【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある実施形態の利点は、ユーザーフレンドリーで操作が容易な方法が、半導体基板の活性ドーパントプロファイルを短い測定時間で決定するために適用可能なことである。
【0010】
本発明のある実施形態の利点は、ドーピングプロファイルの光学測定から、完全な活性ドーピングプロファイルが決定または再構築できることである。活性ドーピングプロファイルは、何れか任意のドーピングプロファイルであってもよい。
【0011】
PMORは、本発明に係る実施形態において、活性化した注入(implantation)プロファイルを決定するために使用できる。そこではPMOR信号は、プラズマ成分と熱的成分との間の繊細なバランスに起因する。特に、本発明の実施形態の利点は、PMOR信号がポンププローブビーム分離の関数として測定されるようにしたPMORオフセットカーブに含まれる結合した情報は、時間非依存の(DC)反射率において結合され、下地にある自由キャリアプロファイルを再構築するのに充分であることである。
【0012】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態の利点は、接合深さを抽出する方法またはシステムを提供することであり、抽出した接合深さはSIMSで得られる接合深さと極めて良好な相互関係にある。
【0013】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態の利点は、15nm〜30nmの深さについてサブnmの再現性を持つ、この接合深さを抽出する方法またはシステムを提供することである。
【0014】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態の利点は、ドーピングプロファイルのピークドーピング濃度を抽出する方法またはシステムを提供することである。
【0015】
本発明のある実施形態の利点は、サンプルを実質的に破壊することなく、高いドーピング濃度を有するサンプルについて完全な活性ドーピングプロファイルが測定可能であることである。
【0016】
本発明のある実施形態の利点は、極浅接合におけるキャリアプロファイルが、非破壊的に、即ち、サンプル準備なしで決定できることである。
【0017】
本発明のある実施形態の利点は、ドーピング取り込みが、処理フローでの重要なポイントで監視可能であり、これにより高い生産品質をもたらすことである。
【0018】
本発明のある実施形態の利点は、活性ドーパントプロファイルを決定する方法が、インラインで、即ち、生産プロセス環境において適用可能であることである。
【0019】
本発明の実施形態の利点は、活性ドーピングプロファイルの光学測定に基づいて、一意的な解が活性ドーピングプロファイルについて決定できることである。
【0020】
本発明の実施形態の利点は、未知の任意のドーピングプロファイルが光学測定から高速で柔軟な方法で再構築可能であるとともに、ドーピング濃度または接合深さについて事前の推定が必要でないことである。
【0021】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態の利点は、半導体領域の活性ドーピング濃度プロファイルを決定するための光変調光学測定テクニック、およびこのテクニックを実行するデバイスおよびソフトウエアが提供されることである。
【0022】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態の利点は、方法、システムおよびソフトウエアが、特定の半導体基板におけるピークドーパント濃度及び/又は接合深さ及び/又は急峻性の独立した抽出のために提供されることである。
【0023】
本発明の実施形態の利点は、サンプル準備が不要か殆ど要しない直接の方法で、活性化した注入(implantation)プロファイルの測定値が測定できることである。
【0024】
本発明の実施形態の利点は、サンプルのPMOR信号および同時に測定するDCプローブ反射率の組合せに基づいて、活性化した注入プロファイルについて下地にある自由キャリアプロファイルの再構築が再構築可能であることである。その結果は、約3nm(接合深さ)の平均精度で、2次イオン質量分析および走査型広がり抵抗顕微鏡法と良好な一致をみる。
【0025】
本発明の実施形態の利点は、接合深さの決定が得られるだけでなく、完全なドーパントプロファイルが再構築できることである。
【0026】
本発明の実施形態の利点は、高いドーパント濃度(例えば、活性ドーピング濃度が10
20cm
−3またはこれ以上になる最新の極浅接合において存在する)で高感度のDC成分、および、完全なドーパント濃度プロファイルについて良好な感度を得るための低濃度でのAC成分を使用することである。
【0027】
上記目的は、本発明に係る方法およびデバイスによって達成される。
【0028】
一態様において、本発明は、ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルを光学的に決定する方法に関し、ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルは、物理パラメータの組によって特徴付けられる。該方法は、下記のステップを含む。
・完全に活性化したドーピングプロファイルを含むサンプル、およびリファレンスを取得するステップ。
・完全に活性化したドーピングプロファイルを含む前記サンプルおよび前記リファレンスについて、光変調反射率(PMOR)オフセットカーブ測定データおよびDC反射率測定データを取得するステップ。
・光変調反射率オフセットカーブ測定値およびDC反射率測定値の両方に基づいて、ドーピングプロファイルの物理パラメータの組についての値を決定するステップ。
【0029】
光変調反射率オフセットカーブ測定データおよびDC反射率測定データを取得することは、光変調反射率オフセットカーブ測定を実施し、DC反射率測定を実施することによって行ってもよい。
【0030】
DC反射率測定とは、時間非依存の反射率測定または、サンプルの全体反射率の決定を可能にする反射率測定を意味する。
【0031】
光変調反射率オフセットカーブ測定データおよびDC反射率測定データを取得することは、同じ測定設定(setup)を用いて記録したデータを取得することでもよい。
【0032】
光変調反射率オフセットカーブ測定データおよびDC反射率測定データを取得することは、ほぼ同時または同時に記録したデータを取得することでもよい。
【0033】
該方法は、典型的には、物理パラメータの組によって定義される完全に活性化したドーピングプロファイルについての所定のプロファイル形状を選択することを含み、ここで物理パラメータの組についての値を決定することは、所定のプロファイル形状を定義する物理パラメータの組についての値を決定することを含む。
【0034】
ドーピングプロファイルの物理パラメータの組を決定することは、リファレンスについて取得した光変調反射率オフセットカーブ測定データから表面過剰キャリア濃度ΔN
subおよび過剰温度ΔT
surfを決定することと、リファレンスについて取得したDC測定データから反射率R
0を決定することとを含んでもよい。
【0035】
ドーピングプロファイルの物理パラメータの組を決定することは、サンプルでの光変調反射率オフセットカーブ測定データおよびサンプルでのDC反射率測定データから、接合深さX
j、活性ドーピング濃度N
act、およびプロファイル急峻性または裏面(backside)スロープS
actのうちの1つ又はそれ以上、好ましくは全てを決定することを含んでもよい。
【0036】
一態様において、本発明は、ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルを決定するための光学測定に関し、ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルは、物理パラメータの組によって特徴付けられる。該方法は、下記のステップを含む。
・完全に活性化したドーピングプロファイルを含むサンプル、およびリファレンスを取得するステップ。
・サンプル測定を実施するステップ。サンプル測定は、下記ステップを含む。
○ サンプルパラメータを、サンプルでの光変調反射率測定値から決定すること。
・リファレンス測定を実施するステップ。リファレンス測定は、下記ステップを含む。
○ 基板パラメータを、リファレンスでの光変調反射率測定値から決定すること。
・物理パラメータの組を、基板パラメータおよびサンプルパラメータから抽出するステップ。
【0037】
リファレンスとは、ドーパントフリーで、ほぼ完全に活性化したドーピング濃度プロファイルを持つサンプルと同じ処理ステップ、即ち、ドーピング取り込みステップを除いて、例えば、活性化ステップおよび予備アモルファス化(pre-amorphization)ステップが施されたサンプルの一部または他のサンプルを意味する。こうしてサンプルおよびリファレンスの両方にとって同じ活性化プロセスが実施されるとともに、リファレンスはドーパントフリーであることから、リファレンスについては活性化されるドーパントが無く、一方、サンプルについてはほぼ全てのドーパントが活性化されることが重要である。もしサンプルに、例えば、予備アモルファス化注入および次のアニールステップが施された場合は、リファレンス(ドーパントフリー)にも、サンプルで用いたのと同じパラメータを用いて予備アモルファス化注入および次のアニールステップが施される。
【0038】
サンプルを、ドープ部分を含むように用意してもよい(ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルを含むドープ部分)。サンプルはまた、リファレンスを含んでもよく、ここでリファレンスはアンドープ部分、即ち、ドーパントフリーでもよい。
【0039】
ほぼ完全な活性ドーピングプロファイルは、物理パラメータの組によって特性評価できる。物理パラメータの組は、接合深さX
j、活性ドーピング濃度N
act、プロファイル裏面スロープS
act、表面活性ドーピング濃度N
surfを含んでもよい。一般に、ドーピングプロファイルが、任意の関数ドーパント(X
j,N
act,S
act,N
surf,…)によって特性評価できる。光変調反射率(n
input)測定に加えて収集した独立入力の数(n
input)に依存して(後述を参照)、決定可能な物理パラメータの数は、少なくとも1+n
inputである。
【0040】
ドーピングプロファイルが、例えば、次のようなガウシアンプロファイルによって特徴付けできる。
【0041】
【数1】
【0042】
ガウシアンプロファイルは、例えば、z=0(即ち、Δ=0)で中心に位置し、これはドーピング濃度プロファイルのピーク濃度が表面に位置決めされることを意味する。この場合、2つの物理パラメータを決定することが必要であり(N
0およびW)、従って1つの独立した測定(例えば、PMOR DC測定)が基本PMOR測定の上に必要になる。これは後述する。
【0043】
ドーピングプロファイルが、例えば、ローレンツ型(Lorentzian)関数によって特徴付けできる。
【0044】
【数2】
【0045】
ローレンツプロファイルは、例えば、z=0(即ち、Δ=0)で中心に位置する。この場合、2つの物理パラメータを決定することが必要であり(N
0およびW)、従って1つの独立した測定(例えば、PMOR DC測定)が基本PMOR測定の上に必要になる(これは後述する)。
【0046】
ドーピング濃度プロファイルが、例えば、相補誤差(Complementary Error)関数によって特徴付けできる。
【0047】
【数3】
【0048】
相補誤差関数は、例えば、z=0(即ち、Δ=0)で中心に位置する。この場合、2つの物理パラメータを決定することが必要であり(N
0およびW)、従って1つの独立した測定(例えば、PMOR DC測定)が基本PMOR測定の上に必要になる(これは後述する)。
【0049】
しかしながら、サンプルのドーピング濃度プロファイルは、上述した関数プロファイルに限定されず、任意の関数プロファイルD(X
j,N
act,S
act,N
surf,…)であってもよい。
【0050】
ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルとは、ドーパント全量の50%より大きい、より好ましくは60%より大きい量が活性化されることを意味する。ドーパント活性化が、注入した状態の量に対する活性量の百分率として定義できる(例えば、ホール測定によって決定される)。
【0051】
リファレンスでの光変調反射率測定値から基板パラメータを決定することは、下記ステップを含む。
・リファレンスでの光変調反射率(PMOR)オフセットカーブ測定を実施するステップ。ここから表面過剰キャリア濃度ΔN
subおよび過剰温度ΔT
surfを決定する。
・DC反射率測定を実施し、ここからDC反射率R
0を決定するステップ。
基板パラメータを用いて、サンプルでの光変調反射率測定値からサンプルパラメータを決定することは、
・サンプルでの光変調反射率(PMOR)オフセットカーブ測定を実施するステップ。
・少なくともサンプルでのDC反射率測定を実施するステップ。
【0052】
少なくともこれら2つ独立した測定、即ち、サンプルでの光変調反射率(PMOR)オフセットカーブ測定およびサンプルでのDC反射率測定から、ドーパントプロファイルを特性評価する物理パラメータの少なくとも2つを決定する。
【0053】
例えば、z=0(即ち、Δ=0)で中心に位置するガウシアンプロファイルでは、決定することが必要な2つの物理パラメータは、N
0およびWである。
【0054】
一般に、物理パラメータは、例えば、X
jおよびN
actでもよく、またはN
0およびWを持つガウシアンプロファイルの特別な場合。物理パラメータの少なくとも2つを決定することは、リファレンスPMOR測定からのΔN
subおよびΔT
surfに基づいて行われる。
【0055】
さらに、少なくとも他のサンプルパラメータを、リファレンスパラメータおよび基板パラメータから物理パラメータの組を抽出するステップの前に決定してもよい。例えば、シート抵抗(R
s) 測定を、サンプルでのPMORオフセットカーブ測定およびDC測定の後に実施してもよい。ここから一般に1つの追加の物理パラメータ、例えば、S
act(または、例えば、一般化したガウシアンの場合はΔ)を決定する。
【0056】
代替として、PMORパワーカーブを測定してもよく、ここから一般に1つの追加の物理パラメータ(これはドーピングプロファイルの再構築に必要である)を決定する。
【0057】
ドーピングプロファイルの複雑さに依存して、2またはそれ以上の物理パラメータを決定する必要がある。
【0058】
サンプルでのPMORオフセットカーブ測定およびDC反射率測定の組合せに基づいて、物理パラメータの組はリファレンスパラメータおよび基板パラメータから抽出できる。
【0059】
サンプル測定を実施するステップは、リファレンス測定を実施する前に行ってもよく、あるいはその逆でもよい。
【0060】
本発明の実施形態によれば、ドーパントプロファイルの再構築が、PMORオフセットカーブ測定、DC反射率測定、および(決定する必要がある物理パラメータの数に依存して)多数の追加の物理測定、例えば、シート抵抗測定、PMORパワーカーブ測定、SIMS測定、電気AFM測定(例えば、SSRM)…などに基づいて実施される。
【0061】
さらに、キャリブレーションまたはフィッティングのステップが、種々の物理パラメータを適合させるために必要である。再構築ステップは、キャリブレーションステップの前に実施してもよく、あるいはその逆でもよい。
【0062】
本発明の実施形態によれば、新しい高速の非破壊で極めて局所的なキャリアプロファイル分析テクニックが、プローブレーザのPMORオフセットカーブおよびDC反射率の組合せ測定をベースとしている。このテクニックは、GE PAIを有しおよび有しない種々のB−注入層についてテストを行った。抽出したキャリアプロファイルは、アニール温度およびPAI条件になった場合、予想される定量的な傾向に従う。このプロファイルは、他のプロファイル分析テクニック、例えば、SIMSまたはSSRMと、約3nmの平均精度で良好に一致することを証明する。
【0063】
本発明はまた、ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルを光学的に決定するためのシステムに関する。ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルは、物理パラメータの組によって特徴付けられる。該システムは、下記の構成を備える。
・光変調反射率(PMOR)オフセットカーブ測定データおよびプローブレーザのDC反射率測定データを取得するためのポンプレーザおよびプローブレーザを含むPMOR測定システム。
・ドーピングプロファイルの物理パラメータの組についての測定データ値に基づいて、サンプルおよびリファレンスについて、光変調反射率(PMOR)オフセットカーブ測定データを受信し、プローブレーザのDC反射率測定データを取得するための処理システム。
【0064】
本発明はまた、ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルを光学的に決定するためのコンピュータプログラム製品に関し、ほぼ完全に活性化したドーピングプロファイルは、物理パラメータの組によって特徴付けられる。該コンピュータプログラム製品は、ドーピングプロファイルの物理パラメータの組についての測定データ値に基づいて、サンプルおよびリファレンスについて、光変調反射率(PMOR)オフセットカーブ測定データを受信し、プローブレーザのDC反射率測定データを受信するように適合している。
【0065】
本発明はまた、上述したようなコンピュータプログラム製品を格納する機械読み取り可能なデータキャリア、あるいは、ネットワークを通じたこうしたコンピュータプログラム製品の伝送に関する。
【0066】
本発明の特定かつ好ましい態様が、添付した独立および従属の請求項に記述されている。従属請求項からの特徴は、独立請求項の特徴および他の従属請求項と適切に組み合わせてもよく、請求項に明記されたものだけに限らない。本発明のこれらおよび他の態様が、以下に記載した実施形態を参照して明らかになり解明されるであろう。