特許第5847768号(P5847768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847768
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】シート状敷設物の切断装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/09 20060101AFI20160107BHJP
【FI】
   E01C23/09 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-150228(P2013-150228)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-21285(P2015-21285A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年6月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513001868
【氏名又は名称】株式会社極東体育施設
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166224
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 成夫
(72)【発明者】
【氏名】巻嶋 貴雄
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−285879(JP,A)
【文献】 特開平07−158009(JP,A)
【文献】 特開2000−8314(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0186729(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0319510(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 13/00−23/09
B02C 18/14
B32B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の敷設物の上を走行する装置本体と、装置本体に連結され、敷設物と敷設面との間に挿入される挿入部材と、装置本体に取り付けられ、敷設物を切断する円盤状のカッターとを備え、挿入部材を敷設物と敷設面との間に挿入し、挿入部材に乗り上げた敷設物をカッターで切断しながら装置本体を前進させることにより、敷設物を装置本体の進行方向に沿って切断するシート状敷設物の切断装置において、
前記装置本体を昇降することによりカッターの上下方向の位置を調整する調整手段を備え、
挿入部材を装置本体の昇降に応じて上下方向に移動するように設け
挿入部材に装置本体に連結される連結部を設けるとともに、
連結部をカッターによる切断により二分された敷設物の間を通過するように配置し、
連結部の幅方向一方の側面をカッターの幅方向一方の側面と幅方向同一位置になるように形成するとともに、
連結部の幅方向他方の側面を前端側が後方に向かって幅方向外側に斜めに延びる傾斜面をなすように形成し、
装置本体に設けられる車輪のうち連結部に最も近い車輪側に連結部の幅方向一方の側面を配置し
ことを特徴とするシート状敷設物の切断装置。
【請求項2】
前記挿入部材を下方に向かって付勢する付勢手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のシート状敷設物の切断装置。
【請求項3】
前記装置本体の前方の切断位置に配置される切断ガイドを備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のシート状敷設物の切断装置。
【請求項4】
前記挿入部材を、前端側の接地端と装置本体との連結点とを結ぶ線と、挿入部材の下面とのなす角度が35゜以上40゜以下になるように形成した
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のシート状敷設物の切断装置。
【請求項5】
前記調整手段を駆動して装置本体を昇降させる駆動手段と、
カッターの下端の位置を検出する第1の検出手段と、
挿入部材の上面の位置を検出する第2の検出手段と、
第1の検出手段によって検出されるカッターの下端の位置と第2の検出手段によって検出される挿入部材の上面の位置に基づいて装置本体を昇降させることにより挿入部材の上面に対するカッターの下端の位置が所定位置になるように駆動手段を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のシート状敷設物の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテニスコート、野球場のグランド、その他の種運動施設に敷設された人工芝等、シート状の敷設物を切断するためのシート状敷設物の切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テニスコート、野球場のグランド等の各種運動施設に敷設される人工芝としては、合成樹脂製のパイルが植設されたシート状の基材をアスファルト等の下地層の上に設置し、基材上のパイル間に細かい砂や珪砂、またはこれらにゴムチップを混合してなる充填物を充填したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような人工芝は、充填物層が雨や散水等の水分を透水するので、水はけが良く、コンディションの管理が容易であるとともに、緑色に着色された充填物を用いることにより、美観に優れるだけでなく、白色パイルからなるラインの視認性を高めることもできるという利点がある。また、競技者が着地した際の衝撃が充填物によって吸収されるとともに、充填物によって適度な滑りが得られるので、競技者の負担を軽減することができ、転倒時やスライディング時のパイルとの摩擦による火傷を防止する効果もある。
【0004】
しかしながら、パイル間に充填物を充填した人工芝は、充填物が踏み固められるなど、経時変化により充填物が固結して硬化し、衝撃吸収性が損なわれるとともに、透水性が低下して水はけが悪くなるため、通常5〜10年で張り替える必要がある。
【0005】
人工芝の張り替え工事では、既設の人工芝を充填物が入ったままの状態でロール状に巻き取り、敷設場所から撤去して産業廃棄物として処分している。しかしながら、人工芝と充填物とを分別すればそれぞれ再利用可能な場合が多いため、このような撤去後の人工芝や充填物をそのまま産業廃棄物として処分したのでは、資源の無駄な消費になるとともに、産業廃棄物の処分費用も発生し、張り替え工事費を増加させることにもなる。そこで、充填物入りの人工芝を敷設場所から回収し、工場等で人工芝と充填物に分別することにより、人工芝を再利用するとともに、人工芝と分別した充填物を新たに敷設される人工芝に充填したり、或いは土木用、建築用資材として他の用途に利用することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、敷設面に敷設されている人工芝を切断する装置としては、装置本体に取り付けられた板状の挿入部材を人工芝と敷設面との間に挿入し、挿入部材によって敷設面から浮き上がらせた人工芝を円盤状のカッターで切断しながら装置本体を前進させることにより、人工芝を装置本体の進行方向に沿って切断するようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−193010号公報
【特許文献2】特開2009−113020号公報
【特許文献3】特開2008−285879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記切断装置では、カッターを回転させながら人工芝を切断するようにしているが、人工芝を砂入りの状態で切断するため、砂との摩擦によりカッターが摩耗しやすいという問題がある。しかしながら、カッターの中心位置から敷設面までの距離は一定であるため、摩耗により円盤カッターの外径が小さくなると、カッターが人工芝の下端まで届かなくなり、人工芝を切断することができなくなる。このため、カッターの交換作業によって人工芝の切断作業が頻繁に中断し、切断作業の効率を低下させるとともに、カッターを外径が僅かに摩耗しただけで交換しなければならず、カッターに要するコストが高くつくという問題点があった。
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カッターを頻繁に交換する必要がなく、敷設物の切断作業を効率よく行うことのできるシート状敷設物の切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するために、シート状の敷設物の上を走行する装置本体と、装置本体に連結され、敷設物と敷設面との間に挿入される挿入部材と、装置本体に取り付けられ、敷設物を切断する円盤状のカッターとを備え、挿入部材を敷設物と敷設面との間に挿入し、挿入部材に乗り上げた敷設物をカッターで切断しながら装置本体を前進させることにより、敷設物を装置本体の進行方向に沿って切断するシート状敷設物の切断装置において、前記装置本体を昇降することによりカッターの上下方向の位置を調整する調整手段を備え、挿入部材を装置本体の昇降に応じて上下方向に移動するように設け、挿入部材に装置本体に連結される連結部を設けるとともに、連結部をカッターによる切断により二分された敷設物の間を通過するように配置し、連結部の幅方向一方の側面をカッターの幅方向一方の側面と幅方向同一位置になるように形成するとともに、連結部の幅方向他方の側面を前端側が後方に向かって幅方向外側に斜めに延びる傾斜面をなすように形成し、装置本体に設けられる車輪のうち連結部に最も近い車輪側に連結部の幅方向一方の側面を配置している。
【0011】
これにより、カッターが摩耗して外径が小さくなった場合は、調整手段によって装置本体を下降することにより、敷設物を切断可能な位置にカッターの上下方向の位置を調整することができる。その際、挿入部材が装置本体の昇降に応じて上下方向に移動することから、挿入部材の上下方向の位置を人為的に調整する必要がない。また、挿入部材の連結部がカッターによる切断により二分された敷設物の間を通過するように配置され、連結部の幅方向一方の側面がカッターの幅方向一方の側面と幅方向同一位置になるように形成されるとともに、装置本体に設けられる車輪のうち連結部に最も近い幅方向一方の前輪側に連結部の幅方向一方の側面が配置されることから、幅方向一方の前輪と連結部との間の敷設物に幅方向の外力が生ずることがなく、幅方向一方の前輪と連結部との間の敷設物が円滑に通過する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カッターが摩耗して外径が小さくなった場合でも、カッターを頻繁に交換する必要がないので、切断作業を効率よく行うことができる。また、カッターを外径が僅かに摩耗しただけで交換する必要がないので、カッターを寿命に達するまで使用することができ、カッターに要するコストを低減することができる。更に、調整手段によってカッターの上下方向の位置を調整する際、挿入部材の上下方向の位置を人為的に調整する必要がないので、カッターの上下方向の位置に拘わらず挿入部材を常に適正な位置に保つことができる。また、挿入部材の連結部がカッターによる切断により二分された敷設物の間を通過する際、幅方向一方の前輪と連結部との間の敷設物に幅方向の外力が生ずることがないので、幅方向一方の前輪と連結部との間の敷設物を円滑に通過させることができる。これにより、装置本体の走行抵抗を増大させることがなく、直進安定性を低下させることもないので、敷設物を容易且つ正確に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示す切断装置の側面図
図2】切断装置の平面図
図3】切断装置の要部拡大側面図
図4】A−A線矢視方向断面図
図5】切断装置の動作を示す要部拡大側面図
図6】切断装置の動作を示す要部一部断面平面図
図7】カッターの摩耗状態を示す切断装置の要部拡大側面図
図8】カッターの上下位置の調整工程を示す切断装置の要部拡大側面図
図9】人工芝の断面図
図10】本発明の他の実施形態を示す切断装置の要部拡大側面図
図11】制御系を示すブロック図
図12】制御部の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図9は本発明の一実施形態を示すもので、例えばテニスコート、野球場のグランド、その他の種運動施設等に敷設されているシート状敷設物としての人工芝1を切断するための切断装置を示すものである。
【0015】
人工芝1は、図9に示すように、シート状の基材1aと、基材1aに植設されたパイル1bとからなり、パイル1bの間には充填物2が充填されている。また、人工芝1は、地盤側に形成された敷設面としての下地層3上に敷設される。
【0016】
基材1aは、例えばポリプロピレン製の平織りまたは不織布の基布等によって形成され、排水用の孔(図示せず)が等間隔で設けられた透水性を有するシート状の部材からなる。
【0017】
パイル1bは、ナイロン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂からなるパイル糸からなり、タフティング等により基布1aに植設されている。この場合、パイル糸を複数本ずつ等間隔で配置することにより芝面が形成されている。
【0018】
充填物2は、細かい砂や珪砂、またはこれらにゴムチップを混合してなり、人工芝1のパイル1bの間に充填されている。この場合、充填物2は、パイル1bの高さに対して9割程度の高さまで充填される。
【0019】
下地層3は、砕石や栗石等を敷き詰めた透水構造の基礎地盤4の上に、透水性のアスファルトを上面が平坦となるように施工することにより形成されている。人工芝1は、下地層3の表面に設置された後、パイル1bの間に充填物2を充填されることにより敷設されている。この場合、人工芝1は、充填物2の重量によって下地層3上に置敷き施工されている。
【0020】
本実施形態の切断装置は、走行可能な装置本体10と、人工芝1を切断するカッター20と、人工芝1と下地層3との間に挿入される挿入部材30と、挿入部材30を上下方向に移動自在に支持する支持機構40と、前方の切断位置と位置合わせするための切断ガイド50とから構成されている。
【0021】
装置本体10は、左右一対ずつ設けられた前輪11及び後輪12を有し、後方に延びる左右一対の把持部13を把持しながら前方に押すことにより、前輪11及び後輪12が回転して走行するようになっている。また、装置本体10には、装置本体10を昇降することによりカッター20の上下方向の位置を調整する調整手段としての調整機構14が設けられている。調整機構14は、各前輪11を支持する支持部材14aと、支持部材14aに支持された各前輪11の上下方向の位置を変える回動軸14bと、回動軸14bを回動操作するためのハンドル14cとからなる。支持部材14aは一端側(前端側)に各前輪11が取り付けられ、他端側(後端側)を装置本体10に回動自在に連結されている。回動軸14bは上下方向に延びる軸状の部材からなり、装置本体10に回動自在に設けられている。回動軸14bの下端側は、例えばウォームギヤ等を用いた連動機構(図示せず)を介して支持部材14aの他端側に連結され、回動軸14bを一方に回動すると支持部材14aの一端側(前輪11側)を上昇させ、他方に回動すると支持部材14aの一端側を下降させるようになっている。ハンドル14cは回動軸14bの上端に取り付けられ、上方に延びる把持部14dを把持しながら回動軸14bを回動操作可能に形成されている。また、装置本体10の前端側には、カッター20が取り付けられる回転軸15が設けられている。
【0022】
カッター20は、回転しながら切断する丸刃状のカッターからなり、砂入り人工芝の切断用としては円盤状の切断砥石が好ましい。カッター20は、装置本体10の前端側の右側方に配置され、装置本体10に搭載された駆動装置21によって回転するようになっている。駆動装置21は、例えばガソリンエンジンからなり、その駆動軸は図示しないベルト及びプーリを介して回転軸15に連結されている。
【0023】
挿入部材30は、前後方向に長い板状の部材からなり、前端側の上面が前方に向かって下り傾斜をなすように形成されている。挿入部材30の前端側にはカッター20の下端側が配置される切り欠き部31が設けられ、切り欠き部31は挿入部材30の前端から挿入部材30の前後方向略中央まで延びるように形成されている。切り欠き部31には、図3に示すようにカッター20の下端側が上方から入り込んでおり、カッター20の下端から切り欠き部31の上端(挿入部材30の上面)までの距離αは、挿入部材30の厚さBの半分程度が適正位置として好ましい。また、挿入部材30は、装置本体10の進行方向右側の前輪11の幅方向外側に配置され、その後端側には支持機構40に連結される連結部32が設けられている。連結部32は、厚さ方向が挿入部材30の幅方向となる板状に形成され、挿入部材30の後端側の上面から後方に向かって斜め上方に延びるように形成されている。連結部32は、幅方向の厚さがカッター20の厚さよりも大きく形成され、図4に示すように幅方向一方の側面(装置本体10の進行方向左側)がカッター20の幅方向一方の側面と同一の仮想平面X1 上に位置するように全体が平面状に形成されている。また、連結部32の幅方向他方の側面(装置本体10の進行方向右側)は、カッター20の幅方向他方の側面と同一の仮想平面X2 よりも幅方向外側に位置しており、その前端側は後方に向かって幅方向外側に斜めに延びる傾斜面32aをなし、後端側は平面状に形成されている。また、連結部32の上端側には支持機構40に固定される固定部33が設けられている。挿入部材30の下面は、前端側が前方に向かって上り傾斜をなすように形成され、前端のやや後方位置からほぼ後端までが下地層3に接地するように形成されている。この場合、挿入部材30は、前端側の接地端P1 と装置本体10との連結点P2 (固定部33の中心)とを結ぶ線Lと、挿入部材30の下面とのなす角度θが35゜以上40゜以下になるように形成されている。
【0024】
支持機構40は、装置本体10に固定された固定部材41と、固定部材41に上下方向に移動自在に係合する可動部材42と、可動部材42を下方に向かって付勢する付勢手段としてのコイル状のバネ43とからなり、可動部材42には挿入部材30が固定部33を介して固定されている。
【0025】
切断ガイド50は、装置本体10から前方に延びるガイドアーム51と、ガイドアーム51の先端に回動自在に取り付けられた円盤状のガイド板52とからなり、ガイド板52はカッター20による切断位置の前方延長線上に配置されるようになっている。ガイドアーム51は装置本体10の前端に取付部材53を介して回動自在に取り付けられ、使用していないときは、図1の一点鎖線に示すように上方に回動しておくことができるようになっている。
【0026】
以上のように構成された切断装置によって人工芝1を切断する場合は、挿入部材30を充填物2の入った人工芝1と下地層3との間に挿入し、カッター20を回転させながら装置本体10を前進させる。これにより、図5に示すように人工芝1が挿入部材30の上面に乗り上げながら切り欠き部31の上でカッター20により切断される。その際、切断ガイド50を前方の切断位置Cに配置しながら装置本体10を前進させることにより、人工芝1が切断位置Cに沿って切断される。
【0027】
前記切断時においては、図6に示すように切断後に左右に二分された人工芝1−1,1−2の間を挿入部材30の連結部32が通過するため、二分された人工芝1−1,1−2が連結部32の幅方向の厚さ分だけ連結部32の幅方向に離れようとするが、連結部32の幅方向一方の側面とカッター20の幅方向一方の側面は互いに幅方向の同一位置にあり、連結部32の幅方向他方の側面はカッター20の幅方向他方の側面よりも幅方向外側に位置しているため、連結部32の幅方向他方に位置する人工芝1−2のみに幅方向への押圧力Fが生ずる。この場合、連結部32の幅方向一方には一方の前輪11が近接して配置されているため、一方の前輪11と連結部32との間の人工芝1−1は一方の前輪11によって下地層3に押し付けられて幅方向への移動を規制されているが、連結部32の幅方向一方の人工芝1−1には幅方向への押圧力が生じないため、連結部32が切断後の人工芝1−1,1−2の間を円滑に通過する。即ち、仮に連結部32の幅方向一方の人工芝1−1が他方の人工芝1−2のように連結部32から幅方向への押圧力を受けたとすると、一方の前輪11と連結部32との間の人工芝1−1が幅方向に圧縮され、これが装置本体10の走行の抵抗となるとともに、前輪11が横方向から力を受けて直進安定性が損なわれるが、本実施形態では連結部32の幅方向一方の人工芝1−1には幅方向への押圧力が生じないため、走行抵抗を増大させることがなく、直進安定を低下させることもない。
【0028】
また、人工芝1は充填物2の入った状態で切断されるため、充填物2との摩擦によりカッター20が摩耗しやすく、図7に示すように摩耗によりカッター20の外径D1 が初期の外径D0 (図中一点鎖線)よりも小さくなり、カッター20の下端が挿入部材30の上面に届かなくなると、人工芝1を切断することができなくなる。この場合は、昇降機構14のハンドル14cを回動操作して装置本体10を下降し、装置本体10に対して前輪11の位置を上げることにより、図8に示すようにカッター20の下端が挿入部材30の切り欠き部31内に適正位置(挿入部材30の上面からαだけ下方の位置)まで入り込むようにカッター20の上下方向の位置を調整する。その際、装置本体10の下降に伴って支持機構40の可動部材42がバネ43に抗して上昇し、装置本体10に対する挿入部材30の位置が常に下地層3の上面に圧接した状態となる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、挿入部材30を人工芝1と下地層3との間に挿入し、挿入部材30に乗り上げた人工芝1をカッター20で切断しながら装置本体10を前進させることにより、人工芝1を装置本体10の進行方向に沿って切断する切断装置において、装置本体10を昇降することによりカッター20の上下方向の位置を調整する調整機構14を備えているので、カッター20が摩耗して外径が小さくなった場合は、調整機構14によって装置本体10を下降することにより、人工芝1を切断可能な位置にカッター20の上下方向の位置を調整することができる。これにより、カッター20を頻繁に交換する必要がなく、切断作業を効率よく行うことができるとともに、カッター20を外径が僅かに摩耗しただけで交換する必要がないので、カッター20を寿命に達するまで使用することができ、カッター20に要するコストを低減することができる。
【0030】
また、挿入部材30を装置本体10の昇降に応じて上下方向に移動するように設けたので、調整機構14によってカッター20の上下方向の位置を調整する際、挿入部材30の上下方向の位置を人為的に調整する必要がなく、カッター20の上下方向の位置に拘わらず挿入部材30を常に適正な位置に保つことができる。
【0031】
更に、挿入部材30をバネ43により下方に向かって付勢するようにしたので、挿入部材30を常に下地層3に押し付けることができ、切断時の挿入部材30の上下動を抑制することができる。
【0032】
また、挿入部材30の連結部32をカッター20による切断により二分された人工芝1−1,1−2の間を通過するように配置し、連結部32の幅方向一方の側面をカッター20の幅方向一方の側面と幅方向同一位置になるように形成するとともに、装置本体10に設けられる車輪のうち連結部32に最も近い幅方向一方の前輪11側に連結部32の幅方向一方の面を配置したので、幅方向一方の前輪11と連結部32との間の人工芝1−1に幅方向の外力が生ずることがなく、幅方向一方の前輪11と連結部32との間の人工芝1−1を円滑に通過させることができる。これにより、装置本体10の走行抵抗を増大させることがなく、直進安定性を低下させることもないので、人工芝1を容易且つ正確に切断することができる。
【0033】
更に、挿入部材30は、前端側の接地端P1 と装置本体との連結点P2 とを結ぶ線Lと、挿入部材30の下面とのなす角度θが35゜以上40゜以下になるように形成されているので、挿入部材30の下面が下地層3から摩擦力を受けた際、角度θが大きすぎて挿入部材30が前のめりに引掛かることを防止することができ、挿入部材30を常に円滑に下地層3上を滑動させることができる。また、角度θが小さすぎることによる挿入部材30の前後方向の大型化を来すことがないので、挿入部材30の小型化を図ることができる。
【0034】
図10乃至図12は本発明の他の実施形態を示すもので、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0035】
本実施形態の切断装置は、前記構成に加え、カッター20の下端の位置を検出する第1のセンサ60と、挿入部材30の上面の位置を検出する第2のセンサ70と、調整機構14を駆動して装置本体10を昇降させる駆動手段としてのモータ80と、カッター20の外径に応じて装置本体10を昇降させることによりカッター20の上下方向の位置が所定位置になるようにモータ80を制御する制御手段としての制御部90とを備えている。
【0036】
第1のセンサ60は、例えば光センサ等の周知の機器からなり、装置本体10からカッター20の外周縁までの距離L1 を検出するようになっている。
【0037】
第2のセンサ70は、例えば光センサ等の周知の機器からなり、第1のセンサ60と同一の高さ位置から挿入部材30の上面までの距離L2 を検出するようになっている。
【0038】
モータ80は、調整機構14の回動軸14bに歯車等の伝動機構(図示せず)を介して連結され、調整機構14の回動軸14bを回転させることにより装置本体10を昇降させるようになっている。
【0039】
制御部90は、マイクロコンピュータ等の制御機器によって構成され、第1及び第2のセンサ60,70からの検出信号に基づき、モータ80の駆動回路に駆動信号を出力するようになっている。
【0040】
ここで、図12のフローチャートを参照して制御部80の動作について説明する。まず、第1のセンサ60によって装置本体10からカッター20の外周縁までの距離L1 を検出するとともに(S1)、第2のセンサ70によって装置本体10から挿入部材30の上面までの距離L2 を検出する(S2)。ここで、第1のセンサ60からカッター20の回転軸15の中心までの距離Kは一定であるため、カッター20の下端(外周縁)が挿入部材30の上面と同一の高さ位置にあるとすると、距離L1 ,L2 は以下の式(1)(2)の関係となる。ここで、L3 は、第1のセンサ60からカッター20の下端までの距離である。
【0041】
2K−L1 =L3 …(1)
【0042】
L2 =L3 …(2)
【0043】
次に、挿入部材30の厚さBの1/2をαとし、第2のセンサ80の検出距離L2 が距離L3 からαを減じた距離になるようにモータ70を駆動して装置本体10を下降させる(S3)。
【0044】
この後、カッター20が摩耗して外径が小さくなり、第1のセンサ60の検出距離L1 に基づく距離L3 が距離L2 以下になった場合は(S4)、前記ステップS3に戻り、第2のセンサ80の検出距離L2 が距離L3 からαを減じた距離になるようにモータ70を駆動して装置本体10を下降する。これにより、カッター20の下端が挿入部材30の切り欠き部31内にαだけ入り込んだ位置まで下降する。
【0045】
このように、本実施形態によれば、第1のセンサ60によって検出されるカッター20の下端の位置と第2のセンサ70によって検出される挿入部材30の上面の位置に基づいて装置本体10を昇降させることにより、挿入部材30の上面に対するカッター20の下端の位置が所定位置になるようにしたので、カッター20が摩耗して外径が小さくなった場合、カッター20の上下方向の位置を調整機構14によって自動で適正な高さ位置に調整することができる。これにより、切断作業を中断してカッター20の上下方向の位置を手動で調整する必要がなく、切断作業を極めて効率よく行うことができる。
【0046】
尚、前記実施形態では、挿入部材30をバネ43により下方に付勢するようにしたものを示したが、バネを設けずに挿入部材30を自重により下方に移動させるようにしてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、シート状の敷設物として人工芝1を示したが、本発明の切断装置は、マットやカーペット等、他のシート状の敷設物を切断する場合にも用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1…人工芝、2…充填物、10…装置本体、14…調整機構、20…カッター、30…挿入部材、32…連結部、40…支持機構、60…第1のセンサ、70…第2のセンサ、80…モータ、90…制御部。
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図12