(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847772
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】トランスデューサヘッドおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G11B 5/31 20060101AFI20160107BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20160107BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/31 F
G11B5/02 T
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-164280(P2013-164280)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-35787(P2014-35787A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2013年10月4日
(31)【優先権主張番号】13/569,408
(32)【優先日】2012年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キリル・アレクサンドロビッチ・リブキン
(72)【発明者】
【氏名】ムーラッド・ベナクリ
(72)【発明者】
【氏名】ネッド・テイバット
【審査官】
斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−164936(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0073858(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0062177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/00−5/024
G11B 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
パドル部、延長先端部、および前記パドル部と前記延長先端部との接合部に形成された屈曲部を有する書込磁極回路を製造する動作と、
前記書込磁極回路の前記屈曲部の周りに少なくとも部分的に巻回された少なくとも1つのコイルを製造する動作とを含む、方法。
【請求項2】
前記書込磁極回路は、リターン磁極部をさらに含み、
前記延長先端部は、前記パドル部と前記延長先端部との間の屈曲点において、リターン磁極部から離れて角度付けられるように製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記書込磁極回路における、前記書込磁極回路の前記延長先端部の中心軸が前記書込磁極回路の前記パドル部の中心軸に対して角度付けされる位置に、屈曲点が形成され、
前記書込磁極回路側のリターン磁極部は、光経路との干渉を回避するためにリーダシールドに対向する側に位置する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パドル部の中心軸は、トランスデューサヘッドの空気軸受面に対して実質的に垂直であるように構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
リターン磁極部の中心軸は、トランスデューサヘッドの空気軸受面に対して実質的に垂直であるように構成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コイルは、前記書込磁極回路の前記パドル部と前記延長先端部との間の屈曲点において、前記書込磁極回路内の磁束放射を強化するように構成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コイルを製造する動作は、リターン磁極部と前記パドル部との間に、少なくとも2つのコイル層を製造する動作をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記コイルは、前記パドル部の一部および前記延長先端部の一部の周りに、前記コイルの巻軸が前記パドル部の一部の中心軸および前記延長先端部の一部の中心軸のそれぞれに対して30°よりも大きい角度で、少なくとも部分的に巻回される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
パドル部、延長先端部、および前記パドル部と前記延長先端部との接合部に形成された屈曲部を有する書込磁極回路と、
前記書込磁極回路の前記屈曲部の周りに少なくとも部分的に巻回された第1のコイルとを備える、トランスデューサヘッド。
【請求項10】
前記書込磁極回路の屈曲点は、前記書込磁極回路の磁束放射を制限し、
前記第1のコイルは、前記屈曲点における磁束放射を強化して、前記書込磁極回路内の磁束放射を強化するように構成される、請求項9に記載のトランスデューサヘッド。
【請求項11】
前記書込磁極回路は、リターン磁極部をさらに含み、
前記トランスデューサヘッドは、前記第1のコイルとリターン磁極部との間に製造される第2のコイルをさらに備える、請求項9または10に記載のトランスデューサヘッド。
【請求項12】
前記延長先端部は、前記延長先端部の中心軸に対して、第2の傾斜角とは異なる角度で製造された第1の傾斜角を有し、前記書込磁極回路側のリターン磁極部は、光経路との干渉を回避するためにリーダシールドと対向する、請求項9〜11のいずれか1項に記載のトランスデューサヘッド。
【請求項13】
磁気回路であって、
リターン磁極部と、パドル部と、前記リターン磁極部から離れて角度付けされた延長先端部と、前記パドル部と前記延長先端部とによって形成された屈曲部とを有する書込磁極回路と、
前記書込磁極回路の前記屈曲部の周りに少なくとも部分的に巻回されたコイルとを備える、磁気回路。
【請求項14】
前記延長先端部は、前記延長先端部の端部に、前記書込磁極回路のより小さい断面に磁束密度を注入して、前記延長先端部の端部における磁束密度を増加するための少なくとも2つの等しくない傾斜角を有する、請求項13に記載の磁気回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気データ記憶装置のトランスデューサヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
熱アシスト磁気記録(heat-assisted magnetic recording:HAMR)トランスデューサヘッドは、近接場トランスデューサによって、よりコンパクトであり、かつ、書込動作のために媒体上に高強度エネルギスポットを生成するエバネッセント場にレーザ光を変換することによるレーザ熱支援を用いて記録媒体上にデータを記録する。その技術は、他のタイプの磁気記憶技術を制限する同じ常磁性効果によって制限されることなく、磁気記憶媒体上の小さいビット記憶領域に単一ビットを記憶することができる高安定磁気化合物を利用する。HAMRシステムは、磁気記憶媒体の強化された安定性を克服するために書込動作中に各ビット記憶領域に熱を印加し、それによって、磁気書込磁極回路に、近くの加熱されていないビット記憶領域の極性を変化させることなく、加熱されたビット記憶領域の磁気極性を変化させることができるようにする。いくつかの状況においては、書込動作中のビット位置を加熱するために、(レーザのような)光源が用いられる。しかしながら、光伝送用の導波路およびHAMRヘッド内の近接場光トランスデューサの存在は、複雑な製造技術を含むとともに、ライタの磁気部について利用可能な設計空間を制限する。そのため、書込磁極に対する任意の設計変更は、事実上、一般的に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−73858号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
高速かつ効率的な書込磁極回路が開示される。トランスデューサヘッドは、パドル部および延長先端部を有する書込磁極回路を伴う磁気回路を形成する。延長先端部は、パドル部の中心軸から離れて角度が付けられ、延長先端部の周囲にはコイルが巻回される。延長先端部は、等しくない2つの傾斜角を有し、より小さな断面に磁束密度を注入して延長先端部の一方端の磁束密度を増加する。リターン磁極は、磁気表面から実質的に垂直に伸びる中心軸を有する。リターン磁極の中心軸は、パドル部の中心軸と実質的に平行であり、延長先端部の中心軸は、リターン磁極の中心軸に対して角度が付けられる。他の実行例も、本明細書において説明および記載される。
【0005】
本概要は、詳細な説明において以下でさらに説明される、単純化された形式のコンセプトの選択を紹介するために与えられる。本概要は、主張される主題のキーとなる特徴および本質的な特徴を特定することを意図したものでなく、さらに、主張される主題の範囲を限定することを意図したものでもない。主張される主題の他の特徴、詳細、有効性および局面は、より特定的に記載された以下のさまざまな実行例の詳細な説明、ならびに、添付の図面にさらに図示されおよび特許請求の範囲においてさらに規定される実行例から、明確になるであろう。
【0006】
記載された技術は、添付の図面とともに読まれる、さまざまな実行例を説明する以下の詳細な説明から理解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】アクチュエータアセンブリの端部に配置されたトランスデューサヘッドを有する磁気記憶ディスクの実行例の平面図である。
【
図2a】本設計に従う書込磁極回路が視認可能な、例示的なトランスデューサヘッドの単純化された側面図である。
【
図2c】例示的なコイル設計を示すトランスデューサの例の他の側面図である。
【
図3a】製造プロセス中に配置された第1のコイル層を示す例示的なトランスデューサヘッドの斜視図である。
【
図3b】線3b−3bの方向から見たときの、
図3aにおける平面3を通して見た例示的なトランスデューサヘッドの切断側面図であり、書込磁極回路と第1および第2のコイル層とが示される。
【
図4】非傾斜書込ヘッドと、本開示に従って製造された傾斜書込ヘッドの例とについての書込ヘッド性能を示すプロット図である。
【
図5】高速かつ効率的な書込磁極回路設計を有するトランスデューサヘッドを製造するための例示的な動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
磁気データ記憶装置は媒体を含み、その媒体上に各データビットが磁気的に記憶される。データは、一貫したビットトラックに沿った個別のセルに記憶され、データビットは、(たとえば、記憶媒体の内径(inner diameter:ID)から外径(outer diameter:OD)まで)同心の半径位置において、記憶媒体に典型的に記録される。記憶媒体が記憶装置内で回転する際に、トランスデューサヘッドは、データトラックに沿って記憶媒体表面に近接して配置されて、トラック内の個々のセルからデータを読み出すとともにデータを書込む。
【0009】
ディスクドライブは、記憶媒体に隣接したトランスデューサヘッドを位置決めするためのアクチュエータを典型的に使用する。サーボ制御システムは、データトラックから、典型的には、トラックに概して半径方向に交差して延在する均等角度間隔のサーボセクタからトランスデューサヘッドによって読み出されたサーボ位置決め情報を受ける。サーボ制御システムは、アクチュエータに制御信号を与えて、データの読出しおよび書込みのために、トラック上にトランスデューサヘッドを維持するとともに、所望のトラックにトランスデューサヘッドを移動する。
【0010】
積極的に配置されたコイルが、オーバーシュートに対していくらか良好な書込磁極回路の応答を提供するために示され、それは、書込磁極回路が、非常に高いレベルの周囲の動作電流の実質的な最適化を犠牲にしつつ、上限500ピコ秒(ps)の範囲の立上り時間に到達することを潜在的に可能にする。しかし、(たとえば、約400ナノメートル(nm)の総磁極長さ(total pole length:PTL)、および約200nmの総磁極幅トレ
ーリング(total pole width trailing:TPWT)を有する)書込磁極回路は、特に軟
磁性裏打ち層(soft under layer:SUL)を伴うことなく、小電流において飽和しない。生成される磁場は大きな角度を有し、それは、キューリ温度(Tc)(媒体の温度)を十分下回るストーナ−ウォルファース(Stoner-Wolfarth)記録のために有益である。し
かしながら、HAMR書込幅を60nm以下に最小化することは困難であるので、(従来の垂直型製品と比べて)より高い線密度容量を確立するために、ダウントラックの効率的な傾きの十分な増幅が必要とされる。これは、高速立上り(<200ps)を有する、良好に制御された垂直磁場の生成を必要とする。
【0011】
本明細書に開示されるトランスデューサヘッドは磁気回路を形成し、書込磁極回路はパドル部と延長先端部とを有するように設計され得る。延長先端部は、パドル部の中心軸から離れるように曲げられ、延長先端部の周囲にコイルが巻回される(たとえば、以下に説明される
図2cおよび
図3を参照)。リターン磁極の中心軸は、パドル部の中心軸に実質的に平行であり、延長先端部の中心軸は、リターン磁極の中心軸に対して角度が付けられ
る。この書込磁極回路設計は、遷移状態および定常状態の双方の性能を大幅に向上する。さらに、書込磁極傾斜および小型コイルは、HAMRトランスデューサヘッドの光学的仕様に合致するように適合され得る。この書込磁極回路設計は、書込磁場立上り時間を改善し、生成された書込磁場の良好な濃度(consistency)を提供し、書込動作中の垂直磁場
の大きさを増加する。
【0012】
図1は、アクチュエータアセンブリ108の端部に取り付けられたトランスデューサヘッド110を有するディスク100の実行例の平面図である。ディスク100は、外径102と内径104とを含み、その間に、円形の破線によって示されている多くの同心トラック106がある。トラック106は、実質的に円形であり、一定間隔であり、ディスク100上に図示されるようにトラック106内に楕円で示される。ディスク100は、動作中にディスク回転軸周りに回転する。
【0013】
情報は、異なるトラック106における、ディスク100上のトラックへ書込まれるとともに、トラックから読出される。トランスデューサヘッド110は、(
図1における分解図においても見られるように、)アクチュエータアセンブリ108の回転軸の遠位端において、アクチュエータアセンブリ108に搭載され、ディスク動作中、ディスク100の表面の上方に近接して飛行する。アクチュエータアセンブリ108は、検索動作中、ディスク100に隣接して位置付けられる、アクチュエータアセンブリ108の回転軸周りを回転する。検索動作は、目標トラックの上方に、トランスデューサヘッド105を位置付ける。
【0014】
トランスデューサヘッド105は、小型のコアを用いて設計される。小型のコアは、低減された書込磁場立上り時間に応答するパフォーマンス利益(つまり、書込磁極がコイル磁場の方向の変化にどれだけ速く応答するか)を実証する。メイントランスデューサヘッドコイルは、書込磁場の立上り時間を低減する目的のために、磁気記憶媒体100の空気軸受面(ABS)に近接するように実現され得る。書込磁場は、主に、書込磁極110によって決定される。実行例においては、書込磁極110は、曲げられた延長先端部と、延長先端部周りに巻回されるコイル114とを含む。
【0015】
一例においては、トランスデューサヘッド105は、書込構造内部に設けられ、書込磁極110の延長先端部の周りに巻回されるコイル150を含む。小型コイルをABSおよび書込磁極に近接するように調整するとともに、形状の複雑性を低減するために、本明細書に開示されるコア(すなわち、書込磁極110)が、導波路クラッディングに隣接して配置され、コイルがリーダシールドと書込磁極との間にある。
【0016】
書込磁極110およびコイル114は、
図2a〜
図2cに示される図において、より良好に理解され得る。
図2aは、ABS202に隣接して示される例示的なトランスデューサヘッド205の単純化された側面図を示し、それにおいては、本設計に従う書込磁極210が視認可能である。トランスデューサヘッド205は、省略されたアクチュエータアセンブル(
図1)とともに示される。
【0017】
実行例においては、書込磁極210は、パドル部212と延長先端部214とを含む。延長先端部214は、パドル部の中心軸212から離れるように曲げられ、コイル250が延長先端部214の周囲に巻回される。リターン磁極部216も、中心軸216aを有するように示されている。リターン磁極部216の中心軸216aは、パドル部216の中心軸212aと実質的に平行であり、延長先端部214の中心軸214aは、書込磁極部216の中心軸216aに対して角度が付けられる。
【0018】
図2bは、例示的な書込磁極210の設計の側面図を示す。実行例においては、書込磁
極210は、約320nmの幅Wを伴うパドル部212を有し得る。書込磁極210は、幅W’を有する延長先端部214も有し、延長先端部214はパドル部212の低部と接する。延長先端部214はさらに傾けられる。第1の傾斜角BA1は約40〜50°であり、第2の傾斜角BA2は約60°である。傾斜角は、延長先端部214の低部が、パドル部212から約600〜800nmの距離Dとなるようにする。しかしながら、距離Dは、少なくともある程度、光学的条件に基づくことに注意すべきである。延長先端部214の低部は、約70〜150nmのTPH、および約130〜200nmのTPLを形成する。
【0019】
図2bに示される設計は、TPLの大幅な低減を提供し、垂直磁場における大きな犠牲なく、磁極先端状態を強化する。設計は、ABSに垂直で、約70〜200nmの上部磁極高さTPHを有する第2のファセット(facet)215も含む。この第2のファセット
215は、リーディング端における垂直磁場を大幅に増幅し、かつ、傾斜角(BA1およびBA2)に対する感度を低減する。等しくない傾斜角(BA1およびBA2)を用いることは、低い全体傾斜角についての書込磁極にも実質的な増幅を提供し、光学的効率を改善するのに役立つ。
【0020】
なお、
図2bに示される設計は、モデリングおよび解析的分析に基づいているが、それに限定されることが意図されていないことに注意すべきである。たとえば、TPLパラメータおよびTPHパラメータは、コイル内の中程度な電流レベルで(信頼ある磁場の値および立上り時間に対応する)飽和状態において所望の磁場の量を確実に生成することを助けるように調整され得る。モデリングは、10kOe(キロエルステッド)と同じくらいの高さの磁場、磁束の測定が、遷移において確実に生成されることを示す。
【0021】
図2cは、例示的なコイル設計250を示す、トランスデューサヘッド例の他の側面図を示す。コイル設計250は、所望の結果を達成するために、トランスデューサヘッド内の任意の適当な位置に設けられる。実行例においては、コイル設計250は、書込磁極210から約1μmの距離Dだけ伸びる。コイル設計は、約200〜300nmの距離D’において、書込磁極から離れて位置付けられる。コイル設計250は、1.7μmの全体高さHを有するように示されている。コイル設計250は、パドル部212の最低部よりも下、約100〜200nmの高さH’の間に延材する。
【0022】
コイル設計250は、2つのコイル層を有するものとして示されている。実行例においては、コイル設計250は、コイル252aおよびコイル252bを含む第1のコイル層252と、コイル254a〜254cを含む第2の層254とを有する。第1のコイル層252においては、下部コイル252bが、パドル部212と延長先端部214との接合部において形成される屈曲部の周りに巻回され得るように示されている。第2のコイル層254は、3つのコイル254a〜254cを含み得る。
【0023】
コイルを製造するために用いられる材料は、任意の多様な従来の導電体を含み、限定されないが、Cu、Au、Al、WおよびMoのような金属を含み得る。カーボンナノチューブのような、他の非金属材料を用いてもよい。コイル設計250に流れる電流によって熱が生成されるときでさえも、サイズが抑えられるように、材料は、小さい熱膨張率を有するように選択されてもよい。
【0024】
導電性およびコイル設計250を製造するために用いられる材料は、所望の結果に従って設計され得る。たとえば、書込動作のために書込磁極210に隣接して磁場を生成するための所望の導電性および電流密度を生成するために、異なる物質を用いることができる。コイルは、メイントランスデューサヘッドに流れる比較的小さい電流を用いて励磁される。コイルは、任意の適当なソースを用いて励磁される。
【0025】
図3aは、製造プロセス中に堆積される第1のコイル層を示す、例示的なトランスデューサヘッドの斜視図を示す。
図3bは、線3b−3bの方向から見たときの、
図3aにおける平面3を通して見た例示的なトランスデューサヘッドの切断側面図であり、書込磁極回路と第1および第2のコイル層とが示される。
【0026】
パドル部312および延長先端部314を含む書込磁極310を伴うトランスデューサヘッド300が示される。延長先端部314は、パドル部312の中心軸から離れて曲がっている。示された例においては、コイル設計350は、トランスデューサヘッド300に近接して(たとえば、埋め込まれて)クロストラック方向で、かつ書込磁極314からダウントラック方向に配向される。
【0027】
2つのコイル352a,352bを有する第1のコイル層352が示される。コイル352は、
図3a〜
図3bにおいて、延長先端部314の周りに巻回するように示される。
図3aでは見えないが、コイル設計350は、2つのコイル層を有する。実行例においては、コイル設計350は、コイル354a〜354cを含む第2の層354を有する。
図3bの断面には、スペーサ材料360も見える。
【0028】
図4は、非傾斜書込ヘッド、および本開示の従って製造された例示的な傾斜書込ヘッドについての書込ヘッド性能を示すプロット400である。立上り時間を低減するタスクは、驚くほど複雑である。最も単純な解決策は、傾斜部を延長するとともに、小型のコイルを両側に配置することである。しかし、これは、(たとえば、サイズおよび構成の制約のために)HAMR書込ヘッドにおいては実際的ではない。その代わりに、本明細書に開示される縮小された(condensed)コイル設計は、200psガイドラインに合致した性能
を発揮し、長くゆっくりとした磁場飽和(すなわち、屈曲点周りの磁化ダイナミクスの時点間の大きな違い)は示さない。プロット(yおよびzの線)から、傾斜設計は、高速かつ効率的な立上り時間のために、オーバーシュート(ソノラクラス挙動(Sonora-class behavior))に対して低い感度を示すことが理解できる。
【0029】
図5は、本明細書において開示される、高速かつ効率的な書込磁極を有するトランスデューサヘッドを製造するための、例示的な動作500を説明するフローチャートを示す。
【0030】
組立て動作において、トランスデューサヘッドは製造される。トランスデューサヘッドは、書込磁極およびその部品である、空気軸受面、コイル、シールドなどを生成する薄膜プロセスにおいて製造される。トランスデューサヘッドは、複数の層ベースの製造動作の間に、延長先端部からリターン磁極部への方向に製造される。
【0031】
一例においては、動作502は、パドル部および延長先端部を有する書込磁極回路を製造することを含む。パドル部の中心軸は、トランスデューサヘッドの空気軸受面に実質的に平行である。延長先端部の中心軸は、パドル部の中心軸に対して角度が付けられる。
【0032】
さらに、延長先端部は、傾斜され得る。傾斜角は、延長先端部の低部が、パドル部から約600〜800nmの距離とされるように選択され得る。一例においては、第1の傾斜角は約40〜50°であり、第2の傾斜角は約60°である。延長先端部の低部は、約70〜150nmのTPH、および130〜200nmのTPLを形成する。そのような設計は、TPLを大幅に低減し、垂直磁化の大きな犠牲なく、磁極先端飽和を強化する。
【0033】
設計は、ABSに垂直であり、約70〜200nmの上部磁極高さTPHを有する第2のファセットも含む。この第2のファセットは、リーディング端における垂直磁場を大幅に増幅し、かつ、傾斜角に対する感度を低減する。等しくない傾斜角を用いることは、低
い全体傾斜角についての書込磁極に実質的な増幅を提供し、光学的効率を改善するのに役立つ。
【0034】
動作504は、書込磁極回路の屈曲点において、少なくとも1つのコイルを製造することを含む。コイルは、パドル部の一部および延長先端部の一部の周囲に少なくとも部分的に巻回し、少なくとも1つのコイルが設けられる。
【0035】
コイルは、所望の結果を達成するために、トランスデューサヘッド内の任意の適当な位置に設けられる。たとえば、少なくとも1つのコイルは、書込磁極から約1μmの距離だけ伸び、約200〜300nmの距離だけ、書込磁極から離れて位置付けられる。コイルは、約1.7μmの全体高さを有し得る。コイルは、パドル部の最低部よりも下、約100〜200nmに延材し得る。
【0036】
一例においては、トランスデューサヘッドは、2つのコイル層を有し得る。つまり、第1のコイル層は、パドル部と延長先端部との接合部において形成される屈曲部の周りに巻回される下部コイルを含み得る。第2のコイル層は、3つのコイルを含み得る。
【0037】
書込磁極を製造するための上述した実行例は、高効率の書込動作を提供する。コイルワイヤからの高い磁束密度が、書込磁極を磁化する。コイルからの磁場プロファイルは、書込磁極へマッピングし、電流技術の容量を超過する強化された書込磁場勾配を生成し、設計は、一般の複雑性の低い材料および処理技術を用いて容易に組立て、かつ製造することができる。
【0038】
本明細書における例示的な実行例は磁気媒体に適用されるが、それらは、パターンドメディアのような他のタイプの媒体、およびそれらのそれぞれの記録方法にも適用可能であることが理解されるべきである。
【0039】
上記の仕様、例およびデータは、書込磁極およびシールドの磁気応答を同期させるために用いられ得る、方法および装置の例示的な実行例の構造の完全な記述を提供する。装置のさまざまな実行例が、特定の特殊性の度合いで、または1つ以上の個別の実行例を参照して上記されたが、当業者は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、開示された実行例に対する多くの変更を行なうことができるであろう。上記の説明に含まれ、かつ添付の図面に示されるすべての事項は、特定の実行例の単なる例示に過ぎず、限定されないことが意図される。詳細または構造における変更が、以下の特許請求の範囲に規定されるような発明の基本要素から逸脱することなくなされ得る。
【符号の説明】
【0040】
100 磁気記憶媒体、105,110,205,300 トランスデューサヘッド、106 トラック、108 アクチュエータアセンブリ、110,216 書込磁極、114,150,250,252a,252b,254a〜254c,352,352a,352b,354a〜354c コイル、212 パドル部、214,314 延長先端部、215 第2のファセット、216 リターン磁極、360 スペーサ材料。