特許第5847703号(P5847703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847703
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】集積回路およびこれを使用した医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20160107BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
   A61M5/142 530
   A61B5/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-509380(P2012-509380)
(86)(22)【出願日】2011年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2011056218
(87)【国際公開番号】WO2011125439
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-80224(P2010-80224)
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森田 孝司
(72)【発明者】
【氏名】菅原 吉久
(72)【発明者】
【氏名】岩田 丈晴
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−503597(JP,A)
【文献】 特開2009−148375(JP,A)
【文献】 特開2003−284784(JP,A)
【文献】 特開2009−069864(JP,A)
【文献】 特開2000−180515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00, 5/142
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医療機器にそれぞれ使用される共通の集積回路であって、
前記集積回路は演算部を有し、
前記演算部は、前記複数の医療機器のうち、少なくともいずれかと比較して低い演算機能を必要とする医療機器の機能を達成するのに十分である程度に低い演算処理能力を有し、
前記複数の医療機器のうち、前記演算処理能力よりも高い演算処理能力を必要とする医療機器に使用される前記集積回路は、前記医療機器の機能に応じて前記集積回路の一部の機能を補完する機能補完集積回路に接続されることを特徴とする集積回路。
【請求項2】
記集積回路に接続された前記機能補完集積回路は、前記演算部との並列処理により前記集積回路の演算機能を補完することを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記集積回路には前記医療機器が有するセンサからの検出信号が入力されることを特徴とする請求項1または2に記載の集積回路。
【請求項4】
前記複数の医療機器は、シリンジポンプ、輸液ポンプ、血糖計および血圧計であることを特徴とする請求項3に記載の集積回路。
【請求項5】
前記センサからの検出信号を増幅する増幅部をさらに有し、
前記演算部は、前記増幅部によって増幅された検出信号を受けて、内部プログラムに応じて検出結果の算出または前記医療機器の制御のための演算処理を行なうことを特徴とする請求項3または4に記載の集積回路。
【請求項6】
前記医療機器が前記シリンジポンプまたは前記輸液ポンプである場合に前記機能補完回路が接続されることを特徴とする請求項4に記載の集積回路。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の集積回路を使用した医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路およびこれを使用した医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用機器の内部回路は、マイクロコンピュータやオペアンプといった電子部品を配線基板上にハイブリット実装して構成していた。
【0003】
複数の部品を単一の集積回路に集積化(以下、「ワンチップ化」と称する)して部品の低コスト化を実現する技術としては下記文献(特許文献1)に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−212098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術によりワンチップ化された集積回路は、一の機器用の専用部品としてカスタマイズされるため、使用する集積回路に要求される機能が異なる他の機器に実装される共通の部品として使用することができない。このため、複数の機器において部品を共通化することによるさらなる低コスト化を実現できないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、医療機器用部品およびこれを使用した医療機器のさらなる低コスト化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る集積回路は、複数の医療機器にそれぞれ使用される共通の集積回路であって、前記集積回路は演算部を有し、前記演算部は、前記複数の医療機器のうち、少なくともいずれかと比較して低い演算機能を必要とする医療機器の機能を達成するのに十分である程度に低い演算処理能力を有し、前記複数の医療機器のうち、前記演算処理能力よりも高い演算処理能力を必要とする医療機器に使用される前記集積回路は、前記医療機器の機能に応じて前記集積回路の一部の機能を補完する機能補完集積回路に接続される。
【0008】
また、本発明に係る医療機器は、上記機能補完集積回路を使用してなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る集積回路によれば、複数の医療機器にそれぞれ使用される共通の部品群をプラットフォーム集積回路として共通化するとともに、高機能な機器についてはプラットフォーム集積回路の一部の機能を補完する集積回路(以下、「機能補完集積回路」と称する)をプラットフォーム集積回路と併用する。これにより、複数の医療機器の部品の共通化、対象となる医療機器の範囲の拡大、および、共通化した集積回路のチップサイズの低減、が可能となるため、医療機器用部品およびこれを使用した医療機器のさらなる低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る医療機器のうちシリンジポンプおよび輸液ポンプの機能ブロック図を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る医療機器のうち血糖計および血圧計の機能ブロック図を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るプラットフォーム集積回路の機能ブロック構成を説明するための説明図である。
図4】本発明の実施形態に係るシリンジポンプにおけるプラットフォーム集積回路の使用形態を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る輸液ポンプにおけるプラットフォーム集積回路の使用形態を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る血圧計におけるプラットフォーム集積回路の使用形態を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る血糖計におけるプラットフォーム集積回路の使用形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る集積回路およびこれを使用した医療機器について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る医療機器のうちシリンジポンプおよび輸液ポンプの機能ブロック図を示す図である。
【0013】
図2は、本実施形態に係る医療機器のうち血糖計および血圧計の機能ブロック図を示す図である。
【0014】
なお、図1、2において、医療機器の一部の機能ブロックを省略している。
【0015】
図1、2に示すように、本実施形態に係る医療機器には、本実施形態に係る集積回路100(以下、「プラットフォーム集積回路」と称する)がそれぞれ共通に使用される。
【0016】
図1、2に示す医療機器10、11は、それぞれに備えられたセンサ120により検出された信号(以下、「検出信号」と称する)がプラットフォーム集積回路100に入力されると、検出信号はプラットフォーム集積回路100が有する信号処理部210で増幅される。
【0017】
医療機器10、11は、シリンジポンプ、輸液ポンプ、血糖計および血圧計のいずれかとすることができる。
【0018】
センサ120は、医療機器10、11がシリンジポンプおよび輸液ポンプである場合は閉塞圧力センサが、医療機器10、11が血圧計である場合は圧力センサおよびマイクが、医療機器10、11が血糖計である場合は血糖センサが、該当する。
【0019】
プラットフォーム集積回路100が有するCPU(Central Processing Unit、演算部)221は、増幅された検出信号に基づいて演算を行い、検出結果を算出し、医療機器10、11の制御を行う。検出結果は、医療機器10、11に備えられたフラッシュメモリ284に記録され、LCD(Liquid Crystal Display)282に表示されることができる。また、測定の完了を判断したときや異常を検出したときは、医療機器10、11に備えられたブザー281を鳴らすような制御をすることができる。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る機器のうち、医療機器10については、プラットフォーム集積回路100とともにゲートアレイ110が用いられる。一方、図2に示すように、本実施形態に係る機器のうち、医療機器11については、ゲートアレイ110は用いられない。
【0021】
このように、本実施形態に係るプラットフォーム集積回路100は、用いられる医療機器10、11の機能に応じて、ゲートアレイ110を併用することができる。ゲートアレイ110は、プラットフォーム集積回路100の一部の機能を補完するように構成される。
【0022】
ゲートアレイ110は、例えば、配線の変更によりカスタマイズする方式(例えば、アルミマスタスライス方式)のゲートアレイであってもよく、論理回路の書込みまたは再書込みによりプログラマブルにカスタマイズする方式のゲートアレイ(例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array))であってもよい。ゲートアレイ110は、汎用部品として市販されているものを用いてもよい。
【0023】
一般的に、シリンジポンプおよび輸液ポンプに用いる集積回路には、演算処理能力の高い高機能(高性能)な演算装置すなわちCPUが必要とされる。一方、血圧計および血糖計に用いる集積回路には、シリンジポンプおよび輸液ポンプに用いるCPUほど高機能なCPUは要求されない。このため、プラットフォーム集積回路100のCPU221によって、上述した4つの医療機器10、11すべての機能を達成しようとすると、CPUの機能をシリンジポンプおよび輸液ポンプに合わせざるを得ず、血圧計および血糖計に用いる場合には、プラットフォーム集積回路100のCPU221はオーバースペックとなる。すなわち、プラットフォーム集積回路100のチップサイズの増大を招き、効果的に部品コストの低減を実現することが困難となる。
【0024】
そこで、本実施形態に係るプラットフォーム集積回路100は、そのCPUの機能を、血圧計および血糖計の機能を達成するのに十分な程度の、比較的低い演算処理能力を有するものとする。そして、シリンジポンプおよび輸液ポンプに用いられる場合には、プラットフォーム集積回路100のCPU221とゲートアレイ110とを接続し、プラットフォーム集積回路100のCPU221とゲートアレイ110との並列処理により演算処理を行なう。すなわち、血圧計および血糖計は医療機器11の構成とし、シリンジポンプおよび輸液ポンプは医療機器10の構成とし、医療機器10においては、プラットフォーム集積回路100は、プラットフォーム集積回路100のCPUとの並列処理によりプラットフォーム集積回路100のCPUの機能を補完するためのゲートアレイ110が接続可能なように構成する。シリンジポンプおよび輸液ポンプに設けたゲートアレイ110が補完する機能としては、例えば、チューブ内の気泡を検出するための気泡検出機能、点滴状態を検出する点滴検出機能、モーター制御機能などがあげられ、他の機能はCPU221のみに存在する。
【0025】
このように、本実施形態に係るプラットフォーム集積回路100によれば、複数の医療機器10、11に共通に用いられるプラットフォーム集積回路100のCPU221の規模を小さくすることができるため、チップサイズを低減し、部品コストを低減することができる。チップサイズ低減効果を向上させるために、プラットフォーム集積回路100はフルカスタムであるASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成することが望ましいが、セミカスタムであるスタンダードセルで構成してもよい。
【0026】
また、本実施形態に係るプラットフォーム集積回路100によれば、プラットフォーム集積回路100の一部の構成要素の機能を比較的低い機能を有するように構成しても、該機能よりも高い機能が要求される測定装置にまで適用対象範囲を拡大することができる。このため、量産効果により、さらに部品コストを低減することができる。
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係るプラットフォーム集積回路の機能ブロック構成を説明するための説明図である。図3においては、プラットフォーム集積回路100とともに、本実施形態に係る医療機器10、11の構成要素、および、医療機器10、11に接続される外部装置(電源292、外部システム291)も示している。
【0028】
本実施形態に係る医療機器10は、例えば、シリンジポンプおよび輸液ポンプとすることができ、医療機器11は、例えば、血糖計および血圧計とすることができ、これらの医療機器10、11には、本実施形態に係るプラットフォーム集積回路100がそれぞれ共通に使用される。図3においては、医療機器10の場合にプラットフォーム集積回路と接続されるゲートアレイは図示していない。
【0029】
図3に示すように、プラットフォーム集積回路100は、シリンジポンプ、輸液ポンプ、血糖計および血圧計に共通に使用できるように、これらの複数の医療機器10、11に共通に必要とされる部品群(機能ブロック)を有するように構成して1チップ化される。これにより、部品の1チップ化および部品の共通化による部品コストおよび実装コストの低減が可能となる。
【0030】
本実施形態に係るプラットフォーム集積回路100は、例えば、信号処理部210、制御部220、演算部230、記憶部240、入出力部250、内部クロック部260および電源部270を有する。
【0031】
信号処理部210は、増幅部210a、マルチプレクサ214、AD変換器215により構成される。
【0032】
増幅部210aは、PGA(Programmable Gain Amp)211と、増幅器A212、増幅器B213とを有し、プラットフォーム集積回路100の外部に配置される各外部センサからのアナログ入力信号を増幅する。PGA211は3つのオペアンプおよび抵抗器を用いて増幅率可変の差動増幅器として構成してもよい。増幅器A212、増幅器B213はそれぞれオペアンプを用いてシングル入力の増幅器として構成してもよい。
【0033】
マルチプレクサ214は、PGA211、増幅器A212、増幅器B213で増幅されたアナログ入力信号を内部クロック部260が生成した内部クロックの所定のタイミングで時分割多重する。
【0034】
図3においては、マルチプレクサ214は、増幅部210aからのアナログ信号のみを多重化しているが、マルチプレクサ214は、増幅部210aを介さないアナログ入力信号(図示せず)を含め、複数のアナログ入力信号を多重化することができるように構成することができる。マルチプレクサ214は8チャンネルの信号を多重化できるものを用いてもよい。
【0035】
AD変換器215は、マルチプレクサが多重したアナログ入力信号をデジタル信号にデジタル変換する。
【0036】
多重化されデジタル変換されたアナログ入力信号は、SPI(Serial Peripheral Interface)を介して、プラットフォーム集積回路100外部に実装されたフラッシュメモリ284に記憶されることができる。
【0037】
制御部220は、CPU221、カレントドライバ222、DA変換器223、デジタルコントローラ224、ブザーコントローラ225、LCDドライバ226、音声部227を有する。
【0038】
CPU221は、記憶部に記憶されたプログラム(内部プログラム)に基づいて、プラットフォーム集積回路100の各構成要素を制御する。また、CPU221は演算部230を兼ね、記憶部240に記憶されたプログラムに基づいて各種演算を行う。
【0039】
カレントドライバ222は定電流源回路を有し、医療機器に実装された閉塞圧力センサなどの各種センサに電流を印加する。
【0040】
DA変換器223は、CPU221またはデジタルコントローラ224からのデジタル制御信号をアナログに変換し、アナログ制御信号により、医療機器10、11のそれぞれの機能に応じたPGA211のゲインを設定する。
【0041】
ブザーコントローラ225は、医療機器に実装されたブザー281を制御する。
【0042】
LCDドライバ226は、医療機器に実装されたLCD282を制御して、LCD282に表示される画像を制御する。
【0043】
音声部227は、CODEC(Coder/Decorder)とDA変換器とを有し、記憶部240に記憶したデジタル音声信号を複合およびDA変換し、医療機器に実装された音声アンプで増幅しスピーカ283から音声を出力させる。
【0044】
演算部230はCPU221により構成され、制御部220の指示により各種演算を行う。
【0045】
記憶部240はROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有する。ROMは不揮発性の記憶装置であり、各医療機器10、11用のプログラムを記憶する。外部システム291からROMに各医療装置10、11用のプログラムをインストールすることがきるようにしてもよい。RAMは、CPU221が直接アクセスする主記憶装置として機能させてもよい。
【0046】
入出力部250は、SPI、I2C(Inter−Integrated Circuit)、UART(Universal Asynchronous Receiver)若しくはUSB(Universal Serial Bus)およびFeliCaインタフェースを有して構成することができる。例えば、SPIおよびI2Cはそれぞれフラッシュメモリ284および充電池残量計285とのインタフェースに、UART、USB、FeliCaインタフェースは、外部システム291(例えば、コンピュータ)とのインタフェースとして採用することができる。
【0047】
内部クロック部260は、RTC(Real Time Clock)、PLL(Phase Locked Loop)、タイミング生成部、WDT(Watch Dog Timer)を有する。
【0048】
プラットフォーム集積回路100の内部の基準クロックである内部クロックは、プラットフォーム集積回路100外部から入力される水晶発信器293の発振信号に基づいてPLLにより発生させることができる。タイミング生成部は、プラットフォーム集積回路100の各構成要素の動作タイミングを生成する。例えば、マルチプレクサ214における時分割多重におけるPGA211、増幅器A212および増幅器B213からのアナログ入力信号の選択の切替タイミングを生成する。
【0049】
電源部270は、DC/DCコンバータ、レギュレータおよび電圧検出器を有する。これらの構成要素により、電源部270は、外部の電源292から供給される電圧を、所望の電圧値を有する安定な内部電源電圧に変換する。
【0050】
次に、本実施形態に係る医療機器におけるプラットフォーム集積回路100の使用形態について図4〜7を参照して説明する。
【0051】
上述したように、プラットフォーム集積回路100を医療機器10としてのシリンジポンプおよび輸液ポンプに使用する場合は、プラットフォーム集積回路100にはプラットフォーム集積回路100のCPU221の演算機能を補完するゲートアレイ110が接続される。図4〜7において、医療機器の一部の機能ブロックを省略している。
【0052】
図4は、本実施形態に係るシリンジポンプにおけるプラットフォーム集積回路100の使用形態を示す図である。
【0053】
シリンジポンプは、集中治療室(ICU)などで患者への栄養補給や輸血、化学療法剤や麻酔薬といった薬液注入を高い精度で比較的長時間行なうことを主目的とした医療機器であり、その薬液流量制御が他の形式のポンプと比較して優れている。
【0054】
シリンジポンプが有する閉塞圧力センサにより検出された閉塞圧力は、差動電圧信号(検出信号)としてPGA211に入力されて増幅され、マルチプレクサ214に1チャンネル分の信号として入力される。PGA211の増幅率はDA変換器223により適切な値に設定される。
【0055】
電源電圧(二次電池の出力電圧)、モータ駆動電圧、スライダ位置検出、シリンジサイズ検出の各信号は、プラットフォーム集積回路100の入力部である入力A〜Dにそれぞれ入力され、それぞれマルチプレクサ214に1チャンネル分の信号として入力される。
【0056】
増幅された閉塞圧力と、電源電圧、モータ駆動電圧、スライダ位置検出、シリンジサイズ検出の各信号とは、マルチプレクサ214で時分割多重され、AD変換器215でデジタル変換される。デジタル変換された各信号はSPI121を介して外部のフラッシュメモリ284に記憶させ、シリンジポンプの制御用信号、異常検出信号として利用することができる。
【0057】
図5は、本実施形態に係る輸液ポンプにおけるプラットフォーム集積回路100の使用形態を示す図である。
【0058】
輸液ポンプは、設定した一時間あたりの点滴量で、持続的に薬剤を投与する医療機器であり、例えば、手術後における患者に、正確に点滴をしたい時に使用される。
【0059】
輸液ポンプが有する二つの閉塞圧力センサにより検出された閉塞圧力1、閉塞圧力2は、スイッチSWで選択されたいずれか一方の閉塞圧力が差動電圧信号(検出信号)としてPGA211に入力され、PGA211により増幅された後、マルチプレクサ214に1チャンネル分の信号として入力される。PGA211の増幅率はDA変換器223により適切な値に設定される。
【0060】
電圧および温度の各信号は、プラットフォーム集積回路100の入力部である入力Aおよび入力Bにそれぞれ入力され、マルチプレクサ214にそれぞれ1チャンネル分の信号として入力される。
【0061】
増幅された二つの閉塞圧力と、電源電圧(二次電池の出力電圧)および温度の各信号とは、マルチプレクサ214で時分割多重され、AD変換器215でデジタル変換される。デジタル変換された各信号はSPIを介して外部のフラッシュメモリ284に記憶させ、輸液ポンプの制御信号、異常検出信号として利用することができる。
【0062】
図6は、本実施形態に係る血圧計におけるプラットフォーム集積回路100の使用形態を示す図である。
【0063】
血圧計は、人間の血圧を測定する医療機器である。
【0064】
血圧計が有する圧力センサにより検出された圧力信号(検出信号)は、アナログ差動電圧信号としてPGA211に入力され、PGA211により差動増幅された後、マルチプレクサ214に1チャンネル分の信号として入力される。PGA211の増幅率はDA変換器223により適切な値に設定される。
【0065】
さらに、PGA211により差動増幅された圧力信号は、増幅器A212とともにバンドパスフィルタを構成するバンドパスフィルタBPF1により増幅およびフィルタリングされた後、マルチプレクサ214に1チャンネル分の信号として入力される。圧力信号をバンドパスフィルタBPF1でフィルタリングすることで、圧力信号から血圧測定に直接利用できる脈波成分のみを抽出することができる。
【0066】
圧力センサからの圧力信号はオシロメトリック法による血圧測定に利用することができる。
【0067】
マイクからの音声信号(電圧の検出信号)は、増幅器B213とともにバンドパスフィルタを構成するバンドパスフィルタBPF2により増幅およびフィルタリングされた後、マルチプレクサ214に1チャンネル分の信号として入力される。
【0068】
マイクからの音声信号は、コロトコフ音法による血圧測定に利用することができる。
【0069】
カレントドライバ222は、圧力センサに電流を印加する。
【0070】
プラットフォーム集積回路100の入力部である入力A〜Eは、血圧値の測定に関する他の信号が入力されてもよい。
【0071】
増幅された圧力、さらに増幅およびフィルタリングされた圧力、音声の各信号は、マルチプレクサ214で時分割多重され、AD変換器215でデジタル変換される。デジタル変換された各信号はSPIを介して外部のフラッシュメモリ284に記憶させ、血圧計の測定結果(検出結果)、制御信号、異常検出信号として利用することができる。
【0072】
図7は、本実施形態に係る血糖計におけるプラットフォーム集積回路100の使用形態を示す図である。
【0073】
血糖計は、人間の血糖値を測定する医療機器である。
【0074】
血糖計が有する血糖センサにより検出された光信号(電流の検出信号)は、外付の抵抗器とともにトランスインピーダンスアンプを構成する増幅器A212により電流/電圧変換され増幅された後、マルチプレクサ214に1つのチャンネルとして入力される。
【0075】
血糖センサ(光センサ)は、LED(Light−emitting Diode)とPD(Photo Diode)とで構成される。
【0076】
さらに、増幅器A212により増幅された光信号は、差動信号の一方としてPGA211に入力されるとともに、差動信号の他方としてローパスフィルタLPFを介してPGA211に入力される。
【0077】
PGA211は、LPFを介して入力される光信号とLPFを介さずに入力される光信号との差を増幅する。これにより、光信号のうち血糖値の測定に利用する高周波成分を高精度に抽出することができる。PGA211により増幅された信号は、マルチプレクサ214に1つのチャンネルとして入力される。PGA211の増幅率はDA変換器223により適切な値に設定される。
【0078】
カレントドライバ222は、血糖センサを構成するLEDに電流を印加する。
【0079】
プラットフォーム集積回路100の入力部である入力A〜Eは、血糖値の測定に関する他の信号が入力されてもよい。例えば、血糖値の補正のために温度を測定するサーミスタからの温度信号が入力されてもよい。
【0080】
増幅された光信号と、高周波成分が抽出された光信号とは、マルチプレクサ214で時分割多重され、AD変換器215でデジタル変換される。デジタル変換された各信号はSPIを介して外部のフラッシュメモリ284に記憶させ、血糖計の測定結果(検出結果)、制御信号、異常検出信号として利用することができる。なお、血糖計で用いる血糖センサとして光センサを例示したが、これに限定されず、アンペロメトリー等を利用した電極センサを適用してもよい。
【0081】
このように、本実施形態に係る集積回路およびこれを使用した医療機器によれば、複数の医療機器にそれぞれ使用される共通の部品群をプラットフォーム集積回路として共通化するとともに、高機能な医療機器については機能補完集積回路をプラットフォーム集積回路と併用する。これにより、複数の医療機器の部品の共通化、対象となる医療機器の範囲の拡大、および、共通化した集積回路のチップサイズの低減、が可能となるため、医療機器用部品およびこれを使用した医療機器のさらなる低コスト化を実現することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態に係る集積回路およびこれを使用した医療機器について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0083】
例えば、上述した実施形態においては、集積回路を、シリンジポンプ、輸液ポンプ、血糖計および血圧計の4つの医療機器に共通に用いるものとして説明をしているが、これ以外の医療機器について共通に用いるものであってもよく、また、共通に用いる医療機器の数は限定されない。
【0084】
また、上述した実施形態においては、機能補完集積回路が補完する集積回路の一部の機能としてCPUの演算機能を例として説明しているが、例えば、ブザーコントローラやLCDドライバの機能を機能補完集積回路が補完してもよい。
【0085】
上述した実施形態においては、機能補完集積回路として汎用品であるゲートアレイを例として説明しているが、機能補完集積回路は、セミカスタムのスタンダードセルであってもよく、フルカスタムのASICであってもよい。
【0086】
本出願は、2010年3月31日に出願された日本特許出願番号2010−080224号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0087】
10、11 医療機器、
100 プラットフォーム集積回路、
110 ゲートアレイ、
120 センサ、
210 信号処理部、
220 制御部、
230 演算部、
240 記憶部、
250 入出力部、
260 内部クロック部、
270 電源部、
281 ブザー、
282 LCD、
283 音声アンプとスピーカ、
284 フラッシュメモリ、
285 充電池残量計、
291 外部システム、
292 電源、
293 水晶発振器。
図3
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図2
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図7