特許第5847724号(P5847724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847724
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20160107BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160107BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20160107BHJP
   C08F 290/06 20060101ALN20160107BHJP
   C08G 18/67 20060101ALN20160107BHJP
【FI】
   C09J4/02
   C09J11/06
   B32B27/30 A
   !C08F290/06
   !C08G18/67
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-537761(P2012-537761)
(86)(22)【出願日】2011年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2011073113
(87)【国際公開番号】WO2012046810
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-228138(P2010-228138)
(32)【優先日】2010年10月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】比舎 佑基
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−138134(JP,A)
【文献】 特開平05−117361(JP,A)
【文献】 特開2005−126622(JP,A)
【文献】 特開平09−157581(JP,A)
【文献】 特開平02−208243(JP,A)
【文献】 特開平08−188449(JP,A)
【文献】 特開2000−086936(JP,A)
【文献】 特開2010−133987(JP,A)
【文献】 特開2006−316231(JP,A)
【文献】 特開平03−220282(JP,A)
【文献】 特開2011−026369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/06
C08G18/67
C09D4/02
C09J4/02
B32B27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)と水酸基を有する光重合開始剤(B)とイソシアネート基を有するイソシアネート(C)とを反応させて得られるウレタンアクリレート(D)、重合可能な(メタ)アクリレート(E)、シランカップリング剤(F)を含有する樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項2】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)が、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物である請求項1記載の接着剤
【請求項3】
水酸基を有する光重合開始剤(B)が、水酸基を2個以上有する化合物である請求項1又は2記載の接着剤
【請求項4】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)の水酸基のモル数と、水酸基を有する光重合開始剤(B)の水酸基のモル数の合計(A)+(B)=10とした場合、(A)が6以上9.9以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項5】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)の水酸基のモル数と、前記水酸基を有する光重合開始剤(B)の水酸基のモル数の合計(A)+(B)=10とした場合に、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(C)のイソシアネート基のモル数が8〜12である請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項6】
(D)成分、(E)成分の合計100質量部中、(D)成分を5〜95質量部、(E)成分を5〜95質量部を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項7】
(F)成分の使用量が、(D)成分、(E)成分の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部を含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着剤の硬化体により被着体が被覆又は接合された複合体であり、被着体がトリアセチルセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ガラス、金属からなる群から選ばれる1種以上である複合体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着剤で被着体が貼り合わされたタッチパネル積層体。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着剤で被着体が貼り合わされた液晶パネル積層体。
【請求項11】
請求項に記載のタッチパネル積層体を用いたディスプレイ。
【請求項12】
請求項10に記載の液晶パネル積層体を用いたディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。本発明は、例えば、接着剤、ハードコート剤とそれを用いた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
LCD等の表示体の上に搭載するタッチパネルには、抵抗膜式、静電容量式、電磁誘導式、光学式等がある。これらのタッチパネルの上には、化粧板やアイコンシートを貼り合わせる場合がある。化粧板は、見た目のデザイン性を良くするために使用する。アイコンシートは、タッチする位置を指定するために使用する。静電容量式タッチパネルは、透明基板の上に透明電極を形成し、その透明電極の上に透明板を貼り合わせた構造を有している。
【0003】
従来は、上記の化粧板とタッチパネルとの貼り合わせ、アイコンシートとタッチパネルとの貼り合わせ、静電容量式タッチパネルにおける透明電極を形成した透明基板と透明板との貼り合わせを、シート状の両面粘着シートを用いて行うか、被着体の片面に粘着加工するかして、行っていた。このような粘着剤を使用する技術では、接着が不十分であったり、貼り合わせ面に気泡が混入したりするという問題があった。特に、貼り合わせ面に印刷加工がしてあると、印刷のあるところとないところの段差部分に気泡が残りやすいという問題があった。
【0004】
近年、LCD等の表示体のガラスの厚さが薄くなってきている。ガラスが薄くなると外部応力でLCDが変形しやすくなる。この薄いガラスのLCD等の表示体と、アクリル板やポリカーボネート板等の光学機能材料とを貼り合わせる場合、ガラスとアクリル等の線膨張の違いや、アクリル板やポリカーボネート等のプラスチック成型材の成型時の歪みにより、耐熱試験や耐湿試験において成型歪みの緩和や吸湿・乾燥が起こり、寸法変化や反り等の面精度変化が起きる。従来の接着剤(例えば、特許文献1〜2)でこの変形を抑えようとした場合、接着面が剥がれたり、LCDが割れたり、LCDが表示ムラになったりするという問題点があった。
【0005】
上記のような問題点の解決策として、特許文献3のようなUV硬化型樹脂がある。これはイソボルニル(メタ)アクリレートのような剛直な骨格モノマーをベースとした高弾性樹脂であるが故に、高温信頼性試験において被着体の膨張収縮に耐えることができず剥がれを生じてしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−77887号公報
【特許文献2】WO2010/027041号公報
【特許文献3】特開昭64−85209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば、タッチパネル等の表示体に使用される化粧板やアイコンシートを貼り合わせる場合や、静電容量タッチパネルにおける透明電極を形成した透明基板と透明基板とを貼り合わせる場合に、十分な接着性を付与し、気泡を含まずに貼り合わせることが困難であるという従来技術の問題点を解決する接着剤、ハードコート剤の提供である。本発明は、例えば、表示体と光学機能材料とを貼り合わせた場合に、接着面が剥がれたり、表示体のガラスが割れたりする従来技術の問題点を解決する接着剤、ハードコート剤の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、一つの側面から、本発明は樹脂組成物を提供する。この樹脂組成物は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)と水酸基を有する光重合開始剤(B)とイソシアネート基を有するイソシアネート(C)とを反応させて得られるウレタンアクリレート(D);重合可能な(メタ)アクリレート(E);およびシランカップリング剤(F)を含有する樹脂組成物である。
この樹脂組成物の一実施形態においては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)が、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物である。更に別の一実施形態においては、水酸基を有する光重合開始剤(B)が、水酸基を2個以上有する。
【0009】
別の側面からの本発明はこの樹脂組成物の硬化体を提供する。
更に別の側面から本発明は、本発明は、該硬化体により被着体が被覆又は接合された複合体を提供する。
この複合体の一実施形態においては、該複合体の被着体がトリアセチルセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ガラス、金属からなる群から選ばれる1種以上である。
【0010】
別の側面から、本発明は該樹脂組成物で被着体が貼り合わされたタッチパネル積層体を提供し、さらに本発明はこのタッチパネル積層体を用いたディスプレイを提供する。
【0011】
さらに別の観点から、本発明は該樹脂組成物で被着体が貼り合わされた液晶パネル積層体を提供し、さらに本発明は該液晶パネル積層体を用いたディスプレイを提供する。
【0012】
別の観点から、本発明は前記の樹脂組成物からなる接着剤を提供する。また、別の観点から、本発明は該樹脂組成物からなるハードコート剤を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、透明性が大きい、鉛筆硬度が大きい、接着性が大きい、といった効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
光重合開始剤を有するウレタンアクリレート(D)は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)と水酸基を有する光重合開始剤(B)と2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(C)とを反応させて得られるものである。
【0015】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)は、少なくとも1個の(メタ)アクリレート基と水酸基を有するものである。1個の(メタ)アクリレート基と水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。2個以上の(メタ)アクリレート基と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ビス(ペンタエリスリトール)テトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタン−トリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)の(メタ)アクリレート基の数は、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)の水酸基の数は、2個以上が好ましい。
【0016】
水酸基を有する光重合開始剤(B)は、少なくとも1個の水酸基を有するものである。1個の水酸基を有する光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製、製品名Darocur1173)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ジャパン社製、製品名Irgacure184)等が挙げられる。2個以上の水酸基を有する光重合開始剤としては、例えば、1−[4−(ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製、製品名Irgacure2959)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製、製品名Irgacure127)等が挙げられる。水酸基を有する光重合開始剤(B)の水酸基の数は、2個以上が好ましい。2個以上有することで、放射線照射後に開裂した光開始剤が(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)のアクリロイル基の反応系に取り込むことができるため、マイグレーションが抑制できるためである。なお、水酸基の数の上限については特に限定するものではない。
【0017】
イソシアネート基を有するイソシアネート(C)は、イソシアネート基を2個以上有することが好ましい。2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(C)は、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及び脂肪族ジイソシアネート等が挙げられ、芳香族イソシアネート又は脂環族イソシアネートが好適に用いられる。イソシアネート化合物の形態としては単量体、二量体、及び三量体があり、三量体が好適に用いられる。
【0018】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が挙げられる。
【0020】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
上記ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体等も好適に用いられる。
【0022】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)のモル数と、前記水酸基を有する光重合開始剤(B)の水酸基のモル数の合計(A)+(B)=10とした場合に、(A)は6以上が好ましく、9以上がより好ましい。(A)は9.9以下が好ましく、9.8以下がより好ましい。
【0023】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)の水酸基のモル数と、前記水酸基を有する光重合開始剤(B)の水酸基のモル数の合計(A)+(B)=10とした場合に、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(C)のイソシアネート基のモル数は、8〜12が好ましく、9〜11がより好ましい。
【0024】
前記光重合開始剤を有するウレタンアクリレート(D)の製造方法は特に限定するものではない。前記光重合開始剤を有するウレタンアクリレート(D)は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)と水酸基を有する光重合開始剤(B)とを酢酸エチル等の溶媒中で攪拌しながら40℃に加温した後、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(C)を2時間かけて連続的に添加し、更に6時間攪拌することにより得ることができる。
【0025】
重合可能な(メタ)アクリレート(E)は、重合可能な(メタ)アクリル系組成物で、ラジカル重合可能であればいかなるものでも良く、その例を示せば次の通りである。ここで、(メタ)アクリル系組成物とは、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルの総記(以下、〜(メタ)アクレートのように記す。)である。重合可能な(メタ)アクリレート(E)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロトリエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルオキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成テトラフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキシド変成(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキシ変成(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変成(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリプロピレンオキシド変成(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、ポリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(大阪有機化学社製、「ビスコート#540」)、ポリエステル(メタ)アクリレート(東亜合成社製、「アロニックスM−6100」、共栄化学社製、「エポキシエステル3000M」)、ウレタン(メタ)アクリレート(東亞合成社製、「アロニックスM−1100」)、ポリエチレングリコールウレタン変成ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールウレタン変成ジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(東亞合成社製、「アロニックスM−5710」)、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート(日本曹達社製、「TE−2000」)、アクリルニトリルブタジェン(メタ)アクリレート(宇部興産社製、「HyCAr VTBNX」)、ベンジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
上記の(E)成分は、1種又は2種以上使用することができるが、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上であることが望ましい。これは、高温高湿試験、耐候性試験をはじめとする耐久性試験にて、高い保持率を示す点で、有利である。
【0027】
本発明ではガラス乃至プラスチックへの密着力を向上させる目的で、(F)成分として、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中では、ガラス等への密着性の点で、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び/又はγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物において、(D)成分、(E)成分の合計100質量部中、(D)成分を5〜95質量部、(E)成分を5〜95質量部を含有することが好ましく、(D)成分を10〜90質量部、(E)成分を10〜90質量部を含有することがより好ましく、(D)成分を30〜80質量部、(E)成分を20〜70質量部を含有することが最も好ましい。
【0029】
(F)成分の使用量は、(D)成分、(E)成分の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部を含有する場合が、組成物の被着体に対するに対する接着性が特段に高くなり、且つ、硬化性が良好となる点で、好ましく、0.1〜5質量部を含有する場合が、より好ましい。
【0030】
貯蔵安定性を維持する目的で、重合禁止剤を含む市販の酸化防止剤等を使用することができる。
【0031】
これらの他にも所望により可塑剤、充填剤、着色剤又は防錆剤等の既に知られている物質を使用することもできる。
【0032】
本発明は、樹脂組成物に可視光線又は紫外線を照射し、組成物を硬化し、接着する。
【0033】
可視光線又は紫外線の積算光量は、365nmにおいて100〜40000mJ/cm2が好ましく、500〜4000mJ/cm2がより好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、タッチパネルにおける透明電極を形成した透明基板上の透明基板の代わりとしての保護基材となる。本発明の樹脂組成物は、気泡を含まずに貼り合わせるものであり、且つ十分な接着性を確保するものである。本発明の樹脂組成物は、接着剤、ハードコート剤として使用できる。
【0035】
本発明では、樹脂組成物の硬化体によって、被着体を接合又は被覆して複合体を作製することができる。被着体の各種材料については、トリアセチルセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン、ガラス、金属からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエステル、ポリカーボネート、ガラスからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物で被着体を貼り合わせることにより、積層体を作製できる。積層体としては、タッチパネル積層体や液晶パネル積層体等の電子デバイスが挙げられる。タッチパネル積層体や液晶パネル積層体等は、ディスプレイに使用できる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を表1〜3を用いて説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。表1は、光重合開始剤を有するウレタンアクリレート(D)に用いる化合物の配合を表したものであり、表2及び表3は、組成物の配合及びその評価をまとめたものである。
【0038】
<実験材料の調製>
実施例に係る接着剤乃至ハードコート剤は下記の処方で製造した。
【0039】
表1中に記載した各化合物は、以下のものである。
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)−イ:2−ヒドロキシエチルメタクリレート;
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)−ロ:ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学社製、製品名V#300);
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)−ハ:グリセリンジメタクリレート(共栄社化学社製、製品名ライトエステルG−101P);
水酸基を有する光重合開始剤(B)−イ:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ジャパン社製、製品名Irgacure184);
水酸基を有する光重合開始剤(B)−ロ:2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製、製品名Irgacure127);
水酸基を有する光重合開始剤(B)−ハ:1−[4−(ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製、製品名Irgacure2959);
2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(C)−イ:ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(旭化成ケミカルズ社製、製品名デュネラート TPA−100);
2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(C)−ロ:トリレンジイソシアネート;
重合可能な(メタ)アクリレート(E)−イ:ジシクロペンテニルジアクリレート;
重合可能な(メタ)アクリレート(E)−ロ:トリメチロールプロパントリアクリレート;
シランカップリング剤(F)−イ:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;
シランカップリング剤(F)−ロ:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0040】
光重合開始剤を有するウレタンアクリレート(D)は、遮光条件下で、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)と水酸基を有する光重合開始剤(B)とを酢酸エチル中で攪拌しながら40℃に加温した後、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(C)を2時間かけて連続的に添加し、更に6時間攪拌することにより得たものである。
【0041】
(実施例及び比較例)
各実施例及び比較例に対応する接着剤乃至ハードコート剤の主な成分とその配合量は、表1〜3に示す通りである。調製にあたっては、これらの表1に示した成分に加えて、上述の(E)成分及び(F)成分を配合したものである。
比較例1〜2においては、光重合開始剤を有するウレタンアクリレート(D)の代わりに、ウレタンアクリレートオリゴマ(根上工業社製、製品名UN−3320HS)50〜100質量部と光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、製品名Irugacure651)3質量部を配合したものを用いて組成物を調製した。
【0042】
各種物性は、次のように測定した。
【0043】
〔光硬化性〕
温度23℃で測定した。光硬化性に関しては、テンパックスガラス(25mm×25mm×2mm)の表面に硬化性樹脂組成物を厚み0.1mmになるように塗布した。その後、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置を用い、波長365nmのUV光を積算光量2000mJ/cm2の条件にて照射し、硬化させた。光硬化性として、硬化率を記載した。硬化率は、FT−IRを使用し、以下の式により算出した。
(硬化率)=[100−((硬化後の、炭素と炭素の二重結合の吸収スペクトルの強度)/(硬化前の、炭素と炭素の二重結合の吸収スペクトルの強度))]×100(%)
光硬化性の評価は次の通り。
○:表面にタック無し(FT−IRから算出した硬化率:90%以上)、△:表面の一部にタック有り(FT−IRから算出した硬化率:50%−89%)、×:表面全体にタック有り(FT−IRから算出した硬化率:0−49%)。
【0044】
(評価用部材製造方法:実施例比較例共通)
得られた組成物を、膜厚が10μmとなる様に、バーコーターにてテンパックスガラス(25mm×25mm×2mmt)上に塗布し、〔光硬化性〕に従い硬化後、組成物の皮膜を形成した。
【0045】
得られた各フィルムの全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度の結果及び耐光性試験の結果の値を表1〜3に一括して示す。
【0046】
性能試験方法は下記の通りである。
【0047】
(全光線透過率及びヘーズ)
ヘーズメーター(スガ試験機社製)を使用し、JIS K7361及びJIS K7136に準拠して測定した。
【0048】
(鉛筆硬度)
スクラッチ試験機(KASAI社製)を使用し、JIS K5600−5−4に準拠し、荷重1kgで測定した。
【0049】
(耐光性試験)
サンシャインウエザーメーター(スガ試験機社製)を用い、サンプルのコーティング面側に紫外線を照射し、200時間暴露した(水噴霧なし)。暴露後のサンプルについて、鉛筆硬度を測定した。
【0050】
(ガラスへの引張せん断接着強さ(接着強さ、ガラス))
JIS K 6850に従い測定した。被着材としてテンパックスガラス(25mm×25mm×2mm)を用いた。接着部位を8mmφ(接着部位を8mmφとは、接着部位が直径8mmの円であることをいう)として、樹脂組成物を用い、2枚のテンパックスガラスを貼り合わせた。無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量2000mJ/cm2の条件にて硬化させ、引張せん断接着強さ試験片を作製した。試験片は、万能試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張せん断接着強さを測定した。
【0051】
(ポリエステルへの接着強さ(接着強さ、ポリエステル))
被着材としてPETフィルム(10mm×50mm×185μm)を用いた。接着部位を10mm×30mmとして、樹脂組成物を用い、2枚のPETフィルムを貼り合わせた。無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量2000mJ/cm2の条件にて硬化させ、剥離接着強さ試験片を作製した。試験片は、万能試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度50mm/minで剥離接着強さを測定した。
【0052】
(ポリカーボネートへの引張せん断接着強さ(接着強さ、ポリカーボネート))
JIS K 6850に従い測定した。被着材としてポリカーボネート板(25mm×25mm×2mm)を用いた。接着部位を8mmφ(接着部位を8mmφとは、接着部位が直径8mmの円であることをいう)として、樹脂組成物を用い、2枚のポリカーボネート板を貼り合わせた。無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量2000mJ/cm2の条件にて硬化させ、引張せん断接着強さ試験片を作製した。試験片は、万能試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張せん断接着強さを測定した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表より、本発明の樹脂組成物は、以下の特徴を有することが判る。
(1)本発明の樹脂組成物は、気泡を含まずに貼り合わせることができ、透明性が大きい。本発明の樹脂組成物は、透明基板の保護基材となる。
(2)本発明の樹脂組成物は、鉛筆硬度、特に耐光性試験後の鉛筆硬度が大きい。本発明の樹脂組成物は、光暴露の環境下で使用しても傷が付きにくいハードコート剤を提供できる。
(3)本発明の樹脂組成物は、十分な接着性を確保する。本発明の樹脂組成物は、接着剤として使用できる。