【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して、回路基板上に集積回路を形成する際に用いられる実装機を説明する。回路基板上の集積回路は、はんだ印刷機、実装機、及びリフロー炉を順に搬送されて形成される。はんだ印刷機は、回路基板上の電子部品の搭載位置にクリームはんだを印刷する。実装機は、クリームはんだが印刷された回路基板上の搭載位置に電子部品を搭載する。リフロー炉は、回路基板に熱処理を施すことで電子部品を回路基板上にハンダ付けする。
【0019】
図1に示されるように、実装機1は、テーブル3上に隣接して配置されている複数のモジュール2を備えている。モジュール2の各々は、共通した構成となっており、筐体として機能するフレーム4内に複数の装置を備えている。
図1は、2つのモジュール2が隣接している例を示しており、2つのモジュール2のうちの1つのモジュール2の外装板を透かした状態で示している。モジュール2は、部品供給装置10、パーツカメラを有するパーツ撮像装置20、ノズルストッカ30、基板搬送装置40、部品移載装置50、搭載ヘッド60、及びマークカメラを有するマーク撮像装置70を備える。また、モジュール2の各々は、外装板の表面に入出力装置6を備えている。この入出力装置6は、オペレータ入力を受け付け可能であるとともに、モジュール2のステータス情報及びオペレータへの各種指示信号を表示可能に構成されている。
【0020】
図1に示されるように、部品供給装置10は、回路基板5に搭載する複数種類の電子部品を部品吸着位置に供給する装置であり、複数のカセット式のフィーダ11が並設して構成されている。フィーダ11のフィーダ本体12は、フレーム4に着脱可能に構成されている。フィーダ11は、電子部品がテーピングされているキャリアテープが巻回されたテープリール13を有している。テープリール13からキャリアテープが所定ピッチずつ送り出され、電子部品が部品吸着位置に順次供給される。
【0021】
図1に示されるように、パーツ撮像装置20は、フレーム4に固定されており、部品供給装置10と基板搬送装置40の間に配置されている。パーツ撮像装置20は、CCDカメラで構成されるパーツカメラを有する。電子部品は、フィーダ11の部品吸着位置で吸着された後、基板搬送装置40に位置決めされている回路基板5に搭載される前に、パーツ撮像装置20の上方で停止され、パーツカメラで撮像される。実装機1は、パーツ撮像装置20で撮像した電子部品の画像データを利用して、電子部品の識別及び電子部品の吸着姿勢を認識する。電子部品の吸着姿勢は、電子部品の画像データを画像処理し、吸着ノズルの中心軸からの電子部品の位置ずれ及び吸着ノズルの中心軸回りの電子部品の角度ずれを検出することによって認識される。電子部品の吸着姿勢は、電子部品が回路基板5に搭載される前に吸着ノズルが自転することによって補正される。
【0022】
図1に示されるように、ノズルストッカ30は、パーツ撮像装置20の近傍に設けられており、複数の吸着ノズルが収容される複数のノズル収容穴を備えている。例えば、ノズルストッカ30には、使用中の吸着ノズルと同種の良品吸着ノズルが収容されており、使用中の吸着ノズルが不良となったときに、ノズルストッカ30に収容されている良品吸着ノズルを不良吸着ノズルと交換される。あるいは、ノズルストッカ30には、複数種類の吸着ノズルが収容されており、回路基板5に搭載される電子部品の種類に応じて所定の吸着ノズルが選択される。
【0023】
図1に示されるように、基板搬送装置40は、フレーム4に固定されており、回路基板5を搬送方向(X軸方向)に沿って搬送するとともに、所定の作業位置で回路基板5を位置決めする。基板搬送装置40は、第1搬送装置41と第2搬送装置42を2列並設したダブルコンベアタイプである。
【0024】
図1に示されるように、部品移載装置50は、フレーム4に固定されており、XYロボットタイプである。部品移載装置50は、Y軸駆動装置50Y及びX軸駆動装置50Xを備えている。Y軸駆動装置50Yは、Y軸スライダ53をY軸方向に移動可能に構成されている。X軸駆動装置50Xは、Y軸スライダ53に設けられたX軸スライダをX軸方向に移動可能に構成されている。X軸スライダには、搭載ヘッド60及びマーク撮像装置70が固定されている。搭載ヘッド60は、電子部品を吸着するための吸着ノズルを有する。マーク撮像装置70は、CCDカメラで構成されるマークカメラを有する。マークカメラは、部品供給装置10、ノズルストッカ30、基板搬送装置40、及び回路基板5の所定位置に印された基準マークを撮像し、これら構成要素の位置確認を行うために用いられる。搭載ヘッド60及びマーク撮像装置70は、Y軸駆動装置50Y及びX軸駆動装置50Xを利用して、部品供給装置10、パーツ撮像装置20、ノズルストッカ30、及び基板搬送装置40の上方をX−Y平面で移動可能である。
【0025】
図2を参照し、Y軸駆動装置50Yの概略を説明する。Y軸駆動装置50Yは、第1固定部51、第2固定部52、及び第1固定部51と第2固定部52の間を伸びているリニア駆動軸54及び一対の直動ガイドレール56a,56bを有する。第1固定部51と第2固定部52は、フレーム4に固定されており、Y軸方向に離れて配置されている。リニア駆動軸54は、一端が第1固定部51の第1リニア軸固定部51aに固定されており、他端が第2固定部52の第2リニア軸固定部52aに固定されている。一対の直動ガイドレール56a,56bの各々は、一端が第1固定部51の第1ガイド固定部51b,51cに固定されており、他端が第2固定部52の第2ガイド固定部52b,52cに固定されている。一対の直動ガイドレール56a,56bは、リニア駆動軸54を間に置いてX軸方向に離れて配置されている。リニア駆動軸54と一対の直動ガイドレール56a,56bは、X−Y平面内に配置されている。
【0026】
Y軸駆動装置50Yはさらに、Y軸方向に沿って移動可能に構成されている可動部55を有している。可動部55は、Y軸スライダ53(
図1参照)と4つのローラ部58a,58b,58c,58dと可動子57を有している。4つのローラ部58a,58b,58c,58dと可動子57は、Y軸スライダ53に固定されている。ローラ部58a,58b,58c,58dは、直動ガイドレール56a,56bにベアリングを介して当接しており、Y軸方向に摺動可能に構成されている。また、ローラ部58a,58b,58c,58dは、直動ガイドレール56a,56bに対してX軸方向及びZ軸方向への動きが規制されている。このように、4つのローラ部58a,58b,58c,58dで支持されるY軸スライダ53及び可動子57も、X軸方向及びZ軸方向への動きが規制されるとともに、Y軸方向に摺動可能となっている。
【0027】
図3に示されるように、リニア駆動軸54は、円筒型であり、磁束を透過可能な非磁性材料(例えばステンレス鋼)のパイプにより形成されている。リニア駆動軸54の内部には、N極とS極が交互に配置されるように、複数の永久磁石54aが設けられている。可動子57には貫通孔が形成されており、リニア駆動軸54がその貫通孔を貫通している。可動子57は、貫通孔の周囲を巻回するコイル57aを有している。可動子57は、コイル57aに電流を流すことでコイル57aに発生するローレンツ力を推進力として利用し、Y軸方向に沿って移動する。ここで、可動子57とは、固定子(この例ではリニア駆動軸54)から駆動力が与えられる部分として定義される。本実施形態のように、リニア駆動軸54を囲繞する構成の可動子57では、可動子57の長手方向の幅がリニア駆動軸54を囲繞している範囲として定義される。
【0028】
図2に示されるように、Y軸駆動装置50Yはさらに、4つの光無線通信器81,82,83,84を備えている。これらの光無線通信器81,82,83,84はいずれも、光信号を送信するためのレーザ素子と光信号を受信するための光電変換素子を有しており、光信号の送受信が可能に構成されている。第1光無線通信器81は、第1固定部51の第1リニア軸固定部51aに固定されており、レーザ素子の光出射面及び光電変換素子の光入射面が第3光無線通信器83に向くように配置されている。第2光無線通信器82は、第2固定部52の第2リニア軸固定部52aに固定されており、レーザ素子の光出射面及び光電変換素子の光入射面が第4光無線通信器83に向くように配置されている。第3光無線通信器83は、可動子57のY軸方向の一端に固定されており、レーザ素子の光出射面及び光電変換素子の光入射面が第1光無線通信器81に向くように配置されている。第4光無線通信器84は、可動子57のY軸方向の他端に固定されており、レーザ素子の光出射面及び光電変換素子の光入射面が第2光無線通信器82に向くように配置されている。第1光無線通信器81と第3光無線通信器83は、光信号を送受信可能に構成されており、第1通信経路を提供する。第2光無線通信器82と第4光無線通信器84は、光信号を送受信可能に構成されており、第2通信経路を提供する。
【0029】
図4に示されるように、実装機1に組み込まれる制御装置100は、リニアモーターを用いたY軸スライダ53の駆動機構を制御する。さらに、制御装置100は、選択装置110及び複数の光無線通信器81,82,83,84で構成される光無線通信システム80を介して、各種の機能装置(X軸スライダの駆動機構、搭載ヘッド60の吸着ノズル、及びマーク撮像装置70のマークカメラなど)を制御する。選択装置110は、第1光無線通信器81と第3光無線通信器83の間の第1通信経路と第2光無線通信器82と第4光無線通信器84の間の第2通信経路のいずれか一方を選択し、制御装置100と各機能装置の間の通信を行う。光無線システム80を介して送受信される光信号は、X軸スライダを駆動する駆動信号、搭載ヘッド60の吸着ノズル及びマーク撮像装置70のマークカメラの制御信号、及びマーク撮像装置70で撮像された撮像対象の画像データを伝送する。
【0030】
図5に、可動部55の位置に応じて第1通信経路と第2通信経路のいずれか一方を選択する選択装置110の選択プログラムのフローを示す。可動部55の位置は、可動部55に設けられた位置センサーから取得される。この位置センサーは、可動部55を駆動するときに用いられるエンコーダを利用することができる。
【0031】
ステップS1では、可動部55に設けられた位置センサーから可動部55の位置情報を取得する。この位置情報は、第1固定部51(
図2参照)側に設定された原点からの距離である。ステップS2では、可動部55の位置が閾値Kと比較される。ここで、閾値Kは、第1固定部51と第2固定部52の間の中間点に対応した距離値である。このため、可動部55の位置が閾値K以下であれば、第1通信経路の距離が第2通信経路の距離以下である。この場合、ステップS3に進み、第1通信経路が選択され、第1通信経路で通信される光信号が有効とされる。可動部55の位置が閾値Kよりも大きいと、第1通信経路の距離が第2通信経路の距離よりも長い。この場合、ステップS4に進み、第2通信経路が選択され、第2通信経路で通信される光信号が有効とされる。このように、Y軸駆動装置50Yでは、相対的に距離が短い方の通信経路が選択され、その通信経路で通信される光信号が有効とされる。
【0032】
光信号の通信品質は、通信経路の距離に大きく依存しており、通信経路の距離が長くなるほど低下する。本実施形態のY軸駆動装置50Yでは、2つの通信経路を利用して固定部51,52と可動部55の間で通信を行うことによって、通信経路の距離を短くすることができ、通信品質の低下を抑えることができる。
【0033】
図6に、光信号の受信光強度に応じて第1通信経路と第2通信経路のいずれか一方を選択する選択プログラムのフローを示す。
【0034】
ステップS11では、第1通信経路で伝送される光信号の受信光強度及び第2通信経路で伝送される光信号の受信光強度が取得される。具体的には、第1通信経路で伝送される光信号の受信光強度は、第1光無線通信器81に設けられた光電変換素子で変換された電気信号の電流値又は電圧値で代替される。第2通信経路で伝送される光信号の受信光強度は、第2光無線通信器82に設けられた光電変換素子で変換された電気信号の電流値又は電圧値で代替される。
【0035】
ステップS12では、第1通信経路の受信光強度と第2通信経路の受信光強度が比較される。第1通信経路の受信光強度が第2通信経路の受信光強度以上であれば、ステップS13に進み、第1通信経路が選択され、第1通信経路で通信される光信号が有効とされる。第1通信経路の受信光強度が第2通信経路の受信光強度よりも弱ければ、ステップS14に進み、第2通信経路が選択され、第2通信経路で通信される光信号が有効とされる。このように、Y軸駆動装置50Yでは、相対的に受信光強度が強い方の通信経路が選択され、その通信経路で通信される光信号が有効とされる。このように、本実施形態のY軸駆動装置50Yでは、2つの通信経路のうちの受信光強度が強い方の通信経路を利用して通信を行うので、通信品質の低下を抑えることができる。
【0036】
また、
図2に示されるように、Y軸駆動装置50Yでは、第3光無線通信器83及び第4光無線通信器84が、リニア駆動軸54の鉛直上方に配置されている。具体的には、鉛直方向に沿って観測したときに、第1光無線通信器81と第3光無線通信器83の間の光信号の光軸がリニア駆動軸54とオーバーラップしている。さらに、鉛直方向に沿って観測したときに、第2光無線通信器82と第4光無線通信器84の間の光信号の光軸がリニア駆動軸54とオーバーラップしている。このような位置関係に配置されていると、可動部55が衝撃によって駆動軸方向に対して傾いたとしても、光信号の光軸の傾きを抑えることができる。Y軸駆動装置50Yは、この点においても通信品質の低下を抑えることができる。
【0037】
なお、
図7に示されるように、第3光無線通信器83及び第4光無線通信器84がローラ部58a,58bに固定され、直動ガイドレール56aの鉛直上方に配置されてもよい。この場合、第1光無線通信器81は、第3光無線通信器83と第1通信経路を形成するために、第1固定部51の第1ガイド固定部51bに固定されている。第4光無線通信器84は、第2光無線通信器82と第2通信経路を形成するために、第2固定部52の第2ガイド固定部52bに固定されている。この例でも、第3光無線通信器83及び第4光無線通信器84が直動ガイドレール56aの鉛直上方に配置されているので、可動部55が衝撃によって駆動軸方向に対して傾いたとしても、光信号の光軸の傾きを抑えることができる。この例のY軸駆動装置50Yも、通信品質の低下を抑えることができる。
【0038】
以上、本技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。