特許第5847476号(P5847476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847476
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20151224BHJP
【FI】
   G01N29/24
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-165218(P2011-165218)
(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公開番号】特開2013-29399(P2013-29399A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】591114803
【氏名又は名称】公益財団法人レーザー技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】島田 義則
(72)【発明者】
【氏名】オレグ コチャエフ
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−131557(JP,A)
【文献】 特開2009−030996(JP,A)
【文献】 特開昭62−002153(JP,A)
【文献】 特開平02−035351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物(M)の表面に衝撃波を生じさせる加熱用レーザー(1)と、この加熱用レ
ーザー(1)によって前記検査対象物(M)に生じた衝撃波を検出する検出用レーザー(
2)と、前記表面によって反射された検出用レーザー(2)を検出する光検出器(17)
とを備え、
前記検出用レーザー(2)を、第一検出用レーザー(2a)と第二検出用レーザー(2
b)の二つに分岐して、前記表面の異なる位置にそれぞれ照射し、前記表面によって反射
された前記第一及び第二検出用レーザー(2a、2b)を干渉光路(12)に導いて干渉
させた干渉縞(18)の変位を前記光検出器(17)で検出して前記検査対象物(M)内
の欠陥の有無を判定し、
前記光検出器(17)が、前記干渉縞(18)の明暗変化方向に並ぶ複数の検出チャン
ネルを有し、そのうちの二つの検出チャンネル(ch1、ch3)が、前記明暗変化方向
への明暗変化の周期の1/2の間隔をもって配置されており、前記間隔で配置された両検
出チャンネル(ch1、ch3)で検出した受光強度(U1、U3)の差が所定の閾値以
下となったタイミングで、前記加熱用レーザー(1)を照射するようにした欠陥検査装置
【請求項2】
前記加熱用レーザー(1)を、前記第一検出用レーザー(2a)と同一の箇所に照射す
るようにした請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記干渉光路(12)に、前記表面によって反射された第一及び第二検出用レーザー(
2a、2b)中のスペックルノイズを低減するノイズ低減素子(14)を設けた請求項1
又は2に記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザー光の照射によって、コンクリート構造体等の検査対象物の内部に存在する欠陥を検出する、検査対象物内の欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネルの内壁等のコンクリート構造体等においては、定期的に検査を行って、その検査対象物に空洞等の内部欠陥が生じていないかどうか検査する必要がある。この検査のための欠陥検査装置として、例えば特許文献1に示す検査装置が提案されている。この検査装置は、検査対象物の表面に検出用レーザーを照射するとともに弾性波励起用レーザーを照射し、この検査対象物に生じた弾性波を前記検出用レーザーに生じた周波数変調として検知して、内部欠陥を検出するものである。
【0003】
前記検出用レーザーは、二つの光路に分岐され、一方の光(信号光)は前記検査対象物の表面に照射され、この表面における反射光が位相共役素子に入射し、他方の光(参照光)は前記検査対象物に照射されることなく、直接、前記位相共役素子に入射する。そして、この信号光と参照光がこの位相共役素子において干渉して干渉縞が形成される。
【0004】
前記検査対象物中に内部欠陥が存在すると、前記弾性波励起用レーザーの照射に伴って弾性波が生じ、この弾性波によって信号光に周波数変調が生じる。すると、前記干渉縞の位置が変動するため、この位置変動により内部欠陥の検出を行っている。
【0005】
この干渉縞の位置変動は、内部欠陥を検出した場合のみならず、測定中の機器振動によって、検査装置と検査対象物の相対位置が変化した場合にも生じる。この相対位置の変化によって、信号光の光路長が変化するためである。そこで、この特許文献1に係る検査装置では、位相共役素子に入射する参照光の光路中に、この参照光の光路長を変化させる波面制御ミラーを設け、この波面制御ミラーで参照光の光路長を最大で数μm程度変化させることによって、前記機器振動に伴う信号光と参照光の位相のずれを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−30996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
検査対象物の欠陥検査は屋外で行われることが多く、周囲の騒音、自動車の走行等に起因して振動の影響を受けやすい。しかも、検査装置から検査対象物までの距離が数メートル程度離れていることがあり、この場合、前記振動の影響が一層顕著となりやすい。例えば、前記振動によって検査装置から検査対象物までの距離が1秒間当たり1cm変動する場合であって、検出用レーザーに波長が600nm程度のレーザー光を使用した場合、信号光と参照光との間には約100kHz以上の位相変動が生じ得る(図7を参照)。この場合、波面制御ミラーをこの高い周波数に追随するように変位させるのは困難であり、この波面制御ミラーによる位相のずれ補正は、実質的に不可能に近い。
【0008】
そこで、本願発明は、振動環境下において干渉縞の振動を抑制して、精度良く検査対象物中の内部欠陥を検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明は、検査対象物の表面に衝撃波を生じさせる加熱用レーザーと、この加熱用レーザーによって前記検査対象物に生じた衝撃波を検出する検出用レーザーと、前記表面によって反射された検出用レーザーを検出する光検出器とを備え、前記検出用レーザーを、第一検出用レーザーと第二検出用レーザーの二つに分岐して、前記表面の異なる位置にそれぞれ照射し、前記表面によって反射された前記第一及び第二検出用レーザーを干渉光路に導いて干渉させた干渉縞の変位を前記光検出器で検出して前記検査対象物内の欠陥の有無を判定するように欠陥検査装置を構成した。
【0010】
このように第一検出用レーザーと第二検出用レーザーをともに検査対象物の表面に照射することにより、この検査対象物と検査装置の間の相対振動によって、両検出用レーザーに同様に光路長変化が生じる。このため、前記相対振動が実質的に相殺されて、この相対振動に起因して、両検出用レーザーによって形成された干渉縞が変位するのを極力防止することができる。
【0011】
前記構成においては、前記加熱用レーザーを、前記第一検出用レーザーと同一の箇所に照射するのがより好ましい。
【0012】
この加熱用レーザーは、検査対象物を加熱して体積膨張させ、その体積膨張に伴う衝撃波を生じさせるものであり、この衝撃波の大きさは加熱用レーザーの照射部近傍で最大となる。そこで、この照射部において第一検出用レーザーによる検出を行うようにすることにより、小さい衝撃波であっても高感度に検出することができ、内部欠陥の見逃しを極力防止することができる。
【0013】
ここでいう同一の箇所とは、完全に同一である場合だけではなく、数mmから数cm程度両者がずれている場合も含む。この検査装置(レーザーの光学系)と検査対象物との間は数m程度離れていることが多く、両者を同一箇所に合わせようとしても、光学系の調整上、不可避的にずれてしまうことも実際上あり得るためである。なお、この程度のずれが生じても、第一検出用レーザーによる高感度検出という目的は十分達成でき、特に問題はない。
【0014】
また、前記各構成においては、前記光検出器が、前記干渉縞の明暗変化方向に並ぶ複数の検出チャンネルを有し、そのうちの二つの検出チャンネルが、前記明暗変化方向への明暗変化の周期の1/2の間隔をもって配置されており、前記間隔で配置された両検出チャンネルで検出した受光強度の差が所定の閾値以下となったタイミングで、前記加熱用レーザーを照射するようにするのがより好ましい。
【0015】
この閾値は適宜決めることができるが、例えば、前記二つの検出チャンネルでそれぞれ検出する最大受光強度の1/10、のようにできるだけ0に近い値とするのが良い。この閾値以下となったタイミングにおいては、この二つの検出チャンネルでの受光強度がほぼ同じで、かつ最大受光強度の1/2程度となっている。この受光強度においては、干渉縞が明暗いずれの方向に変位してもその明暗変化量が最大(傾きが最大)となり、前記加熱用レーザーの照射により生じた弾性波を高精度に検出することができる。
【0016】
また、前記各構成においては、前記干渉光路に、前記表面によって反射された第一及び第二検出用レーザー中のスペックルノイズを低減するノイズ低減素子を設けるのがより好ましい。
【0017】
この第一及び第二検出用レーザーは前記表面で反射されるため、前記表面の粗さや伝播中の大気の影響等を受けてスペックルノイズが発生しやすい。このスペックルノイズは干渉縞のコントラストの低下等を引き起こしかねないため、その光路中にノイズ低減素子を設けて低減する必要がある。このノイズ低減素子を干渉光路内に設けることで、一つの素子で両レーザーのノイズ低減を図ることができるとともに、両レーザーの光軸合わせも同時に行うことができるため効率が良い。このノイズ低減素子として、例えば、スペイシャルフィルタやコイル状の光ファイバーを採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、検出用レーザーを第一及び第二検出用レーザーに分岐し、両検出用レーザーを検査対象物に照射した。このため、検査装置と検査対象物との間の相対振動の影響を両検出用レーザーが同様に受けて、この相対振動の影響が相殺されるため、両検出用レーザーの干渉縞が前記相対振動によって変位しにくい。このため、加熱用レーザーの照射によって生じた衝撃波を前記干渉縞の変位によって高感度に検知することができ、検査対象物の内部欠陥の見落としを極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本願発明に係る欠陥検査装置を示す構成図
図2】本願発明の構成によって、検査対象物と検査装置との間の相対振動に起因する干渉縞の変位を低減した状態を示す図
図3】光検出器による干渉縞の強度測定であって、(a)は検出チャンネルと干渉縞の位置関係を示す図、(b)は検出強度の演算結果を示す図
図4】検査対象物の欠陥領域中央に加熱用レーザーを照射した場合であって、(a)は表面の変位を示す図、(b)は表面の振動を示す図
図5】検査対象物の欠陥領域のエッジ近傍に加熱用レーザーを照射した場合であって、(a)は表面の変位を示す図、(b)は表面の振動を示す図
図6】検査対象物の欠陥領域外に加熱用レーザーを照射した場合であって、(a)は表面の変位を示す図、(b)は表面の振動を示す図
図7】検査対象物と検査装置との間の相対振動に起因する干渉縞の変位を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る欠陥検査装置を図1に示す。この欠陥検査装置は、内部欠陥Vが存在する検査対象物Mの表面に衝撃波を生じさせる加熱用レーザー1と、この加熱用レーザー1によって検査対象物Mに生じた衝撃波を検出する検出用レーザー2とを備えている。この構成においては、加熱用レーザー1としてNd:YAGあるいはCOレーザーを、検出用レーザー2として2倍高調波Nd:YVOレーザーを用いているが、このレーザーの種類はこれに限定されない。
【0021】
検出用レーザー2は、偏光ビームスプリッタ3によって、第一検出用レーザー2aと第二検出用レーザー2bに分岐される。第一検出用レーザー2aは、さらに偏光ビームスプリッタ4を通過した後に、1/4波長板5によって円偏光に変換される。そして、ミラー6、レンズ7、及び、ハーフミラー8を経由して、検査対象物Mの表面の所定位置に照射される。この第一検出用レーザー2aの前記所定位置とほぼ同一の位置に、加熱用レーザー1が照射される。このように、加熱用レーザー1と第一検出用レーザー2aを同軸に照射すると、この第一検出用レーザー2aで高感度に弾性波を検出できるというメリットはあるが、必ずしも同軸とする必要はなく、例えば、両検出用レーザー2a、2bの中間に加熱用レーザー1を照射するようにすることもできる。
【0022】
第二検出用レーザー2bは、1/4波長板9によって円偏光に変換され、検査対象物Mの表面の前記所定位置(第一検出用レーザー2aの照射位置)とは異なる位置に照射される。第一及び第二検出用レーザー2a、2bによる両照射位置の間隔は、検査対象となる内部欠陥Vの推定サイズに対応して適宜変更することができ、例えば、20〜30cmの間隔で両検出用レーザー2a、2bが検査対象物Mに照射されるように光学系を調節する。
【0023】
第一及び第二検出用レーザー2a、2bは検査対象物Mによって反射され、1/4波長板5、9によって、それぞれ照射時とは偏光状態が90度異なる直線偏光に変換される。そして、偏光ビームスプリッタ3、4及びミラー10、ハーフミラー11によって干渉光路12に案内される。この第二検出用レーザー2bの光路には1/2波長板13が設けられ、直線偏光の偏光状態が90度回転される。これにより、第一及び第二検出用レーザー2a、2bが同じ偏光状態(紙面に対して垂直の直線偏光)となり、両検出用レーザー2a、2bの干渉状態が良好なものとなる。
【0024】
この干渉光路12内にはスペイシャルフィルタ14が設けられている。このスペイシャルフィルタ14は、レンズ15とピンホール16を備えたノイズ低減素子の一種であって、両検出用レーザー2a、2bの第0次光がレンズ15で集光されてほぼ損失なくピンホール16を通過する一方で、検査対象物Mの表面及び伝播中に大気の影響等によって生じたスペックルパターン(ノイズ成分)がピンホール16で除去される。これにより、ノイズ成分の少ない良好なビーム品質を得ることができる。また、一つのスペイシャルフィルタ14を両検出用レーザー2a、2bで共用しているため、両レーザーの軸合わせ素子としての機能も担っている。
【0025】
図1においては、第一及び第二検出用レーザー2a、2bが干渉光路12を完全に同軸に伝播しているように記載されているが、実際には両検出用レーザー2a、2bの光路は、僅かに相対角度をもって交差している。このように交差させることにより、両検出用レーザー2a、2bによる干渉縞が形成されるためである。
【0026】
この干渉縞の強度は、干渉光路12に設けられた光検出器17によって検出される。検出用レーザー2に波長が532nmのレーザーを用い、検査対象物Mから検査装置までの距離を1秒間あたり1cm変動させたときの第一検出用レーザー2aと第二検出用レーザー2bの干渉縞の強度変化を図2に示す。多少の強度変化は生じているが、同図中に示すように10ms程度の時間スパンでは、強度が比較的安定していることが分かる。後ほど図4〜6で説明するように、加熱用レーザー1の照射に伴う衝撃波は、照射から10ms程度の時間に生じており、この時間内において干渉縞が安定していれば、この衝撃波を問題なく検知することができる。
【0027】
この光検出器17は、図3(a)に示すように、干渉縞18の明暗変化方向に均等間隔で並ぶ3つの検出チャンネル(ch1、ch2、ch3)を備えており、各検出チャンネルch1、ch2、ch3ごとに各位置における干渉縞18の強度U1、U2、U3を測定できるように構成されている。
【0028】
基本的には同図に示すように、両端の検出チャンネルch1、ch3の位置に対して、干渉縞18の明暗変化が1/2周期(位相差π)だけずれるように、この干渉縞18の明暗変化を調節する。この明暗変化の調節は、干渉光路12における第一及び第二検出用レーザー2a、2bの相対角度を調整することによってなされる。この相対角度を小さくする(両レーザーを平行に近付ける)と、干渉縞18の明暗変化をなだらかにする(疎な干渉縞18とする)ことができる一方で、相対角度を大きくすると、干渉縞18の明暗変化を急峻にする(密な干渉縞18とする)ことができる。
【0029】
このように検出チャンネルch1、ch3と、干渉縞18の明暗変化との関係を調節すると、検査対象物Mと検査装置との間の相対振動によりこの干渉縞18がその明暗変化方向に変位した際に、検出チャンネルch1、ch3における検出強度U1、U3は図3(b)に示すように、逆位相をもって変化する。ここで、(i)検出チャンネルch1、ch3の検出強度U1、U3の差(U1−U3)がほぼ0であって、かつ、(ii)検出チャンネルch1、ch2の検出強度U1、U2の差(U1−U2)の絶対値が0よりも十分大きい、という二つの条件を満たしたタイミングでトリガー信号を発して、パルス状の加熱用レーザー1を検査対象物Mに向けて照射する。
【0030】
上記(i)の条件を満たすことにより、検出チャンネルch1、ch3が干渉縞18の最大強度のほぼ1/2となる箇所に位置する。この位置は、干渉縞18がその明暗変化方向に変位した際にその明暗変化量が最大となる位置であり、加熱用レーザー1の照射に伴う干渉縞18の変位を高感度に検知することができる。さらに、両検出チャンネルch1、ch3による検出強度の差U1−U3の変化に基づいて干渉縞18の変位を検知するようにすることで、検出強度U1、U3を単独で検知した場合と比較して、その感度を2倍に高めることができる。両強度は、逆位相で変化する(一方が暗くなると、他方が明るくなる)ためである。また、上記(ii)の条件を満たすことにより、干渉縞18のコントラストが高い状態で明暗変化を測定することができ、検出感度のさらなる向上が期待できる。
【0031】
内部欠陥Vを有する検査対象物Mに加熱用レーザー1、第一及び第二検出用レーザー2a、2bを入射した際の検査対象物Mの表面の振動状態を図4〜6に示す。
【0032】
図4(a)は、加熱用レーザー1及び第一検出用レーザー2aが内部欠陥Vの存する領域(以下、欠陥領域という。)の中央付近に照射されるとともに、第二検出用レーザー2bが欠陥領域のエッジ付近に照射されている状態を示す。この場合、図4(b)に示すように、第一検出用レーザー2aで、衝撃波による照射軸方向への大きな振動Paを検知するとともに、第二検出用レーザー2bで、前記照射軸方向への振動Pbを僅かに検知することができる。すると、主に第一検出用レーザー2aに前記振動に起因する周波数変調が生じ、この周波数変調に起因して、第一及び第二検出用レーザー2a、2bによる干渉縞18が変位する。この変位があったことを光検出器17の各検出チャンネルch1、ch2、ch3で検出して内部欠陥Vの有無を判断する。
【0033】
図5(a)は、加熱用レーザー1及び第一検出用レーザー2aが欠陥領域のエッジ付近に照射されるとともに、第二検出用レーザー2bが欠陥領域の中央付近に照射されている状態を示す。この場合、図5(b)に示すように、第一検出用レーザー2aでは振動Paがほとんど検出されない一方で、第二検出用レーザー2bで前記中央付近における振動Pbが検出される。すると、第二検出用レーザー2bで前記振動に起因する周波数変調が生じ、上記と同様に干渉縞18が変位して、内部欠陥Vの有無を判断することができる。
【0034】
検出用レーザー2が一つしかない場合には、この検出用レーザー2を欠陥領域のエッジ付近に照射しても振動に伴う周波数変動が生じないため、そのエッジ位置を明確に確定できなかった。これに対し、検出用レーザー2を二つに分岐して、この分岐したレーザーの両方を検出用レーザー2a、2bとして用いることにより、内部欠陥Vの形状を知ることができ、欠陥検査の信頼性が一層高まることが期待される。
【0035】
検査対象物Mの表面に対して、一方の検出用レーザーの照射軸に対して、他方の検出用レーザーの照射軸を適宜回転させながら検査を行うことで、欠陥領域のエッジ位置を一層明確に知ることができる。
【0036】
図6(a)は、加熱用レーザー1及び第一検出用レーザー2aが欠陥領域の外側に照射されるとともに、第二検出用レーザー2bが欠陥領域内に照射されている状態を示す。この場合、図6(b)に示すように、第一及び第二検出用レーザー2a、2bのいずれにおいても振動Pa,Pbは検出されない。加熱用レーザー1によって与えた衝撃波が、検査対象物Mの欠陥領域以外の部分で吸収されてしまったためである。このことからも、本構成において、加熱用レーザー1が欠陥領域内(エッジ付近を含む)に照射されている場合にのみ両検出用レーザーの少なくとも一方で振動が検出され、内部欠陥Vの有無だけでなく、その領域も明確に知ることができることが分かる。
【0037】
図1に示した構成においては、スペイシャルフィルタ14を干渉光路12に設けたが、第一及び第二検出用レーザー2a、2bのそれぞれの光路(例えば、偏光ビームスプリッタ4とミラー10の間、及び、偏光ビームスプリッタ3とハーフミラー11の間)に設けるようにしても良い。この場合、上述したスペイシャルフィルタ14による軸合わせ素子としての機能は期待できないが、ノイズ除去作用は問題なく発揮される。なお、前記構成においてはスペイシャルフィルタ14を用いたが、その代わりに、コイル状の光ファイバーを採用することもできる。スペイシャルフィルタ14と同様に、スペックルノイズの除去作用を発揮し得るからである。
【符号の説明】
【0038】
1 加熱用レーザー
2 検出用レーザー
2a 第一検出用レーザー
2b 第二検出用レーザー
3、4 偏光ビームスプリッタ
5、9 1/4波長板
6、10 ミラー
7 レンズ
8、11 ハーフミラー
12 干渉光路
13 1/2波長板
14 スペイシャルフィルタ(ノイズ低減素子)
15 レンズ
16 ピンホール
17 光検出器
18 干渉縞
ch1、ch2、ch3 検出チャンネル
U1、U2、U3 (各検出チャンネルにおける干渉縞の)強度
V 内部欠陥
M 検査対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7