかけることを防止する。したがって、キャップクラッチは、外側キャップが正しい回転方向に正確に取外されることを確実にする。
【0033】
シールドフロントは、1つ以上のシールドフロント係合構造を備えていてもよい。このような係合構造により、シールドフロントはシールドスリーブの近位部と接続可能である。すなわち、組立てられた状態において、シールドフロントはシールドスリーブの最も近位の端部を形成する。
【0034】
キャップアセンブリは、保持部材によって形成されるキャップサブアセンブリ90’を備えている。保持部材は、内側キャップをねじ留めすることができる外側ねじ山構造も備えていてもよい。内側キャップ内に、係合部を有するハブが位置している。ハブの係合部は、その遠位部が好ましくは保持部材の対応する係合構造に係合される。
【0035】
キャップアセンブリは、完全に組立てられた薬剤送達装置から外側キャップを取外すためにユーザが外側キャップを(例えば反時計回り方向に)回し始めると、外側キャップと内側キャップとのそれぞれの係合に起因して、外側キャップを近位に取外すための外側キャップの回転により、ハブが遠位に保持部材にねじ込まれ、それによって、針の鋭い遠位端が滅菌バリアを貫通し、その後薬剤容器の膜を貫通するように構成される。最終的に、外側キャップおよび内側キャップを取外すことができる。好ましくは、ねじ山のピッチは、薬剤容器の膜における針の遠位端の回転または「錐揉み」をできる限り防止する目的で、小さな回転角度で遠位方向へのハブの大きな長手方向移動があるように選択される。同時に、外側キャップと保持部材との間のねじ山のピッチは、好ましくは、動作を終了させるために握りを変えなければならないことを回避するように取外し動作を実行するためにユーザが外側キャップを好ましくは約半回転回転させるだけでよいように選択される。
【0036】
初期状態において、シールドドライバは、プランジャロッキング手段のカム・溝構造の外側溝構造への内側ガイド突出部と係合してもよい。すなわち、シールドドライバは、プランジャロッキング手段の軌道上のガイド手段によってプランジャロッキング手段に接続される。
【0037】
シールドドライバフランジは、シールドリンク回転ロック構造を提供する、ハウジングの内面に設けられた軸方向リブを受ける複数のシールドドライバフランジ窪みを備えていてもよい。このロック構造により、薬剤送達装置の初期状態では、シールドドライバは、ハウジングに回転可能にロックされるが、ハウジングに対して軸方向に摺動可能である。ハウジングは、その内面に、例えば1つ以上の軸方向リブの形態のシールドリンク回転ロック構造を備えていてもよい。
【0038】
薬剤送達装置の好ましい実施例において、投与量設定機構は、ハウジングから遠位に突き出る投与量ノブと投与量ノブに近位の投与量部材係合部とを有する投与量部材を備えている。さらに、投与量設定機構は、投与量部材係合部に同軸の管状増加要素を備えている。投与量部材係合
部が投与量設定機構内に同軸に配置されることが好ましい。
【0039】
投与量部材係合部は、投与量部材を管状増加要素の嵌合内側ロック構造に回転ロックするための外側回転ロック構造を備えていてもよい。管状増加要素は、管状増加要素をシールドリンクの嵌合内側ロック構造に回転ロックするための外側ロック構造を備えていてもよい。
【0040】
したがって、投与量部材は、外側回転ロック構造を有する近位投与量部材係合部と、その遠位端に投与量ノブとを備えていてもよい。投与量ノブは、投与量ノブを回転させることによって投与量を設定するためにユーザによって握持されてもよい。このような回転は、近位投与量部材係合部を介して薬剤送達装置の他の構成要素に伝達される。回転ロック構造は、管状増加要素の内面における対応するロック構造と相互作用してもよい。
【0041】
管状増加要素は、シールド弾性部材のための遠位当接面を形成する外側周方向突起を備えていてもよい。第1の弾性部材が、管状増加要素の突起に近位に遠位ハウジング部の内部に設けられた突起と接触してもよいということも本発明によって包含される。
【0042】
管状増加要素は、その外面に、シールドドライバの内面における対応するロック構造と係合するシールドリンクロック構造も備えていてもよい。
【0043】
管状増加要素は、ハウジングの遠位カム機能と嵌合する遠位カム機能も備えていてもよい。嵌合カム機能は、管状増加要素の回転移動中に管状増加要素の遠位移動を可能にするように構成される。
【0044】
以下の図面は、単に例示の目的で本発明の実施例を開示している。特に、図面内の開示内容は、本発明の保護の範囲を限定するよう意図したものではない。示される実施例は、特許請求の範囲内でさまざまに変形され得る。