(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847415
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】斜材を有する建物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20151224BHJP
【FI】
E04H9/02 311
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-67205(P2011-67205)
(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2012-202100(P2012-202100A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】596033576
【氏名又は名称】和田 章
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】和田 章
(72)【発明者】
【氏名】吉松 賢二
(72)【発明者】
【氏名】石橋 久義
(72)【発明者】
【氏名】濱田 真
(72)【発明者】
【氏名】前川 利雄
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 一徳
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−342654(JP,A)
【文献】
特開2010−025260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、
一端部が前記第1柱に固定され、該第1柱から水平方向内方へ伸びる張出し部材であって上下方向より水平方向により大きく伸びる張出し部材と、
一端部が前記張出し部材の他端部に固定され、他端部が前記第2柱に取り付けられた斜材とを含み、
前記斜材は、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが水平力を受けて変形している間に前記張出し部材の前記他端部と前記第2柱とから軸力を受けて変形することにより、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれに作用する振動エネルギーを吸収する、建物。
【請求項2】
前記斜材は、管状部材と、該管状部材の中に配置され、該管状部材の軸線方向に伸びる鋼製の棒状部材であって一端部が前記管状部材の一端部から前記軸線方向に外方へ伸びかつ前記張出し部材の前記他端部に結合され、他端部が前記管状部材の他端部から前記軸線方向に外方へ伸びかつ前記第2柱に連結された棒状部材と、前記管状部材の中を満たし、前記棒状部材を覆う充填材とを有する、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、
一端部が前記第1柱に固定され、該第1柱から水平方向内方へ伸びる第1張出し部材であって上下方向より水平方向により大きく伸びる第1張出し部材と、
一端部が前記第2柱に固定され、該第2柱から水平方向内方へ伸びる、前記第1張出し部材と異なる高さに位置する第2張出し部材であって上下方向より水平方向により大きく伸びる第2張出し部材と、
一端部が前記第1張出し部材の他端部に固定され、他端部が前記第2張出し部材の他端部に固定された斜材とを含み、
前記斜材は、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが水平力を受けて変形している間に前記第1張出し部材の前記他端部と前記第2張出し部材の前記他端部とから軸力を受けて変形することにより、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれに作用する振動エネルギーを吸収する、建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜材を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物には、水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、一端部が前記第1柱に取り付けられ、他端部が前記第2柱に取り付けられた斜材とを含むものがある(特許文献1参照)。地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが水平力を受けたとき、前記第1柱における前記斜材の前記一端部が取り付けられた位置と前記第2柱における前記斜材の前記他端部が取り付けられた位置とを結ぶ直線の長さが変化するように前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれは変形し、前記斜材は前記第1柱と前記第2柱とから軸力を受ける。前記斜材には、前記軸力を受けて変形することにより、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれに作用する振動エネルギーを吸収するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−270319
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記斜材が前記第1柱と前記第2柱とから受ける前記軸力は比較的小さく、前記斜材を効果的に変形させることができず、前記振動エネルギーを十分に吸収できないことがある。
【0005】
本発明の目的は、地震時に柱が水平力を受けている間に斜材が比較的大きい軸力を受けられるようにし、該軸力を受けた前記斜材が効果的に変形するようにすることにより、地震時に柱に作用する振動エネルギーを十分に吸収できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、斜材の端部が、一端部が柱に固定されかつ該柱から水平方向に伸びる張出し部材の他端部に固定されている。これにより、地震時に前記柱が水平力を受けて変形することに加え、前記柱が前記水平力を受けて変形している間に前記張出し部材の前記他端部が上下方向に変位することによっても前記斜材が軸力を受けるようにし、地震時に柱が水平力を受けて変形することによってのみ斜材が軸力を受ける従来の場合と比べて、前記軸力が大きくなるようにする。これにより、前記軸力を受けた前記斜材が効果的に変形するようにし、地震時に柱に作用する振動エネルギーを十分に吸収できるようにする。
【0007】
本発明に係る建物は、水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、一端部が前記第1柱に固定され、該第1柱から水平方向内方へ伸びる張出し部材
であって上下方向より水平方向により大きく伸びる張出し部材と、一端部が前記張出し部材の他端部に固定され、他端部が前記第2柱に取り付けられた斜材とを含み、該斜材は、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが水平力を受けて変形している間に前記張出し部材の前記他端部と前記第2柱とから軸力を受けて変形することにより、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれに作用する振動エネルギーを吸収する。
【0008】
前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが前記水平力を受けたとき、前記第1柱における前記張出し部材の前記一端部が固定された位置と前記第2柱における前記斜材の前記他端部が取り付けられた位置とを結ぶ直線の長さが変化するように前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれは変形する。また、前記第1柱が前記水平力を受けて変形することにより、前記張出し部材の前記他端部は上下方向に変位する。前記直線の長さが変化するように前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが変形することに加え、前記張出し部材の前記他端部が上下方向に変位することにより、前記斜材は、前記張出し部材の前記他端部と前記第2柱とから軸力を受けて変形し、前記振動エネルギーを吸収する。
【0009】
前記直線の長さが変化するように前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが変形することに加え、前記張出し部材の前記他端部が上下方向に変位することによっても前記斜材が前記軸力を受けるため、第1柱及び第2柱のそれぞれが変形することによってのみ斜材が軸力を受ける従来の場合と比べて、前記軸力を大きくすることができる。これにより、前記軸力を受けた前記斜材を効果的に変形させることができ、前記振動エネルギーを十分に吸収することができる。
【0010】
前記斜材は、管状部材と、該管状部材の中に配置され、該管状部材の軸線方向に伸びる鋼製の棒状部材であって一端部が前記管状部材の一端部から前記軸線方向に外方へ伸びかつ前記張出し部材の前記他端部に結合され、他端部が前記管状部材の他端部から前記軸線方向に外方へ伸びかつ前記第2柱に連結された棒状部材と、前記管状部材の中を満たし、前記棒状部材を覆う充填材とを有する。
【0011】
本発明に係る建物は、水平方向に間隔を置かれた第1柱及び第2柱と、一端部が前記第1柱に固定され、該第1柱から水平方向内方へ伸びる第1張出し部材
であって上下方向より水平方向により大きく伸びる第1張出し部材と、一端部が前記第2柱に固定され、該第2柱から水平方向内方へ伸び
る、前記第1張出し部材と異なる高さに位置する第2張出し部材
であって上下方向より水平方向により大きく伸びる第2張出し部材と、一端部が前記第1張出し部材の他端部に固定され、他端部が前記第2張出し部材の他端部に固定された斜材とを含み、該斜材は、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが水平力を受けて変形している間に前記第1張出し部材の前記他端部と前記第2張出し部材の前記他端部とから軸力を受けて変形することにより、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれに作用する振動エネルギーを吸収する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが水平力を受けたとき、前記第1柱における前記張出し部材の前記一端部が固定された位置と前記第2柱における前記斜材の前記他端部が取り付けられた位置とを結ぶ直線の長さが変化するように前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが変形するとともに、前記第1柱が前記水平力を受けて変形することにより前記張出し部材の前記他端部が上下方向に変位する。このため、前記直線の長さが変化するように前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれが変形することに加え、前記張出し部材の前記他端部が上下方向に変位することによっても前記斜材は前記張出し部材の前記他端部と前記第2柱とから軸力を受ける。このため、第1柱及び第2柱のそれぞれが変形することによってのみ斜材が軸力を受ける従来の場合と比べて、前記軸力を大きくすることができ、前記斜材が前記軸力を受けて効果的に変形するようにすることができ、地震時に前記第1柱及び前記第2柱のそれぞれに作用する振動エネルギーを十分に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】地震時に第1柱及び第2柱のそれぞれが水平力を受けて変形したときの本発明の第1実施例に係る建物の正面図。
【
図5】地震時に第1柱及び第2柱のそれぞれが水平力を受けて変形したときの本発明の第2実施例に係る建物の正面図。
【
図7】地震時に第1架構及び第2架構のそれぞれが水平力を受けてせん断変形したときの本発明の第3実施例に係る建物の正面図。
【
図8】地震時に第1架構及び第2架構のそれぞれが水平力を受けて曲げ変形したときの本発明の第3実施例に係る建物の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、建物10が構築されている。建物10は、水平方向に間隔を置かれた第1柱12及び第2柱14と、一端部16が第1柱12に固定された張出し部材18と、一端部20が張出し部材18の他端部22に固定され、他端部24が第2柱14に取り付けられた斜材26とを含む。張出し部材18は第1柱12から水平方向内方へ(第2柱14に向けて)伸びている。第1柱12、第2柱14及び張出し部材18のそれぞれは鉄筋コンクリート製である。
【0015】
斜材26は、地震時に第1柱12及び第2柱14のそれぞれが水平力を受けて変形している間に張出し部材18の他端部22と第2柱14とから軸力を受けて変形することにより、地震時に第1柱12及び第2柱14のそれぞれに作用する振動エネルギーを吸収する。斜材26は、管状部材28と、該管状部材の中に配置され、該管状部材の軸線方向に伸びる鋼製の棒状部材30と、管状部材28の中を満たし、棒状部材30を覆う充填材32とを有するダンパー(例えば、商品名「アンボンドブレース」 新日鉄エンジニアリング株式会社製)からなる。
【0016】
棒状部材30の一端部34は、管状部材28の一端部から前記軸線方向に外方へ伸び、張出し部材18の他端部22に結合されている。棒状部材30の他端部36は、管状部材28の他端部から前記軸線方向に外方へ伸び、第2柱14に連結されている。棒状部材30はいわゆる低降伏点鋼からなる。管状部材28は鋼製であり、充填材32はモルタルからなる。
【0017】
棒状部材30は、充填材32に定着しておらず、軸力を受けて変形することができる。管状部材28及び充填材32は、棒状部材30が圧縮力を受けたときに棒状部材30が座屈することを防止する。このため、前記圧縮力を受けた棒状部材30は座屈することなく変形する。斜材26は、上記のダンパーからなる
図1に示した例に代え、オイルダンパーからなるものでもよい。
【0018】
斜材26の一端部20は、
図2に示すように、第1斜材固定用部材38により張出し部材18の他端部22に固定されている。第1斜材固定用部材38は、張出し部材18の他端部22に結合された、水平方向に対して垂直な第1部分40と、該第1部分に対して垂直な第2部分42であって斜材26の一端部20に結合された第2部分42とを有する。第1部分40は、間隔を置かれた複数の貫通穴(図示せず)を有し、一端部が張出し部材18の内部に固定されかつ該張出し部材の他端部22から各貫通穴を経て水平方向内方へ伸びるボルト44及び該ボルトの他端部に螺合されたナット46により、張出し部材18の他端部22に結合されている。
【0019】
斜材26の他端部24は、
図1に示したように、第2斜材固定用部材48により第2柱14に取り付けられている。第2斜材固定用部材48は、第2柱14に結合された、水平方向に対して垂直な第1部分50と、該第1部分に対して垂直な第2部分52であって斜材26の他端部24に結合された第2部分52とを有する。第1部分50は、間隔を置かれた複数の貫通穴(図示せず)を有し、一端部が第2柱14の内部に固定されかつ該第2柱から各貫通穴を経て水平方向内方へ伸びるボルト54及び該ボルトの他端部に螺合されたナット56により、第2柱14に結合されている。
【0020】
図3に示すように、地震時に第1柱12及び第2柱14のそれぞれが水平力を受けたとき、第1柱12における張出し部材18の一端部16が固定された位置P1と第2柱14における斜材26の他端部24が取り付けられた位置P2とを結ぶ直線(図示せず)の長さが変化するように第1柱12及び第2柱14のそれぞれは変形する(
図3に、変形前の第1柱12及び第2柱14のそれぞれを破線で示す。)。また、第1柱12が前記水平力を受けて変形することにより、張出し部材18の他端部22は上下方向に変位する。
【0021】
図3に示した例では、位置P2は位置P1より高い位置にあり、第1柱12及び第2柱14のそれぞれが第1柱12から第2柱14に向けての前記水平力を受けたとき(
図3)、前記直線の長さが長くなるように第1柱12及び第2柱14のそれぞれは変形し、張出し部材18の他端部22はその下方へ変位する。第1柱12及び第2柱14のそれぞれが変形することに加え、張出し部材18の他端部22がその下方へ変位することにより、斜材26は張出し部材18の他端部22と第2柱14とから引張力を受ける。
【0022】
他方、第1柱12及び第2柱14のそれぞれが第2柱14から第1柱12に向けての前記水平力を受けたとき(図示せず)、前記直線の長さが短くなるように第1柱12及び第2柱14のそれぞれは変形し、張出し部材18の他端部22はその上方へ変位する。第1柱12及び第2柱14のそれぞれが変形することに加え、張出し部材18の他端部22がその上方へ変位することにより、斜材26は張出し部材18の他端部22と第2柱14とから圧縮力を受ける。このようにして斜材26が張出し部材18の他端部22と第2柱14とから軸力を受けることにより、斜材26の棒状部材30は塑性変形し、斜材26は前記振動エネルギーを吸収する。
【0023】
張出し部材18は、
図3に示したように、第1柱12の変形後も第1柱12に対して垂直な状態を維持しようとする。位置P1における水平面に対して垂直な直線Y0と第1柱12の軸線Y1とがなす角度をθとし、張出し部材18の水平方向の長さ寸法をLとしたとき、張出し部材18の他端部22の上下方向の変位量δはLsinθに相当する。位置P2は、位置P1より高い位置にある
図3に示した例に代え、位置P1より低い位置にあってもよい。
【0024】
前記直線の長さが変化するように第1柱12及び第2柱14のそれぞれが変形することに加え、張出し部材18の他端部22が上下方向に変位することによっても斜材26が前記軸力を受けるため、第1柱12及び第2柱14のそれぞれが変形することによってのみ斜材が軸力を受ける従来の場合と比べて、斜材26が受ける前記軸力を大きくすることができる。これにより、斜材26を効果的に変形させることができ、前記振動エネルギーを十分に吸収することができる。
【0025】
第1柱12、第2柱14及び張出し部材18のそれぞれは、鉄筋コンクリート製である
図1に示した例に代え、鋼製でもよい。張出し部材18は、第1柱12と一体をなしていてもよいし、第1柱12と別個の部材でもよい。
【0026】
図4に示す例では、建物10は、第1柱12と、第2柱14と、張出し部材(第1張出し部材)18と、斜材26とに加え、一端部が第2柱14に固定され、該第2柱から水平方向内方へ(第1柱12に向けて)伸びる第2張出し部材58を含む。第2張出し部材58は第1張出し部材18と異なる高さに位置する。
図4に示した例では、第2張出し部材58は第1張出し部材18より高い高さに位置するが、これに代え、第2張出し部材58は第1張出し部材18より低い高さに位置してもよい。斜材26の他端部24は第2張出し部材58の他端部に固定されている。このように斜材26の他端部24は第2張出し部材58を介して第2柱14に取り付けられている。この場合、斜材26の棒状部材30の他端部36は、第2張出し部材58の前記他端部に結合されており、第2張出し部材58を介して第2柱14に連結されている。
【0027】
図5に示すように、地震時に第1柱12及び第2柱14のそれぞれが水平力を受けたとき(
図5に、変形前の第1柱12及び第2柱14のそれぞれを破線で示す。)、第1柱12における第1張出し部材18の一端部16が固定された位置と第2柱14における第2張出し部材58の前記一端部が固定された位置とを結ぶ直線(図示せず)の長さが変化するように第1柱12及び第2柱14のそれぞれは変形する。また、第1柱12が前記水平力を受けて変形することにより、第1張出し部材18の他端部22は上下方向に変位し、第2柱14が前記水平力を受けて変形することにより、第2張出し部材58の前記他端部は上下方向に変位する。
【0028】
このため、第1柱12及び第2柱14のそれぞれが前記水平力を受けて変形している間、前記直線の長さが変化するように第1柱12及び第2柱14のそれぞれが変形することに加え、第1張出し部材18の他端部22及び第2張出し部材58の前記他端部のそれぞれが上下方向に変位することにより、斜材26は、第1張出し部材18の他端部22と第2張出し部材58の前記他端部とから軸力を受けて変形し、地震時に第1柱12及び第2柱14のそれぞれに作用する振動エネルギーを吸収する。
【0029】
図6に示す例では、建物10は、第1柱12から水平方向外方に間隔を置かれた第3柱60と、該第3柱と第1柱12との間に上下方向に間隔を置いて設けられた複数の第1梁62と、第2柱14から水平方向外方に間隔を置かれた第4柱64と、該第4柱と第2柱14との間に上下方向に間隔を置いて設けられた複数の第2梁66とを含む。第1柱12、第3柱60及び第1梁62は第1架構を構成し、第2柱14、第4柱64及び第2梁66は第2架構を構成する。
【0030】
地震時に前記第1架構及び前記第2架構のそれぞれが水平力を受けてこれらに振動エネルギーが作用したとき、
図7に示すように、前記第1架構及び前記第2架構のそれぞれが主にせん断変形する場合と、
図8に示すように、前記第1架構及び前記第2架構のそれぞれが主に曲げ変形する場合とがある。いずれの場合においても、前記第1架構及び前記第2架構のそれぞれが前記水平力を受けて変形することにより、第1柱12における第1張出し部材18の一端部16が固定された位置と第2柱14における第2張出し部材58の前記一端部が固定された位置とを結ぶ直線(図示せず)の長さが変化するように第1柱12及び第2柱14のそれぞれは変形する。また、第1柱12が前記水平力を受けて変形することにより、第1張出し部材18の他端部22は上下方向に変位し、第2柱14が前記水平力を受けて変形することにより、第2張出し部材58の前記他端部は上下方向に変位する。
【0031】
このため、第1柱12及び第2柱14のそれぞれが変形することに加え、第1張出し部材18の他端部22及び第2張出し部材58の前記他端部のそれぞれが上下方向に変位することにより、斜材26は、第1張出し部材18の他端部22と第2張出し部材58の前記他端部とから軸力を受けて変形し、前記振動エネルギーを吸収する。
【符号の説明】
【0032】
10 建物
12 第1柱
14 第2柱
16 張出し部材の一端部
18 張出し部材(第1張出し部材)
20 斜材の一端部
22 張出し部材の他端部
24 斜材の他端部
26 斜材
28 管状部材
30 棒状部材
32 充填材
34 棒状部材の一端部
36 棒状部材の他端部
58 第2張出し部材