【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に対する参照により理解され得る。
【0010】
本発明の側面は自動車及び方法を提供する。
【0011】
保護が求められる本発明の別の側面によれば、原動機と、少なくとも一組の後輪と、原動機を後輪に接続するための支持軸(推進軸)と、原動機に及び後輪に支持軸をそれぞれ接続するための第1連結手段及び第2連結手段とを有する自動車のためのシステムが提供される。該システムは、所定の温度未満となった自動車の動作温度に応答して、前記第1及び第2連結手段の少なくとも一方を制御して、原動機及び後輪の少なくとも一方に支持軸を接続するように構成された制御手段を備える。
【0012】
動作温度は、例としてであって限定するものではなく、周囲温度又は車両内の流体、例えば冷却液又は潤滑油等の温度である。一実施形態において、動作温度は、支持軸を囲む潤滑流体等のトランスミッション流体の温度を含む。
【0013】
保護が求められる本発明の更なる側面において、原動機と、一つ又は複数の車輪からなる第1群及び第2群と、動力伝達経路が第1運転モードにある場合、一つ又は複数の車輪からなる第1群が原動機によって駆動され得、かつ第2群は原動機によって駆動されず、動力伝達経路が第2運転モードにある場合、一つ又は複数の車輪からなる第1群及び第2群の両方が原動機によって駆動され得るように、一つ又は複数の車輪からなる第1群及び第2群に原動機を接続する動力伝達経路とを有する自動車が提供される。前記動力伝達経路は、第1解放可能トルク伝達手段と、支持軸と、第2解放可能トルク伝達手段とを備える予備部分を含む。第1解放可能トルク伝達手段は、支持軸の第1端部を原動機に接続するよう動作可能である。第2解放可能トルク伝達手段は、支持軸の第2端部を一つ又は複数の車輪からなる第2群に接続するように動作可能である。該自動車は、前記第1及び第2トルク伝達手段を制御して、動力伝達経路を第1運転モードと第2モードとに切り換えるように動作可能な制御手段を更に備える。第1モードにおいて、第1又は第2解放可能トルク伝達手段により支持軸が原動機と一つ又は複数の車輪の第2群との両方から切り離される。第1モードにおいて制御手段は、制御手段が決定した温度パラメータの値に応答して、第1又は第2解放可能トルク伝達手段により原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群とから選択された一つのみに支持軸を自動的に接続するように動作可能である。温度パラメータは自動車の動作温度に対応する。
【0014】
一つ又は複数の車輪からなる群に対するここでの言及は、一つのみの車輪からなるメンバーを有する群に対する言及を含むことが理解されるべきである。
【0015】
本発明の実施形態は、動力伝達経路が第1モードで動作している時でさえ、自動車が第2運転モードをとることを必要とすることなく、予備動力伝達経路の潤滑油が潤滑油が予備動力伝達経路の構成要素に有益な潤滑を与える温度に維持され得るという利点を有する。
【0016】
本発明者は、予備動力伝達経路が係合している際、潤滑油が低い温度にある場合、予備動力伝達経路の一つ又は複数の構成要素に過度の摩耗が生じ得ることを認識した。これは、潤滑油が所定の値未満の温度で比較的高い粘性を有し得、そのため、潤滑油が温まるまで比較的乏しい潤滑を与えるからである。例えば、比較的少量の潤滑油が潤滑油の粘性が所定の値未満に低下するまである構成要素に供給され得る。更に、予備動力伝達経路の係合は、潤滑油が低温にある場合、より長時がかかり得る。換言すれば、予備動力伝達経路は、制御指令に対して比較的ゆっくりとした応答を提示し得る。
【0017】
動的動力伝達経路接続/切断システムを有する自動車において、予備動力伝達経路は、自動車が比較的高速にあり、比較的高速な回転へと予備動力伝達経路の急加速を要する場合、自動車の原動機に再接続され得ることが理解されるべきである。それ故、自動車が低い周囲温度環境で動作する状況において、動力伝達経路の構成要素が激しく摩耗する可能性が存在する。
【0018】
そのため、本発明の実施形態は、予備動力伝達経路が最初に係合された際の乏しい潤滑による予備動力伝達経路の過剰な摩耗が低減され得るという利点を有する。これは、本発明のある実施形態において、自動車動作温度が閾値未満に低下した際、第1又は第2解放可能トルク伝達手の一方が係合され、予備動力伝達経路を回転させるためである。これは、次いで、予備動力伝達経路の潤滑油の温度を高め、潤滑油の粘度を下げ、予備動力伝達経路の構成要素の潤滑を高める。
【0019】
第1及び第2運転モード(例えば二輪駆動モードと四輪駆動モード等)間で切り換え可能なある動力伝達経路は、周囲温度が所定値未満に下がると第2運転モードをとるように構成される。これは、一般的に、滑りやすい路面状況による自動車の滑りのリスクを低減する。
【0020】
しかしながら、ある状況において、第2運転モードは、低周囲温度にもかかわらず、必要とは考えられないかもしれない。例えば、滑りのリスクが低い、乾燥し凍結していない比較的平坦な面を駆動している時は、燃料消費を低減する利益を享受するため、第1運転モードに留まることが好ましいかもしれない。もし第2モードがとられるなら、一つ又は複数の操作特性が修正され得、それ故、上述したような状況でモード間を自動的に切り換えるのは望ましくないであろう。しかしながら、第2モード(例えば四輪駆動モード等)がその後にとられる場合に予備動力伝達経路の過剰な摩耗を防止するため、予備動力伝達経路の潤滑油が実質的に常時所定値以上にあることを確実にすることが望ましいであろう。
【0021】
本発明の実施形態は、動力伝達経路が第1運転モードである時でさえ、予備動力伝達経路の潤滑油が要求される温度以上に維持され得るという利点を有する。
【0022】
ある実施形態において、制御手段は、温度パラメータの値が第1閾値未満に下がった時、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群とから選択される一つのみに支持軸を自動的に連結するように動作可能である。
【0023】
温度パラメータは、動作温度パラメータとも呼ばれ得る。
【0024】
ある実施形態において、制御手段は、温度パラメータの値に応答して、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群との選択された一つから支持軸を自動的に切り離すように動作可能である。
【0025】
ある実施形態において、制御手段は、温度パラメータの値が第2閾値を超えた場合、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群との選択された一方から支持軸を自動的に切り離すように動作可能である。
【0026】
これは次の利点を有する。すなわち、原動機は、動作温度が上昇して第2閾値を超えた際に予備動力伝達経路を回転し続ける必要はない。第2閾値は、第2運転モードがとられる場合に予備動力伝達経路の有益な潤滑を許容するのに十分高い温度に対応するように選択され得ることが理解されるべきである。
【0027】
第2閾値は、第1閾値と実質的に同じであり得る。
【0028】
あるいは、第2閾値は第1閾値よりも高いかもしれない。
【0029】
この特徴は、第1及び第2運転モード間のカタカタする音のリスクを低減するという利点を有する。
【0030】
第1閾値は約−20℃であり得る。第2閾値は約−10℃であり得る。他の値も有益である。
【0031】
付随的に、第1閾値は、−25℃〜−15℃の範囲にあり、第2閾値は、約−15℃〜−10℃の範囲にある。
【0032】
温度パラメータは、周囲環境の温度、動力伝達経路の予備部分のある構成要素の温度、予備部分の流体の温度から選択される一つであり得る。
【0033】
温度パラメータは、自動車が動作中の周囲環境の温度、動力伝達経路の予備部分のある構成要素の温度、動力伝達経路の予備部分の流体の温度、動力伝達経路の予備部分の構成要素以外の自動車の構成要素の温度、動力伝達経路の予備部分の流体以外の自動車の流体の温度から選択される一つの測定によって決定され得る。
【0034】
動作温度が動力伝達経路の予備部分の流体の温度である場合、該流体は、第1及び第2解放可能トルク伝達手段の一方又は両方の流体であり得る。
【0035】
温度パラメータは、測定された温度値以外の自動車の一つ又は複数の動作パラメータに少なくとも一部に基づいて決定され得る。
【0036】
第1解放可能トルク伝達手段は第1クラッチ手段を含み得る。
【0037】
第1クラッチ手段は湿式クラッチを含み得る。
【0038】
第2解放可能トルク伝達手段は第2クラッチ手段を含み得る。
【0039】
第2クラッチ手段は湿式クラッチを含み得る。
【0040】
予備動力伝達経路は、差動歯車構成を備える差動装置を含み得る。
【0041】
第2解放可能トルク伝達手段は、差動装置と一つ又は複数の車輪の第2群との間に設けられ得る。
【0042】
あるいは、第2解放可能トルク伝達手段は、差動装置内に組み込まれ得る。
【0043】
ある実施形態において、第2解放可能トルク伝達手段及び差動歯車構成は、共通ハウジング内に組み込まれる。
【0044】
差動装置は、自走(フリーランニング)差動装置を含み得る。
【0045】
車輪の第2群は複数の車輪からなり得、第2解放可能トルク伝達手段は一組のクラッチを含み得、各クラッチは、車輪の第2群の異なるそれぞれの一つ又は複数の車輪に動力を伝達するように動作可能である。
【0046】
自動車には、ドライバーが操作可能なスイッチが更に設けられ得る。これにより、ドライバーは、動力伝達経路の第1及び第2運転モードの望ましい一方を選択し得る。
【0047】
付随的に、車輪の第1群は第1組の車輪を含み得、第1モードは、第1組の車輪が原動機によって駆動される運転の二輪駆動モードに対応する。
【0048】
車輪の第2群は第2組の車輪を含み得、第2運転モードは、運転の四輪駆動モードに対応し得る。
【0049】
あるいは、車輪の第2群は、第2及び第3組の車輪を含み得、第2運転モードは、運転の六輪駆動モードに対応し得る。
【0050】
一つ又は複数の車輪からなる第1及び第2群の少なくとも一方は、複数組の車輪を備え得る。
【0051】
原動機は、内燃エンジン及び電気機械の少なくとも一方を含み得る。
【0052】
保護が求められる本発明の更なる側面において、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第1群及び第2群とを有する自動車の動力伝達経路の温度を制御する方法が提供される。前記動力伝達経路は、一つ又は複数の車輪からなる第1群及び第2群に原動機を接続するように動作可能である。該方法は、動力伝達経路が第1運転モードにある場合、原動機により一つ又は複数の車輪からなる第1群を駆動し、かつ第2群を駆動しない工程と、動力伝達経路が第2運転モードにある場合、動力伝達経路の予備部分を介して一つ又は複数の車輪からなる第1群及び第2群を駆動する工程とを含む。予備部分により一つ又は複数の車輪からなる第2群を駆動する前記工程は、第1解放可能トルク伝達手段及び第2解放可能トルク伝達手段それぞれにより、予備部分の支持軸を原動機に及び一つ又は複数の車輪の第2群に接続する工程を含む。動力伝達経路が前記第1モードにある場合、該方法は、自動車の動作温度に応答して、第1又は第2解放可能トルク伝達手段の一方により、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群とから選択された一つのみに支持軸を接続する工程を含む。
【0053】
保護が要求される本発明の一側面において、原動機と、一つ又は複数の車輪からなる第1群及び第2群と、動力伝達経路とを備える自動車が提供される。動力伝達経路は、第1運転モードにある場合、一つ又は複数の車輪からなる第1群が原動機によって駆動され、動力伝達経路が第2運転モードにある場合、一つ又は複数の車輪からなる第2群が原動機によって付加的に駆動され得るように、一つ又は複数の車輪からなる第1群及び第2群に原動機を接続する。前記動力伝達経路は予備動力伝達経路を含む。予備動力伝達経路は、予備動力伝達経路を原動機に接続するよう動作可能な第1解放可能トルク伝達手段と、第1解放可能トルク伝達手段の下流の第2解放可能トルク伝達手段にして、予備動力伝達経路を一つ又は複数の車輪からなる第2群に接続し、これにより第2群を駆動するように動作可能な第2解放可能トルク伝達手段とを備える。該自動車は、前記第1及び第2トルク伝達手段を制御して、動力伝達経路を第1運転モードと第2モードとに切り換えるように動作可能な制御手段を更に備える。第1モードにおいて、予備動力伝達経路は、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群との両方から切り離される。第1モードにおいて、制御手段は、自動車の動作温度に応答して、解放可能なトルク伝達手段により、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群とから選択された一つのみに予備動力伝達経路を自動的に接続するように動作可能である。
【0054】
保護が求められる本発明の更なる側面において、原動機と、一つ又は複数の車輪からなる第1及び第2群と、原動機を一つ又は複数の車輪からなる第1及び第2群に接続する動力伝達経路とを有する自動車の動力伝達経路の温度を制御する方法が提供される。該方法は、動力伝達経路が第1運転モードにある場合に、原動機により一つ又は複数の車輪からなる第1群を駆動する工程と、動力伝達経路が第2運転モードにある場合に、原動機により一つ又は複数の車輪からなる第2群を付加的に駆動する工程とを含む。該方法は、第1及び第2トルク伝達手段を制御して、動力伝達経路を第1運転モードと第2運転モード間で切り換える工程を更に含む。これにより、第1モードにおいて、予備動力伝達経路は、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群との両方から切り離される。該方法は、第1モードにおいて、自動車の動作温度に応答して、第1又は第2解放可能トルク伝達手段により、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群とから選択された一方のみに予備動力伝達経路を接続する工程を含む。
【0055】
本発明の別の側面において、原動機と、一つ又は複数の車輪からなる第1及び第2群と、動力伝達経路とを有する自動車における動力伝達経路の温度を制御する方法が提供される。動力伝達経路は、動力伝達経路が第1運転モードにある場合、一つ又は複数の車輪からなる第1群が原動機によって駆動され、かつ、動力伝達経路が第2運転モードにある場合、一つ又は複数の車輪からなる第2群が原動機により付加的に駆動されるように、原動機を一つ又は複数の車輪からなる第1及び第2群に接続する。動力伝達経路は予備動力伝達経路を含み、予備動力伝達経路は、予備動力伝達経路を原動機に接続するように動作可能な第1解放可能トルク伝達手段と、予備動力伝達経路を一つ又は複数の車輪からなる第2群に接続し、これにより第2群を駆動するように動作可能な第2解放可能トルク伝達手段とを備える。該方法は、第1及び第2トルク伝達手段を制御して、動力伝達経路を第1運動モードと第2運転モード間で切り換える工程を含む。第1モードにおいて、予備動力伝達経路は、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群との両方から切り離される。第1モードにおいて、自動車の動作温度に応答して、解放可能トルク伝達手段により、原動機と一つ又は複数の車輪からなる第2群とから選択される一方のみに予備動力伝達経路を接続する。
【0056】
本出願の範囲内において、上記段落、特許請求の範囲及び/又は下記の説明及び図面に記載された種々の側面、実施形態、実施例及び代替、特にそれらの特徴は、独立的に又は任意のそれらの組み合わせにして採られ得る。例えば、一実施形態に関連して記述した特徴は、そのような特徴が不適合な場合を除き、すべての実施形態に適用可能である。
【0057】
本発明の実施形態は、附随の図面を参照して、例示目的のために以下に記述される。