特許第5847795号(P5847795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 精宏機械株式会社の特許一覧

特許5847795水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置
<>
  • 特許5847795-水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置 図000002
  • 特許5847795-水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置 図000003
  • 特許5847795-水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置 図000004
  • 特許5847795-水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置 図000005
  • 特許5847795-水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置 図000006
  • 特許5847795-水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置 図000007
  • 特許5847795-水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置 図000008
  • 特許5847795-水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置 図000009
  • 特許5847795-水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5847795
(24)【登録日】2015年12月4日
(45)【発行日】2016年1月27日
(54)【発明の名称】水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20160107BHJP
【FI】
   A47J27/14 K
   A47J27/14 P
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-273724(P2013-273724)
(22)【出願日】2013年12月30日
(65)【公開番号】特開2015-126845(P2015-126845A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2014年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】599103122
【氏名又は名称】精宏機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108486
【弁理士】
【氏名又は名称】須磨 光夫
(72)【発明者】
【氏名】北脇 武
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−296603(JP,A)
【文献】 特開平04−371114(JP,A)
【文献】 特開2006−102154(JP,A)
【文献】 特開平10−231084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14−27/18
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ラインに沿って炊飯釜を搬送し、搬送ラインの各位置で必要な各工程を行い炊飯する炊飯システムであって、炊飯釜の蓋又は蓋を装着した炊飯釜を搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアによって単体で若しくは炊飯釜に装着された状態で搬送されてくる前記蓋を電磁石によって吸着把持する蓋チャック装置と、前記蓋チャック装置よりも前記搬送コンベアの進行方向上流側に配置された、前記蓋の被チャック部分の水分除去装置とを有し、前記水分除去装置が、前記搬送コンベアの上方に配置された少なくとも先端部が弾性を有する当接片であって、前記搬送コンベアによって炊飯釜の蓋が単体で若しくは炊飯釜に装着された状態で搬送されてきたときにその先端部が前記蓋の被チャック部分と当接し、前記被チャック部分の水切りを行う当接片と、前記搬送コンベアの上方に配置された気体ノズルであって、前記搬送コンベアによって単体で若しくは炊飯釜に装着された状態で搬送されてくる前記蓋の被チャック部分に向かって気体を吹き付ける気体ノズルの双方を備えており、前記当接片の少なくとも前記先端部が前記気体ノズルよりも前記搬送コンベアの進行方向上流側に位置している炊飯システム。
【請求項2】
前記当接片、又は、前記気体ノズル、若しくはその双方が、前記搬送コンベアの進行方向上流側に向かって傾斜している請求項記載の炊飯システム。
【請求項3】
前記当接片の前記先端部の高さ、又は、前記気体ノズルの高さ、若しくはその双方が調節可能である請求項1又は2記載の炊飯システム。
【請求項4】
少なくとも先端部が弾性を有する当接片と、前記先端部よりも上方の位置で前記当接片を保持する当接片保持部材とを備え、炊飯釜の蓋又は蓋を装着した炊飯釜を搬送する搬送コンベアの上方に配置され、前記搬送コンベアによって炊飯釜の蓋が単体で若しくは炊飯釜に装着された状態で搬送されてきたときに前記先端部が前記蓋の被チャック部分と当接して前記被チャック部分の水切りを行う、請求項1記載の炊飯システムに用いられる、炊飯釜の蓋の被チャック部分の水分除去装置。
【請求項5】
請求項記載の水分除去装置と、気体ノズルを備え、炊飯釜の蓋又は蓋を装着した炊飯釜を搬送する搬送コンベアの上方に配置され、前記搬送コンベアによって単体で若しくは炊飯釜に装着された状態で搬送されてくる前記蓋の被チャック部分に向かって前記気体ノズルから気体を吹き付ける炊飯釜の蓋の被チャック部分の水分除去装置とを、前記搬送コンベアの進行方向上流側からこの順で備えてなる、請求項1記載の炊飯システムに用いられる、炊飯釜の蓋の被チャック部分の水分除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分除去装置を備える炊飯システムとその炊飯システムに用いられる水分除去装置に関し、詳細には、搬送ラインに沿って多数の炊飯釜を搬送しながら炊飯に必要とされる各工程を行う炊飯システムにおいて、炊飯釜の蓋に付着した水分を除去する水分除去装置を備えた炊飯システムと、その炊飯システムに用いられる水分除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ラインに沿って多数の炊飯釜を搬送し、搬送ラインの各位置で炊飯に必要な各工程を行い炊飯釜ごとに炊飯する炊飯システムとしては従来から種々のものが提案されている。斯かる炊飯システムにおいては、例えば、炊飯釜内に各種調味液や具材、炊飯水などを添加したり、炊飯釜から浸漬水を抜き取ったりする必要上、搬送ラインを搬送されてくる炊飯釜から蓋を取り外したり、炊飯釜に再び蓋を装着する蓋の脱着作業が必要となる(特許文献1、2参照)。また、炊飯が終了した炊飯釜は、炊飯釜本体と蓋とに分けられて、それぞれ洗浄工程へと搬送されるが、洗浄を終えた蓋は、新たに米と炊飯水等の炊飯資材が収容された炊飯釜に再び装着されることになる。
【0003】
斯かる蓋の脱着作業においては、蓋を一時的に把持して上下方向や水平方向に移動させるために、通常、電磁石を用いた蓋チャック装置が使用されている。すなわち、上記のような炊飯システムで用いられる炊飯釜の蓋には、通常、その中央部に磁性体で構成された平坦な被チャック部分が設けられており、この被チャック部分に蓋チャック装置の電磁石部を接近させて通電することによって、蓋を電磁石が発生する電磁力によって吸着把持し、蓋を垂直又は水平方向に移動させ、炊飯釜から蓋を取り外したり、逆に炊飯釜に蓋を装着したり、蓋を所望の場所に移動させたりすることができる。
【0004】
しかし、本発明者の経験によれば、炊飯システムで用いられている上記蓋チャック装置は耐久性に劣り、比較的短時間の使用で電磁石が発生する磁力が低下し、蓋を安全確実に把持搬送することが困難になることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−102154号公報
【特許文献2】特開2006−296603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消するために為されたもので、炊飯システムで用いられる電磁石を利用した蓋チャック装置の長寿命化を図ることが可能な炊飯システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意努力を重ねた結果、本発明者は、従来の炊飯システムにおいて、電磁石を利用した蓋チャック装置が比較的短時間の使用で磁力が低下し寿命が短くなるのは、蓋チャック装置の電磁石部が水分によって劣化するためであることを突き止めた。そして、その水分は蓋チャック装置が吸着把持する蓋に残存している水分に由来するのではないかと考え、実際に、蓋チャック装置の上流側に水分除去装置を配置し、炊飯釜の蓋、特にその被チャック部分に水分が残存しないようにすることによって、蓋チャック装置における電磁石の寿命が大幅に伸びることを確認して本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、搬送ラインに沿って炊飯釜を搬送し、搬送ラインの各位置で必要な各工程を行い炊飯する炊飯システムであって、炊飯釜の蓋又は蓋を装着した炊飯釜を搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアによって単体で若しくは炊飯釜に装着された状態で搬送されてくる前記蓋を電磁石によって吸着把持する蓋チャック装置と、前記蓋チャック装置よりも前記搬送コンベアの進行方向上流側に配置された、前記蓋の被チャック部分の水分除去装置とを有する炊飯システム、及びその炊飯システムに用いられる水分除去装置を提供することによって上記課題を解決するものである。
【0009】
本発明に係る上記炊飯システムによれば、蓋チャック装置よりも前記搬送コンベアの進行方向上流側に蓋の被チャック部分の水分除去装置が配置されているので、蓋チャック装置の電磁石部が接近、吸着するときには、蓋の被チャック部分には水分は存在せず、蓋を吸着把持しても蓋チャック装置の電磁石部が水分によって劣化することがない。
【0010】
本発明の炊飯システムで用いられる水分除去装置は、原則として、蓋チャック装置の電磁石部が吸着把持する前に、蓋の被チャック部分の水分を除去することができる限り、どのような機構、構造の水分除去装置であっても良いが、炊飯された米飯という食品の製造ラインで使用されるものであるので、塵埃等の発生がなく、清潔に保つことが容易なものが好ましい。例えば、前記搬送コンベアの上方に配置された少なくとも先端部が弾性を有する当接片を、水分除去装置として好ましく用いることができる。前記当接片は、搬送コンベアによって炊飯釜の蓋が単体で若しくは炊飯釜に装着された状態で搬送されてきたときにその先端部が前記蓋の被チャック部分と当接する。前記蓋が前記搬送コンベアによってさらに進行方向前方に搬送されることによって、前記先端部は、前記被チャック部分と当接したままの状態で、前記被チャック部分の上面を進行方向前方から後方に向かって移動し、被チャック部分の水切りを行い、被チャック部分の水分を除去することができる。
【0011】
また、例えば、搬送コンベアの上方に気体ノズルを配置して、その気体ノズルから蓋の被チャック部分に向かって気体を吹き付けることにより、蓋の被チャック部分の水分を吹き飛ばし、場合によっては蒸発させて水分を除去するようにしても良い。気体としては、水分を吹き飛ばし、場合によっては蒸発させることができるものであればどのような気体を用いても良いが、例えば、比較的入手が容易な清浄な空気を用いるのが好ましい。
【0012】
上述したような当接片と気体ノズルとは、それぞれを単独で水分除去装置として用いても良いし、両者を組み合わせて用いても良い。蓋又は蓋を装着した炊飯釜が搬送コンベアで搬送されている状態で、蓋の被チャック部分の水分を確実に除去するという観点からは、両者を組み合わせて用いるのが好ましく、組み合わせて用いる際には、上記当接片を少なくともその先端部が気体ノズルよりも上記搬送コンベアの進行方向上流側となるように配置して、まず、当接片によって被チャック部分の水切りを行った後に、気体ノズルから噴射される気体によって被チャック部分に残存する水分を吹き飛ばし、場合によっては蒸発させて、水分除去をより確実なものとするのが好ましい。
【0013】
上記当接片は、蓋又は炊飯釜に装着された状態の蓋を搬送する搬送コンベアに対して垂直に配置しても良いが、前記搬送コンベアの進行方向上流側に向かって傾斜して配置されるのが好ましい。上記当接片が前記搬送コンベアの進行方向上流側に向かって傾斜して配置される場合には、逆方向に傾斜して配置されている場合や、垂直に配置されている場合に比べて、弾性を有する先端部が蓋又は炊飯釜に装着された蓋の進行に対して及ぼす抵抗力が増し、より確実な水切りが可能となる。なお、搬送コンベアの進行方向上流側に向かって傾斜して配置されるとは、上記当接片の上記先端部が、その上部よりも前記搬送コンベアの進行方向上流側に位置するように配置されることを意味する。
【0014】
同様に、上記気体ノズルは、蓋又は炊飯釜に装着された状態の蓋を搬送する搬送コンベアに対して垂直に配置しても良いが、前記搬送コンベアの進行方向上流側に向かって傾斜して配置されるのが好ましい。上記気体ノズルが前記搬送コンベアの進行方向上流側に向かって傾斜して配置される場合には、気体ノズルから吹き出される気体が、搬送コンベアによって搬送されてくる蓋又は炊飯釜に装着された蓋の進行方向とは逆向きに蓋の被チャック部分に吹き付けられるので、気体ノズルが逆方向に傾斜して配置されている場合や、垂直に配置されている場合に比べて、被チャック部分に存在する水分をより確実に除去することが可能となる。なお、気体ノズルが搬送コンベアの進行方向上流側に向かって傾斜して配置されるとは、気体ノズルの中心部分から吹き出される気体が、気体ノズルよりも前記搬送コンベアの進行方向上流側で搬送コンベア若しくは搬送コンベア上の蓋の被チャック部分に吹き当たるように配置されることを意味する。
【0015】
前記当接片及び前記気体ノズルを上記のように傾斜させて配置する場合、その傾斜角度には特に制限はないが、当接片の場合、傾斜角度が余りに大きいと蓋又は炊飯釜に装着された蓋の進行を阻害する恐れがあり、また、気体ノズルの場合には、傾斜角度が余りに大きいと蓋の被チャック部分に吹き当たる気体の量が少なくなってしまう恐れがある。したがって、前記当接片及び前記気体ノズルを上記のように傾斜させて配置する場合、その傾斜角度は、両者ともに鉛直線に対して0度以上、60度以下であるのが好ましく、30度〜50度の範囲にあるのが特に好ましい。また、前記当接片及び前記気体ノズルを上記のように傾斜させて配置する場合、両者の傾斜角度は同じに揃えるのが好ましい。なお、気体ノズルの傾斜角度とは、気体ノズルの中心から吹き出す気体の吹き出し方向と鉛直軸との間の角度をいうものとする。
【0016】
前記当接片の前記先端部の高さ、又は、前記気体ノズルの高さ、若しくはその双方が調節可能であるのが好ましく、前記当接片の前記先端部の高さ、又は、前記気体ノズルの高さ、若しくはその双方が調節可能である場合には、搬送コンベアによって搬送されてくる蓋又は炊飯釜に装着された蓋における被チャック部分の高さが変化する場合でも、その高さの変化に追従させて前記当接片の前記先端部の高さ、又は、前記気体ノズルの高さ、若しくはその双方を調整することができるので、常に効率良く被チャック部分の水分を除去することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の炊飯システム、及びその炊飯システムに用いられる水分除去装置によれば、電磁石を利用した蓋チャック装置が炊飯釜の蓋を吸着把持する前に、蓋の被チャック部分に存在する水分を除去することができるので、蓋チャック装置の電磁石部が蓋の被チャック部分に接触して吸引把持しても、電磁石部に水分が付着することがなく、電磁石を利用した蓋チャック装置の長寿命化を図ることができるという利点が得られる。本発明の炊飯システム、及びその炊飯システムに用いられる水分除去装置によれば、電磁石を利用した蓋チャック装置を用いて、炊飯釜の蓋を安全かつ確実に吸着把持し、安全かつ確実に炊飯釜から蓋を取り外したり、逆に炊飯釜に蓋を装着したり、蓋を所望の場所に移動させたりすることができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の水分除去装置を備えた蓋搬送装置の一例を示す側面概略図である。
図2】本発明の水分除去装置を備えた蓋搬送装置の一例を示す平面概略図である。
図3】第1水分除去装置の拡大図である。
図4】第2水分除去装置の拡大図である。
図5】本発明の水分除去装置を備えた蓋搬送装置の動作説明図である。
図6】本発明の水分除去装置を備えた蓋搬送装置の動作説明図である。
図7】本発明の水分除去装置を備えた蓋搬送装置の動作説明図である。
図8】本発明の水分除去装置を備えた蓋搬送装置の動作説明図である。
図9】本発明の水分除去装置を備えた炊飯システムの一例を示す平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0020】
図1は、本発明に係る水分除去装置を備えた蓋搬送装置の一例を示す側面概略図である。図1において、1は炊飯釜の蓋、2はその搬送コンベア、3は蓋チャック装置であり、蓋チャック装置3は、電磁石4と、昇降用のシリンダ5を備えている。6は第1水分除去装置、7は第2水分除去装置であり、第1水分除去装置6は先端部分に当接片8を備えており、第2水分除去装置7は先端部に気体ノズル9を備えている。10は蓋検出センサー、11は蓋1の被チャック部分である。図に示すとおり、蓋1は搬送コンベア2によって図中矢印方向に搬送されるので、本例においては、蓋チャック装置3よりも上流側に第2水分除去装置7があり、さらに上流側に第1水分除去装置6が配置されていることになる。
【0021】
図2図1の平面概略図である。図1におけると同じ部材には同じ符合を付してある。第1水分除去装置6に設けられている当接片8の蓋1の搬送方向と直交する方向の幅は、被チャック部分11の同方向における幅よりも広く形成されており、蓋1が図中矢印方向に搬送されて、当接片8が被チャック部分11に当接すると、被チャック部分11の上面は、蓋1の搬送方向と直交する方向の全幅において当接片8と当接する。また、第2水分除去装置7に設けられている気体噴出ノズル9の蓋1の搬送方向と直交する方向の噴出幅は、被チャック部分11の同方向における幅よりも広く設定されており、気体ノズル9から噴出される気体は、蓋1の搬送方向と直交する方向の全幅において、被チャック部分11の上面に吹き付けられることになる。なお、本例では、蓋1は円形であり、その被チャック部分11も円形であるが、蓋1及び被チャック部分11は正方形であっても良いし、長方形であっても良い。また、蓋1の水平断面形状と被チャック部分11の水平断面形状は同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0022】
図3は第1水分除去装置6の拡大図である。図に示すとおり、当接片8は、その上端部分で保持部材6aに取り付けられており、保持部材6aは、ボルト6b、ナット6cによって、第1水分除去装置6の本体6dに対して、図中矢印で示すように上下方向の位置が調節可能に取り付けられている。本体6は図示しない適宜の固定部分に取り付けられている。
【0023】
保持部材6aの上下方向の位置が調整可能であるので、蓋1の種類によって被チャック部分11の高さが異なる場合でも、保持部材6aの上下方向の位置を調整して当接片8の先端部の高さを調整し、当接片8の先端部が蓋1の被チャック部分11と当接するようにすることが可能である。なお、本例における当接片8の保持、固定手段、及びその上下方向の位置調整手段は単なる例示であり、当接片8を保持、固定し、その上下方向の位置を調整することが可能であれば、図示のものに限られず、どのような取付手段を用いても良いことはいうまでもない。
【0024】
当接片8は、少なくとも蓋1の被チャック部分11と当接する先端部分が弾性を有する材料で構成されていれば良く、当接片8全体を弾性材料で構成しても良いし、先端部分だけを弾性材料で構成しても良い。弾性を有する材料としては、ゴム又は軟質の樹脂を用いることができる。なお、当接片8の先端8aの蓋1の搬送方向上流側の角度は鋭角であるのが好ましい。
【0025】
αは鉛直線Vに対する当接片8の傾斜角度である。当接片8は垂直(すなわち、角度αは0度)であっても良いが、被チャック部分11と当接して被チャック部分11の水分を効果的に除去するためには、当接片8は蓋1の搬送方向上流側に向かって傾斜している方が好ましく、好ましい角度αの範囲は0度≦α≦60度であり、より好ましくは、30度≦α≦50度の範囲である。角度αの変更は適宜の手段で行えば良く、例えば、当接片8の保持部材6aへの取付角度を変えるか、保持部材6aの本体6dに対する取付角度を変えることによって行うことができる。
【0026】
図4は、第2水分除去装置7の拡大図である。図に示すとおり、第2水分除去装置7の本体7aの先端部には気体ノズル9が角度調節自在に取り付けられている。気体ノズル9は、本体7aを介して、図示しない気体源に接続されている。気体ノズル9から噴出させる気体としては、被チャック部分11の上面に吹き付けられて水分を除去することができるものであれば原則としてどのような気体を用いても良いが、入手容易性の観点からは、空気を用いるのが好ましく、清浄な乾燥空気を用いるのがより好ましい。
【0027】
第2水分除去装置7の本体7aは、図示しない適宜の固定部分に上下方向に移動可能に取り付けられている。これにより、被チャック部分11の高さが異なる蓋1が搬送されてきた場合には、気体ノズル9の高さ方向の位置を図中矢印で示すように上下方向に適宜調節して、被チャック部分11に対する気体の吹き付け強さや、吹き付け範囲を適宜調整することができる。
【0028】
βは鉛直線Vに対する気体ノズル9の傾斜角度である。角度βは0度であっても良いが、被チャック部分11の上面に気体を吹き付けて被チャック部分11の水分を効果的に除去するためには、気体ノズル9から噴出する気体を蓋1の搬送方向上流側に向かって斜めに被チャック部分11の上面に吹き付けるのが好ましく、気体ノズル9と鉛直線Vとのなす角度βの好ましい範囲は0度≦α≦60度であり、より好ましくは、30度≦β≦50度の範囲である。
【0029】
なお、第1水分除去装置6と第2水分除去装置7とを蓋1の搬送方向上流側からこの順で配置する場合、角度αと角度βとは一致しているのが好ましい。
【0030】
次に、図5〜8を用いて、本発明に係る水分除去装置を備えた蓋搬送装置の動作を説明する。まず、図5に示すように被チャック部分11に水分wが付着している蓋1が搬送コンベア2によって図中矢印方向に搬送されてくると、第1水分除去装置6に装備されている当接片8の先端部が被チャック部分11の上面と当接し、図6に示すように被チャック部分11の上面に付着している水分wを掻き取るように除去する。並行して、蓋検出センサー10が蓋1の存在を検知すると、その信号が図示しない制御装置に送られ、図示しない制御装置は第2水分除去装置7の気体ノズル9を作動させ、気体ノズル9から気体gを噴出させる。
【0031】
図7は、当接片8によって付着していた水分wが掻き取られた被チャック部分11に対し、気体ノズル9が気体gを吹き付け、付着している水分をより完璧に除去している状態を示している。蓋1が搬送コンベア2によってさらに搬送され、蓋検出センサー10が蓋1の存在を検知しなくなると、図示しない前記制御装置が作動して、気体ノズル9からの気体gの噴出を停止させる。蓋検出センサー10が蓋1の存在を検知しなくなったときに気体ノズル9からの気体gの噴出を停止させる代わりに、気体ノズル9から気体gが噴出されてから一定時間後に前記制御装置によって気体ノズル9からの気体gの噴出を停止させるようにしても良い。
【0032】
当接片8による掻き取りと、気体ノズル9による気体吹き付けにより、被チャック部分11に付着していた水分が完全に除去された蓋1は、続いて、図8に示すように、蓋チャック装置3の下方に到達し、シリンダ5が作動して電磁石4を被チャック部分11に向かって下降させる。被チャック部分11には水分が付着していないので、被チャック部分11に蓋チャック装置3の電磁石4を密着させても電磁石4が劣化する恐れがない。このように、当接片8を備えた第1水分除去装置6と、気体ノズル9を備えた第2水分除去装置とを、搬送コンベア2の進行方向上流側からこの順で備えてなる水分除去装置は、炊飯釜の蓋1における被チャック部分11に付着した水分を除去する水分除去装置として極めて有用である。
【0033】
以上説明した例においては、当接片8を備えた第1水分除去装置6と気体ノズル9を備えた第2水分除去装置7の双方が、蓋チャック装置3の上流に配置されているが、どちらか一方だけでも被チャック部分11に付着した水分wを除去するに十分であると思われる場合には、当接片8を備えた第1水分除去装置6又は気体ノズル9を備えた第2水分除去装置7のどちらか一方だけを蓋チャック装置3の上流に配置するようにしても良い。また、蓋1が洗浄工程を経たばかりで、被チャック部分11に大量の水分wが付着していることが予想される場合には、当接片8を備えた第1水分除去装置6と気体ノズル9を備えた第2水分除去装置7の組を2組若しくはそれ以上、蓋チャック装置3の上流に配置するようにしても良い。
【0034】
また、以上の例では、蓋搬送装置によって蓋1が単独で搬送されてくる場合について説明したが、蓋1が炊飯釜に装着され、炊飯釜と一体になって搬送されてくる場合であっても、上述した当接片8を備えた第1水分除去装置6、又は気体ノズル9を備えた第2水分除去装置7、又はその両者を蓋チャック装置3の上流側に配置しておくことによって、蓋1の被チャック部分11に付着した水分を除去し、蓋チャック装置3における電磁石4の劣化を防止することができる。
【0035】
図9は、本発明の水分除去装置を備えた炊飯システムの一例を示す平面概略図である。100は本発明の水分除去装置を備えた炊飯システムであり、101は洗米・給水部、102は蓋チャック装置3を備えた蓋着装置、103はリフタ、104は立体浸漬部、105は蓋チャック装置3を備えた蓋取り装置、106は調味液供給装置、107は炊飯・蒸らし部である。炊飯・蒸らし部107の上段には複数の炊飯装置Pが配置され、搬送台車108によって未炊飯の炊飯釜が適宜の空いている炊飯装置Pにセットされ、炊飯が行われる。炊飯が終了した炊飯釜は、再び搬送台車108で炊飯・蒸らし部107の奥側にあるリフタ103へと搬送され、複数の炊飯装置Pの下段を時間を掛けて通過しながら蒸らしが行われる。蒸らしが終了した炊飯釜は、炊飯・蒸らし部107の入口側にあるリフタ103から、再び搬送ラインへと戻される。
【0036】
炊飯・蒸らし部107を出た炊飯釜は、蓋チャック装置3を備えた蓋取り装置105で再び蓋が取られ、取られた蓋は、蓋洗浄装置109を経て、蓋チャック装置3を備えた前述した蓋着装置102へと送られる。一方、蓋が取られた炊飯釜は、方向切り換え装置110へと進み、そこで米飯取り出し装置111によって反転され、炊き上がった米飯が炊飯釜から取り出される。取り出された米飯は、米飯撹拌装置112で撹拌され、撹拌後、搬送装置113へと送り出される。114は計量装置であり、撹拌済みの米飯を予め定められた量ずつ計量し、後続する搬送装置113へと送り出し、送り出された米飯は、パレタイザ115で所定量ずつ容器に収容され、積み上げられる。一方、米飯取り出し装置111によって米飯が取り出され空になった炊飯釜は、方向切り換え装置110でその進行方向を90度切り換えられ、炊飯釜洗浄装置116へと搬送され、そこで洗浄されて次の炊飯のために洗米、給水部101へと送られる。2は蓋単体を搬送する搬送コンベア、2’は蓋を装着した状態の炊飯釜を搬送する搬送コンベア、2’’は蓋のない炊飯釜単体を搬送する搬送コンベアである。
【0037】
このような炊飯システム100において、本発明の第1及び第2水分除去装置6、7は、蓋チャック装置3を備えた蓋取り装置105又は蓋着装置102の上流側に配置される。蓋1に水分が付着する恐れがない搬送経路には第1及び第2水分除去装置6、7は配置しなくても良いが、蓋洗浄装置109を経て洗浄された蓋1の被チャック部分11には、通常、大量の水分が付着していることが予想されるので、蓋洗浄装置109と蓋着装置102の間の搬送コンベア2には、本発明の第1及び第2水分除去装置6、7を1組又は2組以上配置するのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上述したとおり、本発明の水分除去装置によれば、炊飯釜の蓋の被チャック部分に付着した水分を効果的に除去し、蓋チャック装置における電磁石の劣化を有効に防止することができる。本発明は、業務用炊飯システムにおける蓋チャック装置の長寿命化に寄与するものであり、多大な産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0039】
1 蓋
2 搬送コンベア
3 蓋チャック装置
4 電磁石
5 シリンダ
6 第1水分除去装置
7 第2水分除去装置
8 当接片
9 気体ノズル
10 蓋検出センサー
11 被チャック部分
100 炊飯システム
102 蓋着装置
105 蓋取装置
109 蓋洗浄装置
g 気体
w 水分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9