【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、したがって、第1の局面において、一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造する方法であって、付加製造プロセスを用いることにより、a)非導電性基板を形成することと、b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、c)前記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、d)前記要素の間に電位差を付与するために適した、前記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、e)前記穿孔層における前記アパーチャを維持しかつシールするために、前記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することとを含む、方法、を提供する。
【0010】
したがって、本発明の実施形態は、付加製造プロセスによる3次元物品の製作を提供する。このような製造プロセスの使用は、物品のファブリック内にダイオードおよびトリオード等の能動電子構成要素が一体化された、潜在的に複雑な内的特性を有する3次元物品の製作を可能にする。物品の製造プロセスの一部分としての能動電子構成要素の製造および一体化のおかげで、電子構成要素の製造後の組立てまたは設置に対する必要性が存在しない。したがって、設置された電子構成要素を伴う物品の製造は、物品の実質的3次元構造の製造と同時に行われ得る。これは、電子構成要素の製造後の組立ておよび設置の考慮(アクセス可能な一体化インターフェース等を用いた多部品製造を必要とする従来技術の重荷となるアプローチ等)から製造プロセスを解放する。さらに、特に少数の物品が、例えば、プロトタイプ製造または概念実証製造において必要とされる場合、または、軌道または宇宙等における遠隔位置またはアクセス不可能位置において必要とされる場合に、製造のコストは、付加製造プロセスの使用のおかげで、劇的に低減される。
【0011】
3次元物品のファブリック内に能動電子部品を含めることは、付加的な構成要素、付属物がないおかげで、物品の全体重量を低減し得る。さらに、電子構成要素が、(例えば、物品内の知覚不可能位置、検出不可能位置、および/または目立たない位置において内的に)物品内に埋め込まれることにより、物品は、より簡素化され得る。能動電子構成要素が物品内に埋め込まれる場合、構成要素は、水分または空気等の流体に露出することから保護され得る。マイクロスケールにおける物品を製作する付加製造の能力は、全ての態様の用途において、潜在的に「インテリジェントな」(電子構成要素を含む意味での)物品を提供し、該物品としては、携帯電話のケースまたはカバー内に埋め込まれた電子部品、ケーブルシース内に埋め込まれた電子部品、ファブリックまたはおおい内に埋め込まれた電子部品、その他のデバイス(例えば、コンシューマデバイスまたはエンターテイメントデバイス)のケース、カバー、壁またはその他の構造的要素内に埋め込まれた電子部品、スペア部品に埋め込まれた電子部品等を含む。
【0012】
製造後の組立てまたは設置のための電気回路および構成要素の位置のアクセス可能性に対する必要性の除去は、電気回路および電子デバイスが、製造物品においていかにして設計され得、実装され得るかを、大幅に再定義する。本発明の実施形態は、個々の構成要素または接続部のアクセス可能性に対する必要性なしに、能動電子構成要素の正しい3次元アレンジメントおよびそれらの間の接続を提供する。これは、必要に応じて、制御下にある同じデバイスの回路により、潜在的には能動電子構成要素の再使用のために、物品の空間または体積の効率的な使用の増大を提供する。垂直方向の相互接続は、電子構成要素および回路の立方体アレンジメントまたはその他の3次元アレンジメント等の3次元処理要素を提供し得る。電子構成要素の積層アーキテクチャは、単一の3次元物品内の能動電子構成要素の層により製作され得る。電力の提供、電力の散逸、熱エネルギーの散逸等の共通サービスが、電力供給のための金属層、または、熱の散逸または移送のための熱効率のよい伝導物質の層等の、付加製造プロセスの一部分として含まれるサービス層の階層によって提供され得る。想定可能なところでは、能動電子構成要素によって生成された熱のような物品内からの熱の移送等のサービスを電子構成要素にさらに提供するための冷却材またはガス等の流体の連通のために、付加製造プロセスの一部分として製造されたチャネルおよび導管が提供され得る。
【0013】
熱イオン電子構成要素の使用の特定の利点は、シリコンに対するこのような構成要素の利益が、シリコントランジスタ等と同等であるということである。熱イオン構成要素は、相当のロバスト性を有しており、改善されたアナログ信号移送特性を提供する。例えば、熱イオン構成要素は、電磁パルスおよび太陽フレア活性に対して高耐性であり、衛星技術または重要なインフラシステムに対する用途に対して特定の利益を提供する。
【0014】
熱イオン電子構成要素の使用は、半導体の同等物によって大きく取って代わられてきたが、発明者らは、このような構成要素を製造することの単純性、付加製造の分野において現在存在するこのような構成要素に対する可能性、このような構成要素の有効性、およびそれらの信頼性に基づいて、付加製造の分野におけるこのような構成要素の驚くべき利益を認識した。
【0015】
好ましくは、基板、穿孔層、およびシール層のうちの1つ以上を形成することは、アパーチャと物品の排出ポートとの間に流体連通を提供するチャネルの形成を含み、排出ポートは、アパーチャにおいて真空のような状態を生成するために、アパーチャからガスを排出するために適している。
【0016】
好ましくは、付加製造プロセスは、シール層の形成時に、アパーチャに不活性ガスを入れるために、実質的に不活性ガスから構成されたシールされた雰囲気内で実行される。
【0017】
好ましくは、アノードおよびカソードは、アパーチャの両側に位置付けられる。
【0018】
好ましくは、カソードは、アパーチャにおける中央に置かれ、アノードは、アパーチャの壁の少なくとも一部分を占有する。
【0019】
好ましくは、付加製造プロセスは、押し出し堆積プロセスを含む。
【0020】
好ましくは、付加製造プロセスは、粒状物質結合プロセスを含む。
【0021】
好ましくは、方法は、使用中にカソードにより熱イオン放出を誘起するために、付加製造プロセスを用いることにより、カソードと熱的に近接してフィラメント要素を形成することをさらに含む。
【0022】
好ましくは、方法は、付加製造プロセスを用いることにより、アノード要素およびカソード要素から間隔を空けて配置され、かつ、アノード要素とカソード要素との間に位置付けられた、伝導性グリッド要素を形成することと、グリッドが、カソードからアノードへの電子の伝達を調節するように、グリッドに電気信号を提供するためにグリッドに対する伝導性電気接続部を堆積させることとをさらに含む。
【0023】
好ましくは、非導電性基板、穿孔層、およびシール層のうちの少なくとも1つは、セラミックで形成される。
【0024】
好ましくは、アノード、グリッド、および伝導性電気接続部は、ガリウム合金から形成される。
【0025】
好ましくは、ガリウム合金は、ガリウムおよびインジウムの二元共晶合金である。
【0026】
好ましくは、カソードは、タングステンを含む。
【0027】
したがって、本発明は、第2の局面において、任意の先行クレームのいずれかのプロセスによって製造された一体型能動電子構成要素を伴う物品を提供する。
【0028】
したがって、本発明は、第3の局面において、装置のファブリックと一体の3D印刷された熱イオン電子構成要素を含む3D印刷された装置を提供する。
【0029】
好ましくは、熱イオン電子構成要素は、カソードとアノードとを含むダイオードである。
【0030】
好ましくは、熱イオン電子構成要素は、カソードと、アノードと、カソードからアノードへの電子の通過を調節するグリッドとを含むトリオードである。
【0031】
好ましくは、装置は、3D印刷された回路をさらに含む。
【0032】
したがって、本発明は、第4の局面において、一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造するための付加製造装置を提供し、装置は、コンピュータシステムと、非導電性3次元構造を形成するように適合された第1の付加製造構成要素と、導電性3次元構造を形成するように適合された第2の付加製造構成要素とを含み、第1の付加製造構成要素および第2の付加製造構成要素は、コンピュータシステムの制御のもとで動作可能であり、コンピュータシステムは、a)非導電性基板を形成することと、b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、c)アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、d)要素の間に電位差を付与するために適した、要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、e)穿孔層におけるアパーチャを維持しかつシールするために、穿孔層の上に非導電性シール層を形成することとを行うように構成要素を制御するように適合されている。
【0033】
したがって、本発明は、第5の局面において、付加製造装置を制御するためのコンピュータシステムを提供し、付加製造装置は、非導電性物質および導電性物質の両方から3次元構造を同時に製造するように適合されており、コンピュータシステムは、上記方法にしたがって付加製造装置を制御するように動作可能である。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
3D印刷された装置であって、上記装置のファブリックと一体の3D印刷された熱イオン電子構成要素を含む、装置。
(項目2)
上記熱イオン電子構成要素は、カソードとアノードとを含むダイオードである、上記項目に記載の装置。
(項目3)
上記熱イオン電子構成要素は、カソードと、アノードと、上記カソードから上記アノードへの電子の通過を調節するグリッドとを含むトリオードである、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目4)
上記装置は、3D印刷された回路をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目5)
一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造する方法であって、
付加製造プロセスを用いることにより、
a)非導電性基板を形成することと、
b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、
c)上記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、
d)上記要素の間に電位差を付与するために適した、上記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、
e)上記穿孔層における上記アパーチャを維持しかつシールするために、上記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することと
を含む、方法。
(項目6)
上記基板、上記穿孔層、および上記シール層のうちの1つ以上を形成することは、上記アパーチャと上記物品の排出ポートとの間に流体連通を提供するチャネルを形成することを含み、上記排出ポートは、上記アパーチャにおいて真空のような状態を生成するために、上記アパーチャからガスを排出するために適している、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
上記付加製造プロセスは、上記シール層の形成時に上記アパーチャに不活性ガスを入れるために、実質的に不活性ガスから構成されたシールされた雰囲気内で実行される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
上記アノードおよび上記カソードは、上記アパーチャの両側に位置付けられる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
上記カソードは、上記アパーチャにおける中央に置かれ、上記アノードは、上記アパーチャの壁の少なくとも一部分を占有する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
上記付加製造プロセスは、押し出し堆積プロセスを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
上記付加製造プロセスは、粒状物質結合プロセスを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
使用中に上記カソードにより熱イオン放出を誘起するために、上記カソードと熱的に近接してフィラメント要素を形成するように、上記付加製造プロセスを用いることをさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
上記付加製造プロセスを用いることにより、
上記アノード要素および上記カソード要素から間隔を空けて配置され、かつ、上記アノード要素と上記カソード要素との間に位置付けられた、伝導性グリッド要素を形成することと、
上記グリッドが上記カソードから上記アノードへの電子の伝達を調節するように、上記グリッドに電気信号を提供するために上記グリッドに対する伝導性電気接続部を堆積させることと
をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
上記非導電性基板、上記穿孔層、および上記シール層のうちの少なくとも1つは、セラミックで形成される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
上記アノード、上記グリッド、および上記伝導性電気接続部は、ガリウム合金から形成される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
上記ガリウム合金は、ガリウムおよびインジウムの二元共晶合金である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
上記カソードは、タングステンを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
上記項目のいずれか一項に記載のプロセスによって製造される一体型能動電子構成要素を伴う物品。
(項目19)
一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造するための付加製造装置であって、
上記装置は、
コンピュータシステムと、
非導電性3次元構造を形成するように適合された第1の付加製造構成要素と、
導電性3次元構造を形成するように適合された第2の付加製造構成要素と
を含み、
上記第1の付加製造構成要素および上記第2の付加製造構成要素は、上記コンピュータシステムの制御のもとで動作可能であり、
上記コンピュータシステムは、
a)非導電性基板を形成することと、
b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、
c)上記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、
d)上記要素の間に電位差を付与するために適した、上記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、
e)上記穿孔層における上記アパーチャを維持しかつシールするために、上記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することと
を行うように上記構成要素を制御するように適合されている、装置。
(項目20)
付加製造装置を制御するためのコンピュータシステムであって、上記付加製造装置は、非導電性物質および導電性物質の両方から3次元構造を同時に製造するように適合されており、上記コンピュータシステムは、上記項目のいずれか一項に記載の方法を実行するように上記付加製造装置を制御するように動作可能である、コンピュータシステム。
(摘要)
一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造するための方法は、付加製造プロセスを用いることにより、a)非導電性基板を形成することと、b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、c)前記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、d)前記要素の間に電位差を付与するために適した、前記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、e)前記穿孔層における前記アパーチャを維持しかつシールするために、前記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することとを含む。