(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料からなる筒状のケース本体と、前記ケース本体の端部に一体形成されかつ強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料からなりかつ相手部品に締結可能な環状のフランジと、を備え、前記ケース本体の内部から前記フランジの内部にかけて、強化繊維からなるノンクリンプ構造の織物を含む複数の織物層を有し、前記ケース本体の内部のみに、複数の前記織物層の他に、複数の前記織物層に交互に積層されかつ強化繊維からなるロービングを含む複数のロービング層を有してなる筒状のケースを製造するためのケースの製造方法において、
端部に環状の第1エンド型が装着されかつ前記ケース本体の形状に対応する形状の成形面を有したマンドレル型を用い、前記マンドレル型をその軸心周りに回転させつつ、強化繊維からなるノンクリンプ構造の織物を前記マンドレル型側へ供給することにより、前記織物を前記マンドレル型の成形面から前記第1エンド型の外周面にかけて巻付ける織物巻付工程と、
前記マンドレル型をその軸心周り回転させつつ、強化繊維からなるロービングを前記マンドレル型の軸方向へ前記マンドレル型に対して相対的に移動させながら前記マンドレル型側へ供給することにより、前記ロービングを前記マンドレル型の周方向に対する傾斜角を±0〜10度に保った状態で前記マンドレル型の成形面のみに螺旋状に巻付けるロービング巻付工程と、
前記織物巻付工程及び前記ロービング巻付工程の終了後に、前記織物巻付工程と前記ロービング巻付工程を交互に繰り返すことにより、前記ケース本体に相当する部分を有した筒状の成形体を成形する繰り返し工程と、
前記繰り返し工程の終了後に、前記成形体の端部を前記第1エンド型の外周面から捲り上げて、前記フランジの形状に対応する形状の成形面を有した環状の第2エンド型を前記マンドレル型の端部に前記第1エンド型と交換して装着し、前記成形体の端部を前記第2エンド型の成形面に沿わせることにより、前記成形体の端部側に前記フランジに相当する部分を成形して、前記成形体を前記ケースと同形状に仕上げるフランジ成形工程と、
前記フランジ成形工程の終了後に、前記成形体を加熱することにより、前記成形体に予め含浸させた熱硬化性樹脂を硬化させる加熱工程と、を備えている、ケースの製造方法。
前記フランジ成形工程の終了後であって前記加熱工程の開始前、又は前記フランジ成形工程の途中に、前記成形体の外周面の端部側に環状の保持部材を配設することにより、前記保持部材と前記第2エンド型との協働により前記成形体における前記フランジに相当する部分を挟むように保持するフランジ保持工程とを備えている、請求項1に記載のケースの製造方法。
前記マンドレル型の成形面から前記第1エンド型の外周面にかけて巻付ける前記織物、及び前記マンドレル型の成形面のみに巻付ける前記ロービングは、予め熱硬化性樹脂が含浸されている、請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載のケースの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ファンケースの中間品である成形体のねじり強度及びねじり剛性を十分に確保するためには、一般に、織物の構成要素の中に繊維配向角が±0〜10度の強化繊維(繊維配向角±0〜10度の強化繊維)を含める必要がある。一方、織物の構成要素の中に繊維配向角±0〜10度の強化繊維を含めると、織物の柔軟性が損なわれて、成形型ユニットを用いて成形体を成形する際に、成形体におけるフランジに相当する部分の屈曲した箇所にしわや強化繊維の蛇行が生じて、フランジの強度及び剛性の低下を招くことになる。
【0007】
つまり、強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料を構成材料とするファンケース等の筒状のケースがフランジを備えている場合には、ケース全体の強度及び剛性を十分に高めることが困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のケース及びその製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明
は、強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料からなる筒状のケース本体と、前記ケース本体の端部に一体形成されかつ強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料からなりかつ相手部品に締結可能な環状のフランジと、を備え、前記ケース本体の内部から前記フランジの内部にかけて、強化繊維からなるノンクリンプ構造の織物を含む複数の織物層を有し、前記ケース本体の内部のみに、複数の前記織物層の他に、複数の前記織物層に交互に積層されかつ強化繊維からなるロービングを含む複数のロービング層を有してなる筒状のケースを製造するためのケースの製造方法において、端部に環状の第1エンド型が装着されかつ前記ケース本体の形状(最終形状)に対応する形状の成形面を有したマンドレル型を用い、前記マンドレル型をその軸心周りに回転させつつ、強化繊維からなるノンクリンプ構造の織物を前記マンドレル型側へ供給することにより、前記織物を前記マンドレル型の成形面から前記第1エンド型の外周面にかけて巻付ける織物巻付工程と、前記マンドレル型をその軸心周り回転させつつ、強化繊維からなるロービング(繊維束)を前記マンドレル型の軸方向へ前記マンドレル型に対して相対的に移動させながら前記マンドレル型側へ供給することにより、前記ロービングを前記マンドレル型の周方向に対する傾斜角を±0〜10度に保った状態で前記マンドレル型の成形面のみに螺旋状に巻付けるロービング巻付工程と、前記織物巻付工程及び前記ロービング巻付工程の終了後に、前記織物巻付工程と前記ロービング巻付工程を交互に繰り返すことにより、前記ケース本体に相当する部分を有した筒状の成形体を成形する繰り返し工程と、前記繰り返し工程の終了後に、前記成形体の端部を前記第1エンド型の外周面から捲り上げて、前記フランジの形状に対応する形状の成形面を有した環状の第2エンド型を前記マンドレル型の端部に前記第1エンド型と交換して装着し、前記成形体の端部を前記第2エンド型の成形面に沿わせることにより、前記成形体の端部側に前記フランジに相当する部分を成形して、前記成形体を前記ケースと同形状に仕上げるフランジ成形工程と、前記フランジ成形工程の終了後に、前記成形体を加熱することにより、前記成形体に予め含浸させた熱硬化性樹脂を硬化させる加熱工程と、を備えている
。
【0015】
なお、
前記ケースとは、航空機エンジンにおけるファンケースのみならず、強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料を構成材料とする種々の筒状のケースを含む意である。前記マンドレル型の周方向に対する傾斜角とは、前記ロービングの鋭角側の傾斜角のことをいい、例えば時計回り方向へ傾斜している場合には正の傾斜角となり、反時計回り方向へ傾斜している場合には負の傾斜角となる。
【0016】
本発明の構成によると、前記織物を前記マンドレル型の成形面から前記第1エンド型の外周面にかけて巻付ける前記織物巻付工程と、前記ロービングを前記マンドレル型の周方向に対する傾斜角を±0〜10度に保った状態で前記マンドレル型の成形面のみに螺旋状に巻付ける前記ロービング巻付工程と交互に繰り返すことにより、前記ケース本体に相当する部分を有した筒状の前記成形体を成形しているため、前記成形体のねじり強度及びねじり剛性を十分に確保することができる。
【0017】
また、前記織物巻付工程において、ノンクリンプ構造の前記織物を前記第1エンド型の外周面に巻付けており、前記ロービング工程において、前記ロービングを前記マンドレル型の成形面のみに螺旋状に巻付けているため、前記フランジ成形工程の開始前における前記成形体の端部の内部に繊維配向角±0〜10度の強化繊維が含まれることがなく、前記成形体における前記フランジに相当する部分の成形容易性を高めることができる。
なお、繊維配向角とは、前記織物の長手方向(換言すれば、前記ケース本体の周方向)に対する強化繊維の鋭角側の傾斜角のことをいい、例えば時計回り方向へ傾斜している場合には正の繊維配向角となり、反時計回り方向へ傾斜している場合には負の繊維配向角となる。
【0018】
特に、前記フランジ成形工程において、前記第1エンド型の外周面から捲り上げた前記成形体の端部を前記第1エンド型と交換した前記第2エンド型の成形面に沿わせることによって、前記フランジに相当する部分を成形しているため、例えば適宜の成形型の成形面に前記織物を巻付けて成形する場合に比較して、前記成形体における前記フランジに相当する部分の成形容易性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前記成形体における前記フランジに相当する部分の成形容易性を高めつつ、前記成形体のねじり強度及びねじり剛性を十分に確保できるため、前記フランジに複合材料の強度低下に繋がるしわや繊維の蛇行の発生を抑えて、前記ケースの強度及び剛性を十分に高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1から
図4を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向をそれぞれ指してある。
【0022】
図2及び
図3に示すように、本発明の第1実施形態に係るファンケース1は、航空機エンジン3に用いられ、航空機エンジン3における複数のファンブレード5を覆うものである。また、ファンケース1は、炭素繊維,アラミド繊維,又はガラス繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂,フェノール樹脂,又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料を構成材料としており、軸方向(ファンケース1の軸方向)に沿って外径が変化するようになっている。
【0023】
ファンケース1は、筒状のケース本体7を備えており、このケース本体7は、炭素繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料からなるものである。また、ケース本体7の前端部(一端部)には、環状のフロントフランジ9が一体形成されており、このフロントフランジ9は、炭素繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料からなり、航空機エンジン3におけるエンジンカウル11(相手部品の一例)に締結可能である。更に、ケース本体7の後端部(他端部)には、環状のリアフランジ13が一体形成されており、このリアフランジ13は、炭素繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料からなり、航空機エンジン3におけるリアケース15(相手部品の一例)に締結可能である。
【0024】
図1(a)(b)及び
図4に示すように、ケース本体7の内部からフロントフランジ9の内部及びリアフランジ13の内部にかけて、炭素繊維等の強化繊維からなる織物17を含む複数の織物層19を有している。ここで、織物17は、炭素繊維等の強化繊維の2軸の繊維帯21,23からなるノンクリンプ構造であって、2軸の繊維帯21,23の繊維配向角(α)は、±20〜70度、好ましくは、±30〜60度(本発明の実施形態にあっては、±45度)になっている。2軸の繊維帯21,23の繊維配向角αの絶対角が20度未満であると、ファンケース1にしわや繊維の蛇行の発生が懸念されるからであり、一方、2軸の繊維帯21,23の繊維配向角(α)の絶対角が70度を超えると、ファンケース1の中間品(半製品)である成形体1F(
図10(a)参照)のねじり強度及びねじり剛性を確保することが困難になるからである。なお、
図4における破線で示した部位は、ステッチ糸である。
【0025】
図1(a)(b)及び
図2に示すように、ケース本体7の内部のみに、複数の織物層19の他に、炭素繊維等の強化繊維からなるロービング(繊維束)25を含む複数のロービング層27を有している。また、複数のロービング層27は、複数の織物層19に交互に積層されてあって、ケース本体7の最外層は、ロービング層27になっている。ここで、ケース本体7の周方向に対するロービング25の傾斜角(β)は、±0〜10度、好ましくは、±2〜10度になっている。ケース本体7の周方向に対するロービング25の傾斜角(β)の絶対角が10度を超えると、後述の成形体1Fのねじり強度及びねじり剛性を確保することが困難になるからである。
【0026】
ケース本体7の外周面の前端部側(一端部側)からフロントフランジ9の外側面(締結面の反対面)にかけて、フロントフランジ9を補強する断面L形の環状のフロント補強部材(フロント追加パッド)29が一体的に設けられている。また、フロント補強部材29は、ガラス繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料からなり、周方向に沿ってセグメント化されている。
【0027】
同様に、ケース本体7の外周面の後端部側(他端部側)からリアフランジ13の外側面(締結面の反対面)にかけて、リアフランジ13を補強する断面L形の環状のリア補強部材(リア追加パッド)31が一体的に設けられている。また、リア補強部材31は、ガラス繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料からなり、周方向に沿ってセグメント化されている。
【0028】
続いて、本発明の第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
ケース本体7の内部に、複数の織物層19の他に、複数の織物層19に交互に積層されかつ傾斜角±0〜10度の強化繊維からなるロービング25を含む複数のロービング層27を有しているため、繊維配向角(α)が±0〜10度の強化繊維(繊維配向角(α)±0〜10度の強化繊維)をノンクリンプ構造の織物17の構成要素(織物層19の構成要素)から除外しても、ファンケース1の中間品である成形体1Fのねじり強度及びねじり剛性を十分に確保することができる。
【0030】
また、フロントフランジ9の内部及びリアフランジ13の内部に強化繊維からなるノンクリンプ構造の織物17を含む複数の織物層19を有し、ケース本体7の内部のみに複数のロービング層27を有しているため、フロントフランジ9の内部及びリアフランジ13の内部に繊維配向角(α)±0〜10度の強化繊維が含まれることがなく、成形体1Fにおけるフロントフランジに相当する部分9F(
図11(b)参照)及びリアフランジに相当する部分13F(
図11(b)参照)の成形容易性を高めることができる。
【0031】
従って、本発明の第1実施形態によれば、成形体1Fにおけるフロントフランジに相当する部分9F及びリアフランジに相当する部分13Fの成形容易性を高めつつ、成形体1Fのねじり強度及びねじり剛性を十分に確保できるため、フロントフランジ9及びリアフランジ13に強化繊維と熱硬化性樹脂との複合材料の強度低下に繋がるしわや繊維の蛇行の発生を抑えて、ファンケース1全体の強度及び剛性を十分に高めることができる。特に、ケース本体7の外周面の前端部側からフロントフランジ9の外側面にかけてフロント補強部材29が一体的に設けられ、ケース本体7の外周面の後端部側からリアフランジ13の外側面にかけてリア補強部材31が一体的に設けられているため、フロントフランジ9及びリアフランジ13の強度及び剛性の低下を抑えて、ファンケース1全体の強度及び剛性をより十分に高めることができる。
【0032】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について
図4から
図11(a)(b)を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向をそれぞれ指してある。
【0033】
まず、本発明の第2実施形態に係るケースの製造方法の実施に直接使用される装置等について説明する。
【0034】
図5(a)(b)に示すように、本発明の第2実施形態に係る成形型ユニット33は、マンドレル型35を備えており、このマンドレル型35は、外周側に、ノンクリンプ構造の織物17を巻付可能でかつケース本体7の形状(最終形状)に対応する形状の成形面35sを有している。
【0035】
マンドレル型35の前端部(一端部)には、環状の第1フロントエンド型37が着脱可能に設けられており、この第1フロントエンド型37は、周方向に沿ってセグメント化されている。また、第1フロントエンド型37の外周面は、前方向へ向かって拡径するようにマンドレル型35の軸心(第1フロントエンド型37の軸心)に対して傾斜した傾斜部37dを有してあって、ノンクリンプ構造の織物17を巻付可能である。
【0036】
マンドレル型35の前端部には、環状の第2フロントエンド型39が第1フロントエンド型37と交換して着脱可能に設けられており、この第2フロントエンド型39は、周方向に沿ってセグメント化されている。また、第2フロントエンド型39は、外周側に、フロントフランジ9の形状(最終形状)に対応する形状の成形面39sを有している。
【0037】
マンドレル型35の後端部(他端部)には、環状の第1リアエンド型41が着脱可能に設けられており、この第1リアエンド型41は、周方向に沿ってセグメント化されている。また、第1リアエンド型41の外周面は、後方向へ向かって拡径するようにマンドレル型35の軸心(第1リアエンド型41の軸心)に対して傾斜した傾斜部41dを有してあって、ノンクリンプ構造の織物17を巻付可能である。
【0038】
マンドレル型35の後端部には、環状の第2リアエンド型43が第1リアエンド型41と交換して着脱可能に設けられており、この第2リアエンド型43は、周方向に沿ってセグメント化されている。また、第2リアエンド型43は、外周側に、リアフランジ13の形状(最終形状)に対応する形状の成形面43sを有している。
【0039】
図5(a)(b)及び
図6に示すように、適宜位置には、マンドレル型35を回転させるマンドレル型回転装置45が配設されており、このマンドレル型回転装置45の具体的な構成は、次のようになる。
【0040】
即ち、適宜位置には、一対の側板47,49が前後に対向して設けられており、一対の側板47,49の間には、前後方向へ延びた回転軸51が回転可能に設けられており、この回転軸51は、マンドレル型35を一体的にセット可能である。また、前寄りの側板47には、回転軸51をその軸心周りに回転させる回転モータ53が設けられており、この回転モータ53の出力軸には、主動ギア55が一体的に設けられてあって、回転軸51の前端部(一端部)には、この主動ギア55に噛合可能な従動ギア57が一体的に設けられている。ここで、例えば一対の側板47,49の上側部分を上下方向へ開閉可能又は切離可能にしたり、一対の側板47,49にその他適宜の構成を付加したりすることによって、回転軸51は一対の側板47,49に対して着脱できるようになっている。
【0041】
マンドレル型回転装置45の右方(右方側)には、ノンクリンプ構造の織物17をマンドレル型35側へ供給する織物供給装置59が設けられており、この織物供給装置59の具体的な構成は、次のようになる。
【0042】
即ち、マンドレル型回転装置45の右方には、固定フレーム61が配設されており、この固定フレーム61の上部には、一対のボビン支持部材63,65が前後に対向して設けられており、後寄りのボビン支持部材65は、前後方向へ位置調節可能になっている。また、一対のボビン支持部材63,65の間には、ノンクリンプ構造の織物17を巻いたボビン67が回転自在に支持されている。ここで、例えば一対のボビン支持部材63,65の上側部分を上下方向へ開閉可能又は切離可能にしたり、一対のボビン支持部材63,65にその他適宜の構成を付加したりすることによって、ボビン67は一対のボビン支持部材63,65に対して着脱できるようになっている。
【0043】
マンドレル型回転装置45の左方(左方側)には、ロービング25をマンドレル型35側へ供給するロービング供給装置69が設けられており、このロービング供給装置69の具体的な構成は、次のようになる。
【0044】
即ち、マンドレル型回転装置45の左方には、支持フレーム71が配設されており、この支持フレーム71の上部には、前後方向へ延びた一対のガイドレール73,75が設けられている。また、一対のガイドレール73,75の間には、ロービング25の供給位置を可変する供給ヘッド77が前後方向(マンドレル型35の軸方向)へ移動可能に設けられており、この供給ヘッド77は、移動モータ等の移動アクチュエータ(図示省略)の駆動によって前後方向へ移動するものである。
【0045】
なお、説明の都合上、織物供給装置59及びロービング供給装置69はマンドレル型回転装置45に対して反対側に配設されているが、織物供給装置59及びロービング供給装置69の位置関係は特に限定はなく、種々の位置関係で実施可能である。
【0046】
続いて、本発明の第2実施形態に係るケースの製造方法は、本発明の第1実施形態に係るファンケース1を製造するための方法であって、織物巻付工程、ロービング巻付工程、繰り返し工程、フランジ成形工程、フランジ保持工程、及び加熱工程を具備している。そして、各工程の具体的な内容は、次のようになる
織物巻付工程
図7に示すように、両端部に第1フロントエンド型37及び第1リアエンド型41がそれぞれ装着されたマンドレル型35を用い、回転モータ53の駆動によりマンドレル型35をその軸心周りに回転軸51と一体的に回転させつつ、マンドレル型35の回転に連動してボビン67を回転させて、ノンクリンプ構造の織物17をマンドレル型35側へ供給する。これにより、ノンクリンプ構造の織物17をマンドレル型35の成形面35sから第1フロントエンド型37の外周面及び第1リアエンド型41の外周面にかけて巻付けることができる。
【0047】
ここで、マンドレル型35の成形面35s等に巻付ける織物17には、予めエポキシ樹脂,フェノール樹脂,又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が含浸されている。なお、織物巻付工程において、織物17の巻層数は、単数又は複数を問わない。
【0048】
ロービング工程
織物巻付工程の終了後に、
図8に示すように、回転モータ53の駆動によりマンドレル型35をその軸心周りに回転軸51と一体的に回転させつつ、移動アクチュエータの駆動により供給ヘッド77を前後方向へ移動させて、ロービング25を前後方向へ移動させながらマンドレル型35側へ供給する。これにより、ロービング25をマンドレル型35の成形面35sのみに螺旋状に巻付けることができる。
【0049】
ここで、
図9に示すように、ロービング25を巻付ける際に、マンドレル型35の周方向に対するロービング25の傾斜角(β)は±0〜10度、好ましくは、±2〜10度に保っている。ロービング25の傾斜角(β)の絶対角が10度を超えると、ファンケース1の中間品である成形体1Fのねじり強度及びねじり剛性を確保することが困難になるからである。また、マンドレル型35の成形面35sに巻付けるロービング25には、予めエポキシ樹脂,フェノール樹脂,又はポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が含浸されている。なお、ロービング巻付工程において、ロービング25の巻層数は、単数又は複数を問わない。
【0050】
繰り返し工程
織物巻付工程及びロービング巻付工程の終了後に、織物巻付工程とロービング巻付工程を交互に複数回繰り返す。これにより、
図10(a)に示すように、ケース本体に相当する部分7Fを有した筒状の成形体1Fを成形することができる。
【0051】
ここで、繰り返し工程においては、最後にロービング工程を実行するようになっている。
【0052】
フランジ成形工程
繰り返し工程の終了後に、
図10(b)に示すように、成形体1Fの前端部(一端部)及び後端部(他端部)を第1フロントエンド型37の外周面及び第1リアエンド型41の外周面からそれぞれ捲り上げる。次に、
図11(a)に示すように、断面L形の環状の第2フロントエンド型39をマンドレル型35の前端部に第1フロントエンド型37と交換して装着する。同様に、断面L形の環状の第2リアエンド型43をマンドレル型35の後端部に第1リアエンド型41と交換して装着する。そして、
図11(b)に示すように、成形体1Fの前端部及び後端部を第2フロントエンド型39の成形面39s及び第2リアエンド型43の成形面43sにそれぞれ沿わせる。これにより、成形体1Fの前端部側及び後端部側にフロントフランジに相当する部分9F及びリアフランジに相当する部分13Fをそれぞれ成形して、成形体1Fをファンケース1の形状と同形状に仕上げることができる。なお、第2フロントエンド型39及び第2リアエンド型43の装着は、それぞれセグメント単位で行う。
【0053】
フランジ保持工程
フランジ成形工程の終了後に、
図11(b)に示すように、成形体1Fの外周面の前端部側に断面L形の環状のフロント補強部材29(フロント保持部材の一例)を配設することにより、フロント補強部材29と第2フロントエンド型39との協働により成形体1Fにおけるフロントフランジに相当する部分9Fを挟むように保持する。同様に、成形体1Fの外周面の後端部側に断面L形の環状のリア補強部材31(リア保持部材の一例)を配設することにより、リア補強部材31と第2リアエンド型43との協働により成形体1Fにおけるリアフランジに相当する部分13Fを挟むように保持する。なお、フロント補強部材29及びリア補強部材31の配設は、それぞれセグメント単位で行う。
【0054】
加熱工程
フランジ保持工程の終了後に、回転軸51を一対の側板47,49から離脱させて、マンドレル型35を回転軸51から取り外す。次に、マンドレル型35等を成形体1Fと共に加熱炉(図示省略)の所定位置にセットする。そして、加熱炉のヒータ(図示省略)によって成形体1Fをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の所定の硬化温度まで加熱する。これにより、成形体1Fに予め含浸させた熱硬化性樹脂を硬化させることができる。
【0055】
以上により、炭素繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との複合材料を構成材料とするファンケース1を製造することができる。
【0056】
ファンケース1の製造後に、マンドレル型35等をファンケース1と共に加熱炉の外側へ取り出す。そして、マンドレル型35の前端部及び後端部から第2フロントエンド型39及び第2リアエンド型43をそれぞれ離脱させて、ファンケース1をマンドレル型35から取り外す。なお、第2フロントエンド型39及び第2リアエンド型43の離脱は、それぞれセグメント単位で行う。
【0057】
本発明の第2実施形態に係るケースの製造方法は、次のように種々な変更が可能である。即ち、例えば、マンドレル型35の成形面35s等に巻付ける織物17、及びマンドレル型35の成形面35sに巻付けるロービング25に予めエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させる代わりに、フランジ保持工程の終了後であって加熱工程の開始前に、溶融状態のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を注入によって成形体1F内に含浸させる含浸工程を備えるようにしても構わない。また、織物巻付工程とロービング工程の実行順番を逆にしたり、フランジ保持工程をフランジ成形工程の終了後に実行する代わりに、フランジ成形工程の途中に実行したりしても構わない。
【0058】
続いて、本発明の第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
織物17をマンドレル型35の成形面35sから第1フロントエンド型37の外周面及び第1リアエンド型41の外周面にかけて巻付ける織物巻付工程と、ロービング25をマンドレル型35の周方向に対する傾斜角(β)を±0〜10度に保った状態でマンドレル型35の成形面35sのみに螺旋状に巻付けるロービング巻付工程と交互に繰り返すことにより、ケース本体に相当する部分7Fを有した筒状の成形体1Fを成形しているため、繊維配向角(α)が±0〜10度(繊維配向角(α)±0〜10度)の強化繊維を織物17の構成要素から除外しても、成形体1Fのねじり強度及びねじり剛性を十分に確保することができる。
【0060】
また、織物巻付工程において、ノンクリンプ構造の織物17を第1フロントエンド型37の外周面及び第1リアエンド型41の外周面に巻付けており、ロービング工程において、ロービング25をマンドレル型35の成形面35sのみに螺旋状に巻付けているため、フランジ成形工程の開始前における成形体1Fの両端部の内部に繊維配向角(α)±0〜10度の強化繊維が含まれることがなく、成形体1Fにおけるフロントフランジに相当する部分9F及びリアフランジに相当する部分13Fの成形容易性を高めることができる。
【0061】
特に、フランジ成形工程において、第1フロントエンド型37の外周面から捲り上げた成形体1Fの前端部及び第2フロントエンド型41の外周面から捲り上げた成形体1Fの後端部を、第1フロントエンド型37と交換した第2フロントエンド型39の成形面39s及び第1リアエンド型41と交換した第2リアエンド型43の成形面43sにそれぞれ沿わせることによって、成形体1Fにおけるフロントフランジに相当する部分9F及びリアフランジに相当する部分13Fを成形しているため、例えば適宜の成形型(図示省略)の成形面に織物17を巻付けて成形する場合に比較して、成形体1Fにおけるフロントフランジに相当する部分9F及びリアフランジに相当する部分13Fの成形容易性をより高めることができる。
【0062】
更に、加熱工程を開始する前に、フロント補強部材29と第2フロントエンド型39との協働及びリア補強部材31と第2リアエンド型43との協働により成形体1Fにおけるフロントフランジに相当する部分9F及びリアフランジに相当する部分13Fをそれぞれ挟むように保持しているため、加熱工程中に、成形体1Fにおけるフロントフランジに相当する部分9F及びリアフランジに相当する部分13Fの倒れ等の変形を防止することができる。
【0063】
従って、本発明の第2実施形態によれば、前述の本発明の第1実施形態と同様の効果を奏する他に、加熱工程中に、成形体1Fにおけるフロントフランジに相当する部分9F及びリアフランジに相当する部分13Fの倒れ等の変形を防止することができるため、ファンケース1の不良品の発生を抑えて、ファンケース1の形状品質を高めることができる。
【0064】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、第1フロントエンド型37、第2フロントエンド型39、第1リアエンド型41、及び第2リアエンド型43をリング状に一体化して構成したり、第1フロントエンド型37の傾斜面37d及び第1リアエンド型41の傾斜面41dを省略して、第1フロントエンド型37の外周面及び第1リアエンド型41の外周面をマンドレル型35の成形面35sに連続した同径に構成したりする等、その他、適宜の変更を行うことにより、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。