特許第5847463号(P5847463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5847463自動車用シートの一体発泡成形品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847463
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】自動車用シートの一体発泡成形品製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/14 20060101AFI20151224BHJP
   B60N 2/48 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   A47C27/14 A
   B60N2/48
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-149252(P2011-149252)
(22)【出願日】2011年7月5日
(65)【公開番号】特開2013-13604(P2013-13604A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−042688(JP,U)
【文献】 特開平08−231678(JP,A)
【文献】 特開2007−319600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/14
B60N 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状のトリムカバー内に、パッド体成形用の連続気泡型発泡液を注入して、トリムカバーと一体発泡してパッド体を硬化してなる自動車用シートの一体発泡成形品製造方法において、
前記パッド体の硬化後に、発泡液を注入する袋状のトリムカバーの注入孔から、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤を注入することを特徴とする自動車用シートの一体発泡成形品製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用シートの一体発泡成形品製造方法、具体的には、自動車用シートの例えば、袋状のトリムカバーの内部にパッド材となる発泡液を注入して、トリムカバーとパッド材を一体発泡成形するへッドレスト、アームレストの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種、自動車用シートの一体発泡成形品及びその製造方法、一例として、特開2005−124743号公報に示すものがある。
かかる一体発泡成形品としては、自動車用シートのパッド材が示されている。一般的にこのパッド材は、クッション性が高い軟質ポリウレタンフォームを用いられており、このポリウレタンフォームの原料である発泡液には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等の揮発性有機化合物が含まれて、発泡成形後にパッド材からホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物が放散して、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こす原因となることから、車内においても、これら各種一体発泡成形品から揮発性有機化合物が放散しないことが求められる。
【0003】
その為、軟質ポリウレタンフォームの原料である発泡液に、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤を添加して一体発泡成形し、または、発泡後のパッド材の表面に、キャッチャー剤を含有する溶液を塗布することで、パット材からの揮発性有機化合物の放散を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−124743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、軟質ポリウレタンフォームの原料である発泡液に、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤を添加して一体発泡成形することにより、パット材からの揮発性有機化合物の放散を抑制するには、キャッチャー剤の多くが軟質ポリウレタンフォームの原料である発泡液のウレタンマトリック中に取り込まれたり、原料である発泡液と反応したりする為、十分な揮発性有機化合物の放散を抑制するには、キャッチャー剤の添加量を増量する必要があり、コスト高となり、また、発泡後のパッド材の表面に、キャッチャー剤を含有する溶液を塗布することで、パット材からの揮発性有機化合物の放散を抑制するには、特に、ヘッドレストやアームレストなどの一体発泡製成形品では、袋状のトリムカバー内に、パッド体成形用の発泡液を注入して一体発泡させるため、表面にトリムカバーがあるので、キャッチャー剤をパッド材の表面に塗布することができず、揮発性有機化合物の放散を抑制することができない。
【0006】
本発明は、キャッチャ―剤の少量の注入により、揮発性有機化合物の放散を抑制できる自動車用シートの一体発泡成形品製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、袋状のトリムカバー内に、パッド体成形用の連続気泡型発泡液を注入して、トリムカバーと一体発泡してパッド体を硬化してなる自動車用シートの一体発泡成形品製造方法において、
前記パッド体の硬化後に、発泡液を注入する袋状のトリムカバーの注入孔から、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤を注入することを特徴とする自動車用シートの一体発泡成形品製造方法である。
【0008】
パッド体の硬化後に、発泡液を注入する袋状のトリムカバーの注入孔から、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤を注入すると、パッド体は連続気泡型発泡液により発泡硬化してパッド体の各気泡が繋がり、この気泡を通じてキャッチャ―剤がパット体に浸透するので、パッド体から放散する揮発性有機化合物が気泡に浸透した必要最少量でのキャッチャー剤により放散が抑制できる一体発泡成形品が得られる。
【0009】
そして、本発明は、前記パッド体の硬化後に、発泡液を注入する袋状のトリムカバーの注入孔から、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤を注入することを特徴とする自動車用シートの一体発泡成形品の製造方法である。
【0010】
従って、パッド体の硬化後に、発泡液を注入する袋状のトリムカバーの注入孔から、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤を注入することにより、揮発性有機化合物の放散が抑制できる一体発泡成形品得られるので、もともと成形した注入孔を利用することができ、キャッチャー剤を注入する為の別孔が不要で、その製造が容易にできる。
【0011】
また、袋状のトリムカバーの注入孔から、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤を注入することにより、揮発性有機化合物の放散が抑制できる一体発泡成形品得られるので、一体発泡成形品の製造が容易にできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一体発泡成形品であっても、揮発性有機化合物の放散が低コストで抑制でき、その製造が容易化する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る自動車用シートの一体発泡成形品であるヘッドレストの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示すヘッドレストのキャッチャー剤を注入する際の斜視図である。
図3図2に示すヘッドレストのA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る自動車用シートの一体発泡成形品製造方法につき説明するが、その一例として一体発泡成形品であるヘッドレストの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、ここでは、一体発泡成形品であるヘッドレストにつき説明するが、一体発泡成形品としては、例えば、アームレストであっても良く、自動車用シートに用いられる一体発泡成形品であれば、ヘッドレスト、アームレストに限定されないことは言うまでもない。
【0015】
図1に示す様に、ヘッドレストは、袋状のトリムカバー1内に、パッド体成形用の連続気泡型発泡液、軟質ポリウレタンフォームの発泡液を注入して、一体発泡してパッド体2が硬化してなる。3は、ヘッドレスト用ステーで、コ字形状に両端を外部に露出してパッド体2内に埋設している。4は、トリムカバー1の底面1aに形成した発泡液を注入する為の注入孔で、この注入孔4から発泡液を注入している。ここで使用されるパッド体成形用の発泡液は、連続気泡型で、各気泡が繋がるウレタン配合から成っている。その為、パット体2は、発泡して硬化後に、その内部に発泡途中で泡した連続気泡を有している。
【0016】
そして、パッド体2の硬化後に、発泡液を注入する袋状のトリムカバー1の注入孔4から、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤5を注入する。
図1、2に示す様に、注入孔4に漏斗6の基端を差込み、キャッチャー剤5を注入する。キャッチャー剤5は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン等の揮発性有機化合物を捕捉することができるものであれば良い。
【0017】
キャッチャー剤5としては、従来周知のアミン類、イミン類、アミジン類、アミド類、カルバミド類、ヒドラジド類、アゾール類、アジン類、アミノ酸類等のように、アルデヒドガスと化学的に反応して捕捉作用を有する含窒素有機化合物を使用することが良い。
具体的には、例えば、尿素、ピロリジン、ラウリル酸ヒドラジン、3−メチル−5−ピラゾロン、ピリミジン等が挙げられる。
【0018】
図3に示す様に、キャッチャー剤5を漏斗6で注入孔4よりパッド体2内に注入すると、キャッチャー剤5はパッド体2内部の連続気泡7,7・・・からパッド体2全体に浸透する。
その為、パッド体2内部から放散するホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物はパッド体2内部に浸透したキャッチャー剤5により捕捉され、揮発性有機化合物の放散が抑制される。
キャッチャー剤5をパッド体2内に注入する際には、圧力をかけながら注入すると、より一層、パッド体2の内部の連続気泡7,7・・への浸透がし易くなるし、キャッチャー剤5を注入する際に、パッド体2へ上下左右から圧力を加えると、前記と同様に、キャッチャー剤5のパッド体2への浸透がしやすくなる。
また、キャッチャー剤5は直接、パッド体2に注入して浸透させているので、少量で効率よく揮発性有機化合物の放散を抑制できる。
キャッチャー剤5は発泡液を注入する注入孔4から注入しているので、もともとある注入孔4を利用することができ、揮発性有機化合物の放散を抑制できるヘッドレストの製造が容易にできる。注入孔4はヘッドレストの底面1aに形成しているので、外観への影響もなく、外観品質が維持できる。
【符号の説明】
【0019】
1はトリムカバー
2はパッド体
4は注入孔
5はキャッチャー剤
6は漏斗
図1
図2
図3