(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0021]以下で説明される
図1Aから11B、および本特許文書の本発明の原理を説明するのに使用される様々な実施形態は例であり、本発明の範囲を限定するように決して解釈されるべきではない。本発明の原理は、任意のタイプの適切に構成されたデバイスまたはシステムで実施することができることを当業者なら理解するであろう。さらに、図中の要素は簡単かつ明瞭に示されており、必ずしも原寸に比例して描かれていないことが理解されよう。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、本特許文書で説明される様々な実施形態の理解をより良好にするのに役立つように他の要素と比べて誇張されることがある。
【0011】
[0022]
図1Aから1Dは例示のギア構造を示す。
図1Aから1Dに示されたギア構造の実施形態は説明のためだけのものである。本開示の範囲から逸脱することなく、他のギア構造を使用することができる。
【0012】
[0023]ギアボックスは、外部伝動装置105(
図1A)、内部伝動装置110(
図1B)、およびラックピニオン伝動装置115(
図1C)などの1つまたは複数のタイプのギアを含むことができる。ギアボックスは、単段ギアボックス(
図1Aから1Cに図示)または多段ギアボックス120(
図1Dに図示)とすることができる。
【0013】
[0024]
図1Aに示された外部伝動装置105はヘリカルギアである。ここで、外部伝動装置105は、ギア107およびピニオン109を含む単段である。しかし、外部伝動装置105がスパーギアである場合などの他の実施形態を使用することもできる。
【0014】
[0025]
図1Bに示された内部伝動装置110も単段伝動装置構造である。内部伝動装置は、太陽ギア111、遊星ギア112、リングギア113、および遊星枠114を含む。
[0026]
図1Cに示されたラックピニオン伝動装置115はやはり単段伝動装置構造である。ラックピニオン伝動装置115は、回転運動を直線運動に変換する1対のギア117、119を含む。円形ピニオン117はラック119の歯に係合する。ピニオン117に与えられた回転運動により、ラック119は移動の限界まで横に移動する。例えば、線路において、機関車または鉄道車両に取り付けられたピニオン117の回転はレール間のラック119に係合し、急勾配に沿って列車を引っ張る。
【0015】
[0027]
図1Dに示された多段ギアボックス120は第1段122および第2段124を含む。2つの段の図は例示のためだけのものであることが理解されよう。2つを超える段を含む多段ギアボックス120の実施形態を使用することもできる。この例では、第1段122は内部伝動装置110のように構成され、第2段124は外部伝動装置105のように構成される。そのため、第1段は単段内部ギアボックスを表しており、第2段124は、多段外部伝動装置を形成するように結合されたいくつかのギアおよびピニオンを含む。
【0016】
[0028]ほんのわずかなギアのタイプがここでは示されたが、他の多くのギアのタイプを使用することができる。他のギアのタイプは、限定はしないが、平行シャフト、交差シャフト、および/または非交差および非平行シャフトをもつギアボックスを含むことができる。平行シャフトはスパーギア、シングルヘリカルギア、およびダブルヘリカルギアを含むことができる。交差シャフトは、ベベルギア、コニフレックスベベルギア、ゼロールベベルギア、スパイラルベベルギア、マイターギア、アングルギア、およびクラウンギアを含むことができる。非交差および非平行シャフトは、クロスヘリカルギア、ハイポイドギア、およびウォームギアを含むことができる。
【0017】
[0029]障害、または故障は、上述で列記された任意の1つまたは複数ギアタイプまたは他のギアタイプを使用して形成されたギアボックスに生じることがある。故障は、ギア、ピニオン、または両方に生じることがある。ギア故障は、摩耗、亀裂、歯破損、静的および動的伝達誤差、塑性流動、スコーリングおよびスカッフィング、表面疲労、スポーリング、ならびにバックラッシュを含む。
【0018】
[0030]
図2Aから2Eはギアが受ける例示の亀裂および摩耗を示す図である。
図2Aは疲労亀裂205を示す。疲労亀裂205は歯破損をもたらすことがある。歯破損は、疲労破損と、激しい摩耗に起因する破損と、過負荷破損とを含む。
図2Bは凝着摩耗の一例を示す。
図2Cはアブレシブ摩耗の一例を示す。
図2Dは疲労摩耗の一例を示す。
図2Eは化学的摩耗の一例を示す。これらのタイプの亀裂および摩耗は以下で説明されるシステムを使用して検出することができる。しかし、多くの他のまたは追加のタイプの損傷も以下で説明されるシステムを使用して検出することができる。
【0019】
[0031]本開示によれば、ギアに生じる摩耗のタイプを識別し分類する(例えば、分離する)ことができるシステムおよび方法が提供される。さらに、そのシステムと方法は、壊れた、亀裂の入った、および削られた歯、摩耗、点食、ならびに結果として生じたバックラッシュの結果としての潜在的なギアボックス故障を検出することができる。
【0020】
[0032]
図3は、本開示による例示のギアボックス状態指標(GCI)デバイス300を示す図である。
図3に示されたGCIデバイス300の実施形態は説明のためだけのものである。本開示の範囲から逸脱することなく、GCIデバイス300の他の実施形態を使用することができる。
【0021】
[0033]この例では、GCIデバイス300はユーザ構成部分302を含む。ユーザ構成部分302は、GCIデバイス300とのオペレータ対話を容易にするユーザインタフェースを備える。例えば、ユーザ構成部分302は、オペレータがギアボックス構成情報を入力するのを可能にすることができる。特定の例として、ユーザ構成部分302は、オペレータがギアのタイプ304およびギアの段数306を入力するのを可能にすることができる。オペレータが段数306を入力するとき、段ごとに歯数308およびピニオンの数310を入力することもできる。さらに、オペレータは、ギアのタイプ304に対する定格電力314と、サンプリング周波数316とを入力することができる。
【0022】
[0034]GCIデバイス300はセンサ信号部分320をさらに含む。センサ信号部分320は、ギアに結合された、または別の形でギアに関連付けられたセンサからの入力を受け取るためのインタフェースを備える。この例では、センサ信号部分320は、加速度計322およびタコメータ324へのインタフェースを含む。加速度計322は、ギアの振動325を検出、測定、および記録する。タコメータ324は、タコジェネレータまたは1回転1パルス(Once Per Revolution、OPR)デバイスなどのセンサ入力デバイスとすることができる。タコメータ324はギアの速度326を検出、測定、および記録する。センサ信号部分320はギアのベースライン信号328をさらに記憶することができる。モータ電流を検出、測定、および記録するホール効果センサへのインタフェース、ならびに雑音を検出、測定、および記録する1つまたは複数の音響センサなどの他のタイプまたは追加のタイプのセンサへのインタフェースをセンサ信号部分320にさらに設けることができる。
【0023】
[0035]GCIデバイス300は人工知能(AI)部分または他の処理部分330をさらに含む。この例では、AI部分330は前処理フィルタ332およびプロセッサコア334を含む。プロセッサコア334は、FFT分析336、周波数/周波数帯幅選択(FFBS)338、信号復元340、統計的特徴決定342、および正規化344を実行するように構成された1つまたは複数のプロセッサを含むことができる。AI部分330は、さらに、ファジールールベース診断346およびルールベース診断348を行うことができる。ファジールールベース診断346は、ファジー化350、ルール352、集計354、および非ファジー化356を含む。これらの機能は以下で詳細に説明される。
【0024】
[0036]さらに、GCIデバイス300は出力インタフェース370を含む。出力インタフェース370は、コンピュータまたはディスプレイなどの別のシステムまたはデバイスに情報を送るように構成されたインタフェースを示す。出力インタフェース370は、さらに、単一ディスプレイ(例えば、モニタ)または多重ディスプレイを示すことができる。この例では、出力インタフェース370は、ギアシステム指標372、ギア摩耗指標374、およびギア亀裂指標376を含む。実施形態によっては、出力インタフェース370は、ピニオン亀裂指標(適用可能または所望の場合)をさらに含むことができる。これらの指標372〜376は、モニタされているギアボックスの健全性を識別する。
【0025】
[0037]
図4Aおよび4Bは本開示による例示のGCIデバイス300および関連するギアボックス400を示す図である。GCIデバイス300のこの使用は説明のためだけのものである。GCIデバイス300は、本開示の範囲から逸脱することなく任意の他の好適な方法で使用することができる。
【0026】
[0038]ギアボックス400は、
図4Bに示されるようにいくつかのギアを含むことができる。この例では、ギアボックス400は第1のギア(図示せず)、第2のギア420、第3のギア430、および第4のギア440を含む。
【0027】
[0039]
図4Aに示された特定の例のように、自動車変速機ギアボックス400は、第1の側で誘導モータ450に、および第2の側で機械負荷ユニット455に結合される。様々なプローブ470a〜470b(加速度計470aを含む)が、GCIデバイス300とギアボックス400、モータ450、および機械負荷ユニット455との間に結合される。プローブ470は、振動、モータ電流、雑音、およびギアボックス400の速度を測定する。
【0028】
[0040]GCIデバイス300は、ギアボックス400に生じる摩耗および点食を識別し分類することができる。GCIデバイス300は、さらに、様々な一群の周波数をモニタすることによってギアボックス400の振動をモニタすることができる。様々な一群の周波数は、限定はしないが、噛み合い周波数(GMF)および高調波を含む。例えば、第1の群の周波数はある段の噛み合い周波数およびその高調波を含み、第2の群の周波数は、第1の群の周波数の全域にギアシャフトの側波帯を含み、第3の群の周波数は、第1の群の周波数の全域にピニオンシャフトの側波帯を含み、第4の群の周波数は上述のすべての周波数の雑音フロアを指し、第5の群の周波数は歯ハンチング周波数およびその高調波とすることができる。これらの機能は以下でより詳細に説明される。
【0029】
[0041]
図5Aおよび5Bは、本開示による、正常動作のギアおよび2つの壊れた歯をもつギアの噛み合い周波数(GMF)のグラフ例を示す。
図5Aおよび5Bに示されたGMFの実施形態は説明のためだけのものである。本開示の範囲から逸脱することなく、GMFの他の実施形態を使用することができる。
【0030】
[0042]
図5Aは正常動作のギアのGMFを示す。第2のギア420のGMFはf
m2 505によって示され、第3のギア430のGMFはf
m3 510によって示され、第4のギア440のGMFはf
m4 515によって示される。さらに、各GMF(すなわち、f
m2 505、f
m3 510、およびf
m4 515)は、「−f
3」および「+f
3」によって示される側波帯周波数を含む。例えば、f
m4 515の側波帯周波数は、f
m4−f
3 520、およびf
m4+f
3 525である。GMFは以下の式によって表すことができる。
【0031】
GMF=Speed
GearT
Gear=Speed
pinionT
Pinion (1)
ここで、Tはギアまたはピニオンの歯数である。
【0032】
[0043]
図5Bは、2つの壊れた歯をもつギアのGMFを示す。ここで分かるように、振動信号は、導入された欠陥の結果としてエネルギー含有量が増加したGMFを含む。例えば、第2のギア420の欠陥は第2のGMF505’のエネルギーを増加させる。壊れた歯の結果として、第2のGMF505の振動の振幅は0.07の値から0.95の値まで増加した。さらに、側波帯f
m2−f
3 530およびf
m2+f
3 535の振幅が著しく増加した。
【0033】
[0044]GCIデバイス300は、ギア故障に起因する影響を測定し識別する。歯の亀裂/破損が生じると、GMFのまわりのすべての側波帯の振幅が増加することがあり、振幅変調の割合の増加を受けることがあるので、GCIデバイス300は振幅の変化を測定し、測定値に応じて故障を分類する。表1はいくつかの例示の故障モードおよびそれぞれの影響を示す。
【0035】
[0045]
図3に戻って参照すると、オペレータは、ユーザ構成部分302を介してギアボックス400のギア構成を入力することができる。例えば、オペレータはギアのタイプ304を入力し、段数306に「4」を入力することができる。さらに、オペレータは、第1段、第2段420、第3段430、および第4段440の歯数308およびピニオン数310を入力することができる。オペレータは、ギアボックス400をモニタするのにGCIデバイス300が使用することになるギアボックス400の定格電力314とサンプリング周波数316とを入力することができる。
【0036】
[0046]GCIデバイス300はいくつかのセンサインタフェースを介してセンサ470a〜470nからのセンサ入力信号を受け取る。例えば、加速度計470cはギアボックス400の振動を検出、測定、および記録することができる。GCIデバイス300は、正常動作中のギアボックス400のセンサ入力信号を測定し記録し、これらの正常センサ入力信号を1組のベースライン信号328として記憶することができる。
図5Aは1組のベースライン信号の一例を示す。
【0037】
[0047]GCIデバイス300は、サンプリング周波数316に基づいて入力信号を捕捉することによってギアボックス400の性能をモニタし続ける。GCIデバイス300はフィルタ機能332を使用してプローブ470a〜470nから受け取った入力信号をフィルタ処理する。プロセッサコア334はフィルタ信号のすべてにFFT分析336を適用する。FFT分析336は、モニタされているギアボックス400を含むシステムに関係する関連のある周波数をもたらすことができる。
【0038】
[0048]FFBS338は、信号を復元するために信号復元340で使用されることになる1つまたは複数の周波数および振幅を分離する。例えば、FFBS338は、モニタされているギアボックス400の特定の段に関連するこれらの周波数だけを分離する。したがって、他の構成要素および他の段からの寄与は除去される。時間−信号の復元は、分離された周波数とそれぞれの振幅とを使用して行われる。これらの選択された周波数および振幅を使用して信号が復元された後、プロセッサコア334は復元信号の統計的特徴342を決定する。いくつかの実施形態では、統計的特徴342は二乗平均平方根(RMS)値である。いくつかの実施形態では、統計的特徴は、標準偏差、尖度、ノルム(Norm)、D−statを含むことができる。その後、プロセッサコア334は、ベースライン信号328を基準にして復元信号の正規化344を行うことによって正規化信号を生成する。任意の瞬間の任意の特徴の正規化は、ベースラインの特徴または事前に見いだされた特徴のある平均を基準にして行うことができる。次に、GCIデバイス300は正規化信号に様々なルールを適用することができる。これらのルールは、ファジールールベース診断346および/またはルールベース診断348を含むことができる。ファジールールベース診断はメンバーシップ関数の様々な組合せを有することができ、様々な集計および非ファジー化法を適用することができる。
【0039】
[0049]GCIデバイス300は分析の出力を出力インタフェース370を介して提示する。いくつかの実施形態では、障害状態が存在するとGCIデバイス300が決定した場合(正規化信号が1つまたは複数の閾値値だけベースライン信号328と異なる場合など)のみ、GCIデバイス300は出力を供給する。これらの実施形態では、GCIデバイス300は故障に関連する指標を介して(例えば、検出された障害に応じてギアシステム指標372、ギア摩耗指標374、ギア亀裂指標376、またはピニオン亀裂指標を介して)出力を供給することができる。指標(例えば、ギアシステム指標372、ギア摩耗指標374、およびギア亀裂指標376)の値に応じて警報または警告をユーザに与えることができる。例えば、いずれかの指標が0.3〜0.6の範囲にある場合、指標は警告を与える。しかし、範囲が0.6〜1.0の間にある場合、指標は警報を与える。警戒閾値を変更するか、または新しい警戒名を与えることによって、ユーザへの警戒、警報、および/または警告の他の組合せとすることができる。
【0040】
[0050]
図6は、本開示による、ギアボックスをモニタするための例示のGCIの第1段階の動作600のより詳細な図である。
図6に示されたGCIの第1段階の動作600の実施形態は説明のためだけのものである。本開示の範囲から逸脱することなく、GCIの第1段階の動作600の他の実施形態を使用することができる。
【0041】
[0051]上記のように、構成の段階の間に、オペレータは、ギアタイプ304、段数306、および定格電力314などのモニタされるべきギアボックスに関連するデータを入力することができる。
図6に示されるように、構成の段階の間に、オペレータは、さらに、低域フィルタ情報602、信号詳細604、およびデータ捕捉(DAQ)仕様606を入力することができる。低域フィルタ情報602は高域周波数(F
H)608の値を含むことができる。信号詳細604は、サンプリング周波数(F
S)610および取得されるべきサンプルの数(N
S)612を含むことができる。DAQ仕様606は、最大サンプリング周波数(F
daq)614およびサンプルの最大数(N
daq)616を含むことができる。オペレータは、さらに、センサ構成618を入力することができる。
【0042】
[0052]GCIデバイス300は、ギアボックス400の各段420、430、440の1つまたは複数のGMF620を決定する。特定の実施形態では、AI部分330はGMFごとに少なくとも3つの高調波を決定する。GMFごとに3つの高調波が示されているが、3つを超える高調波をもつ実施形態を使用することができることが理解されよう。
【0043】
[0053]AI部分330は、オペレータがF
H608、F
S610、およびN
S612に適切な値を入力したかどうかを決定する。例えば、AI部分330は比較622の間にGMFをF
H608と比較する。F
H608がGMFの3倍未満(F
H<3×GMF)である場合、AI部分330はGCIデバイス300の出力インタフェース370の増加F
H指標624をトリガする。増加F
H指標624は、F
H608に入力された値が低すぎ、増加されるべきであるという視覚または聴覚の合図をオペレータに与える。
【0044】
[0054]十分なF
H608が入力されているとAI部分330が決定した後、AI部分330は比較626の間にF
H608をF
S610と比較する。F
S610がF
H608未満である(F
S<2F
H)場合、AI部分330は出力インタフェース370の増加F
S指標628をトリガする。増加F
S指標628は、F
S610に入力された値が低すぎ、増加されるべきであるという視覚または聴覚の合図をオペレータに与える。AI部分330は、比較630の間にF
S610への入力値をさらに比較して、それがF
daq614よりも大きいどうかを決定する。F
S>F
daqの場合には、AI部分330は増加F
S指標628を動作不能にするか、または減少F
S指標634を照明する。
【0045】
[0055]AI部分330は、さらに、比較632の間にN
S612をN
daq616に対して比較する。N
S612がN
daq616以下である(N
S≦N
daq)場合、AI部分330は出力インタフェース370の増加N
S指標634をトリガする。N
S612がN
daq616よりも大きい(N
S>N
daq)場合、AI部分330は減少N
S指標636を有効にすることができる。
【0046】
[0056]GCIデバイス300はプローブ470a〜470nからのセンサ入力信号を受け取る。AI部分330はセンサ入力信号を使用して追加の測定値を決定することができる。例えば、GCIデバイス300がタコメータ324からピニオン速度636を受け取る場合、AI部分330はピニオン速度636からギア速度638を決定することができる。
【0047】
[0057]AI部分330は、さらに、センサ入力信号を使用してセンサ入力信号の一群の周波数(FoF)640を計算する。FoF640は、各GMFの高調波642、ピニオンシャフトの側波帯644、ギア周波数の側波帯646、およびハンチング歯周波数の5つの高調波648を含む。ハンチング歯周波数は以下のように決定することができる。
【0049】
[0058]
図7は、本開示による、ギアボックスをモニタするための例示のGCIの第2のパートの動作700のより詳細な図を示す。
図7に示されたGCIの第2段階の動作700の実施形態は説明のためだけのものである。本開示の範囲から逸脱することなく、GCIの第2段階の動作700の他の実施形態を使用することができる。
【0050】
[0059]AI部分330がセンサ入力信号の一群の周波数640を計算した後、AI部分330は低域フィルタ332によりFoF640を処理し、FFT分析336を適用する。低域フィルタ332は、バターワースフィルタ、ウェーブレットベースフィルタ、または任意の他の低域フィルタとすることができる。FoF640は、この例ではいくつかの帯域フィルタ経路705a〜705cを含むFFBS338を通される。2Hz帯域(例えば、f+1Hzからf−1Hzまで)705aは、値が1000Hz未満(f<1000Hz)であるFFT分析336からの信号に適用される。3Hz帯域(例えば、f+1.5Hzからf−1.5Hzまで)705bは、値が2000Hz未満であるが、1000Hz以上である(1000Hz≦f<2000Hz)FFT分析336からの信号に適用される。4Hz帯域(例えば、f+2Hzからf−2Hzまで)705cは、値が2000Hz以上(f≧2000Hz)であるFFT分析336からの信号に適用される。帯域は、速度揺らぎ、変形、歯構造の歪み、または任意の他の理由に起因する周波数のいかなる変化も組み込む。
【0051】
[0060]AI部分330は、帯域705a〜705cごとに最小振幅および最大振幅を計算する。次に、AI部分330は帯域705a〜705cからの最大値の各々を組み合わせて、最大振幅および周波数の行列710を生成する。AI部分330は、さらに、帯域705a〜705cからの最小値の各々を組み合わせて、最小振幅および周波数の行列715を生成する。AI部分330は、最大振幅および周波数の行列710と、最小振幅および周波数の行列715との間の合併720を生成することによって信号復元340を行う。合併720は、ギアの全復元信号725をもたらす。この例では、合併720および復元信号725は、特定の(例えば、モニタされた)段のギアの加速度を決定する。
【0052】
[0061]
図8は、本開示による、ギアボックスをモニタするための例示のGCIの第3のパートの動作800のより詳細な図を示す。
図8に示されたGCIの第3段階の動作800の実施形態は説明のためだけのものである。本開示の範囲から逸脱することなく、GCIの第3段階の動作800の他の実施形態を使用することができる。
【0053】
[0062]AI部分330は、最大の振幅および周波数の行列710を使用して、GMFおよびその高調波の信号805、ピニオン基準の信号810、ギア側波帯の信号815、ハンチング周波数の信号820を復元する。さらに、AI部分330は最小の振幅および周波数の行列715を使用して、背景雑音の信号825を復元する。信号805〜825の各々は、それぞれRMSレベル検出器830、正規化RMSレベル検出器835、および5つのファジーメンバールール840a〜840eのうちの1つを通される。ファジーメンバーシップルール840a〜840eからの出力はファジールール845を通されて、障害表示信号を生成する。ファジーメンバーシップ関数およびファジールールは、例えば、ルールベース診断348が使用されるときなどに他の論理で置き替えることができる。
【0054】
[0063]AI部分330はファジールール信号をいくつかの指数850、855および860と比較する。AI部分330は、3つの追加のファジーメンバーシップ関数865a〜865cのうちの1つをギアピニオン摩耗指数850の出力、ギア亀裂指数855の出力、およびピニオン亀裂指数860の出力に適用する。AI部分330は、さらに、RMSレベル検出器870、正規化RMSレベル検出器875、およびファジーメンバーシップ関数880をギアの全復元信号725に適用する。その後、ファジーメンバーシップ関数865a〜865cおよび880からの信号の各々はファジールール885に送られて、ギア状態指標890を生成する。
【0055】
[0064]AI部分330は、ピニオンに対してこのプロセスを繰り返す。さらに、AI部分330は、追加のギア段の各ギアおよびピニオンにこのプロセスを繰り返す。このようにして、GCIデバイス300は、ギアボックスの各段の各ギアおよびピニオンのギア状態指標890を決定することができる。
【0056】
[0065]ギア状態指標890は、摩耗、ピニオンの亀裂/破損、およびギアの亀裂/破損などのギアボックスの様々な故障モードとは無関係に各段のギアボックスの健全性を反映する。実施形態によっては、GCIデバイス300はメモリに記憶されたいくつかの閾値値を含み、GCIデバイス300はギア状態指標890をメモリに記憶された閾値値と比較することができる。メモリは、任意の電子、磁気、電磁気、光学、電気光学、電気機械などの任意のコンピュータ可読媒体、および/またはデータを含む、記憶する、通信する、伝搬する、または送信することができる他のメモリデバイスとすることができる。特定の実施形態では、閾値値は、GCIデバイス300によって計算されたギア状態指標890ごとに警告閾値および警報閾値を含むことができる。警告閾値は、ギア状態指標890が高いという警告をトリガすることができ、一方、警報閾値は、障害がギアボックスで検出されたという警報をトリガすることができる。
【0057】
[0066]
図9は、本開示による、ギアボックスをモニタするための例示のプロセス900を示す図である。
図9に示されたプロセス900の実施形態は説明のためだけのものである。本開示の範囲から逸脱することなく、プロセス900の他の実施形態を使用することができる。さらに、説明を容易にするために、プロセス900はGCIデバイス300に関して説明されるが、プロセス900は任意の好適なデバイスまたはシステムで使用することができる。
【0058】
[0067]この例では、GCIデバイス300は振動信号および速度信号を、処理し、好適な閾値と比較して使用し、ギアボックスの適切なメンテナンスを決定する。振動信号および速度信号はステップ905においてGCIデバイス300によって受け取られる。GCIデバイス300は、ステップ910において、ギアボックスの正常動作中に得られた振動信号および速度信号をベースライン信号として記憶する。GCIデバイス300はステップ915においてギアボックスの関連のある群の周波数を決定する。これは、例えば、ギアボックスの故障モードの各々に対してFoF640を決定することを含むことができる。FoF640は、GMFおよびその高調波、GMFおよびその高調波のまわりのピニオンシャフト回転周波数の側波帯、ならびにGMFおよびその高調のまわりのギアシャフト回転周波数の側波帯波を含むことができる。実施形態によっては、歯ハンチング周波数およびそれぞれの高調波などのより多くの周波数を決定することもできる。GCIデバイス300は、ギア、ピニオン、および背景雑音の成分周波数を決定することができる。
【0059】
[0068]GCIデバイス300は振動信号および速度信号を受け取り続け、ステップ920において信号処理を行う。これは、例えば、信号を分解することを含むことができる。信号処理は、低域フィルタ操作およびFFT分析をさらに含むことができる。GCIデバイス300は、ステップ925において、処理された信号を使用して周波数/周波数帯幅の選択を行う。これは、例えば、周波数を分離することと、最小および最大の周波数および振幅を得ることとを含むことができる。GCIデバイス300は、ステップ930において、例えば、全信号を復元すること、ならびにGMFおよび高調波、ピニオン側波帯、ギア側波帯、ハンチング周波数、および背景雑音の信号を復元することなどによって信号を復元する。GCIデバイス300は、ステップ935において復元信号から統計的特徴を見いだす。例えば、GCIデバイス300は、RMS値および尖度値などの特徴を決定することができる。GCIデバイス300は、さらに、ステップ940においてベースライン信号の対応する特徴を、およびステップ945において現在の信号の対応する特徴を識別する。復元信号は、ステップ950において、正規化され、ベースライン信号または他の指数と比較される。次に、GCIデバイス300は特徴をベースラインからの特徴を基準にして正規化する。例えば、復元信号は、ステップ945で見いだされた現在の信号からの特徴をステップ950で見いだされたベースラインからの特徴で除算することによって正規化することができる。正規化は、機械システムのサイズおよび用途のタイプに関してモデルを一般化するのに役立つ。ファジー特徴融合を行い、故障モード指標を決定する。特徴融合技法は、ベイジアン特徴融合またはデンプスター・シェイファー特徴融合をさらに含むことができる。GCIデバイス300は故障モード指標のファジー融合を行い、ギア健全性指標を決定し、閾値を状態指標に適用して障害を検出する。復元信号の特徴が閾値のうちの1つを超える場合、GCIデバイス300は、ステップ955において、適切な指標(例えば、ギアシステム指標、ギア摩耗指標、ギア亀裂指標、および/またはピニオン亀裂指標)を出力する。
【0060】
[0069]実施形態によっては、記憶されている振動信号および速度信号が、摩耗を現在受けているか、または亀裂を現在含んでいるギアに対するものである。そのような実施形態では、GCIデバイス300は、ギアの追加の疲労またはさらなる亀裂に起因する信号の変化に基づいて警告または警報を行う。
【0061】
[0070]
図10は、本開示の実施形態による例示のファジー化操作を示す。
図10に示されたファジー化操作1000の実施形態は説明のためだけのものである。本開示の範囲から逸脱することなく、ファジー化操作1000の他の実施形態を使用することができる。
【0062】
[0071]ファジー化操作1000は、RMSギア値に対する第1の入力、RMS側波帯値に対する第2の入力、および出力を含む。一例では、第1の入力閾値1005は0.4に設定され、第2の入力閾値1010は1.5に設定される。さらに、出力閾値1015は、警報をトリガするために0.77となるように設定される。RMSギアが第1の閾値1005において低く、第2の閾値1010において低い場合、出力は正常である1020。RMSギアが第1の閾値1005において低く、第2の閾値1010において大きくない場合、出力は正常である1025。RMSギアが第1の閾値1005において低く、第2の閾値1010において大きい場合、出力は警告を示す1030。RMSギアが第1の閾値1005において高く、第2の閾値1010において大きい場合、出力は警報を示す1035。
【0063】
[0072]
図11Aおよび11Bは、本開示による例示のギア健全性指標を示す。
図11Aおよび11Bに示されたギア健全性指標の実施形態は説明のためだけのものである。本開示の範囲から逸脱することなく、ギア健全性指標の他の実施形態を使用することができる。
【0064】
[0073]
図11Aに示されたこの実施例では、GCI出力インタフェース370は、ファジィ、デンプスター・シェイファー、またはベイジアン理論に基づく統計の特徴融合を使用して構築される健全性指標1100(
図3に関して上述のさらなる詳細で説明された指標372、374、および376を含む)である。
図11Bに示された別の例では、GCI出力インタフェース370は、ファジィ、デンプスター・シェイファー、またはベイジアン理論に基づく統計の特徴融合を使用して構築される健全性指標1100’(
図3に関して上述のさらなる詳細で説明された指標372、374、および376を含む)である。健全性指標1100(および/または1100’)は、0の値と1の値との間で変化する重症度指数を与える。ギア健全性指標1100は2つの閾値値1105および1110(および/または1105’および1110’)を含む。
【0065】
[0074]例えば、いずれかの指標が0.3〜0.6の範囲にある場合、指標は警告を与える。しかし、範囲が0.6〜1.0の間にある場合、指標は警報を与える。警戒閾値を変更するか、または新しい警戒名を与えることによって、ユーザへの警戒、警報、および/または警告の他の組合せとすることができる。
【0066】
[0075]上記の図は様々な実施形態を示しているが、これらの図に任意の数の変更を行うことができる。例えば、任意の好適なタイプのギアボックスをモニタすることができ、任意の好適なタイプの障害を検出することができる。さらに、GCIデバイス300によって行われるように示された様々な機能を組み合わせる、さらに細分する、または省略することができ、特定の要求に応じて追加の機能を追加することができる。さらに、
図9は一連のステップを示しているが、
図9の様々なステップは重複する、並列に行う、複数回行う、異なる順序で行うことができる。
【0067】
[0076]いくつかの実施形態では、コンピュータ可読プログラムコードから形成される、およびコンピュータ可読媒体に組み入れられているコンピュータプログラムによって、上述の様々な機能は実施またはサポートされる。「コンピュータ可読プログラムコード」という句は、ソースコード、オブジェクトコード、および実行コードを含む任意のタイプのコンピュータコードを含む。「コンピュータ可読媒体」という句は、読取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、または任意の他のタイプのメモリなどのコンピュータによってアクセスすることができる任意のタイプの媒体を含む。
【0068】
[0077]本特許文書の全体にわたって使用されるいくつかの語および句の定義を述べるのは有利であることがある。「結合する」という用語およびその派生語は、2つ以上の要素が互いに物理的に接触していてもいなくても、2つ以上の要素間の任意の直接的または間接的な連通を指す。「含む(include)」および「備える、含む(comprise)」という用語、ならびにそれらの派生語は限定を伴わない包含を意味する。「または」という用語は包括的であり、「および/または」を意味する。「に関連する」および「それに関連する」という句、ならびにその派生語は、含む(include)、内に含まれる(be included within)、に相互接続する、含む(contain)、内に含まれる(be contained within)、に接続する(connect to or with)、に結合する(couple to or with)、と連通可能である(be communicable with)、と協同する、交互配置する、並置する、に隣接する、に結びつけられる(be bound to or with)、有する、特性を有するなどを意味することができる。
【0069】
[0078]本開示はいくつかの実施形態および全体的に関連する方法を説明したが、これらの実施形態および方法の改変および交換は当業者には明らかであろう。したがって、例示の実施形態の上述の説明は本開示を規定または制約しない。以下の特許請求の範囲によって規定されるような本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の変更、代替、および改変も可能である。