【課題を解決するための手段】
【0009】
ろう付でチューブ造管を行なう熱交換器の場合はヘッダープレートの溶融ろうがチューブ側へ流動することで、接合不良やエロージョンが発生しており、ヘッダープレートの溶融ろうの流動性が高すぎることが原因である。よって、ヘッダープレートの溶融ろうの流動性を十分に低下させるとチューブ側へのろうの流動も抑制されチューブのエロージョンは起こりにくくなる。また、微細流路を有する接合部においても過剰な溶融ろうが存在すると毛管力により、ろうが流動するため、ろう材供給量を最適範囲に制御することが必要となる。したがって、流動性の低いろうを適正供給範囲に調整し、チューブ接合部まで十分流動させると熱交換器などのろう付け不具合と性能低下を改善できることがわかった。
【0010】
すなわち、本発明のろう付性に優れるブレージングシートのうち、第1の本発明は、
流路を有する熱交換器用部材のろう付けに用いられるブレージングシートであって、
アルミニウム合金芯材の片面あるいは両面に、質量%で、Si:5.0〜9.0%を含有し、さらにTi:0.05〜1.0%、Mn:0.05〜1.0%、Zr:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜1.0%のうちの1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金ろう材を貼り合せたクラッド材からなり、
前記ろう材の液相線温度が610℃以上であり、600℃で測定したろう流動係数Kdが0.1〜
0.23の範囲内であることを特徴とする。
【0012】
第
2の本発明のろう付性に優れるブレージングシートは、前記第
1の本発明において、前記アルミニウム合金芯材が、質量%で、Mn:0.3〜2.0%、Si:0.1〜1.2%、Cu:0.1〜1.5%を含有するAl−Mn系合金であることを特徴とする。
【0013】
第
3の本発明のろう付性に優れるブレージングシートは、前記第1
または第
2の本発明において、前記流路に、1区画流路断面積が1mm
2以下、流路間最小距離0.5mm以下の流路を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明のろう付品の製造方法は、前記第1〜第
3の本発明のいずれかのクラッド材を用いて成形された部材と、相手材とを前記クラッド材のアルミニウム合金ろう材を介して接触させ、585〜610℃未満の加熱温度によってろう付することを特徴とする。
【0015】
以下に、本発明においてろう材中のSi量を5.0〜9.0%に、液相線温度を610℃以上に限定した理由を以下に示す。
【0016】
Si:5.0〜9.0%
ろう付時に生成する溶融ろうの流動性が高すぎると、過剰な溶融ろうの流動によりエロージョンが発生したり、流路詰まりが発生する。したがって、ブレージングシートのろう材供給量を制御し、流動性を低下させれば、上記不具合は改善されるが、それには溶融ろう中の固相ろうの割合を増加させることが有効である。
通常、ろう付熱処理は600℃付近の温度で実施されるが、ろう材中のSi量を5.0〜9.0%の範囲に制御するとろう付温度でろう材の一部が固相(初晶)となりろうの流動性が低下し、ろう付性が明らかに向上するため、ろう材中のSi量を5.0〜9.0%に限定した。
【0017】
ろう材中のSi量が5.0%より低い場合は、ろう付温度で溶融ろうが不足し、さらに流動性が低下しすぎるためろう付不良が発生する。一方、Si量が9.0%より高くなると、ろう付温度でほとんどが液相となり溶融ろうの量が過剰となり、流動性も高くなる。したがって、ろう材中のSi量を上記範囲に限定した。ろう材Si量の好ましい下限は、6.0%、好ましい上限は8.0%である。
【0018】
ろう材の液相線温度も通常のろう付温度である600℃でろう材中に固相分が十分残存するように、610℃以上に限定した。
【0019】
ろう材添加元素の効果
(i)Ti:0.05〜1.0%
Tiは、Al−Si系合金に添加し、溶融ろうの流動性を低下させ、かつ、Al−Si系溶融ろうの液相線温度を増加させることにより過剰な溶融を抑制する効果を有している。その含有量が0.05%未満では効果が十分でなく、1.0%を超えると鋳造や圧延が困難となり、ろう付時においてもろうの流動に有害な金属間化合物の形成・成長が進行するので、0.05〜1.0%とした。Ti含有量の好ましい下限は0.1%、好ましい上限は0.3%である。
【0020】
(ii)Mn:0.05〜1.0%
Mnは、Al−Si系合金に添加し、溶融ろうの流動性を低下させる効果を有している。その含有量が0.05%未満では効果が十分でなく、1.0%を超えるとろうの流動に有害な粗大金属間化合物の形成・成長が進行するので、0.05〜1.0%とした。Mn含有量の好ましい下限は、0.1%、好ましい上限は0.7%である。
【0021】
(iii)Zr:0.05〜0.5%
Zrは、Al−Si系合金に添加し、溶融ろうの流動性を低下させ、かつ、Al−Si系溶融ろうの液相線温度を増加させることにより過剰な溶融を抑制する効果を有している。その含有量が0.05%未満では効果が十分でなく、0.5%を超えるとろうの流動に有害な金属間化合物が形成されるため、0.05〜0.5%とした。Zr含有量の好ましい下限は0.08%、好ましい上限は0.2%である。
【0022】
(iv)Cr:0.05〜1.0%
Al−Si系合金に添加し、溶融ろうの流動性を低下させる効果を有している。その含有量が0.05%未満では効果が十分でなく、1.0%を超えるとろうの流動に有害な粗大金属間化合物が形成されるため、0.05〜1.0%とした。Cr含有量の好ましい下限は0.2%、好ましい上限は0.5%である。
【0023】
(v)Ti、Mn、ZrおよびCrの同時添加の効果
TiはAl−Siろう材中においてその添加量に応じて微細なAl−Ti系金属間化合物や固溶体を形成し、溶融ろうの流動性を低下させる。ZrにもTiと同様な効果があり、Zr添加量を微量に制御することによりTiとの複合作用により溶融ろうの特性を著しく変化させることが可能となる。また、MnはTi、Zrとは関係なく、Al−Si溶融ろう中に固溶および金属間化合物として存在し、溶融ろうの流動性を低下させる効果がある。上記観点から、これらの元素を同時に含有させることで複合作用により溶融ろうの流動性を制御することが可能となり、従来のろう材合金に比べ溶融ろうの流動による流路詰まりを抑制する効果がある。
【0024】
ろう流動係数:0.1〜
0.23
次に、600℃におけるブレージングシートのろう流動係数を0.1〜
0.23の範囲に限定した理由を示す。
本特許におけるブレージングシートの流動係数Kdは
図1に示すドロップ型流動試験で測定し、次式により算出する。
Kd= (4WB−W0)/(3W0×クラッド率)
W0:ろう付前のブレージングシートの重量
WB:ろう付後のブレージングシート下部1/4の重量
クラッド率:両面クラッドの場合はその合計
【0025】
ドロップ型流動試験は、ブレージングシートを縦60mm×横25mmの試験片に加工し、この初期状態における試験片全体の質量W
0を測定する(
図1(a))。次いで、高純度窒素ガス雰囲気中において、温度600℃で3分間保持してろう合金を溶融させる。
そして、
図1(b)に示すような、試験片の一端側から縦方向で1/4までの部分(つまり、60mm/4=15mm)の部位の質量W
Bを測定し、上記式にて流動係数を求めるものである。
【0026】
前記のろう流動係数は不活性ガス雰囲気中で600℃×3分間の熱処理を施した際に求めた値とする。この試験方法はフィレットの形成とは無関係であるが、溶融ろうの量と流動性を定量化することが出来る。
ろう材中のSi量や添加元素によりろう流動係数は変化するが、十分なフィレットの形成が見られ、かつ過剰な溶融ろうの流動が発生しない条件を調査した結果、600℃における流動係数が0.1〜
0.23の範囲が最適であることが分かった。
ろう流動係数が0.1より小さい場合は接合部でろう材量が不足し、接合強度の低下や接合不良が発生した。
0.24以上の場合は溶融ろうの量が多すぎるために流路詰まりや流路面積の減少が発生した。したがって、ろう流動係数を0.1〜
0.23の範囲に限定した。なお、ろう流動係数を求めた加熱条件が、本発明のブレージングシートを使用する際のろう付け条件を限定するものではない。
【0027】
ろう流動係数は製造工程中における均質化処理条件や焼鈍条件、あるいはクラッド率、質別等の最適化によっても制御可能である。以下、具体的に説明する。
ろう流動係数は本発明で規定したろう材成分だけでなく、ろう付熱処理時に形成されるブレージングシートの結晶粒サイズの影響を受ける。結晶粒サイズが細かいとろう流動係数は低下し、逆に粗大になるとろう流動係数は増大することが知られている。結晶粒サイズはブレージングシートの質別や均質化処理条件、焼鈍条件に代表される製造工程によって変化する。例えば、一般的に質別H12材はO材より結晶粒径は粗大となり、ろう流動係数は増大する。また、均質化処理を芯材の成分に応じて温度と保持時間を変えることで、結晶粒サイズを制御することが可能である。当然ながらろう材クラッド率によっても、溶融ろうの絶対量は変化し、板厚等によって最適仕様が選定される。
上記製造条件は板厚や適用製品の形状によって要求される成形性等を基に最適な物性に調整される。
【0028】
次に、本発明におけるクラッド材の芯材の成分範囲を限定した理由を述べる。
Mn:0.3〜2.0%
芯材に含まれるMnは、芯材素地中にAl−Mnとして分散し、耐食性を低下させることなく強度を向上させる作用があるが、その含有量が0.3%未満では所望の効果が得られず、一方、2.0%を越えて含有すると粗大な化合物により鋳造性や圧延などの加工性が低下するので好ましくない。したがって、Mn含有量は0.3〜2.0%が好ましい。Mn含有量の一層好ましい下限は0.8%、一層好ましい上限は1.7%である。
【0029】
Cu:0.1〜1.5%
芯材に含まれるCuは、マトリックスに固溶して強度を向上させ、また芯材の電位を貴にし、皮材およびろう材との電位差を大きくする作用を有するが、Cu:0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、Cuを1.5%超添加すると、融点が低下するためろう付時に材料が溶融しやすく、さらに、粒界腐食が起こりやすくなり、耐食性が低下するので好ましくない。したがって、Cu含有量は0.1〜1.5%が好ましい。Cu含有量の一層好ましい下限は0.4%、一層好ましい上限は0.8%である。
【0030】
Si:0.1〜1.2%
芯材に含まれるSiは、Mnと共存させることによりAl−Mn−Si化合物となって素地中に分散、あるいはマトリックスに固溶して強度を向上させる作用を有するが、Si:0.1%未満では所望の効果が得られず、一方、1.2%を越えて含有させると、芯材の融点を低下させ、さらに粒界腐食を発生させるため好ましくない。したがって、Si量は0.1〜1.2%に定めた。Si含有量の一層好ましい下限は0.3%、一層好ましい上限は1.0%である。