特許第5847343号(P5847343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847343
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】印刷された能動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01J 9/04 20060101AFI20151224BHJP
   H01J 9/14 20060101ALI20151224BHJP
   H01J 9/24 20060101ALI20151224BHJP
   H01J 9/28 20060101ALI20151224BHJP
   H01J 21/04 20060101ALI20151224BHJP
   H01J 21/10 20060101ALI20151224BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20151224BHJP
【FI】
   H01J9/04 A
   H01J9/14 A
   H01J9/24 A
   H01J9/28 A
   H01J21/04
   H01J21/10
   B33Y10/00
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-57628(P2015-57628)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-185545(P2015-185545A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】14250050.3
(32)【優先日】2014年3月21日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028587
【氏名又は名称】ブリティッシュ・テレコミュニケーションズ・パブリック・リミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRITISH TELECOMMUNICATIONS PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ガニーア−ハーコック
【審査官】 桐畑 幸▲廣▼
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−049305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 9/04
H01J 9/14
H01J 9/24
H01J 9/28
H01J 21/04
H01J 21/10
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造する方法であって、
付加製造プロセスを用いることにより、
a)非導電性基板を形成することと、
b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、
c)前記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、
d)前記要素の間に電位差を付与するために適した、前記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、
e)前記穿孔層における前記アパーチャを維持しかつシールするために、前記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記基板、前記穿孔層、および前記シール層のうちの1つ以上を形成することは、前記アパーチャと前記物品の排出ポートとの間に流体連通を提供するチャネルを形成することを含み、前記排出ポートは、前記アパーチャにおいて真空のような状態を生成するために、前記アパーチャからガスを排出するために適している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付加製造プロセスは、前記シール層の形成時に前記アパーチャに不活性ガスを入れるために、実質的に不活性ガスから構成されたシールされた雰囲気内で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アノードおよび前記カソードは、前記アパーチャの両側に位置付けられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カソードは、前記アパーチャにおける中央に置かれ、前記アノードは、前記アパーチャの壁の少なくとも一部分を占有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記付加製造プロセスは、押し出し堆積プロセスを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記付加製造プロセスは、粒状物質結合プロセスを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
使用中に前記カソードにより熱イオン放出を誘起するために、前記カソードと熱的に近接してフィラメント要素を形成するように、前記付加製造プロセスを用いることをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記付加製造プロセスを用いることにより、
前記アノード要素および前記カソード要素から間隔を空けて配置され、かつ、前記アノード要素と前記カソード要素との間に位置付けられた、伝導性グリッド要素を形成することと、
前記グリッドが前記カソードから前記アノードへの電子の伝達を調節するように、前記グリッドに電気信号を提供するために前記グリッドに対する伝導性電気接続部を堆積させることと
をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非導電性基板、前記穿孔層、および前記シール層のうちの少なくとも1つは、セラミックで形成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アノードおよび前記伝導性電気接続部のうちの少なくとも1つは、ガリウム合金から形成される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガリウム合金は、ガリウムおよびインジウムの二元共晶合金である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カソードは、タングステンを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造するための付加製造装置であって、
前記装置は、
コンピュータシステムと、
非導電性3次元構造を形成するように適合された第1の付加製造構成要素と、
導電性3次元構造を形成するように適合された第2の付加製造構成要素と
を含み、
前記第1の付加製造構成要素および前記第2の付加製造構成要素は、前記コンピュータシステムの制御のもとで動作可能であり、
前記コンピュータシステムは、
a)非導電性基板を形成することと、
b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、
c)前記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、
d)前記要素の間に電位差を付与するために適した、前記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、
e)前記穿孔層における前記アパーチャを維持しかつシールするために、前記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することと
を行うように前記構成要素を制御するように適合されている、装置。
【請求項15】
付加製造装置を制御するためのコンピュータシステムであって、前記付加製造装置は、非導電性物質および導電性物質の両方から3次元構造を同時に製造するように適合されており、前記コンピュータシステムは、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法を実行するように前記付加製造装置を制御するように動作可能である、コンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、能動電子構成要素の製造に関する。特に、本発明は、物品のファブリックと統合された、3D印刷された熱イオン電子構成要素を含む3D印刷された物品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
付加製造(3次元(3D)印刷としても知られる)は、付加プロセス(そのプロセスでは、固体対象物が形成されるまで、積層、接着、結合、または堆積が逐次なされる)により、デジタルモデル等のモデルから3次元固体対象物を製造するプロセスである。このようなアプローチは、物品が部品(部品自体は機械加工、鋳造、または成形され得る)の組立体から形成される伝統的な製造技術とは対照的である。
【0003】
従来の製造技術に対する付加製造の利点は、技術的利点および商業的利点を含め、多く存在する。技術的には、付加製造は、増加し続ける物質(プラスチック、金属、セラミックを含む)から形成されるべき3次元対象物のほぼ任意のアレンジメントを可能にする。アレンジメントは、複雑な特徴(内的なものであっても)を含み得る。なぜなら、製造のための付加アプローチは、複雑な構造を生成することが可能だからである。付加アプローチは、伝統的なアプローチと比較して、より少ない浪費を生じ、複数の製造物品の間により増加した一貫性を提供し、最小の設定が必要とされる初期設定により、向上した製造速度を提供し、新規な構造および形状ならびに新しい物質の組み合わせの利点を提供する。
【0004】
商業的には、付加製造は、特に製造のための物品数が比較的少ない場合に、伝統的な製造技術に対して相当のコスト節減を提供する。例えば、プロトタイプ、概念実証、スペア部品、および軌道または宇宙等における隔離位置または遠隔位置において製作される物品は、付加製造を用いて低コストで容易に製造される。また、この製造速度は、3次元物品が3次元設計から比較的高速に製作され得ることから、有益である。
【0005】
付加製造は、多くのアプローチをカバーする。押し出し堆積は、付加製造に対するアプローチであり、該アプローチにおいては、可動押し出し成形機(「プリントヘッド」)により、可動テーブルまたは支持部により、あるいは両方により、制御された態様で、物質のビーズが押し出される。押し出されたビーズは、迅速に硬化されて、物品の層または部分を形成し、該物品上では、さらなる押し出しが実行され得る。このようにして、物品が付加的に構築される。
【0006】
代替的アプローチは、金属またはポリマーの選択的な焼結または溶解等の、粒状物質の選択的な溶射である。このようなアプローチを用いることにより、例えば対流熱、レーザ、または電子ビームを用いて、粒状物質が層に堆積され、選択的に焼結され、溶解され、または結合される。選択は、積層態様における物品の3次元モデルに基づいてなされる。このようにして、物品が付加的に構築される。
【0007】
電気デバイスまたは電子デバイスを製作するための付加製造の使用は、厳しく束縛されてきた。なぜなら、付加製造は、多くの異なる物質から複雑な現代的な電子構成要素を製造するために適していないからである。付加製造は、電気接続のためのトレンチまたはルートとの組み合わせにおける構成要素ソケットおよび相互接続部を有する平面回路基板レイアウトの印刷において用途を見出されているが、付加製造プロセスに続く電気構成要素および電子構成要素の位置付け、設置、および/または組立てに対する必要性が、現在のところ存在する。製造後の組立ておよび/または設置に対するこの必要性は、構成要素位置、ソケット、およびルートが、付加製造されたプロダクトにおいてアクセス可能である必要があるという点で、相当の不利を有する。したがって、複雑な、内在化された、潜在的にアクセス不可能な構造を精密に製作する付加製造の極めて有益な特性は、電子分野においては完全に失われている。さらに、製造後の組立ておよび/または設置に対する必要性は、付加製造の利点を相当に侵食する、追加の製造ステップという重荷を課すことになる。
【0008】
したがって、上述した不利を伴わずに、付加製造アプローチを用いて電子デバイスを製作することは、有益であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、したがって、第1の局面において、一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造する方法であって、付加製造プロセスを用いることにより、a)非導電性基板を形成することと、b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、c)前記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、d)前記要素の間に電位差を付与するために適した、前記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、e)前記穿孔層における前記アパーチャを維持しかつシールするために、前記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することとを含む、方法、を提供する。
【0010】
したがって、本発明の実施形態は、付加製造プロセスによる3次元物品の製作を提供する。このような製造プロセスの使用は、物品のファブリック内にダイオードおよびトリオード等の能動電子構成要素が一体化された、潜在的に複雑な内的特性を有する3次元物品の製作を可能にする。物品の製造プロセスの一部分としての能動電子構成要素の製造および一体化のおかげで、電子構成要素の製造後の組立てまたは設置に対する必要性が存在しない。したがって、設置された電子構成要素を伴う物品の製造は、物品の実質的3次元構造の製造と同時に行われ得る。これは、電子構成要素の製造後の組立ておよび設置の考慮(アクセス可能な一体化インターフェース等を用いた多部品製造を必要とする従来技術の重荷となるアプローチ等)から製造プロセスを解放する。さらに、特に少数の物品が、例えば、プロトタイプ製造または概念実証製造において必要とされる場合、または、軌道または宇宙等における遠隔位置またはアクセス不可能位置において必要とされる場合に、製造のコストは、付加製造プロセスの使用のおかげで、劇的に低減される。
【0011】
3次元物品のファブリック内に能動電子部品を含めることは、付加的な構成要素、付属物がないおかげで、物品の全体重量を低減し得る。さらに、電子構成要素が、(例えば、物品内の知覚不可能位置、検出不可能位置、および/または目立たない位置において内的に)物品内に埋め込まれることにより、物品は、より簡素化され得る。能動電子構成要素が物品内に埋め込まれる場合、構成要素は、水分または空気等の流体に露出することから保護され得る。マイクロスケールにおける物品を製作する付加製造の能力は、全ての態様の用途において、潜在的に「インテリジェントな」(電子構成要素を含む意味での)物品を提供し、該物品としては、携帯電話のケースまたはカバー内に埋め込まれた電子部品、ケーブルシース内に埋め込まれた電子部品、ファブリックまたはおおい内に埋め込まれた電子部品、その他のデバイス(例えば、コンシューマデバイスまたはエンターテイメントデバイス)のケース、カバー、壁またはその他の構造的要素内に埋め込まれた電子部品、スペア部品に埋め込まれた電子部品等を含む。
【0012】
製造後の組立てまたは設置のための電気回路および構成要素の位置のアクセス可能性に対する必要性の除去は、電気回路および電子デバイスが、製造物品においていかにして設計され得、実装され得るかを、大幅に再定義する。本発明の実施形態は、個々の構成要素または接続部のアクセス可能性に対する必要性なしに、能動電子構成要素の正しい3次元アレンジメントおよびそれらの間の接続を提供する。これは、必要に応じて、制御下にある同じデバイスの回路により、潜在的には能動電子構成要素の再使用のために、物品の空間または体積の効率的な使用の増大を提供する。垂直方向の相互接続は、電子構成要素および回路の立方体アレンジメントまたはその他の3次元アレンジメント等の3次元処理要素を提供し得る。電子構成要素の積層アーキテクチャは、単一の3次元物品内の能動電子構成要素の層により製作され得る。電力の提供、電力の散逸、熱エネルギーの散逸等の共通サービスが、電力供給のための金属層、または、熱の散逸または移送のための熱効率のよい伝導物質の層等の、付加製造プロセスの一部分として含まれるサービス層の階層によって提供され得る。想定可能なところでは、能動電子構成要素によって生成された熱のような物品内からの熱の移送等のサービスを電子構成要素にさらに提供するための冷却材またはガス等の流体の連通のために、付加製造プロセスの一部分として製造されたチャネルおよび導管が提供され得る。
【0013】
熱イオン電子構成要素の使用の特定の利点は、シリコンに対するこのような構成要素の利益が、シリコントランジスタ等と同等であるということである。熱イオン構成要素は、相当のロバスト性を有しており、改善されたアナログ信号移送特性を提供する。例えば、熱イオン構成要素は、電磁パルスおよび太陽フレア活性に対して高耐性であり、衛星技術または重要なインフラシステムに対する用途に対して特定の利益を提供する。
【0014】
熱イオン電子構成要素の使用は、半導体の同等物によって大きく取って代わられてきたが、発明者らは、このような構成要素を製造することの単純性、付加製造の分野において現在存在するこのような構成要素に対する可能性、このような構成要素の有効性、およびそれらの信頼性に基づいて、付加製造の分野におけるこのような構成要素の驚くべき利益を認識した。
【0015】
好ましくは、基板、穿孔層、およびシール層のうちの1つ以上を形成することは、アパーチャと物品の排出ポートとの間に流体連通を提供するチャネルの形成を含み、排出ポートは、アパーチャにおいて真空のような状態を生成するために、アパーチャからガスを排出するために適している。
【0016】
好ましくは、付加製造プロセスは、シール層の形成時に、アパーチャに不活性ガスを入れるために、実質的に不活性ガスから構成されたシールされた雰囲気内で実行される。
【0017】
好ましくは、アノードおよびカソードは、アパーチャの両側に位置付けられる。
【0018】
好ましくは、カソードは、アパーチャにおける中央に置かれ、アノードは、アパーチャの壁の少なくとも一部分を占有する。
【0019】
好ましくは、付加製造プロセスは、押し出し堆積プロセスを含む。
【0020】
好ましくは、付加製造プロセスは、粒状物質結合プロセスを含む。
【0021】
好ましくは、方法は、使用中にカソードにより熱イオン放出を誘起するために、付加製造プロセスを用いることにより、カソードと熱的に近接してフィラメント要素を形成することをさらに含む。
【0022】
好ましくは、方法は、付加製造プロセスを用いることにより、アノード要素およびカソード要素から間隔を空けて配置され、かつ、アノード要素とカソード要素との間に位置付けられた、伝導性グリッド要素を形成することと、グリッドが、カソードからアノードへの電子の伝達を調節するように、グリッドに電気信号を提供するためにグリッドに対する伝導性電気接続部を堆積させることとをさらに含む。
【0023】
好ましくは、非導電性基板、穿孔層、およびシール層のうちの少なくとも1つは、セラミックで形成される。
【0024】
好ましくは、アノード、グリッド、および伝導性電気接続部は、ガリウム合金から形成される。
【0025】
好ましくは、ガリウム合金は、ガリウムおよびインジウムの二元共晶合金である。
【0026】
好ましくは、カソードは、タングステンを含む。
【0027】
したがって、本発明は、第2の局面において、任意の先行クレームのいずれかのプロセスによって製造された一体型能動電子構成要素を伴う物品を提供する。
【0028】
したがって、本発明は、第3の局面において、装置のファブリックと一体の3D印刷された熱イオン電子構成要素を含む3D印刷された装置を提供する。
【0029】
好ましくは、熱イオン電子構成要素は、カソードとアノードとを含むダイオードである。
【0030】
好ましくは、熱イオン電子構成要素は、カソードと、アノードと、カソードからアノードへの電子の通過を調節するグリッドとを含むトリオードである。
【0031】
好ましくは、装置は、3D印刷された回路をさらに含む。
【0032】
したがって、本発明は、第4の局面において、一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造するための付加製造装置を提供し、装置は、コンピュータシステムと、非導電性3次元構造を形成するように適合された第1の付加製造構成要素と、導電性3次元構造を形成するように適合された第2の付加製造構成要素とを含み、第1の付加製造構成要素および第2の付加製造構成要素は、コンピュータシステムの制御のもとで動作可能であり、コンピュータシステムは、a)非導電性基板を形成することと、b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、c)アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、d)要素の間に電位差を付与するために適した、要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、e)穿孔層におけるアパーチャを維持しかつシールするために、穿孔層の上に非導電性シール層を形成することとを行うように構成要素を制御するように適合されている。
【0033】
したがって、本発明は、第5の局面において、付加製造装置を制御するためのコンピュータシステムを提供し、付加製造装置は、非導電性物質および導電性物質の両方から3次元構造を同時に製造するように適合されており、コンピュータシステムは、上記方法にしたがって付加製造装置を制御するように動作可能である。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
3D印刷された装置であって、上記装置のファブリックと一体の3D印刷された熱イオン電子構成要素を含む、装置。
(項目2)
上記熱イオン電子構成要素は、カソードとアノードとを含むダイオードである、上記項目に記載の装置。
(項目3)
上記熱イオン電子構成要素は、カソードと、アノードと、上記カソードから上記アノードへの電子の通過を調節するグリッドとを含むトリオードである、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目4)
上記装置は、3D印刷された回路をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の装置。
(項目5)
一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造する方法であって、
付加製造プロセスを用いることにより、
a)非導電性基板を形成することと、
b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、
c)上記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、
d)上記要素の間に電位差を付与するために適した、上記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、
e)上記穿孔層における上記アパーチャを維持しかつシールするために、上記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することと
を含む、方法。
(項目6)
上記基板、上記穿孔層、および上記シール層のうちの1つ以上を形成することは、上記アパーチャと上記物品の排出ポートとの間に流体連通を提供するチャネルを形成することを含み、上記排出ポートは、上記アパーチャにおいて真空のような状態を生成するために、上記アパーチャからガスを排出するために適している、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
上記付加製造プロセスは、上記シール層の形成時に上記アパーチャに不活性ガスを入れるために、実質的に不活性ガスから構成されたシールされた雰囲気内で実行される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
上記アノードおよび上記カソードは、上記アパーチャの両側に位置付けられる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
上記カソードは、上記アパーチャにおける中央に置かれ、上記アノードは、上記アパーチャの壁の少なくとも一部分を占有する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
上記付加製造プロセスは、押し出し堆積プロセスを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
上記付加製造プロセスは、粒状物質結合プロセスを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
使用中に上記カソードにより熱イオン放出を誘起するために、上記カソードと熱的に近接してフィラメント要素を形成するように、上記付加製造プロセスを用いることをさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
上記付加製造プロセスを用いることにより、
上記アノード要素および上記カソード要素から間隔を空けて配置され、かつ、上記アノード要素と上記カソード要素との間に位置付けられた、伝導性グリッド要素を形成することと、
上記グリッドが上記カソードから上記アノードへの電子の伝達を調節するように、上記グリッドに電気信号を提供するために上記グリッドに対する伝導性電気接続部を堆積させることと
をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
上記非導電性基板、上記穿孔層、および上記シール層のうちの少なくとも1つは、セラミックで形成される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
上記アノード、上記グリッド、および上記伝導性電気接続部は、ガリウム合金から形成される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
上記ガリウム合金は、ガリウムおよびインジウムの二元共晶合金である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
上記カソードは、タングステンを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
上記項目のいずれか一項に記載のプロセスによって製造される一体型能動電子構成要素を伴う物品。
(項目19)
一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造するための付加製造装置であって、
上記装置は、
コンピュータシステムと、
非導電性3次元構造を形成するように適合された第1の付加製造構成要素と、
導電性3次元構造を形成するように適合された第2の付加製造構成要素と
を含み、
上記第1の付加製造構成要素および上記第2の付加製造構成要素は、上記コンピュータシステムの制御のもとで動作可能であり、
上記コンピュータシステムは、
a)非導電性基板を形成することと、
b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、
c)上記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、
d)上記要素の間に電位差を付与するために適した、上記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、
e)上記穿孔層における上記アパーチャを維持しかつシールするために、上記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することと
を行うように上記構成要素を制御するように適合されている、装置。
(項目20)
付加製造装置を制御するためのコンピュータシステムであって、上記付加製造装置は、非導電性物質および導電性物質の両方から3次元構造を同時に製造するように適合されており、上記コンピュータシステムは、上記項目のいずれか一項に記載の方法を実行するように上記付加製造装置を制御するように動作可能である、コンピュータシステム。
(摘要)
一体型能動電子構成要素を伴う物品を製造するための方法は、付加製造プロセスを用いることにより、a)非導電性基板を形成することと、b)アパーチャを有する非導電性穿孔層を形成することと、c)前記アパーチャにおいて間隔を空けて配置された導電性のアノード要素およびカソード要素を形成することと、d)前記要素の間に電位差を付与するために適した、前記要素の各々に対する伝導性電気接続部を堆積させることと、e)前記穿孔層における前記アパーチャを維持しかつシールするために、前記穿孔層の上に非導電性シール層を形成することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
ここで、単なる例示として添付図面を参照することにより、本発明の実施形態が記載される。
図1図1は、本発明の実施形態にしたがって製作された一体型ダイオード電子構成要素を伴う例示的な3次元物品を描写している。
図2図2は、本発明の実施形態にしたがって製作された一体型トリオード電子構成要素を伴う例示的な3次元物品を描写している。
図3図3は、本発明の実施形態にしたがう上に非導電性穿孔層を有する非導電性基板のアレンジメントを描写している。
図4図4は、本発明の実施形態にしたがってアパーチャ内に形成された導電性アノード、カソードおよびグリッド要素を有する図3のアレンジメントを描写している。
図5図5は、本発明の実施形態にしたがってアパーチャ内に形成された要素の各々に対する伝導性電気接続部を有する図4のアレンジメントを描写している。
図6図6は、本発明の実施形態にしたがって穿孔層の上に形成された非導電性シール層を有する図5のアレンジメントを描写している。
図7図7は、本発明の実施形態にしたがう、一体型能動電子構成要素を伴い、かつ、物品の排出ポートへのチャネルを有する、例示的な3次元物品を描写している。
図8図8は、本発明の実施形態にしたがって層に配置された一体型能動電子構成要素を伴う例示的な3次元物品を描写している。
図9図9は、本発明の実施形態にしたがう付加製造機械の動作を制御するために適したコンピュータシステムのブロック図である。
図10図10は、本発明の実施形態にしたがう付加製造装置の構成要素ダイヤグラムである。
図11図11は、本発明の実施形態にしたがう一体型能動電子構成要素を伴う物品の製造方法のフローチャートである。
図12図12は、本発明の実施形態にしたがう物品のアパーチャに配置された一体型能動電子構成要素のアレンジメントを描写している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(実施形態の詳細な説明)
図1は、本発明の実施形態にしたがって製作された一体型ダイオード120の電子構成要素を伴う例示的な3次元物品100を描写している。物品100は、1つ以上の技術を含む付加製造アプローチを用いて構成される。該技術は、例えば、とりわけ、押し出し堆積プロセス;例えば選択的レーザ焼結、直接的金属レーザ焼結、選択的レーザ溶解、または、電子ビーム溶解等の、物質結合プロセス;および/または、光重合等のステレオリソグラフィーアプローチなどである。このような技術は、3D印刷としても知られ、このような技術のプロダクトまたは結果として得られる物品は、3D印刷された物品または装置として知られる。物品100は、実質的構造102から構成され、該構造は、物品を実質的に構成する本体、枠組み、格子、アレンジメントまたはその他の構造などであり、別様には物品のファブリックと呼ばれる。例えば、物品100は、とりわけ、部品、プロトタイプ、構成要素、アプライアンス、ツール、カバー、ケース、モデル、または任意のその他の想定可能な3次元物品であり得る。実質的構造102は、付加製造プロセスにより、非導電性物質から形成される。例えば、実質的構造102は、例えばポリマー等のプラスチックであり、好ましくは、高温を許容することが可能なプラスチックである。代替的に、実質的構造102は、セラミックまたは同様の物質から形成され得る。実質的構造102を形成するために適したその他の非導電性物質は、当業者にとって明白であり得る。
【0036】
物品100は、ダイオード120としての能動電子構成要素を、実質的構造102内に形成しており、かつ、該構造に一体化して形成している。ダイオード120は、物品100のファブリックに一体化しており、物品100の実質的構造102によって少なくとも部分的に構成されている。当業者であれば、能動電子構成要素(ダイオード、整流器、トリオード等)は、その機能のうちの1つ以上に対する電源を必要とする電子構成要素であり、動作のための電源を必要としない受動電子構成要素(抵抗器またはキャパシタ等)とは異なることを理解し得る。ダイオード120は、物品100の実質的構造102内のアパーチャにおいて形成される。アパーチャの1つの端部において、カソード106が導電性要素として形成される。アパーチャの他の端部において、そして、カソード106から間隔を空けられて、アノード108が、第2の導電性要素として形成される。カソード106およびアノード108は、付加製造プロセスによって形成される。1つの実施形態において、アノードは、液体金属構造のための3D印刷技術によって形成される。このことは、Laddらにより、“3D Printing of Free Standing Liquid Metal Microstructures” (Collin Ladd et al, Advanced Materials, Volume 25, Issue 36, pages 5081-5085, September 25, 2013)において記載されている。Laddらは、室温において伝導性金属ワイヤを押し出すためのアプローチを記載している。このようなアプローチは、ポリマー押し出し等のその他の物質の押し出しとの組み合わせに特に適している。例えば、アノード108は、ガリウムおよびインジウムの二元共晶合金等のガリウム合金から構成され得、Laddらによって記載されているように、室温において付加製造プロセスにおいて押し出され得る。追加的に、または、代替的に、カソード106および/またはアノード108は、焼結等の物質結合プロセスによって形成される。例えば、金属粉末を正確および選択的に焼結するためにレーザが用いられる直接金属レーザ焼結は、アノード108および/またはカソード106の形成のために採用され得る。
【0037】
カソード106は、カソード106からの電子の熱イオン放出を引き起こすために過熱する高温カソードである。一実施形態において、カソード106はまた、必要な加熱を達成するために、フィラメントとして機能する。代替的に、カソード106による熱イオン放出を誘起するようにカソード106を加熱するために、別個のフィラメント104が、カソード106と熱的に近接して提供される。好ましくは、カソード106は、タングステンまたはタングステン合金等の高耐熱性を有する電気導体から形成される。このような物質は、ExOne Company(例えば、ExOne’s M−Flex 3Dプリンタ)から利用可能な結合タングステン3D印刷プロセス等の付加製造プロセスによって形成可能であることが知られている。
【0038】
アノード108およびカソード106の各々は、伝導性電気接続部114、112に電気的に接続される。電気接続部114、112は、アノード108とカソード108との間に電位差を付与するために適している。例えば、アノード108の電気接続部114は、正電圧等の正電位の供給源に接続されているが、カソード106の電気接続部112は、接地等の比較的低い電位の供給源に接続されている。提供された場合、フィラメント104もまた、熱を生成するためにフィラメントに電力供給するために、電気接続部110を有している。電気接続部110、112、114は、上述したLaddらのアプローチ、または、物品100を製造する間に付加製造によって伝導性電気接続部を堆積するための任意の適切なアプローチ等の、付加製造プロセスの一部分として形成される。
【0039】
最も好ましくは、ダイオード120に対して形成されたアパーチャは、シールされた真空であり、例えば、後述される方法によって達成され得る。代替的に、アパーチャは、希ガスまたは窒素等の不活性ガスの格納のためにシールされ、熱イオン放出に対するその反応性および効果、ならびに、カソードによる電子の移送またはカソードからの電子の移送は、予測可能であり、知られている。物品100のアパーチャにおける不活性ガスの提供を確実にするために、物品100に対する付加製造プロセスは、アパーチャのシール時にアパーチャに不活性ガスを入れるために、実質的に、好ましくは完全に、不活性ガスから構成されたシールされた雰囲気において実行され得る。
【0040】
したがって、物品100は、ダイオード120としての能動電子構成要素を含む。高温カソード106とアノード108との間に電位差が付与されたとき、電子は、真空管ダイオードから知られている態様で、カソード106からアノード108へと移動し得る。
【0041】
図2は、本発明の実施形態にしたがって製作された一体型トリオード240の電子構成要素を伴う例示的な3次元物品200を描写している。図2の特徴の多くは、図1に関連して上述されたものと同一であり、これらは、ここで繰り返されない。図2は、カソード106およびカソード108から間隔を空けて配置され、かつ、アノード106とカソード108との間に配置された、導電性要素としてのグリッド220要素をさらに含み、グリッド220に電気信号を提供するために、関連する堆積された電気接続部224を伴う。グリッド220は、カソード106の熱イオン放出から生じる電子によって横断可能であり、グリッド220は、電気信号によって決定されたグリッド220の電位に応じて、カソード206からアノード108への電子の移送を調節する。このようなグリッド220は、例えば導電性要素のグリッド、格子、またはアレイアレンジメントを形成することに特に適した上述したLaddらのアプローチ等により、物品200の付加製造プロセスの一部分として形成される。
【0042】
したがって、物品200は、トリオード240としての能動電子構成要素を含む。高温カソード106とアノード108との間に電位差が付与されたとき、電子は、真空管トリオードまたはバルブから知られている態様で、グリッド220に対する電気信号によって決定されたグリッド220における電位によって調節されて、カソード106からアノード108へと移動し得る。
【0043】
したがって、図1または図2にしたがって配置された本発明の実施形態は、3D印刷された物品または装置100、200を提供し、該装置は、該装置100、200のファブリック102と一体の3D印刷された熱イオン電子構成要素120、240を含む。熱イオン電子構成要素120、240は、カソード106とアノード108とを含むダイオードであるか、あるいは、カソード106と、アノード108と、カソードからアノードへの電子の通過を調節するグリッド220とを含むトリオードである。装置100、200は、導電性接続部110、112、114、224を経由する3D印刷された回路をさらに含み得る。該導電性接続部は、装置の外部に接続するか、あるいは、想定可能なところでは、装置100、200内のいずれかの場所にあるその他の能動電子構成要素に接続する。
【0044】
ここで、物品(物品100または200等)の付加製造のための例示的な方法が記載される。図3は、本発明の実施形態にしたがう、上に非導電性穿孔層304を有する非導電性基板302のアレンジメントを描写している。最初に、基板302が、後述されるような付加製造プロセスを用いて、非導電性物質(プラスチック、ポリマー、セラミック等)から形成される。次に、穿孔層304が、基板のものと同様の(1つ以上のアパーチャ306が、穿孔層304に形成されることは除く)製造プロセスを用いて、基板の上に形成される。アパーチャ306は、長方形の形状で図示されているが、任意の形状が用いられ得ることが理解され得る。一実施形態において、アパーチャ306の形成は、アパーチャ306の位置において非伝導性物質を押し出すことまたは結合することを省略すること等により、アパーチャ306を生成するように付加製造プロセスを制御するために、穿孔層304のデジタルモデルを定義すること(アパーチャ306の定義、付加製造プロセスの制御装置またはプロセスによるデジタルモデルの解釈を含む)によって達成される。
【0045】
図4は、本発明の実施形態にしたがう、アパーチャにおいて形成された導電性のカソード402と、アノード406と、グリッド404とを有する図3のアレンジメントを描写している。付加製造プロセスは、上述された導電性要素として、カソード402と、アノード406と、(オプションとして)グリッド404とを形成するために用いられる。例えば、Laddらのアプローチは、アノード406とグリッド404とを提供するために用いられる。カソード402は、直接金属レーザ焼結等の焼結技術を用いることにより、結合タングステン3D印刷によって提供され得る。図4は、グリッド404要素を伴って図示されているが、ダイオードの能動電子構成要素の製作は、グリッド404を必要としないことがあり得るということが理解され得る。さらに、別個のフィラメントが、カソード402と熱的に近接してアパーチャにおいてさらに提供され得ることが理解され得る。図5は、本発明の実施形態にしたがってアパーチャ306内に形成された要素402、404、406の各々に対する伝導性電気接続部502、504、506を有する図4のアレンジメントを描写している。伝導性電気接続部502、504、506は、好ましくは、上述したLaddらのアプローチによって提供される。
【0046】
図6は、本発明の実施形態にしたがって穿孔層304の上に形成された非導電性シール層602を有する図5のアレンジメントを描写している。非導電性シール層602は、基板302および穿孔層304と同様の態様で、そして、同様または同一の物質を用いることにより、形成される。シール層602は、穿孔層304におけるアパーチャ306を維持しかつシールする役目を担っている。一実施形態において、少なくともシール層602は、製造物品が、希ガスから構成されるシールされた雰囲気内に閉じ込められている間に形成され、アパーチャ306のシールは、密閉的であることによって、アパーチャ306の内外への流体連通は存在しない。
【0047】
代替的な実施形態において、シール層602は、図7に関連して記載され得るように、装置を気密的にシールしない。図7は、本発明の実施形態にしたがう、一体型能動電子構成要素を伴い、かつ、物品の排出ポート702へのチャネル706を有する、例示的な3次元物品700を描写している。物品700は、一体型能動電子構成要素が、装置700のファブリックと一体であるように、上述されたような付加製造プロセスによって製造される。さらに、付加製造プロセスは、(潜在的には複数の)能動電子構成要素のアパーチャと排出ポート702との間の流体連通のためのチャネル706を形成するように適合されている。チャネル706は、基板302、穿孔層304、または、シール層602のうちのいずれかまたは複数のものにおいて形成され得、チャネル706の方向、経路、またはルートは、チャネル706が物品700におけるどのような伝導性電気接続をも妨害することができないということを除き、制限されない。チャネル706は、電子構成要素のアパーチャの中へ開口部704を介して各電子構成要素とインターフェースを取る。排出ポート702は、物品700におけるチャネル706または能動電子構成要素のアパーチャからのガスの排出をもたらすために、チャネル706の1つの端部において提供されるか、または、チャネル706に沿った地点において提供される。能動電子デバイスのアパーチャにおいて真空のような状態を維持するために、排出が、真空ポンプ等の使用によって達成され得、その後に、排出ポート702をシールすることが続き得る。好ましくは、アパーチャは、カソード402における熱イオン放出から生じる電子の移送を改善するために、真空を含む。
【0048】
図8は、本発明の実施形態にしたがって層802、804に配置された一体型能動電子構成要素を伴う例示的な3次元物品800を描写している。本発明の実施形態にしたがって物品を製造するために採用される付加製造プロセスのおかげで、新規で、効率的で、かつ、効果的な、能動電子構成要素のアレンジメントの範囲が、増大される。図8は、物品800を階層化するために、このような構成要素が、層802、804においてどのように配置され得るかを図示しており、電子構成要素間の潜在的な電気接続が、層内および層間に生じ、潜在的には、多くの層に及んでいる。このような接続は、物品800の3Dモデルによってモデル化され得、このような接続が生じる方向とは無関係に、付加製造プロセスの一部分として生成され得る。同様に、能動電子構成要素自体の向き、形状、および寸法は、物品800の要件に応じて、適用され、変更され、構成され、かつ/または誂えられ得る。
【0049】
受動電子構成要素(抵抗器およびキャパシタ等)もまた、付加製造プロセスの一部分として形成され得るということが理解され得る。このような受動構成要素は、比較的製造が単純である。例えば、抵抗器は、セラミック物質の固体印刷ブロックとして形成され得る。物品の実質的本体からの受動構成要素の絶縁のための手段が必要とされ得、そして、該絶縁は、電気接続によって定所に懸垂または保持される、物品内のアパーチャにおいてこのような構成要素を閉じ込めることにより、達成され得る。同様に、キャパシタは、2つの平行な金属プレートが装置内に堆積されているということを除き、能動電子デバイスと同様の構造を用いて形成され得る。したがって、電子装置の実質的に全ての電子要件および論理要件に対して必要とされる能動構成要素および受動構成要素は、付加製造アプローチを用いて3次元物品内に一体的に形成され得る。
【0050】
図9は、本発明の実施形態にしたがう付加製造機械の動作を制御するために適したコンピュータシステムのブロック図である。中央処理装置(CPU)902は、データバス908を介してストレージ904および入力/出力(I/O)インターフェース906に通信可能に接続されている。ストレージ904は、ランダムアクセスメモリ(RAM)または不揮発性格納デバイス等の任意の読み取り/書き込み格納デバイスであり得る。不揮発性格納デバイスの例は、ディスクまたはテープの格納デバイスを含む。I/Oインターフェース906は、データの入力または出力のための、または、データの入力および出力の両方のための、デバイスへのインターフェースである。I/Oインターフェース906に接続可能なI/Oデバイスの例は、キーボード、マウス、ディスプレイ(モニタ等)、ネットワーク接続部等を含む。
【0051】
図10は、本発明の実施形態にしたがう付加製造装置1006の構成要素ダイヤグラムである。付加製造装置1006は、導電性物質から3次元構造を形成するための伝導性付加製造機1008と、非導電性物質から3次元構造を形成するための非伝導性付加製造機1010とを含む組み合わせ装置である。製造機1008および1010は、物品が伝導性コンテンツの製造または非伝導性コンテンツの製造のいずれかまたは両方を受け得るように、製造の間に同じ対象物品上で動作するように配置される。当業者であれば、2つの製造機1008、1010は、伝導性物質および非伝導性物質の両方に適応することが可能な複数のモデルにおいて動作することが可能な単一の構成要素に組み合わされ得るか、または、一体化され得るということを理解し得る。2つの製造機1008、1010は、同期的におよび/または同時発生的に、あるいは、同期的モードおよび同時発生的モードの両方の混合で、動作する。例えば、伝導性付加製造プロセスが、非伝導性プロセスが同時に発生し得るように発生する場合、動作の同時発生的モードが、(必須ではないが)採用され得る。製造機1008、1010の動作は、好ましくは、コンピュータ制御式である。図10の実施形態において、コンピュータシステム1012は、引き受けられるべき付加製造動作に関して、製造機1008、1010の各々に命令するために、伝導性付加製造機1008および非伝導性付加製造機1010に通信可能に接続されている。コンピュータシステム1012は、製造のための物品に対する仕様1004に応答する。一実施形態において、仕様1004は、製造のための物品の3次元仕様のデジタル表現である。例えば、押し出しに基づく製造プロセスに対して、仕様は、押し出しのための物質の定義、ならびに、1つ以上の押し出しヘッド、結合剤、セッター、エポキシ等のためのヘッド、および/または、テーブル、ワークピース、または、物品ホルダーの位置、場所、アレンジメント、または、構成を含み得る。製造プロセスは、不連続移動または相対的移動あるいは再配置等を指定するベクトル定義を用いて定義され得る。代替的に、粒状溶射に基づく付加製造アプローチにおいて、溶射、結合、加熱等の位置は、レーザまたは同様の溶融機構に対する命令を制御すること等により、仕様1004によって指定され得る。本発明の実施形態において、仕様1004は、付加製造ファイルフォーマット(AMF)またはステレオリソグラフィーファイルフォーマット(STL)の形式である。
【0052】
仕様1004は、当該技術分野において知られている3Dモデリングシステム、コンピュータ支援設計(CAD)システムまたはコンピュータ支援製造(CAM)システム等の仕様定義システム1002によって提供される。このようなシステムは、AMFフォーマットまたはSTLフォーマットにおける仕様1004を生成することに適合され得る。このようなフォーマットは、能動構成要素および受動構成要素ならびにそれらの間の電気接続部等の電子回路要素に関係する追加的な情報を含むように適合され得る。
【0053】
図11は、本発明の実施形態にしたがう一体型能動電子構成要素を伴う物品の製造方法のフローチャートである。最初に、ステップ1102において、プラスチック層またはセラミック層等の非導電性物質の層が、基板302として付加製造プロセスによって堆積される。ステップ1104において、1つ以上のアパーチャ306を伴う非導電性物質の層が、穿孔層304としての付加製造プロセスによって堆積される。アパーチャ306の構成は、製造のための物品の仕様1004に含まれる回路設計によって定義される。ステップ1106において、一連の金属要素が、付加製造プロセスによってアパーチャ306において堆積され、カソード、アノード、および、必要に応じて、フィラメントおよびグリッド(トリオード)として配置される。ステップ1108において、アパーチャ306内の要素のための伝導性接続部が、付加製造プロセスによって堆積される。ステップ1110において、シール層602が、穿孔層304の上に堆積される。
【0054】
図12は、本発明の実施形態にしたがう物品のアパーチャに配置された一体型能動電子構成要素のアレンジメントを描写している。前述では、アパーチャ306は、形状が略長方形として図示されている。図12は、略円形の断面を有し、かつ、形状が略円柱形であるアパーチャの1つの代替的な構成を図示している。図12のアレンジメントにおいて、カソード1206は、アパーチャの中央に配置されており、アノード1202は、アパーチャの壁の少なくとも一部分を占有するように、そして潜在的にはアパーチャの壁の全体を占有するように配置される。カソード1206は、カソード1206の中心長手方向軸のまわりに配置されたフィラメントをさらに提供され得る。図12のアレンジメントは、非導電性基板302、穿孔層304、および/またはシール層602が、特定のプラスチックおよびポリマーのように、高温に対する耐性が低い場合に好ましい。なぜなら、フィラメントは、アパーチャの壁から遠くに配置され得、適切に配置され電気接続手段等によって支持される場合、中央に位置付けられたカソード1206において実質的に中央に配置されていることにより基板およびシール層602からも遠くに配置され得るからである。さらに、トリオードアレンジメントにおいて、グリッド1204は、高温カソード1206からアノード1202への熱イオン放出に起因して生じる電子の流れを調節するために、カソード1206のまわりの同心アレンジメントにおいて提供される。
【0055】
少なくとも部分的に、ソフトウェア制御式のプログラム可能処理デバイス(マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、またはその他の処理デバイス等)、データ処理装置またはシステムを用いることにより、記載されている本発明の実施形態が実装可能である限りにおいて、プログラム可能デバイス、装置またはシステムを構成するためのコンピュータプログラムが、上述された方法を実装するために、本発明の一局面として構想されることが理解され得る。コンピュータプログラムは、例えば、ソースコードとして具現化され得るか、あるいは、処理デバイス、装置、またはシステム上での実装のためのコンパイルを受けるか、あるいは、オブジェクトコードとして具現化され得る。
【0056】
適切には、コンピュータプログラムは、例えば固体状態メモリ、磁気メモリ(ディスクまたはテープ等)、光学的または磁気光学的な読み取り可能メモリ(コンパクトディスクまたはデジタル多用途ディスク等)などの、機械またはデバイスの読み取り可能形式においてキャリア媒体上に格納され、処理デバイスは、動作のためにそれを構成するために、プログラムまたはその一部分を利用する。コンピュータプログラムは、電子信号、無線周波数搬送波、または光学的搬送波等、通信媒体において具現化され、遠隔供給源から供給され得る。このような搬送媒体もまた、本発明の局面として構想される。
【0057】
当業者であれば、本発明は、上述された例示的な実施形態に関係して記載されてきたが、本発明は、それらに限定されないこと、ならびに、本発明の範囲内にある多くの可能な変形および改変が存在することを理解し得る。
【0058】
本発明の範囲は、本明細書中に開示されている任意の新規な特徴または特徴の組み合わせを含む。出願人は、このことから、本願または本願から派生する任意のさらなる出願の手続の過程で、このような特徴および特徴の組み合わせに対して、新たな請求項が練り上げられ得るということについて、付言するものである。特に、添付の請求項に関連して、従属請求項からの特徴は、独立請求項からの特徴と組み合わされ得、それぞれの独立請求項からの特徴は、任意の適切な態様で、そして、請求項中に列挙されている特定の組み合わせに限らずに、組み合され得る。

図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12