(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847684
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール用バックシート
(51)【国際特許分類】
H01L 31/049 20140101AFI20160107BHJP
C08G 71/04 20060101ALI20160107BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20160107BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20160107BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20160107BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
H01L31/04 562
C08G71/04
C09J175/04
C09J11/06
B32B27/00 D
B32B27/40
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-226504(P2012-226504)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-78648(P2014-78648A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000238256
【氏名又は名称】浮間合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 龍也
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100169812
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛志
(72)【発明者】
【氏名】花田 和行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢一
(72)【発明者】
【氏名】木村 千也
(72)【発明者】
【氏名】宇留野 学
(72)【発明者】
【氏名】武藤 多昭
【審査官】
佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03072613(US,A)
【文献】
特開2012−111796(JP,A)
【文献】
特開2007−297544(JP,A)
【文献】
特開2006−009001(JP,A)
【文献】
特開2009−200385(JP,A)
【文献】
特開2000−319504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
B32B 27/00−27/42
C09J 11/06
C09J 175/04
C08G 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種のフィルムが接着剤層を介して積層してなる、太陽電池モジュールを構成する一部材である太陽電池用バックシートにおいて、
上記接着剤層の少なくともいずれかが、二酸化炭素を原材料の一部として反応させて得られるポリヒドロキシポリウレタン樹脂を含有してなるポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤で形成されており、
前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導された樹脂であり、
前記接着剤層が、前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の構造中の水酸基と反応する架橋剤で架橋されてなることを特徴とする太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項2】
前記架橋剤が、ポリイソシアネート化合物であり、且つ、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の水酸基(OH)に対し、イソシアネート基(NCO)が、NCO/OH=0.1〜1.0の範囲となる比率で使用されている請求項1に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項3】
前記アミン化合物が、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、1,4’−ジアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、モノエタノールジアミン、エチルアミノエタノールアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミンからなる群から選択される少なくともいずれかのアミン化合物である請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項4】
前記5員環環状カーボネート化合物が、エポキシ化合物と二酸化炭素とを反応して得られる反応物である請求項1に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項5】
前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、その構造中に、二酸化炭素からなる構成成分(−COO−)を1〜25質量%の範囲で含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項6】
前記複数種のフィルムが、ガスバリアフィルムと基材フィルムとを少なくとも有し、かつ、該ガスバリアフィルムと該基材フィルムとが、二酸化炭素を原材料の一部として反応させて得られるポリヒドロキシポリウレタン樹脂を用いてなるポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤で形成されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項7】
複数種のフィルムが接着剤層を介して積層してなる、太陽電池モジュールを構成する一部材である太陽電池用バックシートの製造方法であって、
前記の接着剤層の少なくともいずれかを形成する際に、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物とを反応させて得られたポリヒドロキシポリウレタン樹脂を含有してなるポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤を用い、
前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の構造中の水酸基と反応する架橋剤で架橋させることを特徴とする太陽電池モジュール用バックシートの製造方法。
【請求項8】
前記架橋剤が、ポリイソシアネート化合物であり、且つ、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の水酸基(OH)に対し、イソシアネート基(NCO)が、NCO/OH=0.1〜1.0の範囲となる比率で使用する請求項7に記載の太陽電池モジュール用バックシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の機能性フィルムが接着剤層を介して積層してなる、太陽電池モジュールを構成する一部材である太陽電池用バックシートに関する。さらに詳しくは、その接着剤層の形成に用いる接着剤自身が高いガスバリア性を有すると共に、接着性に優れ、高温高湿環境下や酸性環境下でも接着強度の低下が少なく、しかも、その製造原料に、二酸化炭素を構造中に固定した樹脂を利用できることから、地球規模で問題となっている二酸化炭素削減効果にも有用な、太陽電池用バックシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する関心が高まる中、二酸化炭素の排出抑制の種々の取り組みが続けられている。その一方、現代社会における電力への依存度を考えた場合、下記のように、現代社会を維持するためには、そのエネルギー源として電力は不可欠であり、電力への依存度は益々大きくなってきている。具体的には、家庭や市民生活の場における多種多様な電気製品類や情報機器類の利用、都市等における公的施設や商業施設の運営、これらの利用や活動を可能にするため、あらゆる産業分野で動力源として電力を必要としており、近年、その発達が目覚ましい情報伝達用電子機器類の作動にも電力が利用されている。さらに、交通機関においても、電車や貨物列車などの大量輸送手段の動力源として利用されているが、近年では、個人利用の自動車の動力源も、プラグインハイブリッド方式から完全電気自動車への移行が試みられ、実施化もされており、エネルギー源として電力を利用は益々多様化し、その消費量は増大しており、現代社会における電力への依存度はより大きなものになっている。
【0003】
このような増え続ける電力エネルギー消費に対し、二酸化炭素を排出しない原子力発電が世界中で推進されてきた。しかし、2011年3月11日に発生した日本国の福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電の安全神話は崩壊し、これを受けて行われた原子力発電の運転停止に伴い、不足する電力エネルギーを確保するため、休止していた火力発電がフル稼働する状態となっており、二酸化炭素排出削減とは相反する状況となっている。
【0004】
一方、太陽光発電は、従来から、そのクリーン性や無公害性という点から期待されており、すでに、単結晶シリコンや多結晶シリコン或いはアモルファスシリコン等を太陽電池素子(セル)に用いた太陽電池は、屋外の電力用太陽電池として実用化されている。特に、先に説明した事情から、近時、原子力発電に代わり得る発電技術として注目されている。
【0005】
太陽光発電に用いられる太陽電池の構造は、多数枚の太陽電池素子(セル)を直列、並列に配線し、これらのセルを長期間(約20年以上)にわたって保護するために種々の封止が行われ、ユニット化されている。このユニットは、太陽電池モジュール或いはソーラーパネルと呼ばれており、一般的には、
図1に示すように、太陽光が当たる面をガラス板1で覆い、裏面を封止用保護シート(バックシート)5で保護し、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性プラスチックからなる充填材(封止材)2で、太陽電池素子(セル)が配置されている、ガラス板1とバックシート5との間隙を埋めた構造になっている。
【0006】
上記した太陽電池モジュールは、主に屋外で使用されるため、その材質や構造などには、十分な耐久性、耐候性が要求される。特にバックシートに対しては、耐候性、ガスバリア性、水分バリア性に優れていることが要求される。これは、バックシートからの水分の透過により、充填材が剥離や変色、配線の腐食を起こし、モジュールの出力そのものに影響を与える恐れがあるからである。
【0007】
太陽電池モジュール用バックシート(以下、単に「バックシート」とも呼ぶ)には、上記したように、耐候性、耐久性、ガスバリア性等が要求されるため、例えば、ガスバリア性を発現する無機物層の表面と裏面とを、一対の合成樹脂層でサンドイッチした積層体とすることが採用されている。具体的には、例えば、一対の、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどの「フッ素系樹脂」フィルムで、アルミニウム箔(無機物層)をサンドイッチした構造のバックシートや、ポリエステル樹脂からなるプラスチックフィルムの一方の面に無機酸化物薄膜層を積層し、さらに、この薄膜層の外面に同様のポリエステル樹脂からなるプラスチックフィルムを複数層積層した構造のバックシートなど、が開発されている。このように、バックシートは複数種のフィルムからなる積層体であり、これらのフィルムは接着剤を介して積層されている(特許文献1、2)。
【0008】
そして、バックシートの形成には、接着剤として、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤及びエポキシ系接着剤などが実際に使用されており、これらのものによって、その接着性や耐久性等の要求性能を達成できることは実証されている。しかし、これらバックシートの形成に使用されているフィルムや接着剤等はほとんどが石油由来であり、太陽電池の利用を促進することで、クリーン性や無公害性を実現するという趣旨からすると、現在求められている地球規模の環境保全という面では不十分である。
【0009】
また、近年増加の一途をたどる二酸化炭素に起因すると考えられる地球の温暖化現象や海の酸性化現象は、世界的な問題となっており、二酸化炭素の排出量削減は、全世界的に重要な課題である。さらに、枯渇性石化資源(石油)問題の観点からも、バイオマス、メタンなどの再生可能資源への材料の転換が世界的潮流となっている。
【0010】
これに対し、非特許文献1、2に見られるように、二酸化炭素を原料とするポリヒドロキシポリウレタン樹脂については以前から知られているが、その応用展開は進んでいないのが実情である。その理由は、同種系の高分子化合物として対比されるポリウレタン系樹脂に比べ、その特性面で明らかに劣るからである。
【0011】
先述したような背景下、再び、前記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂が見直されている。すなわち、この樹脂の原料である二酸化炭素は、容易に入手可能、かつ、持続可能な炭素資源であり、さらに、二酸化炭素を原料とするプラスチックは、温暖化や海の酸性化、枯渇資源などの問題を解決する有効な手段となり得ると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−177412号公報
【特許文献2】特開2002−134771号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】N.Kihara, T.Endo, J.Org.Chem.,1993, 58, 6198
【非特許文献2】N.Kihara, T.Endo, J.Polymer Sci., PartA Polmer Chem., 1993, 31(11), 2765
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記したような状況下、今後の利用拡大が予想されている太陽電池モジュールを構成する各材料についても再検討が望まれる。このため、その一部材のバックシートの形成に使用される接着剤に対しても、上記の観点を含めた高い性能が要求されており、基本性能として、長期間の接着性を維持するだけでなく、耐候性やガスバリア性に優れることを十分に満足すると共に、地球規模での環境保全性を持った環境対応製品の開発が要望されている。
【0015】
したがって、本発明の目的は、太陽電池モジュール用バックシートの接着剤として使用した場合に、その接着層が、長期間の接着性が維持できるだけでなく、バックシートに要求される耐久性や耐候性やガスバリア性についても高い基本性能を十分に満足できると同時に、使用する接着剤が、二酸化炭素を原材料として利用することができる環境対応製品として優れたものである、太陽電池モジュールの一部材としてのバックシートが高い基本性能を実現し得、良好な性能の太陽電池モジュールが提供でき、しかも、その原材料の面で地球規模の環境保全を可能にできる、多面的に優れた特長を有する太陽電池モジュール用バックシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は以下の発明によって達成される。すなわち、本発明は、
(1)複数種のフィルムが接着剤層を介して積層してなる、太陽電池モジュールを構成する一部材である太陽電池用バックシートにおいて、上記接着剤層の少なくともいずれかが、二酸化炭素を原材料の一部として反応させて得られるポリヒドロキシポリウレタン樹脂を含有してなるポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤で形成されていることを特徴とする太陽電池モジュール用バックシートを提供する。
【0017】
上記本発明の太陽電池モジュール用バックシートの好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
(2)前記接着剤層が、前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の構造中の水酸基と反応する架橋剤で架橋されてなる前記(1)に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(3)前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導された樹脂である前記(1)又は(2)に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(4)前記5員環環状カーボネート化合物が、エポキシ化合物と二酸化炭素とを反応して得られる反応物である前記(3)に記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(5)前記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、その構造中に、二酸化炭素からなる構成成分(−COO−)を1〜25質量%の範囲で含む前記(1)〜(4)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシート。
(6)前記複数種のフィルムが、ガスバリアフィルムと基材フィルムとを少なくとも有し、かつ、該ガスバリアフィルムと該基材フィルムとが、二酸化炭素を原材料の一部として反応させて得られるポリヒドロキシポリウレタン樹脂を用いてなるポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤で形成されている前記(1)〜(5)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用バックシート。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バックシートの接着剤層の形成材料としてポリヒドロキシポリウレタン樹脂を含む接着剤を用いることで、耐久性、耐候性、ガスバリア性に優れると共に、地球環境の観点からも、その原材料として二酸化炭素が使用され、これを取り入れることにより温暖化ガス削減に寄与できる、環境対応製品としての太陽電池モジュール用バックシートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】太陽電池モジュールの一例の基本構成を示す模式断面図。
【
図2】太陽電池モジュール用バックシートの一例を示す模式断面図。
【
図3】実施例で作製した太陽電池モジュール用バックシートの試験シートを示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明の太陽電池用バックシートは、太陽電池モジュールを構成する一部材であり、複数種のフィルムが接着剤層を介して積層してなるが、該バックシートを構成する接着剤層が、好ましくは5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導されたポリヒドロキシポリウレタン樹脂を含む接着剤からなることを特徴とする。以下、本発明のバックシートを特徴づける接着剤層の形成に用いられる接着剤を構成するポリヒドロキシポリウレタン樹脂について説明する。
【0021】
上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂を得るために使用する5員環環状カーボネート化合物は、下記[式−A]で示されるように、エポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させて製造することができる。さらに詳しくは、エポキシ化合物を、有機溶媒の存在下又は不存在下、及び触媒の存在下、40℃〜150℃の温度で、常圧又は僅かに高められた圧力下、10〜20時間二酸化炭素と反応させることによって得ることができる。
【0023】
上記の合成の際に好適に使用できるエポキシ化合物としては、例えば、次の如き化合物が挙げられる。
【0025】
以上に列記したエポキシ化合物は、本発明において使用することができる好ましい化合物であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他、現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
【0026】
上記に列挙したようなエポキシ化合物と二酸化炭素の反応において使用される触媒としては、塩基触媒及びルイス酸触媒が挙げられる。
【0027】
塩基触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの第三級アミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタン、ピリジンなどの環状アミン類、リチウムクロライド、リチウムブロマイド、フッ化リチウム、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属塩類、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩類、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩類、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸銅、酢酸鉄などの金属酢酸塩類、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、テトラブチルホスホニウムクロリドなどのホスホニウム塩類が挙げられる。
【0028】
ルイス酸触媒としては、テトラブチル錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オクトエートなどの錫化合物が挙げられる。
【0029】
上記触媒の量は、エポキシ化合物50質量部当たり、0.1〜100質量部とすることが好ましく、さらには0.3〜20質量部とするとよい。上記使用量が0.1質量部未満では、触媒としての添加効果が小さ過ぎ、100質量部を超えると最終樹脂の諸性能を低下させる場合があるので好ましくない。しかし、残留触媒が重大な性能低下を引き起こすような場合は、反応終了後に純水で洗浄して、残留触媒を除去する構成としてもよい。
【0030】
エポキシ化合物と二酸化炭素の反応において、使用することができる有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。また、これら有機溶剤と他の貧溶剤、例えば、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノンなどの混合系で使用してもよい。
【0031】
本発明で用いるポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、下記[式−B]に示すように、上記のようにして得られた5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物とを、有機溶媒の存在下、20℃〜150℃の温度下で反応させることで得ることができる。
【0032】
上記反応で使用することができるアミン化合物としては、ジアミンが好ましいが、従来ポリウレタン樹脂の製造に使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、1,4’−ジアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環族ジアミン;モノエタノールジアミン、エチルアミノエタノールアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミンなどのアルカノールジアミンが挙げられる。
【0033】
以上列記したアミン化合物は、本発明において使用する好ましい化合物であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他、現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
【0034】
また、本発明のバックシートを特徴づける接着剤層の形成に用いる接着剤を構成するポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その数平均分子量(GPCで測定した標準ポリスチレン換算値)が、2,000〜100,000のものであることが好ましく、さらには、5,000〜70,000のものであることがより好ましい。
【0035】
本発明を構成するポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応により、従来のポリウレタン系樹脂では不可能であった水酸基をその構造中に有するため、従来のポリウレタン系樹脂に比べ、さらなる性能の向上をもたらす。構造中に存在する水酸基は、親水性を有しているため、基材に対して接着性を向上させるとともに、従来のポリウレタン樹脂では達成できなかったガスバリア性をも得ることができる。そして、水酸基と反応する架橋剤等を利用することで、さらなる耐久性の向上を図ることができる。
【0036】
本発明で使用するポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、水酸基の含有量が、約3〜30質量%(水酸基価25〜300mgKOH/g)であることが好ましい。水酸基含有量が上記範囲未満であると、形成した接着剤層のガスバリア性及び二酸化炭素削減効果が十分に得られないおそれがあり、一方、上記範囲を超えると、高分子化合物としての十分な諸物性が実現できないおそれがあるので好ましくない。
【0037】
上記のようにして得られるポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、そのまま接着剤の主成分としてもよく、当該接着剤で本発明のバックシートを特徴づける接着剤層を形成することができるが、接着剤の構成を、上記ポリヒドロキシポリウレタン樹脂に架橋剤を併用する構成とすることもできる。架橋剤を併用した構成の接着剤で形成される接着剤層は架橋被膜となるので、架橋剤を用いない接着剤で接着剤層を形成した場合に比べて、耐久性の向上をより高いレベルで図ることができる。この際に使用する架橋剤としては、水酸基と反応するような架橋剤であれば、すべて使用できる。例えば、アルキルチタネート化合物やポリイソシアネート化合物など、従来ポリウレタン樹脂の架橋に使用されている公知の架橋剤が好ましいが特に限定されない。例えば、下記のような構造式のポリイソシアネート化合物と他の化合物との付加体などが挙げられる。
【0039】
架橋剤として上記のようなポリイソシアネート化合物を使用する場合、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂との配合比率は、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の水酸基(OH)に対し、イソシアネート基(NCO)が、NCO/OH=0.1〜1.0の範囲、より好ましくは、NCO/OH=0.3〜0.7の範囲となるようにするとよい。
【0040】
また、本発明のバックシートの接着剤層の形成に使用される、上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂を含む接着剤(以下、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤と呼ぶ場合がある)は、上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂とともに、溶媒や添加剤などを含有させてもよい。
【0041】
溶媒としては、上述したポリヒドロキシポリウレタン樹脂の合成の際に使用したのと同様の有機溶媒を用いることができる。また、添加剤としては、フィルムやコーティグ膜を形成する際に一般的に使用されている添加剤などを適宜に用いることができる。添加剤の具体例としては、レベリング剤、コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子やポリメチルメチクリレート系やポリウレタン系の有機微粒子、消泡剤、タレ性防止剤、シランカップリング剤、チタン白、カーボンブラック、有機顔料、顔料分散剤、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などの酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、防錆剤、有機系及び無機系の紫外線吸収剤、無機系熱線吸収剤、防炎剤、帯電防止剤、脱水剤等が挙げられるが、本発明はかかる例示に限定されるものではない。
【0042】
本発明のバックシートは、複数種のフィルムを、上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤で形成した接着剤層を介して積層してなることを特徴とするが、これらの接着剤層は、少なくともいずれかが上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤で形成されたものであればよいが、全ての接着剤層を上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤で形成することが好ましい。上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤は、例えば、バックシートとしての封止効果をより高める目的で、上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂に、その他の接着剤樹脂成分を混合して性能バランスを調整したものであってもよい。この際に使用するその他の樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などを用いることができる。
【0043】
次に、複数種のフィルムが接着剤層を介して積層され、当該接着剤層の少なくともいずれかが上記したポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤によって形成されてなることを特徴とする、本発明の太陽電池モジュール用バックシートを構成するその他の材料、および構造について説明する。
【0044】
図2は、本発明のバックシートの一実施形態に係わるシート構造を示す模式断面図である。
図2に示したバックシート(5)は、基材フィルム(6)、接着剤層(7)、ガスバリアフィルム(8)、接着剤層(7)、基材フィルム(10)の順番で、機能性が異なる複数のフィルムが、上記した接着剤で形成した接着剤層(7)を介して積層されている。なお、
図2に示したガスバリアフィルム(8)は、基材フィルム(6)に蒸着層(9)が形成されてなるものであるが、この点の詳細については後述する。以下、
図2に示した実施形態の本発明のバックシートを例に用い、本発明の太陽電池用バックシートを構成し得るフィルム材料などについて詳細に説明する。
【0045】
図2に示した構造の本発明のバックシートを構成する基材フィルム(6)に用いることができる合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、以下に示す樹脂からなるフィルムを目的に合わせて適宜用いることができる。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、アセタール樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。上記の樹脂の中でも、高熱性、強度、耐候性、耐久性、ガスバリア性等を有し、アルミニウム蒸着層との接着性に優れているポリエステル樹脂、フッ素樹脂及び環状ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0046】
上記したような樹脂材料からなる基材フィルム(6)は、必要に応じて、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの接着性を向上させるための表面処理を施したものであってもよい。
【0047】
また、上記基材フィルム(6)の厚みは、10μm〜300μmであることが好ましい。厚みが10μm未満であると、例えば、機能を付与するために表面にアルミニウム蒸着等の蒸着加工をした場合に、カールが発生しやすくなるため、好ましくない。一方、厚みが300μmを超えると、太陽電池モジュールの薄型化や軽量化に反することになるため好ましくない。
【0048】
上記した基材フィルム(6)の形成材料中には、加工性、耐熱性、耐候性、機械強度、寸法安定性等を改良する目的で、種々の添加剤等を混合することができる。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、防カビ剤、顔料、耐炎剤等が挙げられる。
【0049】
本発明のバックシートは、先に述べたように、その構造中にある少なくともいずれかの接着剤層(7)が、特有のポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤で形成されたものであればよいが、いずれの接着剤層も、下記に挙げるような方法で形成することができる。具体的には、いずれかのフィルム上に、グラビアコート、ロールコート、バーコート、リバースコートなどの方法で接着剤を塗工し、該塗工面に、ドライラミネートなどの方法により他のフィルムを貼り合わせることで接着剤層が形成される。このようにして形成される接着剤層の乾燥後の厚みは、接着性や耐候性の観点から0.1μm〜100μm程度であることが好ましく、より好ましくは0.5μm〜50μmの範囲である。この範囲よりも接着剤層の乾燥後の厚みが薄い場合は、接着強度やガスバリア蒸着層の欠陥封止機能が得られないおそれがあるため、好ましくない。一方、この範囲よりも接着剤層の乾燥後の厚みが厚い場合は、十分な接着強度や耐久性が得られないおそれがあるので好ましくない。
【0050】
ガスバリアフィルム(8)は、例えば、アルミニウム箔などの金属箔であってもよいが、
図2に示したように、金属蒸着フィルム、酸化物蒸着フィルムなどの、基材フィルム(6)表面に蒸着層(9)が形成されてなる蒸着基材を用いることができる。
【0051】
上記した金属蒸着フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルムやポリオレフィン系延伸フィルムにアルミニウムを蒸着させたアルミニウム蒸着フィルムなどが挙げられる。
【0052】
上記した酸化物蒸着フィルムとしては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化錫、酸化インジウム等の複合酸化物などをポリエステルフィルムに蒸着したフィルムが挙げられ、好ましく使用される。これらの酸化物蒸着フィルムにおいて、複合酸化物などの酸化物の蒸着層の厚さは、酸化物の種類や組成によって異なるが、一般に、均一な酸化物の蒸着層を形成させる観点から、5nm〜300nmの範囲が好ましい。柔軟性の付与及び外的応力による亀裂等の発生がないようにする観点からは、酸化物の蒸着層の厚さは、10nm〜150nmの範囲であることが好ましい。また、酸化物の蒸着層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法をはじめ、薄膜形成方法であるスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
図2に示した構造のバックシートを構成する基材フィルム(10)は、太陽電池モジュールを作製する際に、充填材(2)と貼り合わせる側に位置するものである。このため、先に挙げた基材材料の中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のシートや充填材(封止材)に対して接着性のある接着剤付きのポリエステルフィルム等であることが好ましい。
【0054】
本発明は、バックシートを構成する接着剤層の少なくともいずれか、或いはその全てが、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂系接着剤で形成されてなることを特徴とするが、このような構成とすることで、耐久性、耐候性、ガスバリア性に優れた太陽電池モジュール用バックシートとなる。その理由は、接着剤層を形成している、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の有する水酸基が基材シートと界面で強く相互作用することにより、基材に対する優れた接着性や可とう性を有することによる。より好ましい実施形態では、上記に加え、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の有する水酸基と反応する架橋剤で架橋することで架橋被膜を形成させることにより、より一層耐熱性や耐久性に優れた性能のバックシートとなる。さらに、本発明で使用するポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物を用いて合成されるが、前記したように、該5員環環状カーボネート化合物は、エポキシ化合物と二酸化炭素を反応させて得られるものであるため、樹脂中に二酸化炭素を取り入れ、固定化することができる。このことは、本発明によって、温暖化ガス削減の観点からも有用な、従来品では到達できなかった環境保全対応製品としての太陽電池用バックシートの提供が可能となることを意味している。
【実施例】
【0055】
次に、具体的な製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の各例における「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0056】
<製造例1>(5員環環状カーボネート化合物の製造)
撹拌機、温度計、ガス導入管及び還流冷却器を備えた反応容器中に、下記式Aで表される2価エポキシ化合物(エピコート828(商品名)、ジャパンエポキシレジン(株)製;エポキシ当量187g/mol)100部、N−メチルピロリドン100部、ヨウ化ナトリウム1.5部を加え均一に溶解させた。
【0057】
【0058】
その後、炭酸ガスを0.5リッター/分の速度でバブリングしながら80℃で30時間加熱撹拌させた。反応終了後、得られた溶液を300部のn−ヘキサン中に300rpmで高速撹拌しながら徐々に添加し、生成した粉末状生成物をフィルターでろ過、さらにメタノールで洗浄し、N−メチルピロリドン及びヨウ化ナトリウムを除去した。粉末を乾燥機中で乾燥し、白色粉末の5員環環状カーボネート化合物(1−A)118部(収率95%)を得た。
【0059】
得られた生成物の赤外吸収スペクトル(堀場製作所 FT−720にて測定。以下同じ。)は、910cm
-1付近のエポキシ基由来のピークが生成物ではほぼ消滅し、1,800cm
-1付近に原料には存在しない環状カーボネート基のカルボニル基の吸収が確認された。また、生成物の数平均分子量は414(ポリスチレン換算、東ソー;GPC−8220)であった。得られた5員環環状カーボネート化合物(1−A)中には、19%の二酸化炭素が固定化されていた。
【0060】
<重合例1〜3>(ポリヒドロキシポリウレタン樹脂)
撹拌機、温度計、ガス導入管及び還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、これに製造例1で得られた5員環環状カーボネート化合物(1−A)に、固形分が35%になるようにプロピレングリコールモノエーテルアセテート(PGM)を加え均一に溶解した。次に、表1に記載の各アミン化合物を所定当量加え、90℃の温度で10時間撹拌し、アミン化合物が確認できなくなるまで反応させた。
【0061】
<比較重合例1>(ポリエステルウレタン樹脂)
下記のようにして、比較例で用いるポリエステルウレタン樹脂を合成した。撹拌機、温度計、ガス導入管及び還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、平均分子量約2,000のポリブチレンアジペート150部と、1,4−ブタンジオール15部とを、250部のジメチルホルムアミド中に溶解した。そして、60℃でよく撹拌しながら62部の水添加MDI(メチレンビス(1,4−シクロヘキサン)−ジイソシアネート)を171部のジメチルホルムアミドに溶解したものを徐々に滴下し、滴下終了後80℃で6時間反応させた。
【0062】
<比較重合例2>(ポリカーボネートポリウレタン樹脂)
比較重合例1と同様にして比較例で用いるポリカーボネートポリウレタン樹脂を合成した。比較重合例1と同様の反応容器に、平均分子量約2,000のポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製)150部と、1,4−ブタンジオール15部とを、200部のメチルエチルケトンと50部のジメチルホルムアミドからなる混合有機溶剤中に溶解した。そして、60℃でよく撹拌しながら、62部の水添加MDIを171部のジメチルホルムアミドに溶解したものを徐々に滴下し、滴下終了後80℃で6時間反応させた。
【0063】
重合例1〜3、比較重合例1〜2で得た樹脂の組成と性状を表1に記載した。
【0064】
【0065】
<実施例1〜3、比較例1、2>
重合例1〜3、比較重合例1、2で得た各樹脂溶液をそれぞれ使用し、表2に記載の配合にて接着剤層用の塗工液を作製した。これを用いて以下のようにして
図3に示す構造の太陽電池モジュール用バックシートの試験シートを作製した。そして、これらの試験シートを下記の方法で評価した。
【0066】
[太陽電池モジュール用バックシートの試験シートの製造]
厚さ25μmのPET樹脂フィルム(基材)(6)の一方の面に、真空蒸着法により厚さ50nmのアルミニウムの蒸着層(9)を積層し、バリアフィルムシート(蒸着基材)(8)を作製した。そして、作製したバリアフィルムシート(8)を2枚用い、
図3に示したように、一方のシートのアルミニウム蒸着層(9)と他方のPET樹脂フィルム(6)の背面が重なるようにして(アルミニウム蒸着層が同じ側に向く状態)、重合例1〜3、比較重合例1、2の各樹脂溶液を含む接着剤層用塗工液を用いて、乾燥後の厚みが10μmになるように塗工し、2枚のバリアフィルムシート(8)を、接着剤層(7)を介して積層した。そして、エージング条件は、50℃・3日のドライラミネート加工により積層接着することで、太陽電池モジュール用バックシートの各試験シートを得た。
【0067】
【0068】
[評価]
上記で得た太陽電池モジュール用バックシートの各試験シートを用いて、下記の方法及び基準で評価した。結果を表3にまとめて示した。
【0069】
(酸素ガス透過度)
実施例及び比較例の各試験シートの酸素ガス透過度を、MOCON社(米)・OX−TRANで、JIS−K−7126に準じて測定した。その結果を表3に示した。
【0070】
(水蒸気透過度)
実施例及び比較例の各試験シートの水蒸気透過度を、MOCON社(米)・Permatran−Wで、JIS−Z−0208B法に準拠し、温度40℃・相対湿度90%の条件で測定した。その結果を表3に示した。
【0071】
(ラミネート強度)
実施例及び比較例の各試験シートをA4サイズに切断し、85℃・85%RHの恒温槽に1000時間放置後の試験片を引張試験機により180°の剥離強度を測定した。その結果を表3に示した。
【0072】
(環境対応性)
実施例及び比較例の各試験シートの接着剤層に用いた樹脂中における二酸化炭素の固定化の有無によって、○×で評価した。その結果を表3に示した。
【0073】
【産業上の利用可能性】
【0074】
表3の結果から明らかなように、太陽電池モジュール用バックシートの接着剤層に、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を含む接着剤を用いることにより、耐久性、耐候性、ガスバリア性に優れた太陽電池モジュール用バックシートを得ることができる。ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の有する水酸基は、基材シートと界面で強く相互作用するため、基材に対する優れた接着性や可とう性が付与されたものとなる。
また、本発明で使用するポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、二酸化炭素を樹脂中に取り入れて固定化した、地球温暖化、資源枯渇などの問題解決に資する有用な材料であるため、これを用いて得られる太陽電池モジュール用バックシートも、従来品では到達できなかった環境保全対応の製品の提供を可能とするものとなる。
【符号の説明】
【0075】
1:ガラス板
2:充填材(EVA)
3:太陽電池素子(セル)
4:カバー材
5:バックシート
6:基材フィルム
7:接着剤層
8:ガスバリアフィルム
9:蒸着層
10:基材フィルム(EVA)