特許第5847318号(P5847318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847318
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】光無線通信器を有する駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/114 20130101AFI20151224BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   H04B9/00 114
   H05K13/04 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-537948(P2014-537948)
(86)(22)【出願日】2012年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2012074871
(87)【国際公開番号】WO2014049773
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神藤 高広
(72)【発明者】
【氏名】廣田 重元
(72)【発明者】
【氏名】長坂 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】今寺 泰章
【審査官】 高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−269040(JP,A)
【文献】 特開2009−274786(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/013053(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/053031(WO,A1)
【文献】 特開2008−193760(JP,A)
【文献】 特開2003−92491(JP,A)
【文献】 特開2001−48433(JP,A)
【文献】 特開平6−164192(JP,A)
【文献】 特開2001−8430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H05K 13/04
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸駆動装置と第2軸駆動装置を有する駆動装置であって、
前記第1軸駆動装置は、
第1固定部と、
第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部の間を第1軸に沿って直動可能に構成されている第1スライダを有する可動部と、
前記第1固定部と前記第2固定部の間を前記第1軸に沿って伸びており、前記可動部の前記第1スライダの鉛直上方を伸びており、前記可動部に駆動力を与える駆動軸と、
前記第1固定部に設けられている第1光無線通信器と、
前記第2固定部に設けられている第2光無線通信器と、
前記可動部に設けられており、前記駆動軸の鉛直上方に配置されており、前記第1光無線通信器と通信可能に構成されている第3光無線通信器と、
前記可動部に設けられており、前記駆動軸の鉛直上方に配置されており、前記第2光無線通信器と通信可能に構成されている第4光無線通信器と、を備えており、
前記第2軸駆動装置は、
前記可動部の前記第1スライダに設けられており、前記第1軸とは異なる第2軸に沿って移動可能に構成されている第2スライダと、を備える、
駆動装置。
【請求項2】
前記第1光無線通信器と前記第3光無線通信器の間の第1通信経路と前記第2光無線通信器と前記第4光無線通信器の間の第2通信経路のいずれか一方を選択する選択装置をさらに備える請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記選択装置は、前記可動部の位置に応じて前記第1通信経路と前記第2通信経路のいずれか一方を選択する請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記選択装置は、前記第1通信経路と前記第2通信経路の受信光強度を比較し、受信光強度が強い方の通信経路を選択する請求項2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動軸は、長手方向に沿ってN極とS極が交互に配置された磁石を有しており、
前記可動部は、前記駆動軸の周囲を巻回するコイルを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
第1軸駆動装置と第2軸駆動装置を有する駆動装置であって、
前記第1軸駆動装置は、
第1固定部と、
第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部の間を第1軸に沿って直動可能に構成されている第1スライダを有する可動部と、
前記第1固定部と前記第2固定部の間を前記第1軸に沿って伸びており、前記可動部の前記第1スライダの鉛直上方を伸びており、前記可動部に駆動力を与える駆動軸と、
前記第1固定部に設けられている第1光無線通信器と、
前記可動部に設けられており、前記駆動軸の鉛直上方に配置されており、前記第1光無線通信器と通信可能に構成されている第3光無線通信器と、を備えており、
前記第2軸駆動装置は、
前記可動部の前記第1スライダに設けられており、前記第1軸とは異なる第2軸に沿って移動可能に構成されている第2スライダと、を備える、
駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の駆動装置を備える基板作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、光無線通信器を有する駆動装置に関する。本明細書で開示される技術は特に、基板作業機に設けられている駆動装置に関する。ここでいう基板作業機は、基板に対して所定の作業を行うものであり、例えば、回路基板にクリームはんだを印刷するはんだ印刷機、回路基板に電子部品を実装する実装機(表面実装機又はチップマウンタともいう)、電子部品が実装された回路基板を検査する基板検査機などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
基板作業機には、単軸又は複数軸で可動部を駆動する駆動装置が設けられている。例えば、基板作業機の一例である実装機は、吸着ノズル及びマークカメラなどの機能装置が搭載された可動部をX−Y平面で駆動する駆動装置を備えている。可動部に設けられた機能装置への信号及び/又は機能装置からの信号を伝送するために、光無線通信器を利用する技術が知られており、特開平4−309974号公報及び特開平10−261996号公報にその技術が開示されている。
【0003】
駆動装置に設けられる光無線通信器は、光信号の光軸が可動部の駆動方向に対して平行となるように配置されている。これにより、可動部が光無線通信器の光信号の光軸に沿って移動するので、安定した通信を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、可動部が移動を開始するとき、又は、可動部が移動を停止するとき、衝撃によって可動部が傾くことがある。このような傾きが生じると、可動部に設けられている光無線通信器も傾き、光信号の光軸も傾くこととなる。光信号の通信距離が長くなると、このような傾きの影響が大きくなり、通信品質が低下する。本明細書では、光無線通信器を有する駆動装置において、このような不具合を抑える技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される駆動装置の一実施形態は、第1固定部、第2固定部、第1固定部と第2固定部の間を直動可能に構成されている可動部、第1固定部に設けられている第1光無線通信器、第2固定部に設けられている第2光無線通信器、可動部に設けられているとともに第1光無線通信器と通信可能に構成されている第3光無線通信器、及び可動部に設けられているとともに第2光無線通信器と通信可能に構成されている第4光無線通信器を備えている。
【0006】
本明細書で開示される駆動装置では、可動部と固定部の間に少なくとも2つの通信経路が提供されている。このような実施形態では、一方の通信経路のみの場合に比して、固定部と可動部の間の通信距離を短くすることができる。このため、可動部が傾いたときの通信品質の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実装機の外観斜視図を示す。
図2】Y軸駆動装置の一例の外観斜視図を模式的に示す。
図3】リニア駆動軸の構成を示す。
図4】実装機の構成の一部を示す。
図5】可動部の位置に応じて通信経路を選択する選択装置の選択プログラムのフローを示す。
図6】受信光強度に応じて通信経路を選択する選択装置の選択プログラムのフローを示す。
図7】Y軸駆動装置の他の一例の外観斜視図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0009】
本明細書で開示される駆動装置の一実施形態は、第1固定部、第2固定部、第1固定部と第2固定部の間を直動可能に構成されている可動部、第1固定部に設けられている第1光無線通信器、第2固定部に設けられている第2光無線通信器、可動部に設けられているとともに第1光無線通信器と通信可能に構成されている第3光無線通信器、及び可動部に設けられているとともに第2光無線通信器と通信可能に構成されている第4光無線通信器を備えている。可動部を駆動する機構は特に限定されるものではない。可動部を駆動する駆動機構には、一例では、リニアモーター又はボールねじを用いた駆動機構が含まれる。第1光無線通信器と第3光無線通信器は、一方向に通信を行ってもよく、双方向に通信を行ってもよい。同様に、第2光無線通信器と第4光無線通信器も、一方向に通信を行ってもよく、双方向に通信を行ってもよい。
【0010】
本明細書で開示される駆動装置では、第1光無線通信器と第3光無線通信器の間の第1通信経路と第2光無線通信器と第4光無線通信器の間の第2通信経路のいずれか一方を選択する選択装置をさらに備えていてもよい。選択装置が第1通信経路と第2通信経路のいずれか一方を選択する要件は、特に限定されるものではない。
【0011】
選択装置は、可動部の位置に応じて、第1通信経路と第2通信経路のいずれか一方を選択してもよい。ここで、可動部の位置とは、第1固定部と第2固定部の間における位置である。可動部の位置には、第1固定部からの距離、第2固定部からの距離、又は第1固定部と第2固定部の間に設定された原点からの正負の距離が含まれる。また、第3光無線通信器と第4光無線通信器が可動部に固定されていることから、第1光無線通信器と第3光無線通信器の間の第1通信経路の距離と第2光無線通信器と第4光無線通信器の間の第2通信経路の距離は、可動部の位置と技術的に同義とすることができる。光信号の通信品質は、可動部の位置、すなわち、通信経路の距離に大きく依存する。このため、可動部の位置に応じて第1通信経路と第2通信経路のいずれか一方を選択することで、通信品質を良好に維持することができる。なお、選択装置による第1通信経路と第2通信経路の選択は、第1通信経路の距離と第2通信経路の距離の大小関係のみで決まるとは限らない。他の要件を考慮してもよい。
【0012】
また、選択装置は、第1通信経路と第2通信経路の受信光強度を比較し、受信光強度が高い方の通信経路を選択してもよい。このように、受信光強度を比較することで、通信品質の良好な方を選択することができるので、通信品質を良好に維持することができる。
【0013】
本明細書で開示される駆動装置は、第1固定部と第2固定部の間を伸びており、可動部に駆動力を与える駆動軸をさらに備えていてもよい。この場合、第3光無線通信器は、駆動軸の鉛直上方に配置されていてもよい。第4光無線通信器は、駆動軸の鉛直上方に配置されていてもよい。ここで、光無線通信器が駆動軸の鉛直上方に配置されているとは、鉛直方向に沿って観測したときに、光無線通信器の少なくとも一部が駆動軸とオーバーラップすることをいう。より具体的には、鉛直方向に沿って観測したときに、第1光無線通信器と第3光無線通信器の間の光信号の光軸が駆動軸とオーバーラップするのが望ましい。同様に、鉛直方向に沿って観測したときに、第2光無線通信器と第4光無線通信器の間の光信号の光軸が駆動軸とオーバーラップするのが望ましい。第3光無線通信器及び第4光無線通信器が駆動軸の鉛直上方に配置されていると、可動部が衝撃によって傾いたとしても、光信号の光軸の傾きを抑えることができる。
【0014】
本明細書で開示される駆動装置では、駆動軸が、長手方向に沿ってN極とS極が交互に配置された磁石を有していてもよい。この場合、可動部は、駆動軸の周囲を巻回するコイルを有していてもよい。この実施形態の駆動装置は、可動部の駆動にリニアモーターを用いた駆動機構を利用している。
【0015】
本明細書で開示される駆動装置は、第1固定部と第2固定部の間を伸びており、可動部をガイドする直動ガイドをさらに備えていてもよい。この場合、第3光無線通信器は、直動ガイドの鉛直上方に配置されていてもよい。第4光無線通信器は、直動ガイドの鉛直上方に配置されていてもよい。ここで、光無線通信器が直動ガイドの鉛直上方に配置されているとは、鉛直方向に沿って観測したときに、光無線通信器の少なくとも一部が直動ガイドとオーバーラップすることをいう。より具体的には、鉛直方向に沿って観測したときに、第1光無線通信器と第3光無線通信器の間の光信号の光軸が直動ガイドとオーバーラップするのが望ましい。同様に、鉛直方向に沿って観測したときに、第2光無線通信器と第4光無線通信器の間の光信号の光軸が直動ガイドとオーバーラップするのが望ましい。第3光無線通信器及び第4光無線通信器が直動ガイドの鉛直上方に配置されていると、可動部が衝撃によって傾いたとしても、光信号の光軸の傾きを抑えることができる。
【0016】
本明細書で開示される駆動装置の他の一実施形態は、第1固定部、第2固定部、第1固定部と第2固定部の間を直動可能に構成されている可動部、第1固定部と第2固定部の間を伸びているとともに可動部に駆動力を与える駆動軸、第1固定部に設けられている第1光無線通信器、可動部に設けられているとともに第1光無線通信器と通信可能に構成されている第3光無線通信器を備えている。第3光無線通信器は、駆動軸の鉛直上方に配置されている。可動部が衝撃によって傾いたとしても、光信号の光軸の傾きを抑えることができる。
【0017】
本明細書で開示される駆動装置のさらに他の一実施形態は、第1固定部、第2固定部、第1固定部と第2固定部の間を直動可能に構成されている可動部、第1固定部と第2固定部の間を伸びているとともに可動部をガイドする直動ガイド、第1固定部に設けられている第1光無線通信器、可動部に設けられているとともに第1光無線通信器と通信可能に構成されている第3光無線通信器を備えている。第3光無線通信器は、直動ガイドの鉛直上方に配置されている。可動部が衝撃によって傾いたとしても、光信号の光軸の傾きを抑えることができる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照して、回路基板上に集積回路を形成する際に用いられる実装機を説明する。回路基板上の集積回路は、はんだ印刷機、実装機、及びリフロー炉を順に搬送されて形成される。はんだ印刷機は、回路基板上の電子部品の搭載位置にクリームはんだを印刷する。実装機は、クリームはんだが印刷された回路基板上の搭載位置に電子部品を搭載する。リフロー炉は、回路基板に熱処理を施すことで電子部品を回路基板上にハンダ付けする。
【0019】
図1に示されるように、実装機1は、テーブル3上に隣接して配置されている複数のモジュール2を備えている。モジュール2の各々は、共通した構成となっており、筐体として機能するフレーム4内に複数の装置を備えている。図1は、2つのモジュール2が隣接している例を示しており、2つのモジュール2のうちの1つのモジュール2の外装板を透かした状態で示している。モジュール2は、部品供給装置10、パーツカメラを有するパーツ撮像装置20、ノズルストッカ30、基板搬送装置40、部品移載装置50、搭載ヘッド60、及びマークカメラを有するマーク撮像装置70を備える。また、モジュール2の各々は、外装板の表面に入出力装置6を備えている。この入出力装置6は、オペレータ入力を受け付け可能であるとともに、モジュール2のステータス情報及びオペレータへの各種指示信号を表示可能に構成されている。
【0020】
図1に示されるように、部品供給装置10は、回路基板5に搭載する複数種類の電子部品を部品吸着位置に供給する装置であり、複数のカセット式のフィーダ11が並設して構成されている。フィーダ11のフィーダ本体12は、フレーム4に着脱可能に構成されている。フィーダ11は、電子部品がテーピングされているキャリアテープが巻回されたテープリール13を有している。テープリール13からキャリアテープが所定ピッチずつ送り出され、電子部品が部品吸着位置に順次供給される。
【0021】
図1に示されるように、パーツ撮像装置20は、フレーム4に固定されており、部品供給装置10と基板搬送装置40の間に配置されている。パーツ撮像装置20は、CCDカメラで構成されるパーツカメラを有する。電子部品は、フィーダ11の部品吸着位置で吸着された後、基板搬送装置40に位置決めされている回路基板5に搭載される前に、パーツ撮像装置20の上方で停止され、パーツカメラで撮像される。実装機1は、パーツ撮像装置20で撮像した電子部品の画像データを利用して、電子部品の識別及び電子部品の吸着姿勢を認識する。電子部品の吸着姿勢は、電子部品の画像データを画像処理し、吸着ノズルの中心軸からの電子部品の位置ずれ及び吸着ノズルの中心軸回りの電子部品の角度ずれを検出することによって認識される。電子部品の吸着姿勢は、電子部品が回路基板5に搭載される前に吸着ノズルが自転することによって補正される。
【0022】
図1に示されるように、ノズルストッカ30は、パーツ撮像装置20の近傍に設けられており、複数の吸着ノズルが収容される複数のノズル収容穴を備えている。例えば、ノズルストッカ30には、使用中の吸着ノズルと同種の良品吸着ノズルが収容されており、使用中の吸着ノズルが不良となったときに、ノズルストッカ30に収容されている良品吸着ノズルを不良吸着ノズルと交換される。あるいは、ノズルストッカ30には、複数種類の吸着ノズルが収容されており、回路基板5に搭載される電子部品の種類に応じて所定の吸着ノズルが選択される。
【0023】
図1に示されるように、基板搬送装置40は、フレーム4に固定されており、回路基板5を搬送方向(X軸方向)に沿って搬送するとともに、所定の作業位置で回路基板5を位置決めする。基板搬送装置40は、第1搬送装置41と第2搬送装置42を2列並設したダブルコンベアタイプである。
【0024】
図1に示されるように、部品移載装置50は、フレーム4に固定されており、XYロボットタイプである。部品移載装置50は、Y軸駆動装置50Y及びX軸駆動装置50Xを備えている。Y軸駆動装置50Yは、Y軸スライダ53をY軸方向に移動可能に構成されている。X軸駆動装置50Xは、Y軸スライダ53に設けられたX軸スライダをX軸方向に移動可能に構成されている。X軸スライダには、搭載ヘッド60及びマーク撮像装置70が固定されている。搭載ヘッド60は、電子部品を吸着するための吸着ノズルを有する。マーク撮像装置70は、CCDカメラで構成されるマークカメラを有する。マークカメラは、部品供給装置10、ノズルストッカ30、基板搬送装置40、及び回路基板5の所定位置に印された基準マークを撮像し、これら構成要素の位置確認を行うために用いられる。搭載ヘッド60及びマーク撮像装置70は、Y軸駆動装置50Y及びX軸駆動装置50Xを利用して、部品供給装置10、パーツ撮像装置20、ノズルストッカ30、及び基板搬送装置40の上方をX−Y平面で移動可能である。
【0025】
図2を参照し、Y軸駆動装置50Yの概略を説明する。Y軸駆動装置50Yは、第1固定部51、第2固定部52、及び第1固定部51と第2固定部52の間を伸びているリニア駆動軸54及び一対の直動ガイドレール56a,56bを有する。第1固定部51と第2固定部52は、フレーム4に固定されており、Y軸方向に離れて配置されている。リニア駆動軸54は、一端が第1固定部51の第1リニア軸固定部51aに固定されており、他端が第2固定部52の第2リニア軸固定部52aに固定されている。一対の直動ガイドレール56a,56bの各々は、一端が第1固定部51の第1ガイド固定部51b,51cに固定されており、他端が第2固定部52の第2ガイド固定部52b,52cに固定されている。一対の直動ガイドレール56a,56bは、リニア駆動軸54を間に置いてX軸方向に離れて配置されている。リニア駆動軸54と一対の直動ガイドレール56a,56bは、X−Y平面内に配置されている。
【0026】
Y軸駆動装置50Yはさらに、Y軸方向に沿って移動可能に構成されている可動部55を有している。可動部55は、Y軸スライダ53(図1参照)と4つのローラ部58a,58b,58c,58dと可動子57を有している。4つのローラ部58a,58b,58c,58dと可動子57は、Y軸スライダ53に固定されている。ローラ部58a,58b,58c,58dは、直動ガイドレール56a,56bにベアリングを介して当接しており、Y軸方向に摺動可能に構成されている。また、ローラ部58a,58b,58c,58dは、直動ガイドレール56a,56bに対してX軸方向及びZ軸方向への動きが規制されている。このように、4つのローラ部58a,58b,58c,58dで支持されるY軸スライダ53及び可動子57も、X軸方向及びZ軸方向への動きが規制されるとともに、Y軸方向に摺動可能となっている。
【0027】
図3に示されるように、リニア駆動軸54は、円筒型であり、磁束を透過可能な非磁性材料(例えばステンレス鋼)のパイプにより形成されている。リニア駆動軸54の内部には、N極とS極が交互に配置されるように、複数の永久磁石54aが設けられている。可動子57には貫通孔が形成されており、リニア駆動軸54がその貫通孔を貫通している。可動子57は、貫通孔の周囲を巻回するコイル57aを有している。可動子57は、コイル57aに電流を流すことでコイル57aに発生するローレンツ力を推進力として利用し、Y軸方向に沿って移動する。ここで、可動子57とは、固定子(この例ではリニア駆動軸54)から駆動力が与えられる部分として定義される。本実施形態のように、リニア駆動軸54を囲繞する構成の可動子57では、可動子57の長手方向の幅がリニア駆動軸54を囲繞している範囲として定義される。
【0028】
図2に示されるように、Y軸駆動装置50Yはさらに、4つの光無線通信器81,82,83,84を備えている。これらの光無線通信器81,82,83,84はいずれも、光信号を送信するためのレーザ素子と光信号を受信するための光電変換素子を有しており、光信号の送受信が可能に構成されている。第1光無線通信器81は、第1固定部51の第1リニア軸固定部51aに固定されており、レーザ素子の光出射面及び光電変換素子の光入射面が第3光無線通信器83に向くように配置されている。第2光無線通信器82は、第2固定部52の第2リニア軸固定部52aに固定されており、レーザ素子の光出射面及び光電変換素子の光入射面が第4光無線通信器83に向くように配置されている。第3光無線通信器83は、可動子57のY軸方向の一端に固定されており、レーザ素子の光出射面及び光電変換素子の光入射面が第1光無線通信器81に向くように配置されている。第4光無線通信器84は、可動子57のY軸方向の他端に固定されており、レーザ素子の光出射面及び光電変換素子の光入射面が第2光無線通信器82に向くように配置されている。第1光無線通信器81と第3光無線通信器83は、光信号を送受信可能に構成されており、第1通信経路を提供する。第2光無線通信器82と第4光無線通信器84は、光信号を送受信可能に構成されており、第2通信経路を提供する。
【0029】
図4に示されるように、実装機1に組み込まれる制御装置100は、リニアモーターを用いたY軸スライダ53の駆動機構を制御する。さらに、制御装置100は、選択装置110及び複数の光無線通信器81,82,83,84で構成される光無線通信システム80を介して、各種の機能装置(X軸スライダの駆動機構、搭載ヘッド60の吸着ノズル、及びマーク撮像装置70のマークカメラなど)を制御する。選択装置110は、第1光無線通信器81と第3光無線通信器83の間の第1通信経路と第2光無線通信器82と第4光無線通信器84の間の第2通信経路のいずれか一方を選択し、制御装置100と各機能装置の間の通信を行う。光無線システム80を介して送受信される光信号は、X軸スライダを駆動する駆動信号、搭載ヘッド60の吸着ノズル及びマーク撮像装置70のマークカメラの制御信号、及びマーク撮像装置70で撮像された撮像対象の画像データを伝送する。
【0030】
図5に、可動部55の位置に応じて第1通信経路と第2通信経路のいずれか一方を選択する選択装置110の選択プログラムのフローを示す。可動部55の位置は、可動部55に設けられた位置センサーから取得される。この位置センサーは、可動部55を駆動するときに用いられるエンコーダを利用することができる。
【0031】
ステップS1では、可動部55に設けられた位置センサーから可動部55の位置情報を取得する。この位置情報は、第1固定部51(図2参照)側に設定された原点からの距離である。ステップS2では、可動部55の位置が閾値Kと比較される。ここで、閾値Kは、第1固定部51と第2固定部52の間の中間点に対応した距離値である。このため、可動部55の位置が閾値K以下であれば、第1通信経路の距離が第2通信経路の距離以下である。この場合、ステップS3に進み、第1通信経路が選択され、第1通信経路で通信される光信号が有効とされる。可動部55の位置が閾値Kよりも大きいと、第1通信経路の距離が第2通信経路の距離よりも長い。この場合、ステップS4に進み、第2通信経路が選択され、第2通信経路で通信される光信号が有効とされる。このように、Y軸駆動装置50Yでは、相対的に距離が短い方の通信経路が選択され、その通信経路で通信される光信号が有効とされる。
【0032】
光信号の通信品質は、通信経路の距離に大きく依存しており、通信経路の距離が長くなるほど低下する。本実施形態のY軸駆動装置50Yでは、2つの通信経路を利用して固定部51,52と可動部55の間で通信を行うことによって、通信経路の距離を短くすることができ、通信品質の低下を抑えることができる。
【0033】
図6に、光信号の受信光強度に応じて第1通信経路と第2通信経路のいずれか一方を選択する選択プログラムのフローを示す。
【0034】
ステップS11では、第1通信経路で伝送される光信号の受信光強度及び第2通信経路で伝送される光信号の受信光強度が取得される。具体的には、第1通信経路で伝送される光信号の受信光強度は、第1光無線通信器81に設けられた光電変換素子で変換された電気信号の電流値又は電圧値で代替される。第2通信経路で伝送される光信号の受信光強度は、第2光無線通信器82に設けられた光電変換素子で変換された電気信号の電流値又は電圧値で代替される。
【0035】
ステップS12では、第1通信経路の受信光強度と第2通信経路の受信光強度が比較される。第1通信経路の受信光強度が第2通信経路の受信光強度以上であれば、ステップS13に進み、第1通信経路が選択され、第1通信経路で通信される光信号が有効とされる。第1通信経路の受信光強度が第2通信経路の受信光強度よりも弱ければ、ステップS14に進み、第2通信経路が選択され、第2通信経路で通信される光信号が有効とされる。このように、Y軸駆動装置50Yでは、相対的に受信光強度が強い方の通信経路が選択され、その通信経路で通信される光信号が有効とされる。このように、本実施形態のY軸駆動装置50Yでは、2つの通信経路のうちの受信光強度が強い方の通信経路を利用して通信を行うので、通信品質の低下を抑えることができる。
【0036】
また、図2に示されるように、Y軸駆動装置50Yでは、第3光無線通信器83及び第4光無線通信器84が、リニア駆動軸54の鉛直上方に配置されている。具体的には、鉛直方向に沿って観測したときに、第1光無線通信器81と第3光無線通信器83の間の光信号の光軸がリニア駆動軸54とオーバーラップしている。さらに、鉛直方向に沿って観測したときに、第2光無線通信器82と第4光無線通信器84の間の光信号の光軸がリニア駆動軸54とオーバーラップしている。このような位置関係に配置されていると、可動部55が衝撃によって駆動軸方向に対して傾いたとしても、光信号の光軸の傾きを抑えることができる。Y軸駆動装置50Yは、この点においても通信品質の低下を抑えることができる。
【0037】
なお、図7に示されるように、第3光無線通信器83及び第4光無線通信器84がローラ部58a,58bに固定され、直動ガイドレール56aの鉛直上方に配置されてもよい。この場合、第1光無線通信器81は、第3光無線通信器83と第1通信経路を形成するために、第1固定部51の第1ガイド固定部51bに固定されている。第4光無線通信器84は、第2光無線通信器82と第2通信経路を形成するために、第2固定部52の第2ガイド固定部52bに固定されている。この例でも、第3光無線通信器83及び第4光無線通信器84が直動ガイドレール56aの鉛直上方に配置されているので、可動部55が衝撃によって駆動軸方向に対して傾いたとしても、光信号の光軸の傾きを抑えることができる。この例のY軸駆動装置50Yも、通信品質の低下を抑えることができる。
【0038】
以上、本技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
50Y:Y軸駆動装置
51:固定部
51a:第1リニア軸固定部
51b,51c:第1ガイド固定部
52:第2固定部
52a:第2リニア軸固定部
52b,52c:第2ガイド固定部
53:Y軸スライダ
54:リニア駆動軸
55:可動部
56a,56b:直動ガイドレール
57:可動子
58a,58b,58c,58d:ローラ部
81:第1光無線通信器
82:第2光無線通信器
83:第3光無線通信器
84:第4光無線通信器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7